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発明の名称 発色性の良いポリケトン繊維およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−73225(P2001−73225A)
公開日 平成13年3月21日(2001.3.21)
出願番号 特願平11−241511
出願日 平成11年8月27日(1999.8.27)
代理人 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4L035
【Fターム(参考)】
4J002 CJ001 FD096 GK01 
4J005 AB01 BB02
4L035 AA09 BB03 BB08 BB89 BB91 DD20 EE08 EE20 FF01
発明者 谷口 龍 / 加藤 仁一郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 ポリケトン繊維を構成するポリケトンポリマーが、繰り返し単位の90〜99.9モル%が下記構造式1で表される単位からなり、かつ、構造式2または3で表される繰り返し単位を0.1〜10モル%含有するポリマーであることを特徴とするポリケトン繊維。
【化1】

(ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【請求項2】 ポリケトン繊維を構成するポリケトンポリマーが、繰り返し単位の97〜99.9モル%が構造式1で表される単位であり、かつ、構造式2または3で表される繰り返し単位を0.1〜3モル%含有するポリマーであることを特徴とする請求項1記載のポリケトン繊維。
【請求項3】 ポリケトン繊維の結晶化度が50%以上、結晶配向度が80%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のポリケトン繊維。
【請求項4】 主たる繰り返し単位が構造式1で表される単位であり、かつ、構造式2または3で表される繰り返し単位を0.1〜10モル%含有することを特徴とするポリケトンポリマーが、ハロゲン化亜鉛を10〜70重量%含有する水溶液に溶解していることを特徴とするドープ。
【請求項5】 重合開始時および/または重合途中に下記構造式4または5で表される化合物を第VIII族遷移金属化合物に対して1〜10000倍モル添加することを特徴とするポリケトンの製造法。
【化2】

(ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【請求項6】 ポリケトンポリマーを10〜80重量%の亜鉛塩を含有する水溶液に溶解し、該溶液を紡糸口金から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質的に溶剤を除去した後に、熱延伸をすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン繊維の製造方法。
【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載の繊維を含む繊維製品。
【請求項8】 カチオン染料および/または分散染料により染色されていることを特徴とする請求項1〜3、7のいずれかに記載のポリケトン繊維およびそれを用いた繊維製品
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は強度、伸度等の繊維物性および高温時の繊維物性に優れ、かつ、カチオン染料により鮮明に染色可能であり、さらに溶剤への溶解性、紡糸性、延伸性、後加工性等の生産性、工程通過性に優れるポリケトン繊維及び該繊維の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、一酸化炭素とエチレン、プロペンのようなオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒として重合させることにより、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンポリマーが得られることが見い出され(工業材料、12月号、第5ページ、1997年)、以後ポリケトンポリマーの繊維化の検討が行われている。ポリケトン繊維は、従来のポリオレフィン繊維に比べて融点が高く、また高強度・高弾性率の繊維が得られることが知られており、この優れた物性を活かして産業用途および衣料用途への展開が検討されている。
【0003】衣料用途においてポリケトン繊維を使用する場合には、染色を行い任意の色調に繊維を発色せしめる必要がある。これまで、ポリケトン繊維は分散染料によって染色可能であることが知られている(米国特許第5597389号明細書)。しかしながら、これまで開示されているエチレン/一酸化炭素コポリマーやエチレン/プロペン/一酸化炭素ターポリマーからなるポリケトン繊維は、分散染料に染色可能であるものの、その発色レベルは不十分で鮮明な色彩、深い色彩を発現することは困難であった。さらには繊維のガラス転移温度が室温以下であることから、染色堅牢性も不十分であり染色後の還元洗浄により退色が起こったり、洗濯堅牢性、ドライクリーニング堅牢性等の基本的な堅牢特性にも問題があり、実用上衣料用途への展開は極めて困難であった。
【0004】エチレン/一酸化炭素の交互共重合ポリマーは融点が高く、また溶剤に対する溶解性も低いため繊維化が困難な素材である。このため、共重合によりポリケトンポリマーを改質し、溶融紡糸あるいは湿式紡糸を行う方法が検討されてきている(特開平1−124617号公報、特開平2−112413号公報、Polym.Prepr.(Am.Chem.Soc.,Div.Polym.Chem.),36,1,291−292、Prog.Polym.Sci.,Vol.22,8,1547−1605(1997))。しかしながら、これらの文献で開示されている共重合ポリケトン繊維は、いずれも高温下での物性に問題があった。特にこれら共重合ポリケトン繊維では、高温下での弾性率が著しく低下したり、寸法安定性が悪く熱処理よって大きく収縮するため、高温時の加工や使用を受ける産業用資材用途、特にタイヤコード用途では加工温度や使用環境を制限しなければならず、極めて限られた用途にしか使用することが出来なかった。また、これら第三成分を共重合したポリケトンターポリマーは重合速度が遅い、重合収量が少ないなどの問題があった。特に高重合度のポリマーを重合する場合においては、重合時間が著しく長くなる上に得られるポリマーの量も少ないため、工業的な価格でターポリマーを製造することが出来なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、カチオン染料にて染色可能であり、カチオン染料で染色した際に鮮明で深い発色性を示し、また室温下・高温下における強度、弾性率、寸法安定性等の繊維物性にも優れるポリケトン繊維を安価に生産性よく提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリケトンポリマーに特定の構造式で表される構造単位を導入することにより、上記課題が解決し得ることを見出し本発明に至った。即ち本発明は、ポリケトン繊維を構成するポリケトンポリマーが、繰り返し単位の90〜99.9モル%が下記構造式1で表される単位からなり、かつ、下記構造式2または3で表される繰り返し単位を0.1〜10モル%含有するポリマーであることを特徴とするポリケトン繊維、である。
【0007】
【化3】

(ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【0008】本発明の繊維に用いるポリマーの主たる繰り返し単位は構造式1で表されるエチレンと一酸化炭素の交互共重合体である。エチレンと一酸化炭素の共重合ポリマーからなる繊維は強度、接着性、寸法安定性、耐クリープ特性に優れ、また、融点が260℃と高く、高温時でも優れた繊維物性を発現することが出来る。ポリケトンポリマー中のこの繰り返し単位の割合は、繊維の力学物性および耐熱性の点から90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは97モル%以上であることが望ましい。この基本骨格中には部分的にケトン基同士、エチレン同士の単位がつながっていてもよいが、90モル%以上がエチレンと一酸化炭素が交互共重合してなる脂肪族ポリケトンポリマーであることが好ましい。耐光性、耐熱性、高温時の物性低下の観点からエチレンと一酸化炭素が交互共重合した部分の含有率は多ければ多いほどよく、好ましくは97モル%以上、最も好ましくは100モル%である。
【0009】本発明のポリケトン繊維はカチオン染料にて染色可能である。一般にカチオン染料にて染色可能であるためには、繊維中にカルボン酸やスルホン酸、ホスホン酸等のアニオン基を含有させる必要がある。本発明者らは、とりわけスルホン酸基を含有する化合物を共重合したポリケトンが、カチオン染料にて鮮明にかつ堅牢性よく染色可能であることを見出した。すなわち、ポリケトンポリマーを構成する繰り返し単位の0.1〜10モル%は構造式2または3で表される単位である。従来のポリケトン繊維では分散染料がポリケトンポリマーと染料分子との間の分子間力という極めて弱い力で染着しているのに対して、カチオン染料はポリケトン繊維のアニオン基とイオン結合力により染着しているため、非常に強い親和力を有し、得られる染色物は極めて優れた染色堅牢性を示す。また、カチオン染料自体が分散染料に比べて鮮明でメタリック調の美麗な発色性を有するため、従来の分散染料で染色した繊維では到底発現することの出来なかったより深い鮮明な色彩の発現が可能となる。また、驚くべきことにスルホン基を有する本発明の繊維では分散染料により染色した際の染色堅牢性までもが向上する。
【0010】構造式2または3の繰り返し単位は、下記構造式4または5で表される化合物(以下「ビニルスルホン酸化合物」と略することがある)と一酸化炭素との交互共重合によって得ることが出来る。
【化4】

(ここで構造式中のR1 、R2 、R3 は、それぞれ水素原子またはメチル基であり、R’は、炭素数1〜10の有機基、アミド基含有炭素数1〜10の有機基であり、Xは、水素原子、金属元素、アンモニウム、ホスホニウムの群から選ばれる少なくとも1種の基である。)
【0011】ビニルスルホン酸化合物の具体例としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、p―ビニルベンゼンスルホン酸、2―スルホエチルメタアクリレート、2―アクリルアミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2―アクリルアミド―n―ブタンスルホン酸、2―アクリルアミド―n―ヘキサンスルホン酸、2―アクリルアミド―n―オクタンスルホン酸、2―アクリルアミド―n―ドデカンスルホン酸、4―メタアクリルアミドベンゼンスルホン酸およびこれら化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、その他の金属元素塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等が挙げられ、必要に応じてはこれらの化合物を複数共重合してもよい。一酸化炭素との共重合性、重合速度、重合収率の点でアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0012】上記の構造式2または3の繰り返し単位の割合は、多ければ多いほど、カチオン染料への染色性、ポリケトンポリマーの溶剤に対する溶解性が高くなるが、10モル%より多くなるとポリマーの熱安定性が低下したり、強度・弾性率等の繊維物性や高温下での繊維物性、寸法安定性が低下する。一方、共重合割合が0.1モル%より少ない場合はカチオン染料の染色性、ポリケトンの溶剤に対する溶解性向上が不十分である。構造式2または3の繰り返し単位の割合は、好ましくは0.2〜5モル%、さらに好ましくは0.5〜3モル%である。また、必要に応じてプロペン、ブテン、ヘキセン等のオレフィンやメタクリル酸メチル等のアクリル酸誘導体、スチレン、ビニルナフタレン、酢酸ビニル、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン等のエチレン性不飽和炭化水素を有する化合物を共重合してもよい。
【0013】本発明の繊維の融点は、共重合組成によって異なるが、高温下での繊維物性、寸法安定性、耐熱性、熱セット性の観点から230℃以上であることが好ましく、更に好ましくは240℃以上、より好ましくは250℃以上、特に好ましくは260℃以上であることが望ましい。本発明の繊維の結晶化度は50%以上であることが好ましい。繊維の結晶化度が高いほど強度が高くなり、高温下の繊維物性、寸法安定性に優れるため、好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上の結晶化度を有することが望ましい。また、本発明の繊維の結晶配向度は80%以上であることが好ましい。繊維の結晶配向度が高いほど強度、弾性率、高温下の寸法安定性に優れるため、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の結晶配向度を有することが望ましい。
【0014】また、高温時の繊維の弾性率は高いほど材料の加工性、剛性、寸法安定性が高くなるため、この値が高いほど耐熱性の優れた材料といえる。繊維の弾性率は温度により変化し、また使用条件等により求められる性能が異なるため、一律な数値で定義することは困難であるが、産業用資材用途、特にタイヤコード用途への適性を考慮すると、周波数110Hzの動的粘弾性測定における貯蔵弾性率が180℃のときに80g/d以上であることが好ましく、さらには100g/d以上であることが特に好ましい。ここで貯蔵弾性率とは、得られた繊維の繊維軸方向の動的な引っ張りひずみに対する動的な弾性率であり(講座レオロジー(日本レオロジー学会編)p37)、周波数110Hzでの貯蔵弾性率の値は、通常の繊維の引っ張り試験で測定される引っ張り弾性率とはほぼ一致する。この値は後述する本願明細書の実施例の項に示した測定方法により測定される。繊維の乾熱収縮率は低いほど形状変化や残留応力が少なく寸法安定性が優れるため、この値は小さいほど耐熱性に優れた材料といえる。本発明の繊維の乾熱収縮率としては、180℃における乾熱収縮率が4%以下であることが好ましく、さらには3%以下であることがより好ましい。
【0015】また本発明の繊維は、目的に応じて、酸化防止剤、クエンチング剤、ラジカル捕捉剤、重金属不活性化剤、ゲル化抑制剤、艶消し剤、紫外線吸収剤、顔料等の添加剤、ポリケトン以外のポリマー等を含んでいてもよい。添加物質の形状はどのような形態でもよいが、ポリアクリロニトリルやセルロース等の本発明の溶剤に溶解可能な物質を繊維中に分子オーダーで分散させてもよく、また、溶剤に不溶性の物質を粒子状で分散せしめてもよい。粒子状で分散させる場合には、繊維物性、工程通過性の観点から粒子径は0.001〜10μmの範囲にすることが好ましく、粒径0.01〜1μmの範囲であることがさらに好ましい。本発明で使用するポリマーの極限粘度は0.3以上であることが好ましい。これは、極限粘度が0.3未満では分子量が低すぎて繊維化することが困難となるからである。得られる繊維の強度と溶解性、紡糸性のかねあいから、好ましくは0.5〜20、最も好ましくは2〜15の範囲である。
【0016】次に本発明の繊維の製造方法について説明する。本発明に用いるポリケトンの製造方法については、従来公知の方法をそのまま、あるいは修正して用いることが出来る。触媒としては、例えば、パラジウム、ニッケル、コバルト等の第VIII族遷移金属化合物と公知のリン系二座配位子及び、pKaが4以下の酸のアニオン等を用いて、エチレン、一酸化炭素の混合ガスおよびビニルスルホン酸化合物をメタノール等の有機溶剤中で反応させて重合を行うことが出来る。本発明者らは、この時、ビニルスルホン酸化合物を第VIII族遷移金属化合物1モル当たり、1〜10000モル添加すると、重合速度および重合収量が著しく増大し、安定かつ効率的にポリケトンポリマーが得られるようになることを見い出した。
【0017】添加するビニルスルホン酸化合物の量は第VIII族遷移金属化合物に対して1倍モル以下であると重合性向上の効果が少なく、また10000倍モル以上添加すると重合速度が低下したり、得られるポリマーの耐熱性が低下するので、ビニルスルホン酸化合物の添加量としては、好ましくは1〜10000倍モル、より好ましくは10〜5000倍モル、特に好ましくは100〜1000倍モルである。添加するビニルスルホン酸化合物は、重合性および得られるポリマーの純度の観点から、メタノール等の重合に用いる有機溶剤に可溶であることが好ましい。また、重合活性、重合収量の点からビニルスルホン酸化合物はカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0018】第VIII族遷移金属化合物の量はポリケトンポリマー中に1000ppm、好ましくは100ppm以下しか含有されないように仕込みの量を設定する。リン系二座配位子は第VIII族遷移金属化合物1モル当たり0.1〜20モル、好ましくは1〜3モルの範囲で使用することが重合活性の観点から好ましい。また、pKaが4以下の酸は、第VIII族遷移金属化合物1グラム原子当たり0.01〜150当量が好ましく、特に好ましくは1〜50当量の範囲である。また、重合は温度が50〜150℃、圧力が4〜10MPaで、通常10分〜20日間行うことが好ましい。また、重合中の触媒活性を維持するために、また得られたポリケトンの熱安定性を向上させるために、1,4−ベンゾキノン、1,4−ナフトキノン等のキノン類を第VIII族遷移金属化合物1モルに対して、0.1〜100モルの範囲で添加してもよい。
【0019】重合後のポリケトンは、濾過した後、触媒、キノン、未反応モノマー等を洗い流すために、洗浄を行った後、乾燥してポリケトンポリマーを単離する。このようにして得られたポリケトンポリマーを繊維化することで本発明のポリケトン繊維を製造することが出来る。ポリケトン繊維の製造方法としては特に限定されず、従来公知の溶融紡糸法あるいは湿式紡糸法をそのまま、あるいは修正して用いることが出来る。ポリケトンポリマーの熱劣化、溶剤の毒性・爆発性・回収性、工程の安定性、製造コスト、得られる繊維の物性等との兼ね合いからハロゲン化亜鉛水溶液を溶剤とする湿式紡糸方法により製造することが好ましい。
【0020】以下、ハロゲン化亜鉛系溶剤を例に、本発明の繊維の紡糸方法を説明する。ポリケトンポリマーのドープは、前述のポリマーを少なくとも20重量%以上の亜鉛塩を含有する水溶液に溶解し、ポリケトンドープとする。このドープを紡糸口金から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質的に溶剤を除去した後に、延伸をすることによって実用的な繊維物性、染色性を有するポリケトン繊維が製造される。ポリケトンの溶解に用いられる亜鉛塩は、水に可溶であることが必要である。使用可能な亜鉛塩としては、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛等がある。好ましくは、水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛塩である。水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛塩とは、水に亜鉛塩を溶解したとき50重量%以上の濃度の亜鉛塩水溶液が作成可能な亜鉛塩である。亜鉛塩水溶液の濃度は、以下の式で定義される値である。
亜鉛塩水溶液の濃度(重量%)=〔亜鉛塩の重量/(亜鉛塩の重量+水の重量)〕×100水に対して50重量%以上の溶解度を持つ亜鉛塩の水溶液は、ポリケトンポリマーをより高濃度に溶解することが可能となる。このような亜鉛塩としては、例えば、塩化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛、硝酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛等が挙げられる。ポリケトンポリマーの溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、臭化亜鉛、よう化亜鉛がさらに好ましく、塩化亜鉛が最も好ましい。
【0021】亜鉛塩水溶液の濃度は、特に制限はないがポリケトンポリマーに対する溶解性の点からは高い方が好ましい。亜鉛塩水溶液の濃度が低いとポリケトンポリマーの濃度や重合度が制限され、製造コストや繊維の強度に対して不利となる。ただし、亜鉛塩水溶液の濃度が高すぎると水溶液の粘度が高くなり溶解作業に時間がかかったり、結晶の析出が起こるためにポリマー溶液が不均一になる、ドープの移送が困難になる、回収コストが高くなる、などの問題が生じる場合がある。亜鉛水溶液の濃度は、ポリケトンポリマーの組成、亜鉛塩の種類や水溶液の温度により適正範囲が異なる。例えば、ポリマーを溶解するに際しての塩化亜鉛水溶液の好ましい濃度としては、50〜80℃では、40重量%以上、85重量%以下であり、ドープの安定性、紡糸性、回収コスト等の観点から80℃において70重量%以下であることが特に好ましい。
【0022】亜鉛塩の水溶液は、溶解性向上、コストダウンやドープの安定性等を目的として、該亜鉛塩を複数混合したものであってもよい。また、必要に応じては塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等のアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属のハロゲン化物を50重量%以下で含んでいてもよい。また、溶解性を阻害しない範囲で他の無機物、有機物を10重量%以下で含んでいてもよい。亜鉛塩水溶液ドープ中のポリマー濃度は0.005〜70重量%であることが好ましい。尚、ドープとは、ポリマーを溶剤に溶解させた溶液を指す言葉であり、ここではポリケトンポリマーを亜鉛塩水溶液に溶解させた溶液を指すものである。ポリマー濃度が0.005重量%未満では濃度が低すぎて、凝固時に繊維になりにくい欠点を有する他、繊維の製造コストが高くなりすぎる欠点を有する。また、70重量%を越えるともはやポリマーが溶剤に溶解しなくなる。溶解性、紡糸のしやすさ、繊維の製造コストの観点から、好ましくは0.5〜40重量%、更に好ましくは1〜30重量%である。
【0023】ドープの製造方法には特に制限はないが、以下好ましい例を挙げて説明する。ドープは、ポリケトンポリマーを亜鉛塩水溶液に撹拌しながら一気にあるいは数回に分けて添加して製造する。ポリケトンの形態としては、粉、チップ等特に制限はないが、溶解速度、重合過程で生成したゲル化物量が少ないというの観点から粉末が好ましい。脂肪族ポリケトンポリマーを合成すると粉末の形態で得られることが知られている。この粉末は、かさ密度が高く表面が凹凸に富んでいるので、比表面積が大きく溶剤に触れやすいので溶解性に優れている。これに対し、チップ等の一旦溶融させて付形したものは比表面積が少なく溶剤に触れる面積が少なくなっている他、溶融過程でゲル化物が生成する畏れがあるので、重合で得られたポリマーをそのまま粉で用いることが推奨される。
【0024】溶解する時の温度は特に制限はないが、溶解速度、溶媒の安定性の観点から通常は5〜90℃の範囲で溶解することが好ましい。さらに適正の範囲は亜鉛塩の種類やポリマーの分子量及び濃度により適宜決められる。溶解方法としては、撹拌羽根による撹拌、1軸または2軸押出機を用いた撹拌、超音波を用いた撹拌等を用いることができる。また、ポリケトンポリマーが粉状である場合には溶解時に気泡が生成し易いため、真空下あるいは減圧下で溶解することが望ましい。また、得られたドープは溶解完了後すぐに紡糸に用いてもよく、また必要に応じては静置脱泡あるいは熟成させてから紡糸に用いてもよい。こうして得られたポリケトンの溶液はごみ、ゲル化物、未溶解ポリマー、触媒残渣等を除去するために、必要に応じてフィルターを通して紡糸、フィルム化等に供することのできるドープとなる。得られたドープには必要に応じて、酸化防止剤、耐光安定剤、艶消し剤等を添加してもよい。
【0025】こうして得られたポリケトンポリマードープを紡糸口金(紡口)から押し出し、続いて得られた繊維状物から実質的に溶剤を除去してポリケトンポリマー繊維を得ることができる。該繊維状物から溶剤を除去する方法としては、ドープに用いた溶剤以外の溶剤に通して凝固させる方法が用いられる。紡糸口金から押し出されたドープを、ドープに用いた溶剤よりも少なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤(凝固浴)に押し出すことが推奨される。紡口の位置としては、紡口を凝固浴に浸ける方法、すなわち浸漬法であっても、紡口を空気中に置いて紡口から出た繊維状物が空気相を経て凝固浴に入る方法、いわゆるエアギャップ法であってもよい。
【0026】ここで述べるドープに用いた溶剤よりも少なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤とは必ずしもポリマーの貧溶剤である必要はなく、良溶剤であってもドープに用いた溶剤よりもポリマーに対して溶解性が低ければよい。また、必要に応じて多段階で、得られた繊維をよりポリマーに対して溶解性の低い溶剤に通してもよい。このような、ドープに用いた溶剤よりも少なくともポリマーに対して溶解性の低い溶剤としては、ドープに用いる亜鉛塩水溶液よりも濃度の低い亜鉛塩水溶液または水が最も好ましい。すなわち、好ましい具体的な方法としては、紡糸口金を通った繊維状物をより濃度の低い該亜鉛塩水溶液浴を通しながら繊維状物から徐々に該亜鉛塩を抜いて凝固させ、最終的に水に通して完全に凝固させる方法である。もちろん、紡口を通った繊維状物を直接水に通して凝固させてもよい。
【0027】紡口の形状は丸紡口でも、三角やY型、星型などの異形紡口でもどのようなものでも構わないが、光沢、繊維物性、工程通過性、後加工通過性、成形性等の観点から丸紡口が好ましい。また、必要に応じて紡口孔が紡口面よりも凹状にへこんだ紡口や、凸状に突出した突起紡口などを使用してもよい。使用可能な紡口の直径は紡糸速度、繊度等必要に応じてどのような大きさでも構わないが、通常の産業用資材用繊維の場合、丸紡口の場合で0.01mm〜10mm、好ましくは0.03〜5mmの範囲である。繊維状物を凝固浴に通す場合は、一定速度で引き取りながら通すことが好ましい。巻き取り速度としては0.001〜1000m/min、紡糸ドラフトとしては0.01〜1000である。
【0028】紡糸速度や凝固温度によっては、凝固浴中で凝固糸中の亜鉛塩を十分に除去出来ない場合もあるので、必要に応じては凝固浴を出た凝固糸をさらに洗浄してもよい。洗浄には亜鉛塩を溶解する能力を有する液体であればどのようなものを用いてもよいが、安全性、溶液のコスト、回収のコスト等を考慮すると、水系の溶液が好ましく、亜鉛塩の溶解性の観点からは水もしくは硫酸、塩酸、リン酸等の酸性水溶液が特に好ましい。特に本発明のポリケトン繊維はスルホン酸基を有するため、スルホン酸亜鉛塩として亜鉛が残存しやすいため、洗浄を十分に行う必要がある。繊維中に含有される亜鉛量が、0.01〜5000ppm、好ましく0.01〜1000ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの範囲になるように洗浄条件を選定することが望ましい。
【0029】また、本発明の繊維はスルホン酸基を有するため、場合によっては繊維中にスルホン酸としての酸が残存して繊維の耐熱性が低下することがあるため、必要に応じては洗浄後に水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液で洗浄し、酸を中和することが推奨される。こうして凝固された実質的に該亜鉛塩を含まない繊維は、乾燥後延伸あるいは乾燥させながら延伸を行って延伸糸を得ることが出来る。乾燥方法としては、いったん凝固糸を巻き取ったもの(チーズ、あるいはケークやパーン)を乾燥機中で乾燥するバッチ乾燥法であっても、また、凝固糸を紡糸後そのまま連続して、あるいはいったん巻き取った後に、加熱したロールやプレート上あるいは加熱気体中を走行させて乾燥する連続乾燥法であってもよい。糸の均一性や製造コストの観点からは連続乾燥法が好ましい。乾燥温度は特に制約はないが、60℃〜260℃の範囲が好ましい。また、100℃以上の温度で乾燥する際には糸の周囲に不活性気体を流すことが好ましい。また、必要に応じては乾燥しながら同時に緩和や延伸などの処理をしてもよい。
【0030】加熱延伸方法としては、加熱したロールはプレート上あるいは加熱気体中を走行させる方法や、走行糸にレーザーやマイクロ波、遠赤外線を照射する方法等従来公知の装置、方法をそのまま採用することが出来る。延伸倍率は凝固糸の紡糸条件、乾燥条件等により変化するが、好ましくは3倍以上、さらに好ましくは5倍以上、特に好ましくは10倍以上の延伸を行うことが望ましい。延伸段数は何段であってもよく、必要に応じて多段延伸を行ってもよい。多段延伸を行う場合には延伸温度を徐々に高くしていく方法が好ましい。延伸温度は糸を有効に延伸可能であればどのような温度でもよく、好ましい範囲としては80℃〜300℃、さらに好ましくは融点−50℃〜融点の範囲である。ここで延伸温度とは延伸時の糸温度の最高到達温度を意味する。延伸温度が糸の融点より高くなると糸の融解による毛羽や糸切れ、単糸間の融着が起こりやすくなる。延伸時には、必要に応じて糸の周囲に窒素、アルゴン等の不活性気体を流してもよい。
【0031】このようにして得られた繊維は、そのまま繊維製品に適用することが出来るが、必要に応じてカチオン染料により染色することが出来る。カチオン染料による染色方法としては従来公知の方法をそのまま、あるいは手を加えて適用することが出来る。染色条件としては例えば、pH3〜8のカチオン染料および染料分散剤、染色助剤等を混合分散した染色液を含有する容器中に、繊維あるいは布帛を投入し50〜130℃の温度下で10分〜1日間の処理をして染色する。使用可能な染料としては、例えば、メチン系カチオン染料やアゾ系カチオン染料、アントラキノン系カチオン染料等の従来公知の染料をそのまま、あるいはそれらを複合して使用することが出来る。なお、本発明において繊維製品とは、本発明のポリケトン繊維のみから構成される糸、中空糸、多孔糸、綿、紐、編物、織物、不織布およびこれらを使用した衣類、医療用器具、生活資材、タイヤコード、ベルト、コンクリート補強材料等はもちろんのこと、該ポリケトン繊維を少なくとも一部に使用した繊維製品が含まれる。
【0032】本発明のポリケトン繊維は、カチオン染料にて鮮明にかつ堅牢性よく染色することが可能となり、従来のポリケトン繊維では適用出来なかった衣料用途、特に鮮明な発色性、高い染色堅牢性の要求されるアウター用途やインナー用途への展開が可能となる。また、羊毛やアクリル繊維、カチオン染料可染性ポリエステル繊維等のカチオン染料可染性繊維との交織・交編等による複合繊維製品へも適用出来るようになる。さらには、従来のポリケトン繊維に対して分散染料に対する染色堅牢性が向上し、分散染料染色においても実用的な染色堅牢性を有するポリケトン繊維製品およびポリエステル繊維やポリアミド繊維等の分散染料可染性繊維との交織・交編による複合繊維製品も提供出来るようになる。また、エチレン/一酸化炭素の交互共重合ポリマーからなる繊維と同等の繊維物性、耐熱性、高温時の優れた繊維物性、寸法安定性を有し、高温での加工処理や使用を受ける産業用資材にも適しており、さらにはスルホン酸基を有することから様々な素材との接着性(特にゴム接着性)にも優れ、特にタイヤコードに適している。さらには、重合速度が速く短時間に多量のポリマーが得られるために安価なポリケトンポリマーを安定して提供出来る。また、本発明のポリケトンドープは、三次元架橋化や分解等のポリマー変性が少なく、また溶解性に優れ均一でムラがなく、紡糸性、延伸性等の工程通過性に優れ、欠陥の無い繊維が得られる。また、ドープの安全性や溶剤の回収効率が高く、回収コスト、製造コストが安価に出来るとともに、製造設備も簡易で安価なものになるため、本発明の繊維を安価に生産性よく提供することが可能となる。
【0033】
【実施例】本発明を、下記の実施例などにより更に詳しく説明するがそれらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は次の通りである。
(1)重合速度重合で得られたポリマー量をM(g)、重合に要した時間をT(hr)とする。使用した第VIII族遷移金属化合物の重量をm(mg)として、下式により求めた。
重合速度 = M/T/m(2)極限粘度極限粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。

定義式中のt及びTは、純度98%以上のm−クレゾール及び該m−クレゾールに溶解したポリケトンの希釈溶液の60℃での粘度管の流過時間である。またCは、上記溶液100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
【0034】(3)強伸度、弾性率JIS−L−1013に準じて測定した。
(4)高温時の弾性率繊維30mmの両端をたるみがないように結んだものを試料とし、動的粘弾性測定装置(RheoVibronDDV−01FP:ORIENTEC(株)社製)にて以下の条件で測定した。
周波数:110Hz温度:20℃から260℃まで昇温速度5℃/分で昇温した。
測定インターバル:1℃加振振幅:16μm・単一波形プリロード荷重:0.1g/d180℃における貯蔵弾性率(E’)の値を高温時の弾性率として採用した。
(5)乾熱収縮率JIS−L−1013に準じて180℃における値を測定した。
【0035】(6)融点パーキンエルマー社製示差熱測定装置Pyris1を用いて下記条件で測定を行った。
測定温度 : 30℃→300℃昇温速度 : 20℃/分雰囲気 : 窒素、流量=200mL/分得られる吸発熱曲線において200〜300℃の範囲に観測される最大の吸熱ピークのピークトップ温度を融点とした。
(7)結晶化度融点測定で200℃〜300℃の範囲で得られる最大の吸熱ピークの面積から計算される熱量ΔH(J/g)より下記式により算出した。
結晶化度 = ΔH/225 × 100 (%)
【0036】(8)結晶配向度株式会社リガク製イメージングプレートX線回折装置RINT2000を用いて下記の条件で繊維の回折像を取り込んだ。
X線源 : CuKα線出力 : 40KV 152mAカメラ長 : 94.5mm測定時間 : 3分得られた画像の2θ=21°付近に観察される(110)面を円周方向にスキャンして得られる強度分布の半値幅Hから下記式により算出した。
結晶配向度=〔(180−H)/180〕×100 (%)
(9)溶解下限濃度塩化亜鉛濃度C重量%(C=50〜75)の溶剤中に、ポリケトンポリマーをポリマー濃度が5重量%となるように添加し、80℃加熱下3時間攪拌し溶解を行った。ポリマーが完全に溶解した下限の濃度Cmin を溶解下限濃度とした。
【0037】(10)カチオン染料吸尽率試料はポリケトン繊維の一口編地を用い、炭酸ナトリウムを1g/リットル、スコアロールFC−250(花王社製:商品名)を2g/リットルの濃度で含有している温水を用いて、70℃、10分間精練処理し、染液を添加して40℃から95℃まで昇温速度1℃/分で昇温後、さらにそのまま95℃で30分間保持して染色を行った。染料はCATHILON RED GTLH(保土ヶ谷化学社製:商品名)を使用し、pH調製のため酢酸0.5ml/リットル、ぼう硝3g/リットルを添加し、1%owf、浴比1:30で染色後、30分間水洗を行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で乾燥を行った。染料吸尽率は、染料原液をアセトン水溶液(アセトン/水=1/1容量比)により所定の希釈度で希釈調製した溶液の吸光度をA、染色後の染液をアセトン水溶液(アセトン/水=1/1容量比)により所定の希釈度で希釈調製した溶液の吸光度aを分光光度計(日本分光社製、V―530型)から求め、以下の式に代入して求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長である510nmでの値を採用した。
染料吸尽率=〔(A−a)/A〕×100(%)
【0038】(11)発色性上記(10)での染色により得られた布帛を下記の条件で測色を行った。測色は、分光光度計(DCI社製スペクトラフラッシュ500)を用いて、K/Sを評価した。この値は、染色後のサンプル布の分光反射率Rを測定し、以下に示すクベルカ―ムンク(Kubelka―Munk)の式から求め、本発明ではK/Sを有彩色の深色度と定義した。Rは当該染料の最大吸収波長である510nmでの値を採用した。
K/S=(1−R)2 /2Rこの値が大きいほど、深色効果が大きいこと、すなわち、よく発色されていることを示す。
【0039】
【実施例1】2リットルのオートクレーブにメタノール1リットルを加え、更に酢酸パラジウム15mg、ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノプロパン33mg、トリフルオロ酢酸152mgを予めメタノール10ミリリリットル中で撹拌し調整した触媒液を加えた。更に、アリルスルホン酸ナトリウム40gを加えた後、一酸化炭素とエチレンを1:1モル含む混合ガスを充填し、5MPaの圧力を維持するように連続的に、この混合ガスを追加しながら、75℃で3.5時間反応を行った。反応後、圧力を解放し、得られた白色ポリマーを繰り返しメタノールで洗浄後、単離した。収量は、174gであった。得られたポリケトンは、核磁気共鳴スペクトル、イオンクロマト分析、プラズマ発光分析等の分析により、繰り返し単位の98.2モル%がエチレンと一酸化炭素が交互共重合し、1.8モル%がアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素が交互共重合したターポリマーであった。また、その極限粘度は5.5であった。
【0040】得られたターポリマーを、75℃の65重量%の塩化亜鉛水溶液に撹拌しながら加えた。ポリマーは極めて容易に溶解し、溶解時間60分以内でポリマー濃度10重量%のドープを得た。得られたドープを80℃に加温し、20μmのフィルターでろ過した後に、紡口径0.10mm、L/D=1、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に10重量%の塩化亜鉛を含有する水溶液中に吐出量2.5cc/分の速度で押し出し、凝固させた。凝固糸を引き続き濃度2%の硫酸水溶液で洗浄後、さらに2%の炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、3.2m/分の速度で巻き取った。得られた糸状物を200℃にて乾燥して未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を220℃で1段目の延伸を行った後に、引き続き240℃で2段目の延伸を行い延伸糸を得た。得られた繊維は強度伸度等の力学物性および高温下での繊維物性に優れるものであった。また、カチオン染料染色により染色した布帛は鮮明で美麗な色彩を有していた。得られた繊維の性質および布帛の染色性を表1に下記の実施例2〜4および比較例1〜3と共にまとめて示す。
【0041】
【実施例2】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を20gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行った。収量は149g、極限粘度は5.9であった。このポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素の交互共重合成分を0.8モル%含むエチレン/一酸化炭素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであった。このターポリマーを溶剤の塩化亜鉛濃度を68重量%とする以外は実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸を行った。
【0042】
【実施例3】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を100gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行った。収量は175g、極限粘度は4.8であった。このポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素の交互共重合成分を5.3モル%含むエチレン/一酸化炭素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであった。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。
【0043】
【実施例4】重合温度を80℃とし、ベンゾキノンを1.44gを添加する以外は実施例1と同様にして重合を行い、極限粘度3.9のポリマー255gを得た。このポリマーはアリルスルホン酸ナトリウムと一酸化炭素の交互共重合成分を2.6モル%含むエチレン/一酸化炭素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーであった。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。
【0044】
【比較例1】アリルスルホン酸ナトリウムを添加しない以外は実施例1と同様の処方で重合を行い、エチレン/一酸化炭素完全交互共重合コポリマーを得た。収量は85g、極限粘度は6.1であった。このコポリマーを溶剤の塩化亜鉛濃度を70重量%とする以外は実施例1と同様の処方で溶解、紡糸を行ったところ、紡糸性は不良で、凝固浴中で単糸切れが多発し、紡糸開始後30分後にはフィルター詰まりのため、紡糸不能となった。そこで、塩化亜鉛濃度を75重量%として実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。繊維物性はまずまずであったが、カチオン染料染色で全く染色することが出来なかった。
【0045】
【比較例2】アリルスルホン酸ナトリウムの添加量を5gとする以外は実施例1と同様の処方で重合を行い、アリルスルホン酸ナトリウムを0.05モル%含有するエチレン/一酸化炭素/アリルスルホン酸ナトリウムターポリマーを得た。収量は121g、極限粘度は5.8であった。このポリマーを塩化亜鉛濃度を75重量%として実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。得られた繊維の物性はまずまずであったが、カチオン染料によりほとんど染色されず、染色物は薄い褪せた色調であった。
【0046】
【比較例3】実施例1において添加するアリルスルホン酸ナトリウムに代えプロペンを用い、その添加量を100gとする以外は同様の処方で重合を行った。収量は54g、極限粘度は3.7であった。得られたポリマーはプロペンと一酸化炭素の交互共重合成分を4.2モル%含むエチレン/一酸化炭素/プロペンターポリマーであった。このターポリマーを実施例1と同様の処方で溶解、紡糸、延伸、染色を行った。この繊維も比較例1同様にカチオン染料にて染色することが出来なかった。
【0047】
【表1】

【0048】
【発明の効果】本発明は、カチオン染料により鮮明に染色可能であり、優れた発色性を有するポリケトン繊維を提供するものである。さらには、従来の共重合ポリケトン繊維に比べて強度・伸度等の繊維物性、特に寸法安定性等の高温時の繊維物性に優れるポリケトン繊維が得られる。これにより、従来の技術では得られなかった鮮明で深い色彩のポリケトン繊維および繊維製品が得られ、また優れた強度、耐熱性を併せ持つことから、アウター分野やスポーツ用ウェア等の衣料用分野への適用が期待される。また、高温時の弾性率や寸法安定性に優れ、スルホン基を有することによりゴム接着性にも優れるため、産業用資材用途、特にタイヤコードの分野での適用も期待される。また、本発明の繊維に用いられるポリマーは重合速度が非常に速く、重合収量も多いことから従来のポリケトンポリマーでは得ることの出来なかった高効率で安価な重合が可能となる。さらには本発明の繊維に用いるポリケトンポリマーはポリケトンの溶剤に対して優れた溶解性を示し、安定で取り扱い性の良いドープが得られるようになり、高品質のドープを低コストで、かつ生産性よく製造することが可能となる。




 

 


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