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発明の名称 超弾性合金線材の製造方法、携帯用通信機器のアンテナ部品の製造方法及び携帯用通信機器のアンテナ部品
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−49410(P2001−49410A)
公開日 平成13年2月20日(2001.2.20)
出願番号 特願平11−225691
出願日 平成11年8月9日(1999.8.9)
代理人 【識別番号】100095751
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 正倫
発明者 市原 祐一 / 藤田 雄一郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量が48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95原子%以上である合金組成を有するTi−Ni系合金線材に対し、300〜600℃の範囲内で定められた記憶処理温度にこれを保持することにより直線記憶熱処理を施すに際し、前記直線記憶熱処理の保持時間を4分間以上となし、かつ、その記憶処理温度での保持中において、直線性付与のための1.5kg/mm以上の張力を前記Ti−Ni系合金線材に1分以上付与することを特徴とする超弾性合金線材の製造方法。
【請求項2】 前記直線記憶熱処理において前記記憶処理温度での保持時間は、前記Ti−Ni系合金線材に対して付与される前記張力が1.5kg/mm未満の状態で10分以上確保され、かつ前記張力が1.5kg/mm以上の状態で1分以上確保される請求項1記載の超弾性合金線材の製造方法。
【請求項3】 前記Ti−Ni系合金線材の前記直線記憶熱処理は、内部に加熱源を有するトンネル状の加熱炉内を連続搬送しながら行われるとともに、前記直線記憶熱処理の温度が確保される前記加熱炉の加熱ゾーン長さが1.5m〜10mとされ、かつ前記線材の炉内搬送速度が1.0〜10m/分に調整される請求項1又は2記載の超弾性合金線材の製造方法。
【請求項4】 前記直線記憶熱処理がなされた前記超弾性合金線材を長手方向に連続搬送しつつ、300℃以下に温度保持された溶融高分子材料と接触させて高分子材料を被覆するとともに、該高分子材料被覆時の熱影響による前記変態点の変化を抑制するために、前記溶融高分子材料の被覆がなされてから300秒以内に、前記高分子材料により被覆済みの超弾性合金線材を冷却媒体と接触させてこれを冷却する請求項1ないし3のいずれかに記載の超弾性合金線材の製造方法。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれかに記載された超弾性合金線材を所定長さに切断し、その切断された被覆超弾性合金線材の両端部の被覆高分子材料を剥離・除去して、その一方の剥離端部に先端カバーを装着し、他方の剥離端部に装着金具を取り付けることを特徴とする携帯用通信機器のアンテナ部品の製造方法。
【請求項6】 Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量が48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95〜100原子%である合金組成を有し、線径が0.6〜1.2mmであり、かつ、逆変態終了温度Afが15〜40℃に調整される超弾性合金線材によりアンテナ本体部が構成されるとともに、以下の耐久試験、すなわち、前記アンテナ本体部の基端部を10mm以上、1対の試験保持部材間に挟み付けるとともに、両試験保持部材の挾圧面の縁から前記アンテナ本体部の先端側を直線的に延出させる一方、両試験保持部材には、前記アンテナ本体部の延出側において前記挾圧面に続くとともに曲率半径25mmにて外側に離間する円弧状のガイド面と、そのガイド面に続くとともに前記挾圧面とほぼ直交する曲げ保持面とを形成しておき、前記アンテナ本体部の前記延出部を、前記挾圧面の前記縁と略直交する向きにおいて前記試験保持部材に対し、前記ガイド面に沿いつつ先端側が前記曲げ保持面に密着する位置まで曲げた後、復帰させる動作を1サイクルとして、該サイクルを両側の試験保持部材に対して交互に繰り返す耐久試験を行ったときに、前記線材が破断するまでのサイクル数が5000サイクル以上であることを特徴とする携帯用通信機器のアンテナ部品。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Ti−Ni系合金からなる超弾性合金線材の製造方法と、それを用いた携帯用通信機器のアンテナ部品の製造方法、及びそれにより実現される携帯用通信機器のアンテナ部品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、携帯電話等の移動通信機器のアンテナは、携帯運搬時に横方向からの荷重を受けて曲がりや折れ等を生ずることがある。そこで、そのような荷重に対する耐久性を向上させるために、超弾性合金で構成されたアンテナが使用されている。Ti−Ni系超弾性合金は、通常の弾性伸びの範囲を超える大きな変形が加わっても、除荷に伴いその変形を可逆的に回復でき、しかも繰返し変形に対する耐久性に優れるるので、上記アンテナに好適に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のような超弾性合金線材より成るアンテナには、超弾性効果発現に寄与する変態点が所定温度となるように、直線記憶熱処理がなされている。この場合、Ti−Ni系超弾性合金の変態温度は、よく知られている通り、成分および熱処理条件(温度、保持時間及び冷却速度)により調整することができる。通常、超弾性合金線材に直線形状を記憶させるためには、1分間〜数分間の直線記憶熱処理が施される。この熱処理により、超弾性合金線材の変態温度が、超弾性効果発現に適した温度範囲のものとなるように調整される。
【0004】ところで、上記の直線記憶熱処理により得られる超弾性合金線材には、室温における直線性と、曲げ・伸ばしによる繰り返し変形に対する耐久性が求められが、携帯電話が小型化し、使用環境も多様化するに連れ、アンテナの耐久性については一層厳しい条件をクリアすることが求められている。Ti−Ni系超弾性合金線材の繰返し耐久特性を向上させるために、従来より種々の技術が提案されており、例えば上記の直線記憶熱処理の条件を工夫する試みもなされているが、改良の余地は多い。
【0005】本発明の課題は、Ti−Ni系合金線材に直線記憶熱処理して超弾性合金線材とする際に、一定の条件下にて熱処理を施すことにより、繰り返し曲げ等の耐久性を向上できる超弾性合金線材の製造方法と、それを用いた携帯用通信機器のアンテナ部品の製造方法、及びそれにより実現される耐久性に優れた携帯用通信機器のアンテナ部品とを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】上述の課題を解決するために、本発明の超弾性合金線材の製造方法は、Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量が48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95原子%以上である合金組成を有するTi−Ni系合金線材に対し、300〜600℃の範囲内で定められた記憶処理温度にこれを保持することにより直線記憶熱処理を施すに際し、直線記憶熱処理の保持時間を4分間以上となし、かつ、その記憶処理温度での保持中において、直線性付与のための1.5kg/mm以上の張力をTi−Ni系合金線材に1分以上付与することを特徴とする。
【0007】なお、本発明でいう超弾性合金は、荷重付与に伴う1%以上の歪みを、除荷に伴い可逆的に回復できる合金のことをいう。
【0008】Ti−Ni系合金線材に対して直線記憶熱処理を施す際は、周知の通り、通常、1〜数分間にわたって、超弾性効果発現に寄与する変態点が所定温度となるように熱処理を施す形で行われている。本発明者等は、この直線記憶熱処理の条件に着目し、熱処理の保持時間を従来よりも長く確保し、かつ、その熱処理の温度保持中に合金線材に対して一定の張力を付与することにより、直線性と高耐久性が実現されることを実験により知見し、本発明を完成するに至った。その要旨は、つまるところ、直線記憶熱処理の保持時間を4分間以上となし、かつ、その記憶処理温度での保持中において、直線性付与のための1.5kg/mm以上の張力をTi−Ni系合金線材に1分以上付与する点にある。これにより、得られる超弾性合金線材は、直線性が良好に確保されるとともに、曲げ・伸ばし等に対する繰り返し耐久性も格段に向上する。
【0009】直線記憶熱処理の保持時間が4分未満では、得られる超弾性合金線材の繰返し曲げ伸ばし等に対する耐久性が不足する。なお、保持時間の上限は超弾性合金線材の生産性を考慮して適宜定めるが、一般に10分以上の加熱は、耐久性向上効果のそれ以上の増大をもたらしにくいので、これを保持時間の上限値設定の目安とすることができる。なお、上記の保持時間は、より望ましくは6〜8分とするのがよい。
【0010】他方、直線性付与のための張力付与については、そのレベルが1.5kg/mm未満では、得られる超合金線材の良好な直線性が確保されない。他方、張力レベルが10kg/mmを超えると、熱処理中の線材の減面(線径減少)が進行し、寸法精度が得られなくなる場合がある。上記張力の範囲は、望ましくは2〜5kg/mmの範囲にて設定するのがよい。
【0011】さらに、張力付与する直線記憶熱処理での保持時間が1分未満になると、得られる超合金線材の良好な直線性が同様に確保されない。また、なお、保持時間の上限は超弾性合金線材の生産性を考慮して適宜定めるが、5分以上張力付加状態で保持しても、直線性向上効果のそれ以上の増大をもたらしにくいので、これを保持時間の上限値設定の目安とすることができる。
【0012】Ti−Ni合金線材の組成は、Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量が48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95原子%以上とする。この範囲外の組成を使用すると、得られる超弾性合金線材の曲げ伸ばし等に対する繰返し耐久特性が十分に確保できなくなる。また、直線記憶熱処理の温度範囲は300〜600℃であるが、これは、採用する合金組成を狙いとする変態温度に応じて、該範囲内の数値を適宜選択して設定する。ただし、上記の範囲を外れる熱処理温度を採用すると、変態温度の調整そのものが困難となり、ひいては耐久特性に優れた超弾性合金線材が得られなくなる結果につながる。
【0013】なお、本発明においては、好適には、直線記憶熱処理において記憶処理温度での保持時間が、Ti−Ni系合金線材に対して付与される張力が1.5kg/mm未満の状態で4分以上確保され(以下、第一保持工程という)、かつ張力が1.5kg/mm以上の状態で1分以上確保される(以下、第二保持工程という)。これによって得られる超弾性合金線材は、曲げ・伸ばし等に対する繰り返し耐久性がさらに良好となる。なお、第一保持工程での張力レベルは、より望ましくは10kg/mm未満とするのがよい。
【0014】また、本発明においては、その好適な形態として、Ti−Ni系合金線材の直線記憶熱処理が、内部に加熱源を有したトンネル状の加熱炉内を連続搬送しながら行われるとともに、直線記憶熱処理温度が確保される加熱炉の加熱ゾーン長さが1.5m〜10mとされ、かつ線材の炉内搬送速度が1.0〜10m/分に調整されるものである。超弾性合金線材は、通電加熱方式、誘電加熱方式等によっても熱処理を行うことができるが、これらの方式においては温度調整に難があり、直線記憶熱処理後の超弾性合金線材においては、繰り返し曲げ等に対する耐久性が不十分となる場合がある。これに対して、加熱源からの輻射あるいは対流による加熱を行うトンネル状加熱炉を使用すれば、均熱の確保も容易であり、耐久性に優れた超弾性合金が得られる。なお加熱ゾーン長さは加熱炉の設置スペースと十分な加熱保持時間の確保を考慮して1.5m〜10mに定めており、この場合に、前記加熱ゾーンにて4分以上の熱処理保持時間が確保されるようにするには、線材の搬送速度を2.5m/分以下に定めることが必要となる。すなわち、搬送速度が2.5m/分以上では、上記の加熱ゾーン長さにおいて4分以上の熱処理保持時間が確保できなくなる。また、搬送速度を1.0m/分未満とすることは、生産性の極端な低下につながるため、現実的でない。
【0015】次に、上記の方法により製造された超弾性合金線材には、例えばこれをアンテナ等として使用する場合を考慮して、その外周面に高分子材料による被覆を行うことができる。この場合、次のような方法が採用可能である。すなわち、直線記憶熱処理がなされた超弾性合金線材を長手方向に連続搬送しつつ、300℃以下に温度保持された溶融高分子材料と接触させて高分子材料被覆するとともに、該高分子材料被覆時の熱影響による前記変態点の変化を抑制するために、前記溶融高分子材料の被覆がなされてから300秒以内に、前記高分子材料により被覆済みの超弾性合金線材を冷却媒体と接触させてこれを冷却する。
【0016】直線記憶熱処理後の超弾性合金線材に対して加熱溶融されている高分子材料を被覆することは、ともすれば変態点の変化を助長する結果にもつながるが、本発明者等が鋭意検討した結果、軟化溶融している高分子材料温度を300℃以下で、軟化溶融した高分子材料の被覆が超弾性合金線材になされてから300秒以内に冷却することによって、変態点変化の抑制効果が得られ、例えば超弾性合金線材の変態開始温度Msに影響を及ぼさない結果となる。したがって、結果として得られる被覆超弾性合金線材は、直線性が良好に確保されるとともに、曲げ・伸ばし等に対する耐久性も劣化せず、ロット内でのばらつきも小さくできる。
【0017】なお、本発明においては、好適には、高分子材料を被覆済みの超弾性合金線材に接触させる冷却媒体は冷却水を使用することができる。また、さらに好適な形態として、超弾性合金線材は、前記溶融高分子材料を供給する溶融高分子材料供給部を通されることにより前記高分子材料による被覆がなされた後、その溶融高分子材料供給部の直後に配置された冷却水槽に導かれ、前記搬送を継続しつつ前記冷却水槽中の冷却水に浸漬されて冷却されるものとすることができる。いずれにおいても、被覆後の冷却効果をより一層高めることができる。
【0018】また、本発明においては、前記冷却水の温度が60℃以下に調整されるとともに、その浸漬時間が5秒以上とされることが望ましい。冷却水の温度が60℃以上になると、被覆直後の超弾性合金線材に対する充分な冷却効果が得られず、変態点変化の抑制効果が薄れる場合があり、また、浸漬時間が5秒以下になる場合も同様に、被覆直後の超弾性合金線材に対する充分な冷却効果が得られず、変態点変化の抑制効果が薄れる場合がある。
【0019】例えばアンテナとして好適な、線径が0.6〜1.2mmの線材を、上記のTi−Ni系超弾性合金線材で構成する場合、これに前記高分子材料としては、軟化温度が100〜300℃の弾性高分子材料が、被覆厚さ0.2〜0.6mmにて被覆されることが望ましい。弾性高分子材料の軟化温度が上記範囲の下限値以下となった場合には、耐熱性が不足して被覆線材として実用上、支障を来すこととなる。逆に軟化温度が300℃以上となった場合には、適度な流動性が得られる溶融高分子材料の温度が高くなり過ぎ、被覆時において、Ti−Ni系超弾性合金線材の変態温度に変化を来たしやすくなる。
【0020】また、高分子材料の被覆厚さを0.2〜0.6mmとする理由は以下の通りである。まず、被覆厚さが0.2mm以下であれば被覆としての保護効果が十分に得られない。また、被覆厚さが0.6mm以上であると、逆に溶融高分子材料の線材に対する熱影響が大となり、変態点を変化させる虞がある。この高分子材料の被覆厚みは、例えば、前記高分子材料供給部における前記溶融高分子材料の供給量と、該高分子材料供給部を通過させる前記超弾性合金線材の送り速度を調整することによって可能となる。すなわち、溶融高分子材料の供給量を少なくすれば被覆厚みは薄くなり、多くすれば被覆厚みは厚くなる。また、線材の送り速度を速くすれば被覆厚みは薄くなり、遅くすれば被覆厚みは厚くなる。これらを適宜調整して、上記厚さの高分子材料被覆を形成することができる。
【0021】また、前記弾性高分子材料は、熱可塑性ウレタン系高分子材料であることが望ましい。この熱可塑性ウレタン系高分子材料によれば、軟化温度が上記範囲内であることは勿論、特にTi−Ni系超弾性合金線材の外周面への連続高分子材料被覆時における一体成形に優れており、例えば、表面にTiあるいはNi系のスケール層が形成されている場合でも、均一で密着性の高い被覆状態が得られる。他方、これをアンテナ等に使用する場合には、曲げ伸ばしに伴う曲げ荷重が頻繁にかかるので、耐久性と変形追従性が大なものが要求されるが、上記の熱可塑性ウレタン系高分子材料は、このような条件も満たすものである。
【0022】例えばアンテナとして好適な、線径が0.6〜1.2mmの線材を、上記Ti及びNiを主成分とするTi−Ni系超弾性合金線材で構成し、上述したような方法により、熱処理とともに超弾性合金線材に対して一定の張力を付与すれば、直線性と高耐久性が実現される高耐久超弾性合金線材が得られる。
【0023】次に、本発明の携帯用通信機器のアンテナ部品の製造方法は、上記のように得られた超弾性合金線材を所定長さに切断し、その切断された被覆超弾性合金線材の両端部の被覆高分子材料を剥離・除去して、その一方の剥離端部に先端カバーを装着し、他方の剥離端部に装着金具を取り付けることを特徴とする。この方法によれば、直線性が確保されるとともに、繰り返し曲げ・伸ばし等の追従変形性に対して耐久性を有する携帯用通信機器のアンテナ部品を好適に製造できる。
【0024】上記の本発明の製造方法を採用することにより、以下のような本発明の携帯用通信機器のアンテナ部品が実現される:Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量が48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95〜100原子%である合金組成を有し、線径が0.6〜1.2mmであり、かつ、逆変態終了温度Afが15〜40℃に調整される超弾性合金線材によりアンテナ本体部が構成されるとともに、以下の耐久試験、すなわち、アンテナ本体部の基端部を10mm以上、1対の試験保持部材間に挟み付けるとともに、両試験保持部材の挾圧面の縁からアンテナ本体部の先端側を直線的に延出させる一方、両試験保持部材には、アンテナ本体部の延出側において挾圧面に続くとともに曲率半径25mmにて外側に離間する円弧状のガイド面と、そのガイド面に続くとともに挾圧面とほぼ直交する曲げ保持面とを形成しておき、アンテナ本体部の延出部を、挾圧面の縁と略直交する向きにおいて試験保持部材に対し、ガイド面に沿いつつ先端側が曲げ保持面に密着する位置まで曲げた後、復帰させる動作を1サイクルとして、該サイクルを両側の試験保持部材に対して交互に繰り返す耐久試験を行ったときに、線材が破断するまでのサイクル数が5000サイクル以上となる。
【0025】上記構成においては、まず、アンテナ本体部を、前記した組成を有する本発明の超弾性合金線材で構成するとともに、その線径を、アンテナに適した0.6〜1.2mmとする。さらに、逆変態終了温度Afが15〜40℃に調整されるのは、この範囲外では超弾性効果が十分に確保できなくなり、曲げ変形復帰が完全でなくなるなど、室温環境でのアンテナとしての使用に難を生ずるためである。
【0026】そして、以上を前提として、直線記憶熱処理時間を、張力が1.5kg/mm未満の状態で4分以上、かつ1.5kg/mm以上の張力を付与した状態で1分間以上とする本発明の製造方法を適用することで、アンテナ本体に上記した耐久試験(後述の実験例では、25R曲げ試験と称している)を行ったときの耐久サイクル回数が5000回以上となる、曲げ伸ばしに対する繰返し耐久特性に極めて優れたアンテナ部品が実現されるのである。
【0027】また、上記のアンテナ部品においては、アンテナ本体部の両端部を除く外周面を、軟化温度が100〜300℃であり、厚さが0.2〜0.6mmである熱可塑性ウレタン系高分子材料により覆うことができる。アンテナ本体部の被覆部を、上記のような熱可塑性ウレタン系高分子材料で構成することで、変態点のばらつきが少なく、かつ繰り返し曲げ・伸ばし特性も良好であり、直線性にも優れたアンテナ部品が実現される。さらに、被覆層の耐久性と変形追従性にも優れ、長期わたって良好な外観を維持できる。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。超弾性合金線材は、例えばTi−Ni合金等の超弾性合金で構成されており、具体的には、Ni含有量が48〜52原子%、Ti含有量を48〜52原子%、NiとTiの合計含有量が95〜100原子%である合金が使用されている。この合金は、いわゆるTiNi系形状記憶合金と実質同一もしくは類似の組成を有するものであり、例えば、高周波誘電加熱式の真空溶解炉、あるいは比較的成分変動が少ないプラズマ溶解法によって、Tiと−Niを上記割合で所定量配合して合金のインゴットとし、これを線材加工することにより製造されるものである【0029】この線材加工は、例えば次のようにして実施できる。まず、図1に示すように、インゴットBを、所定の凹部2が形成された一対の圧延ロール3により、温度700℃〜950℃にて熱間圧延し、適当な径(φ4.5mm)の丸棒1に加工する。このようにして得た丸棒1を、温間伸線ダイス4を用いた500℃〜800℃の温間伸線を複数回繰り返して細径化する。そして、最終的に所望の線径(例えばφ1.0mm)となるように、冷間伸線ダイス5による冷間伸線加工を施し、コイル50に巻き取る。この線材の線径は0.6〜1.2mmである。
【0030】Ti−Ni系合金をはじめとする形状記憶合金においては、熱弾性型マルテンサイト変態の変態温度により、超弾性効果と形状記憶効果とがいわば表裏一体の関係にて発現する。より詳しくは、マルテンサイト変態の開始温度Msと使用温度θとの関係により超弾性効果を利用する形になるか、形状記憶効果を利用する形になるかが定まる。これは、合金の組成が同一であっても事情は変わらない(なぜなら、後述する通り、同一組成の合金であっても、熱処理条件により変態温度を変化させることが可能であるからである)。なお、Ti−Ni系合金では、最も低温側のマルテンサイト相、それよりも高温側で生成するR相と通称される中間相、及び最も高温側で生成する母相の3つの相の間で、概ね2段階的に変態を起こすことが知られている。このうちR相と母相との間の変態は可逆性が高く、温度ヒステリシス(=As−Ms:Asは逆変態の開始温度)も小さいので広く用いられている。本発明では、このR相も広義のマルテンサイト相に含まれるものとして定義する。
【0031】そして、本発明のように、超弾性効果を利用する場合はMs<θとなっている必要がある。Ti−Ni系合金線材をアンテナ線として使用する場合、Ms<θであるから、使用温度θにおいては母相状態にて曲げ等の変形荷重を受ける。母相はその変形荷重の向きに対して最も大きな歪をもたらす方位のバリアントを生成させる形で、応力誘起マルテンサイト変態を起こす。すなわち、本来のMsよりも高温であるθにおいてマルテンサイト相が生成するのであるが、これは熱力学的には、マルテンサイト変態の駆動力が変形の弾性エネルギにより補われ、見かけのMsが上昇するためであると解釈されている。なお、本明細書において、Ms、As、Af等の変態温度はすべて、外部荷重や拘束荷重を付加しない状態にて測定したものであると定義する。
【0032】上記変形は、応力誘起マルテンサイト相の生成・成長に基づき、結晶のすべり変形を伴うことなく進行する。この状態から気温が上昇して液体が解凍し、荷重が弛むと、応力誘起されたマルテンサイト相は直ちに母相へ逆変態し、図3(a)の状態に原形復帰する。すなわち、荷重を除去すればマルテンサイト相が逆変態して原形復帰するので弾性変形に類似した挙動となり(いわゆる変態擬弾性)、しかも除荷により可逆的に復帰する歪量が一般の金属の弾性変形と比べて相当に大きいため、超弾性効果と称されているのである。この場合、変形荷重が解消された時点でほぼ完全に原形復帰するには、Af<θであることが望ましい。
【0033】次に、形状記憶合金の変態温度は、よく知られている通り、熱処理条件(温度、保持時間及び冷却速度)により調整することができる。上記の巻き取られた線材6は直線形状を記憶させるため、1分間〜数分間の直線記憶熱処理が施される。この熱処理により、線材の変態温度(Ms点)が定まる。コイル50から引き出された線材6に一定の張力を付与して直線形状に整えながら、これをトンネル炉に挿入し、所望の使用温度θ(例えばアンテナであれば、−20℃〜40℃)にて超弾性挙動を示す変態温度が得られるよう、適宜調整された温度に加熱して、水等の冷媒中に投じて急冷する。その後、防錆処理として酸洗い工程を経る場合もある。超弾性合金の場合、Ms点は一般に室温以下であり、かつ十分な変態擬弾性効果の発現に必要な量の変形応力誘起マルテンサイト変態が起こるよう、30〜−20℃に調整される。また、Af点は15〜20℃とされる。この場合の直線記憶熱処理温度の範囲は、300〜600℃である。この処理が終わった段階で、線材6は、直線形状を記憶した超弾性合金線材6となっている。
【0034】次に、直線記憶熱処理工程について、図2を参照してさらに詳しく説明する。まず、所望の線径に巻取られた線材コイル50は給材位置7に回転可能に設置される。一方、この線材コイル50から繰り出される線材6の搬送方向の終端の巻取り位置8には、直線記憶熱処理後の線材6を巻取る巻取りドラム9が回転可能に設置されている。この巻取りドラム9にはパルスジェネレータ10を設置したモータ11が接続され、この巻取りドラム9の回転速度をモータ11を制御することによって調整して、線材6の送り速度(巻取り速度)を一定に制御可能としている。このようにしてコイル50から一定の送り速度で繰り出される線材6は、ダンサーロール12を経て熱処理装置13に至る。
【0035】この熱処理装置13は、トンネル状(あるいは環状)の加熱炉として構成され、内部に抵抗発熱線コイル等の抵抗発熱体20が配置されて、その通電加熱による輻射あるいは対流により線材6を加熱するようになっている。熱処理装置13の、上記温度保持される加熱ゾーン13aの長さLは、1.5m以上、10m以下に設定されており、線材6はこの環状の熱処理装置13内へ、前記モータ11の回転速度を制御することによって、1.0〜10m/分の速度で連続搬送される。
【0036】連続搬送される線材6には、使用温度における直線性を確保しつつ、曲げ・伸ばしの繰り返し耐久性を付与するために、直線記憶熱処理として、上記熱処理装置13内にて4分間以上(望ましくは6〜8分)の熱処理が施される。また、直線性確保のため、少なくとも1分間(望ましくは2〜3分)は1.5kg/mm以上(望ましくは2〜5kg/mm)の張力を線材6を付与した状態にて熱処理がなされる。
【0037】線材6へ付与する張力の調整は、例えば巻き取りドラム9の巻き取りトルクの調整や、あるいは線材6の搬送路の中間に張力調整部51を設け、例えばその張力調整部51のテンションローラ52の位置調整等により行うことができる。この場合、搬送される線材6に対して直線記憶熱処理を連続的に行うことを考慮すれば、所期の値の張力を固定的に常時付与する形が望ましいといえる。すなわち、直線記憶熱処理において線材6には、常に上記レベルの張力が付与され続ける形となる。
【0038】他方、本発明者等が鋭意検討した結果によれば、線材6に対して付与される張力が1.5kg/mm未満(望ましくは1.0kg/mm未満)の状態で4分以上確保され(第一保持工程)、かつ張力が1.5kg/mm以上の状態で1分以上(望ましくは2〜3kg/mm)確保される(第二保持工程)ことが、曲げ・伸ばし等に対する繰り返し耐久性をさらに良好とする上で望ましいことが判明している。このような工程は、例えば図2の装置において、まず、張力レベルを低く設定して第一保持工程を行い、続いて、同様の装置により張力レベルを高く設定して第二保持工程を行う、いわば2段階の直線記憶処理を行うことで実施可能である。なお、同一の装置を用いてこれら2つの保持工程を、互いに異なる熱処理保持時間にて実施する場合は、例えば線材送り速度により保持時間を調整することができる。
【0039】上記直性記憶熱処理が施された線材6は、所定の変態温度を示す形で直線形状を記憶した超弾性合金線材6となる。直線記憶熱処理後の線材6は、冷却中に変態温度が変化することがないように、冷却槽14において水等の冷媒に浸漬され急冷される。図3に示すように、この冷却槽14は上部がその搬送方向に渡って、線材6の搬送方向と直交する断面をほぼ逆台形状に形成された冷却水供給部15と、この冷却水供給部15から溢れ出た冷却水を受ける受け槽16からなり、溢れ出た冷却水は受け槽16から冷却水供給部15へ還流させている。直線記憶熱処理後、この冷却水によって線材6を冷却することにより、超弾性合金線材6の変態温度の変化が回避される。なお、冷却後、防錆処理として酸洗い工程を経る場合もある。冷却槽14を経た線材6は、キャプスタン17を経て巻取りドラム9に巻取られる。
【0040】例えば、上記の線材6に高分子材料被覆を行う場合は、以下のような工程が可能である。図9に示すように、上記処理後の線材6を巻き付けた給材ドラム29は給材位置30に回転可能に設置される。一方、この給材位置30より繰り出される線材6の搬送方向の終端の巻取り位置31には、被覆処理後の線材6を巻取る巻取りドラム32が回転可能に設置されている。この巻取りドラム32にはパルスジェネレータ33を設置したモータ34が接続され、この巻取りドラム32の回転速度をモータ34を制御することによって調整して、線材6の送り速度(巻取り速度)を一定に制御可能としている。このようにして給材ドラム29から一定の送り速度で繰り出される線材6は、ダンサーロール35を経て高分子材料被覆機36に至る。
【0041】この高分子材料被覆機36は、ほぼ円錐台状の中心部分に線材6を挿通する通路37が形成された雄型のダイス38と、この雄型のダイス38の円錐部分が嵌まり合う雌型のダイス39とから成り、この雌型のダイス39の中心部は空隙部となるように加工され、雄型のダイス38の先端との間で高分子材料40の貯留部41が形成されている。また、この雌型のダイス39の出側部は所望の高分子材料被覆厚みとほぼ同径に穿孔されている。この雄型と雌型の各ダイス38,39は、常態においてある間隔を置いて緩く嵌まり合った状態に位置しており、この間隔内に高分子材料融点以上に加熱され、軟化して溶融状態となった高分子材料40が、一端側から圧入されて雄型のダイス38の環状部より前記貯留部41へ至っている。
【0042】この高分子材料被覆機36に至った線材6は、雄型のダイス38の通路37を経て貯留部41を通過するとき、軟化溶融している高分子材料40の供給量と線材6の送り速度によって高分子材料40の被覆厚みを調整しながら、その外周面に高分子材料40が被覆される。通常、この線材6の素線の外周面には微小な表面凹凸部が存在しており、線材6が貯留部41を通過するとき、軟化溶融している高分子材料40がこれら微小な表面凹凸部に、少なくとも部分的に埋める形で入り込んで密着することになる。なお、軟化溶融している高分子材料40は高分子材料融点以上となる加熱状態で管理されているが、超弾性効果を得るために形状記憶熱処理が施された変態開始点を変化させないように、この軟化溶融している高分子材料温度を300℃以下とし、貯留部41を出てから冷却されるまでの時間を300秒以内としている。
【0043】線材6に被覆される高分子材料40は、一体成形に優れ、かつ被覆後のコイルの曲げ、変形に追随し、耐久性を有する熱可塑性高分子材料、特に熱可塑性ゴムあるいはエラストマーが有利である。具体的には、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、エチレン−酢酸ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、天然ゴム系熱可塑性エラストマー、ふっ素ゴム系熱可塑性エラストマー、トランス−ポリイソプレン系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー等があるが、前記した理由により熱可塑性ウレタン系高分子材料である、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが本発明に好適に使用できる。
【0044】外周面に高分子材料40が密着した状態で被覆された被覆超弾性合金線材42は、一次冷却槽43において直ちに冷却されることになる。図10に示すように、この一次冷却槽43は上部がその搬送方向に渡って、被覆超弾性合金線材42の搬送方向と直交する断面をほぼ逆台形状に形成された冷却水供給部44と、この冷却水供給部44から溢れ出た冷却水を受ける受け槽45からなり、溢れ出た冷却水は受け槽45から冷却水供給部44へ還流させている。高分子材料40の被覆後、この冷却水によって被覆超弾性合金線材42を直ちに冷却することにより、樹脂被覆の熱影響による超弾性合金線材の変態温度の変化が回避される。なお、冷却水の温度は20〜50℃であり、浸漬時間は5〜50秒とする。
【0045】一次冷却槽43を経た被覆超弾性合金線材42は、巻取り速度とほぼ同速度で回転する水切りロール46によって、その外周部に付着している水が除去され、外径計測装置47によって被覆後の外径(ひいては高分子材料被覆厚み)が計測される。次いで、被覆超弾性合金線材42は、前記記載とほぼ同様の構成より成る二次冷却槽48において再度水冷され、キャプスタン49を経て巻取りドラム32に巻取られる。巻取りドラム32に巻取られた被覆超弾性合金線材42は、その用途に応じて加工される。
【0046】図4には、移動通信機器の一例としての携帯用電話18が例示されており、電話機本体(機器本体)19と、これに取り付けられたアンテナ20とを備える。アンテナ20は、図5に示すように、ワイヤ状に形成されたアンテナ本体21、その一方の端部側に取り付けられた先端カバー22、他方の端部側に取り付けられた装着金具23、及びアンテナ本体21を装着金具23側において電話機本体19に接続する接続ねじ24等を備える。
【0047】例えば、超弾性合金線材6を上述のような移動通信機器用アンテナ20に加工する場合には、下記のような態様によって取り付けることができる。通常、この種アンテナ20は、線材6自体を保護するため、あるいは美感上の観点から、その外周面を高分子材料等の被覆物25によって被覆されているが、まず、線材6を所定長さに定寸切断した後、その両端部分の被覆高分子材料25を剥して素線を露出させる。図6(a)に示すように、定寸切断された被覆線材(アンテナ本体)21の一方の端部は、装着金具23の装着孔23aに挿通され、同図(b)に示すように、かしめ金型26により装着金具23を外側から半径方向にかしめることにより、アンテナ本体21と装着金具23とが一体化されている。かしめ金型26には、図6(a)及び(b)に示すように、そのキャビティ部26aに小径部26bと大径部26cとが形成されており、同図(c)に示すように、装着金具23は、小径部26bにより半径方向に圧縮されてかしめ部23bが形成されるとともに、大径部26cに対応する末端部には大径部23cが形成されている。また、かしめ部23bと大径部23cとの境界には段部23dが形成される。
【0048】接続ねじ24は、図7に示すように、外周面に雄ねじ部24aが形成されるとともに、その軸方向に貫通孔24bが形成され、ここにアンテナ本体21が挿通されている。ここで、接続ねじ24は、貫通孔24bの内径が装着金具23のかしめ部23bの外径に対応するように設定されており、前述の段部23dにおいて装着金具23の抜けが防止されるようになっている。
【0049】アンテナ20を電話機本体19に取り付ける場合は、図7に示すように、装着金具23を本体19側に形成された接続孔19aに挿入するとともに、接続ねじ24の雄ねじ部24aを、接続孔19a側に形成された雌ねじ部19bに対しねじ込むことにより取付けが完了する。このとき、装着金具23の端面側は接続孔19aの底部に形成されたアンテナ端子19cと接触するようになっている。
【0050】
【実験例】次に、本発明の効果を確認するために、以下の各種実験を行った。まず、超弾性合金素材として高周波溶解により、組成56原子%−残TiのTiNi系合金素材を溶製し、これを熱間圧延、温間伸線、及び冷間伸線により線径0.8mmの線材を得た。
【0051】(実験例1)上記超弾性合金線材に対して図2に示す熱処理装置13によって直線記憶熱処理を行った。直線記憶処理は前述の2段階処理にて行い、その第一保持工程では、張力レベルを1.0kg/mm、保持時間を0〜10分の範囲にて設定した。一方、第二保持工程では、張力レベルを2kg/mmとし、保持時間を1〜3分の範囲にて各種設定した(すなわち、線材6に対する合計の熱処理保持時間は2〜13分となる)。ただし、熱処理装置13は、設定熱処理温度450℃(±1℃)に温度保持されるゾーン長さが6mのトンネル炉であり、線材送り速度は、第一保持工程では0.6〜2m/分、第二保持工程では2.0〜6.0m/分とした。
【0052】この直線記憶熱処理後の超弾性合金線材から放電加工により長さ200mm切り出し、この線材片(アンテナ本体部として使用されるものである)6’に対し図8に示す形態の試験装置27によって、25R曲げ試験を行った。
【0053】すなわち、線材片6’の基端部を長さ20mmにわたって1対の試験保持部材28,28間に挟み付けるとともに、両試験保持部材28,28の挾圧面28a,28aの縁から線材片6の先端側を直線的に延出させる。両試験保持部材28,28には、線材片6’の延出側において挾圧面28a,28aに続くとともに曲率半径25mmにて外側に離間する円弧状のガイド面28b,28bと、そのガイド面28b,28bに続くとともに挾圧面28a,28aとほぼ直交する曲げ保持面28c,28cとを形成されている。線材片6’の延出部を、挾圧面28aの縁と略直交する向きにおいて試験保持部材28に対し、ガイド面28bに沿いつつ先端側が曲げ保持面28cに密着する位置まで曲げた後、復帰させる動作を1サイクルとして、該サイクルを両側の試験保持部材28,28に対して交互に繰り返す。そして、線材が破断するまでを耐久限界として、そのときの耐久サイクル数にて評価を行う。結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】すなわち、表1の結果から、熱処理装置13の熱処理時間を4分間以上とし、この熱処理時間のうち少なくとも1分間以上、超弾性合金線材6の長手方向へ張力を付与することにより、耐久サイクル数は格段に向上し、5000回以上が達成されていることがわかる。逆に4分間未満の熱処理時間であれば、耐久サイクル数は低くなっていることがわかる。従って、超弾性合金線材6に直線記憶熱処理を施す場合には、熱処理時間を4分間以上とし、この熱処理時間のうち少なくとも1分間を、超弾性合金線材の長手方向へ張力を付与することにより、繰り返し曲げ耐久性に優れた高耐久超弾性合金線材6を得られることがわかる。
【0056】(実験例2)実験例1の熱処理時間を10分間、この熱処理時間のうち少なくとも3分間をその長手方向へ張力を付与した線材に対し、図9に示す装置を用いて高分子材料被覆を行った。ただし、高分子材料としてはポリウレタンを使用し、被覆時の溶融高分子材料の温度は150〜350℃の範囲にて各種設定した。また、被覆厚さは0.4mmとした。さらに、雌型のダイス39の出側から一次冷却槽43(冷却水の温度は25℃)の入口までの距離を調整し、線材送り速度を0.04m/秒に固定した。これにより、線材に高分子材料が被覆されてから冷却水に浸漬されるまでの時間は5〜30秒の各種値に設定される。
【0057】そして、上記超弾性合金線材から変態点測定用の試験片を切り出した。この試験片をDSC(示差走査型熱量計)で冷却・加熱しながら示差熱曲線を求め、これからMs点(マルテンサイト変態開始温度)を変態温度として読み取った。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】すなわち、表2の結果から、ポリウレタン(高分子材料)の溶融温度を300℃以下に保持することにより、変態点のばらつきが少なく、350℃になると変態点の変化の現出割合が大となることが読み取れる。また、被覆がなされてから300秒以内に冷却水に浸漬させれば、変態点のばらつきは少ないが、300秒になると変態点の変化が大になる。したがって、超弾性合金線材を高分子材料被覆する場合には、溶融温度を300℃以下に温度保持するとともに、溶融高分子材料の被覆がなされてから300秒以内に、被覆済みの超弾性合金線材を冷却水に浸漬させると高分子材料被覆時の熱影響による前記変態点の変化を抑制できる。
【0060】(実験例3)上記線材に対し、図9に示す装置を用いて高分子材料被覆を行った。ただし、高分子材料としてはポリウレタンを使用し、被覆時の溶融高分子材料の温度は160℃、また、被覆厚さは0.4mmとした。さらに、雌型のダイス39の出側から一次冷却槽43の入口までの距離は0.5mとし、線材送り速度を0.04m/秒に固定した。これにより、一次冷却槽43の冷却水温度を20〜70℃の各種値に設定する。また、高分子材料被覆後の線材が冷却水に浸漬される時間は、一次冷却槽43の寸法変更により5〜60秒の各種値に設定した。
【0061】そして、上記超弾性合金線材から放電加工により変態点測定用の試験片を切り出した。この試験片をDSC(示差走査型熱量計)で冷却・加熱しながら示差熱曲線を求め、これからMs点(マルテンサイト変態開始温度)を変態温度として読み取った。その結果を表3に示す。
【0062】
【表3】

【0063】すなわち、表3の結果から、冷却水の温度が50℃以下で、その浸漬時間が10秒を超えると、変態点の変化が少なくなる傾向となり、逆に、冷却水の温度が60℃以上で、その浸漬時間が10秒以下になると、変態点のばらつきが大きくなる傾向にあることがわかる。したがって、冷却水の温度が50℃以下で、その浸漬時間が20秒以上であることが、高分子材料が被覆された線材に対して充分な冷却効果を得ることを、ひいては変態点の変化抑制効果を得る上で望ましいことがわかる。




 

 


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