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軽量珪酸カルシウム硬化体 - 旭化成工業株式会社
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発明の名称 軽量珪酸カルシウム硬化体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−58888(P2001−58888A)
公開日 平成13年3月6日(2001.3.6)
出願番号 特願平11−232238
出願日 平成11年8月19日(1999.8.19)
代理人
発明者 松井 久仁雄 / 清水 正
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 トバモライトを主成分とし、ミクロフィブリル化セルロースを0.5〜6重量%含有し、嵩比重が0.2以上1.0以下であり、最大径200μmを越える気泡が実質的に無いことを特徴とする珪酸カルシウム硬化体。
【請求項2】 粉末X線回折において観察される、2つのトバモライトの回折線(220)、(222)に挟まれた角度領域における回折強度の最低値Iaに対するトバモライトの(220)回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が3以上であることを特徴とする請求項1に記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項3】 水銀圧入法で測定される細孔のうち、細孔径が1.0μm以上の細孔が1vol%以上15vol%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項4】 窒素吸着法で測定される比表面積が60m2/g以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項5】 粉末X線回折において観察されるトバモライトの回折線のうち、(220)面の回折ピーク強度I(220)に対する(002)面の回折ピーク強度I(002)の比(I(002)/I(220))が、0.25以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項6】 撥水性物質を0.1〜3.0重量%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項7】 補強繊維を0.05〜3.0vol%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
【請求項8】 請求項1〜7のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体と補強鉄筋あるいは補強金網からなることを特徴とする珪酸カルシウム複合体。
【請求項9】 珪酸質原料と石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースと水を主成分とする原料を、混合後のCaO/SiO2のモル比が0.6〜1.2、水/固体原料の重量比が0.8〜5.0となる様に混合して得られたスラリーを型枠に注入して予備硬化して予備硬化体とした後に、オートクレーブ養生して製造されることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
【請求項10】 該ミクロフィブリル化セルロースが石臼型摩砕機を用いて製造されたことを特徴とする請求項9に記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法【請求項11】 請求項9に記載のスラリー、あるいは予備硬化体、あるいは珪酸カルシウム硬化体に撥水性物質を0.1〜3.0重量%添加することを特徴とする請求項9または10に記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
【請求項12】 補強鉄筋あるいは補強金網が配置された型枠にスラリーを注入することを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の珪酸カルシウム複合体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、軽量、高強度かつ耐久性に優れた珪酸カルシウム硬化体および軽量珪酸カルシウム複合体、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、建築物の軽量化への要望から、不燃性かつ軽量な建築材料が求められている。従来、この様な建材として、軽量気泡コンクリート(ALC)および繊維補強珪酸カルシウム板(ケイカル板)が一般的である。軽量気泡コンクリートは、セメント、珪石粉を主原料とし、これに必要により生石灰粉、石膏等を加え、水を添加してスラリー状とし、型枠で成形してオートクレーブ養生して製造される。これら軽量気泡コンクリートは、比重が0.5から0.6付近と軽量であり、さらに結晶性の高いトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2 O)を多量に含むことから長期の耐候性に優れ、建築物の外壁材、床材、内壁材として広く利用されている。
【0003】これら軽量気泡コンクリートの圧縮強度は、40〜50kgf/cm2 の範囲にある。一方面材として重要な物性である曲げ強度は、素材の強度として10kgf/cm2 程度と低い。さらに、軽量気泡コンクリートは直径1mm程度の気泡を多量に含むことから、欠けやすく、表面平滑性および鋸引き性等の加工性に劣るという大きな欠点を有している。軽量気泡コンクリートの強度を改善する方法として、気泡径分布を制御する、独立気泡の比率を高める、トバモライトの結晶性を高める、等の方法が試みられてきたが、十分な効果を上げていない。特許2803561号には、気泡を用いずに軽量化したALCに関する技術が開示され、圧縮強度で200kgf/cm2 を越える建材が報告されている。しかし同法における到達比重は、0.7が限界であり、軽量建材としては不十分なレベルである。
【0004】一方繊維補強珪酸カルシウム板は、結晶質あるいは非晶質珪酸と石灰を反応させオートクレーブにより、補強繊維とともに硬化させたものである。用途は比重0.3以下の保温材、0.3〜0.4の耐火被覆材、0.6〜1.2の耐火建材に大別される。成型法は、比重0.4以下ではフィルタープレス、比重0.6以上では抄造法が用いられる。硬化体は、繊維の他にトバモライト、ゾノトライト、低結晶質珪酸カルシウム水和物(トバモライトゲルあるいはCSHゲル。以後CSHと略記する。)等を主な構成物としている。 繊維補強珪酸カルシウム板は、繊維を5〜20重量%と多量に含むため、曲げ強度、靱性に優れ、高い加工性を持っている。反面、吸水率および乾燥収縮率が大きく、寸法精度に劣る。また、粉落ちが多い、表面硬度が低くキズがつき易いなどの欠点を持っている。さらにCSHを主構成物とするものは耐候性、耐久性に劣っている。従って、外装建材としての用途は制限され、主に内装用建材として用いられている。またこれら繊維補強珪酸カルシウム板は、曲げ強度に比較して圧縮強度が低いため、鉄筋を配して構造部材へ応用することは不可能である。
【0005】たとえば特許2514734号では、トバモライトとCSHと石英と補強繊維からなる珪酸カルシウム成形体に関する技術が開示され、比重0.55で100kgf/cm2 以上の曲げ強度を有する建材が報告されている。しかしながら、同方法では珪酸原料と石灰質原料を50℃以下の温度で接触させることにより、成形体中のトバモライトの含有量を高めようとしているが、たとえば軽量気泡コンクリート中に一般的に見られるトバモライトと比較して著しく結晶性が低く、耐候性、特に空気中の炭酸ガスによる中性化抵抗は不十分であり、外装建材としては使用できない。またトバモライトの結晶性に由来して弾性率が低く構造部材としての利用はできない。これら軽量気泡コンクリート、繊維補強珪酸カルシウム板ともに吸水性が高く、耐凍結融解性あるいは長期の耐久性にも課題がある。また、外壁として利用する際に防水塗装等の工法上の制約が存在するといった問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、嵩比重が0.2以上1.0以下と軽量でありながら、建築材料として好適な高強度、かつ耐炭酸化抵抗に優れた珪酸カルシウム硬化体、さらにそれに加えて著しく吸水性が低く耐候性に優れかつ寸法安定性に優れた珪酸カルシウム硬化体、さらにそれに加えて耐欠け性に優れた珪酸カルシウム硬化体、およびそれに加えて構造部材に要求される設計強度を有した珪酸カルシウム複合体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、硬化体中の微細組織および硬化体を構成する物質の結晶性に着目し、鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、(1) トバモライトを主成分とし、ミクロフィブリル化セルロースを0.5〜6重量%含有し、嵩比重が0.2以上1.0以下であり、最大径200μmを越える気泡が実質的に無いことを特徴とする珪酸カルシウム硬化体。
(2) 粉末X線回折において観察される、2つのトバモライトの回折線(220)、(222)に挟まれた角度領域における回折強度の最低値Iaに対するトバモライトの(220)回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が3以上であることを特徴とする(1)に記載の珪酸カルシウム硬化体。
(3) 水銀圧入法で測定される細孔のうち、細孔径が1.0μm以上の細孔が1vol%以上15vol%以下であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の珪酸カルシウム硬化体。
(4) 窒素吸着法で測定される比表面積が60m2 /g以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
【0008】(5) 粉末X線回折において観察されるトバモライトの回折線のうち、(220)面の回折ピーク強度I(220)に対する(002)面の回折ピーク強度I(002)の比(I(002)/I(220))が、0.25以上であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
(6) 撥水性物質を0.1〜3.0重量%含有することを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
(7) 補強繊維を0.05〜3.0vol%含むことを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体。
(8) (1)〜(7)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体と補強鉄筋あるいは補強金網からなることを特徴とする珪酸カルシウム複合体。
(9) 珪酸質原料と石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースと水を主成分とする原料を、混合後のCaO/SiO2のモル比が0.6〜1.2、水/固体原料の重量比が0.8〜5.0となる様に混合して得られたスラリーを型枠に注入して予備硬化して予備硬化体とした後に、オートクレーブ養生して製造されることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
【0009】(10) 該ミクロフィブリル化セルロースが石臼型摩砕機を用いて製造されたことを特徴とする(9)に記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
(11) (9)に記載のスラリー、あるいは予備硬化体、あるいは珪酸カルシウム硬化体に撥水性物質を0.1〜3.0重量%添加することを特徴とする(9)または(10)に記載の珪酸カルシウム硬化体の製造方法。
(12) 補強鉄筋あるいは補強金網が配置された型枠にスラリーを注入することを特徴とする(9)〜(11)のいずれかに記載の珪酸カルシウム複合体の製造方法である。
【0010】本発明は、結晶性珪酸質原料を主体とする珪酸質原料と石灰質原料をスラリー下に反応させる際に、建築原料としては新規なミクロフィブリル化セルロースを配合することにより、気泡剤を全く用いずとも嵩比重0.2以上1.0以下の珪酸カルシウム硬化体が得られること、さらにこれら珪酸カルシウム硬化体は、高結晶性のトバモライトを多量に含有し、その組織は従来にない構造を有していることを見出したことに基づくものである。さらに高結晶性と粗大気泡が存在しないことに由来して、撥水性物質をスラリー下に添加することにより従来にない撥水性を付与可能であること、繊維補強により衝撃強度を大幅に改善できることを見出したことに基づくものである。さらに本発明は、これら珪酸カルシウム硬化体の高い弾性率に由来して、補強鉄筋あるいは補強金網を埋設することにより、軽量でありながら構造部材として利用できる材料を見出したことに基づくものである。
【0011】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における珪酸カルシウム硬化体とは、珪酸カルシウム化合物を含み、かつ硬化して得られる任意の形状を有する材料の総称であり、一般にコンクリート、硬化モルタル、軽量気泡コンクリート、ケイカル板、珪酸カルシウム板等を指す。また本発明の珪酸カルシウム複合体とは、本発明の珪酸カルシウム硬化体と補強鉄筋あるいは補強金網から成る材料を言う。
【0012】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、主としてトバモライト(5CaO・6SiO2・5H2 O)からなることが大きな特徴である。トバモライトは、軽量気泡コンクリート(ALC)などの組織中に通常見られる代表的なケイ酸カルシウム水和物の1つであり、板状あるいは短冊状の粒子形態をとる。ここでトバモライトが主体であるか否かは、珪酸カルシウム硬化体の破面の走査型電子顕微鏡観察と粉末X線観察を併用することにより判断できる。
【0013】すなわち、本発明において、主としてトバモライトからなりとは、粉末X線回折において、トバモライトの最強線(220)を越える他の回折ピークが存在しないことである。ただしトバモライトとともに、高結晶性の物質(結晶質シリカ等の酸化物、あるいは炭酸化物等)が少量共存する場合、トバモライトが主体であっても、共存する物質の高い結晶性のために、これらの物質の最強線がトバモライトの最強線を越えることがある。この様な場合、走査型電子顕微鏡観察下において、その構造が板状あるいは短冊状の粒子が主体であると判断できれば、例外として、主としてトバモライトからなるとする。
【0014】ここで板状あるいは短冊状の粒子とは、1つの粒子において、互いにほぼ平行な2つの表面間の距離がその粒子の最小長さに相当し、その粒子の最大長さが最小長さ(以後厚みとする)の5倍以上である粒子とする。もちろん、ここで言う最大長さ、厚みは二次元への投影長さである。これらトバモライトの粒子の大きさは特に規定はしないが、最大長さが数μm〜10μmであることが好ましい。通常トバモライトは、CSHと共存することが多い。CSHは様々な粒子形態をとることが知られている。繊維状、粒状、塊状の粒子形態をとる場合に限り、電子顕微鏡下でトバモライト粒子と区別できる。この様なCSHは、トバモライトの基本骨格を崩さない範囲で含有できる。ここで、CSHは後述する様に、建材としての様々な性能を低下させるので、可能な限り含有しないことが好ましい。さらに、少量の軽量骨材、補強繊維、樹脂等もトバモライトの基本骨格を崩さない範囲で含有することができる。
【0015】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、トバモライトの板状あるいは短冊状粒子の間に、これら粒子の最大長さと同等あるいはそれ以下の径を持つ空隙が多量に存在することが好ましい。主としてこれら粒子間空隙により軽量化を実現していることが、本発明の珪酸カルシウム硬化体の特徴の1つであり、主として後に述べるミクロフィブリル化セルロースの添加により実現される。この構造により、本発明の珪酸カルシウム硬化体は、軽量でありながら高強度を発現する。
【0016】本発明において珪酸質原料と石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースを主成分とする原料と水は、混合後のCaO/SiO2のモル比が0.6〜1.2、好ましくは0.6〜1.0、さらに好ましくは0.7〜0.9となる様に混合される。CaO/ SiO2のモル比が0.6未満では養生後に未反応の珪酸質原料が多量に残留し強度低下を招く。1.2より大きくなると、高結晶性のトバモライトが生成しない。
【0017】本発明において、ミクロフィブリル化セルロースとは単に細かいセルロース繊維であるだけでなく、多数の枝分かれ構造を有してフィブリル化したセルロース繊維である。即ち、セルロース繊維に高剪断力、高衝撃力等を作用させ高度に裂解したものである。細かく枝分かれしているため自重の数倍の水を保持できるという大きな特徴を持っている。これらミクロフィブリル化セルロースの繊維径は、0.01〜1μmであり、好ましくは0.03〜0.5μmである。また平均の繊維長は100〜1000μmであり、好ましくは300〜800μmである。本発明に使用されるミクロフィブリル化セルロースは、水保持力が200%以上が好ましく、さらに好ましくは250%以上である。ミクロフィブリル化セルロースのセルロース原料としては、たとえば木材パルプ、リンターパルプ等のバージンパルプ類、あるいは新聞紙などの古紙パルプ類が利用できる。
【0018】一般にミクロフィブリル化セルロースは、工業的には高圧ホモジナイザーを用いてパルプスラリーに著しく高い剪断力を作用させて製造され、生産効率が低く高価なものである。ところが、本発明者らは、石臼型の摩砕機を用いてパルプスラリーを処理すると、短時間で本発明により好適なミクロフィブリル化セルロースを製造できることを見出した。すなわち、石臼型摩砕機はミクロフィブリル化セルロースの製造に好適に用いられる。ここで石臼型摩砕機とは、石臼と同様の機構を持ち、高速で回転する円板状の砥石と固定された同一形状の砥石との間で繊維や鉱物等を摩砕する摩砕機である。
【0019】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、上記ミクロフィブリル化セルロースを0.5〜6.0重量%含有する。本発明においてミクロフィブリル化セルロースは、後に詳述する様に本発明の特異な細孔構造を実現するのに必須の材料である。さらにそれ自身も硬化体の加工性、強度に貢献する。その含有量は上記のように0.5〜6.0重量%であり、好ましくは1.0〜3.0重量%である。0.5重量%未満では、混合の終了したスラリーにおいて固体の沈降が発生し硬化後のひび割れの原因となる。また含有量が6.0重量%を越えると、スラリーに混合した時の粘度上昇が著しく、型枠への注入不良、巻き込み気泡等の原因となる。
【0020】本発明の珪酸カルシウム硬化体の嵩比重は、0.2以上1.0以下の範囲にあり、好ましくは0.3以上0.7未満であり、さらに好ましくは0.35以上0.6以下である。ここで言う嵩比重とは、105℃で24時間乾燥させた際の嵩比重、すなわち絶乾比重を指す。0.2未満では本発明の目的とする高い強度は得られない。本発明の珪酸カルシウム硬化体は、実質的に最大径が200μmを越える気泡が無いことを特徴とする。ここでいう実質的に最大径が200μmを越える気泡が無いこととは、本発明の珪酸カルシウム硬化体を破断させて生じた面上において、10mm四方に最大径が200μmを越える気泡が20個以内であることとする。これら気泡は実体顕微鏡等を用いて容易に観察できる。 従来、たとえば軽量気泡コンクリートでは、直径100μm〜1mmの気泡を導入することにより軽量化を実現しており、本発明の珪酸カルシウム硬化体とは、著しく構造が異なっている。最大径が200μmを越える気泡が実質的に無いことにより、従来の軽量気泡コンクリートでは実現できなかった高い強度が発現する。
【0021】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、粉末X線回折において観察される、2つのトバモライトの回折線(220)、(222)に挟まれた角度領域における回折強度の最低値Iaに対するトバモライトの(220)回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が、3以上であることが好ましい。珪酸カルシウム硬化体中にCSHが多量に存在すると、建材としての様々な性質が低下することは前述した。トバモライトとCSHが共存する硬化体について、粉末X線回折を行うと、トバモライトの(220)回折ピークと(222)回折ピークに挟まれた領域に、ブロードなCSHの回折ピークが認められる。この回折ピークは通常29.1〜29.4°(2θ)付近に出現する。
【0022】またCSHがトバモライトに比べて少ない場合、CSHのピークは、トバモライトの回折線に吸収された形になり、通常CSHの回折強度の測定は不可能となる。ところがこの様な場合、トバモライトの(220)回折ピークと(222)回折ピークに挟まれた領域におけるX線の回折強度は、ベースラインに比べて高い値となることから、CSHの存在の有無を判定することができる。珪酸カルシウム硬化体がCSHを全く含まず、かつ高結晶性のトバモライトを主体とする場合、同領域におけるX線強度の最低値はバックグランド強度と一致する。すなわち2つのトバモライトの回折線、(220)と(222)に挟まれた角度領域における回折強度の最低値Iaに対するトバモライトの(220)面の回折ピーク強度Ibの比(Ib/Ia)が大きい程、珪酸カルシウム硬化体中に含有されるCSHが少ない。
【0023】一方、たとえCSHが存在しない場合でも、トバモライトの結晶性が低い場合には、Ib/Iaは小さくなる。これは(220)と(222)が近接しているために、ピークのすそのが重なり合うためである。トバモライトの結晶性が低下すると、珪酸カルシウム硬化体の強度劣化、および耐候性の低下が起こる。従っていずれの場合でも、Ib/Iaの値は3以上が好ましく、さらに好ましくは3.5以上、それよりさらに好ましくは4以上である。
【0024】市販の軽量気泡コンクリートは、反応性の低い珪石源を用いることにより、トバモライトの結晶性を高め、結果としてIb/Iaの値は高くなっている。この値が高いにも関わらず強度が低い理由は、前述の様に粗大気泡を含有するためである。なお、ここでの強度IaおよびIbは、バックグランド強度を含めた値であり、後述のI(220)とは区別する。Ia、Ibの算出方法の概略を図1(A)、(B)に示す。
【0025】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、水銀圧入法で測定される細孔のうち、その径が1μm以上の細孔が1vol%以上15vol%以下、好ましくはその径が0.5μm以上の細孔が1vol%以上20vol%以下、さらに好ましくはその径が0.1μm以上の細孔が5vol%以上45vol%以下、よりさらに好ましくはその径が0.1μm以上の細孔が5vol%以上40vol%以下である。
【0026】ここで、水銀圧入法とは珪酸カルシウム硬化体内部に水銀を圧入させて、その時の圧力と侵入量の関係から細孔径の分布を測定するものであり、細孔の形状が円筒形であると仮定して計算されたものである。従って、この値は実際の細孔の直径を現すものではなく、構成物質間の間隙の大きさの指標として使用されるものである。同法により測定された細孔のうち、その径が1μm以上の細孔が15vol%を越えると、強度の低下をもたらすだけではなく、毛細管現象による水分の移動が激しくなり、建材としても性能を低下させる。また、現在の製造方法では、下限はその径が1.0μm以上の細孔および0.5μm以上の細孔では1vol%であり、その径が0.1μm以上の細孔で5vol%である。
【0027】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、窒素吸着法(BET法)で測定される比表面積が、好ましくは60m2/g以下である。ここでトバモライトの比表面積は結晶度が高くなるにつれて小さくなり、高結晶性のトバモライトは、40〜50m2/gであることが報告されている(石膏と石灰,No.214 P.129(1988))。一方同文献によると、CSHの比表面積は200〜250m2/gと著しく高い。すなわち比表面積の値は、トバモライトの結晶度とCSHの含有率を併せた指標と考えることができ、トバモライトを含有する建材の性能を表す物性の一つと言える。従って比表面積が60m2/gを越えると、トバモライトの結晶性の低下あるいはCSHの含有量の増加を意味するところとなり、硬化体の強度が低下するとともに、耐候性、寸法安定性に代表される建材としての性能が劣化する。従って本発明の珪酸カルシウム硬化体は、窒素吸着法(BET法)で測定される比表面積が、好ましくは60m2/g以下であり、さらに好ましくは50m2/g以下である。ここで比表面積が著しく低下することは、トバモライト以外の低い比表面積を持つ物質が多量に混入していることを意味することから、比表面積は20m2/g以上が好ましい。
【0028】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、粉末X線回折において観察されるトバモライトの回折線のうち、(220)面の回折ピーク強度I(220)に対する(002)面の回折ピーク強度I(002)の比(I(002)/I(220))が好ましくは0.25以上である。トバモライトの板状あるいは短冊状の粒子は、平面に垂直な方向すなわち厚み方向が結晶のC軸方向と考えられている。従ってI(002)の相対強度が増加することは、C軸方向の相対的な規則性が増すことであり、それに伴い板状結晶の厚みも増加することを意味する。JCPDSカードNo.19−1364によれば、理想的なトバモライト結晶のI(002)/I(220)は0.8と記載されており、この値に近づくことで結晶の厚みが増し、単一結晶の強度が増加する。結果として、これら結晶から構成される硬化体の強度も増加する。さらに結晶の規則性が増加することにより、耐炭酸化等の耐候性に代表される建材としての性能も向上することが期待される。従ってI(002)/I(220)の値は0.25以上が好ましく、さらに好ましくは0.35以上である。これらI(002)、I(220)の算出方法の概略を図2に示す。
【0029】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、撥水性物質を0.1〜3.0重量%含有することが好ましい。ここでいう撥水性物質とは、シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物、脂肪酸、脂肪酸塩、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、酢ビ系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンーブタジエン系樹脂等の樹脂エマルジョン等の撥水性物質であり、このうち少なくとも一種類または二種類以上の混合物を用いることもできる。この中でも特に、シロキサン化合物、すなわち、ポリジメチルシロキサンやポリジメチルシロキサンのメチル基の一部が水素、フェニル基、トリフロロプロピル基等で置換されたシリコーンオイル、アルコキシシラン化合物、すなわち、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン等のアルキルアルコキシシラン化合物を使用することがさらに好ましい。
【0030】本発明の特異な細孔構造に撥水性物質の疎水基の作用が加わって、従来にない撥水性が発現することが見出された。本発明の珪酸カルシウム硬化体は、最大径200μmを越える気泡が実質的になく、トバモライト板状結晶が作る微細な細孔構造を持つことにより、新規な撥水機能の向上となって現れたものと推定される。具体的には、硬化体の表面と水との接触角が90を越える場合、硬化体と水との接触角が同じであってもその細孔に水が入るためには、細孔分布が小さい硬化体の方がより大きな水の浸透圧を必要とすることに基づいている。撥水性物質の含有量は0.1〜3.0重量%が好ましく、さらに好ましくは、0.5〜2重量%である。0.1重量%未満では撥水性が期待できず、3.0重量%より多いと強度の低下が起こる。
【0031】本発明の珪酸カルシウム硬化体は、補強繊維を珪酸カルシウム硬化体全体積中に体積分率0.05〜3.0vol%含有していることが好ましい。ここでいう補強繊維とは、耐アルカリガラス繊維、カーボン繊維、ステンレス繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維等の無機繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維であり、このうち少なくとも一種、あるいは二種類以上の混合物として用いることができる。目的の性能を得るためには、アラミド繊維、耐アルカリガラス繊維、カーボン繊維が好ましく、中でもパラ系アラミド繊維を用いることがさらに好ましい。これら補強繊維の存在により耐欠け性および耐衝撃性が大幅に向上する。従来、たとえば軽量気泡コンクリートでは粗大気泡が存在するため、補強繊維が気泡を貫通することが多く、補強繊維との接着性が低いため耐欠け性、耐衝撃性の向上が期待されなかった。ところが、本発明においては最大径200μmを越える気泡が実質的に無く、より微細空隙が均一に分布しているため、補強繊維との接着性が大幅に向上して、硬化体の耐欠け性および耐衝撃性が大幅に向上されることを見出した。
【0032】補強繊維の繊維長は、1〜20mmを用いることができ、好ましくは3〜10mm、さらに好ましくは5〜8mmである。補強繊維の含有量は、得られる軽量コンクリートの空隙部分も含めた全体積中に占める補強繊維の体積分率Vfが0.05〜3.0%、好ましくは0.1〜2.0%、より好ましくは0.5〜1.0%である。補強繊維の体積分率Vfが0.05未満では十分な補強効果が得られず、一方3%を越えると混練時にファイバーボールができやすくなり、また補強繊維同志が互いに絡まりやすくなり、硬化体中における補強繊維の均一分散が困難となる。
【0033】本発明の珪酸カルシウム複合体は、本発明の珪酸カルシウム硬化体と補強鉄筋あるいは補強金網からなり、通常補強鉄筋あるいは補強金網は硬化体内部に埋設される。ここで補強鉄筋とは、鉄筋を所望の形状に配列し、交叉接点を溶接加工したものを言う。また補強金網とは鉄を網状に加工したもので、たとえばラス網等がその代表的な例である。補強鉄筋もしくは補強金網の形状、寸法、鉄筋の太さ、金網の目の大きさ、さらに硬化体中に埋設する際の位置等、すなわち配筋の仕方については、板の大きさ、用途等によって異なるために一概に限定することはできない。なお、これら補強鉄筋または補強金網は、耐久性上有効な防錆剤処理が施されていることが好ましい。防錆剤としては合成樹脂系等、公知のものを使用できる。この様に鉄筋あるいは金網を内部に配置することにより破壊時の耐力が著しく向上する。特に本発明の珪酸カルシウム硬化体は、高結晶性に由来して圧縮弾性率が従来の材料に比べて格段に高いため、鉄筋あるいは金網による補強が有効になる。さらに前述した均一な微細気泡のために、鉄筋との付着力も従来の軽量気泡コンクリートに比べて大幅に向上することが見出された。
【0034】以下、本発明の珪酸カルシウム硬化体の製造方法について、詳しく説明する。本発明の珪酸カルシウム硬化体は、珪酸質原料と石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースと水を主成分とする原料を、水/固体原料の重量比が0.8〜5.0となる様に混合して得られたスラリーを型枠に注入して予備硬化した後に、オートクレーブ養生して得られる。なお、本発明において予備硬化体は、スラリーを型枠内に注入して硬化させて得られるオートクレーブ養生前のものをいう。
【0035】本発明において、珪酸質原料と石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースを主成分とする原料と水は、上記のように水/固体原料の重量比で0.8〜5.0となる様に、好ましくは1.0〜3.0となる様に混合されるが必要に応じて、この時撥水性物質あるいは補強繊維が混合される。水/固体原料の重量比が0.8未満では硬化体の比重は1.0より大きくなり軽量化が達成されない。5.0を越えると成型性、予備硬化が困難になる。
【0036】ここで珪酸質原料とは、SiO2の含有量が50重量%以上の原料を言う。たとえば、結晶質の珪石、珪砂、石英の含有率の高い岩石等、あるいは珪藻土、シリカヒューム、フライアッシュ、およびカオリン質粘土、モンモリロナイト質粘土等の天然の粘土鉱物あるいはそれらの焼成物等である。これらうちで非晶質珪酸原料とは、珪藻土、シリカヒューム、フライアッシュ等の粉末X線回折において固有の明瞭な回折ピークを示さないものを言う。これらに加えてここでは、カオリン質粘土、モンモリロナイト質粘土、ベントナイト等の天然の粘土鉱物、あるいはそれらの焼成物等は、固有の回折ピークを示すが、その反応性の高さから非晶質珪酸原料に含める。
【0037】一方珪石、珪砂等は、通常粉末X線回折において、α−石英のシャープな回折ピークを呈することが多い。本発明に用いる珪酸質原料は結晶質珪酸質原料を微粉砕したものが好ましく、たとえばブレーン比表面積で測定して3000cm2/g以上の粉末度のものが好ましく、さらに好ましくは7000cm2/g以上である。粉末度があまりに高くなると、原料の管理、ハンドリングの点で好ましくない。従ってブレーン比表面積で測定して、300000cm2/g以下が好ましい。非晶質珪酸原料の使用量は少ないことが望ましいが、本発明においてはすべての珪酸質原料に占める非晶質珪酸原料の割合が20重量%未満の範囲で含有でき、好ましくは15重量%以下である。
【0038】本発明で規定される水/固体比の範囲で、オートクレーブ処理前に予備硬化させるためには、珪酸質原料は高い反応性を持つことが必要である。ところが反応性の高い珪酸質原料、特に前述した非晶質珪酸原料を用いるとCSHが常温下でも容易に生成する。この様に常温下で生成したCSHはその後の高温高圧養生を行ってもトバモライトへの変化は遅く、硬化体中には寸法安定性、耐候性を低下させるCSHが残留する。またトバモライトの結晶性も著しく低下することが知られている。
【0039】一方、高結晶性のトバモライトを生成する結晶性の珪酸質原料を本発明の水/固体比の範囲で使用すると、通常スラリーを静置した段階で固体の沈降すなわち固液分離が発生することが知られている。仮に発生しなくともその後の養生過程で亀裂が生じ、得られる硬化体は著しく強度の低いものとなる。ところが、ミクロフィブリル化セルロースをスラリー中に存在させることにより、固液の分離を押さえる一方、予備硬化を促進させ短時間で脱型可能な強度に達することが、本発明者らにより初めて見出された。またこの様にして得られた硬化体は前述の様な特異な細孔構造を有し、強度、弾性率を大幅に向上させることを見出した。さらに低比重と結晶性を初めて両立させたことにより、従来にない新規な珪酸カルシウム硬化体を得るに至った。
【0040】石灰質原料とは、酸化物換算でCaOを50重量%以上含む原料であり、生石灰あるいは消石灰等を言う。さらにこれに加えてカルシウム成分を主体とするセメント類、すなわち普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、ビーライトセメント、各種アルミナセメント等も石灰質原料とする。本発明において、これら主原料の他に少量であれば、有機あるいは無機軽量骨材、増粘剤、分散剤、炭酸塩化合物、硫酸塩化合物、等を任意のタイミングで混合することができる。また必要に応じて、同様に前述の補強繊維が混合される。
【0041】混合は通常工業的に使用されるミキサーが利用できる。スラリー混合中に珪酸質原料と石灰質原料の反応を促進させておくことは、型枠注入後の予備硬化時間を短縮するために好ましい。たとえば、(1)全原料と水を60℃にて一括混合した後に、60℃で30分以上攪拌を継続した後に型枠注入する方法、(2)珪酸質原料の全量と石灰質原料の一部と水の全量をスラリー下、60℃で混合して1時間経過させた後に、残りの石灰質原料とミクロフィブリル化セルロースを混合してから型枠注入を行う方法、(3)一部の原料と水を混合した後に60℃で3時間予備硬化させ、得られた予備硬化体を解砕して、これと残りの原料をスラリー状態で混合してから型枠注入する方法、等である。
【0042】いずれの方法にせよ混合されたスラリーは、必要に応じて補強鉄筋あるいは補強金網が配置された型枠に流しこまれ成形される。この時、補強鉄筋あるいは補強金網は防錆処理が施されていることが好ましい。型枠に注入されたスラリーは、自己発熱あるいは外部加熱等により、好ましくは40〜100℃の間で1時間以上かけて予備硬化される。得られた予備硬化体は、脱型された後、必要に応じて任意の形状に切断された後に、オートクレーブを用いて高温高圧養生される。オートクレーブの条件としては160℃(ゲージ圧力:約5.3kgf/cm2)以上、220℃(ゲージ圧力:約22.6kgf/cm2)以下が好ましい。得られた硬化体は乾燥され、本発明の珪酸カルシウム硬化体が得られる。
【0043】本発明において、撥水性物質は、型枠に注入する前のスラリー、あるいは予備硬化体、あるいはオートクレーブ後の硬化体、いずれの工程においても添加することが可能である。ここで、スラリーに添加される場合は、そのままで、予備硬化体、最終硬化体に添加する場合は噴霧等の手法とその後の乾燥等の熱処理を併用することが好ましい。硬化体内部までの撥水性を実現するためには、スラリーに添加することが好ましい。
【0044】
【発明の実施の形態】以下に実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明において使用される各種の測定方法は以下の通りである。
[曲げ強度、圧縮強度]JIS R 5201の曲げ強さおよび圧縮強さの測定に準じて測定した。すなわち、曲げ強度測定に用いた供試体寸法は、40mm×40mm×160mmであり、スパン幅は100mmである。圧縮強度は曲げ試験で割れた半分の試料において、加圧面40mm×40mmで最大荷重を測定した。なお試験体の乾燥条件は、20℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽中に硬化体を置き、硬化体の絶乾状態を基準とした含水量が、10±2%になった時点測定試料とした。
[圧縮ヤング率]圧縮強度の測定に用いたものと同一形状の試料の側面中央に、ベース長10mm、抵抗値120オームの歪みゲージ(東京測器研究所製FLA−10−11)をシアノアクリレート系接着剤を用いて貼り付け、圧縮強度の測定と全く同様にして強度試験を行い、歪みゲージから測定される圧縮歪みと応力値のグラフ(SSカーブ)の直線部分の傾きから算出した。
【0045】[衝撃強度]衝撃強度は、東洋精機製作所製、デジタル衝撃試験機(DG−UG)を用いてシャルピー衝撃試験法に基づき測定した。測定条件は、ノッチを付けない10mm×10mm×100mmの供試体をスパン60mmで両端を固定し、ひょう量1J、ハンマーのモーメント0.357Nm、軸心より打撃点までの距離23.0cm、ハンマーの持ち上げ角150度、周期0.969secである。なお試験体の乾燥条件は、20℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽中に硬化体を置き、硬化体の絶乾状態を基準とした含水量が、10±2%になった時点測定試料とした。
[嵩比重]曲げ試験に用いたのと同じ寸法の硬化体を、105℃にて24時間乾燥させた時の重量と寸法から算出した。
[気泡径の観察]オリンパス光学工業(株)製、実体顕微鏡(SZ)を用いて、曲げ強度試験後の試料破断面を40倍の倍率で観察した。
[水銀圧入法による細孔径分布]硬化体を粉砕した後に分級して得た2〜4mm部分を、105℃にて24時間乾燥させて測定用試料とした。これら試料を、Micrometritics社製、Pore Sizer 9320を用いて細孔径分布を測定した。この時、水銀と硬化体の接触角は130度、水銀の表面張力は484dyn/cmとして計算を行った。細孔径が0.1μm以上の細孔の割合は、細孔径が6nmから360μmの範囲で測定された全細孔量を100%とした時の、0.1μm以上の細孔の体積分率である。
【0046】[窒素吸着法による比表面積]水銀圧入法に用いたのと同様の処理を行った試料を、さらに真空下70℃で3時間乾燥させて測定用試料とした。これら試料をQuantachrome社製、Autosorb 1−MPを用いて比表面積の測定を行った。なお測定点は1試料につき6点とした。
[粉末X線回折:Ia,Ibの測定]強度測定に用いた試料を乳鉢中で粉砕した後に、理学電気(株)製RINT2000において、CuのKα線を用いて測定した。測定条件は、加速電圧40kV、加速電流200mA、受光スリット幅0.15mm、走査速度4゜/分、サンプリング0.02゜である。なお回折線はグラファイトのモノクロメーターにより単色化されてカウントされた。2つのトバモライト回折線(220),(222)に挟まれた角度領域におけるバックグランドを含めた回折強度の最低値をIa、およびバックグランドを含めたトバモライト回折線(220)の最大強度をIbとする。なおこれら2つの回折線はそれぞれ29.0゜、30.0゜(2θ)付近に見られる回折線に対応する。図1(A)、(B)に算出方法の模式図を示す。
[粉末X線回折:I(002),I(220)の測定]試料および測定条件は、Ia、Ibの測定と同様に行った。ここでI(002)は、回折角6から9゜(2θ)付近にかけて、バックグランドを直線近似して得られた真の回折強度である。同様にI(220)は、回折角20から40゜(2θ)付近にかけて、バックグランドを直線近似して得られた真の回折強度である。なお、トバモライトの(002)回折線は、7.7゜(2θ)付近に見られる回折線に対応する。図2に算出方法の模式図を示す。
[表面平滑性]表面の状態を目視で観察して評価した。
[水保持率]底部に孔のある遠心分離管に濾紙を敷き、その上に水分を保持した状態のミクロフィブリル化セルロースを入れて3600rpmで10分間脱水した。脱水後の試料を105℃にて2時間乾燥した。回転時の遠心分離管底部の回転半径は、120mmであった。脱水試料の乾燥前重量をW0、乾燥後の重量をW1として、水保持率を次式により算出した。
水保持率(%)=(W0−W1)/W1×100[パネル強度]JIS A 5416 「軽量気泡コンクリートパネル」9.5パネルの曲げ強さ試験、においてL=1800mmとして測定した。
【0047】[一面吸水率]20℃60%RHの条件下で重量変化のない40mm×40mm×160mmの供試体を40mm×40mmの面を下にし、底面から高さ1cmまで20℃の水に浸け、1日後および一週間後の重量を測定し、供試体が吸水した水の量を水に浸ける前の供試体の重量で割った値である。
[寸法安定性]20℃60%RHの条件下で重量変化のない40mm×40mm×160mmの供試体にひずみゲージ(KFW-5-120-C1-11 L5M3R:株式会社共和電業)を貼り、これを40mm×160mmの面を上にして水面下3cmに沈め全面吸水させ、一日後および一週間後のひずみ量を測定し、供試体1m当たりのひずみ量を求めた。
[炭酸化収縮率]長期耐久性の尺度として、促進炭酸化反応時の収縮率を測定した。供試体寸法を、20mm×40mm×160mmとし、相対湿度60%、温度20℃の恒温恒湿槽中にて平衡重量に達するまで乾燥した。これを朝日化学(株)社製、中性化試験槽BEO610W−6型中に置き、14日目と28日目に標点間距離(150mm)の変化を顕微鏡を用いて測定し、式1により収縮率を算出した。中性化試験条件は、相対湿度60%、温度20℃、炭酸ガス濃度10vol%とした。
収縮率(%)=(L0−L1)/L0×100L0:中性化試験開始時の標点間距離L1:中性化試験開始後、14日目あるいは28日目の標点間距離【0048】
【実施例1〜6】表1に示す配合比および表3に示す珪酸原料にて、混合直後のスラリー温度が70℃となるように攪拌機を用いて混合を行った。ここで表1に示す様に一旦一部の粉体と水を70℃攪拌状態のまま、1時間反応させてから残りの粉体あるいは水を混合した。珪酸原料のうち、シリカヒュームはEFACO社製純度98%のシリカヒュームを、珪藻土は325メッシュパス、SiO2含有量79%のものを用いた。表1中のOPCとは普通ポルトランドセメントである。なお、実施例3および5では、分割した原料のうち初期の原料を混合した時点で一旦攪拌を停止して60℃にて予備硬化させ、3時間後に予備硬化体を解砕して、残りの粉体と水を加え再度スラリー化した。いずれの場合も最後にミクロフィブリル化セルロースを所定量添加、攪拌した後に型枠に流し込み、水分の蒸発を抑制した状態にて80℃で3時間かけて予備硬化させた。これらを脱型してオートクレーブにて180℃で4時間、高温高圧養生を行った後に乾燥して珪酸カルシウム硬化体を得た。なおここで使用した結晶質珪酸原料の物性を表3に示した。得られた珪酸カルシウム硬化体の各種物性を表2に、促進炭酸化試験における収縮率を表4に示した。
【0049】これら珪酸カルシウム硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、いずれの硬化体も図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、いずれの硬化体も最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。ここで使用したミクロフィブリル化セルロースは、古紙パルプを離解してスラリー化した後、石臼型摩砕機(増幸産業製マスコロイダーMKZA10−15)を用いて製造した。この時、グラインダー種類はE#46を用いて2回、G#80を用いて2回処理した。この時のミクロフィブリル化セルロースの水保持率は420%であった。ここで使用したミクロフィブリル化セルロースの電子顕微鏡写真を図4に示した。
【0050】
【実施例7】ミクロフィブリル化セルロースを添加する直前のスラリー中へ、ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーンオイル(信越化学製KF96−100CS)を全粉体に対して0.5重量%となるように添加混合した他は、実施例1と全く同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た。得られた珪酸カルシウム硬化体の各種物性を表5に示した。得られた珪酸カルシウム硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0051】
【実施例8】実施例7で用いたシリコーンオイルを全粉体に対して1.0重量%添加した他は、実施例7と全く同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た。得られた珪酸カルシウム硬化体の各種物性を表5に示した。得られた珪酸カルシウム硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0052】
【実施例9】実施例1のミクロフィブリル化セルロースを添加した直後のスラリー中へ、アラミド短繊維(帝人製、Technora320、長さ12mm)を硬化後の空隙を含めた体積に対して0.5vol%添加して、オムニミキサーを用いて3分間混合した。以下実施例1と同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た。各種物性を表6に、圧縮強度および衝撃強度を測定した結果を表7に示した。得られた珪酸カルシウム硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その微構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0053】
【実施例10】実施例5のミクロフィブリル化セルロースを添加した直後のスラリー中へ、アラミド短繊維を添加した他は実施例8と同様にして硬化体を得た。各種物性を表6に、圧縮強度および衝撃強度を測定した結果を表7に示した。得られた珪酸カルシウム硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その微構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0054】
【実施例11】実施例1において、内寸が高さ600mm、長さ2000mm、幅100mmであり、5mm径の鉄筋が配置された型枠中へ混合が終了したスラリーを流し込む他は、実施例1と同様にして鉄筋が埋設された珪酸カルシウム複合体を得た。複合体中の鉄筋位置の概略図を図6に示した。パネル曲げ試験を行った結果を表8に示した。パネル曲げ試験後に亀裂が無い部分から切り出した小片について各種物性を測定した結果を表9に示した。これら小片の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに小片の粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0055】
【実施例12】実施例4の混合が終了したスラリーを使用する他は、実施例11と同様にして珪酸カルシウム複合体を得た。パネル曲げ試験を行った結果を表8に、亀裂の無い部分から切り出した小片について各種物性を測定した結果を表9に示した。これら小片の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、図3(A)に代表されるトバモライトの板状粒子と、少量の繊維状粒子から構成されていた。さらに小片の粉末X線回折の結果、最強線はトバモライトの(220)回折線と同定された。
【0056】
【比較例1】表1に示す配合比および表3に示す珪酸原料を用いて、混合直後のスラリー温度が50℃となる様に混合した。ここに発泡剤として、先に使用した粉体に対して0.06重量%のアルミニウム粉末を添加混合後、直ちに型枠に流し込み、60℃で3時間予備硬化させた。これらを脱型してオートクレーブにて180℃で4時間、高温高圧養生を行った後に乾燥して珪酸カルシウム硬化体(軽量気泡コンクリート)を得た。得られた珪酸カルシウム硬化体の各種物性を表2に、促進炭酸化試験における収縮率を表4に示した。硬化体の破断面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、その構造は、粗大気泡周辺に存在するトバモライトの短冊状粒子と、その他の部位ではトバモライトの板状粒子および残留珪石と珪石周辺の粗大空隙が認められた。さらに粉末X線回折の結果、トバモライトの(220)回折線よりも高いピークとして、石英の(101)回折線のみが観察された。その表面は、軽量気泡コンクリート特有の粗大気泡が多数存在してざらついた表面であった。
【0057】
【比較例2】ミクロフィブリル化セルロースの代わりに石臼型摩砕機にて処理する前の古紙パルプスラリーを添加した他は、実施例1と同様の条件にて予備硬化体を作成した。この時予備硬化体上面に水が浮いた状態となり、予備硬化体の硬度も不十分であった。これらを脱型してオートクレーブにて180℃で4時間、高温高圧養生を行ったがひび割れが多く強度測定に適さないため、各種物性の測定は行わなかった。
【0058】
【比較例3】表1に示す、非晶質珪酸原料(珪藻土:325メッシュパス、SiO2含有量79.0重量%)、消石灰、水を混合後90℃に加熱して3時間反応させた。ここに普通ポルトランドセメント、珪石粉、針葉樹パルプを表1の通り加えた混合した後、型枠に流しこみ、以下実施例1と同様にして珪酸カルシウム硬化体を得た。得られた硬化体の各種物性を表2に示した。この珪酸カルシウム硬化体の破面を走査型電子顕微鏡を用いて観察を行った結果、不定形および短繊維状の粒子から構造が成り、板状結晶はごく希にしか観察されなかった。さらに粉末X線回折の結果、最強線は石英の(101)回折線と同定された。促進炭酸化試験における収縮率を表4に示す。用いた針葉樹パルプの水保持率を測定した結果150%であった。
【0059】
【比較例4】アルミニウム粉末を投入する直前のスラリー中へ実施例7で用いたものと同じシリコンオイルを全粉体に対して0.5重量%となるように添加混合した他は、比較例1と全く同様にして珪酸カルシウム硬化体(軽量気泡コンクリート)を得た。得られた珪酸カルシウム硬化体の各種物性を表5に示した。
【0060】
【比較例5】アルミニウム粉末を投入する直前のスラリー中へ実施例8で用いたものと同じアラミド短繊維を0.5vol%添加した他は、比較例1と全く同様にして珪酸カルシウム硬化体(軽量気泡コンクリート)を得た。各種物性を表6に、圧縮強度および衝撃強度を測定した結果を表7に示した。微構造を観察した結果、アラミド繊維が存在する場所を除いてほぼ比較例1と同様の構造であった。
【0061】
【比較例6】比較例1の混合が終了したスラリーを使用する他は、実施例11と同様にして珪酸カルシウム複合体(鉄筋補強軽量気泡コンクリート)を得た。パネル曲げ試験を行った結果を表8に、亀裂の無い部分から切り出した小片について各種物性を測定した結果を表9に示した。これら小片の破断面の走査型電子顕微鏡観察および粉末X線回折ともに、比較例1とほぼ同様の結果であった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】

【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
【発明の効果】本発明の軽量珪酸カルシウム硬化体は、高強度軽量でありながら高い圧縮強度と高い曲げ強度を有し高弾性で耐火性に優れ、さらには表面平滑で表面美観に優れ加工性にも優れることから、防火軒天、耐火間仕切りボード、クロス仕上げ用壁材、ビル用外壁、住宅床板、耐火野地板、耐火被覆板といった各種外壁材、内壁材、等に好適である。
【0072】さらに本発明の軽量珪酸カルシウム複合体は、軽量でありながら高い初期亀裂強度および破壊強度を有し、さらには表面美観に優れることから、耐火間仕切り壁、住宅用床板、ビル用外壁材等に好適である。




 

 


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