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発明の名称 磁気シールド用鋼板およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−49401(P2001−49401A)
公開日 平成13年2月20日(2001.2.20)
出願番号 特願平11−228006
出願日 平成11年8月11日(1999.8.11)
代理人
発明者 杉原 玲子 / 平谷 多津彦 / 松岡 秀樹 / 田中 靖 / 児玉 悟史 / 田原 健司
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 重量%で、C:0.15%以下を含有し、板厚:0.05mm以上、0.5mm以下の鋼板であって、非履歴透磁率が7500以上であることを特徴とする磁気シールド用鋼板。
【請求項2】 重量%で、C:0.15%以下、B:0.0003%以上0.01%以下を含有し、板厚:0.05mm以上、0.5mm以下の鋼板であって、非履歴透磁率が7500以上であることを特徴とする磁気シールド用鋼板。
【請求項3】 重量%で、Ti,Nb,Vのうちの一種または二種以上を合計で0.08%以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の磁気シールド用鋼板。
【請求項4】 鋼板の表面に、Crめっき層および/またはNiめっき層を有することを特徴とする請求項1ないし3記載の磁気シールド用鋼板。
【請求項5】 保磁力が5.5 Oe以下であることを特徴とする請求項1ないし4記載の磁気シールド用鋼板。
【請求項6】 請求項1ないし3に記載の成分を含む鋼板スラブに、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を施し、次いで1.5%以下の圧延率で調質圧延を行うことを特徴とする磁気シールド用鋼板の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カラー陰極線管の内部または外部にあって電子線の通過方向に対して側面から覆うように設置される磁気シールド部品の素材となる鋼板、すなわちカラー陰極線管の磁気シールド用鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】カラー陰極線管の基本構成は、電子線を射出する電子銃と電子線照射により発光して映像を構成する蛍光面からなる。電子線は地磁気の影響によって偏向し、その結果映像に色ずれを発生させるため、偏向を防止するための手段として、一般的に内部磁気シールド(インナーシールド、インナーマグネティックシールドとも称する)が設置されている。また、外部磁気シールド(アウターシールド、アウターマグネティックシールドとも称する)が、カラー陰極線管外部に設置される場合もある。本発明では、これらの内部磁気シールドおよび外部磁気シールドを総称して、磁気シールドと称する。
【0003】近年、民生用TVは大型化、ワイド化が進められ、電子線の走行距離および走査距離が大きくなり、地磁気による影響を受けやすくなっている。すなわち、地磁気により偏向した電子線の蛍光面到達地点の、本来到達すべき地点からのずれ(地磁気ドリフトと称される)が従来より大きくなっている。また、パーソナルコンピュータ用の陰極線管では、より高精細の静止画像が求められるため、地磁気ドリフトによる色ずれは極力抑制しなければならない状況である。
【0004】このような中で、従来は、上記磁気シールド用として使用される鋼板の特性については、ほぼ地磁気に相当する低磁場での透磁率や、保磁力、残留磁束密度を指標として評価される場合が多かった。
【0005】磁気シールド用鋼板の特性を改善する方法として、特開平3−61330号公報では、特定の組成の鋼を用いてフェライト結晶粒度番号を3.0以下とすることにより磁気特性を改善する技術が開示されており、シールド用冷間圧延鋼板として求められる磁気特性として、たとえば透磁率≧750G/ Oe、保磁力≦1.25 Oeと記載されている。
【0006】特開平5−41177号公報では、残留磁束密度が8kG以上の磁性材を用いて内部磁気シールド体を構成する技術が開示されている。
【0007】特開平10−168551号公報では、製品結晶粒径を細粒とした特定の組成の鋼を用いた保磁力が3 Oe以上、残留磁束密度が9kG以上の磁気シールド材およびその製造方法が開示されている。
【0008】また、電子情報通信学会論文誌,Vol.J79−C−II No.6,p311−319,’96.6では、磁気シ−ルド性向上の為、非履歴透磁率と磁気シ−ルド性の関係について述べられている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平3−61330号公報記載の技術、特開平5−41177号公報記載の技術、特開平10−168551号公報記載の技術のいずれにおいても、実際のカラー陰極線管に適用された磁気シールド用鋼板は地磁気中で消磁されるのが一般的であり、地磁気中消磁により鋼板の磁気特性が変化するにも関わらず、消磁の影響について何ら考慮されていないため、磁気シールド性が不十分であるという問題があった。
【0010】電子情報通信学会論文誌,Vol.J79−C−II No.6,p311−319,’96.6では、上記の非履歴透磁率と磁気シールド性能の関係について検討がなされているが、どのような鋼板が高い非履歴透磁率を有するか等の詳細な検討については、明らかにされていない。
【0011】このようにいずれの技術も、近年の民生用TVの大型化、ワイド化に伴う色ずれによる映像劣化に対して対応しきれていない。また、パーソナルコンピュータ用の陰極線管に対する色ずれも抑制しきれていない。
【0012】このような理由から、より高性能の磁気シールド性を有する磁気シールド用鋼板が強く求められているのが現状である。
【0013】本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高い非履歴透磁率を有し、地磁気ドリフトによる色ずれを抑制して高精細な画像を得るために有効な磁気シールド用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】前記課題は、以下に示す第一〜第六の発明によって解決される。
【0015】第一の発明は、重量%で、C:0.15%以下を含有し、板厚:0.05mm以上、0.5mm以下の鋼板であって、非履歴透磁率が7500以上であることを特徴とする磁気シールド用鋼板である。
【0016】第二の発明は、重量%で、C:0.15%以下、B:0.0003%以上0.01%以下を含有し、板厚:0.05mm以上、0.5mm以下の鋼板であって、非履歴透磁率が7500以上であることを特徴とする磁気シールド用鋼板である。
【0017】第三の発明は、重量%で、Ti,Nb,Vのうちの一種または二種以上を合計で0.08%以下含有することを特徴とする第一の発明または第二の発明記載の磁気シールド用鋼板である。
【0018】第四の発明は、鋼板の表面に、Crめっき層および/またはNiめっき層を有することを特徴とする第一の発明ないし第三の発明記載の磁気シールド用鋼板である。
【0019】第五の発明は、保磁力が5.5 Oe以下であることを特徴とする第一の発明ないし第四の発明記載の磁気シールド用鋼板である。
【0020】第六の発明は、第一の発明ないし第三の発明の成分からなるスラブに、熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍を施し、次いで1.5%以下の圧延率で調質圧延を行うことを特徴とする磁気シールド用鋼板の製造方法である。
【0021】なお、本明細書において、鋼の成分を示す%はすべて重量%である。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説明する。
【0023】一般にカラー陰極線管には、電源投入時などに、陰極線管外部に巻かれた消磁コイルに交流通電して消磁を行う方法が採用されている。そのため、陰極線管内部の磁気シールドには、地磁気中で消磁されることにより、地磁気に対する磁化よりも高いレベルの磁化が残留することになる。この現象により、磁気シールドは完全消磁された状態よりもさらに高性能なシールド特性を有する。従って、電子情報通信学会論文誌,Vol.J79−C−II No.6,p311−319,’96.6 に述べられているように、磁気シールド用途に適した鋼板とは、地磁気中で消磁後の残留磁化を地磁気で除した「非履歴透磁率」が高い鋼板であると考えられる。そこで、本発明者らは、上記知見をもとに種々の成分を有する鋼板について、直流バイアス磁界0.35 Oeにおける非履歴透磁率を調査し、磁気シ−ルド用として優れた鋼板について検討した。
【0024】その結果、■従来は、評価指標の一つである低磁場(たとえば0.35 Oe)での透磁率(以下μ0.35と称する)が比較的高い極低炭素系の鋼板が磁気シールドとして多く用いられていたが、μ0.35の高い極低炭素鋼板が必ずしも非履歴透磁率が高いとは限らないこと■従来はほとんど使用されていなかった、比較的C量が大きい鋼板(C量:0.005〜0.2%)であっても、高い非履歴透磁率が得られること■鋼板を磁気シールドとして使用する時には、非履歴透磁率が7500以上であれば、色ずれを実用上問題ないレベルにまで低減できること■C量の増大は、保磁力を増大し、消磁方法(消磁電流の大きさ、消磁振幅の大きさなど)によっては消磁が不十分となり、非履歴透磁率が十分に高い鋼板であっても、消磁後の磁化が不十分となり、色ずれを抑制できない場合があることを見出した。
【0025】本発明者らは、前記知見に更に検討を加え、本発明に至った。以下、本発明の限定理由について説明する。最初に、鋼成分限定理由について説明する。
【0026】C:その含有量規定が本発明で最も重要な元素である。一般的にはμ0.35を下げるため磁気シールド用鋼板には有害な元素とされている。しかしながら、上記のように、本発明者らが検討した結果、Cは非履歴透磁率に大きな悪影響を及ぼさないことが明らかになった。しかしながら、C量が過剰に大きい場合、保磁力が増大し、非履歴透磁率を発揮させるに十分な消磁条件に制約が生じるので好ましくない。以上より、上限は0.15%とする。さらに好ましくは、0.06%以下である。特に、他の特性等を考慮する場合には、熱間圧延後、あるいは冷間圧延後に脱炭焼鈍を施して、C量を0.0005%未満とすることも可能である。また、下限は特に限定しない。しかし、製鋼でのコストを考慮すれば、0.0005%以上が好ましい。
【0027】B:その含有量規定が本発明で重要な元素である。非履歴透磁率を増大させることのできる重要な元素であり、その効果は0.0003%以上添加することによって得られる。0.01%を超えて過剰に添加した場合、非履歴透磁率向上効果が飽和するばかりか、再結晶温度を上昇させたり、鋼板が過度に硬質化するなどの問題を生じる。以上より、0.0003%以上0.01%以下とするのが好ましい。
【0028】Ti,Nb,V:本発明で重要な元素である。これら元素は、すべて炭窒化物形成元素であり、ストレッチャーストレインを抑制するために、時効性が特に問題となる場合に添加される。過剰に添加すると、再結晶温度を上昇させたり、鋼板が過度に硬質化するなどの問題を生じるので、一種または二種以上を合計で0.08%以下とするのが好ましい。なお、特に高い非履歴透磁率を有する鋼板を得るためには、Bと複合添加することが望ましい。
【0029】次に板厚について説明する。磁気シールド用鋼板としての板厚下限は、薄肉化しすぎると非履歴透磁率の高い鋼板であっても磁気シールド性が不十分となること、また磁気シールド部品としての剛性が得られなくなることから、0.05mm以上とする。磁気シールド性を高めるためには板厚は大きい方が望ましいが、昨今のカラーテレビの大型化、ワイド化に伴い、テレビセットの軽量化が望まれているため、上限は0.5mmとする。
【0030】次にめっきについて説明する。Crめっき層および/またはNiめっき層を有することが錆防止の観点等から望ましい。これらめっきは単層で使用しても複層化で使用してもよく、めっき層を形成する面は鋼板の一方の面であっても両方の面であってもよい。めっき層を形成することにより、鋼板の錆発生を抑制するとともに、陰極線管に組み込まれたときに鋼板からのガス発生を抑制するために有効である。付着量については、特に限定する必要がなく、鋼板表面を実質的に被覆できる付着量が適宜選択される。また、部分的にNiめっきを施した後にクロメート処理を施して、鋼板表面を被覆してもよい。
【0031】次に保持力の限定理由について説明する。保磁力は、過度に大きくなると、十分な磁気シールド性を発揮するために必要な消磁電流値や消磁振幅を大きくし、消磁方法が限定される場合があるため、小さい方が望ましく、5.5 Oe以下が好ましい。さらに好ましくは3.0 Oe以下である。
【0032】次に製造方法について説明する。本発明範囲内の成分を含む鋼を常法に従って、溶製、連続鋳造、熱間圧延する。熱間圧延は、連続鋳造したスラブを直接あるいは若干加熱して圧延しても良いし、一旦冷却したスラブを再加熱して圧延することもできる。この熱間圧延した鋼板を常法に従って酸洗、冷間圧延、再結晶焼鈍する。次いで必要に応じて調質圧延を施す。ここで、非履歴磁化特性を確保するためには調質圧延率はできるだけ小さくすべきであり、上限を1.5%とする。鋼板の形状や時効性に特に問題がない場合には、0.5%以下とするのが望ましく、さらに好ましくは調質圧延を施さないことである。また、必要に応じて途中工程で脱炭焼鈍を施してもよく、脱炭焼鈍と冷間圧延後の再結晶焼鈍を兼ねることもできる。さらに必要に応じて表面にNiやCrなどのめっきを施す。
【0033】
【実施例】表1の供試鋼を溶製後、板厚1.8mmまで熱間圧延し、酸洗し、冷間圧延率83〜94%で冷間圧延を行い板厚を0.1〜0.3mmとした。次いで再結晶温度以上、変態点以下で再結晶焼鈍し、そのまま、又は一部0.5〜2.0%の調質圧延を施した鋼の両面にCrめっきを施して供試材を得た。
【0034】Crめっきは下層が付着量95〜120mg/m2の金属Cr層、上層が付着量(金属Cr換算)12〜20mg/m2の水和酸化物Cr層とした。
【0035】
【表1】

【0036】以上の要領で得られた供試材について透磁率(μ0.35)、残留磁束密度、保磁力および非履歴透磁率を評価した。これらの性能評価は、リング状試験片に励磁コイル、検出コイルおよび直流バイアス磁界用のコイルを巻いて、非履歴透磁率、0.35 Oeにおける透磁率(μ0.35)、最大磁化50 Oeのときの残留磁束密度、保磁力を測定して行った。なお、非履歴透磁率測定方法を詳細に説明する。
【0037】非履歴透磁率測定方法1)1次コイル1に減衰する交流電流を流して試験片を完全消磁する。
【0038】2)3次コイル3に直流電流を流して0.35 Oeの直流バイアス磁界を発生させた状態で、再度1次コイル1に減衰する交流電流を流して試験片を消磁する。
【0039】3)一次コイル1に電流を流して試験片を励磁し、発生した磁束を2次コイル2で検出してB−H曲線を測定する。
【0040】4)B−H曲線より非履歴透磁率を算出する。
板厚、調質圧延率、磁気特性、これらの評価結果を併せて表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】表2に示すように、本発明例では、非履歴透磁率が7500以上であり、保持力も5.5 Oe以下となり、消磁後の磁気シールド性は十分であった。
【0043】一方、調質圧延率が1.5%を超える比較例では、非履歴透磁率が7500未満となり、磁気シールド性が不十分であった。また、C量が0.15%を超えて過剰に添加された比較例では、保磁力が大きく、消磁特性が劣化していた。
【0044】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば高い非履歴透磁率を有し、またはさらに保持力が優れ、消磁後の磁気シールド性に優れた鋼板を得ることができる。
【0045】さらに、本発明による鋼板をカラー陰極線管の磁気シールドとして用いることによって、消磁後、充分な磁気シールド性が確保され、さらに地磁気ドリフトによる色ずれが抑制される。よって、高精細な画像を得るために有効な磁気シールド用鋼板が提供される。




 

 


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