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発明の名称 防曇用セルロース組成物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−131536(P2001−131536A)
公開日 平成13年5月15日(2001.5.15)
出願番号 特願平11−316875
出願日 平成11年11月8日(1999.11.8)
代理人 【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4H020
4J038
【Fターム(参考)】
4H020 AA03 AA05 AB02 
4J038 BA022 EA011 KA06 MA08 MA14 NA06 PC03 PC08
発明者 小野 博文 / 松江 雄二
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 セルロースを防曇剤として含有し、均一に分散していることを特徴とする防曇用セルロース組成物。
【請求項2】 セルロースが、平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の防曇用セルロース組成物。
【請求項3】 セルロースが、水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒に0.1〜10重量%含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の防曇用セルロース組成物。
【請求項4】 更にラテックス及び/又は疎水性ポリマーを含有することを特徴とする請求項3記載の防曇用セルロース組成物。
【請求項5】 セルロースが、疎水性ポリマー樹脂中に5〜70重量%含有していることを特徴とする請求項1又は2記載の防曇用セルロース組成物。
【請求項6】 請求項1、2、3又は4記載の防曇用セルロース組成物を塗布、乾燥してなる防曇性被覆塗膜。
【請求項7】 請求項1、2、3、4又は5記載の防曇用セルロース組成物を成形してなる防曇性成形体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高湿度下に置かれた際や急激な温度変化があった際などに表面が曇って透明度が低下したり表面に結露することがその製品の機能を著しく低下させる、透明ガラスなどのガラス製品類、鏡、眼鏡、ゴーグル、プラスチック板、プラスチックフィルムなどのすべての製品に関する。
【0002】
【従来の技術】曇り止め、すなわち防曇効果に対するニーズは非常に高いが、必ずしも万能な防曇加工の技術は確立されているとはいえない。曇りは、疎水性表面上で微小な水滴が多数発生する現象であるので、これを抑えるためには表面に親水性を付与し、水滴を発生しにくくすることが必要である。このための工夫として、疎水性表面上に水溶性高分子や界面活性剤などの親水性部位を有する化合物をコーティングすることが考えられるが、疎水性表面と親水性化合物との接着力の問題などもあり、多くの製品の使用環境下では、経時的に親水性化合物は剥離していくため、その効果は永続的とはいえない。これを改良する手段として、基盤物質と同じかあるいは基盤物質に対して接着性に優れた疎水性コーティング剤に親水性の化合物を混合し、これを基盤表面にコーティングすることが行われている。この場合には、直接親水性化合物をコーティングする場合に比べると、経時的な剥離の程度は抑えられるが、防曇効果を高めるためには、一定量の防曇剤(親水性化合物)を混入させる必要があり、これを疎水性コーティング剤中に均一に分散させ透明度を確保するのに高度な分散技術が要求される。加えて、例えば、防曇剤として水溶性高分子を混合した場合には、コーティング層中に微分散する水溶性高分子ドメインに水が接触することにより、徐々に水溶性高分子が水相へと流出し、防曇効果がやはり経時的に低減していく。さらに、例えば、防曇剤として低分子量の界面活性剤を用いた場合にもコーティング層中での界面活性剤分子の拡散等により徐々に表面から洗い流され、防曇効果の持続性は期待できないのが現状であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】以上の従来技術を考慮すると、持続性に優れる防曇剤として望ましいのは、水に強い親水性の化合物である。しかし、これは二律背反的な課題であり、多くの化合物では親水性が高いと水中に分子のオーダーで溶解していく。仮に水に強い、すなわち水中に容易に溶解しない親水性化合物があってもこれを透明な状態でコーティングしたり、疎水性化合物に均一にこれを分散させ、透明なコーティングを行うのは非常に困難である。本発明は、こうした困難な問題を克服して防曇効果の持続性を飛躍的に向上した防曇用セルロース組成物、それを含む被覆塗膜、および該組成物を塗布してなる被覆塗膜、および該組成物を成形してなる成形体を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)セルロースを防曇剤として含有し、均一に分散していることを特徴とする防曇用セルロース組成物、(2)セルロースが、平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であることを特徴とする前記(1)記載の防曇用セルロース組成物、(3)セルロースが、水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒に0.1〜10重量%含有していることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の防曇用セルロース組成物、(4)更にラテックス及び/又は疎水性ポリマーを含有することを特徴とする前記(3)記載の防曇用セルロース組成物、(5)セルロースが、疎水性ポリマー樹脂中に5〜70重量%含有していることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の防曇用セルロース組成物、(6)前記(1)、(2)、(3)又は(4)記載の防曇用セルロース組成物を塗布、乾燥してなる防曇性被覆塗膜、(7)前記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)記載の防曇用セルロース組成物を成形してなる防曇性成形体、に関する。
【0005】以下に、本発明を詳細に説明する。本発明は、セルロースを防曇剤として含有する防曇用セルロース用組成物である。セルロースには、大別して天然セルロースと、これを溶媒に溶解、凝固させて得られる再生セルロースとがあるが、再生セルロースにおいてより高い吸湿性(親水性)を有するため、本発明におけるセルロースは再生させたセルロースであることがより好ましく、その中でも平均重合度が100以下であり、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下でセルロースII型結晶成分の分率が0.4以下であり、かつ平均粒径が5μm以下であるセルロースがより好ましい。
【0006】ここで、セルロースの平均重合度、各種結晶成分の分率および平均粒径は以下のようにして評価した;セルロース微粒子の平均粒子径は、本発明の組成物の原料となるセルロースの水分散体に関して、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920;下限検出値は0.02μm)で測定した。分散媒体中のセルロース粒子間の会合を可能な限り切断した状態で粒子径を測定するために、次の工程で試料を調製した。セルロース濃度が約0.5%になるように分散体を水で希釈した後、回転速度15000rpm以上の能力を持つブレンダーで10分間混合処理を行い均一な懸濁液を作る。次いでこの懸濁液に超音波処理を30分間施して得られた水分散試料を粒度分布測定装置のセルに供給し、再び超音波処理(3分間)を行った後、粒径分布を測定した。本発明の平均粒子径は、Mie散乱理論式から算出される体積換算の粒度分布から求められる重量平均粒子径に相当する。
【0007】なお、本発明でいうセルロースの各結晶成分の分率および平均重合度の測定は、分散体を減圧乾燥法等の手段で乾燥して、乾燥セルロース試料として行った。セルロースI型は天然セルロースに見られる結晶形、セルロースII型は再生セルロースにおいて主に観測される結晶形(ただし、再生の条件によって結晶成分の分率は制御可能である)である。
【0008】セルロースI及びセルロースII型結晶成分の分率(χIおよびχII)は、広角X線回折法(理学電機(株)社製ロータフレックスRU−300を使用)により下記手順で算出した。
【0009】セルロースI型結晶成分の分率(χI)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースI型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=15.0゜における絶対ピーク強度h0と、この面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1から、下記(1)式によって求められる値を用いた。
【0010】同様に、セルロースII型結晶成分の分率(χII)は、乾燥セルロース試料を粉状に粉砕し錠剤に成形し、線源CuKαで反射法で得た広角X線回折図において、セルロースII型結晶の(110)面ピークに帰属される2θ=12.6゜における絶対ピーク強度h0*とこの面間隔におけるベースラインからのピーク強度h1*から、下記(2)式によって求められる値を用いた。
【0011】
χI =h1/h0 (1)
χII =h1*/h0* (2)
図1に、χIおよびχIIを求める模式図を示す。
【0012】本発明で規定する平均重合度(DP)は、上述の乾燥セルロース試料をカドキセンに溶解した希薄セルロース溶液の比粘度をウベローデ型粘度計で測定し(25℃)、その極限粘度数[η]から下記粘度式(3)および換算式(4)により算出した値を採用した。
【0013】
[η]=3.85×10-2×MW0.76 (3)
DP=MW/162 (4)
【0014】本発明では、セルロースI型結晶成分の分率が0.1以下がより好ましく、特に好ましくは0.06以下で、セルロースII型結晶成分の分率がより好ましくは0.4以下、特に好ましくは0.3以下であり、さらに上記測定法で測定されたセルロースの平均粒子径が好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下、特に好ましくは1μm以下である。平均粒子径の下限は上記測定法の検出下限値に近い0.02μm程度にすることができる。この条件を満たすセルロースが防曇剤として優れた能力を有する理由は、微粒子化されており、高い分散性を示すことはいうまでもないが、低結晶性でありアモルファス領域を多く含むため、従来のセルロース素材に比べ、水分を取り込み易く(吸湿し易い)、かつこれらを満足するものが透明性に優れていることを挙げることができる。当然の事ながら、平均粒径が小さいものほど高い分散性を有する。この様な本発明のセルロースからなる組成物は、水等の分散媒体に極めて高度に分散しているだけでなく、各種配合成分との混合性も極めて良好である。その為防曇剤であるセルロースが配合成分中で高度に分散され、組成物そのものの防曇性を発現するに至るのである。さらに、セルロースの平均重合度(DP)が好ましくは100以下、より好ましくは50以下であれば、上記特性を一層向上させることができる。本発明のセルロースは、水に不溶なセルロースであることからDPは20以上である。
【0015】本発明のセルロース組成物は、好ましくはセルロースが水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒に0.1〜10重量%含有される。ここで、セルロースの配合量は組成物の内容を考慮して決定される。すなわち、乾燥時の固形分としてセルロースのみを含有するような組成物の場合には、コーティングに適した粘性を保持するようにセルロースの濃度を決定すべきであり、また、ラテックス粒子や硝化綿のような疎水性のコーティング剤中にセルロースを分散させることによりセルロースのみのコーティングに比べて塗膜の耐水性を高めることできるが、この場合には、これを乾燥させた際に防曇性が発揮されるようにセルロースの配合量を決定する必要がある。後者の場合には当然のことながら、疎水性コーティング剤の性質によってセルロースの配合量が決定される。このように組成物の内容を考慮して決定されるが、セルロースの含有量が0.1重量%未満であると、防曇効果の発現が充分ではなく、10重量%を越えると粘性が高くなり作業性の点で好ましくない。コーティングの際の粘性からすれば、組成物中のセルロースの含有量は0.2〜3.0重量%の範囲がより好ましい。また、本発明のセルロース組成物の分散媒体は、水、アルコール類などの各種有機溶媒、あるいは水と有機溶媒との混合溶媒などが選ばれるが、特にこれらに限定されるものではない。水や低級アルコール類などのように比較的低い沸点を有し、乾燥させ易い分散媒体が望ましい。同時に、本発明では、これらの分散媒体中で配合物が凝集を起こしたりせずに、均一に分散していることも重要である。分散性を高めるためにグリセリンなどの多価アルコール類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ノニオン性界面活性剤などの各種添加剤などが含まれていても構わない。また、セルロースは、通常、上述したような低沸点の溶媒には溶解しないので、本発明では実質的に、組成物中で微粒子の形態をとっていることが望ましい。
【0016】防曇性を付与させる基盤物質としては、当然、曇り易いことがその材料の使用上問題となるような物質、例えば、透明ガラス類、鏡、眼鏡、ゴーグル、透明性の高いプラスチック板、透明性の高いプラスチックフィルムなどを挙げることができるが、不透明な物質であっても曇り止めの必要な物質であれば本発明の対象となる。
【0017】さらに、本発明の防曇用セルロース組成物は、本質的には物質表面において水分が小さな水滴として凝集することを防ぐことが目的であるので、結露を防止する目的にも適用できる。特にこの場合には、コーティングの基盤物質として疎水性のあらゆる材料が対象となる。特に不透明な素材であっても構わない。
【0018】本発明の有機溶媒とは、溶剤あるいは分散媒体として適用し得るすべての有機溶媒を意味する。代表的なものには、メタノール、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、n−ヘキサン、n−ヘプタン、石油ナフサ、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、石油エーテルなどが挙げられる。
【0019】さらに、本発明において均一に分散するとは、セルロースをはじめとする配合成分が部分凝集をしておらず、目視で均一であって透明または半透明な状態を意味する。
【0020】本発明の組成物において、セルロースと分散媒体としての水や有機溶媒以外に含有される成分として各種の疎水性物質や組成物の機能を高めるために添加する各種機能性物質を挙げることができる。疎水性物質として具体例を挙げれば、例えば、アクリル樹脂系ラテックス、スチレン−ブタジエン樹脂系ラテックス、ウレタン樹脂系ラテックス、サラン樹脂系ラテックスなどの比較的疎水性の高いラテックス、さらには、分散媒体に有機溶媒や水/有機溶媒の混合溶媒を用いる場合には、これに溶解し得る疎水性ポリマー(例えば、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、シリコン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド、硝化綿やセルロースアセテート、セルロースアセテート−ブチレートなどのセルロース誘導体類)などである。これらは単体であってもいくつかのポリマー類を組み合わせてもよい。この他、防曇用セルロース組成物の機能を高めるために、得られた組成物がコーティング剤として機能する範囲で、上述した化合物以外の添加剤を加えても構わない。例えば、防曇の助剤あるいは組成物の分散安定化を高めるためにグリセリンなどの親水性低分子やポリオキシエチレンやポリビニルアルコールなどの親水性高分子を加えても構わない。また、セルロース以外の乾燥固形成分を全く含まない組成物(すなわち、セルロースと分散媒体のみ)も当然のことながら本発明に含まれる。
【0021】本発明の組成物の好ましい調製例の一例を以下に述べる。セルロースを50重量%以上溶解させる能力のある鉱酸(例えば硫酸水溶液)にセルロースを分散・溶解させて、かかる分散液あるいは溶液を水中に再沈させて得られる凝集液をそのままか、更に加水分解処理を施した後、水洗し、pHが3以上のゲル状物とする。次に、得られたゲル状物をそのまま、あるいはエタノールなどの有機溶媒に置換した後、微細化処理を施すことによりセルロースの水分散体あるいは有機溶媒への分散体を調製する。この際の微細化処理としては超高圧ホモジナイザーやビーズミルあるいは超音波処理などの適用が有効である。最後の微細化処理は必要に応じて複数回行っても構わない。この際の原料セルロースとしては木材パルプや綿等の天然セルロースが好適に使用できるが再生セルロースであっても構わない。次にこうして得たセルロース粒子の分散体に、各種配合物を適宜加え、目的に応じた混合処理を施す。例えば、セルロースの水分散体とラテックスとを混合したうえ、水と混合し得る有機溶媒を適宜加えて、高度な混合処理(高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザーなどの)を施しても均一なコーティング液を得ることができる。さらには、セルロースの水分散体を水相としてまず調製し、この中に上述したようなポリマー樹脂を溶解させたポリマー溶液を加え、混合液を乳化、分散させるとポリマー樹脂が球状微粒子として凝集するため、ラテックス様の、しかも、セルロースが高度に分散された組成物を得ることができる。この場合には、乳化・分散の手段として高圧ホモジナイザーのような高度な分散機を用いるとより好適な組成物を得ることができる。
【0022】さらに、本発明は、セルロースが、水、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒に0.1〜10重量%含有している防曇用セルロース組成物または該組成物にさらにラテックス及び/又は疎水性ポリマーを含有させて得られる防曇用セルロース組成物を塗布、乾燥して得られる防曇性被覆塗膜である。
【0023】ここでいう防曇性被覆塗膜とは、透明または半透明の防曇効果の小さな疎水性材料(窓ガラス等の各種透明ガラス、テレビ・パソコンのディスプレー、鏡、眼鏡、ゴーグル、各種プラスチック板、各種プラスチックフィルムなど)や不透明であっても曇り止めや結露防止が要求される材料に対するコーティング膜を意味する。本発明の塗膜の組成は、セルロースの含率が5〜100重量%の範囲で、複合化する疎水性物質の性質と要求ニーズに応じて防曇性が低減するような組成を決定する。既載した方法で調製したセルロース/水分散体をガラスなどの上に直接コーティングしてもよいが、表面への強固な固定化や耐水性の向上のために記述したラテックスやポリマー樹脂などと複合化することによって強固で疎水性表面への接着性に優れた塗膜を得ることもできる。このような防曇性被覆塗膜は、本発明によって提供される防曇用セルロース組成物を対象となる材料へ塗布し、乾燥させることにより得ることができる。
【0024】また、本発明の防曇性成形体とは、防曇性フィルムや防曇性をもつ透明性のある樹脂状物を意味し、フィルムや樹脂において防曇性や結露防止が要求される製品のすべてが対象である。本発明の防曇性成形体の組成は、セルロースの含率が5〜100重量%の範囲で、複合化する疎水性物質の性質と要求ニーズに応じて防曇性が低減するような組成を決定する。既載した方法で調製したセルロース/水分散体を乾燥させることにより透明なセルロース100%の樹脂状成形体を得てもよいが、既述した疎水性のポリマー樹脂などと複合化することによって強固な防曇性の樹脂状成形体を得ることもできる。
【0025】また、本発明の防曇成形体は、適当な組成に調製した本発明の防曇用セルロース組成物を乾熱ロール上に塗膜化させた後、分散媒体を蒸発させた後、これを巻き取ることにより防曇性のフィルムとして得ることができる。さらには、既載の方法により調製したセルロース/水分散体に水と相溶する疎水性ポリマーの溶剤(ただし、水より沸点の高いもの)を混入し、均一な分散体とした後、水を蒸発させて濃縮化し、この分散体を溶融化させた疎水性ポリマー融液中に混練しながら少しづつ注いで一定量のセルロースを複合化させた、疎水性ポリマー樹脂中にセルロースを好ましくは5〜70重量%含有する本発明の防曇性セルロース組成物である溶融体を作り、これを金型に流入後冷却するなどにより防曇効果をもつ樹脂成形体を作ることもできる。疎水性ポリマー樹脂中に含まれるセルロースの量が少なすぎると組成物の防曇効果が発現せず、多すぎると疎水性等が低くなり、樹脂と複合化することのメリットが失われる。本発明のセルロースを疎水性ポリマー樹脂中に分散させた組成物においては、セルロースの含有量は5〜70重量%の範囲が好ましく、10〜60重量%の範囲がより好ましい。
【0026】
【実施例】本発明のセルロースを防曇剤として含む防曇用セルロース組成物を実施例により具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0027】(原料セルロースの調製)木材パルプを65重量%硫酸へパルプ含率4重量%となるように−5℃で溶解させ、このセルロース/硫酸溶液に対し重量比で2.7相当の水中へセルロース/硫酸溶液を強撹拌下で注ぎ、セルロースを析出させた。得られたフレーク状のセルロース分散液を80℃で40分間加水分解した後、濾過、水洗してペースト状のセルロース微粒子の水分散体を得た。得られたゲル状物中のセルロース濃度は6.0重量%であった。次いでこのゲル状物をイオン交換水で希釈してセルロース濃度3.0重量%とした後、ブレンダーで15,000rpmの回転速度で5分間混合した。次いでこの希釈液を超高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH型、みづほ工業(株)製)にて操作圧力1,750kg/cm2で4回処理して透明性の高いゲル状のセルロース分散体を得た。記述の方法で評価したセルロースの平均粒子径は0.24μm、セルロース粒子のセルロースI型結晶成分およびセルロースII型成分の分率は、それぞれ、0.03および0.16であった。このセルロース微粒子の透明な水分散体をX0とする。
【0028】実施例1、比較例1X0をイオン交換水で希釈し、1.2重量%のセルロース濃度とした後、ブレンダーにて15,000rpmの回転速度で5分間混合処理を行って得られた透明で粘調な分散液をJ1とし、これをガラス上にコーティングして得られた塗膜に関する結果を実施例1とする。
【0029】東京化成(株)製のヒドロキシエチルセルロース(HEC;4,500〜6,000cps(2wt% in water、25℃))の1.5重量%水溶液をH1とし、これをガラス上にコーティングして得られた塗膜に関する結果を比較例1とする。
【0030】分散液J1と水溶液H1をそれぞれガラスプレパラート上へアプリケータを使用して流延した後、これらを50℃で乾燥させ、2つのコーティングガラスプレパラートを得た。これらは共に透明な塗膜であった。これらコーティング表面の防曇性の尺度として、35℃、60%RHの雰囲気に1時間保持したフィルムを10℃、70%RHの調湿室に置いた直後の曇り性を評価した。その結果、コーティングしていない面(裏面)は曇りがはっきりと認められたのに対し、2つのサンプル共にコーティング面は全く曇ることは無く、コーティングによる防曇効果が認められた。
【0031】次に、35℃、95%RHの環境に1時間それぞれのサンプルを置いた後、この環境下で指でそれぞれのコーティング面を擦ったところ、J1によるコーティング面は透明性や表面の状態に全く変化がなかったが、H1によるコーティング面ではしばらく擦っていると表面がべたべたし表面が水溶化して不透明な状態となった。
【0032】さらに、J1、H1からのコーティング面に水道水を直接流し続けると、H1からの塗膜は直ちにコーティング面が水溶化し剥がれ落ちたのに対し、J1からの塗膜では塗膜が剥がれ落ちることはなかったが、表面より微粒子の剥離が若干認められ、これによりやや透明度が低くなった。これらの実験によりH1による塗膜は生活環境に耐えられるものではなかったが、J1による塗膜は、特に水と頻繁に接触する環境以外では充分に適用できる防曇性の塗膜であることが明らかになった。
【0033】実施例2、比較例2表1の組成のコーティング剤J2とH2を調製した。サンプルJ2による結果を実施例2、サンプルH2による結果を比較例2とする。組成(%)はすべて重量%を意味する。
【0034】
【表1】

【0035】コーティング剤の調製は次のように行った;溶媒と各種原料を室温(14℃)にて混合し、ブレンダーで予備撹拌した後、超高圧ホモジナイザー(Microfluidizer M−110EH型、みづほ工業(株)製)にて操作圧力1,000kg/cm2で1回処理して、白色味がかった透明性の高いの粘性のある分散液J2と極めて低粘度の白色分散液H2を得た。
【0036】各々の分散液を市販のOHPシート(ポリエチレンテレフタレート製)にアプリケータを使用して約1mmの厚みに塗布し、50℃で乾燥させて表面コーティングを行った。J2は透明な塗膜、H2はやや白色がかった半透明の塗膜であった。セロハンテープを用いた繰り返しの接着強度試験では、どちらの塗膜もPETフィルムから剥がれることは全くなく、実用に耐える接着強度を有することが示された。さらに、この2つのサンプルのコーティング表面に対し、水中で爪で擦ったところ、2つのサンプルとも全くコーティングが剥がれることが無かった。これらによりJ2による塗膜表面は耐水性に優れた塗膜であることが明らかになった。次に、これらコーティング表面の防曇性の尺度として、35℃、60%RHの雰囲気に1時間保持したフィルムを10℃、70%RHの調湿室に置いた直後の曇り性を評価した。その結果、J2では全く曇らなかったのに対し、H2でははっきりと曇りが認められた。さらに、J2による塗膜を朝晩の2回ティッシュペーパーで強く拭くことを6か月続けた後に上述の防曇性の評価を実施したところ、やはり防曇効果が認められ、本発明のコーティング塗膜の防曇機能に関する持続性が極めて高いものであることが明らかになった。
【0037】
【発明の効果】本発明の組成物によって、曇り易い物質表面に対し、防曇剤であるセルロースを均一にかつ強固に固定化させることができ、持続性のある防曇効果を発現することができる。




 

 


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