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発明の名称 セルロース布帛およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−98466(P2001−98466A)
公開日 平成13年4月10日(2001.4.10)
出願番号 特願平11−277895
出願日 平成11年9月30日(1999.9.30)
代理人 【識別番号】100076587
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 武長
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033 AA02 AB04 AC01 AC15 CA33 CA70 DA02 
発明者 松井 敏彦 / 坂井 雄二
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 樹脂加工されたセルロース布帛であって、AATCC法で測定された布帛pHが6〜8、JIS法で測定された遊離ホルマリン量が75ppm以下であり、かつJIS法で測定された防しわ率が経糸方向で50%以上、緯糸方向で45%以上であることを特徴とするセルロース布帛。
【請求項2】 セルロース布帛にグリオキザール系樹脂加工液を付着させた後、熱処理して樹脂加工を行うセルロース布帛の製造方法において、前記樹脂加工液の下記式で表される揮散指数が0.25以上であり、かつ前記熱処理を150〜190℃の温度で2分間以上行うことを特徴とするセルロース布帛の製造方法。
揮散指数(V)=重量減量率(180℃) −重量減量率(170℃)
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はセルロース布帛およびその製造方法に関し、さらに詳しくは特に生体に優しい布帛特性を有する織物、編物、不織布等の樹脂加工されたセルロース布帛およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】セルロース布帛は、未加工のままでは繊維としての基本性能が低く、展開可能な用途が制約されるため、通常、セルロース布帛には防縮・防皺性や染色堅牢度(湿摩擦、洗濯堅牢度等)などの性能を向上させるための樹脂加工が施されている。しかし、この樹脂加工は、仕上げ加工工程の最終段階で行われるため、加工剤の種類や加工方法によっては、布帛に未反応物が残存したり、副生成物が生成する場合がある。例えば、尿素ホルマリン系樹脂を用いて樹脂加工した場合、臭気や皮膚刺激の原因となる遊離ホルマリンが発生する。この問題に対しては通産省通達により衣料中に含まれるホルマリン量が法的に規制されたため、現在では尿素ホルマリン系樹脂に替わり、遊離ホルマリン発生の少ないグリオキザール系樹脂が使用されるようになっている。
【0003】また尿素ホルマリン系樹脂やグリオキザール系樹脂を用いて樹脂加工を行った場合、一般的にセルロース布帛の布帛pHが5前後になることが知られている。近年、化粧品業界では、生体肌のpHが弱酸性であることから、この「弱酸性」をうたい文句にした洗顔剤やシャンプー等の商品が販売されており、その意味で、布帛pHが5前後であっても問題はなく、布帛pHに関して特に問題視されることは少なかった。しかし、アトピー患者に代表される、特に皮膚の敏感な人が、酸性を示す布帛を肌に直接接触させた場合、肌あれを生じたり、皮膚に対する刺激が生じる可能性があるため、布帛pHは本質的には6〜8のほぼ中性であることが望ましい。
【0004】一方、セルロース布帛は、樹脂加工を施さなければ、布帛pHが酸性になったり、遊離ホルマリンやアミン臭等の異臭が発生したりすることはない。また染め上がり品においても、直接染料染めと反応染料染めで若干異なるものの、染色後に充分ソーピングを行えばほぼ中性に近い布帛pHとなる。このため、樹脂加工した布帛が酸性を示すのは、pH4前後の樹脂加工液に含まれる触媒等が布帛に残存するためと考えられていた。従って、中性を示す樹脂加工された布帛が必要な場合には、仕上げ樹脂加工を行った布帛に、さらに中和・水洗等のソーピング処理を施して布帛pHを中性にする方法が採用されていた。しかし。このような方法では、ソーピング処理時に柔軟剤や撥水剤が洗い落とされてしまうため、風合いが変化(軟化または硬化)したり、防しわ性や撥水性が低下する等の欠点があった。さらに加工工程が長くなるため、経済性が低下するという問題もあった。
【0005】また樹脂加工に用いる樹脂自体の分解により、遊離ホルマリンやアミン臭などの異臭が発生するため、樹脂や触媒の種類、その使用量、樹脂加工条件等によっては、遊離ホルマリンやアミン臭が発生する場合があり、仕上げ樹脂加工の段階で、生体に優しい、布帛pHが中性で、遊離ホルマリン発生の少ない、しかも、高い防しわ率を維持したセルロース布帛を得ることは困難と考えられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、仕上げ樹脂加工を行った布帛に、さらに中和、水洗等のソーピング処理を施すことなしに、従来の仕上げ樹脂加工工程のみで、布帛pHがほぼ中性で、遊離ホルマリン発生量が少なく、しかも高い防しわ性が付与された、特に生体に優しい樹脂加工されたセルロース布帛およびその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題に鑑み、「樹脂加工された布帛pHが、何故、酸性サイドに傾くのか」について実験を積み重ねながら検証した結果、i)布帛に付着した樹脂加工液に含まれる触媒(またはその水和物)がキュア時に分解して酸を生成する、ii) 布帛pHをほぼ中性に維持するには上記キュア時に高い揮発性を有する酸を生成する触媒を選定すればよいが、このような触媒を選定しても樹脂の種類によっては生成する酸の揮散性が低下する場合があるという知見を得、この知見に基づき、グリオキザール系樹脂と触媒を含む樹脂加工液の揮散指数を特定し、かつ、キュア時に生成する酸が充分に揮散することができるキュア条件を特定することにより、ソーピング処理を施すことなく布帛pHをほぼ中性に維持できることを見いだし、本発明に到達したものである。すなわち、本願で特許請求される発明は以下のとおりである。
【0008】(1)樹脂加工されたセルロース布帛であって、AATCC法で測定された布帛pHが6〜8、JIS法で測定された遊離ホルマリン量が75ppm以下であり、かつJIS法で測定された防しわ率が経糸方向で50%以上、緯糸方向で45%以上であることを特徴とするセルロース布帛。
(2)セルロース布帛にグリオキザール系樹脂加工液を付着させた後、熱処理して樹脂加工を行うセルロース布帛の製造方法において、前記加工液の下記式で表される揮散指数が0.25以上であり、かつ前記熱処理を150〜190℃の温度で2分間以上行うことを特徴とするセルロース布帛の製造方法。
揮散指数(V)=重量減量率(180℃) −重量減量率(170℃)【0009】
【発明の実施の形態】本発明における樹脂加工されたセルロース布帛は、仕上げ樹脂加工工程を経た後に、中和やソーピング処理を行うことなく後述する方法によって得られ、このセルロース布帛は、ほぼ中性の布帛pHと特定値以下の遊離ホルマリン発生量を有し、かつ高い防しわ性を保有する。
【0010】本発明において、セルロース布帛とは、ビスコース法レーヨン(ポリノジックを含む)、銅アンモニア法レーヨン、溶剤紡糸法レーヨン等の再生セルロース繊維、木綿、麻、亜麻、バクテリアセルロース等の天然セルロース繊維、およびこれらのセルロース系繊維とポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリウレタン、アセテート、ビニロン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、羊毛、絹等の繊維との混繊、混紡、交織、交撚等で混用して得られる織物、編物、不織布等を意味する。これらを構成する繊維は、無撚糸、撚糸いずれでもよい。
【0011】また樹脂加工とは、防縮・防しわ性や湿摩耗堅牢度等を高めるために行われる、樹脂と触媒の混合液を用いて行われる加工をいう。この樹脂加工は、通常、精練、晒し、染色等の工程を経たセルロース布帛に適用される。一般に、精練上がりのセルロース布帛や直接染料染めの布帛の場合、生地pHはほぼ中性を維持するのでそのまま使用することができる。反応染料染めした布帛の場合、重炭酸ソーダ、炭酸ソーダ、苛性ソーダ等の染色助剤を使用するため、布帛のpHはアルカリ側になりやすいので、通常は希酢酸等で中和・水洗処理を行ってから樹脂加工が適用される。なお、複合セルロース布帛については、樹脂加工が必要とされるセルロース混率の布帛に適用される。
【0012】本発明における樹脂加工されたセルロース布帛は、AATCC法により測定した布帛pHが6〜8、好ましくは6.5〜7.5の範囲にある。従来の樹脂加工を施して得られるセルロース布帛の布帛pHは概ね5前後のpH値を示し、このような布帛pHでも特に大きな問題はないが、本質的に中性に近い布帛ほど肌や皮膚に優しいといえる。セルロース布帛の布帛pHは、AATCC−81法、すなわち、布帛中の酸性成分を煮沸させて抽出した溶液のpHをpHメーターで測定される。
【0013】また、本発明における樹脂加工されたセルロース布帛は、JIS−L−1041法(アセチルアセトン法)により測定した遊離ホルマリン量が75ppm以下である。布帛の遊離ホルマリン量が75ppmを超えると人によっては不快感や皮膚刺激性を感じるようになる。通常、このスペックを満たせば、直接的な肌への刺激を考慮したホルマリン規制値(インナー基準)を満たすことができ、また、嗅覚的にも不快感を与えることは少ない。遊離ホルマリン量は限りなく少ないのが好ましく、このような布帛は、ノンホルマリンタイプのグリオキザール系の樹脂加工液を用いることにより達成することができる。なお、遊離ホルマリン量の測定に際してはブランク液でも約5ppmの測定誤差が生じる。
【0014】さらに、本発明における樹脂加工されたセルロース布帛は、JIS−L−1059(1018)法により測定した防しわ率が、経糸方向で50%以上、好ましくは53%以上、緯糸方向で45%以上、好ましくは47%以上である。防しわ率の品質基準は特に公には定まっていないが、実用性能の点からは上記範囲の防しわ率が必要である。たとえば、再生セルロース繊維(キュプラアンモニウムレーヨン、75d/120d)の平織り布帛を用いて後述する本発明における樹脂加工を施した場合には、防しわ率は経糸方向で53〜60%、緯糸方向で47〜55%となる。一方、従来の方法で樹脂加工を施した場合、布帛の防しわ率は本発明の布帛と同等となるが、この布帛の布帛pHの中性化や遊離ホルマリン量の低減を図るために、該布帛に中和・水洗処理を行うと、その防しわ率は経糸方向で43〜45%、緯糸方向で38〜43%のレベルに低下し、実用的な防しわ性が得られない。このような樹脂加工された布帛に、布帛pHの中性化や遊離ホルマリン量のスペックを満足させるために中和・ソーピング処理を行うと防しわ性が低下するのは、加工助剤の脱落はもとより、繊維フィラメント間の交絡点がルーズになったり、フィラメント中の単糸間の固着や角質化が生起するためと推察される。
【0015】上記特性を有する樹脂加工されたセルロース布帛は、セルロース布帛にグリオキザール系樹脂加工液を付着させた後、熱処理して樹脂加工を行う際に、樹脂加工液として、揮散指数(V)〔=重量減量率(180℃) −重量減量率(170℃) 〕が0.25以上、好ましくは0.3〜0.5の範囲にあるものを用い、かつ熱処理を150〜190℃の温度で2分間以上、好ましくは170〜190℃で2分以上行うことにより得ることができる。
【0016】本発明において、上記樹脂加工に際して、布帛pHの中性化と遊離ホルマリン発生の抑制には、揮散指数が0.25以上である樹脂加工液を選択し、かつ150〜190℃で2分以上の条件で熱処理することが重要である。上記樹脂加工液には後述するようにグリオキザール系樹脂と触媒が含まれるが、該加工液の揮散指数が0.25未満では、熱処理時に生じる酸性成分の揮散が充分に行われず、最終製品としての布帛のpHが酸性サイドになる。また上記熱処理条件とすることにより、該熱処理時に生成する酸性成分を効率よく充分に揮散させることができ、得られる布帛のpHを6〜8のほぼ中性とすることができる。ここでの酸性成分とは、触媒が無機酸、有機酸の場合はそのもの自体であり、無機金属塩の場合はその水和物が熱分解時に生成する酸を意味する。上記樹脂加工液の揮散指数は、樹脂と触媒の組み合わせや樹脂と触媒の使用量によって変わるため、熱処理条件は上記の範囲で布帛のpHが6〜8になるように適宜設定することが好ましい。
【0017】上記揮散指数は、例えばピンテンター(辻井染機工業社製、モデルRT−1A)を用いた樹脂加工時の布帛の重量変化における、ピンテンター設定温度170℃で3分キュアした時の重量減量率(%)と設定温度180℃で3分キュアした時の重量減量率(%)の差で表される尺度であり、式、重量減量率(180℃) −重量減量率(170℃) によって規定される。この場合の各温度における重量減量率の測定にはあらかじめ準備された基準布帛が用いられる。この基準布帛は、グリオキザール系樹脂の見掛け濃度が10重量%、触媒の見掛け濃度が3重量%である樹脂加工液に布帛を30秒間浸漬し、マングルを用いてピックアップ率を90%に調整し、120℃で1.5分間プレキュアした後、20℃、相対湿度65%の雰囲気下に12時間以上放置させて得られる。ここで見掛け濃度とは、樹脂、触媒の有効成分濃度に関係なく、市販されている樹脂、触媒そのものを100%純分として算出した濃度を意味する。
【0018】上記170℃および180℃で3分キュアした時の各基準布帛の重量減量率は、上記基準布帛の布帛重量( W0 ) を測定し、さらにこの基準布帛を170℃で3分間キュアした場合の布帛重量(W170 )および180℃で3分間キュアした場合の布帛重量(W180 )を加工後10分以内に測定し、次式を用いて算出される。
重量減量率(170℃) =(W0 −W170 )/W0重量減量率(180℃) =(W0 −W180 )/W0【0019】本発明において、樹脂加工時の熱処理条件は、熱処理時に生成する酸性成分が充分に揮散して布帛のpH6〜8を実現するために重要である。この酸性成分を揮散させることができるキュア(熱処理)温度および時間は、樹脂と触媒の組合せや樹脂と触媒の使用量で変わるが、上記樹脂加工液の揮散指数を0.25以上とした場合には、150〜190℃の温度範囲で2分以上行うことにより達成することができる。キュア温度が190℃を超えると布帛の生地強度が低下したり、布帛の黄変等の問題を生じる。また150℃未満の場合や150℃以上でも短時間キュア場合には、アミン臭等の異臭発生の問題は少なくなるが、触媒中の酸性成分が充分揮散できず、布帛pHが6未満の酸性側となる。布帛pHが6未満である場合でも、再度適正条件でキュアすれば布帛pHをほぼ中性に修復できるが、あらかじめキュア条件の適正化を図っておくことが好ましい。このキュア時の乾燥機としては、ピンテンター、シュリンクサーファー−テンター、ショートループ−テンター、ローラベーキング、赤外線乾燥機など熱処理が可能な乾燥機であればいずれのタイプを使用してもよい。
【0020】本発明に用いられる樹脂加工液には、上記したようにグリオキザール系樹脂と触媒の混合液が用いられるが、該グリオキザール系樹脂としては、ジアルキルジヒドロキシエチレン尿素系化合物やジメチロールジヒドロキシエチレン尿素化合物がその代表例として挙げられる。メチロール基やヒドロキシル基がアルキル化されたものも本発明の範疇に属する。グリオキザール系樹脂は通常40〜50重量%の有効成分濃度で市販されており、所望の濃度に希釈して使用すればよい。特に生体や環境への優しさを考慮すればノンホルマリン型のグリオキザール樹脂が好ましい。樹脂加工液中の樹脂濃度は所望する性能に合わせて決めればよいが、通常3〜20重量%、好ましくは、5〜15重量%の範囲で使用される。
【0021】また上記触媒としては、熱処理時に触媒が解離または分解して生成する酸性成分が揮散し易い形になるものであれば特に制限はなく、遊離酸、金属塩、アンモニウム塩等いずれのタイプのものでも使用できる。たとえば、代表的な触媒としては、塩酸、硝酸、蟻酸、酢酸、乳酸、酒石酸、蓚酸、クエン酸、マレイン酸、グリコール酸、第二燐酸アンモニウム、ロダンアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、ミョウバン、ホウフッ化亜鉛、ホウフッ化マグネシウム等が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。さらに上記金属塩を生成する原料を直接混合して使用してもよい。本発明では、無機金属塩系や遊離酸系の触媒が特に好適に使用される。無機金属塩系やアンモニウム塩系の場合は、無機酸や有機酸と併用して使用することが望ましい。これらの触媒の使用量は樹脂濃度の約30%の量が好ましい。なお、市販されている触媒の有効成分濃度は通常15〜30重量%であるが、本発明では有効成分濃度に関係なく市販品の触媒そのものを100%純分として触媒の使用量を算出した。また適性な触媒の選定に当たっては、前述したように樹脂加工液の揮散指数が0.25以上になるような系をビーカーテスト等で確認して選択するのが好ましい。
【0022】樹脂加工液には、上記樹脂と触媒の他に各種機能・性能を確保する目的で、本発明の目的に反しない範囲で種々の加工助剤、たとえば、柔軟剤、静電剤、吸水剤、バイアス変形防止剤、撥水剤、蛍光増白剤、安定剤、抗菌剤、吸湿剤、紫外線吸収剤、難燃剤、堅牢度改善剤、香料、光触媒等の機能剤などを併用することができる。また樹脂加工液のpHは、樹脂、触媒、加工助剤の組み合わせで変化するため特に限定されるものではないが、3.5〜5.5の範囲とするのが好ましい。pHが低すぎると処理後の布帛pHが酸性サイドに傾きやすくなったり、布帛の強度が低下する場合がある。また樹脂加工液のpHが6を超えるとアミン臭やニンニク臭等の異臭成分が発生し易くなることが経験的に知られており、これら異臭の発生を抑える点から、樹脂加工液のpHは4前後とするのがより好ましい。
【0023】上記の樹脂加工液を用い、かつ上記熱処理条件でセルロース布帛の樹脂加工が行われるが、通常、上記熱処理(キュア)に先駆けて布帛を乾燥させるためのプレキュア工程が施される。該プレキュア条件は、使用するグリオキザール系樹脂と触媒との組み合わせや組成および樹脂加工時に使用する乾燥機の種類によって変化するので一義的に決めることはできないが、通常、プレキュア温度はプレキュア後の布帛pHが5±1になるように設定するのが好ましい。ここで、プレキュア温度とは乾燥機の設定温度を意味する。またプレキュア後の布帛は、基本的には該布帛に含まれる大半の水分が蒸散した状態にあるのが好ましい。プレキュアに用いる乾燥機としては、プレキュア本来の目的である樹脂架橋反応を生起させずに布帛中の水分のみを蒸散して乾燥できるものであればいずれのタイプを用いてもよい。
【0024】プレキュア温度は上記目的を阻害しない限り、低温であっても高温であってもよい。例えば、100℃以下であっても風量の多い乾燥効率の高い乾燥機を使用したり、150℃以上であっても架橋反応が進まない程度の短時間で乾燥できればよい。経済性、実用性を考慮すれば、概ね105℃以上の温度で行うことが好ましい。また反応性の高い低ホルマリン系のグリオキザール樹脂を用いた場合は、反応性の低いノンホルマリン系のグリオキザール樹脂の場合より、若干プレキュア温度は低めに設定するのが好ましい。プレキュア前の布帛に対する樹脂加工液は、ウエットピックアップ率が40%owf以上、好ましくは40〜150%owfになるようにマングル等で絞り調整するのが好ましい。
【0025】また遊離ホルマリン以外の異臭、たとえば、アミン臭やニンニク臭に対しては、プレキュア時の熱処理条件を制御することでその発生が抑制できる。この作用機構は明確ではないが、キュア時の布帛環境が中性状態にあると樹脂成分自体の分解が進み易くなり、異臭原因物質を生成させるものと考えられる。そのため、プレキュア時に触媒中の酸性成分が殆ど揮散せずに触媒活性を残したままの状態とし、キュア前の布帛環境を酸性サイドに維持するのが好ましい。なお、本発明の方法で得られるセルロース布帛の引裂強度、防縮性、染色堅牢度等の基本繊維性能は、これまでの方法で得られるものと同等のレベルを維持できることは言うまでもない。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、例中の%は、特に限定しないかぎり重量%を意味する。また例中の布帛の評価は下記の方法で行った。
(1) 布帛pH:布帛中の酸性成分をボイル水で抽出するAATCC−81法によって測定し、n=3の平均値を算出し、その値を採用した。
(2) 遊離ホルマリン量:JIS−L−1041法(アセチルアセトン法)に基づき遊離ホルマリン量を比色定量し、n=3の平均値を算出した。
(3) 防しわ率:JIS−L−1059(1018)法でクリスオメーターを用いて測定し、経方向および緯方向のn=10の平均値をそれぞれの防しわ率として採用した。
(4) アミン臭(北川式):試料中のトリメチルアミンを苛性ソーダで抽出後、北川式検知管を利用してトリメチルアミンガスの量(単位ppm)を測定した。
【0027】(5) 簡便法臭気テスト:人による官能評価を行った。密栓付きの300mlの三角フラスコに水1mlと生地約0.5gを入れて60℃の雰囲気下で2時間放置させた後、5人のモニターに生地の臭気を1〜5級の判定で評価して貰い、その平均値を四捨五入して算出した。判定基準は、5級を無臭、4級を僅かに臭うが気にならない、3級を少し臭うが耐え難い臭いではない、2級を強く耐え難い臭いである、1級を悪臭とした。なお、3級以上が合格基準値とされている。
(6) 引裂強度:JISL1018法(ペンジュラム法)、エレメンドルフ引裂試験機を用いて経方向および緯歩行の各3回の平均値で算出した。
(7) 揮散指数(V):まずピンテンター(辻井染機工業社製、モデルRT−1A)を用い、グリオキザール系樹脂の見掛け濃度が10重量%、触媒の見掛け濃度が3重量%である樹脂加工液に布帛を30秒間浸漬し、マングルを用いてピックアップ率を90%に調整し、120℃で1.5分間プレキュアした後、20℃、相対湿度65%の雰囲気下に12時間以上放置させて得た基準布帛の重量W0を測定した。次に、170℃および180℃の各設定温度で3分間キュアした後の布帛重量W170 、W180 を測定し、重量減量率(170℃) を式(W0 −W170 )/W0 により、また重量減量率(180℃) を式(W0 −W180 )/W0 により算出し、揮散指数を式、減量率(180℃) −減量率(170℃) により求めた。
【0028】実施例1および比較例1〜2織物(経糸と緯糸に75dと120dのキュプラアンモニウムレーヨン、旭化成工業社製、登録商標「ベンベルグ」を使用したタフタ)を使用した。また該織物の樹脂加工には、まず生機を連続精練・シリンダー乾燥後、反応染料系でコールドパッドバッチ染色し、中和・水洗・乾燥して得た、染色上がりの布帛を出発布帛として用いた。また、この布帛の樹脂加工は下記の方法で行った。グリオキザール系樹脂にはジメチルジヒドロキシエチレンウレア系樹脂R1 (住友化学工業社製、商品名 Sumitex EX−301) を用い、触媒にはホウフッ化マグネシウム/硫酸マグネシウム系の水溶液C1 (比較例1)と、塩化マグネシウム/酢酸系水溶液C2 (実施例1)を使用した。また加工浴には上記樹脂と触媒の他に、加工助剤として一般的に用いられる撥水剤1.5%、柔軟剤3.5%、強度低下防止剤0.5%を添加したものを使用した。この加工浴の見掛け樹脂濃度、見掛け触媒濃度および揮散指数を表1に示した。上記布帛を上記加工浴に浸漬した後、マングルで絞った。ピックアップ率は実施例1で87%、比較例1で84%であった。樹脂加工において、プレキュアは120℃で1分15秒、キュアは180℃で3分間行った。このときの乾燥機にはピンテンタータイプを使用した。その後、コールドペーパー処理を常温で行った。得られたセルロース布帛の特性を調べ、その結果を表1に示した。
【0029】また比較例1で得られたセルロース布帛に、さらに以下の手順で中和ソーピング処理を施し、布帛(布帛pH5.1)の中性化処理を行った(比較例2)。まず該布帛を0.5g/Lの炭酸水素ナトリウム水溶液の浴(2槽) に通した後、湯洗水槽(5槽) に通過させ、140℃でピンテンター乾燥させた。その後、コールドペーパー処理を常温で行い、中性化した布帛を得た。得られた中性化布帛の特性を調べ、その結果を表1に示した。
【0030】
【表1】

【0031】表1から、比較例1で得られた布帛は、樹脂加工液の揮散指数が0.25以下であり、布帛pHが6以下の酸性を示すが、実施例1で得られた布帛は、揮散指数が0.25以上の樹脂加工液を用いているため、布帛pHが6〜8の範囲のほぼ中性を示すことがわかる。また実施例1および比較例1ではノンホルマリン系の樹脂を使用しているので遊離ホルマリンの発生は殆ど見られなかった。また、防しわ性も実用性能上全く問題のないレベルにあり、さらには臭気上の問題もなかった。また比較例2の結果から、比較例1で得られた酸性を示すの布帛にソーピング処理を施すことにより、布帛pHの中性化できるが、防しわ率が著しく低下することが示される。実施例1と比較例2との防しわ率の比は、経糸方向で1.24倍、緯糸方向で1.28倍であり、実用性能上大きな差が生じた。
【0032】実施例2〜3および比較例3〜4織物(経糸と緯糸に75dと100dのキュプラアンモニウムレーヨンを用いたツイル)を用いた。また該織物の樹脂加工には、まず、生機を連続精練・シリンダー乾燥後、反応染料系でコールドパッドバッチ染色し、中和・水洗・乾燥した染色上がりの布帛を出発布帛として用いた。また、この布帛の樹脂加工は下記の方法で行った。グリオキザール系樹脂にはジメチルジヒドロキシエチレンウレア系樹脂R1 (大日本インキ化学工業社製、商品名ベッカミンNF−3)を用い、触媒には塩化マグネシウム/酢酸系水溶液C2 を使用した。加工浴中の樹脂濃度は11.25%、触媒濃度は3.4%であり、さらに加工助剤として一般的に用いられる撥水剤1.5%、柔軟剤3.5%、強度低下防止剤0.5%、目ずれ防止剤2%を添加した。この加工浴の揮散指数は0.28であった。上記織物を加工浴に10秒間浸漬後マングルで絞った。ピックアップ率は87%であった。プレキュアは120℃で1分15秒行い、この後120℃でホットカレンダーペーパー処理を行った。引き続くキュアは、表2に示す条件で行った。このときの乾燥機にはピンテンタータイプを使用した。得られたセルロース布帛の特性を調べ、その結果を表2に示した。
【0033】
【表2】

表2から、揮散指数が0.25以上でも、キュア時間が短く触媒中の酸性成分が充分揮散しないキュア条件の場合は、比較例3,4に見られるように布帛pHは6以下になるが、実施例2、3に見られるように触媒が充分に揮散できる条件では布帛pHは6以上になり、布帛の中性化が図れる。
【0034】実施例4〜7実施例2において、ジメチルジヒドロキシエチレンウレア系樹脂として、NF−3の代わりに、ユニカ技研社製、商品名ユニレジンNF−168Nを使用し、加工浴の樹脂濃度を12%、触媒濃度を3.6%とし、加工浴の揮散指数が0.32であるものを使用し、さらにピックアップ率を86%とし、キュアを表3に示す条件で行った以外は、実施例2の同様の樹脂加工を行ってセルロース布帛を得た。この布帛の特性を表3に示した。表3から、実施例4と5では、比較例3および4と同一触媒・同一キュア条件であるものの、得られる布帛の特性が大幅に異なることがわかる。このことは使用する樹脂が変わることによって樹脂加工液の揮散指数が変化し、この系のように揮散指数が大きくなった場合は、より広い範囲のキュア条件で本発明におけるセルロース布帛が得られることがわかる。
【0035】
【表3】

【0036】実施例8再生セルロース繊維系撚糸織物〔経糸、緯糸とも銅アンモニウムレーヨン糸(75d/45f 、撚糸数SZ500T/m) からなる平織物〕を精練・乾燥し、液流染色した布帛を用意した。ジメチルジヒドロキシエチレンウレア系樹脂 Sumitex EX−301( 住友化学工業社製、商品名)10.8%および触媒 Sumitex AcceleratorEX−2001(住友化学工業社製、商品名)3.24%を水に溶解して調製した混合樹脂加工液(揮散指数0.33)に、上記布帛を浸漬後、マングルでウエットピックアップ率が95%になるよう絞り、120℃で1分間プレ乾燥させた後、170℃で3分間キュアした。乾燥機にはピンテンターを使用した。得られた布帛の布帛pHは7.1、遊離ホルマリン量は5ppm以下であった。また、防しわ率は経糸方向で50%、緯度方向で46%であった。
【0037】実施例9綿100%ブロード(60番手双糸)を常法で晒しを行ったものをセルロース布帛として用いた。ジメチルジヒドロキシエチレンウレア系樹脂ユニレジンNF−168N(ユニカ技研社製、商品名)12%、触媒 Sumitex Accelerator EX−2001(住友化学工業社製、商品名)3.6%を水に溶解して調製した混合樹脂加工液(揮散指数0.32)に、上記布帛を浸漬後、マングルでウエットピックアップ率が100%になるよう絞り、120℃で1分間プレ乾燥させた後、170℃で3分間キュアした。乾燥機にはピンテンターを使用した。得られた布帛の布帛pHは6.9、遊離ホルマリン量は5ppm以下であった。また、防しわ率は経糸方向で53%、緯度方向で47%であった。
【0038】
【発明の効果】本発明のセルロース布帛およびその製造方法によれば、従来法に較べ、樹脂加工後の中和・ソーピング等の中性化処理を行わずに得ることができるため、工程が簡素でコスト増加を抑制することができ、セルロース布帛の布帛pHが中性で生体への刺激がなく、またアミン臭等の異臭や遊離ホルマリンの発生がなく、安全で環境や生体に優しく、さらに実用的な防しわ性を有する商品を提供することができる。




 

 


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