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発明の名称 成膜方法及びその装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−254172(P2001−254172A)
公開日 平成13年9月18日(2001.9.18)
出願番号 特願2000−66322(P2000−66322)
出願日 平成12年3月10日(2000.3.10)
代理人 【識別番号】100076059
【弁理士】
【氏名又は名称】逢坂 宏
【テーマコード(参考)】
4K029
5D112
5D121
【Fターム(参考)】
4K029 AA11 AA24 BA55 BA58 BC00 BD11 BD12 CA04 CA13 DD04 DD06 
5D112 AA02 AA11 AA24 BA01 FA06 FB04 FB10 FB27
5D121 AA03 EE04 EE13 EE19
発明者 外崎 峰広 / 植田 充紀 / 小林 正人 / 沖田 裕之
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 複数のイオン源からそれぞれ異なるイオンビームを被成膜体に供給し、前記被成膜体の表面に所定の膜を形成する成膜方法。
【請求項2】 前記被成膜体を真空雰囲気内に配し、前記真空雰囲気外で生成した少なくとも第1及び第2のイオンを前記真空雰囲気内へ導入する、請求項1に記載した成膜方法。
【請求項3】 第1のイオン源にて所定のガスをイオン化し、第2のイオン源にて固体状材料をイオン化する、請求項1に記載した成膜方法。
【請求項4】 前記第1のイオン源にカウフマン型イオン源を用い、前記第2のイオン源にカソーディックアーク装置を用いる、請求項3に記載した成膜方法。
【請求項5】 前記ガスとして窒素又は窒素含有ガスを用い、前記固体状材料として固体状炭素又は炭素含有材料を用い、前記被成膜体の表面に窒化炭素膜を形成する、請求項3に記載した成膜方法。
【請求項6】 発生したプラズマ雰囲気中で前記被成膜体に高周波パルス電圧を印加する、請求項1に記載した成膜方法。
【請求項7】 前記高周波パルスとして負及び/又は正のパルス電圧を印加する、請求項6に記載した成膜方法。
【請求項8】 光ディスク基板又は磁気ディスク基板の表面高硬度膜の形成に適用する、請求項1に記載した成膜方法。
【請求項9】 複数のイオン源を有し、これらのイオン源からそれぞれ異なるイオンビームが被成膜体に供給され、前記被成膜体の表面に所定の膜が形成されるように構成した成膜装置。
【請求項10】 前記被成膜体が真空雰囲気内に配され、前記真空雰囲気外で生成した少なくとも第1及び第2のイオンが前記真空雰囲気内へ導入される、請求項9に記載した成膜装置。
【請求項11】 第1のイオン源にて所定のガスがイオン化され、第2のイオン源にて固体状材料がイオン化される、請求項9に記載した成膜装置。
【請求項12】 前記第1のイオン源にカウフマン型イオン源が用いられ、前記第2のイオン源にカソーディックアーク装置が用いられる、請求項11に記載した成膜装置。
【請求項13】 前記ガスとして窒素又は窒素含有ガスが用いられ、前記固体状材料として固体状炭素又は炭素含有材料が用いられ、前記被成膜体の表面に窒化炭素膜が形成される、請求項11に記載した成膜装置。
【請求項14】 発生したプラズマ雰囲気中で前記被成膜体に高周波パルス電圧が印加される、請求項9に記載した成膜装置。
【請求項15】 前記高周波パルスとして負及び/又は正のパルス電圧が印加される、請求項14に記載した成膜装置。
【請求項16】 光ディスク基板又は磁気ディスク基板の表面高硬度膜の形成に適用される、請求項9に記載した成膜装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光ディスクや磁気ディスク等の基板の表面を硬化するための好適な成膜方法及びその装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、光ディスク基板や磁気ディスク基板には剛性、平滑化加工等が容易であることから、アルミニウム、ガラス等が使用されていた。しかし近年は、安価で射出形成による凹凸(ピット、グルーブ)の形成が容易であるため、樹脂製基板の使用が検討されているが、樹脂製ディスク基板は安価に製作が可能な反面、外力によって変形し易いため基板の表面硬化処理が必要である。
【0003】そして、このような表面硬化に関して、1989年Liuらは、Science、245巻(1989)の841ページにおいて、CNX(窒化炭素)膜がβ−Si34(三方晶系結晶β型の窒化ケイ素)と同じ結晶構造をとり、β−C34(三方晶系結晶β型の窒化炭素)となると第一原理擬ポテンシャル計算からダイアモンド以上の硬度を持つと提唱したことは知られている。
【0004】それ以来、この薄膜の実現に向けて反応性スパッタリング法、レーザアブレーション法、イオンアシストデポジション法、アークイオンプレーティング法、プラズマCVD法などが提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これまでに合成されてきた窒化炭素薄膜はすべてアモルファスであり、所望の硬度が得られていない。この原因としては、チャンバー内でイオンが生成されるため、被処理体上において炭素と窒素が効果的に反応していないことが考えられる。
【0006】そこで本発明の目的は、イオンが被成膜体上で十分に反応して、所定の膜を形成できる成膜方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、複数のイオン源からそれぞれ異なるイオンビームを被成膜体に供給し、前記被成膜体の表面に所定の膜を形成する成膜方法(以下、本発明の成膜方法と称する。)に係るものである。
【0008】本発明の成膜方法によれば、異なるイオン源からそれぞれ異なるイオンビームを被成膜体に供給するので、それぞれ異なるイオンを十分な量と均一な分布で被成膜体に供給することができる。従って、供給されたイオンが被成膜体上で反応し、反応が十分に進行した膜を被成膜体の表面に形成でき、その結果、硬度等の物性が向上した所望の膜を形成することができる。
【0009】また、本発明は、複数のイオン源を有し、これらのイオン源からそれぞれ異なるイオンビームが被成膜体に供給され、前記被成膜体の表面に所定の膜が形成されるように構成した成膜装置(以下、本発明の成膜装置と称する。)に係るものである。
【0010】本発明の成膜装置によれば、上記した本発明の成膜方法に基づく装置であるので、本発明の成膜方法と同様な効果が奏せられる再現性の良い成膜装置を提供することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0012】上記した本発明の成膜方法及び成膜装置においては、前記被成膜体を真空雰囲気内に配し、前記真空雰囲気外で生成した少なくとも第1及び第2のイオンを前記真空雰囲気内へ導入する、ことが望ましい。
【0013】そして、第1のイオン源にて所定のガスをイオン化し、第2のイオン源にて固体状材料をイオン化することが望ましい。
【0014】この場合、前記第1のイオン源にカウフマン型イオン源を用い、前記第2のイオン源にカソーディックアーク装置を用いることが望ましい。
【0015】これにより、前記ガスとして窒素又は窒素含有ガス(以下窒素ガスと称する。)を用い、前記固体状材料として固体状炭素又は炭素含有材料(以下、炭素と称する。)を用い、前記被成膜体の表面に窒化炭素膜を形成することができる。
【0016】更に、発生したプラズマ雰囲気中で前記被成膜体に高周波パルス電圧を印加し、前記高周波パルスとして負及び/又は正のパルス電圧を印加することが、供給された異なるイオン同士の反応性を高めるために望ましい。
【0017】これにより、光ディスク基板又は磁気ディスク基板の表面に所望の高硬度膜を形成することができる。
【0018】以下、本発明の実施の形態を図面参照下で更に詳細に説明する。
【0019】図1は、本実施の形態による成膜装置の概略図を示す。この成膜装置11は、真空チャンバー1とクライオポンプ等による真空排気系7と、真空チャンバー1の内部において被成膜体(以下、基板と称する。)4を支持するホルダー5と、窒素ガスをイオン化するためにカウフマン型イオンソースを用いたイオンシャワー源3と、炭素イオンを供給するためのカソーディックアークイオンソース2と、これらを制御するイオンシャワー制御部9及びカソーディックアークソース制御部10と、パルス状電圧を基板4に印加する高周波パルス電源8とで構成されている。
【0020】そして、この真空チャンバー1内で、アクリルなどのプラスチック製基板4が電気的に絶縁された水冷の基板ホルダー5に装着される。また、真空チャンバー1内の圧力は、クライオポンプ等の真空排気系7によって10-6Torr以下の高真空に維持される。
【0021】イオンシャワー源3において、ボンベ6からは配管6aを経て窒素ガスが供給され、イオン発生に必要な供給電圧等はイオンシャワー制御部9で制御される。また、カソーディックアークソース2において、冷却水が供給され、供給電圧等はカソーディックアーク制御部10で制御される。
【0022】図2は、イオンシャワー源3に設けたカウフマン型イオンソース3aを示す。このイオンソースは熱陰極とマグネトロン放電を組み合わせたイオンガンであり、コイル13による磁力線の作用下で、マグネトロン陽極15と熱陰極14への通電により加熱したタングステンフィラメント14aから熱電子が放出され、この熱電子によって、配管6aから導入された窒素ガスGがソース内部18でプラズマ化して正の窒素イオン17を発生させ、この窒素イオン17はグリッド12側へ引き寄せられる。そして、高温度化する本体は冷媒用配管26によって昇温を防止している。
【0023】即ち、この窒素イオン17は、金属製のグリッド12への例えば−200Vの加速電圧の印加により、グリッド12とその上方との電位差によってグリッド12側へ引張られており、更に加速されてグリッド12に設けられた300個の穴(0.3mmφ)を通り、窒素イオンビーム17Aとなって導波管16を経て真空チャンバー1(図1参照)へ導入され、真空チャンバー1内に配した基板4の表面に照射される。この場合のイオン電流は1〜100mAの範囲が好ましく、イオンの運動エネルギーは100〜1000eVの範囲が好ましい。
【0024】図3は炭素イオン源となるカソーディックアークソース2の要部を示す。図3において、20はカソード、21はアノード、29は冷却水配管継手、30は締め金具、31は熱伝対結合部、32はエアーハンマー、33は磁気ダクト、34は周壁、35は45度ニーフィルター、36はねじ穴、37は操作用コイルを示す。イオン源となる材料(本実施の形態においては固体状炭素)を配したカソード20をアーク放電させ、動作ガスを用いることなく、このアーク放電によりカソード20の材料が蒸発してイオン化した粒子を正の炭素イオン38として取り出すものである。
【0025】図4はこの原理を示す図(但し、原理説明のために図3とは構成及び形状が異なる。)である。即ち、トリガー電源23から駆動電圧を供給されたカソード20のアーク放電によって発生した炭素イオン38は、カソード20の外側に配された偏向コイル22によって効率良くアノード21に導かれ、アノード21の先に配されている電磁誘導のための電磁コイル24によって、荷電した炭素イオン38が基板4に誘導される。基板ホルダー5及び電源27はバイアス手段の機能を有し、そして電源28は電磁コイル24に駆動電圧を与えるための電源であり、コンデンサー19を介して低電圧回路を構成している。
【0026】本実施の形態において、被成膜体として対象となる基板材料はアクリル樹脂のほか、例えば、アモルファスポリオレフィン(APO)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド樹脂、カーボン、ガラスなどが挙げられる。また、使用可能なイオン種としては、例えば、炭素(C)及び窒素(N)のほかタングステン(W)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、銅(Cu)、サマリウム(Sm)などが挙げられる。
【0027】上記の如く構成した真空チャンバー1内においては、窒素イオン17と炭素イオン38が基板4のまわりにプラズマ状に存在する状態となる。これに対して、図1に示す高周波パルス電源8によって、基板ホルダー5を通して基板4に例えば図5に実線で示すような波形を持つマイナス10kVのパルス電圧40を印加する。このパルス電圧、周波数は例えば10kHz、パルス幅は例えば10マイクロ秒であるが、これらは目的に応じて決めることができる。
【0028】即ち、この高周波パルス電源8は、真空チャンバー1内に導入した窒素イオン17及び炭素イオン38を基板4に引き寄せるために、バイアスでイオンを加速させるバイアス電圧として、パルス状電圧を基板4に印加するものであり、基板4に負のパルス電圧が印加されたときに、導入された窒素イオン17と炭素イオン38が基板4に引きつけられ、印加電圧がゼロになったときに基板4の表面にたまっている電荷が緩和されるため、電荷量が制御されてチャージアップが防がれ、十分な濃度のイオンが基板4上で反応し合って所望の窒化炭素膜を形成できる。
【0029】この場合、図5に波線で示すように、負と正のパルス状電圧が交互に印加されるようにしてもよい。これにより、更にチャージアップの効果を高めることができる。
【0030】但し、上記した本実施の形態の場合は、真空チャンバー1内へ導入されるイオンが正の電荷を持つイオンであるが、イオン種が負の電荷を持つ場合には負の荷電イオンが導入されることもあり、この場合は正のパルス状電圧を印加することにより、導入された負の電荷イオンを基板4に引きつけることができる。
【0031】このパルス電源8には、正の直流電圧源と、負の直流電圧源と、これらの電源をパルス状電圧に変換する夫々のインバータ回路と、パルス状電圧を昇圧するパルストランスと、インバータ回路を制御する制御回路と、制御回路の動作を制御するコンピュータが設けられている。
【0032】このパルス電源8は、正のパルス状電圧を出力するインバータ回路と、負のパルス状電圧を出力するインバータ回路とが並列に動作すると共に、これらのインバータ回路を制御回路により制御することで、それぞれのインバータ回路から出力される正負のパルス状電圧をそれぞれ独立に、それらのパルスピーク値、パルス立ち上がり時間、パルス間隔及びパルス幅等を変化させることが可能であり、これらは全てコンピュータで制御することができる。
【0033】このパルス状電圧のパルスピーク電圧は、正負それぞれ0V〜40kV程度にまで、正負それぞれ独立に変えられるようにすることが好ましい。また、パルス幅は数μsec〜数sec程度の範囲で可変とし、パルス間隔は数十μsec〜数sec程度の範囲で可変とすることが好ましい。
【0034】上記した如く、本実施の形態の成膜装置11により、プラスチック等の基板4の面に窒素イオン17と炭素イオン38を反応させて窒化炭素膜を成膜する際は、先ず、成膜の対象となる基板4を真空チャンバー1の内部に配されたホルダー5に取り付けて、真空チャンバー1の内部をクライオポンプ等による真空排気系7により排気し、高真空状態とする。このときの真空チャンバー1の内部の真空度(背景真空度)は、例えば10-6Torr程度とする。なお、基板4がプラスチックであり高温での処理は好ましくないので、ホルダー5に組み込まれた冷却水導入用パイプに冷却水を流して、基板4の温度が上がりすぎないようにしておく。
【0035】次に、イオンシャワー源3からは窒素イオン17を発生させ、カソーディックアークソース2からは炭素イオン38を発生させ、それぞれのイオンビーム17A、38Aを真空チャンバー1内の基板4の表面に照射する。これにより、基板4の周囲に窒素イオン17及び炭素イオン38がプラズマ状に充満し、一方、パルス電源8により、図5のような負のパルス状電圧をバイアス電圧として基板4に印加する。これにより、基板4に窒素イオン17及び炭素イオン38が引きつけられ、基板4に窒化炭素膜を成膜することができる。
【0036】即ち、上記の方法により、プラスチックのような絶縁体材料にも、パルス電源を用いることによってチャージアップすることなく、精度よく窒素イオン17と炭素イオン38のエネルギーを制御して成膜を行うことができ、β−C34を含む所望の結晶を得ることができる。
【0037】
【実施例】上記した本発明の好ましい実施の形態に従い、図1に示した成膜装置11を用い、イオンシャワー源3には高純度の窒素ガスGを導入し、カソーディックアークソース2にはグラファイトなどの高純度固体状炭素をイオン材料とし、真空チャンバー1の真空雰囲気外で生成した窒素イオン17及び炭素イオン38を用いて、プラスチック製基板4に窒化炭素膜を形成した。
【0038】先ず、基板4を真空チャンバー1内のホルダー5に取り付けて、真空チャンバー1の内部をクライオポンプにより排気し、10-6Torr程度の高真空状態にすると共に、ホルダー5に組み込まれた冷却水導入用パイプに冷却水を流して、基板4の温度が上がりすぎないように調節した。
【0039】そして、イオンシャワー源3には高純度の窒素ガスGを窒素ガスボンベ6から導入し、イオンシャワー源3に設置したカウフマン型イオンソース3aに通電し、タングステンフィラメント14aの加熱による熱電子の放出によって、この窒素ガスGをイオン化した。
【0040】次に、このイオンシャワー源3の金属製のグリッド12に−200Vの加速電圧を印加した。その結果、電位差により窒素イオン17は加速しつつ、グリッド12の穴12aを通って真空チャンバー1内へ引き込まれ、窒素イオンビーム17Aとなって窒素イオン17が基板4の近傍まで運ばれた。このイオン電流は10mAほどであり、窒素イオンの運動エネルギーは200eVであった。
【0041】一方、カソーディックアークソース2には、カソード20に高純度の固体状炭素をターゲットとして装着し、このカソードターゲットにアーク放電を発生させ、動作ガスを用いないで炭素をイオン化した。
【0042】その結果、図2のような曲導管内を磁場によって炭素イオン38は誘導され、プラズマ状態の炭素イオン38は炭素イオンビーム38Aとなって基板4の近傍まで運ばれた。このイオン電流は10A程であり、炭素イオンの運動エネルギーは25eVであった。
【0043】そして、窒素イオン17と炭素イオン38が基板4のまわりに存在する状態で、高周波パルス電源8を駆動させ、基板ホルダー5を介して、基板4に図5のような波形を持つマイナス10kVのパルス電圧を印加した。この周波数は10kHz、パルス幅は10マイクロ秒であった。
【0044】その結果、真空チャンバー1内の基板4上で窒素ガス17と炭素ガス38とが反応し、基板4の表面に膜厚50nmの窒化炭素膜を形成することができた。
【0045】上記のように、窒素イオン17と炭素イオン38とを反応させて表面に窒化炭素膜形成した基板と、この窒化炭素膜を形成前の基板について、同一の測定装置を用いてそれぞれ硬度を測定し、比較した。
【0046】その結果を図6に示す。即ち、図6は両者の降伏点強度を示すグラフである。図6において、本実施例の場合の歪み曲線41は測定装置の圧電体による荷重により0点から変位し、解放後は変位前の0点に戻ることを示し、成膜前の基板の場合の歪み曲線42は同一荷重時の変位量が大きく、解放後は変位前の0点には戻らず幾分変位したままになる。即ち、成膜前の基板は低荷重でも大きく変位し、強度が窒化炭素膜を形成した場合に比べて著しく劣ることが分かる。図6において上向きの矢印Aは加重時、下向きの矢印Bは解放時の変位の変化を示す。
【0047】即ち図6から、実施例の方法により、窒素イオン17と炭素イオン38を用い、プラスチック製基板4の表面に窒化炭素膜を形成することによって、基板4の硬度が改善できることが分かる。
【0048】また、成膜した基板4の表面付近における窒素と炭素の結合状態を成膜前の状態と比較してその変化をみるために、フーリエ変換赤外吸収分光法(FT−IR)による分析を行った。その結果を図7に示す。図7において下が成膜前の分析値43、上が成膜後の分析値44である。
【0049】即ち、窒素イオン17と炭素イオン38を反応させて成膜した基板4の分析値44は、窒素と炭素が結合し、それが約2270(1/cm)にピークとなるスペクトルを示すが、成膜前の分析値43にはこのような現象が現れないことを示している。従って、図7から、実施例の方法により、窒素イオン17と炭素イオン38を用い、プラスチック製基板4の表面に、窒素と炭素が結晶化して成膜されていることが分かる。
【0050】これにより、図6及び図7から、所望の膜を成膜できることが分かる。
【0051】本実施例によれば、イオンシャワー源3から窒素ガスGをイオン化してそのイオンビーム17Aを真空チャンバー1内へ導入し、更に、カソーディックアークソース2から炭素をイオン化してそのイオンビーム38Aを真空チャンバー1内へ導入し、これらの異なるイオンを外部で生成後に導入して真空チャンバー1内に配した基板4に直接照射しているので、これらのイオンが十分な濃度で均一に基板4へ照射され、更に、基板4へのゼロV〜マイナス10kVの負のパルス電圧印加によって、照射された正電荷の窒素イオン17及び炭素イオン38が基板4に引きつけられると共に、チャージアップも防がれ、パルス状電圧によるエネルギーによって、窒素イオン17及び炭素イオン38が活性化して反応性が高められ、十分に反応が進行した窒化炭素膜を形成することができる。
【0052】更に、動作ガスを用いずに炭素をイオン化しているので、不純物のない炭素イオン38が供給され、高質の膜を形成でき、従来合成されていたアモルファスの窒化炭素膜とは異なり、β−C34を含む結晶化した窒化炭素膜を基板4の表面に成膜することができる。従って、この手法を用いて、耐磨耗性が不可欠な回転部分や磨耗部分の表面に成膜することによって機械的強度を高め、長寿命化を実現できる。
【0053】上記した実施例は、本発明の技術的思想に基づいて種々に変形することができる。
【0054】例えば、実施例は窒素と炭素との2種類のイオンを用いているが、それ以上(例えば3種類)のイオン種を同時に用いて成膜することもできる。
【0055】また、使用するイオン種は窒素と炭素の組み合せに限らず、例えば窒素とボロン又はケイ素等との組み合せでもよく、シリコンとグラファイトのように固体状同士の組み合せとすることもでき、また、動作ガスを使用するもの同士、動作ガスを使用しないもの同士の組み合せとすることもできる。
【0056】また、実施例に用いたカウフマン型イオンソース3aやカソーディックアークソース2以外にも、これと同等の性能を有するものであれば使用することができる。
【0057】また、パルス状電圧印加のパルス波形は実施例以外にも、例えば図8に示すように、負のパルス電圧の直後に正のパルス電圧をそれぞれのパルスピーク値がほぼ等しい電圧で印加し、次に電圧印加なしの時間を挟み、同じパターンのパルス電圧を印加してもよく、例えば図9に示すように、負のパルス電圧印加−電圧印加なしの時間−正のパルス電圧印加のパターンであってもよく、これ以外の任意の波形でパルス電圧を印加することもできる。
【0058】また、実施例の如く、異元素の材料のイオンを供給することによって、窒化シリコン膜の如き硬質膜に限らず、他の物性が改善された膜にも適用可能である。また、成膜の対象もディスク用基板以外の各種基板に適用することができる。
【0059】
【発明の効果】上述した如く、本発明は、複数のイオン源からそれぞれ異なるイオンビームを被成膜体に供給し、前記被成膜体の表面に所定の膜を形成するので、それぞれ異なるイオンを十分な量と均一な分布で被成膜体に供給することができる。従って、供給されたイオンが被成膜体上で反応し、反応が十分に進行した膜を被成膜体の表面に形成でき、その結果、物性が向上した所望の膜を形成することができる。




 

 


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