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発明の名称 ポリケトン繊維の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−207330(P2001−207330A)
公開日 平成13年8月3日(2001.8.3)
出願番号 特願2000−19961(P2000−19961)
出願日 平成12年1月28日(2000.1.28)
代理人 【識別番号】100108693
【弁理士】
【氏名又は名称】鳴井 義夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4L035
【Fターム(参考)】
4L035 AA06 BB03 BB04 BB10 BB69 BB89 BB91 DD20 EE08 FF01 HH10 
発明者 谷口 龍 / 森田 徹
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 オレフィンと一酸化炭素が共重合してなるポリケトンポリマーを、溶質として少なくともハロゲン化亜鉛を15〜80重量%含有する溶剤に溶解したドープを、紡糸口金より凝固浴中に吐出して湿式紡糸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法において、ポリケトンポリマーの極限粘度を[η](dl/g)、ドープ中のポリケトンポリマー濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ温度をT(℃)としたときに、[η]、PC、Tから以下の式1により表される紡糸性パラメーターKが100≦K≦50000の範囲内で紡糸を行うことを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1)
ただし、式中eはNapier数であり、[η]、PC、Tは以下の式の範囲内である。
1 ≦ [η] ≦ 202 ≦ PC ≦ 3050 ≦ T ≦ 130【請求項2】 請求項1記載のポリケトン繊維の製造方法において、紡糸口金より吐出されたドープが、一旦長さ0.1〜100mmのエアーギャップ部を経て凝固浴に入る工程を含むことを特徴とする請求項1記載のポリケトン繊維の製造方法。
【請求項3】 ポリケトンポリマードープがハロゲン化亜鉛以外に少なくともハロゲン化アルカリ金属を1〜20重量%、および/または、ハロゲン化アルカリ土類金属を3〜55重量%含有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のポリケトン繊維の製造方法。
300 ≦ K ≦ 50000【請求項4】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を55〜75重量%、塩化ナトリウムを3〜15重量%含有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
300 ≦ K ≦ 30000【請求項5】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を15〜75重量%、塩化カルシウムを5〜55重量%含有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
300 ≦ K ≦ 30000【請求項6】 ポリケトンポリマードープが塩化亜鉛を60〜80重量%含有する溶液を溶剤とするドープであり、かつ、紡糸性パラメーターKが以下の式の範囲にて紡糸することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
100 ≦ K ≦ 30000【請求項7】 ドープ中のポリケトンポリマーの極限粘度およびポリマー濃度がそれぞれ、以下の式の範囲で紡糸することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
2 ≦ [η] ≦ 105 ≦ PC ≦ 20【請求項8】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し単位の97重量%以上が1−オキソトリメチレンからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
【請求項9】 ポリケトンポリマーを構成する繰り返し単位が1−オキソトリメチレンのみからなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
【請求項10】 凝固浴にて凝固したポリケトン凝固糸条を、水分率が10重量%以下になるまで乾燥を行った後に、少なくとも5倍以上の熱延伸を行う工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
【請求項11】 引っ張り強度が10cN/dtex以上、初期弾性率が200cN/dtex以上、長さ方向の繊度ムラが2%以下であることを特徴とするポリケトン繊維。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度・高弾性率、高耐熱性の優れた機械的・熱的特性および優れた均質性を有するポリケトン繊維を安定かつ効率的に製造する方法に関する。さらに詳しくは、ハロゲン化亜鉛を溶剤とするポリケトン繊維の湿式紡糸プロセスにおいて、凝固工程および乾燥工程、延伸工程において紡口詰まり、毛羽や糸切れ等の工程上の不具合が少ない、安定かつ効率的なポリケトン繊維の製造方法に関する。この製造方法で得られたポリケトン繊維は、高強度、高弾性率、高耐熱性の優れた機械的特性、熱的特性を有し、さらには毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない、繊度ムラが小さいという優れた均質性を有しており、産業用資材、特にタイヤコードとして有用である。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロペンのようなオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒として重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンポリマーが得られることが見いだされ(工業材料、12月号、第5ページ、1997年)、以後ポリケトンポリマーの繊維化の検討が行われている。
【0003】ポリケトン繊維は、従来のポリオレフィン繊維に比べて融点が高く、また高強度・高弾性率の繊維が得られることが知られており、この優れた物性を活かして産業用資材、土木用資材、生活資材、衣料用途など幅広い用途への展開が検討されている。中でも高強度、高弾性率の優れた機械的特性と高融点の熱的特性を活かして産業用資材用途、特にタイヤコード用途への展開が期待されている。これまで高強度、高弾性率のポリケトン繊維の製造については、溶融紡糸法や有機・無機溶液を溶剤とする湿式紡糸法が開示されている。 しかしながら、これらの公知の製造方法は、いずれも得られるポリケトン繊維の性能や安全性、製造コストに大きな問題があった。例えば、特開平1−124617号公報、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.),36,1,291−292、Prog.Polym.Sci.,Vol.22,8,1547−1605(1997)等に開示されている溶融紡糸法ではポリケトンの熱架橋が起こるため、エチレン/一酸化炭素にプロペンを共重合して融点を230℃以下まで低くしなければ紡糸が出来なかった。しかしながらこれら共重合によって、ポリケトン繊維の融点が低下し耐熱性が悪くなる問題、高弾性率の繊維が得られない、などの問題があった。
【0004】また、エチレン/一酸化炭素が交互共重合した高融点のポリケトンポリマーを用いた湿式紡糸方法については、特開平2−112413号公報、特表平4−505344号公報、特開平2−112413号公報、特開平4−228613号公報、特表平7−508317号公報、特表平8−507328号公報などに、m−クレゾール、レゾルシン/水、フェノール/アセトン、ヒドロキノン/プロピレンカーボネート、レゾルシン/プロピレンカーボネート等を溶剤とする方法が開示されている。この製造法では高強度・高弾性率で高融点の繊維を得ることは出来るものの、溶剤に毒性や爆発性があるなどして安全性、取り扱い性に問題があり、また製造コストが極めて高価で、実用的な製造法ではなかった。
【0005】これらの製造法に対して、実用的な湿式紡糸方法として、米国特許5955019号明細書、WO9918143号公開パンフレットではアルカリ金属やアルカリ土類金属、塩化亜鉛などの金属塩を含む溶液にポリケトンポリマーを溶解し繊維を製造する技術が開示されている。しかしながらこの特許文献では、これら溶剤を用いたドープから安定かつ効率的に湿式紡糸を行う要件およびその組み合わせについては一切開示されていない。
【0006】例えば、WO9918143号公開パンフレットでは実施例9および実施例10においてポリケトンポリマーを塩化亜鉛水溶液に溶解し湿式紡糸を行う方法(ポリマーの極限粘度が1.75、ポリマー濃度が約1.5重量%および7重量%)が例示されているが、この極限粘度、ポリマー濃度の組み合わせではドープの曳糸性が極めて乏しく長時間安定して紡糸することが困難である。また、得られる凝固糸も脆く強度が低いため次の乾燥工程、延伸工程で毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発するばかりか、得られるポリケトン繊維も毛羽が多く、また繊度ムラの大きい不均質なものであり、高品位のポリケトン繊維を安定して製造することは極めて困難であった。さらには、これらの発明で開示されているポリマー粘度、ポリマー濃度の組み合わせのドープは曳糸性に乏しいため、エアーギャップ紡糸法では紡糸することが出来ず、紡糸口金から直接凝固浴にドープを吐出するいわゆる浸漬紡糸法でしか紡糸が出来ない。しかしながら、浸漬紡糸法では長時間の紡糸によって紡口ノズルに塩化亜鉛が水と反応して不溶化した亜鉛塩が析出し、紡口詰まりが発生したり、毛羽や単糸切れ等の工程上のトラブルが多発するばかりか、得られるポリケトン繊維も毛羽が多く、また、繊度ムラの大きい不均質なものとなる。また、これらの特許で開示されているポリケトン繊維は、融点が220℃のエチレン/プロピレン/一酸化炭素のターポリマーを用いたものであるが、この繊維は融点が低く耐熱性に問題があり、また、弾性率が170cN/dtexと低く、産業用資材用途、特にタイヤコードとしては全く不十分な性能であった。以上のように高強度、高弾性率の優れた力学特性および高融点で優れた熱特性、高い均質性を有し、産業用繊維、特にタイヤコードに適したポリケトン繊維を、安全かつ安価に、そして紡口詰まりや、毛羽、糸切れ等の工程上の不具合なく安定かつ効率的に製造する方法については一切知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らはハロゲン化亜鉛を溶剤とするポリケトン繊維の湿式紡糸製造方法において、高強度・高弾性率で優れた均質性を有するポリケトン繊維を安定かつ効率的に製造するための条件を鋭意検討した結果、ポリケトンドープの組成および紡糸条件を適正な範囲内に制御することが極めて重要であることを見いだした。すなわち、本発明の課題はハロゲン化亜鉛を溶剤とする湿式紡糸法において高強度、高弾性率で高均質のポリケトン繊維を得るためのドープの組成および紡糸条件を決定することである。具体的には、ハロゲン化亜鉛溶剤を用いた湿式紡糸方法により製造したポリケトン繊維において、強度10cN/dtex以上、弾性率200cN/dtex以上、融点240℃以上であり毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない均質で高性能のポリケトン繊維を、工程上の不具合なく安定かつ効率的に製造するためのポリケトンポリマーの極限粘度、ドープ中のポリマー濃度、および紡糸温度の組み合わせを決定することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、オレフィンと一酸化炭素が共重合してなるポリケトンポリマーを、溶質として少なくともハロゲン化亜鉛を15〜80重量%含有する溶剤に溶解したドープを、紡糸口金より凝固浴中に吐出して湿式紡糸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法において、ポリケトンポリマーの極限粘度を[η](dl/g)、ドープ中のポリケトンポリマー濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ温度をT(℃)としたときに、[η]、PC、Tから以下の式1により表される紡糸性パラメーターKが100≦K≦50000の範囲内で紡糸を行うことを特徴とするポリケトン繊維の製造方法である。
K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1)
ただし、式中eはNapier数であり、[η]、PC、Tは以下の式の範囲内である。
1 ≦ [η] ≦ 202 ≦ PC ≦ 3050 ≦ T ≦ 130【0009】本発明に用いるポリケトンポリマーは、オレフィンと一酸化炭素の共重合ポリマーである。強度・弾性率などの機械的特性、耐熱性、耐湿熱性、接着性の観点からエチレンと一酸化炭素が結合した1−オキソトリメチレンを主たる繰り返し単位とするポリマーが好ましい。繰り返し単位中の1−オキソトリメチレンの割合は、多ければ多いほど高融点、高力学物性の繊維が得られるため97重量%以上であることが好ましく、特に100重量%が1−オキソトリメチレンであることが好ましい。
【0010】オレフィンと一酸化炭素が結合した繰り返し単位同士は、部分的にケトン基同士、オレフィン同士がつながっていてもよいが、90重量%以上がオレフィンと一酸化炭素が交互に配列したポリケトンポリマーであることが望ましい。耐光性、耐熱性、高温時の物性の低下の観点からオレフィンと一酸化炭素が交互に配列した部分の含有率は多ければ多いほどよく、好ましくは97重量%以上、最も好ましくは100重量%である。また、必要に応じてプロペン、ブテン、ヘキセン、シクロヘキセン、ペンテン、シクロペンテン、オクテン、ノネン等のエチレン以外のオレフィンやメチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、スチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドン、塩化ビニル等の不飽和炭化水素を有する化合物を共重合してもよい。
【0011】本発明に用いるドープは、ポリケトンポリマーを溶質としてハロゲン化亜鉛を15〜80重量%含有する溶剤に溶解したドープである。なお、本発明においてドープとは、ポリケトンポリマーを溶剤に溶解させたポリマー溶液を指す言葉である。また、ここで言うハロゲン化亜鉛の濃度は、以下の式で定義される値である。溶剤の重量は、ポリケトンは含まず、ハロゲン化亜鉛を含んだ溶液の重量を示す。
ハロゲン化亜鉛の濃度=ハロゲン化亜鉛の重量/溶剤の重量 ×100 (重量%)
【0012】ハロゲン化亜鉛としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛等が挙げられ、溶解性、コスト、溶液の安定性の点から塩化亜鉛を主成分とする溶剤が好適に用いられる。溶剤であるハロゲン化亜鉛の濃度は、好ましくは20〜80重量%、より好ましくは50〜75重量%である。また、ハロゲン化亜鉛を溶解せしめる溶液としては、ハロゲン化亜鉛を溶解可能な液体であれば特に制限はなく、通常は極性溶液が用いられ、溶解性、取り扱い性、安全性、回収コストの観点から水、メタノールが好適に用いられる。
【0013】本発明のポリケトン繊維の紡糸方法は、ポリケトンハロゲン化亜鉛ドープを紡糸口金から吐出し、引き続き凝固浴中で糸条に凝固する湿式紡糸法である。ポリケトン繊維の湿式紡糸法法には紡糸口金吐出面が凝固浴と接触しており、凝固浴から吐出したポリマードープが直接凝固浴中に入る浸漬紡糸法と紡糸口金吐出面が凝固浴と接触しておらず、紡糸口金から吐出されたドープが一旦気体中を通過した後に凝固浴中に射出されるエアーギャップ紡糸法があるが、本発明の製造方法はそのいずれの紡糸法を採用してもよい。浸漬紡糸法では高強度・高弾性率の繊維を製造することは出来るが、長時間の紡糸を行った場合、浸透圧によって凝固浴の液体が紡口内部に浸透し、紡口ノズル孔周辺やノズル壁面でポリケトンポリマーの凝固・析出が発生し、吐出不良やノズル詰まりが発生することがあるため、エアーギャップ紡糸法が好適に用いられる。また、エアーギャップ紡糸法では、ドープの吐出温度と凝固浴温度をそれぞれ独立した温度に維持出来るため、凝固速度を任意に制御することが可能となり好ましい。
【0014】本発明者らは、これらの湿式紡糸法でポリケトン繊維を紡糸するに際して特にポリケトンポリマーの極限粘度およびドープ中のポリマー濃度、紡糸時のドープ温度が非常に重要であり、これらの因子から計算される紡糸性パラメーターKを一定の範囲内に制御した場合に、均質で高性能のポリケトン繊維を毛羽や糸切れ等の工程上の不具合なく安定して製造可能となることを見いだした。具体的には、ポリケトンポリマーの極限粘度を[η](dl/g)、ドープ中のポリケトンポリマー濃度をPC(重量%)、紡糸時のドープ温度をT(℃)としたときに、[η]、PC、Tから以下の式1により表される紡糸性パラメーターKが100≦K≦50000の範囲内で紡糸を行うことを特徴とするポリケトン繊維の製造方法である。
K=1×10-9×[η]3.9 ×PC4.9 ×e(4200/(T+273))・・・(式1)
ただし、式中eはNapier数であり、[η]、PC、Tは以下の式の範囲内である。
1 ≦ [η] ≦ 202 ≦ PC ≦ 3050 ≦ T ≦ 130【0015】紡糸性パラメーターKは、ドープの曳糸性を表す指標でエアーギャップ部や凝固浴中での曳糸性(紡糸性)を表すパラメーターである。この値が100未満である場合、ドープ中のポリマー同士の凝集力が低いために曳糸性に乏しく、紡糸口金より吐出された糸条はエアーギャップ部にて表面張力によって破断したり、凝固浴中で浴抵抗により切断したりして、連続した糸条として紡糸することが困難となる。Kの値が高ければ高いほどドープ中のポリマー分子鎖同士の絡み合いが強固で凝集力が強いため、曳糸性に優れるドープであるが、Kが50000を超えると紡糸口金を通しての安定した吐出が困難となる。具体的には、吐出圧力が不安定な波状となり、吐出されたドープはロープ状にねじれ、太さムラのある不均質な状態となる。このような状態で紡糸した繊維は、紡糸、延伸時に毛羽、断糸が発生しやすく、高度の延伸が困難となり高強度の繊維が得られないばかりか、最終製品の繊維は、繊度ムラが大きく毛羽も多い低品位のものとなる。このため、紡糸性パラメーターKの好ましい範囲としては100〜50000、より好ましくは500〜10000、特に好ましくは1000〜8000の範囲であることが望ましい。
【0016】本発明における紡糸時のドープ温度Tは50〜130℃である。本発明において、紡糸時のドープ温度とは紡糸口金から吐出される際のドープの温度である。紡糸口金中のドープ温度の測定が困難な場合には、紡糸口金パック内部あるいは紡糸口金パック入り口のドープ温度など、紡糸ノズルに最も近い部分のドープ温度を紡糸時のドープ温度とする。Tが50℃未満の場合、溶剤の種類によっては溶剤の塩が析出したり、凝固速度が速くなりすぎて高強度の繊維が得られなくなる場合がある。また、Tが130℃を超える場合、ドープが着色したり、劣化物が生成する場合がある。このため、Tは好ましくは50〜130℃、より好ましくは60〜100℃の範囲で紡糸することが望ましい。
【0017】本発明に用いるポリケトンポリマーの極限粘度としては、1〜20であることが望まれる。なお、極限粘度は本発明実施例に記載した方法により測定される。極限粘度が1未満では分子量が低すぎて高強度のポリケトン繊維を得ることが困難となるばかりか、凝固糸の物性(強度・伸度)が低くなるため紡糸時や乾燥時、延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発する。一方、極限粘度が20を超えるとポリマーの重合に時間、コストがかかるばかりか、均一な溶解が困難となり紡糸性や繊維物性にも悪影響が出る。このため、本発明に用いるポリケトンポリマーの極限粘度としては、好ましくは1〜20、より好ましくは2〜10、特に好ましくは3〜8であることが望ましい。
【0018】本発明に用いるドープ中のポリケトンポリマーの濃度は2〜30重量%である。本発明においてポリマー濃度PCは、以下の式により算出される濃度の100分率である。
PC = ドープ中のポリマー重量/全ドープ重量 × 100(重量%)
PCが30重量%を超えるとポリマーの均一な溶解が困難となり、紡糸性、繊維物性に悪影響を及ぼす。一方、PCが2%未満となると凝固糸が脆い構造となり、凝固時に糸切れが発生したり、延伸時に毛羽が発生しやすくなり、高品位の繊維を得ることが困難となる。このため、ドープ中のポリマー濃度PCとしては2〜30重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%の範囲が望ましい。
【0019】特に、100≦K≦50000の範囲内でポリマーの極限粘度およびポリマー濃度をそれぞれ、2≦[η]≦10、5≦PC≦20となる組み合わせにした場合には、膨潤度が500%以下、伸度が20%以上の緻密な凝固構造を有する高物性で紡糸性、乾燥特性、延伸性に優れ、高強度のポリケトン繊維を製造するのに適した凝固糸が得られるようになり好ましい。なお、本発明において膨潤度とは、凝固糸を構成する非溶剤の液体の重量をポリケトンポリマーの重量で除した値の100分率で表され、本発明実施例記載の方法により測定される。
【0020】本発明に用いる溶剤はハロゲン化亜鉛を15〜80重量%含有する溶液である。溶剤中の金属塩として塩化亜鉛やヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛のみを用いる場合には、溶剤中のハロゲン化亜鉛の濃度が60〜80重量%であることが望ましい。また、必要に応じて塩化亜鉛とヨウ化亜鉛、塩化亜鉛とシュウ化亜鉛等の複数のハロゲン化亜鉛を含有する溶液を溶剤としてもよく、その場合には溶剤中にしめるハロゲン化亜鉛の総重量の割合が60〜80重量%であることが望ましい。溶剤中の金属塩がハロゲン化亜鉛のみのドープでは、紡糸性パラメーターKを100≦K≦30000とした場合、特に、毛羽や糸切れ、繊度ムラ等の不具合なく紡糸を行うことが可能となり、より好ましくは300≦K≦10000、特に好ましくは500≦K≦5000とすることが望ましい。また、本発明の溶剤中には溶解性向上、コストダウンやドープの熱安定性向上などを目的として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物を60重量%以下で含んでいてもよい。これらの非溶剤の金属塩とハロゲン化亜鉛の複合塩を含有するドープは、ハロゲン化亜鉛のみからなるドープに比べてその溶液粘度が低く、エアーギャップ紡糸においては、ドープ中のポリマー濃度の高い領域、あるいは、ポリマーの極限粘度のより高い領域での紡糸が可能となり、より高強度・高弾性率のポリケトン繊維が得られるようになる。さらには、複合塩を含有するドープは、ハロゲン化亜鉛単独のドープに比べて熱安定性にも優れることから、好ましくはアルカリ金属塩を1〜20重量%および/またはアルカリ土類金属塩を3〜55重量%含有する溶剤が好ましい。
【0021】アルカリ金属のハロゲン化物としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等が挙げられ、ドープの安定性、コストの観点から塩化ナトリウム、塩化カリウムが好ましく、塩化ナトリウムが特に好ましい。また、アルカリ土類金属のハロゲン化物としては、塩化カルシウム、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化バリウム、臭化カルシウム、臭化バリウム等が挙げられ、ドープの安定性、コストの観点から塩化カルシウムが好適に用いられる。
【0022】これらハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属および/またはハロゲン化アルカリ土類金属との複合塩溶液の溶剤は、ハロゲン化亜鉛単独の場合に比べて低ポリマー濃度、および、低極限粘度ポリマーの曳糸性が低下するが、高ポリマー濃度、高極限粘度ポリマー領域での紡糸が安定に行えるため、高強度・高弾性率のポリケトン繊維の製造に適している。これら複合塩溶剤を用いる場合、紡糸性パラメーターKを、300≦K≦50000とすることが好ましい。
【0023】特に、塩化亜鉛を55〜75重量%、塩化ナトリウムを3〜15重量%含有する溶液および塩化亜鉛を15〜75重量%、塩化カルシウムを5〜55重量%含有する溶液を溶剤とするドープは、高ポリマー濃度、高極限粘度のポリマーを含有するドープの熱安定性、曳糸性に優れ、高強度・高弾性率のポリケトン繊維を安定して製造する方法として好適に用いられる。この場合、紡糸性パラメーターKを300≦K≦30000の範囲にした場合、毛羽や糸切れ、繊度ムラ等の不具合なく紡糸を行うことが可能となり、より好ましくは500≦K≦10000、特に好ましくは1000≦K≦8000とすることが望ましい。また、本発明に用いるドープは溶解性を阻害しない範囲でポリケトンポリマーおよび溶剤に用いる塩以外に、その他の無機物、有機物を10重量%以下で含んでいてもよい。
【0024】紡糸口金の径およびノズル長、形状については特に制限はなく従来公知のものをそのままあるいは修正して用いることが出来る。一般的な用途に用いる紡口としては例えば、紡口径は0.01〜10mm、ノズル長は紡口径の0.1〜20倍、紡口形状としては丸型、三角型、楕円型、星形、X型やY型などのアルファベット型などが挙げられる。タイヤコードやベルト等の産業用資材用途では、丸形紡口で紡口径0.05〜2mm、ノズル長は紡口径の0.5〜5倍程度のものが好適に用いられる。
【0025】エアーギャップ部分の気体の組成については特に制限はなく、空気、窒素、水蒸気、ヘリウム、アルゴン等どのようなものを用いても良いが、コスト、取り扱い性から空気、窒素、水蒸気が好適に用いられ、安全性の面から空気が特に望ましい。エアーギャップ部の気体の温度については特に制限はなく、必要に応じて加熱、冷却した気体を用いてもよいが、操作性、コストの観点から気体の温度は好ましくは0〜130℃、より好ましくは10〜60℃の範囲であることが望ましい。エアーギャップ部分の長さについても特に制限はないが、紡糸性、操作性の観点から好ましくは0.1〜1000mm、より好ましくは1〜100mm、特に好ましくは2〜50mmとすることが望ましい。
【0026】凝固浴の組成は、特に制限はなくポリケトンポリマーを溶解する能力の小さい、あるいは溶解する能力のない溶液であることが好ましい。凝固性および取り扱い性、回収性、コストの観点から水を50重量%以上含有する水性溶液が好適に用いられ、より好ましくは80重量%以上の水を含有する水溶液であることが望ましい。凝固浴の温度としては、−10〜50℃の範囲が好ましい。また、必要に応じて凝固浴にハロゲン化亜鉛やハロゲン化アルカリ金属、ハロゲン化アルカリ土類金属等の金属塩や硫酸や塩酸等の酸等の化合物を添加してもよい。
【0027】凝固浴で凝固した糸条は引き続きさらに洗浄することが推奨される。洗浄には溶剤に用いた亜鉛塩を溶解する能力を有する液体であればどのようなものを用いてもよいが、安全性、溶液のコスト、回収のコスト等を考慮すると、水系の溶液が好ましい。特に、凝固した糸状物をpH2〜7の酸性水溶液で洗浄処理することで、凝固構造がより緻密で低膨潤度の糸が得られることを見いだした。酸性水溶液の組成は特に限定されず、硫酸、塩酸、リン酸、酢酸等の無機・有機の酸を用いることが出来る。
【0028】亜鉛塩が凝固糸中に残存した場合、凝固糸の力学物性が低下するばかりか、耐熱性の低下が起こり、乾燥や延伸工程での毛羽や糸切れ等の工程上の不具合が起こりやすく十分な延伸が出来ず延伸糸の物性が不十分となる。このため、洗浄工程では最終的に糸に含まれる亜鉛の残量が、好ましくは金属亜鉛として10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは100ppm以下になるまで繰り返し洗浄することが望ましい。また、酸性水溶液で洗浄した場合には、引き続き凝固糸中の酸を洗浄して除去することが望ましい。凝固糸中に酸が残存した場合乾燥・延伸時に分子量低下やポリマーの劣化を引き起こし、単糸切れや毛羽などの工程上の不具合や延伸糸物性が低下する問題が起こる。酸の除去に用いる液体については酸を溶解可能な化合物であれば特に制限はないが、安全性、取り扱い性の観点から20〜80℃の水が好ましい。
【0029】以上のような方法で製造されるポリケトン凝固糸において、膨潤度が500%以下の凝固糸では、電子顕微鏡で観察した際の凝固構造が、繊維状のポリマー骨格が三次元的に結合した密なネットワーク構造となり、強力が高く、伸度の高い力学的に優れた凝固糸となる。該凝固糸は優れた機械的特性を有し、紡糸時および洗浄時、乾燥時に毛羽や断糸等の工程上の不具合が発生しにくくなる。また、含有する非溶剤液体の量が少ないため、乾燥効率が向上し、より短時間、低エネルギーでの乾燥が可能となる。一方、凝固糸の膨潤度が500%を超える場合では、凝固構造は粒子状のポリマー骨格同士が部分的に接合しただけの疎な構造となり、強力が低く、低伸度の力学的に脆い凝固糸となる。このような凝固糸は、紡糸時や洗浄時、あるいは乾燥時に毛羽や断糸等が発生しやすく、高倍率の延伸を行い高強度、高弾性率のポリケトン繊維を得ることが困難となる。また、凝固糸中の非溶剤液体の量が多いため乾燥効率が悪くなって、より長時間、高エネルギーの乾燥が必要となる。凝固糸の膨潤度は低ければ低いほど凝固糸の構造は緻密で力学特性に優れ、紡糸や乾燥・延伸時の工程通過性がよく、また乾燥効率に優れ、さらには延伸した際には高性能の延伸糸が得られるため、好ましくは500%以下、より好ましくは450%以下、特に好ましくは400%以下であることが望ましい。
【0030】一方、低分子量のポリマーを使用した場合やポリケトン以外のポリマーをブレンドした場合などには、凝固糸の構造が膨潤度が500%以下の緻密な構造であっても、力学特性が不十分で紡糸時および乾燥、延伸時に毛羽や断糸が頻発し、高強度、高弾性率のポリケトン繊維を安定して製造することが困難となる。凝固糸の力学特性としては特に伸度が重要であり、該凝固糸の伸度が20%以上である場合に工程通過性のよく高強度、高弾性率化が可能な凝固糸が得られる。凝固糸の伸度は高いほどよく、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは80%以上であることが望ましい。
【0031】このようにして得られた凝固糸を引き続き、乾燥、延伸することで高強度、高弾性率のポリケトン繊維を得ることが可能となる。凝固糸の加熱方法、乾燥条件は特に制限はなく、通常常圧下で凝固糸中に残存する液体の沸点以上の温度に加熱して乾燥される。凝固糸中の液体が水の場合、乾燥温度としては好ましくは120〜260℃、特に好ましくは200〜240℃である。乾燥時には必要に応じて緩和、延伸を同時に行ってもよい。加熱方式、乾燥装置については特に制限はなく従来公知の方法、装置をそのままあるいは修正して適用できる。乾燥効率、糸の均一性の観点から加熱固体に接触するロール接触型、プレート接触型の乾燥機や、加熱気体に接触するトンネル型乾燥機、あるいはこれらの複合型の乾燥機を用いた連続乾燥装置が好適に用いられる。乾燥温度が高い場合には糸の周囲に窒素等の不活性気体を流すことが好ましい。乾燥工程ではポリケトン繊維中の水分率が10重量%以下になるまで行うことが必要である。ポリケトン繊維中の水分率が10重量%を超える場合、延伸時に毛羽や糸切れが発生し高倍率の延伸が出来なくなり、高強度、高弾性率のポリケトン繊維が得られない。乾燥工程終了後の水分率としては好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは3重量%以下となるまで乾燥することが望ましい。
【0032】このようにして得られた未延伸糸を引き続き加熱し、一段あるいは二段以上の多段にて延伸する。加熱延伸方法としては、加熱したロール上やプレート上、あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走行糸にレーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方法等従来公知の装置、方法をそのままあるいは改良して採用することが出来る。伝熱効率、糸温度の均一性の観点から加熱ロール、加熱プレート上での延伸が好ましく、ロールとプレートを併用した延伸法であってもよい。また、ロールやプレートの周囲を密閉し、密閉空間内に加熱気体を充填するとより温度が均一な延伸が可能となり好ましい。好ましい延伸温度範囲としては200〜300℃、さらに好ましくは、融点−50℃〜融点の範囲である。また、多段延伸を行う場合には延伸段数とともに延伸温度が徐々に高くなっていく昇温延伸が好ましい。延伸倍率は好ましくはトータルで5倍以上、より好ましくは10倍以上、特に好ましくは15倍以上の倍率で延伸することが望ましい。
【0033】上述のような方法で得られたポリケトン繊維は、高い強度、弾性率の優れた力学特性と優れた耐熱性を有している。本発明のポリケトン繊維に望まれる物性としては、強度は好ましくは10cN/dtex以上、より好ましくは15cN/dtex以上であることが望ましい。また、弾性率は好ましくは200cN/dtex以上、より好ましくは300cN/dtex以上であることが望ましい。繊維の融点は240℃以上であることが好ましく、より好ましくは250℃以上、特に好ましくは260℃以上であることが望ましい。またポリケトン繊維の単糸繊度およびフィラメント数については使用条件、用途によって変化するため特に制限はないが、好ましくは単糸繊度0.01〜10dtex、フィラメント数2〜10000fの範囲である。また、ポリケトン繊維中には目的に応じて、酸化防止剤、クエンチング剤、ラジカル捕捉剤、重金属不活性化剤、ゲル化抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料等の添加剤、他のポリマー等を含んでいてもよい。
【0034】本発明の紡糸条件で製造したポリケトン繊維は毛羽や糸切れ等の欠陥が少ない高強度、高弾性率の力学物性に優れる繊維であるが、さらに糸長方向の繊度ムラの小さい、均質な繊維である。これは、紡糸口金より吐出されたドープが優れた曳糸性を有しており、高い張力をかけて伸長、曳糸を行うことができてエアーギャップ部や凝固浴中の空気や液体の揺らぎや変動の影響を受けにくいため、と考えられる。ポリケトン繊維の均質度としては、U%で表される糸長方向の繊度ムラが、好ましくは3%以下、より好ましくは0.1〜2、さらに好ましくは0.5〜1.5であることが望ましい。
【0035】本発明の製造法で製造された高強度・高弾性率、高耐熱性で均質なポリケトン繊維は、そのままあるいは仮撚り、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工などの加工を施した加工糸として、さらには織物や編み物、あるいは不織布に加工した繊維製品として用いることが出来る。なお、本発明において繊維製品とは、本発明のポリケトン繊維のみから構成される糸、中空糸、多孔糸、綿、紐、編物、織物、不織布およびこれらを使用した衣類、医療用器具、生活資材、タイヤコード、ベルト、コンクリート補強材料等はもちろんのこと、該ポリケトン繊維を少なくとも一部に使用した繊維製品が含まれる。該繊維製品においては、ナイロン6、ナイロン6・6等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、アラミド繊維、羊毛、ポリアクリロニトリル繊維、木綿、ビスコースレーヨン等のセルロース繊維などの従来公知の繊維と複合して用いてもよい。また、同一種の繊維であっても熱的・機械的特性の異なる繊維、あるいは繊度やフィラメント数の異なる繊維、または長繊維や短繊維、紡績糸などを複合して用いてもよい。以上のような特性を具備するポリケトン繊維はタイヤコードやロープ、エアバッグ、セメント補強材、土木用ネット、漁網、狩猟用網地、釣り糸などの産業用資材や婦人用衣料、スポーツ用衣料、ユニフォーム、作業衣などの衣料用繊維、生活用資材などに幅広く使用することが可能となる。
【0036】
【実施例】本発明を、以下の実施例などにより更に詳しく説明するがそれらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)極限粘度極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
[η]=lim(T−t)/(t・C) [dl/g]
C→0定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0037】(2)紡糸性紡糸時間中の凝固浴中での走行糸を観測し、単糸切れおよび毛羽の発生回数を計測した。単糸切れおよび毛羽の発生頻度をZ(回/時間)として、以下の基準で紡糸性を判定した。
◎: 極めて良好 〜 Z=0○: 良好 〜 0<Z≦1△: まずまず 〜 1<Z≦5×: 不良 〜 5 < Z××: 極めて不良 〜 30分以上連続して巻き取ることが不可能【0038】(3)膨潤度ポリケトン凝固糸を 遠心分離機(KOKUSAN−H−200:国産遠心器社製)を用いて4500rpmにて10分間遠心脱水し、繊維表面やフィラメント間に付着した液体分を取り除く。該凝固糸を105℃で5時間乾燥し繊維内部の液体分を取り除く。乾燥前後の糸の重量をそれぞれMa、Mdとして次式より膨潤度を算出した。
膨潤度 = (Ma−Md)/Md × 100 (%)
【0039】(4)凝固糸の毛羽率紡糸時間中の巻き取り機前での凝固糸の毛羽、単糸切れの数を目視で計測した。巻き取り速度をV(m/分)、計測時間をH(分)、計測中の毛羽数をNとして以下の式より凝固糸100mあたりの毛羽率を求めた。
毛羽率 = N/(V×H) × 100 (個/100m)
(5)強伸度、弾性率JIS−L−1013に準じて測定した。
【0040】(6)融点繊維を長さ5mmにカットしたものを試料とした。パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて以下の条件で測定を行った。
サンプル重量 : 1mg測定温度 : 30℃→300℃昇温速度 : 20℃/分雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分得られる吸発熱曲線において200℃〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とした。
(7)繊度ムラ(U%)
ZellwegerUster(株)社製のUSTER−TESTER3を用いて測定を行った。測定は50m/分の速度にて行い、2分間の平均値を用いた。
【0041】
【実施例1】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度8重量%のドープを得た。このドープを80℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.5cc/分の速度で押し出し、速度3.2m/分で曳きながら凝固糸条とした。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは2613であった。
【0042】引き続き凝固糸条を濃度2重量%、温度25℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄した後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻き取った。3時間の紡糸時間内でエアーギャップ部および凝固浴中での糸切れは1回も発生せず紡糸性は極めて良好であった。巻き取られた凝固糸は膨潤度が435%と低くさらに伸度が129.3%と伸縮性に富む性質であり、凝固糸の断面構造を電子顕微鏡で観察したところ緻密なネットワーク構造を有するものであった。また、凝固糸には毛羽、単糸切れは観察されず、欠陥のない均質な糸であった。この凝固糸を220℃にて乾燥後、240℃で1段目の延伸を行い、引き続き258℃で2段目、268℃で3段目のトータル延伸倍率17倍の延伸を行った。この延伸糸は、強度15.4cN/dtex、弾性率331cN/dtexと高い物性を有しており、U%も1.75と優れた均質性を有していた。紡糸状態および得られた繊維の性質を下記の実施例2〜18と合わせて表1にまとめて示す。
【0043】
【実施例2】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度11.2のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、69℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度3.5重量%のドープを得た。このドープを用いて巻き取り速度を12.8m/分とする以外は実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。紡糸性は極めて良好で2時間の紡糸時間中1回も単糸切れ、毛羽は発生しなかった。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行いトータルで15.5倍の延伸を行った。
【0044】
【実施例3】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度1.8のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度23重量%のドープを得た。このドープを用いて巻き取り速度を1.6m/分とする以外は実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは6843であった。紡糸性はまずまずで1時間の紡糸時間中5回の単糸切れが発生したが、紡口詰まりや断糸等の重大なトラブルは発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度175%、伸度9.5%であった。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0045】
【実施例4】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度2.8のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度18重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは11534であった。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中、3回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度223%、伸度35.9%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0046】
【実施例5】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度3.9のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度12重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは5759であった。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中、毛羽、単糸切れは一回も発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度292%、伸度84.2%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0047】
【実施例6】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度7.8のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度6.5重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは4263であった。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中、毛羽、単糸切れは一回も発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度461%、伸度71.3%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0048】
【実施例7】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度9.8のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度5.5重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは4579であった。紡糸性は良好で3時間の紡糸時間中、凝固浴中で2回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度497%、伸度64.3%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0049】
【実施例8】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度12.7のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度4.5重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは4708であった。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中5回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度551%、伸度41.2%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0050】
【実施例9】実施例1においてドープ中のポリマー濃度を11.0%とする以外は実施例1と同様の条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは12438であった。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度358%、伸度133.4%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0051】
【実施例10】実施例1においてドープ中のポリマー濃度を14.0%とする以外は実施例1と同様の条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは40546であった。紡糸性は良好で2時間の紡糸時間中2回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度251%、伸度189.3%と非常に優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0052】
【実施例11】実施例1において溶剤に塩化亜鉛40重量%/塩化カルシウム30重量%含有する水溶液を用いる他は同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは2613であった。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度419%、伸度138.2%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0053】
【実施例12】実施例1において溶剤に塩化亜鉛75重量%を含有する水溶液を用いる以外は実施例1と同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは2613であった。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中で一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度427%、伸度118.0%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0054】
【実施例13】実施例12においてドープ中のポリマー濃度を5.5重量%とする以外は同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは417であった。紡糸性は良好で2時間の紡糸時間中で1回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度500%、伸度42.2%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0055】
【実施例14】実施例1において紡糸時のドープ温度を60℃とする以外は同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは5338であった。紡糸性は極めて良好で2時間の紡糸時間中で1回も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度441%、伸度92.5%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0056】
【実施例15】実施例1において紡糸時のドープ温度を120℃とする以外は同様の紡糸条件で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは778であった。紡糸性はまずまずで2時間の紡糸時間中で3回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度411%、伸度120.2%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0057】
【実施例16】実施例1においてエアーギャップ部の長さを25mmとする以外は同様の処方で紡糸を行った。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中で1回も単糸切れや毛羽は発生しなかった。得られた凝固糸は膨潤度429%、伸度133.1%と優れていた。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0058】
【実施例17】実施例1においてエアーギャップ部をもうけず、80℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛を含有する35℃の水中に直接ドープを押し出す以外は同様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性はまずまずで3時間の紡糸中に5回の単糸切れが発生したのみであった。得られた凝固糸は膨潤度443%、伸度72.5%であった。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0059】
【実施例18】常法により、1−オキソ−3−メチルトリメチレンユニット3重量%、1−オキソトリメチレンユニットを97重量%からなるエチレン/プロピレン/一酸化炭素ターポリマー(極限粘度4.9)を調製した。このポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度10重量%のドープを得た。紡糸性は極めて良好で3時間の紡糸時間中に一度も単糸切れや毛羽は発生しなかった。このドープを用いて、実施例1と同様にして紡糸行い凝固糸を得た。得られた凝固糸は膨潤度382%、伸度42.5%であった。この凝固糸を乾燥温度200℃、延伸温度を200℃、220℃、230℃の3段でトータル延伸倍率13倍の熱延伸を行い延伸糸を得た。
【0060】
【比較例1】常法により、1−オキソ−3−メチルトリメチレンユニット3重量%、1−オキソトリメチレンユニットを97重量%からなるエチレン/プロピレン/一酸化炭素ターポリマー(極限粘度1.8)を調製した。このポリケトンポリマーを、塩化亜鉛75重量%を含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度7重量%のドープを得た。このドープを用いて実施例1と同様の条件で紡糸を行った。この紡糸条件の紡糸性パラメーターKは20であった。紡糸性は全く不良でエアーギャップ部でドープが油滴状に滴下して凝固浴中で連続した糸条体を得ることが出来なかった。エアーギャップ長を1mm、5mm、25mmと変えた場合でも同様に糸条体を得ることが出来なかった。比較例に用いたドープの紡糸状態および得られた繊維の性質を下記の比較例2〜12と合わせて表2にまとめて示す。
【0061】
【比較例2】比較例1で調製したドープを用いて紡糸温度を60℃とする以外は同様の処方で紡糸を行った。この紡糸条件の紡糸性パラメーターは41であった。比較例1と同様に紡糸性は全く不良でエアーギャップ部および凝固浴入り口で切断が起こり、連続した糸条体を得ることが出来なかった。
【0062】
【比較例3】比較例2においてエアーギャップ部をもうけず、60℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に直接ドープを押し出す以外は同様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性は不良で凝固浴中で凝固体の切断が起こり連続した糸条として曳きとることが不可能であったため、一旦ドープの自重により凝固浴中に糸条体を沈積せしめた後に、速度0.4m/分で長さ10m分だけ凝固体を曳きとった。この凝固糸は膨潤度482%、伸度1.8%と極めて脆い糸であったため、乾燥機前で凝固糸の破断が起こり実施例1と同様の条件で乾燥、延伸に供することが出来なかった。
【0063】
【比較例4】比較例1において溶剤の組成を塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%とする以外は同様の条件で紡糸を行った。紡糸性は全く不良で、連続した糸条体を得ることが出来なかった。
【0064】
【比較例5】実施例1において、ドープ中のポリマー濃度を4.0%とする以外は同様にして紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターは88であった。紡糸性は全く不良でエアーギャップ部および凝固浴入り口で糸の切断が起こり、連続した糸条体を得ることが出来なかった。
【0065】
【比較例6】比較例5においてエアーギャップ部をもうけず、80℃に加温した紡口から5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に直接ドープを押し出す以外は同様にして浸漬紡糸を行った。紡糸性は不良で紡糸速度3.2m/分では凝固浴中で凝固体の切断が起こり連続した糸条として曳きとることが不可能であったため、紡糸速度を0.8m/分に下げて凝固体を曳きとった。紡糸性は不良で1時間の紡糸時間中に凝固浴中で12回の単糸切れが発生した。また、得られた凝固糸は膨潤度552%、伸度12.5%と脆い糸であった。この凝固糸を用いて実施例1と同様の処方で乾燥、延伸を行った。
【0066】
【比較例7】実施例1においてドープ中のポリマー濃度を16.0%とする以外は同様にして紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは78002であった。紡糸性は不良で2時間の紡糸時間中に凝固浴中で14回の毛羽、単糸切れが観測された。また、エアーギャップ部を走行する糸条は太細ムラが大きく左右に振動したため、2時間の紡糸中で2回吐出されたドープが紡口に付着して断糸が発生した。得られた凝固糸を実施例1と同様の処方で乾燥、延伸した。
【0067】
【比較例8】実施例8においてドープ中のポリマー濃度を2.0重量%とする以外は同様の条件で紡糸を行った。この条件における紡糸性パラメーターKは89であった。紡糸性は極めて不良でエアーギャップ部および凝固浴入り口で断糸が多発し連続した糸条体として曳きとることが不可能であった。
【0068】
【比較例9】実施例7においてドープ中のポリマー濃度を9.0重量%とする以外は同様の条件で紡糸を行った。この条件における紡糸性パラメーターKは51146であった。紡糸性は不良で2時間の紡糸時間中に凝固浴中で13回の毛羽、単糸切れが観測された。また、エアーギャップ部を走行する糸条は太細ムラが大きく左右に振動し吐出されたドープが紡口に付着して断糸が発生した。得られた凝固糸を実施例1と同様の処方で乾燥、延伸した。
【0069】
【比較例10】実施例1において紡糸時のドープ温度を30℃とする以外は同様にして紡糸を行った。紡糸性パラメーターKは18610であった。吐出開始直後から紡口詰まりが発生し正常な吐出が不能となり紡糸することが出来なかった。
【0070】
【比較例11】実施例1において紡糸時のドープ温度を150℃とする以外は同様にして紡糸を行った。紡糸性パラメーターKは1088であった。紡糸開始直後から紡口付近に滲みが発生し、紡口より吐出されたドープが紡口周辺に付着して紡糸不能であった。
【0071】
【比較例12】常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度0.9のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解しポリマー濃度35重量%のドープを得た。このドープを実施例1と同様の温度、処方で紡糸を行った。この紡糸条件における紡糸性パラメーターKは3587であった。紡糸性は不良で紡糸速度3.2m/分では凝固浴中で凝固体の切断が起こり連続した糸条として曳きとることが不可能であったため、一旦ドープの自重により凝固浴中に糸条体を沈積せしめた後に、速度0.2m/分で長さ10mだけ凝固体を曳きとった。この凝固糸は膨潤度154%、伸度0.9%と極めて脆い糸であったため、乾燥機前で凝固糸の破断が起こり実施例1と同様の条件で乾燥、延伸に供することが出来なかった。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

なお、50℃、80℃、130℃における本発明の製造法における適正範囲(100≦K≦50000)を図示すると、夫々図1(50℃)、図2(80℃)、図3(130℃)の斜線部分となる。
【0074】
【発明の効果】本発明のポリマーの極限粘度、ドープ中のポリマー濃度、紡糸温度の組み合わせを適正な範囲内とする紡糸方法によって、優れた機械的・熱的特性および優れた均質性を有するポリケトン繊維を、凝固工程および乾燥工程、延伸工程において紡口詰まり、毛羽や糸切れ等の工程上の不具合なく、安定かつ効率的に製造することが可能となる。この製造方法によって、高強度、高弾性率、高耐熱性の優れた機械的特性、熱的特性を有し、さらには毛羽や単糸切れ等の欠陥が少ない、繊度ムラが小さいという優れた均質性を有する、産業用資材、特にタイヤコードとして有用なポリケトン繊維を安定かつ安価に提供することが可能となる。




 

 


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