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発明の名称 スチロール樹脂廃材のリサイクル方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−131334(P2001−131334A)
公開日 平成13年5月15日(2001.5.15)
出願番号 特願平11−310404
出願日 平成11年10月29日(1999.10.29)
代理人 【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4F301
【Fターム(参考)】
4F301 AA15 AB01 CA09 CA12 CA65 
発明者 野口 勉 / 宮下 真由美 / 佐藤 則孝 / 長沢 博幸
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 難燃剤を含有するスチロール樹脂廃材を有機溶剤に溶解し、溶解液に低級アルコキシド、酸化マグネシウム及び/又は酸化アルミニウムを含有する吸着剤、活性炭から選ばれる少なくとも1種を添加することにより上記難燃剤を吸着除去した後、スチロール樹脂を分離回収することを特徴とするスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項2】 上記分離回収されたスチロール樹脂中の残留難燃剤量を1重量%以下とすることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項3】 上記有機溶剤は、スチロール樹脂に対し常温で濃度15重量%以上の溶解力を有し、ハロゲンを含まず、沸点が200℃以下の有機溶剤であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項4】 上記有機溶剤は、d−リモネンを成分として含むことを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項5】 上記低級アルコキシドは、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド、マグネシウムエトキシド、アルミニウムプロポキシドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項6】 上記吸着剤は、酸化マグネシウム系ハイドロタルサイト吸着剤であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項7】 上記低級アルコキシド、酸化マグネシウム及び/又は酸化アルミニウムを含有する吸着剤、活性炭から選ばれる少なくとも1種の添加量は、0.5〜5重量%であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項8】 予め上記溶解液から不溶解成分を除去しておくことを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項9】 難燃剤を吸着除去した溶解液を真空加熱脱揮して残留有機溶剤を除去回収し、スチロール樹脂を分離回収することを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項10】 吸着除去した難燃剤を270℃以上の処理水で分解することを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項11】 上記処理水は、過酸化水素水を0.1〜5体積%含むことを特徴とする請求項10記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項12】 上記処理水は、常温での水素イオン濃度pHが4以上、10以下であることを特徴とする請求項10記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項13】 上記スチロール樹脂廃材が難燃剤入り発泡スチロール廃材であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
【請求項14】 上記スチロール樹脂廃材が、難燃剤入りハイインパクトスチロールキャビネット廃材であることを特徴とする請求項1記載のスチロール樹脂廃材のリサイクル方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃発泡スチロール等のスチロール樹脂廃材から効率的にスチロール樹脂を回収し、再生スチロールとして再利用するためのスチロール樹脂廃材のリサイクル方法に関するものであり、特に、難燃剤を含むスチロール樹脂廃材のリサイクル方法に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば建材等に使われる難燃剤入りの発泡スチロール、あるいはTVキャビネット等のスチロール系廃材には、1〜10重量%程度のハロゲン系難燃剤が含まれており、リサイクル方法として、これまで有効な方法がなく、大部分が埋め立て、高炉原料へのリサイクル、あるいは焼却処理されているのが現状である。
【0003】その理由としては、難燃剤を数重量%含むスチロール樹脂を空気中、あるいは押し出し機中で200℃以上に加熱してリサイクルしようとすると、難燃剤が熱分解して酸が発生し、スチロールの物性が大幅に低下、あるいは発生する酸により処理装置が錆びてしまうためである。また、難燃剤としては一般にハロゲン系難燃剤が使われており、焼却処理を行う過程で1000℃以下の燃焼条件では、ダイオキシン類の発生も危惧される。
【0004】以上のことから、建材やTVキャビネット等の廃材のリサイクル率を高めていくことが要望されているが、その場合プラスチック部品のリサイクル率向上が必要不可欠である。
【0005】ただし、先にも述べたように、例えば回収されたTVキャビネット材には、デカブロムジフェニルエーテル等の臭素系難燃剤が含まれており、これを如何にして分離するかがスチロール部品のリサイクル率を向上するための鍵となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、例えば回収したTVキャビネットをリサイクルして再びTVキャビネットとして使用する場合に、臭素系難燃剤を除去することが必要である。
【0007】スチロール樹脂廃材等、樹脂中の難燃剤等の低分子量成分を分離する方法として、有機溶剤で溶解して溶液にし、その溶解液をエタノール、ヘキサン等の貧溶媒に混合して沈殿したスチロール樹脂を回収する方法が知られている。例えば、特開平7−214028号公報には、難燃剤入り発泡スチロールをリモネンで溶解し、溶解物を低級アルコールまたはその水溶液と混合して、生じた沈殿物を回収する方法が開示されている。
【0008】しかしながら、この方法では、再生スチロールとしてリサイクルすることは難しい。沈殿した樹脂中には溶剤、あるいは除去しきれない難燃剤が残留するため、樹脂中の残留溶剤、残留難燃剤を所定量以下にしなければ、再生材として利用できないことは明らかである。
【0009】通常、残留溶剤を含む樹脂沈殿物から溶剤を除去する方法として真空加熱脱揮が一般的である。しかし、温度、真空度などの分離条件によっては、回収されたスチロール樹脂に溶剤が残留し、耐熱性、引っ張り強度などを大幅に低下させてしまうことがある。また、低級アルコールを用いて樹脂を沈澱させる方法では、発泡スチロール溶解液に通常アルコールを20〜30%添加するか、溶解液に数倍量の低級アルコールに樹脂溶解液を投入して再沈澱することになり、低級アルコールが大量に必要になり、またアルコールを分離精製することも必要となる等プロセスが煩雑になるという問題がある。
【0010】したがって、難燃剤を含むスチロール廃材を特定の有機溶剤で溶解し、難燃剤を除去してリサイクルする場合、難燃剤の除去方法として、より簡便な方法が好ましい。また、難燃剤の除去率、溶剤を分離した後のスチロール樹脂中の残留溶剤量を力学物性を低下させない範囲に制御することが、上記難燃剤を含むスチロール樹脂廃材の高品質なリサイクルを行う上で必要である。
【0011】一方、除去した難燃剤は、種類が限定されれば再利用が可能であるが、通常、廃棄された各種家電製品に使用されている難燃剤は多品種であり、難燃剤の混合物では再利用の用途が限定、あるいは商品価値がなくなることがあり、回収された難燃剤は産業廃棄物として廃棄されるか、無害化処理することが必要になる。近年、産業廃棄物、特にハロゲンを含む廃棄物の処理コストが高く、処分場が逼迫していることを考慮すると、無害化処理する技術が今後必要となる。
【0012】そこで本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、難燃剤を効率的に除去することが可能で、難燃剤を含むスチロール樹脂廃材の高品質なリサイクルを行い得るスチロール樹脂廃材のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【0013】さらに、本発明は、除去した難燃剤を無害化するまでの一連のリサイクルプロセスを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明のリサイクル方法は、難燃剤を含有するスチロール樹脂廃材を有機溶剤に溶解し、溶解液に低級アルコキシド、酸化マグネシウム及び/又は酸化アルミニウムを含有する吸着剤、活性炭から選ばれる少なくとも1種を添加することにより上記難燃剤を吸着除去した後、スチロール樹脂を分離回収することを特徴とする。
【0015】さらには、吸着除去した難燃剤を270℃以上の処理水で分解することを特徴とする。
【0016】難燃剤を含むスチロール廃材から難燃剤を特定の吸着剤添加により効率的に除去し、残量難燃剤、残留溶剤量を規定値以下に制御することにより、高品質な再生スチロール系樹脂がリサイクルされる。
【0017】また、分離したハロゲン系難燃剤は、高温の水(超臨界水)により無害化(ハロゲンを無機塩として回収)される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用したスチロール樹脂廃材のリサイクル方法について、詳細に説明する。
【0019】本発明は、発泡スチロールやスチロールキャビネット等のスチロール樹脂廃材を有機溶剤に溶解減容化して、その溶液をリサイクルプラントへ輸送し、真空加熱脱揮して有機溶剤を除去回収するとともに、再生スチロールとしてリサイクルするスチロール樹脂廃材のリサイクルシステムにおいて、難燃剤を効率的に除去し、高品質な再生スチロールをリサイクルするというものである。
【0020】処理対象は、スチロール樹脂廃材全般であり、難燃剤入り発泡スチロール廃材や難燃剤入りハイインパクトスチロールキャビネット廃材等、その形態や性状は問わない。
【0021】これらスチロール樹脂廃材を、先ず、有機溶剤により溶解するが、有機溶剤としては、常温において15重量%以上の溶解力を有し、かつ沸点が200℃未満である有機溶剤を使用することが好ましい。
【0022】スチロール樹脂廃材を溶解する有機溶剤として、常温において15重量%以上の溶解力を有する有機溶剤を使用することにより、使用する有機溶剤の量を少なくすることができ、また、真空加熱脱揮工程における作業効率を向上させることができる。
【0023】また、スチロール樹脂廃材を溶解する有機溶剤として、沸点が200℃未満である有機溶剤を使用することにより、真空加熱脱揮工程における作業効率を向上させることができ、更に、スチロール樹脂中の残留溶剤量を確実に低減することができる。
【0024】使用する有機溶剤としては、芳香族系有機溶媒、ケトン系有機溶媒、モノテルペン系有機溶媒等を挙げることができる。そして、環境保全の観点からは、ハロゲンを含まない有機溶媒を使用することが好ましく、具体的にはトルエン、d−リモネン、エチルベンゼン、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、モノテルペン系溶媒等を挙げることができる。その中でも、d−リモネンは、この用途に好適な有機溶剤である。d−リモネンは、柑橘類の皮から抽出される植物製油であり、食品添加物にも使用されており、安全性、発泡スチロールの溶解性が高く、本発明に用いられる溶剤としては最適である。
【0025】有機溶剤に難燃剤入りスチロール樹脂廃材が溶解された溶解液は、予め、遠心分離、デカンテーション、濾過等の手法を用いて不溶解成分を除去しておくことが望ましい。
【0026】次いで、難燃剤の除去を行う。
【0027】難燃剤入りスチロール樹脂廃材のリサイクルを行う際、難燃剤を数重量%含んだ状態のスチロール樹脂を200℃以上に加熱すると、難燃剤が熱分解して酸が発生する。その結果、再生スチロール樹脂の耐熱性、引っ張り強度などの材料特性を大幅に低下し、品質が大きく低下してしまう。また、難燃剤が熱分解して発生する酸により処理設備が腐食してしまう。したがって、難燃剤入りスチロール樹脂廃材のリサイクルを行う際は、加熱工程の前に、スチロール樹脂中に含まれる難燃剤を少なくすることが重要となり、スチロール樹脂中の残留難燃剤量は、1重量%以下とすることが好ましい。スチロール樹脂中の残留難燃剤量が1重量%よりも多い場合、上述した酸により再生スチロール樹脂の耐熱性、引っ張り強度などの材料特性が大幅に低下し、品質が大きく低下してしまうからである。また、上述した酸により処理設備が腐食してしまうからである。したがって、スチロール樹脂中の残留難燃剤量を1重量%以下に規定することにより、再生スチロール樹脂の材料特性を良好に維持することができ、また、処理設備の腐食を防止することができるからである。
【0028】本発明においては、難燃剤の除去に特定の吸着剤を用いる。具体的には、低級アルコキシド、酸化マグネシウムや酸化アルミニウムを含有する吸着剤、活性炭を挙げることができる。
【0029】上記低級アルコキシドとしては、炭素数が5以下のアルコールのアルコキシドが好ましく、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド、マグネシウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド等が使用可能である。
【0030】酸化マグネシウムや酸化アルミニウムを含有する吸着剤としては、酸化マグネシウム系ハイドロタルサイト吸着剤を挙げることができる。
【0031】また、これら吸着剤の溶解液への添加量としては、0.5〜5重量%とすることが好ましい。添加量が少なすぎると、難燃剤を十分に除去することができず、あまり多すぎると、無駄になるばかりでなく後の工程の妨げになる。
【0032】難燃剤を吸着した吸着剤は、遠心分離、デカンテーション、濾過等の手法を用いて簡単に分離除去することができる。
【0033】難燃剤が上記吸着剤により吸着除去された溶解液は、例えば真空加熱脱揮して残留有機溶剤を除去回収し、スチロール樹脂を分離回収する。
【0034】スチロール樹脂中の残留溶剤は、再生スチロール樹脂の耐熱性、引っ張り強度などの材料特性を大幅に低下させ、品質を大きく低下させる原因となる。リサイクルされたスチロール樹脂は、例えば直径3mm、長さ3mm程度の再生スチロールペレットにされる。そして、再生スチロールペレット中の残留溶剤は、ペレットにより製造される製品中にそのまま残留してしまう。そのため、再生スチロールペレットに残留溶剤が多量に存在すると、これを使用して作製した製品の材料特性が低下し、品質が低下してしまう。
【0035】そこで、スチロール樹脂中の残留溶剤量を規定することが重要となり、スチロール樹脂中の残留溶剤量は、0.4重量%以下とすることが好ましい。スチロール樹脂中の残留溶剤量が0.4重量%よりも多い場合、再生スチロール樹脂の耐熱性、引っ張り強度などの材料特性が大幅に低下し、品質が大きく低下してしまうからである。したがって、スチロール樹脂中の残留溶剤量を0.4重量%以下に規定することにより、良好な材料特性を有する高品質な再生スチロールをリサイクルすることができる。
【0036】スチロール樹脂のリサイクル工程においては、熱間工程が含まれおり、たとえ真空中において行われてもリサイクルを繰り返すとスチロール樹脂は残存酸素の影響で酸化され、再生スチロール樹脂の分子量が減少してしまう。分子量が減少すると、引っ張り強度、衝撃強度等が低下するため、品質を大きく低下させる原因となる。したがって、再生スチロール樹脂の酸化を防止するために、熱間工程を実施する前に酸化防止剤をスチロール樹脂を溶解した溶液に添加することが好ましい。これにより、熱間工程においてスチロール樹脂に熱が加わった際、スチロール樹脂が酸化され、分子量が減少することを防止できる。
【0037】酸化防止剤としては、リン系、フェノール系及び硫黄系の酸化物が広く用いられているが、真空加熱工程を実施する場合においては、蒸気圧の低い酸化防止剤を使用することが好ましい。具体的にはヒンダードフェノール系酸化防止剤を好適に用いることができる。そして、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、スチロール樹脂廃材重量に対して0.01〜0.5重量%添加することが好ましい。更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、20℃における蒸気圧が10-7Pa以下であることが好ましい。これにより、熱間工程が施された場合においてもスチロール樹脂の酸化を防止すること、すなわち、スチロール樹脂分子量の減少を防止することができる。そして、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を0.01〜0.5重量%添加した場合でも、スチロール樹脂の耐熱性は、低下することなく良好な特性が維持され、高品質なスチロール樹脂をリサイクルすることができる。
【0038】さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤の中でも蒸気圧の低い酸化防止剤は、特に、スチロール樹脂の酸化防止効果が高く、これらを用いることにより更にリサイクル回数を増やすことができる。
【0039】上記真空加熱脱揮を実施する際の加熱温度は、260℃未満とすることが好ましい。加熱温度を260℃以上とすると、スチロール樹脂の熱分解が生じるため、再生スチロール樹脂の耐熱性、引っ張り強度などの材料特性が大幅に低下し、また、再生スチロール樹脂分子量の減少が激しくなり、品質が大きく低下してしまうからである。したがって、真空加熱脱揮を実施する際の加熱温度を260℃未満とすることで、良好な材料特性が維持され、高品質なスチロール樹脂をリサイクルすることができる。
【0040】一方、吸着除去した難燃剤は、270℃以上の処理水(いわゆる超臨界水)で分解する。ハロゲン系難燃剤は、温度270℃以上の水で処理することにより、無機酸として回収することができる。
【0041】このとき、使用する処理水は、過酸化水素水を0.1〜5体積%含むことが好ましい。これによりハロゲン系難燃剤を効率的に分解することができる。
【0042】また、処理装置の腐食等を考慮して、処理水にアンモニアを添加する等して、常温での水素イオン濃度pHを4以上、10以下としておくことが好ましい。
【0043】ハロゲンを含む有機物の分解、無害化方法としては、アルカリ分解法と超臨界水酸化法があげられる。前者の方法は、アルカリを加えて加熱分解(常圧)する方法であるが、反応時間が長い(数時間以上)、残さ発生、排ガス処理等の課題があり、完全に分解できるかどうか疑問が残る。超臨界水酸化法は、PCB(ポリクロロビフェニル)の場合、数分で99.9999%以上分解できることが報告されており、分解後の残さは無機塩の水溶液だけにできる。従って、TVキャビネット、建材用発泡スチロール、プリント配線板等に一般的に含まれているハロゲン系難燃焼剤(例えばデカブロモジフェニルエーテル)の分解無害化技術として有効である。
【0044】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例について、実験結果に基づいて説明する。
【0045】なお、各実施例においては、難燃剤入りスチロール廃材として、TV等のキャビネット材として用いられているハイインパクトポリスチレン(HIPS、難燃剤:10重量%)を用いた。また、スチロールを溶解する有機溶剤としては、純度約95%のd−リモネン(ヤスハラケミカル社製)を用いた。d−リモネンは、柑橘類の皮から抽出される植物精油であり、食品添加物にも使用されており、安全性、スチロールの溶解性が高く、本発明に用いられる溶剤としては最適である。
【0046】残留溶剤、難燃剤の定量は、分子量と残留溶剤量、難燃剤量が同時に測定できるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、残留溶剤、残量難燃剤のピーク面積(検出器:屈折計)より算出した。また、再生樹脂中の難燃剤量(ハロゲン量)は、樹脂を燃焼させ生成したハロゲンをイオンクロマトグラフィーにより定量した。高温水によるハロゲン系難燃剤の分解については、分解後の水溶液に含まれるハロゲンイオンをイオンクロマトグラフィーにより検出した。検出感度は、約0.01ppmである。
【0047】実施例1先ず、各種有機溶剤の溶解性テストを行った。臭素系難燃剤(デカブロモジフェニルエーテル)10重量%入りTVキャビネット廃材をトルエン(沸点:101℃)、メチルエチルケトン(沸点:80℃)、テトラヒドロフラン(沸点:65℃)、d−リモネン(沸点:175℃)、ジペンテン(170〜180℃)に室温で30重量%溶解した。いずれの溶媒も良好な溶解性を示し、トルエン、d−リモネン、ジペンテンは室温で30重量%以上の溶解能力を有する。
【0048】d−リモネンに10重量%臭素系難燃剤(デカブロモジフェニルエーテル)入りTVキャビネット材を15重量%溶解した液を室温で遠心分離(遠心力:10000G)し、不溶解成分である臭素系難燃剤を除去した。樹脂中の残留難燃剤量は1.5重量%であった。次に、その溶解液に表1に示す低級アルコキシドを吸着剤として添加した。溶液を60℃、1時間攪拌した後、再度遠心分離(10000G)を行い、吸着剤を除去した。真空乾燥により溶剤であるd−リモネンを除去して、残留難燃剤をGPCにより測定した。結果を表1に示す。
【0049】なお、表1において残留難燃剤が〜0%と表記されている場合、GPCの検出限界である0.05%以下であることを表す。
【0050】
【表1】

【0051】表1より、低級アルコキシド添加により、溶液中の残留難燃剤量を10%からほぼ100%除去できることが確認できた。特に、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドは残留難燃剤除去効果が高い。ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシドをそれぞれ3%溶液に添加して残留難燃剤を0.1%以下にした。次に、難燃剤を除去した溶液をバッグフィルター(孔径:約100μm)を通した後、真空加熱分離装置で真空脱揮した。真空チャンバー内の気相温度は220℃(熱媒体温度:230〜240℃)、真空度30トールである。溶液を毎時50リットル導入した。分離された溶剤は、コンデンサーを通って液化し、再生溶剤として再利用される。一方、真空加熱装置下部から、溶融したスチロール樹脂がギアーポンプで糸状に押し出され、冷却槽で冷やされて、ペレタイザーでカットされ再生スチロールペレットとなる。再生材の分子量低下は、5%以内であり、機械的性質として、引っ張り強度、曲げ強度、軟化点等を測定したが、新品材料とほぼ同等であった。
【0052】実施例2実施例1と同様に、d−リモネンに10重量%臭素系難燃剤(デカブロモジフェニルエーテル)入りTVキャビネット材を15重量%溶解した液を室温で遠心分離(遠心力:10000G)し、不溶解成分である臭素系難燃剤を除去した。樹脂中の残留難燃剤量は1.5重量%であった。次に、その溶解液に表2に示す合成酸化マグネシウム系吸着剤(商品名:キョーワード500、1000、2000、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイトDHT−4A,協和化学工業株式会社製)、および合成酸化アルミニウム系吸着剤(商品名:キョーワード700、協和化学工業株式会社製)を添加した。また、表面塩基性の天然粘土化合物として、商品名:ミズカエース#300(水澤化学工業株式会社製)を検討した。遠心分離した溶液に5重量%吸着剤を添加して、溶液を60℃、1時間攪拌した後、再度遠心分離(10000G)を行い、吸着剤を除去した。真空乾燥により溶剤であるd−リモネンを除去して、残留難燃剤をGPCにより測定した。結果を表2にまとめた。
【0053】
【表2】

【0054】表2の結果より、酸化マグネシウム系、或いは酸化アルミニウム系、白土などの表面塩基性酸化物吸着剤を添加することにより、約50%程度難燃剤を除去できることがわかった。また、表1に示したアルコキシド系吸着剤とのブレンドによりさらに除去率を上げられることを確認した。例えば、ナトリウムエトキシドとキョーワード1000との1:1ブレンドにより、除去率は90%に向上できた。また、活性炭とのブレンドも可能である。例えば、活性炭(エバダイヤ5AP2,AG400X、荏原製作所製)を5%添加することに、約30〜50%難燃剤を除去できた。難燃剤除去率、添加した吸着剤の除去の容易性、溶液の着色の問題などを考慮して、上記吸着剤は適宜ブレンドして使用可能である。これらの無機系吸着剤の使用方法としては、溶液に直接添加する方法以外に、吸着剤を充填したカラムなどに何回か溶液を通して除去する方法も可能である。
【0055】実施例3次に、除去した難燃剤(樹脂を含む)の高温高圧水による分解実験を行った。図1に分解実験装置の概略構成を示す。
【0056】この分解実験装置においては、原料液タンク1から水、あるいは水と過酸化水素等からなる水溶液が処理水としてポンプ2により送り出され、予熱部3において予熱器4を通過して所定温度に制御され、温度制御手段6を有する反応器5へ一定流量で供給される。
【0057】分解したいサンプルは、反応器5(容積:100cm3 、材質:インコネル)へ充填されるか、スラリー状態で原料液タンクからも供給できる。分解物は、水溶液とともに冷却器で冷やされ、回収される。回収された水溶液中の有機物量、ハロゲンの量を定量し、分解特性を検討した。
【0058】除去した難燃剤(樹脂を含む固体、難燃剤量:10重量%)194mgを反応器5に充填し、過酸化水素濃度1.25%の水溶液を20ml/分で反応器5へ供給した。水溶液の温度は、予熱器4のヒータでコントロールし、ヒータオンしてから約50分で238℃に、114分で398℃に反応器5内の温度が上昇した。
【0059】化1に難燃剤及び樹脂の分子構造を示す。図2に反応器からサンプリングされた分解物を含む水溶液について、水溶液中の炭素量(炭酸ガスを含む)及びハロゲン量と反応温度の関係を示す。
【0060】
【化1】

【0061】図2より、上記難燃剤サンプルは、約270℃付近から炭素量(TOC,ppm)が増加しており、サンプルの分解が起こり始めることがわかる。ハロゲン(臭素)の分解については、300℃付近から起こり始めている。このことは、樹脂成分の分解は先に起こりやすいことを示している。化1に示すように、ハロゲンはベンゼン環に結合しており、ベンゼン環の分解が樹脂より起こりにくいことを示している。ハロゲンの分解は、370℃付近がピークであり、全無機ハロゲン(ここでは臭素イオン)は、仕込み組成の90%であった。すなわち、難燃剤に含まれるハロゲンの約90%が分解されて、無機物として回収できたことになる。炭素成分についても、炭酸ガス(約20%)、残りは、カルボン酸、安息香酸まで分解していた。従って、270℃以上で過酸化水素を含む水で、ハロゲン系難燃剤は分解できることが分かった。
【0062】ここでは、水を20ml/分で流したが、水の流量を落とせば有機物の分解率は向上することは明らかである。例えば、1mlで流した場合、有機物は約80%が炭酸ガスに分解した。
【0063】過酸化水素濃度は、反応器に充填されるサンプル量に依存するが、サンプルの炭素量と同じモル数以上であれば、分解が可能である。今回、過酸化水素濃度1.25%で行ったが、モル数は約10倍モルである。従って、過酸化水素濃度は0.1%程度から効果が表れる。また、濃度を5%以上にしても、モル数としては大過剰であり、反応性の向上などの効果は見られない。また、大過剰に過酸化水素を入れると、もちろんコスト面でも不利であるが、反応器の腐食、過酸化水素の分解に伴う発熱などにより、反応器内の温度制御、圧力制御がコントロールできなくなることがある。従って、過酸化水素濃度は、0.1から5%が好ましい。酸素源としては、加圧空気等も適宜使用可能である。
【0064】実施例4実施例3と同様に、サンプル184mgを反応器に仕込み、過酸化水素濃度1.25%、アンモニア濃度0.03%の水溶液で分解を行った。ハロゲンは、75%回収され、有機物は実施例3と同様に分解した。アンモニアを添加することにより、水溶液のpH(水素イオン濃度)がアルカリ性になり、分解後のpHが中性に近くなるため、反応器の腐食の問題が軽減される。但し、反応器の腐食のことを考慮すると、水溶液のpHの範囲は、3〜10、好ましくは、4〜9がよい。
【0065】この範囲であれば、添加するアルカリ成分に特に規制はなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウムなどが使用可能である。
【0066】実施例5実施例1で分離された難燃剤、樹脂等を含む溶液は、濃度30%に調整し、真空加熱できる一軸スクリュー押し出し機(設定温度:250℃、KRCニーダー、栗本鉄工所製)に毎時20kgのフィード量で導入した。上記押し出し機は、2ヶ所真空引きできるベントがあり、真空度は30トールである。蒸発分離された溶剤成分は、コンデンサーで凝縮して再生溶剤として回収した。再生溶剤中には若干吸着剤の分解した低級アルコールが混入するため、必要に応じてアルコールとリモネン等の溶剤を蒸留分離した。押し出し機内で溶融したスチロール樹脂と難燃剤の複合物は、糸状に押し出され、冷却槽で冷やされて、ペレタイザーでカットされ再生難燃剤ペレットとなる。再生難燃剤ペレットは、適宜新品のスチロール樹脂等とブレンドされ、再度成形材料として再利用可能である。再生難燃剤ペレットを20%(難燃剤量:10%)含むスチロール系成形材料は、難燃性はV−0グレードであり、機械的性質として、引っ張り強度、曲げ強度、衝撃強度、軟化点などを測定したが、いずれの特性も新品材料とほぼ同等であった。
比較例1臭素系難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン)2重量%入りの建材用発泡スチロール廃材を約220℃に加熱された一軸押し出し機でペレット化した。加熱時に、酸素、及び臭素系難燃剤の分解物に起因する分解が起こり、分子量低下が約40%あり、耐熱性が約10℃、引っ張り強度が20%、衝撃強度が約30%低下した。
【0067】比較例2実施例1と同様に臭素系難燃剤(デカブロモジフェニルエーテル)10重量%入りTVキャビネット廃材をDBEエステル(沸点:210〜225℃)に20重量%溶解した。難燃剤を分離せずそのまま実施例1と同様なプロセス条件で真空加熱脱揮させてペレットを作製した。再生ペレット中には、残留溶剤が0.6%残留し、耐熱性が約30℃低下した。加熱温度を260℃に上げて脱揮したが、残留溶剤は0.5%以下にならない。加熱温度が260℃になると、難燃剤の分解、樹脂の熱劣化がひどくなり、分子量低下が約30%生じ、また濃黄色に着色する。従って、再生ポリスチレンの特性を維持するためには、加熱温度は260℃以下、溶剤の沸点は200℃以下、残留難燃剤量は1重量%以下にすることが好ましいことがわかった。
【0068】比較例3臭素系難燃剤(ヘキサブロモシクロドデカン)5重量%入りの建材用発泡スチロール廃材をd−リモネンに30重量%溶解した液をそのまま、実施例1と同様な真空加熱条件で分離した。残留溶剤は、0.1%以下であるが、臭素系難燃剤の分解物に起因する分子量低下が約20%あり、樹脂中の不純物が約2%生成して、耐熱性が約10℃、衝撃強度が約30%低下した。
【0069】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、難燃剤を含有するスチロール廃材を有機溶剤で溶解してリサイクルするプロセスにおいて、特定の吸着剤を用いることにより、溶解液中に残留するハロゲンを容易に除去することができる(除去率>99%)。したがって、難燃剤を除去した後、例えば260℃以下の温度で真空加熱脱揮することで、樹脂の熱劣化を起すことなく、高品質な再生材がリサイクルできる。
【0070】また、除去したハロゲン系難燃剤の分解方法として、高温の水が有効であり、約90%以上ハロゲンを無機物として回収できる。
【0071】これらにより、難燃剤含有スチロール廃材のリサイクル率を大幅に向上することができ、資源の有効利用が可能である。




 

 


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