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発明の名称 磁気記録媒体の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−107070(P2001−107070A)
公開日 平成13年4月17日(2001.4.17)
出願番号 特願平11−284791
出願日 平成11年10月5日(1999.10.5)
代理人 【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4H104
5D006
5D112
【Fターム(参考)】
4H104 BD07A CD04A LA20 PA16 
5D006 AA01 AA02 AA06 BB01 EA03 FA02 FA05 FA06
5D112 AA05 AA07 AA11 AA22 BC02 BC05 FA09 GA19
発明者 伊藤 条太 / 佐藤 泰美 / 谷田貝 洋
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面に、下記化1で示される末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物及び下記化2で示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【化1】

【化2】

【請求項2】 上記末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と、上記分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとの混合比が、重量比で10:90〜90:10であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項3】 上記化2にて示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルの上記RI,RIIの炭素数の合計数が6〜30であることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】 上記保護膜がカーボンよりなることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】 上記保護膜は、化学的気相成長法により形成されることを特徴とする請求項1記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】 非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面に、下記化3で示される末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物及び下記化4で示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【化3】

【化4】

【請求項7】 上記末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、上記分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとの混合比が、重量比で10:90〜90:10であることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項8】 上記化4にて示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルの上記RI,RIIの炭素数の合計数が6〜30であることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項9】 上記保護膜がカーボンよりなることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項10】 上記保護膜は、化学的気相成長法により形成されることを特徴とする請求項6記載の磁気記録媒体の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、非磁性支持体上に、真空薄膜形成技術により強磁性金属薄膜を磁性層として形成する磁気記録媒体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気記録媒体としては、酸化物磁性粉末や合金磁性粉末等の強磁性粉末と結合剤と、有機溶剤等よりなる磁性塗料を非磁性支持体上に塗布することで磁性層が形成される、いわゆる塗布型の磁気記録媒体が広く使用されている。
【0003】これに対し、高密度記録、長時間記録への要求の高まりとともに、Co、Co−Ni合金、Co−Cr合金、Co−O等の強磁性金属磁性材料をめっきや真空薄膜形成技術(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等)によってポリエステルフィルムやポリイミドフィルム等の非磁性支持体上に直接被着させることで磁性層が形成される、いわゆる強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体が使用されてきている。そして、このような強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体は、民生用コンスーマービデオフォーマット(8ミリHi−8方式、DV方式)或いは業務用ビデオフォーマット(DVCAM)等において幅広く実用化されている。
【0004】この強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体は、塗布型の磁気記録媒体に比べて抗磁力、角形比等の磁気特性に優れ、短波長領域での電磁変換特性に優れるばかりでなく、磁性層の厚みを極めて薄くすることが可能であるため、記録減磁や再生時の厚み損失が著しく小さいこと、磁性層中に非磁性材料である結合剤等を混入する必要がないことから、磁性材料の充填密度を高めることが可能である等、数々の利点を有している。
【0005】一般に、磁気記録媒体は、磁気信号の記録・再生の過程で磁気ヘッドとの高速相対運動のもとにおかれ、その際走行が円滑に、かつ安定な状態で行われなければならない。また、磁気ヘッドとの接触による磨耗や損傷はなるべく少ないほうがよい。
【0006】しかしながら、上述の強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体では、磁性層表面の平滑性が極めて良好であるために、実質的な磁気ヘッドとの接触面積が大きくなることから、凝着現象、いわゆるハリツキが起こり易くなったり、摩擦係数が大きくなり、耐久性や走行性等に欠点が多く、それらの改善が大きな課題となっている。
【0007】そこで、例えば、上記磁気記録媒体の磁性層、すなわち強磁性金属薄膜表面に潤滑剤を塗布して、耐久性や走行性を改善することが試みられている。このような用途に使用される潤滑剤としては、例えば、有機フッ素化合物が有効であることが知られている。
【0008】特に、特開平05−194970号公報等には、末端に水酸基或いはカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルのエステル化合物等を潤滑剤に用いることにより、如何なる使用条件下でも良好な潤滑効果を発揮する磁気記録媒体が開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体においては、より優れた耐久性を確保する為に、強磁性金属薄膜上にカーボン保護膜を形成する技術が確立されている。そして、前述のコンスーマービデオフォーマットであるDVC用テープ、或いは業務用ビデオフォーマットであるDVCAM用テープ、更にはテープストリーマ用途であるAIT用テープ等に用いられる強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体としては、強磁性金属薄膜の上にカーボン保護膜が形成された磁気記録媒体が実用化されている。このようなカーボン保護膜の実用化により、耐久性の確保は充分となり、今後の強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体においては、このカーボン保護膜の存在が不可欠になると思われる。
【0010】上記カーボン保護膜はDLC(diamond like carbon)膜とも呼ばれ、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法や、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によって形成される。
【0011】ここで、CVD法によりカーボン保護膜を形成する場合、PVD法によりカーボン保護膜を形成する場合に比較して、高速成膜が可能であること、被覆率が高いこと、及び省電力、省エネルギーであるといった利点を有している。すなわち、CVD法によりカーボン保護膜を形成することにより、高速成膜が可能となり生産性が向上する。また、カーボン保護膜の高い被覆率により、磁性薄膜層の耐食性や耐錆性が改善される。さらに、省電力、省エネルギーにより地球環境に与える影響を少なくすることができる。
【0012】しかしながら、CVD法によるカーボン保護膜は、PVD法によるカーボン保護膜と比較して、表面のエネルギーが小さい。そのため、上述したように、磁気記録媒体の耐久性や走行性を改善するべく、潤滑剤を使用しようとすると、潤滑剤とカーボン保護膜との吸着性が弱く、安定且つ良好な潤滑効果が発揮されない。そのため、カーボン保護膜の存在を考慮した潤滑剤の設計が必要となる。
【0013】そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、長期に亘り潤滑効果が持続する潤滑剤を用いるとともに、保護膜と潤滑剤との密着安定性性を高めることにより、優れた走行性及び耐久性を実現した磁気記録媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面に、下記化5で示される末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物及び下記化6で示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤層を形成することを特徴とする。
【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】上述したような本発明に係る磁気記録媒体製造方法では、上記保護膜の表面に紫外線を照射しているので、保護膜と潤滑剤との密着性が向上する。さらに、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、上記化5で示される化合物と上記化6で示される化合物とを含有する潤滑剤が最外層に保持されているので、如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、長期に至って良好な走行性及び耐久性が確保される。
【0018】また、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、非磁性支持体上に金属磁性薄膜よりなる磁性層を形成し、この磁性層上に保護膜を形成する磁気記録媒体の製造方法において、上記保護膜の表面に、不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射し、その後、上記保護膜表面に、下記化7で示される末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物及び下記化8で示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤が最外層に保持されてなることを特徴とする。
【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】上述したような本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、表面に紫外線が照射されているので、保護膜と潤滑剤との密着性が向上する。さらに、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、上記化7で示される化合物と上記化8で示される化合物とを含有する潤滑剤が最外層に保持されているので、如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、長期に至って良好な走行性及び耐久性が確保される。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】〈第1の実施の形態〉図1に、本発明を適用した磁気記録媒体の一例の断面図を示す。
【0024】この磁気記録媒体1は、図1に示すように、非磁性支持体2上に磁性層3として強磁性金属薄膜が形成され、この磁性層3上に最外層として保護膜4が形成されてなる。
【0025】非磁性支持体2としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等のプラスチック、アルミニウム合金、チタン合金等の軽金属、ガラス等のセラミックス等が挙げられる。さらに、この非磁性支持体2の形態としては、フィルム、シート、ディスク、カード、ドラム等の何れの形態でもよい。
【0026】また、非磁性支持体2は、その表面に山状突起やしわ状突起、粒状突起等の突起が1種以上形成され、表面粗さがコントロールされたものでも良い。
【0027】具体的には、上記山状突起は、例えば、高分子フィルム製膜時に粒径50nm〜300nm程度の無機微粒子を内添させることにより形成され、高分子フィルム表面からの高さが10nm〜100nm、密度が約1×104個/mm2〜1×105 個/mm2とする。この山状突起を形成するための無機微粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ等が好適である。
【0028】上記しわ状突起は、例えば、特定の混合溶媒を用いた樹脂の希薄溶液を塗布乾燥させることにより形成される突起であって、その高さが0.01μm〜10μm、好ましくは0.03μm〜0.5μm、突起間の最短間隔が0.1μm〜20μmとする。
【0029】このしわ状突起を形成するための樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリスチロール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルブチラール、ポリフェニレンオキサイド、フェノキシ樹脂等の単体、混合体または共重合体であり、可溶性溶剤を有するものが適している。そして、これらの樹脂をその良溶媒に樹脂濃度1ppm〜1000ppmで溶解させた溶液に、その樹脂の貧溶媒であって前記良溶媒より高い沸点を有する溶媒を樹脂に対して10倍量〜100倍量添加した溶液を、高分子フィルムの表面に塗布・乾燥させることにより、非常に微細なしわ状突起を有する薄膜を形成することができる。
【0030】上記粒状突起は、アクリル樹脂等の有機超微粒子またはシリカ、金属粉等の無機微粒子を球状あるいは半球状に付着させることにより形成される。この粒状突起の高さは、5nm〜50nm、密度は1×106個/mm2〜5×107個/mm2程度とする。
【0031】これらの突起の少なくとも1種以上を形成することにより、磁性層3である強磁性金属薄膜の表面性を制御することが可能であるが、2種以上を組み合わせることにより効果が増し、特に、山状突起を設けた非磁性支持体2上にしわ状突起と粒状突起を形成すると、耐久性や走行性が著しく改善される。この場合、突起全体としての高さは、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましく、その密度は1×105個/mm2〜1×107個/mm2であることが好ましい。
【0032】また、上記磁性層3となる強磁性金属薄膜としては、例えば、Fe、Co、Ni等の金属の他に、Co−Ni合金、Co−Pt合金、Co−Ni−Pt合金、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、Fe−Co−Ni合金、Fe−Co−B合金、Co−Ni−Fe−B合金、Co−Cr合金或いはこれらにCr、Al等の金属が含有された強磁性金属材料よりなるものが挙げられる。特に、Co−Cr合金を使用した場合には、垂直磁化膜が形成される。
【0033】そして、上記磁性層3である強磁性金属薄膜は、真空蒸着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の真空薄膜形成技術により連続膜として形成される。
【0034】上記真空蒸着法は、1×10-2Pa〜1×10-6Paの真空下で強磁性金属材料を抵抗加熱、高周波加熱、電子ビーム加熱等により蒸発させ、非磁性支持体2上に蒸発金属(強磁性金属材料)を沈着させるものであり、一般に高い抗磁力を得るために非磁性支持体2に対して上記強磁性金属材料を斜めに蒸着する斜方蒸着が用いられる。さらに、より高い抗磁力を得るために酸素雰囲気中で上記蒸着を行うものも含まれる。
【0035】上記イオンプレーティング法も真空蒸着法の1種であり、1×10-2Pa〜1×10-1Paの不活性ガス雰囲気中でDCグロー放電、RFグロー放電を起こして、放電中で上記磁性金属材料を蒸発させるというものである。
【0036】上記スパッタリング法は、1×10-1Pa〜1×10Paのアルゴンガスを主成分とする雰囲気中でグロー放電を起こし、生じたアルゴンガスイオンでターゲット表面の原子をたたき出すというものであり、グロー放電の方法により直流2極、3極スパッタ法や、高周波スパッタ法、またはマグネトロン放電を利用したマグネトロンスパッタ法等がある。このスパッタリング法による場合には、CrやW、V等の下地膜を形成しておいてもよい。
【0037】なお、上記いずれの方法においても、非磁性支持体2上に予めBi,Sb,Pb,Sn,Ga,In,Cd,Ge,Si,Tl等の下地金属層を被着形成しておき、その非磁性支持体2の表面に対して垂直方向から成膜することにより、磁気異方性の配向がなく、面内等方性に優れた磁性層3を形成することができ、磁気記録媒体1を、例えば磁気ディスクとする場合には好適である。また、このような手法により形成される強磁性金属薄膜の膜厚は、0.01μm〜1μmであるのが好ましい。
【0038】保護膜4は、カーボンからなり、磁性層3となる強磁性金属薄膜上に形成される。特に、保護膜4として、比較的硬度の高いダイヤモンドライクカーボンよりなるものが好ましく例示される。
【0039】この保護膜4は、CVD法等により形成される。CVD法によって保護膜4を形成する場合には、例えば、真空容器中に炭化水素ガス、あるいは炭化水素と不活性ガスとの混合ガスを導入し、10Pa〜100Pa程度の圧力に保持した状態で、真空容器内に放電させて、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、強磁性金属薄膜上に保護膜4を形成する。
【0040】放電形式としては、外部電極方式、内部電極方式のいずれでもよく、放電周波数については、実験的に決めることができる。また、強磁性金属薄膜が形成された非磁性支持体2側に配された電極に0〜−3kVの電圧を印加することにより、保護膜4の硬度の増大及び密着性を向上させることができる。
【0041】保護膜4の材料となる上記炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、アセチレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ベンゼンなどを用いることができる。
【0042】この保護膜4は、スペーシングロスを少なくかつ、強磁性金属薄膜の磨耗防止の効果を得られるよう、その厚さが3nm〜15nm程度、特に5nm〜10nm程度であることが好ましい。
【0043】また、この保護膜4の表面には、不活性ガス雰囲気中で紫外線が照射される。すなわち、本手法では、詳細を後述する潤滑剤層を塗布する前に、保護層4の表面に不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射する。保護膜4表面は、紫外線が照射されると紫外線の光子エネルギにより炭素−炭素結合や炭素−水素結合が切断され、極性基が形成された状態となる。後述するような潤滑剤は、極性基に吸着できるため、保護膜4に対して強固に吸着することができる。
【0044】特に、保護膜4をCVD法により形成した場合には、物理的気相成長法(PVD法)によりカーボン膜を形成した場合と比較して水素含有量が多いため、炭素−水素結合が切断されてなる極性基がより多く存在する。このため、保護膜4をCVD法により形成した場合には、潤滑剤との吸着力を向上させうる極性基がより多く存在することになり、潤滑剤と保護膜4との吸着力がより向上することになる。
【0045】また、この手法では、保護膜4に対する紫外線の照射を不活性ガス雰囲気中で行っている。仮に、保護膜4に対する紫外線の照射を大気中で行うと、紫外線によって発生するオゾン分子と、紫外線により生じた極性基とが結合してしまい、いわゆる、ウィークバウンダリーレアー化してしまう結果、保護膜4と潤滑剤との吸着力が低下してしまう。言い換えると、保護膜4に対する紫外線の照射を不活性ガス雰囲気中で行うことによって、保護膜4表面に極性基を確実に形成することができ、保護膜4と潤滑剤との吸着力を確実に向上させることができる。なお、不活性ガスとしては、窒素、アルゴン及び二酸化炭素を例示することができる。
【0046】具体的に、紫外線としては、例えば、低圧水銀ランプを使用して波長が185nm或いは254nmの紫外線を使用することが好ましい。波長が185nmの紫外線では、光子エネルギが155Kcal/molとなり、波長が254nmの紫外線では、光子エネルギが113Kcal/molとなる。このような低圧水銀ランプを使用することによって、保護膜4に対して紫外線を効率よく照射することができる。
【0047】また、保護膜4表面に紫外線を照射する際には、例えば、図2に示すような紫外線照射装置が使用される。紫外線照射装置は、長尺状の磁気記録媒体を巻回してなる供給ロール5及び巻取りロール6と、供給ロール5及び巻取りロール6との間に配設された紫外線処理部7とを備え、磁気記録媒体を供給ロール5から巻取りロール6に向かって走行させるとともに紫外線処理部7に順次搬入する。紫外線処理部7は、内部を密閉できる筐体8内に配設された複数のガイドロール9と、複数のガイドロール9に架け合わされた磁気記録媒体の保護膜4に対向するように配設された複数の光源ランプ10とを備える。また、紫外線処理部7は、筐体8にガス供給口8a及びガス排出口8bが形成されてなり、ガス供給口8aから不活性ガスを導入することによって、筐体8内を不活性ガス雰囲気とすることができる。
【0048】このように構成された紫外線照射装置では、筐体8内を不活性ガス雰囲気とした状態で、順次走行する磁気記録媒体の保護膜4に対して光源ランプ10から紫外線を照射する。したがって、この紫外線照射装置によれば、供給ロール5から巻取りロール6に向かって磁気記録媒体を走行させることによって、保護膜4に対して不活性ガス雰囲気中で紫外線を照射することができる。
【0049】そして、特に、磁気記録媒体1においては、最外層となる保護膜4上に下記化9で示される末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と、下記化10にて示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤を塗布する。
【0050】
【化9】

【0051】
【化10】

【0052】このような化9に示される化合物及び化10に示される化合物を有する潤滑剤は、如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、且つ長期に至り潤滑効果を持続する特性を有するものである。
【0053】上記化9に示す末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物は、例えば、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸クロリドとを、トルエン中で塩基を触媒として反応させることによって得られる。
【0054】ここで、上記末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、水酸基を両末端に有するものが好ましく、例えば、HO−CH2CF2(OC24p(OCF2qOCF2CH2−OH(但し、化学式中のp,qはいずれも1以上の整数を表す。)等が挙げられる。上記の末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルは、勿論、これらに限定されるわけではない。
【0055】また、上記末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約されるものではないが、実用的には600〜5000程度が好ましい。分子量が大きすぎると、末端基の吸着基としての効果が薄れると同時に、パーフルオロポリエーテル鎖が大きくなる分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくくなる。逆に、分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエーテル鎖による潤滑効果が失われてしまう。
【0056】なお、この末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルにおいては、パーフルオロポリエーテル鎖が部分水素化されてもよい。すなわち、パーフルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以下)を水素原子で置換してもよい。この場合には、パーフルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオロポリエーテルを使用すればよい。
【0057】一方、上記長鎖カルボン酸クロリドとしては、市販品、或いは合成品何れも使用可能である。このように、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸クロリドとを反応させて合成される、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物が、上記化9に示す化合物である。
【0058】ここで、上記長鎖カルボン酸、つまり合成材料の長鎖カルボン酸クロリドのカルボン酸部分は、カルボン酸基を有する任意の構造で良く、例えば、分岐構造、異性体構造、脂環構造、不飽和結合の有無によらず選択することができる。また、この長鎖カルボン酸は、分子量に関しても任意であるが、分子量が小さくなるに伴って通常の炭化水素系の有機溶媒に溶解し難くなることから、少なくともアルキル基の炭素数が10以上であることが好ましい。
【0059】また、上述したように、本発明に用いられる潤滑剤には、上記化9に示すエステル化合物の他に、上記化10に示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルが含有される。
【0060】上記化10に示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステル中におけるRI,RIIの炭素数の合計数は6〜30であることが好ましい。RI,RIIの炭素数の合計数は6未満であると潤滑効果が乏しく、スチル耐久性に効果がなく、RI,RIIの炭素数の合計数が30を越えると、有機溶媒への溶解性が小さくなり、均一な潤滑剤塗布層を形成するのが難しい。さらに、m,nは、m≧2,n≧4且つm+n≦30を満足する整数であることが好ましい。m<2では化合物が合成不可能であり、n<4では潤滑効果が乏しい。また、m+n>30となると有機溶媒への溶解性が小さくなる。
【0061】また、上記化10に示す分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルは、化10中のRI,RIIに示される基が不飽和結合を有さない。RI,RIIに示される基が不飽和結合を有すると、耐久性が劣化するためである。よって、化10中のRI,RIIは、不飽和結合を有さない炭化水素、つまりアルキル基である必要がある。
【0062】上記分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルは、部分フッ化アルコールと分岐カルボン酸とをほぼ等モル量で反応させることによって合成することができる。反応式は以下のようになる。
【0063】先ず、化11に示す付加反応及び化12に示す還元反応を経て、部分フッ化アルコールが合成される。
【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】次に、このように合成された部分フッ化アルコールと分岐カルボン酸とが化13に示す反応を経て、分岐カルボン酸がエステル化されて、最終的に、分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルが合成される。
【0067】
【化13】

【0068】なお、ここで重要なのは、カルボン酸パーフルオロアルキルエステルが分岐構造を有することである。この分岐構造により炭素数が同一のカルボン酸エステルにおいて、エステルの融点を下げることが可能であり、滑剤析出、滑剤塗りムラ等の問題を改善することができる。さらに、上記分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルが全て不飽和結合を含まないアルキル基からなることにより、長期間の保存においても初期の潤滑特性を維持することができる。
【0069】ここで、磁気記録媒体1に使用される潤滑剤においては、化9に示す末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と、化10に示す分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとの混合比は、重量比で10:90〜90:10であるのが好ましい。上記範囲を超えると、本発明による効果を得ることが難しい。
【0070】また、磁気記録媒体1において潤滑剤を最外層に保持させる方法としては、保護膜4の表面に潤滑剤をトップコートする方法が挙げられる。ここで、その塗布量は、0.05mg/m2〜100mg/m2であるのが好ましく、0.1mg/m2〜50mg/m2であるのがより好ましい。この塗布量があまり少なすぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性及び耐久性の向上という効果が表れず、また、この塗布量があまり多すぎると、摺動部材と強磁性金属薄膜との間でハリツキ現象が起こり、却って走行性が悪くなる。
【0071】以上のように、本実施の形態に係る磁気記録媒体1は、上述したような、密着性や潤滑性の点で非常に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いているので、良好な走行性及び耐久性が確保されたものとなる。
【0072】また、この磁気記録媒体1においては、最外層として、カーボンよりなる保護膜4が形成されているとともに、その表面に紫外線が照射されているので、用いられる潤滑剤と、保護膜4との密着性が向上し、更に良好な耐久性を実現することができる。
【0073】また、この磁気記録媒体1においては、磁性層3を強磁性金属薄膜としていることから、高密度記録、長時間記録にも十分対応可能である。
【0074】さらに、本発明の磁気記録媒体1においては、非磁性支持体2上の上記磁性層3が形成される面とは反対側の面に、いわゆるバックコート層を形成しても良い。このバックコート層は、結合剤樹脂と粉末成分とを有機溶媒に混合分散させたバックコート用塗料を非磁性支持体2に塗布することにより形成される。
【0075】ここで、バックコート用塗料に使用される結合剤樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ニトロセルロース−メラミン樹脂、高分子量ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、メタクリル酸塩共重合体とジイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの混合物、尿素ホルムアルデヒド樹脂、低分子量グリコール/高分子量ジオール/トリフェニルメタントリイソシアネートとの混合物、ポリアミン樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0076】あるいは、粉末成分の分散性の改善を図るために、親水性極性基を有する結合剤樹脂を使用してもよい。
【0077】一方、上記粉末成分としては、導電性を付与するためのカーボン系微粉末や表面粗度のコントロール及び耐久性向上のために添加される無機顔料が挙げられる。上記カーボン系微粒子としては、例えば、ファーネスカーボン、チャネルカーボン、アセチレンカーボン、サーマルカーボン、ランプカーボン等が例示され、上記無機顔料としては、α−FeOOH、α−Fe23、Cr23、TiO2、ZnO、SiO、SiO2、SiO2・2H2O、Al23、CaCO3、MgCO3、Sb23等が挙げられる。
【0078】さらに、上記バックコート用塗料の有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエーテル等のエステル系溶剤、グリコールジメチルエーテル、グリコールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコールエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒、メチレンクロライド、エチレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリン、ジクロルベンゼン等の塩素化炭化水素系溶媒等、汎用の溶剤を用いることができる。
【0079】さらに、上記のバックコート層には潤滑剤を併用してもよい。この場合、上記バックコート層中に潤滑剤を内添する方法、あるいはバックコート層上に潤滑剤を被着する方法がある。いずれにしても、上記潤滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、金属石鹸、脂肪族アルコール、シリコーン系潤滑剤等、従来周知の潤滑剤が使用できる。
【0080】以上のような本実施の形態に係る磁気記録媒体1は、つぎのようにして作製される。
【0081】先ず、非磁性支持体2上に、例えば真空蒸着法により磁性層3となる強磁性金属薄膜を形成する。その後、この磁性層3上に、例えばプラズマCVD法により保護膜4を形成する。さらに、この保護膜4の表面に対して紫外線を照射する。そして、この保護膜4上に、上述の潤滑剤を塗布して保護膜に潤滑剤を保持させて、磁気記録媒体1が得られる。なお、必要に応じてバックコート層等を形成しても勿論構わない。
【0082】詳しくは、上記磁性層を形成する真空蒸着装置としては、図3に示すような連続巻き取り式の真空蒸着装置が挙げられる。
【0083】この真空蒸着装置は、いわゆる斜方蒸着用として構成され、内部が例えば1×10-3Pa程度の真空にされた真空室11内に、例えば−20℃程度に冷却され、図中矢印Aで示すように反時計回り方向に回転する冷却キャン12と、これに対向するように強磁性金属薄膜用の蒸着源13が配置されてなるものである。
【0084】また、この真空蒸着装置においては、真空室11内に、図中の反時計回り方向に回転する供給ロール14と図中の反時計回り方向に回転する巻き取りロール15も配設されており、非磁性支持体16は供給ロール14から図中矢印Bで示す方向に繰り出され、冷却キャン12の周面に沿って走行した後、巻き取りロール15に巻き取られる。
【0085】なお、供給ロール14と冷却キャン12との間、及び冷却キャン12と巻き取りロール15との間にはそれぞれガイドローラー17、18が配置され、供給ロール14から冷却キャン12、及びこの冷却キャン12から巻き取りロール15に従って走行する非磁性支持体16に所定のテンションをかけ、非磁性支持体16が円滑に走行するようになされている。
【0086】上記蒸着源13は坩堝等の容器にCo等の強磁性金属材料が収容されたものであり、この真空蒸着装置においては、この蒸着源13の強磁性金属材料を加熱、蒸発させるための電子ビーム発生源19も配設されている。すなわち、上記電子ビーム発生源19から電子ビーム20を蒸着源13の強磁性金属材料に加速照射してこれを図中矢印Cで示すように加熱、蒸発させる。すると、強磁性金属材料は蒸着源13と対向する冷却キャン12の周面に沿って走行する非磁性支持体16上に被着し、非磁性支持体16上に強磁性金属薄膜が形成されることとなる。
【0087】なお、上記真空蒸着装置においては、蒸着源13と冷却キャン12との間に防着板21を設け、この防着板21にシャッタ22を位置調整可能に設けて、非磁性支持体16に対して所定の角度で入射する蒸着粒子のみを通過させる。こうして斜め蒸着法によって強磁性金属薄膜が形成されるようになされている。
【0088】さらに、このような強磁性金属薄膜の蒸着に際し、図示しない酸素ガス導入口を介して非磁性支持体16の表面近傍に酸素ガスを供給し、これによって強磁性金属薄膜の磁性特性、耐久性及び耐候性の向上が図られるようにすることが好ましい。また、蒸着源を加熱するためには、上述のような電子ビームによる加熱手段の他、例えば抵抗加熱手段、高周波加熱手段、レーザ加熱手段等の公知の手段を使用できる。
【0089】ここでは、斜め蒸着法によりCoからなる強磁性金属薄膜を形成する例について説明したが、強磁性金属薄膜を形成する方法としては、この方法の他に、垂直蒸着法やスパッタリング法等の従来公知の薄膜形成法が適用可能であり、また、この強磁性金属薄膜の材料としては、Coの他にNi、Fe等やこれらの合金が使用可能である。また、このときの強磁性金属薄膜の厚さは、0.01μm〜1μm程度が良い。
【0090】つぎに、保護膜4の形成方法について説明する。保護膜4は、CVD法等により形成される。
【0091】CVD法によって保護膜4を形成する場合には、まず、真空容器中に炭化水素ガス、あるいは炭化水素と不活性ガスとの混合ガスを導入し、10Pa〜100Pa程度の圧力に保持した状態で、真空容器内に放電させて、炭化水素ガスのプラズマを発生させ、強磁性金属薄膜上に保護膜4を形成する。放電形式としては、外部電極方式、内部電極方式のいずれでもよく、放電周波数については、実験的に決めることができる。また、強磁性金属薄膜が形成された非磁性支持体2側に配された電極に0〜−3kVの電圧を印加することにより、保護膜4の硬度の増大及び密着性を向上させることができる。
【0092】保護膜4の材料となる上記炭化水素としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、アセチレン、プロペン、ブテン、ペンテン、ベンゼンなどを用いることができる。
【0093】この保護膜4は、スペーシングロスを少なく、かつ、強磁性金属薄膜の磨耗防止の効果を得られるよう、その厚さを3nm〜15nm程度、特に5nm〜10nm程度とすることが好ましい。
【0094】ここでは、CVD法により保護膜を形成する例について説明したが、保護膜4を形成する方法としては、この方法の他に、マグネトロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法、イオンビームプレーティング法等の従来公知の薄膜形成方法を用いることができる。
【0095】〈第2の実施の形態〉つぎに、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る磁気記録媒体は、図1に示された第1の実施の形態の磁気記録媒体1と同様に、非磁性支持体上に磁性層として強磁性金属薄膜、最外層として保護膜が順次形成されてなる。そして、本実施の形態に係る磁気記録媒体は、特に、最外層となる保護膜に、下記化14で示される末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、下記化15にて示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとを含有する潤滑剤が保持されている。
【0096】
【化14】

【0097】
【化15】

【0098】このような化14に示される化合物及び化15に示される化合物を有する潤滑剤は、如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が好適に保たれ、且つ長期に至り潤滑効果を持続する特性を有するものである。
【0099】なお、上記化14及び化15に示される潤滑剤が用いられた磁気記録媒体は、図1に示した磁気記録媒体1と略同様の構成を有するものであり、最外層に保持される潤滑剤のみが異なる例であり、その他の磁性層や保護膜等は同じ構成である。そこで、以下の説明では、潤滑剤についてのみ説明する。
【0100】上記化14に示す末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物は、例えば、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとを、無水トルエン中でp−トルエンスルホン酸や濃硫酸等を触媒として反応させることによって得られるものである。
【0101】ここで、上記末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルとしては、カルボキシル基を両末端に有するものが好ましく、具体的には、HOOC−CF2(OC24m(OCF2jOCF2−COOH(但し、上記化学式中のm,jはいずれも1以上の整数を表す。)等が挙げられる。上記の末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルは、勿論、これらに限定されるわけではない。
【0102】また、上記末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約されるものではないが、実用的には600〜5000程度が好ましい。分子量が大きすぎると、末端基の吸着基としての効果が薄れるとともに、パーフルオロポリエーテル鎖が大きくなる分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくくなる。一方、分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエーテル鎖による潤滑効果が失われてしまう。
【0103】なお、上記末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルにおいては、パーフルオロポリエーテル鎖が部分水素化されてもよい。すなわち、パーフルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以下)を水素原子で置換しても良い。この場合には、パーフルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオロポリエーテルを使用すればよい。
【0104】一方、上記長鎖アルコールとしては、市販品、或いは合成品何れも使用可能である。また、その分子量が小さくなるに従って通常の有機溶媒に溶解し難くなることから、少なくともその1個のアルキル基の炭素数が6以上であることが好ましい。
【0105】また、上述したように、本実施の形態で用いられる上記潤滑剤には、上記化14に示す化合物の他に、上記化15に示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルが含有される。この化15に示される分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルは、第1の実施の形態において上述した分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルと同様なものを使用することができる。
【0106】ここで、本発明の磁気記録媒体に使用される潤滑剤においては、化14に示す末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、化15に示す分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとの混合比は、重量比で10:90〜90:10であるのが好ましい。上記範囲を超えると本発明による効果を得ることが難しい。
【0107】なお、潤滑剤を最外層に保持させる方法としても、上述した磁気記録媒体1における潤滑剤の場合と同様であり、保護膜の表面に潤滑剤をトップコートする方法が挙げられる。ここで、その塗布量は、0.05mg/m2〜100mg/m2であるのが好ましく、0.1mg/m2〜50mg/m2であるのがより好ましい。この塗布量があまり少ないなすぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性・耐久性の向上という効果が表れず、また、塗布量があまり多すぎると、摺動部材と強磁性金属薄膜との間でハリツキ現象が起こり、却って走行性が悪くなる。
【0108】以上のように、本実施の形態に係る磁気記録媒体は、上述したような、密着性や潤滑性の点で非常に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いているので、良好な走行性及び耐久性が確保されたものとなる。
【0109】また、この磁気記録媒体においては、最外層として形成され、カーボンよりなる保護膜の表面に紫外線が照射されているので、用いられる潤滑剤と、保護膜との密着性が向上し、更に良好な耐久性を実現することができる。
【0110】また、この磁気記録媒体においては、磁性層を強磁性金属薄膜としていることから、高密度記録、長時間記録にも十分対応可能である。
【0111】
【実施例】以下、本発明の実施例について具体的な実験結果に基づいて説明する。本実施例では、実際に磁気記録媒体を製造し、その特性の評価を行った。
【0112】実験例1本実験例では、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と、分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤を使用した場合の効果を以下のようにして確認した。
【0113】(サンプルの作製)
1.末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物の合成先ず、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルとして、分子量2000のHOCH2 CF2 (OC24p (OCF2 q OCF2 CH2 OH(但し、化学式中p、qはそれぞれ1以上の整数を表す。)を用い、このパーフルオロポリエーテルとモル比で2倍等量となるトリエチルアミンを有機溶媒中に溶解させ、この溶液中に更にモル比で2倍等量のステアリン酸クロリドを30分かけて滴下した。
【0114】滴下終了後、1時間撹拌し、続いて30分間加熱還流を行った。そして、冷却した後、蒸留水、希塩酸水溶液の順で洗浄し、再度蒸留水により洗浄液が中性になるまで洗浄した。続いて、有機溶媒を除去し、得られた化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製してエステル化合物を得た。ここで、このエステル化合物を化合物1とする。
【0115】次に、上記化合物1と同様な合成方法によって、表1に示すような末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物である4種類の化合物2〜5を合成した。なお、表1中p、q、nは、1以上の整数をそれぞれ表す。
【0116】
【表1】

【0117】2.サンプルテープの作製次に、磁気テープを以下のようにして作製した。先ず、非磁性支持体である7.0μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムに、上述の真空蒸着装置を使用して斜め蒸着法によりCoを被着させ、磁性層となる強磁性金属薄膜を180nmの厚さに形成した。
【0118】次に、上記強磁性金属薄膜上に、エチレンとアルゴンの混合ガスの高周波プラズマにより、電極と、磁気記録媒体原反自身を対向電極として、原反に−1.5kVの直流電圧を印加し、放電を行い、上記強磁性金属薄膜上に約8nmの厚さのカーボン保護膜を形成した。
【0119】次に、ポリエチレンテレフタレートフィルムの強磁性金属薄膜が形成された面とは反対側の面に、カーボン及びポリウレタン樹脂よりなる膜厚0.5μmのバックコート層を形成した。
【0120】次に、図2に示したような紫外線照射装置を用いて、下記表2に示すような条件でカーボン保護膜に紫外線を照射した。なお、紫外線の波長は185nmであり、紫外線の照射時間は磁気記録媒体のラインスピードで制御した。
【0121】次に、下記表2に示される化合物をそれぞれヘキサン溶媒に溶解したものを、上記カーボン保護膜上に塗布量が5mg/m2となるように塗布して、15種類の磁気記録媒体を得た。
【0122】そして、これら15種類の磁気記録媒体をそれぞれ6.35mm幅に裁断して、実施例1〜実施例8及び比較例1〜比較例7の15種類のサンプルテープとした。
【0123】ただし、比較例3〜比較例7のサンプルテープについては、保護膜の表面に紫外線を照射しなかった。
【0124】
【表2】

【0125】3.特性の評価次に、上記実施例1〜実施例8と比較例1〜比較例7の15種類のサンプルテープの特性を評価した。ここでは、耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を評価した。これらを評価する際の環境条件としては、本発明者等が検討した上で、最も厳しい条件と思われる条件を採用した。
【0126】(1)摩擦係数の測定方法摩擦係数の測定は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、湿度80%RHに制御して、この恒温槽中で各サンプルテープを100パス走行させて測定した。なお、摩擦走行100パス目の数値を摩擦係数とした。
【0127】(2)スチル耐久性の測定方法スチル耐久性の評価は、−5℃の恒温槽中で行い、市販のデジタルビデオカムコーダー(ソニー社製、機種名:DCR−VX1000)を用いて、各サンプルテープの再生出力が3dB落ちるまでの時間を測定して行った。
【0128】(3)シャトル耐久性の測定方法シャトル耐久性は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、湿度20%RHに制御して、この恒温槽中で市販のデジタルビデオカムコーダー(ソニー社製、機種名:DCR−VX1000)を用い、各サンプルテープを100パスシャトル走行させ、100パス走行後にその再生出力が初期出力から何dB落ちるかを測定して評価した。
【0129】なお、これらの評価は、潤滑剤を塗布した直後と、各サンプルテープを温度45℃、湿度80%RHの環境下で30日間保存した後に行った。潤滑剤を塗布した直後の初期の耐久性及び走行性の測定結果を表3、30日間保存した後の保存後の耐久性及び走行性の測定結果を表4に示す。
【0130】
【表3】

【0131】
【表4】

【0132】表3及び表4の結果から、CVD法により形成された保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤として、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとを組み合わせた潤滑剤を使用した実施例1〜実施例8においては、何れも高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々な使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性の劣化が極めて少なく、非常に良好な結果が得られていることがわかった。
【0133】一方、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物のみを含有する潤滑剤を用いた比較例1及び比較例2では、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の劣化が非常に大きかった。また、保護膜の表面に紫外線を照射しなかった比較例3〜比較例7では、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得られなかった。
【0134】以上の結果より、保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤として、末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物と、分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとを組み合わせることにより、潤滑剤が如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が保たれ、且つ長期に亘り潤滑効果が持続するため、磁気記録媒体の良好な走行性及び耐久性が得られることがわかった。
【0135】実験例2本実験例においては、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルを含有する潤滑剤を使用した場合の効果を以下のようにして確認した。
【0136】(サンプルの作製)
1.末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物の合成先ず、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルとして、分子量2000のHOOCCF2(OC24p(OCF2qOCF2COOH(但し、化学式中p、qはそれぞれ1以上の整数を表す。)を用い、このパーフルオロポリエーテルとモル比で2倍等量となるステアリルアルコールを無水トルエン中で少量のp−トルエンスルホン酸と濃硫酸を触媒として加熱還流させた。このとき、生成される水分を除去しながら行った。
【0137】反応終了後、トルエンを除去した後、得られた化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製して、その後溶媒を除去し、エステル化合物を得た。なお、ここで、このエステル化合物を化合物6とする。
【0138】次に、上記化合物6と同様な合成方法によって、表5に示すような末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物である4種類の化合物7〜10を合成した。なお、表5中p、q、nは、1以上の整数をそれぞれ表す。
【0139】
【表5】

【0140】2.サンプルテープの作製まず、前述の実験例1と同様にして、非磁性支持体上に磁性層となる強磁性金属薄膜、カーボンからなる保護膜をプラズマCVD法により形成し、バックコート層も形成した。さらに、上記保護膜の表面を、下記表6に示されるような条件下で紫外線を照射する。
【0141】次に、前述の実験例1と同様にして、保護膜表面に、下記表6に示されるような条件下で紫外線照射した。
【0142】そして、これら15種類の磁気記録媒体をそれぞれ6.35mm幅に裁断し、実施例9〜実施例16及び比較例8〜比較例14の15種類のサンプルテープを作製した。
【0143】ただし、比較例10〜比較例14のサンプルテープについては、保護膜の表面に紫外線を照射しなかった。
【0144】
【表6】

【0145】3.特性の評価次に、上記実施例9〜実施例16と比較例8〜14の15種類のサンプルテープの特性を評価した。ここでは、耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性を前述の実験例1と同様にして評価した。
【0146】なお、これらの評価は、前述の実験例1と同様に潤滑剤を塗布した直後と、各サンプルテープを温度45℃、湿度80%RHの環境下で30日間保存した後に行った。潤滑剤を塗布した直後の初期の耐久性及び走行性の結果を表7、30日間保存した後の保存後の耐久性及び走行性の結果を表8に示す。
【0147】
【表7】

【0148】
【表8】

【0149】表7及び表8の結果から、CVD法により形成された保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤として、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとを組み合わせた潤滑剤を使用した実施例9〜実施例16においては、何れも高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々な使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性及びシャトル耐久性の劣化が極めて少なく、非常に良好な結果が得られていることがわかった。
【0150】一方、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物のみを含有する潤滑剤を用いた比較例8及び比較例9では、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の劣化が非常に大きかった。また、保護膜の表面に紫外線を照射しなかった比較例10〜比較例14では、様々な使用条件下において摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得られなかった。
【0151】以上の結果より、保護膜表面に紫外線を照射し、さらに潤滑剤として、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、分岐カルボン酸パーフルオロアルキルモノエステルとを組み合わせることにより、潤滑剤が如何なる使用条件下においても密着性や潤滑性が保たれ、且つ長期に亘り潤滑効果が持続するため、磁気記録媒体の良好な走行性及び耐久性が得られることがわかった。
【0152】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法は、密着性や潤滑性の点で非常に優れた特性の潤滑剤の組み合わせを特定して用いているので、走行性及び耐久性を向上することができる。また、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、最外層として形成され、カーボンよりなる保護膜の表面に紫外線を照射しているので、当該保護膜上に保持される潤滑剤と、保護膜との密着性が向上し、更に良好な耐久性を実現することができる。




 

 


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