発明の名称 |
トランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法 |
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発行国 |
日本国特許庁(JP) |
公報種別 |
公開特許公報(A) |
公開番号 |
特開2001−122919(P2001−122919A) |
公開日 |
平成13年5月8日(2001.5.8) |
出願番号 |
特願平11−301794 |
出願日 |
平成11年10月25日(1999.10.25) |
代理人 |
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発明者 |
岩本 泰昌 |
要約 |
目的
構成
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特許請求の範囲
【請求項1】 (A)アルコキシ基含有バナジウム化合物及び(B)周期律表第1〜3族有機金属化合物からなる触媒を用いることを特徴とするトランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。 【請求項2】 該(A)アルコキシ基含有バナジウム化合物が、バナジルトリアルコキサイド VO(OR)3であることを特徴とするトランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法。
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発明の詳細な説明
【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、新規なトランス−1,4− ポリブタジエンの製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】ポリブタジエンは、重合触媒によって種々のミクロ構造を有するポリマ−が得られることが知られている。特に、特開平9−124735号公報、特開平9−268208号公報、特開平9−272861号公報などに記載されているように、トランス1,4−構造を主要構造とするポリブタジエンは、バナジウム化合物と有機金属化合物からなる触媒系で重合され、生成ポリマ−は、結晶転移による潜熱が大きいため、蓄熱材料などへの応用が期待されている。特公昭44−21104号公報にはバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、特開昭51−37977号公報にはさらにCX3基を含む触媒系、特公昭47−16185号公報にはクロル化アルカンまたは酸クロライド化合物を含む触媒系、特開平9−124735号公報にはハロゲン置換有機酸エステル化合物を含む触媒系などが開示されている。しかし、これらの触媒系は重合活性や、生成ポリマーの分子量、立体規則性などの特性が必ずしも十分でなく、改良がのぞまれている。前記公知技術に記載されているアセチルアセトナートバナジウム化合物などの固体錯体は、溶媒に対する溶解性が低く、大量の溶媒が必要などの問題点がある。また、オキシ三塩化バナジウムは液体であるが、腐食性が強く、活性も低い。 【0003】 【発明の解決しようとする課題】本発明は、重合活性が改良された触媒系を用いた新規なトランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法を提供するものである。 【0004】 【課題解決のための手段】本発明は、(A)アルコキシ基含有バナジウム化合物及び(B)周期律表第1〜3族有機金属化合物からなる触媒を用いることを特徴とするトランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法に関する。 【0005】また、本発明は、上記アルコキシ基含有バナジウム化合物が、バナジルトリアルコキサイド VO(OR)3であることを特徴とするトランス−1,4−ポリブタジエンの製造方法に関する。 【0006】 【発明の実施の態様】本発明の触媒系の(A)アルコキシ基含有バナジウム化合物としては、例えば、バナジルアルコキサイド VO(OR)n(但し、n=1−3)、V(OR)m(但し、m=1−3)などが挙げられる。中でも、バナジルトリアルコキサイドVO(OR)3が好ましい。Rとしては、炭素数は1−8の脂肪族または芳香族炭化水素喪が挙げられる。具体的な化合物としては、バナジルトリエトキサイド、バナジルトリプロポキキサイド、バナジルトリnブトキサイドなどを挙げることができる。 【0007】(B)周期律表第1〜3族有機金属化合物としては、有機金属化合物、有機金属ハロゲン化合物、水素化有機金属化合物、またはアルモキサンなどが挙げられる。 【0008】有機金属化合物としては、有機リチウム化合物、有機マグネシウム、有機アルミニウム化合物などが挙げられる。具体的化合物としては、例えば、メチルリチウム、ブチルリチウム、フェニルリチウム、ベンジルリチウム、ネオペンチルリチウム、トリメチルシリルメチルリチウム、ビストリメチルシリルメチルリチウムなどの有機リチウム化合物、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物が挙げられる。 【0009】有機金属ハロゲン化合物としては、例えば、エチルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライドなどのグリニヤ−ル化合物、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジクロライドなどのクロル化有機アルミニウム化合物、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムブロマイド、セスキエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドなどのブロム化有機アルミニウム化合物などが挙げられる。水素化有機金属化合物としては、例えば、ジエチルアルミニウムハイドライド、セスキエチルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。 【0010】アルモキサンとは、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られるものであって、一般式(−Al(R)O−)m で示される直鎖状、あるいは環状重合体である(Rは炭素数1〜10の炭化水素基であり、一部ハロゲン原子及び/又はRO基で置換されたものも含む。mは重合度であり5以上、好ましくは10以上である)有機アルミニウムオキシ化合物である。Rとしてはメチル、エチル、プロピル、イソブチル基が挙げられるが、メチル基が好ましい。アルミノキサンの原料として用いられる有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム及びその混合物などが挙げられる。 【0011】(B)成分としては、上記の中でも、有機アルミニウム化合物が好ましく、更に、ハロゲン化有機アルミニウム化合物がより好ましく、更に、ジエチルアルミイウムクロライド、セスキエチルアルミニウムクロライドが特により好ましい。げられる。 【0012】有機アルミニウム化合物の使用量は、(A)成分のアルコキシ基含有バナジウム化合物のバナジウムに対するアルミニウムの元素比(Al/V)で、好ましくは1〜10000、特に好ましくは1〜1000である。 【0013】重合方法は、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合などを適用できる。溶液重合での溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族系炭化水素、n−ヘキサン、ブタン、ヘプタン、ペンタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、1−ブテン、シス−2− ブテン、トランス−2− ブテン等のオレフィン系炭化水素、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ケロシン等の炭化水素系溶媒や、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒等が挙げられる。また、1,3−ブタジエンそのものを重合溶媒としてもよい。 【0014】トランス−1,4−ポリブタジエンは、トランス−1,4結合の含量がIRスペクトル、あるいは1H−NMR、13C−NMR等スペクトルからの算出で、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは85%以上である。 【0015】また、本発明のトランス−1,4−ポリブタジエンは、低温結晶構造から高温結晶構造への結晶転移温度が50〜80℃であり、分子量、ミクロ構造などによって変えることができる。かつ、2つの結晶構造間の転移速度が速い。従って、一定温度での蓄熱が可能となる。 【0016】ここで、融点、結晶転移点は示差走査型熱量計(DSC)を用いて測定した。窒素雰囲気下、まず一定温度で昇温し、250℃で完全に融解させた後、一定温度で−30℃まで降温し再結晶化し、再度200℃まで昇温する。2回目の昇温時の示差熱を測定し融解に相当するピ−クのピ−ク点、結晶転移に相当するピ−クのピ−ク点を融点、結晶転移点とする。 【0017】本発明のトランス−1,4−ポリブタジエンは融点が100〜140℃付近である。比較的低温であるため、ペレット、薄板、金属板とのラミネ−ション、中空糸、構造体、キャストフィルム等への成形加工が可能である。また、シリコンオイル、エチレングリコ−ルなどのグリコ−ル類への溶解性を小さく、それらを熱媒体として利用することができる。さらに、窒素密閉雰囲気においては長時間連続使用できる。 【0018】本発明のトランス−1,4−ポリブタジエンには、アミン−ケトン系、芳香族第2級アミン系、モノフェノ−ル系、ビスフェノ−ル系、ポリフェノ−ル系ベンズイミダゾ−ル系、ジチオカルバミン酸系、チオウレア系、亜リン酸系、有機チオ酸系、特殊ワックス系、また2種類以上の混合系等の抗酸化剤、光安定剤、熱安定剤等を、約0.01〜4phr添加することによってポリマ−の安定性、寿命を伸ばすことができる。これらは、たとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノ−ルなどである。 【0019】各々の重合方法においては、重合時間が1分〜12時間、好ましくは5分〜6時間、重合温度が0〜100℃、好ましくは0〜50℃で行うことができる。 【0020】本発明においては、特に限定されないが、前記の触媒系でブタジエンの重合を行うことができる。ただし、ポリマ−物性を損なわない範囲において少量の異種オレフィン、共役ジエン、又は非共役ジエンとの共重合を行ってもよい。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、ノルボルネン、シクロペンテン、トリメチルビニルシランなどが挙げられる。共役ジエンとしては、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、2,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、あるいは1,5−ヘキサジエンなどが挙げられる。 【0021】 【実施例】実施例において、「重合活性」とは、バナジウム化合物成分1mmol当たりの生成ポリマ−の収量(g)である。 【0022】「トランス−1,4結合の含量」とは、日本電子製回折格子赤外分光光度計(FT−IR)JIR−5500を用い、KBR錠剤法で求めたIRスペクトルから算出した。すなわち、トランス−1,4結合に相当する966cm-1付近のピ−ク、シス−1,4結合に相当する730cm-1付近のピ−ク、及びビニル結合に相当する912cm-1付近のピ−クの各面積を求め、各ピ−ク面積の和でトランス−1,4結合に相当するピ−ク面積を割ったものをトランス−1,4結合の含量とした。 【0023】「融点」及び「結晶転移点」は以下のように求めた。セイコ−電子工業株式会社製DSC220Cの示差走査型熱量計(DSC)を用い、アルミ製サンプルパンに試料5mgを入れシ−ルしたものを、窒素雰囲気下、まず室温より10℃/分で昇温し、250℃5分加熱することにより完全に融解させた後、−10℃/分で−30℃まで降温し5分間再結晶化し、再度10℃/分で200℃まで昇温した。2回目の昇温時の示差熱を測定し融解に相当するピ−クのピ−ク点、結晶転移に相当するピ−クのピ−ク点をそれぞれ「融点」、「結晶転移点」とした。 【0024】(実施例1)十分に窒素置換したオ−トクレ−ブ中にヘプタン300ml を入れ、ブタジエン100mlを加えた後、(A)バナジルブトキサイド(VO(OBt)3 )0.5mmol、及び、(B)エチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)10mmolを順次加え重合を開始した。重合は窒素雰囲気下、20℃で15分間行った。再沈用エタノ−ル400mlに、老化防止剤としてチバガイギ−製イルガノックス1076を0.35g加えたものに、重合溶液を加え、重合体を沈殿させ回収した。表1に条件及び結果を示した。 【0025】(実施例2)触媒量を変えた以外は、実施例1と同様に行った。表1に条件及び結果を示した。 【0026】(比較例1)VO(OBt)3に替えて、V(acac)3を用いた以外は、実施例1と同様に行った。表1に条件及び結果を示した。 【0027】(比較例2)VO(OBt)3に替えて、VOCl3を用いた以外は、実施例1と同様に行った。表1〜2に条件及び結果をまとめて示した。 【0028】 【表1】
【0029】 【発明の効果】本発明により、重合活性が向上しハンドリングが容易な触媒系を用いた新規なトランスポリブタジエンの製造法を提供し、得られたポリマーの嵩密度も高い。
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