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発明の名称 防汚膜の形成方法、表示素子用フィルタおよびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−200210(P2001−200210A)
公開日 平成13年7月24日(2001.7.24)
出願番号 特願2000−14079(P2000−14079)
出願日 平成12年1月19日(2000.1.19)
代理人 【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4G059
4J038
5G435
【Fターム(参考)】
2K009 BB02 BB11 CC21 DD02 DD06 EE05 
4D075 CA02 CA34 CA36 CB02 DA06 DB11 DB13 DB31 DC24 EA07 EB16 EB43 EB47
4G059 AA06 AA08 AB11 AB17 AC16 AC22 FA05 FB05 GA01 GA16
4J038 DL071 DL081 DL091 GA12 MA12 NA05 NA11 PB08 PC03
5G435 AA00 AA09 AA17 GG11 HH02 HH03 KK07
発明者 伊藤 修
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】表示素子の反射防止膜の表面に設けられる防汚膜の形成方法であって、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、所定の特性吸収帯の吸収の強度に基づいて、表面処理剤の使用可否を判定する工程と、使用可と判定された前記表面処理剤を前記反射防止膜上に塗布する工程とを有する防汚膜の形成方法。
【請求項2】前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯である請求項1記載の防汚膜の形成方法。
【請求項3】前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、前記特性吸収帯の吸収の強度が所定値以下の場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程である請求項2記載の防汚膜の形成方法。
【請求項4】前記所定値は、成膜後の前記防汚膜において純水の接触角が約100°以上となる範囲で設定される値である請求項3記載の防汚膜の形成方法。
【請求項5】前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する請求項4記載の防汚膜の形成方法。
【化1】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【請求項6】前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、2980cm-1付近の吸収が消失している場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程である請求項5記載の防汚膜の形成方法。
【請求項7】表示素子の表示面に設けられる表示素子用フィルタの製造方法であって、基材上に反射防止膜を形成する工程と、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、所定の特性吸収帯の吸収の強度に基づいて、表面処理剤の使用可否を判定する工程と、使用可と判定された前記表面処理剤を前記反射防止膜上に塗布する工程とを有する表示素子用フィルタの製造方法。
【請求項8】前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯である請求項7記載の表示素子用フィルタの製造方法。
【請求項9】前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、前記特性吸収帯の吸収の強度が所定値以下の場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程である請求項8記載の表示素子用フィルタの製造方法。
【請求項10】前記所定値は、成膜後の前記防汚膜において純水の接触角が約100°以上となる範囲で設定される値である請求項9記載の表示素子用フィルタの製造方法。
【請求項11】前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する請求項10記載の表示素子用フィルタの製造方法。
【化2】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【請求項12】前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、2980cm-1付近の吸収が消失している場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程である請求項11記載の表示素子用フィルタの製造方法。
【請求項13】第1面側が表示素子の表示面に接する基材と、前記基材の第2面上に形成された反射防止膜と、赤外吸収スペクトルにおける所定の特性吸収帯の吸収が所定の強度である表面処理剤が、前記反射防止膜上に成膜された防汚膜とを有する表示素子用フィルタ。
【請求項14】前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯である請求項13記載の表示素子用フィルタ。
【請求項15】前記所定の強度は、前記防汚膜における純水の接触角が約100°以上となるような吸収の強度である請求項14記載の表示素子用フィルタ。
【請求項16】前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する請求項15記載の表示素子用フィルタ。
【化3】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【請求項17】前記所定の特性吸収帯は2980cm-1付近であり、前記所定の強度は前記特性吸収帯の吸収が消失していない状態の強度である請求項16記載の表示素子用フィルタ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示素子用フィルタに用いられる防汚膜の形成方法、表示素子用フィルタおよびその製造方法に関し、特に、耐汚染性、耐擦傷性の高い防汚膜を形成することができる防汚膜の形成方法、表示素子用フィルタおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】陰極線管(CRT)等の表示装置を目視する場合に、通常、透明材料からなるパネル面における光の反射が強いと、ゴーストやフレア等と呼ばれる外光の映り込みが生じて、表示装置に表示される画像が見づらくなる。パネル面における光の反射を防止するため、パネル面の基材と屈折率が異なる材料を例えば真空蒸着やスパッタリング等により基材上に成膜し、反射防止膜として用いられる。
【0003】反射防止膜の最表層としてはSiO2 等の無機酸化物あるいは無機ハロゲン化物が形成されることが多く、高い表面硬度が得られる反面、表面に付着した例えば指紋等の汚れを除去しにくいという問題があった。また、反射防止膜の表面に硬質物が接触した場合に、深い傷ができやすいという問題もあった。さらに、表面の撥水性が低く、水滴が付着すると表面に拡がって表示画像が歪んだり不鮮明となったりする問題もあった。
【0004】上記の問題を改良する目的で各種の表面処理剤が提案されており、例えば特開平8−180920号公報には、反射防止膜の表面が下記の一般式(I)で表されるフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を用いた表面改質膜で被覆されていることを特徴とする表示装置用フィルタが開示されている。
【化4】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【0005】市販されている各種の表面処理剤の中には、水や各種の溶剤によって溶解し、防汚機能が持続しないものや、撥水性はあっても摩擦あるいは磨耗に対する耐久性に乏しいもの等もある。例えば、パーフルオロポリエーテル化合物を用いた表面処理によって、反射防止膜の耐汚染性、耐摩擦性あるいは耐磨耗性は向上するが、化学的な安定性が十分でなく、溶剤処理等により表面改質膜の効果は著しく低減する。一方、上記の式(I)で表されるアルコキシシラン化合物を含有する表面処理剤を用いて防汚膜を形成した場合は特に、耐汚染性、耐擦傷性および耐加工性に優れた表面改質膜を形成することができる。
【0006】上記の防汚膜を形成する従来の方法について、以下に説明する。例えばガラスやプラスチックからなる基材上に、例えば真空蒸着やスパッタリング等のPVD(physical vapor deposition)法により単層または多層構造の反射防止膜を形成する。その後、上記の式(I)で表されるアルコキシシラン化合物を含有する組成物を表面処理剤として、例えばスピンコートやディッピング等の通常の塗布方法により反射防止膜の表面に塗布する。
【0007】アルコキシシラン化合物としては例えば数平均分子量が500〜10000程度のものが用いられ、通常、揮発性溶媒により例えば0.1〜5.0重量%程度の濃度に希釈されたものが表面処理剤として用いられる。また、上記のアルコキシシラン化合物と反射防止膜の最表層のSiO2 との反応を促進させるための触媒を、上記の表面処理剤に添加することもできる。表面処理剤を塗布後、常温であるいは加熱を行って乾燥させることにより、反射防止膜の表面に防汚膜が形成される。
【0008】成膜された防汚膜の機能については、純水の接触角を指標として撥水性の評価が行われる。通常、純水の接触角がほぼ100°以上であれば、表示素子用フィルタの防汚膜として十分な効果が得られる。一方、反射防止膜の最表層のSiO2 とアルコキシシラン化合物との反応が十分に進行しなかった場合には、溶剤により防汚膜が剥離あるいは除去されるため、防汚膜の機能が著しく低下する。そこで、耐溶剤性の試験として、所定の圧力を印加しながら、エタノールを含浸させた布で防汚膜の表面に所定の回数のワイピングを行い、ワイピングの前後で純水の接触角を比較する。
【0009】例えば、質量2kgの分銅を用いて20回のワイピングを行った場合に、反射防止膜のSiO2 とアルコキシシラン化合物との反応が十分に進行していれば、純水の接触角はワイピングの前後でほとんど変化せず、例えば110°程度となる。しかしながら、反射防止膜のSiO2 とアルコキシシラン化合物との反応が不十分であれば、ワイピングにより防汚膜が剥離あるいは除去されて、純水の接触角は例えば60°程度に低減する。この場合、防汚膜としての機能は損なわれる。
【0010】防汚膜の材料として用いられるアルコキシシラン化合物は、開封後、大気中の水分を吸収すること等により経時的に劣化する。劣化したアルコキシシラン化合物を用いて防汚膜を形成すると、反射防止膜の最表層のSiO2 とアルコキシシラン化合物との反応が十分に進行しないため、例えばエタノール等の溶剤によって塗膜が除去されてしまう。従来の防汚膜の形成方法によれば、アルコキシシラン化合物が劣化しているかどうかの確認は特に行わずに、塗布および乾燥工程を経て成膜された防汚膜に上記の耐溶剤性試験を行うことにより、防汚膜の不良が検査されていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の従来の防汚膜の形成方法あるいはそれを含む表示素子用フィルタの製造方法によれば、表面処理剤の劣化に起因する防汚膜の不良が検出されるまでに、ワイピング工程およびその前後の純水の接触角の測定が必要であり、表面処理剤の塗布および乾燥時間と合わせると例えば2〜3時間かかることになる。したがって、表示素子用フィルタの製造効率を下げる要因となっていた。
【0012】本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、したがって本発明は、表面処理剤の劣化に起因する不良を防止して、より短時間で防汚膜を形成することができる防汚膜の形成方法、それにより形成される防汚膜を含む表示素子用フィルタおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の防汚膜の形成方法は、表示素子の反射防止膜の表面に設けられる防汚膜の形成方法であって、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、所定の特性吸収帯の吸収の強度に基づいて、表面処理剤の使用可否を判定する工程と、使用可と判定された前記表面処理剤を前記反射防止膜上に塗布する工程とを有することを特徴とする。
【0014】本発明の防汚膜の形成方法は、好適には、前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯であることを特徴とする。本発明の防汚膜の形成方法は、さらに好適には、前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、前記特性吸収帯の吸収の強度が所定値以下の場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程であることを特徴とする。本発明の防汚膜の形成方法は、さらに好適には、前記所定値は、成膜後の前記防汚膜において純水の接触角が約100°以上となる範囲で設定される値であることを特徴とする。
【0015】本発明の防汚膜の形成方法は、好適には、前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする。
【化5】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【0016】本発明の防汚膜の形成方法は、好適には、前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、2980cm-1付近の吸収が消失している場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程であることを特徴とする。
【0017】これにより、開封後の経時変化によって劣化した表面処理剤を用いて防汚膜を形成することがなくなるため、防汚膜が設けられる表示素子用フィルタの歩留りを向上させることができる。また、本発明の防汚膜の形成方法によれば、防汚膜の形成後に個々の表示素子用フィルタについて、アルコールワイピング工程を伴う純水の接触角の測定を行う必要がないため、表示素子用フィルタの製造に要する時間を短縮することが可能となる。
【0018】さらに、上記の目的を達成するため、本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、表示素子の表示面に設けられる表示素子用フィルタの製造方法であって、基材上に反射防止膜を形成する工程と、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、所定の特性吸収帯の吸収の強度に基づいて、表面処理剤の使用可否を判定する工程と、使用可と判定された前記表面処理剤を前記反射防止膜上に塗布する工程とを有することを特徴とする。
【0019】本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、好適には、前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯であることを特徴とする。本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、さらに好適には、前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、前記特性吸収帯の吸収の強度が所定値以下の場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程であることを特徴とする。本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、さらに好適には、前記所定値は、成膜後の前記防汚膜において純水の接触角が約100°以上となる範囲で設定される値であることを特徴とする。
【0020】本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、好適には、前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする。
【化6】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【0021】本発明の表示素子用フィルタの製造方法は、好適には、前記表面処理剤の使用可否を判定する工程は、2980cm-1付近の吸収が消失している場合に、前記表面処理剤の使用を不可とする工程であることを特徴とする。
【0022】これにより、開封後の経時変化によって劣化した表面処理剤を用いて表示素子用フィルタの防汚膜を形成することがなくなり、表示素子用フィルタの歩留りを向上させることができる。また、本発明の表示素子用フィルタの製造方法によれば、防汚膜の形成後に個々の表示素子用フィルタについて、アルコールワイピング工程を伴う純水の接触角の測定を行う必要がないため、表示素子用フィルタの製造に要する時間を短縮することが可能となる。
【0023】上記の目的を達成するため、本発明の表示素子用フィルタは、第1面側が表示素子の表示面に接する基材と、前記基材の第2面上に形成された反射防止膜と、赤外吸収スペクトルにおける所定の特性吸収帯の吸収が所定の強度である表面処理剤が、前記反射防止膜上に成膜された防汚膜とを有することを特徴とする。本発明の表示素子用フィルタは、好適には、前記表面処理剤はアルコキシシラン化合物を含有し、前記所定の特性吸収帯はアルカンのC−H伸縮振動に帰属される特性吸収帯であることを特徴とする。本発明の表示素子用フィルタは、好適には、前記所定の強度は、前記防汚膜における純水の接触角が約100°以上となるような吸収の強度であることを特徴とする。
【0024】本発明の表示素子用フィルタは、好適には、前記表面処理剤は下記一般式(I)で示されるフルオロアルキル基あるいはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有することを特徴とする。
【化7】
f COX−R1 −Si(OR2 3 ・・・(I)
(但し、式中Rf はフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を示し、Xは例えばO、NH、S等の結合原子あるいは結合原子団を示し、R1 はアルキレン基を含む炭素原子鎖を示し、R2 はアルキル基を示す。)
【0025】本発明の表示素子用フィルタは、好適には、前記所定の特性吸収帯は2980cm-1付近であり、前記所定の強度は前記特性吸収帯の吸収が消失していない状態の強度であることを特徴とする。これにより、表示素子用フィルタの製造に要する時間を短縮し、かつ、表示素子用フィルタの歩留りを向上させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の防汚膜の形成方法、それにより形成される防汚膜を含む表示素子用フィルタおよびその製造方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)図1は本実施形態の防汚膜の形成方法を示すフローチャートである。本実施形態の防汚膜の形成方法は、表面処理剤を反射防止膜上に塗布する前に、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、赤外吸収スペクトルから表面処理剤の劣化がないか確認する工程を有する。
【0027】図1に示すように、表面処理剤の使用可否を確認する工程は、(1)溶媒のみの赤外吸収スペクトルを測定し、バックグラウンドとする工程と、(2)表面処理剤を溶媒で希釈した試料の赤外吸収スペクトルを測定する工程と、(3)(2)の赤外吸収スペクトルから(1)の赤外吸収スペクトルを差し引いたスペクトルを求める工程と、(4)2980cm-1付近のピークに基づいて表面処理剤の使用可否を判定する工程とを有する。
【0028】表面処理剤の使用可否を判定する工程(4)においては、2980cm-1付近のピークが消失していなければ表面処理剤を使用可とし、2980cm-1付近のピークが消失していれば表面処理剤を使用不可と判断する。2980cm-1付近のピークは、上記の式(I)で表されるアルコキシシラン化合物のアルコキシ基のC−H伸縮振動に帰属される。表面処理剤に含有されるアルコキシシラン化合物が劣化して、アルコキシ基が加水分解されると、アルカンのC−H結合がなくなるため、C−H伸縮に特徴的な2890〜2980cm-1付近のバンドが消失する。
【0029】赤外吸収スペクトルの測定は、汎用されている赤外分光光度計を用いて行う。フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて測定を行えば、より短時間で測定を行うことが可能である。溶媒の赤外吸収スペクトルの測定(1)および表面処理剤を含む試料の赤外吸収スペクトルの測定(2)は、例えばCaF2 を窓材とした液膜法により行う。また、液膜の厚さを調節して、吸光度を適切な範囲内とするために、適宜スペーサーを使用してもよい。
【0030】以上のように、表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、表面処理剤が使用可であることを確認する。その後、揮発性溶剤で適宜希釈され、さらに必要に応じてアルコキシシラン化合物と反射防止膜のSiO2 との反応を促進させる触媒が添加された表面処理剤を、反射防止膜の表面に塗布する(5)。アルコキシシラン化合物としては例えば数平均分子量が500〜10000程度のものを用い、揮発性溶媒により例えば0.1〜5.0重量%程度の濃度に希釈して表面処理剤とする。
【0031】アルコキシシラン化合物を希釈する揮発性溶剤としては、特に限定されないが、組成物の安定性、反射防止膜の表面に対する濡れ性や揮発性等を考慮して適宜選択する。具体的には例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶剤や、アセトン等のケトン系溶剤、あるいはヘキサン等の炭化水素系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤を単独で、あるいは2種以上を混合して溶剤として使用する。
【0032】上記のようにして得られた表面処理剤は、例えばスピンコートやディッピング等の通常の塗布方法により塗布される。表面処理剤を塗布後、常温であるいは加熱を行って乾燥させることにより(6)、反射防止膜の表面に防汚膜が形成される。防汚膜の膜厚は特に限定されないが、反射防止膜の光学特性に影響を及ぼさず、かつ適切な表面硬度が得られる範囲で適宜設定する。防汚膜の膜厚を例えば3〜5nmとすることにより、上記の光学特性と表面硬度の条件を満たすことができる。
【0033】従来の防汚膜の形成方法によれば、表面処理剤を塗布および乾燥させて防汚膜を成膜した後、純水の接触角を測定し、純水の接触角が100°以上であることを確認する。さらに、エタノールを含浸させた布を用いて加圧しながらワイピングを行い、再度、純水の接触角を測定する。一方、本実施形態の防汚膜の形成方法によれば、あらかじめ赤外吸収スペクトルの特定のバンドの強度と、表面処理剤を塗布して成膜した後の純水の接触角との相関を調べておくことにより、上記の純水の接触角の測定およびワイピングを行う必要がなくなり、防汚膜の形成に要する時間を短縮することが可能となる。
【0034】図2に、式(I)で表されるフルオロアルキル基またはパーフルオロポリエーテル基を有するアルコキシシラン化合物を含有する表面処理剤の開封後の劣化に伴う、赤外吸収スペクトルの変化の例を示す。図2においてA、B、C、Dの順に開封後の時間が長くなり、劣化が進行する。図2に示すように、表面処理剤の劣化に伴い、アルカンのC−H伸縮振動に帰属される2890〜2980cm-1付近のピークが減衰し、特に2980cm-1付近のピークはDの状態で完全に消失する。
【0035】表1に、図2のA〜Dの各状態の表面処理剤を用いて防汚膜を成膜し、エタノールを用いてワイピングを行った後の純水の接触角を示す。
【0036】
【表1】

【0037】耐溶剤性の試験として、エタノールを含浸させた布に質量2kgの分銅を載せ、防汚膜の表面に20回のワイピングを行った後、純水の接触角を測定した。表1に示すように、塗布前の表面処理剤の状態がA〜Cの場合には、エタノールワイピング後の純水の接触角がいずれも110°程度となり、防汚膜として十分な撥水機能を示した。それに対し、塗布前の表面処理剤の状態がDの場合には、エタノールワイピング後の純水の接触角が68°となり、撥水機能が著しく低下した。
【0038】以上のように、赤外吸収スペクトルの2890〜2980cm-1付近のバンド強度と、成膜後の防汚膜の耐久性には相関があり、塗布前の表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定することにより、成膜後の状態を予測することができる。したがって、劣化した表面処理剤を用いて防汚膜が形成されるのを防止することができ、また、成膜後の純水の接触角の測定およびアルコールワイピング工程を省略することができるため、防汚膜をより短時間で形成することが可能となる。
【0039】(実施形態2)図3の断面図に示すように、本実施形態の表示素子用フィルタは基材1上に反射防止膜2が形成され、その上層に防汚膜3が形成された構造を有する。上記の本実施形態の表示素子用フィルタの製造方法を、以下に説明する。まず、例えばガラスやプラスチックからなる基材1上に、例えば真空蒸着、スパッタリングあるいはイオンプレーティングのようなPVD法により単層または多層構造の反射防止膜2を形成する。
【0040】単層の反射防止膜2を形成する場合は、例えば、反射防止膜2の材料として基材よりも低屈折率の材料を選択し、反射防止膜2を構成する材料の屈折率と、反射防止膜2の膜厚との積で表される光学的膜厚が、反射を低減させたい光の波長の1/4またはその奇数倍となるように設計する。多層構造の反射防止膜2を形成する場合は、例えば、酸化スズがドープされたIn2 3 膜(ITO膜)とSiO2 膜を交互に積層させ、最表層をSiO2 膜とする。
【0041】次に、上記の実施形態1に示すように式(I)で表されるアルコキシシラン化合物を含有する表面処理剤の赤外吸収スペクトルを測定し、2980cm-1付近のピーク強度に基づいて表面処理剤の使用可否を確認する。その後、揮発性溶剤で適宜希釈され、さらに必要に応じてアルコキシシラン化合物と反射防止膜2の最表層のSiO2 との反応を促進させる触媒が添加された表面処理剤を、反射防止膜2の表面に塗布する。アルコキシシラン化合物としては例えば数平均分子量が500〜10000程度のものを用い、揮発性溶媒により例えば0.1〜5.0重量%程度の濃度に希釈されたものを表面処理剤として用いる。
【0042】上記の式(I)で表されるアルコキシシラン化合物を含有する表面処理剤は、例えばスピンコートやディッピング等の通常の塗布方法により塗布される。表面処理剤を塗布後、常温であるいは加熱を行って乾燥させることにより、反射防止膜2の表面に防汚膜3が形成される。上記のようにして形成された表示素子用フィルタは、例えば紫外線硬化樹脂を含有する接着剤を用いてCRT等の表示素子のパネル面に貼着することができる。
【0043】上記の本発明の実施形態の表示素子用フィルタの製造方法によれば、表示素子用フィルタの歩留りを向上させ、かつ表示素子用フィルタの製造に要する時間を短縮することが可能となる。本発明の防汚膜の形成方法、表示素子用フィルタおよびその製造方法の実施形態は、上記の説明に限定されない。例えば、防汚膜の下地となる反射防止膜の最表層はSiO2 層に限定されず、他の材料からなる層であってもよい。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0044】
【発明の効果】本発明の防汚膜の形成方法によれば、表面処理剤の劣化に起因する成膜の不良を防止し、より短時間で防汚膜を形成することができる。本発明の表示素子用フィルタの製造方法によれば、表面処理剤の劣化に起因する防汚膜の不良が防止された表示素子用フィルタを形成することが可能となる。また、本発明の表示素子用フィルタによれば、表示素子用フィルタの製造に要する時間を短縮し、歩留りを向上させることができる。




 

 


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