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発明の名称 環状アルコールの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−31607(P2001−31607A)
公開日 平成13年2月6日(2001.2.6)
出願番号 特願平11−206495
出願日 平成11年7月21日(1999.7.21)
代理人
発明者 伴 真和 / 富士本 幸男
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 a)触媒として、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルを含む結晶性メタロシリケートを用い、下記一般式(1)で示される環状オレフィンのオイル相と、水相及び該触媒の共存下に接触水和反応を行う工程、b)a工程で得られた環状アルコールと未反応の環状オレフィンのオイル相、水相及び該触媒の混合物から水相及び該触媒を液液分離により1次分離し、下層部からa工程に復帰する工程、c)b工程の上層部から得られたオイル相中に極微量同伴する該触媒をダイナミック濾過法で2次分離する工程、d)c工程で得られたオイル相から蒸留塔を用い蒸留分離にて環状アルコールを取得し、未反応の環状オレフィンをa工程に復帰する工程、を用いた環状アルコールの製造方法であって、c工程の濾過膜をアルカリ液で洗浄することを特徴とする環状アルコールの製造方法。
s2s-2-tt (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基であり、sは5〜12、tは1〜4の整数である。)
【請求項2】 触媒が、下記一般式(2)で示される結晶性メタロシリケートであることを特徴とする請求項1記載の環状アルコールの製造方法。
pM2/n O・xSiO2・yAl2 3 ・(1−y)Z2 w (2)
(式中、Mはn価の少なくとも1種のカチオンを表わし、Oは酸素、Siはケイ素、Alはアルミニウム、Zはアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のw価のメタルを表わす。また、nは1〜6の整数、wは1〜6の整数であり、0.3≦p≦1.5、1≦x≦1000、0≦y≦1である。)
【請求項3】 結晶性メタロシリケートが、一次粒子径0.5μm以下の結晶性メタロシリケートであることを特徴とする請求項1または2記載の環状アルコールの製造方法。
【請求項4】 結晶性メタロシリケートが、結晶性アルミノシリケートZSM−5であることを特徴とする請求項3に記載の環状アルコールの製造方法。
【請求項5】 濾過膜が、セラミック膜であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
【請求項6】 アルカリ液が水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
【請求項7】 環状アルコールがシクロヘキサノールである請求項1〜6のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶性メタロシリケートを触媒とし、環状オレフィンを含有するオイル相と、水相、及び該触媒の共存下にて、環状オレフィンの接触水和反応を行う際の反応生成物である環状アルコールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、環状オレフィンの水和反応に固体触媒として結晶性メタロシリケートを使用し、環状アルコールを製造する方法については、文献および特許が多数ある。例えば、特公平2−31056号公報には、一次粒子径が0.5μm以下の結晶性アルミノシリケートを触媒として、環状オレフィンを水和させて環状アルコールを製造する方法が提案されている。
【0003】該公報の記載によれば、結晶性アルミノシリケートとしては、一次粒子径0.5μm以下の結晶性アルミノシリケートを触媒とした場合、水に対する環状オレフィンの重量比0.001〜100の範囲に於いては、反応系中ではオイル相と水相の2相が形成され、結晶性アルミノシリケートは水相に存在すると示されている。また、この反応にて生成した環状アルコールは、ほとんどがオイル相に存在し、このオイル相より得られる環状オレフィンと環状アルコールの混合物は、その沸点が大きく異なる為、容易に分離でき、環状アルコールを取得することができると示している。更に、その具体的方法として、2相からなる反応液を連続的に一部取り出し、静置することで層分離を行わしめ、上層よりオイル相を取り出し、このオイル相より蒸留などにより環状アルコールを得る方法が一般的な例として示されている。また、該公報には、結晶性アルミノシリケートは、オイル相には存在しないとされており、オイル相に同伴される結晶性アルミノシリケートに関する問題には触れられていない。
【0004】一方、米国特許第5767328号公報によれば、2相からなる該反応液を静置槽において連続的に層分離を行い、オイル相を分離する方法を工業的に用いた場合、この分離されたオイル相中への極めて微量の結晶性メタロシリケートの同伴が避けられないことを指摘している。この結晶性メタロシリケートを含むオイル相より蒸留分離法により、反応生成した高純度の環状アルコールを得ようとした場合、蒸留の過程において、都合の悪いことに結晶性メタロシリケートは主として環状アルコール中に濃縮される。その際、環状アルコール中の結晶性メタロシリケートは、環状アルコールの脱水反応を引き起こして環状オレフィンを生成し、結果として環状アルコール中の環状オレフィンの濃度を増加させ、環状アルコールの収率低下を起こす事を問題点として挙げている。
【0005】特開平11−012209号公報によると該接触水和反応後のオイル相中に存在する該触媒に対し、塩基性物質を添加することで該触媒の活性を失活させ、結果として環状オレフィン濃度が低い、高純度の環状アルコールが得られると言及している。また米国特許第5767328号公報によると、オイル同伴触媒の分離法として、蒸留分離、或いは濾過分離が有効であり、濾過分離によって該同伴触媒を分離除去しようとした場合、ダイナミック濾過法の一例としてクロスフロー濾過法を用いると、濾過膜表面のケーク層が平行流によるせん断力により薄く保たれる等、長期的に安定した透過液量が得られるので有効であるとしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らも短時間のテスト運転で、このクロスフロー濾過法が該触媒の分離に十分有効であることを確認した。しかしながら、該触媒分離をクロスフロー濾過法により長時間実施したところ、経時的に濾過能力が低下する問題を見いだした。通常、クロスフロー濾過法で濾材表面の詰まり物等が平行流によるせん断力だけで除去できず、経時的に濾過能力が低下する場合は、通常の濾液の流れ方向とは逆向きに、濾過済みの清澄液を圧送する逆洗法を併用する。この逆洗の頻度や逆洗の圧力をアップさせる等、触媒の詰まり除去を強化する対応をとった場合も濾過能力の低下は防止できず、また濾過能力が低下した濾過膜に水及び、水蒸気による洗浄を集中的に実施した場合も、濾過能力の回復率は低かった。よって環状アルコールを製造する際に触媒の分離に用いる濾過設備を濾過能力の低下幅を見込み、濾過設備を大型化し、しかも濾過量の低下した濾過膜を定期的に交換する必要がある為、操作性が悪く、長時間にわたって安定した生産量を確保出来なかった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、接触水和反応後にオイル中に微量同伴する触媒を濾過法で分離除去し、蒸留塔を用い蒸留分離によって長時間、連続して環状アルコールを取得するに際し、濾過膜への詰まり除去には詰まり物を溶解し得る液を用いた洗浄方法が非常に有効で、洗浄を繰り返すことで濾過膜の濾過能力が回復するだけでなく、触媒分離時の濾過能力低下速度を低減出来るという驚くべき事実を見いだした。すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0008】1) a)触媒として、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルを含む結晶性メタロシリケートを用い、下記一般式(1)で示される環状オレフィンのオイル相と、水相及び該触媒の共存下に接触水和反応を行う工程、b)a工程で得られた環状アルコールと未反応の環状オレフィンのオイル相、水相及び該触媒の混合物から水相及び該触媒を液液分離により1次分離し、下層部からa工程に復帰する工程、c)b工程の上層部から得られたオイル相中に極微量同伴する該触媒をダイナミック濾過法で2次分離する工程、d)c工程で得られたオイル相から蒸留塔を用い蒸留分離にて環状アルコールを取得し、未反応の環状オレフィンをa工程に復帰する工程、を用いた環状アルコールの製造方法であって、c工程の濾過膜をアルカリ液で洗浄することを特徴とする環状アルコールの製造方法。
s2s-2-tt (1)
(式中、Rは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基であり、sは5〜12、tは1〜4の整数である。)
【0009】2) 触媒が、下記一般式(2)で示される結晶性メタロシリケートであることを特徴とする前記1)記載の環状アルコールの製造方法。
pM2/n O・xSiO2・yAl2 3 ・(1−y)Z2 w (2)
(式中、Mはn価の少なくとも1種のカチオンを表わし、Oは酸素、Siはケイ素、Alはアルミニウム、Zはアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のw価のメタルを表わす。また、nは1〜6の整数、wは1〜6の整数であり、0.3≦p≦1.5、1≦x≦1000、0≦y≦1である。)
【0010】3) 結晶性メタロシリケートが、一次粒子径0.5μm以下の結晶性メタロシリケートであることを特徴とする前記1)または2)記載の環状アルコールの製造方法。
4) 結晶性メタロシリケートが、結晶性アルミノシリケートZSM−5であることを特徴とする前記3)に記載の環状アルコールの製造方法。
5) 濾過膜が、セラミック膜であることを特徴とする前記1)〜4)のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
6) アルカリ液が水酸化ナトリウム水溶液であることを特徴とする前記1)〜5)のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
7) 環状アルコールがシクロヘキサノールである前記1)〜6)のいずれかに記載の環状アルコールの製造方法。
【0011】以下、本発明につき詳細に説明する。本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、アルミニウム、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた、少なくとも1種のメタルを含む、結晶性メタロシリケートであって、例えば、無水物の酸化物のモル比で表された組成が、前記一般式(2)で示されるものが挙げられる。前記一般式(2)の中で、Mは結晶性メタロシリケート中のカチオンであり、好ましいのはプロトン、周期律表上のIB、IIA,IIB、IIIA、IIIB、IVB、VB、VIB、VIIB、VIII族の金属カチオンであり、さらに好ましいのはプロトンである。また、Zはアルミニウム以外のメタルで、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅の中から選ばれた少なくとも1種のメタルであり、これらは結晶性メタロシリケートの水熱合成時に結晶中に取り込まれ、その後のイオン交換操作においても結晶性メタロシリケート中から出てこないメタルである。これらのメタルの中で特に好ましいのは、ホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄である。
【0012】結晶性メタロシリケート触媒の具体例としては、モルデナイト、ホウジャサイト、クリノプチロライト、L型ゼオライト、チャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、モービル社が発表しているZSM系ゼオライトなどの結晶性アルミノシリケート、またアルミニウム以外にホウ素、ガリウム、チタン、クロム、鉄、亜鉛、リン、バナジウム、銅などの元素も含有する結晶性アルミノメタロシリケート、アルミニウムを実質的に含まないガロシリケート、ボロシリケートなどのメタロシリケート等があげられる。
【0013】また、AZ−1(特開昭59−128210号公報に記載)、TPZ−3(特開昭58−110419号公報に記載)、Nu−3(特開昭57−3714号公報に記載)、Nu−5(特開昭57−129820号公報に記載)、Nu−6(特開昭57−123817号公報に記載)、Nu−10(特開昭57−200218号公報に記載)なども有効である。本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、一次粒子径が0.5μm以下のものが好ましく、より好ましくは0.1μm以下のもの、さらに好ましくは0.05μm以下のものである。粒子径の下限は「結晶性」という言葉で規定される。結晶とは、原子がある対称にしたがって規則正しく周期的に配列しているものであり、X線による回折現象が認められるものである(共立出版株式会社、化学大辞典、1963年出版、第3巻、第349頁「結晶」の項に記載)。したがって、一定の周期が起こり、X線回折現象が認められるためには、結晶構造に基づくある有限の大きさが存在する。よって、本発明で使用する結晶性メタロシリケートは、X線回折現象が認められ、かつ、一次粒子径が0.5μm以下のものが好ましいということができる。
【0014】これら一次粒子の形状は種々のものがあるが、本発明でいう一次粒子径とは、走査型電子顕微鏡で見た被測定微粒子の最も巾の狭いところの径を計測し、その計測された数値以下のものが少なくとも全体の50数量%以上であるものを言う。尚、この場合、一次粒子径が0.5μm以下であれば、それらの凝集等によりできる二次粒子の径が大きくなったものでも有効である。さらに、粒子によっては、大きな粒子の表面に凹凸があるのか、一次粒子が凝集しているのかが、走査型電子顕微鏡写真からは判断できない場合もある。この場合、微粒子体とは、H型にした場合の全酸点に対する外表面酸点の割合が0.03以上、好ましくは0.05以上、さらに好ましくは、0.1以上のものを指す。
【0015】この全酸点に対する外表面酸点の割合を測定する方法は、次の方法による。まず、酸点を測定する前に、本発明で用いる結晶性メタロシリケートをH型にする必要がある。結晶性メタロシリケートをH型にする方法には、合成系に有機物を用いる方法あるいは用いない方法があり、また、有機物を用いる場合も有機物の種類によって種々の方法があるが、ここでは、以下の方法によってH型とする。
【0016】本発明で使用するスラリーを濾過した後に5倍量の水で水洗する。合成系で有機物を用いる場合は、得られたケークを120℃で8時間乾燥した後、500℃で6時間空気流通下に焼成を行い有機物を除去した後、1規定の硝酸中に加えて10重量%スラリーとして、60℃で4時間イオン交換を行い、そのスラリーを濾過し、さらに5倍量の水で水洗した後、120℃で10時間乾燥して、H型の結晶性メタロシリケートとする。また、合成系で有機物を用いない場合は、濾過水洗して得られたケークを直接1Nの硝酸に加え、以下上記と同じ方法でH型とする。
【0017】このようにして得られたH型の結晶性メタロシリケートの酸点を以下の方法で測定する(参考文献;触媒、vol.25,p461(1983))。酸点の測定装置としては、島津製作所製ガスクロマトグラフGC−7Aおよびデータ処理装置CR−1Aを用いた。すなわち、内径4mm、全長80mmのSUS製短カラムへ試料(0.2〜1g)を充填し、前記ガスクロマトグラフ装置の恒温槽内の試料側流路へ取り付ける。キャリアガスとしてヘリウムガスを50ml/分の流速で流し、同時に恒温槽内の温度を325℃に設定する。次に、アミン(ピリジン、4−メチルキノリン)の一定量(0.2〜2ml)をマイクロシリンジを用いて、試料側流路の注入口へ一定時間(2〜5分)をおいて断続的に注入し続ける。充填カラムを通ったキャリアガスは、FID型検出器を用いて分析し、周期的にピークが現れる経時的なアミン濃度変化のクロマトグラムを得る。注入回数の増加と共に試料に対するアミン吸着量が飽和に近づき、それに伴って注入で非吸着アミン量が増加する。従って、前記クロマトグラフにおいて、アミンの第2回の注入に対応するピーク面積Siは、次第に注入したアミンの量に対応した面積Soに近づく。試料単位重量当たりのアミン吸着量Ao(μmol/g)は、下記式(a)によって求めることができる。
【0018】
【数1】

本発明においては、Si/So≧0.98となるような第n回の注入まで繰り返し注入を行い、下記式(b)によりアミン吸着量A(μmol/g)を算出した。
【0019】
【数2】

【0020】本発明における全酸点とは、アミンとしてピリジンを用いて測定した場合のピリジン吸着量で表わし、外表面酸点とは、アミンとして4−メチルキノリンを用いて測定した場合の4−メチルキノリン吸着量で表わされる。従って全酸点に対する外表面酸点の割合は、4−メチルキノリン吸着量/ピリジン吸着量とする。また、環状オレフィンの水和反応においては、異性化、重合等の副反応が発生し、例えば、シクロヘキセンの水和反応においては、メチルシクロペンテン類、ジシクロヘキシルエーテル、ビシクロヘキシルといった副生物が生成する。この副反応を抑制し、収率良く環状アルコールを得るためには、例えば、特公平4−41131号公報に示されるような結晶性アルミノシリケートZSM−5を触媒として使用することも有効である。結晶性アルミノシリケートZSM−5とは、モービルオイル社が開発したゼオライトであり(米国特許第3702886号公報参照)、結晶を構成するシリカとアルミナのモル比が20以上であり、結晶構造中に、酸素10員環の入口を有する三次元の細孔を有するゼオライトである。
【0021】一方、本発明の接触水和反応に使用される環状オレフィンとしては、前記一般式(1)で示される化合物であり、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロウンデセン、シクロドデセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、トリメチルシクロヘキセン、テトラメチルシクロヘキセン、フェニルシクロヘキセン等が挙げられ、またこれらの混合物も有用である。そしてこれらの環状オレフィンは水和され、各々相当する環状アルコールを生成する。反応温度は、オレフィンの水和反応の平衡の問題及び副反応の抑制の面から低温が有利であるが、反応温度が余り低すぎると反応速度が小さい為に収率が低くなる。よって、50℃〜300℃の範囲が好ましい。
【0022】又、反応の圧力は、減圧から加圧までの範囲で適用可能であるが、反応の原料である環状オレフィン及び水の両方が液相を保ちうる圧力で反応を行う。反応原料である水と環状オレフィンのモル比は広い範囲でとることができるが、環状オレフィンがあまりに過剰であると環状オレフィンの転化率が低くなる。一方、水があまりに過剰であると環状オレフィンの転化率は高くできるが、生成環状アルコールの分離精製面で不利となるばかりでなく、反応器、及び後工程での液液分離器を大きくする必要が生じる。しかしながら器の容積をむやみに増大することは、機器製作面、保守点検面、及び操作面等の問題から得策でない。したがって、本発明においては、水に対する環状オレフィンのモル比は0.01〜100の範囲が好ましい。又、環状オレフィンと触媒の重量比は、連続的な反応においては、反応温度、反応圧力、環状オレフィンと水のモル比等の条件により異なるが、一般的には、1時間に反応器に供給される環状オレフィンの重量に対し、触媒の重量を0.005〜100の範囲とすることが好ましい。
【0023】本発明において、該触媒除去の対象となる液は、前記の接触水和反応後に液液分離器より取り出されたオイル相から得られる環状アルコール、環状オレフィン、及び微量の結晶性メタロシリケートを含有する液、あるいは、これらを濃縮した液である。該液液分離器より取り出されたオイル相中の環状アルコール濃度は12重量%程度であり、工業的に製品として環状アルコールを得る方法としては、蒸留等の操作により環状アルコールを濃縮・精製し、製品化していくと共に、未反応の環状オレフィンを回収・リサイクルし、又、高沸等の不純物を分離除去するのが一般的である。
【0024】工業的に触媒分離操作を濾過法で行う上では、予め蒸留等の操作により未反応環状オレフィンの濃度を低減させ該触媒を濃縮した方が、濾液量を抑えることができ、結果として濾過膜の必要濾過面積は小さく、すなわち濾過器自体及びその周辺機器を小型化出来て好ましい。この濾過膜の形状としては、濾材の平均細孔径で0.1〜5μm、好ましくは、0.1〜2μm、更に好ましくは、0.2〜1μmのものである。濾過方法としては、デッドエンド濾過法とダイナミック濾過法がある(化学工業株式会社、ケミカルエンジニアリング、第36巻、第7号、34〜35頁に記載)。前者のデッドエンド濾過法を用いるのが一般的であるが、このデッドエンド濾過法を用いた場合、濾過膜に補足された結晶性メタロシリケートは、濾過膜表面にケーク層を形成し、経時的にその厚みを増し、濾過抵抗の増大による濾液量の低下を引き起こす。よって安定した濾液量を得るためには、例えば、同様のフィルターを2以上並列に設置し、使用基の濾液量の低下に従い、順次予備基に切り替えると共に、使用済み濾過膜の交換もしくは、清掃を実施する等の対応が必要である。
【0025】一方、濾過方法として、ダイナミック濾過方法を用いると、一例としてクロスフロー濾過法を用いた場合は濾過膜表面のケーク層が平行流によるせん断力により薄く保たれる等、長期的に安定した濾液量が得られるので有効である。本発明において、ダイナミック濾過法で用いる濾過膜の材質としては金属製、セラミック製、各種繊維濾過材等が好ましく、耐久性、分離除去物の物性、濾過液の物性からセラミック製がより好ましい。本発明において、濾過膜への詰まり物の溶解除去洗浄に用いる液としては、濾過膜の材質や構造、及び触媒の種類によっても変わり得るが、濾過膜がアルミナ等のセラミック材質で構成されており、触媒が結晶性メタロシリケートである場合には、アルカリ液による洗浄が有効である。アルカリ液が濾過膜への詰まり物の溶解除去洗浄に用いる液として有効である理由については定かでない。しかし、本発明者らは以下の通り類推する。
【0026】すなわち、濾過膜の細孔内部及び濾過膜表面に結晶性メタロシリケートが蓄積し、これが経時的な濾液量の低下を引き起こす。この結晶性メタロシリケートは通常の洗浄方法である逆洗法等の機械的操作では除去しきれない。ところが化学的にこの結晶性メタロシリケートを溶解除去することで濾過能力を回復出来るのである。この類推は例えば、次の分析結果から導かれる。すなわち、アルミナ製の濾過膜で結晶性アルミノシリケートの濾過分離を長期に運転し、濾過能力が新品の10%以下に低下した濾過膜表面の元素分析をX線回折装置(マックスサイエンス製、MXP−18)で行ったところ、濾過膜材料であるアルミナと結晶性アルミノシリケートのピークが面積比10:1で確認できた。その後、この濾過膜をアルカリ液で洗浄し、同様の元素分析を実施したところ、結晶性アルミノシリケートのピークは極くわずかで、アルミナと結晶性アルミノシリケートのピーク面積比は100:1であった。
【0027】また洗浄後の液を蒸留水で100重量倍に希釈し、その上澄み液の元素分析を高周波誘導結合プラズマ原子発光分析装置(理学電機工業製、JY−138)で行ったところ、Siが520molppm、Alが11molppm含まれている事が判った。これらの値の比は、用いた結晶性アルミノシリケートの組成比とほぼ同一であり、したがって濾過膜のAlは殆ど溶出せず、結晶性アルミノシリケートのみが溶解したと推定できるわけである。詳細は実施例で述べるが、洗浄後の濾過能力は新品の約80%まで回復しており、さらに驚くべき事に、アルカリ洗浄後の濾過能力低下速度をアルカリ洗浄前の約1/2に抑制することができた。
【0028】ここでいう濾過能力低下速度とは、単位時間あたりの濾液低下量を言い、その単位は重量/時間2で表わす。またここで言う濾過能力低下速度の抑制とは、1回アルカリ洗浄後の濾過膜と、1回もアルカリ洗浄を実施していない濾過膜を同一の運転条件で、ほぼ同一の濾液量が得られている状態を開始点とした濾過能力低下速度を比較した結果を指す。アルカリ液としては、詰まり物を溶解するアルカリ液であれば、いずれのものでも構わない。具体的には水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、等の溶液が好ましく、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液である。
【0029】液性としては詰まり物を効率的に洗浄除去し、しかも濾過膜に損傷を与えないよう、pH8〜14が好ましく、濃度で言えば、0.01重量%以上、流動性を保つ濃度以下が好ましい。一般的には、アルカリ洗浄後の洗浄液除去の為の水洗工程または蒸気洗浄工程における操作を簡便にする為に0.1〜10重量%の範囲とする事がより好ましい。アルカリ液の容量としては、濾材の細孔内部及び濾過膜表面を十分に湿潤し、かつアルカリ液濃度にもよるが、総量として詰まり物と等重量のアルカリを含む液量以上を用い、また上限はアルカリ洗浄設備の操作性及び小型化の点から、濾過膜の細孔内部及び濾過膜表面を十分に湿潤し得る量の1000倍以下の液量が好ましい。また洗浄液の温度としては流動性を保つ温度以上とし、濾過膜の設計温度条件から200℃以下が好ましい。
【0030】一般的には40〜100℃の範囲とすることがより好ましい。具体的な洗浄方法としては、濾過膜を洗浄液に浸けておくだけでも洗浄効果は得られるが、効率よく最大限の回復を達成するためには洗浄液に液流速をつけることが好ましい。洗浄液の液流速としては0.1mm/秒以上が好ましく、上限は濾過膜の耐圧と洗浄液の液性から決まるが、通常、100m/秒以下が好ましい。最適洗浄時間は濾過膜の種類、詰まり物、詰まり状況及び洗浄液の液性によって変動する。一般的には洗浄液による洗浄効果が発現する時間以上で、最大限の回復が得られる時間以下が最適洗浄時間として好ましい。
【0031】また本発明で洗浄液として用いるアルカリ液は、極めて低濃度であっても触媒を失活させる。従って濾過膜の洗浄は接触水和反応を行う工程と完全に切り離した状態にした上で実施すると共に、アルカリ洗浄後は洗浄液除去の為の水洗または蒸気洗浄を十分に行い、濾過膜にアルカリ液が残存していないことを確認後、触媒分離を再開する事が好ましい。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。なお、環状アルコール、環状オレフィン液中の結晶性メタロシリケートの含有量は、該液を濾過し、濾過残分を洗浄の後、120℃で1時間乾燥、更に、500℃で4時間焼成し、得られた固形物の重量より算出した。
【0033】
【実施例1】図1は本発明を実施するためのプロセスフローシートの1例であり、必要に応じて図1を参照しつつ説明する。水和反応は、触媒となる結晶性メタロシリケートとして、特開平3−193622号公報に記載の結晶性アルミノシリケートであるZSM−5微粒子体を用いた。この結晶性アルミノシリケートの一次粒子径は0.1μmであった。該結晶性アルミノシリケートを重量比で2倍の水と混合することでスラリー状触媒とし、反応温度は125℃、反応圧力は6kg/cm2Gとなるように窒素ガスにて気相部を加圧、攪拌機回転数530rpm、触媒1重量部に対しシクロヘキセンを1時間当たり1重量部供給し、反応消費水量に見合った分の水を原料供給管7を通じて供給した。また、分離器2の油水界面レベルが、排出管10より下方に位置するように、スラリー状触媒が復帰管9を経由して反応器1へ復帰する量を調整した。排出管10を経由して蒸留塔3へ供給される液は、シクロヘキサノール11.8重量%、結晶性アルミノシリケート18重量ppmを含むシクロヘキセン混合液であった。
【0034】蒸留塔3の塔頂から抜き出した液を排出管11を経由して反応器1へ復帰するが、この液組成は結晶性アルミノシリケート2重量ppm、シクロヘキサノール0.23重量%を含むシクロヘキセン混合液であった。蒸留塔3の塔底部から得られる液は結晶性アルミノシリケート43重量ppm、シクロヘキセン30重量%を含むシクロヘキサノール混合液であった。この液100重量部が、排出管12を経由して濾過器4に供給される。この供給液の圧力を濾液側の圧力より1kg/cm2Gだけ高く設定し、この濾過差圧で濾液を得る。得られた濾液を排出管14を経由して蒸留塔5へ供給すると共に、濃縮された結晶性アルミノシリケートを含む残液を、排出管13を経由して濾過循環液として反応器1へ復帰する。蒸留塔5の塔頂からは未反応のシクロヘキセンを排出管15を経由して回収し、反応器1へ復帰すると共に、塔底からは反応器1で極微量生成した高沸不純物を排出管17を経由して系外へ抜き出すことで、排出管14と蒸留塔5の接続部より下部で塔底より上部に設けた製品抜き出し管16から純度の高いシクロヘキサノールを得ることが出来る。
【0035】この運転を4000時間に1回の間隔でアルカリ洗浄を実施しつつ長時間実施したところ、得られた濾液量の平均値は、アルカリ洗浄無しで運転開始後0〜4000時間では、34重量部であり、第1回アルカリ洗浄後の0〜4000時間では33重量部であり、第2回アルカリ洗浄後の0〜4000時間では34重量部であった。またその後の運転においても、4000時間あたりの平均濾液量は33〜34重量部で推移しており、アルカリ洗浄でも回復不能となるような濾過能力の低下は見られない。また濾過能力の低下速度の平均値は、アルカリ洗浄無しで運転開始後1500〜4000時間では、0.002重量部/時間2であった。しかしながら第1回アルカリ洗浄後の1500〜4000時間では0.001重量部/時間2に下がっており、第2回アルカリ洗浄後の1500〜4000時間でも0.001重量部/時間2であった。またその後の運転においても、アルカリ洗浄後1500〜4000時間の濾過能力の低下速度は0.001重量部/時間2で安定しており、アルカリ洗浄でも回復不能となるような濾過能力の低下は見られない。また濾液中の触媒量は検出限界以下(1重量ppm以下)で触媒リークは見られなかった。
【0036】
【実施例2】触媒となる結晶性メタロシリケートとして特開平8−245454号公報の実施例1に記載の結晶性ガロシリケートを用いた他は、実施例1と同様の方法で水和反応を行った。排出管10を経由して蒸留塔3へ供給される液は、シクロヘキサノール8.4重量%、結晶性ガロシリケート25重量ppmを含むシクロヘキセン混合液であった。蒸留塔3の塔頂から抜き出した液を排出管11を経由して反応器1へ復帰するが、この液組成は結晶性ガロシリケート2重量ppm、シクロヘキサノール0.20重量%を含むシクロヘキセン混合液であった。蒸留塔3の塔底部から得られる液は結晶性ガロシリケート86重量ppm、シクロヘキセン30重量%を含むシクロヘキサノール混合液であった。この液100重量部が、排出管12を経由して濾過器4に供給される。
【0037】この供給液の圧力を濾液側の圧力より1kg/cm2Gだけ高く設定し、この濾過差圧で濾液を得る。得られた濾液を排出管14を経由して蒸留塔5へ供給すると共に、濃縮された結晶性ガロシリケートを含む残液を、排出管13を経由して濾過循環液として反応器1へ復帰する。蒸留塔5の塔頂からは未反応のシクロヘキセンを排出管15を経由して回収し、反応器1へ復帰すると共に、塔底からは反応器1で極微量生成した高沸不純物を排出管17を経由して系外へ抜き出すことで、排出管14と蒸留塔5の接続部より下部で塔底より上部に設けた製品抜き出し管16から純度の高いシクロヘキサノールを得ることが出来る。
【0038】この運転を4000時間に1回の間隔でアルカリ洗浄を実施しつつ長時間運転したところ、得られた濾液量の平均値は、アルカリ洗浄無しで運転開始後0〜4000時間では、33重量部であり、第1回アルカリ洗浄後の0〜4000時間では32重量部であり、第2回アルカリ洗浄後の0〜4000時間では33重量部であった。またその後の運転においても、4000時間あたりの平均濾液量は32〜33重量部で推移しており、アルカリ洗浄でも回復不能となるような濾過能力の低下は見られない。また濾過能力の低下速度の平均値は、アルカリ洗浄無しで運転開始後1000〜4000時間では、0.002重量部/時間2であった。
【0039】しかしながら第1回アルカリ洗浄後の1000〜4000時間では0.001重量部/時間2に低下しており、第2回アルカリ洗浄後の1000〜4000時間でも0.001重量部/時間2であった。またその後の運転においても、アルカリ洗浄後1000〜4000時間の濾過能力の低下速度は0.001重量部/時間2で安定しており、アルカリ洗浄でも回復不能となるような濾過能力の低下は見られない。また濾液中の触媒量は検出限界以下(1重量ppm以下)で触媒リークは見られなかった。
【0040】
【比較例1】アルカリ洗浄しなかった以外は実施例1と同じ操作を実施したところ、得られた濾液量の平均値は、0〜4000時間では、34重量部であり、4000〜8000時間では12重量部であり、8000〜9000時間では5重量部まで低下したため、運転を中止した。
【0041】
【比較例2】アルカリ洗浄しなかった以外は実施例2と同じ操作を実施したところ、得られた濾液量の平均値は、0〜4000時間では、33重量部であり、4000〜8000時間では9重量部であり、8000〜8500時間では5重量部まで低下したため、運転を中止した。
【0042】
【発明の効果】本発明の方法により、環状アルコールを製造する際に触媒の分離に用いる濾過設備を小型化する事ができ、しかも濾過膜の交換が不要となり、結果として、操作性良く、長時間にわたって安定した生産量を確保できる。




 

 


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