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発明の名称 陶磁器製水回り製品及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−206791(P2001−206791A)
公開日 平成13年7月31日(2001.7.31)
出願番号 特願2000−16639(P2000−16639)
出願日 平成12年1月26日(2000.1.26)
代理人
発明者 石川 秀美 / 加藤 良輔 / 古賀 直樹
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 素地とその上の必要な部分に形成される釉薬層からなる陶磁器製水回り製品であって、前記素地の中央部は吸水性のある陶器質素地からなり、前記素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する部分は、吸水性が前記素地の中央部よりも小さくなっていることを特徴とする陶磁器製水回り製品。
【請求項2】 素地とその上の必要な部分に形成される釉薬層からなる陶磁器製水回り製品であって、前記素地の中央部はインキ浸透度が3mmより大きく、かつ前記素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する部分は、インキ浸透度が3mm以下であることを特徴とする陶磁器製水回り製品。
【請求項3】 前記素地を構成する主成分の組成が、SiO2:45〜70重量%、Al2O3:25〜50重量%であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物の総量が2重量%以下であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物とCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物の総量が6重量%以下であることを特徴とする請求項1,2いずれかに記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項4】 前記素地には、さらに、結晶として石英、クリストバライト、ムライト、コランダムからなる群から選ばれる少なくとも1種の鉱物が含有されていることを特徴とする請求項3に記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項5】 前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピースを作製したときの、そのテストピースの長手方向の収縮量が7%以下であることを特徴とする請求項3,4に記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項6】 前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、φ14×130mmのテストピースを作製し、そのテストピースを用いてオートグラフによりスパン100mm、クロスヘッドスピード2.5mm/minの条件で3点曲げ試験したときに算出される曲げ強度が30MPa以上であり、かつ、前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピースを作製し、そのテストピースをスパン200mの2点で支持し、1000℃まで4時間で昇温し、さらに1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却したときのテストピースのたわみ量が5mm以下であることを特徴とする請求項3、4に記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項7】 前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、テストピースを作製したときの、そのテストピースの長手方向の線熱膨張係数が90×10-7/℃以下であることを特徴とする請求項3,4記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項8】 前記陶磁器製水回り製品は、洗面器、小便器、大便器、ベビーバス、手洗器、便器タンクのいずれかであることを特徴とする請求項1〜7に記載の陶磁器製水回り製品。
【請求項9】 請求項1〜8に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法であって、SiO2、Al2O3を主成分とする窯業原料の粒度調整を行うことにより素地原料を作製する素地調製工程と、成形素地を形成する成形工程、前記成形素地を乾燥する乾燥工程、前記成形素地上に釉薬を適用する施釉工程、焼成工程を行った後、釉薬層が形成されていない部分で、かつ導水路内部および水と接触する可能性がある表面部に吸水防止処理を施す工程とからなることを特徴とする陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項10】 前記吸水防止処理を施す工程がシラン系、シロキサン系、シリカ系の浸透性吸水防止剤を塗布する工程であることを特徴とする請求項9に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項11】 前記吸水防止処理を施す工程における吸水防止剤の塗布方法がディッピング方式であることを特徴とする請求項9又は10に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項12】 前記吸水防止処理を施す工程における吸水防止剤の塗布方法がエアスプレー方式に代表される霧化方式であることを特徴とする請求項9〜10に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項13】 前記吸水防止処理を適用する陶磁器製水回り製品が大便器であり、前記所定表面部はトラップ内部又はリムに代表される導水路内部、および/または、大便器設置時に壁、床面に接触する部位であることを特徴とする請求項9〜12記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項14】 前記吸水防止処理を適用する陶磁器製水回り製品が洗面器であり、前記所定表面部はオーバーフロー内部であることを特徴とする請求項9〜12記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項15】 前記吸水防止処理を適用する陶磁器製水回り製品は小便器であり、前記所定表面部はトラップ内部又は導水路内部、および/または、小便器設置時に壁、床面と接触する部位であることを特徴とする請求項9〜12記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項16】 前記吸水防止処理を適用する陶磁器は便器タンクであり、前記所定表面部は、便器タンク内部、および/または、タンク底面無釉部であることを特徴とする請求項9〜12記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項17】 前記素地原料は、レーザー回折式粒度測定器により測定する平均粒子径が1〜20μmであることを特徴とする請求項9に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項18】 前記成形工程における成形方法が泥漿鋳込み成形であることを特徴とする請求項9に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
【請求項19】 前記焼成工程における焼成温度は、1100〜1300℃であることを特徴とする請求項9に記載の陶磁器製水回り製品の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大便器、小便器、洗面器などの衛生陶器に代表される陶磁器製水回り製品及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】陶磁器製品は、一般的に、陶磁器質素地上の必要な部分にのみ釉薬層が形成されており、例えば、大便器導水路、便器の床設置部等では釉薬層が形成されずに素地が露出している。
【0003】したがって、素地を陶器質で形成すると、一般に陶器には吸水があるため、上記素地露出部を介して水が素地に浸透し、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じる場合がある。そこで、従来より、焼成熔化させることにより、ガラス相を生成させ、ガラス相が素地中の粒子間の隙間を埋め、素地全体を緻密化させ、吸水性をなくす工夫がなされてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような焼結過程を経ることが、素地の大きな焼成収縮・変形を生ぜしめ、製品寸法の精度を悪化させる原因となっていた。すなわち、ねらいとする製品寸法を得るためには、焼成収縮量や収縮に伴う変形を考慮した生寸法形状を割り出すという、いわゆる割掛けを行っていたが、焼成収縮が大きいため、焼成雰囲気等によるバラツキも大きく、場合によっては、研削等による修正作業を必要としていた。本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、水和膨張による経年貫入、凍害、また汚染等の衛生面に問題が生じず、かつ製造時に修正作業等をせずとも製品寸法の精度の良好な陶磁器製水回り製品を提供可能とすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明では、上記課題を解決すべく、素地とその上の必要な部分に形成される釉薬層からなる陶磁器製水回り製品であって、前記素地の中央部は吸水性のある陶器質素地からなり、前記素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する可能性のある部分は、吸水性が前記素地の中央部よりも小さくなっていることを特徴とする陶磁器製水回り製品を提供する。そうすることで、素地の中央部は吸水性のある陶器質素地なので、焼成時の収縮・変形を可能な限り抑えて作製可能であり、素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する可能性のある部分は、吸水性が前記素地の中央部よりも小さくなっているので、素地露出部における吸水が抑制され、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0006】本発明の好ましい態様においては、素地とその上の必要な部分に形成される釉薬層からなる陶磁器製水回り製品であって、前記素地の中央部はインキ浸透度が3mmより大きく、かつ前記素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する可能性のある部分は、インキ浸透度が3mm以下であるようにする。そうすることで、素地の中央部はインキ浸透度が3mm以上と多孔質で吸水性のある陶器質素地なので、焼成時の収縮・変形を可能な限り抑えて作製可能であり、素地の表面部のうち、少なくとも釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する可能性のある部分は、インキ浸透度が3mm以下であるため、素地露出部からの吸水が抑制され、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0007】本発明の好ましい態様においては、素地を構成する主成分の組成が、SiO2:45〜70重量%、Al2O3:25〜50重量%であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物の総量が2重量%以下であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物とCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物の総量が6重量%以下であるようにする。焼結助剤として作用するアルカリ金属およびアルカリ土類金属の組成比を低く抑えることで、焼結・熔化によるガラス相の生成が抑制され、焼成収縮やそれに伴う変形が小さくなる。
【0008】本発明の好ましい態様においては、前記素地には、さらに、結晶として石英、クリストバライト、ムライト、コランダムからなる群から選ばれる少なくとも1種の鉱物が含有されているようにする。そうすることで、素地の強度が向上する。
【0009】本発明の好ましい態様においては、前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピースを作製したときの、そのテストピースの長手方向の収縮量が7%以下であるようにする。そうすることで、焼成収縮が小さく、寸法精度の安定した製品を得ることができる。
【0010】本発明の好ましい態様においては、前記陶磁器製水回り製品と同一の素地及び釉薬を用いて、φ14×130mmのテストピースを作製し、そのテストピースを用いてオートグラフによりスパン100mm、クロスヘッドスピード2.5mm/minの条件で3点曲げ試験したときに算出される曲げ強度が30MPa以上であり、かつ前記陶磁器と同一の素地及び釉薬を用いて、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピースを作製し、そのテストピースをスパン200mの2点で支持し、1000℃まで4時間で昇温し、さらに1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却したときのテストピースのたわみ量が5mm以下であるようにする。そうすることで、通常製品として使用可能な強度を有し、焼成変形が小さく、寸法精度の安定した製品を得ることができる。
【0011】本発明の好ましい態様においては、さらに、前記製水回り製品陶磁器と同一の素地及び釉薬を用いて、テストピースを作製したときの、そのテストピースの長手方向の線熱膨張係数が90×10-7/℃以下であるようにする。そうすることで、一般的に陶磁器製品に使用されている釉薬とのマッチングが良く、釉飛び、貫入等の釉薬面の欠点発生が生じにくくなる。また、素地自体の焼成工程時の冷却過程における素地切れを抑制し、さらに耐熱衝撃性が向上する。
【0012】本発明の陶磁器製水回り製品の一製造方法においては、SiO2、Al2O3を主成分とする窯業原料の粒度調整を行うことにより素地原料を作製する素地調製工程と、成形素地を形成する成形工程、前記成形素地を乾燥する乾燥工程、前記成形素地上に釉薬を適用する施釉工程、焼成工程を行った後、釉薬層が形成されていない部分で、かつ導水路内部および水と接触する可能性がある表面部に吸水防止処理を施す工程を行うようにする。そうすることで、導水路内部および水と接触する可能性がある表面部からの水の浸透を防止することができ、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0013】前記吸水防止処理を施す工程においては、上市されている油性塗料、ラッカー、アルキド樹脂塗料、ビニル樹脂塗料、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ポリウレタン樹脂塗料、ポリエステル樹脂塗料、シリコーン樹脂塗料などの一般塗料ならびに有機・無機吸水防止剤、シーラー、プライマーなどのコーティング剤、目止め剤などを塗布することにより同様な吸水防止効果を得ることができる。さらに本発明のより好ましい態様においては、前記吸水防止処理を施す工程がシラン系、シロキサン系、シリカ系の浸透性吸水防止剤を塗布する工程であるようにする。そうすることで、シラン系、シロキサン系浸透性吸水防止剤では、浸透性吸水防止剤が素地中に浸透し、素地中のシラノール基と化学的に結合することにより、表面部から数mm範囲まで強力な吸水防止層が生成されるため、耐久性に富み長期間の吸水防止効果を得ることができる。また、シリカ系浸透性吸水防止剤では、シリカ微粒子が素地中の気孔に入り込み、気孔自体を充填、クローズド化することにより、半永久的に吸水防止効果を得ることができる。したがって、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0014】前記吸水防止処理を施す工程における吸水防止剤の塗布方法においては、刷毛塗り、ローラーブラシ塗り、コテ塗りなどの一般的な塗布方法を適用することができる。さらに本発明のより好ましい態様においては、前記吸水防止処理を施す工程がディッピング方式であるようにする。そうすることで、大便器、小便器のトラップ内部又はリムに代表される導水路内部や、洗面器のオーバーフロー内部、便器タンク内部のような塗布し難い部分にも容易に塗布することができる。
【0015】さらに前記吸水防止処理を施す工程における吸水防止剤の塗布方法がエアスプレー方式に代表される霧化方式であるようにする。そうすることで、吸水防止剤の霧化がなされ、大便器、小便器のトラップ内部又はリムに代表される導水路内部や、洗面器のオーバーフロー内部、便器タンク内部のような塗布し難い部分にも容易に塗布することができる。
【0016】前記吸水防止剤を適用する陶磁器製水回り製品が大便器であり、前記所定表面部はトラップ内部又はリムに代表される導水路内部、および/または、大便器設置時に壁、床面に接触する部位であるようにする。導水路とは、リムのみならず大便器ではゼット穴などのように洗浄の際に洗浄水が通水する部位を示す。そうすることで、大便器における水と接触する可能性がある部位に対して、吸水防止処理が施されることとなり、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0017】前記吸水防止剤を適用する陶磁器製水回り製品が洗面器であり、前記所定表面部はオーバーフロー内部であるようにする。そうすることで、洗面器における水と接触する可能性がある部位に対して、吸水防止処理が施されることとなり、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0018】前記吸水防止剤を適用する陶磁器は小便器であり、前記所定表面部はトラップ内部又は導水路内部、および/または、小便器設置時に壁、床面と接触する部位であるようにする。そうすることで、小便器における水と接触する可能性がある部位に対して、吸水防止処理が施されることとなり、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0019】前記吸水防止剤を適用する陶磁器は便器タンクであり、前記所定表面部は、便器タンク内部、および/または、タンク底面無釉部であるようにする。そうすることで、便器タンクにおける水と接触する可能性がある部位に対して、吸水防止処理が施されることとなり、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい。
【0020】本発明の好ましい態様においては、前記素地原料は、レーザー回折式粒度測定器により測定する平均粒子径が1〜20μm、好ましくは5〜10μmであるようにする。平均粒子径が1μm以下になると、泥漿の凝集状態が激しくなって解膠が困難になり、成形性に問題を生じる。また、平均粒子径が20μm以上になると素地の熔化、鉱物化が不十分となり十分な強度を得ることができない。
【0021】本発明の好ましい態様においては、前記成形工程における成形方法が泥漿鋳込み成形であるようにする。そうであることにより、衛生陶器に代表される大型複雑形状品を寸法精度良く、容易に成形することができる。
【0022】本発明の好ましい態様においては、前記焼成工程における焼成温度は、1100〜1300℃であるようにする。1100℃〜1300℃という高火度焼成により、素地強度を極端に低下させることなく、曲げ強度で30MPa以上という、実用上問題のない強度を有することが可能となっている。焼成温度が1100℃より低いと素地の熔化、鉱物化が不十分となり、ねらいとする強度を得ることができない。また、1300℃より高いと熔化焼結が進行しすぎるため、ねらいとする焼成収縮量、変形量を得ることができなくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施構成例について、図1に基づいて、説明する。本発明では、素地1上の必要な部分に釉薬層2が形成されている。素地1は吸水性のある陶器質素地からなり、表面部3は、吸水防止処理を施している部位であり、素地1よりも吸水性が小さくなっている。素地1の組成は、SiO2:45〜70重量%、Al2O3:25〜50重量%であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物の総量が2重量%以下であり、Na2O、K2O、Li2Oからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属酸化物とCaO、MgO、BaO、BeOからなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ土類金属酸化物の総量が6重量%以下である。焼結助剤として作用するアルカリ金属およびアルカリ土類金属の組成比を低く抑えることで、焼結・熔化によるガラス相の生成が抑制され、焼成収縮やそれに伴う変形が小さくなる。したがって、製造時に修正作業等をせずとも寸法精度の良好な製品となる。また、水と接触する可能性のある表面部3に吸水防止処理を施していることより、素地中に水が浸透することがなく、水和膨張による経年貫入や寒冷地における凍害等の問題が生じにくい製品である。
【0024】図1の陶磁器製水回り製品は、同一の構成及び組成の素地及び釉薬を用いて、φ14×130mmのテストピースを作製し、そのテストピースを用いてオートグラフによりスパン100mm、クロスヘッドスピード2.5mm/minの条件で3点曲げ試験したときに算出される曲げ強度が30MPa以上である。また、陶磁器製水回り製品と同一の構成及び組成の素地及び釉薬を用いて、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピースを作製し、そのテストピースをスパン200mの2点で支持し、1000℃まで4時間で昇温し、さらに1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却したときのテストピースのたわみ量が5mm以下である。さらに、陶磁器と同一の構成及び組成の素地及び釉薬を用いて、テストピースを作製したときの、そのテストピースの長手方向の線熱膨張係数が90×10-7/℃以下である。
【0025】上記陶磁器は、水和膨張による経年貫入、凍害、また汚染等の衛生面に問題が生じず、かつ製造時に修正作業等をせずとも製品寸法の精度が良好である。したがって、洗面器、小便器、大便器、ベビーバス、手洗器、便器タンク等に広範囲に利用可能である。
【0026】図1の陶磁器製水回り製品は、例えば、以下に示す方法により作製可能である。SiO2、Al2O3を主成分とする窯業原料の粒度調整を行い、レーザー回折式粒度測定器により測定する平均粒子径が1〜20μmである素地原料を作製する素地調製工程、泥漿鋳込み成形等の方法により成形素地を形成する成形工程、前記成形素地を乾燥する乾燥工程、前記成形素地上に釉薬を適用する施釉工程、1100〜1300℃の温度で焼成工程を行った後、釉薬層が形成されていない部分で、かつ、導水路内部および水と接触する可能性がある表面部3にシラン系、シロキサン系、シリカ系の浸透性吸水防止剤を刷毛塗り、ディッピングもしくは、エアスプレーで塗布する工程を行う。上記方法で陶磁器製水回り製品を作製すると、焼成工程では、少なくとも長手方向の収縮量が7%以下であるようになり、かつ乾燥前の工程までを陶磁器と同じ条件にて作製した幅30、厚み15、長さ260mmのテストピース成形体をスパン200mmで支持して、陶磁器と同一の焼成条件で焼成したときのたわみ量が焼成体厚み10mm相当に換算して20mm以下であるようになる。
【0027】次に、本発明に使用される窯業原料について説明する。窯業原料とは、通常の熔化質素地原料として使用されている原料、および、耐火物原料として使用されている原料の双方をさす。ここで、熔化質素地原料とは、例えば、陶石、長石、珪石、雲母、カオリン、蛙目粘土、木節粘土、ドロマイトなどであり、耐火物原料とは、例えば、蝋石、バン土頁岩、シャモット、蝋石粘土、耐火粘土、フリントクレー、ボーキサイト、マグネシアクリンカーなどである。熔化質素地原料と耐火物原料は併用することが望ましい。熔化質素地原料のみの組成で素地を調製した場合よりも、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有率が低い蝋石、シャモット原料などの耐火物原料を併用させたほうが、素地中のアルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物を減少させることが容易だからである。
【0028】
【実施例】図2に本発明の実施例と比較例の素地調合と化学組成、結晶鉱物を示す。素地調製方法は、所定の原材料を秤量し、水35部と解膠剤として珪酸ソーダを適量添加したものをポットミル中で湿式粉砕し、平均粒径を6μmに調製した。次に、原料スラリーを物性測定用サンプルの所定形状に成形可能な石膏型に流し込み、着肉成形後に脱型し、テストピースを成形した。テストピースは、40℃で24hr乾燥した後、電気炉で1000℃まで4時間、1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持後、自然冷却するヒートカーブにより焼成した。次に、実施例1〜5については、表面部のみシラン系浸透性吸水防止剤を刷毛塗り、ディッピング、エアスプレーにより塗布し、40℃で6hr乾燥させた。また、シリカ系浸透性吸水防止剤をディッピングにより塗布し、40℃で6hr乾燥させた。
【0029】素地曲げ強度は、φ14×130mmのテストピースにより、島津製オートグラフによりスパン100mm、クロスヘッドスピード2.5mm/minの条件で3点曲げ方法で測定した値である。
【0030】焼成変形量は、幅30、厚み15、長さ260mmのテストピース(未焼成素地)を焼成時にスパン200mmで支持しておき、焼成後のたわみ量とテストピースの厚みを測定した値である。このときのたわみ量は焼成後のテストピースの厚みの二乗に反比例するため、次式で厚みが10mmの時に換算したたわみ量を変形量としている。
焼成変形量=たわみ量測定値×(焼成後のテストピースの厚み)2/102【0031】再加熱時の変形量は、幅25mm、厚み5mm、長さ230mmのテストピース(焼成素地)をスパン200mの2点で支持し、1000℃まで4時間で昇温し、さらに1200℃まで2時間で昇温し、1200℃で1時間保持した後、室温まで自然冷却したときのテストピースのたわみ量を再加熱時の変形量とする。ただし、テストピースの厚みが5mmになっていない場合については、たわみ量はテストピースの厚みに反比例するので補正した値を再加熱時の変形量とする。その補正方法は、2種類の異なる厚みのテストピースで再加熱時の変形量を実測し、次式でnを算出し、さらにテストピースの厚みが5mmのときの再加熱時の変形量を求める。
変形量2=変形量1×(厚み1/厚み2)n変形量1:厚み1のテストピースでの再加熱時の変形量変形量2:厚み2のテストピースでの再加熱時の変形量n:補正のための定数【0032】表面部以外のインキ浸透度としては、素地破断面を代用している。その測定方法については、JISA5207に準じて実施しており、幅30、厚み15、長さ130mmのテストピースを破断させ、破断面を赤インキ溶液(濃度1%のエオシンY溶液)内に1時間以上浸漬させ、インキを拭き取った後、素地内に浸透した最大浸透寸法を測定した値である。
【0033】表面部インキ浸透度は、幅30、厚み15、長さ130mmのテストピースの裏面、断面など吸水防止処理が施されていない部分に赤インキが浸透しないようにパラフィン、樹脂などで目止めをしたのち、表面部が十分浸漬する量の赤インキ溶液(濃度1%のエオシンY溶液)内に1hr以上浸漬させ、インキを拭き取った後、サンプルを破断し、素地内に浸透した最大浸透寸法を測定した値である。
【0034】図3に実施例と比較例の物性および化学分析値を示す。比較例1は一般的な熔化質素地組成であり、焼結が完全に進行していることから、インキ浸透度は、破断面、表面部とも0.1mmである。ただし、焼成収縮および変形量は最も大きな値を示していることがわかる。比較例2は比較例1から焼結助剤成分が多く含まれる長石、ドロマイトをカオリンへ代替した組成である。アルカリ金属酸化物の量が2重量%以上であり、焼成収縮7.3%、変形量19.2mmと依然として大きく、かつ、表面部の吸水防止処理を施していないため、インキ浸透度が8.0mm以上で表面からの吸水は全く防止できていない状態である。比較例3は、シャモットなどの耐火物原料を併用した場合であり、素地自体のアルカリ金属酸化物量、アルカリ土類金属酸化物量を極力減少させた調合である。この場合、焼成収縮率は3.5%、変形量4.8mmであり、かなり小さくなっている。ただし、表面部の吸水防止処理を施していないため、表面部からのインキ浸透度は8.0mm以上であり、比較例2と同様に吸水は全く防止できていない状態である。
【0035】実施例1は比較例2と同一組成であって、表面部にシラン系浸透性吸水防止剤を刷毛塗り塗布したものである。破断面のインキ浸透度は8.0mm以上と多孔質であるのに対し、表面部からのインキ浸透度は0.5mmとなっている。ただし、素地自体のアルカリ金属酸化物の量が2重量%以上であり、焼成収縮、変形量については、若干高めになっている。実施例2は、比較例3と同一組成であって、シラン系浸透性吸水防止剤を刷毛塗り塗布したものである。表面部のインキ浸透度は0.5mmであり、焼成収縮率は、3.5%、変形量4.8mmであり、非常に小さくなっている。
【0036】実施例3は、比較例3と同一組成であって、表面部にシラン系浸透性吸水防止剤をディッピング塗布したものである。表面部からのインキ浸透度は0.1mmとなっており、ほぼ完全に吸水防止効果を得ることができている。実施例4は、比較例3と同一組成であって、表面部にシラン系浸透性吸水防止剤をエアスプレー塗布したものである。表面部からのインキ浸透度は0.3mmとなっており、ディッピング塗布よりも吸水防止効果が若干劣るものの実用上十分な吸水防止効果を得ることができている。実施例5は、比較例3と同一組成であって、表面部にシリカ系浸透性吸水防止剤をディッピング塗布したものである。この場合においても、インキ浸透度が0.8mmと十分な吸水防止効果を得ることができている。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、水和膨張による経年貫入、凍害、また汚染等の衛生面に問題が生じず、かつ製造時に修正作業等をせずとも製品寸法の精度の良好な陶磁器製水回り製品を提供可能とすることができる。




 

 


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