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発明の名称 ポリケトン溶液およびポリケトン繊維の製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−115007(P2001−115007A)
公開日 平成13年4月24日(2001.4.24)
出願番号 特願平11−293928
出願日 平成11年10月15日(1999.10.15)
代理人 【識別番号】100103436
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 英夫 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4J002 CJ001 DD056 DD066 DD076 DD086 FA041 GK01 HA04 
4L035 AA06 BB03 BB05 BB06 BB08 BB15 BB18 BB22 BB66 BB69 BB77 BB81 BB91 BB94 EE01 EE08 EE14 EE20 FF01 HH10
発明者 森田 徹 / 加藤 仁一郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 繰り返し単位の90重量%以上が下記構造式(1)で示されるポリケトンを溶剤に溶解した溶液であって、溶剤が亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液であり、該ポリケトン溶液が0〜250℃の温度範囲に相分離温度を有することを特徴とするポリケトン溶液。
【化1】

(ここで、Rは炭素数1〜30の有機基である。)
【請求項2】 ポリケトンが、極限粘度が3dl/g以上であることを特徴とする請求項1記載のポリケトン溶液。
【請求項3】 溶剤が、塩濃度が30〜73重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリケトン溶液。
【請求項4】 溶剤が、ハロゲン化亜鉛又は/及び臭化カルシウムの水溶液であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリケトン溶液。
【請求項5】 溶剤が、ハロゲン化亜鉛と、更にハロゲン化アルカリ金属塩又は/及びハロゲン化アルカリ土類金属塩を含む水溶液であり、その重量比が95/5〜20/80であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリケトン溶液。
【請求項6】 相分離温度よりも高い温度にある請求項1〜5のいずれかに記載のポリケトン溶液を、相分離温度よりも低い温度の浴に押し出して繊維状物を形成し、該繊維状物から溶剤の一部又は全部を除去した後、3倍以上延伸することを特徴とするポリケトン繊維の製造方法。
【請求項7】 相分離温度よりも20℃以上低い浴に押し出すことを特徴とする請求項6記載のポリケトン繊維の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリケトン溶液及び該溶液を用いた繊維の製造方法に関する。更に詳しくは、いわゆるゲル紡糸に適したポリケトン溶液と、該溶液を用いた高強度・高弾性率のポリケトン繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一酸化炭素とエチレン、プロピレンのようなオレフィンとをパラジウムやニッケルなどの遷移金属錯体を触媒として用いて重合させることにより、一酸化炭素と該オレフィンが実質完全に交互共重合したポリケトンが得られることが知られている(工業材料、12月号、第5ページ、1997年)。ポリケトンを産業資材用繊維として応用する検討が多くの研究者によってなされ、高強度、高弾性率、高温での寸法安定性、接着性、耐クリープ特性を生かしてタイヤコード、ベルト等の補強繊維、コンクリート補強用繊維といった複合材料用繊維への応用が期待されている。
【0003】高分子量ポリエチレン、高分子量ポリビニルアルコールのような高分子量屈曲性ポリマーから高強度・高弾性率繊維を得る方法として、ゲル紡糸法が知られている。ゲル紡糸は、高分子量屈曲性ポリマーを溶媒に溶かして溶液にして、ポリマー分子間の絡み合いを適度に解きほぐした後に、この溶液を冷却して絡み合いを実質的に増大させないようにしてゲル化させた後、超延伸して高強度・高弾性率繊維を得る方法である。ポリケトン繊維も屈曲性ポリマーの1種であるためにゲル紡糸を適用させることで高強度・高弾性率繊維になることが考えられる。しかしながら、これまでに報告されているポリケトンのゲル紡糸技術は、いずれも欠点を有しており、工業的に実施するには問題があった。
【0004】例えば、特表平5−504371号公報には、ゲル化点以下に冷却すると熱可逆性ゲルに変化してゲル紡糸に使用できるポリケトン溶剤として、フェノール、ピリジン、安息香酸、ギ酸、N−メチルピロリジン、アニリン、フェノキシエタノール、N−メチルイミダゾール、およびこれらの物質の2種またはそれ以上の混合物、40〜45重量%フェノールと60〜55重量%ベンズアルデヒドとの混合物、及び25〜35重量%カプロラクタムと75〜65重量%フェノールとの混合物からなる溶剤が開示されている。しかしながら、これらの溶剤は、毒性が高かったり(フェノール、ギ酸、アニリン、フェノキシエタノール、ベンズアルデヒド等)、ポリケトンと高温で反応したり(安息香酸、アニリン、ギ酸)、ゲル紡糸に好適な高分子量ポリケトン、特に極限粘度が10dl/gを越えるような高分子量ポリケトンに対する溶解性が低かったり(上記全ての溶剤)、可燃性が高く、防爆設備が必要だったり(上記全ての溶剤)するという問題があった。
【0005】さらに、特表平8−5073828号公報には、443Kを越える沸点、373K未満の融点、及び443Kを越えるポリマー溶解温度を持つ適切な溶媒中に溶解し、そして成形後にポリマー溶液が冷却による熱可逆ゲルに転換し、その後溶媒を除去する方法が開示されており、具体的な溶剤として、エチレンカーボネート、ベンジルアルコール、γ―ブチロラクトン、ジプロピレングリコール等が示されている。しかしながら、これらの溶剤も可燃性が高く、高分子量ポリケトンを溶解させるには溶解性が低く、しかも徐々にではあるが溶液状態でポリケトンが熱架橋するといった問題があった。また、このゲル紡糸法では、高強度・高弾性率の繊維を与える効果が小さく、ポリケトンに対する適正なゲル紡糸法が得られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以下の課題を達成するものである。
1)溶剤が可燃性または毒性が低いもので、溶解中にポリケトンが化学架橋したり、分子量低下をおこさないこと。
2)冷却したときに熱可逆ゲルを形成するポリケトン溶液を提供すること。
3)高い強度、弾性率を得るための適正なゲル紡糸方法を提供すること。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために、ポリケトンの溶剤組成及びポリケトン繊維の製造方法を詳細に検討した結果、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液を溶剤とするポリケトン溶液であって、特定の温度範囲に相分離温度を有する該ポリケトン溶液を用いることにより、上記の課題を克服したゲル紡糸が可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0008】すなわち、本発明は、繰り返し単位の90重量%以上が下記構造式(1)で示されるポリケトンを溶剤に溶解した溶液であって、溶剤が亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液であり、該ポリケトン溶液が0〜250℃の温度範囲に相分離温度を有することを特徴とするポリケトン溶液、及び該溶液を用いたゲル紡糸によるポリケトン繊維の製造方法を提供するものである。
【化2】

(ここで、Rは炭素数1〜30の有機基である。)
【0009】本発明に用いるポリケトンは、繰り返し単位の90重量%以上が構造式(1)で示されるポリケトンである。10重量%未満の範囲で構造式(1)以外の繰り返し単位、例えば、カルボニル基同士、アルキレン基同士がつながったもの等を含有していても良い。繰り返し単位の95重量%以上が構造式(1)であるポリケトンが耐熱性、耐光性を向上させる観点から好ましい。もちろん、構造式(1)で示される繰り返し単位の含有率は高ければ高い程よく、好ましくは97%以上であり、最も好ましくは100重量%である。
【0010】また、構造式中のRは1〜30の有機基であり、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等が例示される。これらの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは2種以上であってもよく、例えば、エチレンとプロピレンが混在していてもよい。これらのポリケトンとしては、Rがエチレンのみから構成させるポリケトンが高強度、高弾性率、高温での寸法安定性が達成できるという観点で最も好ましい。また、これらのポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。
【0011】本発明で使用するポリケトンの極限粘度[η]は、好ましくは3dl/g以上である。[η]が3dl/gより小さいと、ゲル紡糸を行うことによる強度アップの効果が現れにくくなる傾向がある。ただし、[η]が25dl/gより大きい場合、溶解性や紡糸性が悪くなる傾向が見られることから、20dl/g以下であることが好ましい。好ましい[η]の範囲としては3〜18dl/gが好ましく、さらに好ましくは5〜15dl/gである。本発明におけるポリケトンの極限粘度[η]は、後述する実施例の(1)極限粘度[η]の項に記述した測定方法により測定したものである。
【0012】本発明に用いるポリケトンの溶剤は、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液であることが必要である。具体的に亜鉛塩としては、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、亜塩素酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛等が挙げられ、カルシウム塩としては、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられ、チオシアン酸塩としては、チオシアン酸亜鉛、チオシアン酸アルミニウム、チオシアン酸アンモニウム、チオシアン酸カルシウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸マグネシウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸バリウム等が挙げられ、鉄塩としては、臭化鉄、ヨウ化鉄、塩化鉄等が挙げられる。これらの塩の内、ポリケトンの溶解性、溶媒のコスト、水溶液の安定性の点で塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛等のハロゲン化亜鉛、臭化カルシウムが好ましく、特に好ましくは塩化亜鉛である。また、溶解性の向上、コストダウンやポリケトン溶液の安定性を目的として、複数の塩を混合してもかまわない。更に、上記の塩以外で水に溶解する金属塩が本発明の目的を阻害しない範囲で混合されていてもよい。
【0013】これらの塩の水溶液に用いる水については、工業的に用いることが可能なものであれば特に制限はなく、飲料水、河川水、イオン交換処理水等任意のものが使用できる。さらに、該塩水溶液のポリケトンを溶解する能力を阻害しない範囲、通常は水の30重量%以内で、メタノール、エタノール、エチレングリコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を含有しても良い。
【0014】本発明の溶剤である亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩の中から選ばれた少なくとも1種の水溶液の塩濃度は、30〜73重量%であることが好ましい。30重量%より低い塩濃度では、紡糸工程において、浴中から引き上げたときの繊維状物がもろく切断し易くなる傾向があり、また73重量%以上では、浴中でゲル化するスピードが遅くなり、浴中から引き上げるときに切断し易くなる傾向がある。さらに好ましくは40〜73重量%であり、50〜70重量%が最も好ましい。尚、ここでいう塩濃度は、以下の式で定義される値である。
塩濃度(重量%)=〔塩の重量/(塩の重量+水の重量)〕×100【0015】また、ハロゲン化亜鉛水溶液にハロゲン化アルカリ金属塩またはハロゲン化アルカリ土類金属塩を添加すると、高温で溶解するときのポリマーの着色を低減させたり、紡糸工程においてポリマー溶液をゲル化させるスピードが早くなり、紡糸速度を高めるられる点で好ましい。ハロゲン化アルカリ金属塩及びハロゲン化アルカリ土類金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化リチウム、塩化バリウム、臭化ナトリウム、臭化カルシウム、臭化リチウム、臭化バリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化バリウム等が挙げられるが、特に塩化ナトリウム、塩化カルシウムが好ましい。また、溶解時の安定性を高めたり、紡糸性を向上させる観点からハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属塩又はハロゲン化アルカリ土類金属塩との比は95/5〜20/80のが好ましく、さらに好ましくは90/10〜30/70であり、最も好ましくは80/20〜40/60である。
【0016】また、本発明のポリケトン溶液中のポリマー濃度は0.1〜40重量%であることが好ましい。ポリマー濃度が0.1重量%未満では濃度が低すぎて、紡糸工程においてポリマー溶液をゲル化させて繊維状に形成することが困難になる欠点を有する他、繊維の製造コストが高くなりすぎる欠点を有する。また、40重量%を越えるともはやポリマーが溶剤に溶解しなくなる。溶解性、紡糸のし易さ、繊維の製造コストの観点から、好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。尚、ここでいうポリマー濃度は、以下の式で定義される値である。
ポリマー濃度(重量%)=〔ポリマーの重量/(ポリマーの重量+溶剤の重量)〕×100【0017】本発明のポリケトン溶液は0〜250℃の温度範囲に相分離温度が存在することが必要である。相分離温度とは、実質的に均一に溶解したポリケトン溶液を徐々に冷却したとき、溶剤にポリケトンが溶けなくなって溶液が不均一な状態になり始める温度のことである。この不均一な状態は光の透過性で判断することが可能である。溶液が不均一になると光の散乱が増加するため、直線的に透過する光の量が実質的に均一に溶解したポリケトン溶液よりも小さくなる。本発明では、実質的に均一に溶解されたポリケトン溶液(このときの溶液における光の透過度をT1 とする)を1時間に10℃のスピードで徐々に冷却したとき(このときの溶液における光の透過度をT2 とする)に、光の透過度の減少率が10%となった時の温度を相分離温度と定義する。尚、光の透過度は、波長が632.8nmのレーザー光を光源に用いて測定した。また、光の透過度の減少率は以下の式で定義される値である。
光の透過度の減少率(%)=〔(T1 −T2 )/T1 〕×100【0018】相分離温度が250℃より高い場合、ポリケトン溶液の作成時にポリマーが化学架橋や分解を起こすことにより、ポリケトン繊維の物性を低下させる場合がある。また、0℃以下では、紡糸工程において、ゲル化するスピードが遅くなり紡糸が実質的に不可能になる。これらの観点から相分離温度は、30〜170℃が好ましく、さらに好ましくは50〜120℃ある。0〜250℃の温範囲に相分離温度を持つようなポリケトン溶液は、溶剤中の塩濃度を調整することにより達成可能である。適正な塩濃度の範囲は、ポリケトンのモノマー組成、溶解するポリケトンの濃度、溶剤として使用する塩の種類により異なる。塩濃度を決定する手順は以下のように行う。ポリケトンを溶剤に所定量混合し、実質的に均一で透明なポリケトン溶液となるまで温度を上昇させ攪拌溶解する。その後、1時間に10℃のスピードで徐々に冷却し、相分離温度を測定する。このときの相分離温度が目標値より高いときは溶剤の塩濃度を増加させ、低いときは塩濃度を減少させる。このような操作を繰り返すことにより、目標の相分離温度を有するポリケトン溶液の塩濃度が決定される。
【0019】相分離温度と塩濃度の関係は、例えば、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンでは、溶解するポリケトンの濃度が5〜15重量%、塩が塩化亜鉛である場合、相分離温度が0〜250℃の範囲であるポリケトン溶液を得るための塩濃度の範囲は53〜68重量%となる。また、溶剤がハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属塩又は/及びハロゲン化アルカリ土類金属塩を含む水溶液である場合、ハロゲン化亜鉛とハロゲン化アルカリ金属塩又は/及びハロゲン化アルカリ土類金属塩の混合比によっても相分離温度は変化する。例えば、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンでは、溶解するポリケトンの濃度が5〜15重量%の条件において、塩が塩化亜鉛と塩化ナトリウムで、塩化亜鉛と塩化ナトリウムの重量比が95/5〜75/25のときは、相分離温度が0〜250℃の範囲であるポリケトン溶液を得るための塩濃度の範囲は55〜70重量%となり、塩が塩化亜鉛と塩化カルシウムで、塩化亜鉛と塩化カルシウムの重量比が55/45〜45/55のときは、相分離温度が0〜250℃の範囲であるポリケトン溶液を得るための塩濃度の範囲は48〜67重量%となる。
【0020】本発明のポリマー溶液の製造方法としては特に制限はないが、以下に好ましい例を挙げて説明する。溶解機にポリケトン及び溶剤を入れ、相分離温度より高い温度、好ましくは相分離温度よりも30℃以上高い温度で攪拌することにより実質的に均一なポリケトン溶液を得ることが可能である。ただし、攪拌する温度が300℃より高くなるとポリマーの変性が起こる場合があり、300℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは200℃以下である。また、脱泡は、減圧下または大気圧下で放置すれば可能であるが、ポリケトン溶液の粘度が高い場合には時間が多くかかる欠点がある。その場合は、以下の方法を用いることが好ましい。
【0021】相分離温度より低い温度、好ましくは相分離温度より30℃以上低い温度でポリケトンと溶剤を混合し、攪拌しながら減圧する。溶解の進行が遅いために粘度の上昇が抑えられ脱泡が容易となる。ただし、混合攪拌しながら減圧する温度が−50℃以下となるとかえって粘度が高くなる場合があり、−50℃より高い温度であることが好ましい。これを空気の進入を抑制しながら前述と同様に相分離温度より高い温度で攪拌することにより、気泡が無く実質的に均一なポリケトン溶液が得られる。また、溶解機にポリケトンを入れ、100torr以下、好ましくは10torr以下、さらに好ましくは1torr以下とした後、脱泡した溶剤を注入し、空気の混入を抑制して前述のように相分離温度より高い温度で攪拌することにより、気泡が無く実質的に均一なポリケトン溶液が得られる。この方法を用いると、さらに高粘度ポリケトン溶液での脱泡が可能となる。
【0022】溶解機としては、1軸又は2軸の攪拌翼を有して攪拌効率に優れた公知のものが使用できる。1軸攪拌の溶解機としては、スパイラルや二重スパイラル翼を有したものが適している。2軸攪拌のバッチ式溶解機としては、例えば、自転と公転を有するフックを攪拌翼とするプラネタリーミキサー、双腕型ニーダーやバンバリーミキサーが使用され、連続溶解機としては、例えば、スクリュー押出機やコニーダーが使用される。いずれの溶解機も密閉度が高い仕様であることが好ましい。こうして得られたポリケトン溶液を必要に応じてフィルターで濾過し、ごみ、未溶解ポリマー、触媒残さ等を除去する。また、必要に応じて、ポリケトン溶液に酸化防止剤、耐光安定剤、艶消し剤等を添加してもよい。
【0023】次に、本発明のポリケトン溶液を用いたポリケトン繊維の製造方法について説明する。本発明のポリケトン溶液を紡口口金から押し出すときの温度は、相分離温度よりも高いことが必要である。相分離温度以下ではポリケトン溶液が不均一となり、糸切れや紡口詰まりが発生する。さらに、押し出しの長期安定性を考慮すれば相分離温度よりも20℃以上高い温度で押し出すことが好ましい。ただし、280℃より高くなるとポリマーの変性により押し出しが不安定となる場合があり、押し出し温度は280℃以下であることが好ましい。また、ポリケトン溶液を紡口口金から凝固浴へ押し出す方法としては、押し出し時のポリケトン溶液の温度と浴の温度の差が大きいときは、紡口を空気中に置いて紡口口金から出た繊維状物が空気相を経て浴に入れる方法、いわゆるエアギャップ法が好ましい。
【0024】浴の温度は、相分離温度よりも低いことが必要である。相分離温度より低い温度の浴に押し出されたポリケトン溶液は、全体的にあるいは部分的にゲル化した繊維状物を形成する。このゲル化繊維状物は、加温していくと再び溶液となる、すなわち熱可逆ゲルとなる点で特徴づけられる。このようなゲル化繊維状物を介することにより、延伸時における欠陥の発生が抑えられ、結果的に高強度を発現することが可能となる。浴の温度は、ゲル化繊維状物を形成する速度が早まり、紡糸速度の高速化を可能にするという点で、相分離温度より20℃以上低いことが好ましく、相分離温度より50℃以上低いことがさらに好ましい。ただし、浴の温度が−50℃より低い温度ではゲル化繊維状物を形成する速度の向上効果が小さくなることと冷却コストのアップの点から、浴の温度は−50℃以上が好ましい。
【0025】浴を構成する媒体は、使用する温度において液体であれば溶剤との親和性が低いものでも、親和性が高いものでもかまわない。親和性が低いものとしては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、トルエン、エチルベンゼン、デカリン等の炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素が挙げられる。これらを浴に使用した場合、溶剤との親和性が低いためにゲル化繊維状物から溶剤の浴中への拡散はほとんどない。したがって、浴外へ引き上げられた繊維状物は押し出したポリケトン溶液とほぼ同じ組成であり、加温することにより再び溶液となる。
【0026】親和性の高いものとしては、メタノール、アセトン、酢酸、アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の水との親和性が高い有機溶剤、以上の有機溶剤を混合した水溶液、硫酸、塩酸、リン酸、金属塩等の無機物を溶解した水溶液、水などが挙げられる。これらを浴に使用した場合、溶剤との親和性が高いために、ゲル化繊維状物から溶剤が浴中へ拡散する。したがって、浴外へ引き上げられた繊維状物は溶剤の一部または全部が除去されており、加温することにより再び溶液となる場合と部分的にならない場合がある。浴外へ引き上げた繊維状物の強度が強く、紡糸の高速化が可能な点で溶剤との親和性が高い方が好ましく、同じ観点で水が30重量%以上含まれた水溶液であることがさらに好ましい。また、溶剤の回収コストを下げる点で、亜鉛塩の水溶液であることが最も好ましい。
【0027】浴外へ引き上げられた繊維状物は、溶剤の一部または全部を除去するために洗浄剤で洗浄する必要がある。また、浴外へ引き上げられた繊維状物がすでに溶剤の一部が除去されている場合は、必要に応じて洗浄剤で洗浄する。洗浄剤としては、水または塩酸、硫酸、リン酸等を含んだpHが4以下の水溶液を用いる。洗浄剤の温度の制限はないが、40℃以上が好ましく、さらに好ましくは50〜95℃である。洗浄方法としては、洗浄剤の入った浴中に糸をくぐらせる方法や、糸の上又は/及び下から洗浄剤を吹きかける方法等があり、もちろんこれらの方法を組み合わせてもよい。こうして溶剤の一部または全部を除去された繊維状物は、50℃以上の温度で乾燥して水分の一部又は全部を除くことが好ましい。乾燥方法としては、延伸しながら、定長で、あるいは、収縮させながら乾燥してもよい。乾燥時の温度としては、目標とする乾燥程度により任意に設定できるが、通常50〜250℃であり、好ましくは100〜200℃である。乾燥するための装置としては、トンネル型乾燥機、ロール加熱機、ネットプロセス型乾燥機等、公知の設備でよい。
【0028】こうして乾燥された繊維は、3倍以上の延伸を行う必要がある。3倍以下ではゲル紡糸を行うことによる強度向上の効果が現れない。また、延伸温度は0〜300℃であることが好ましい。0℃より低い温度では3倍以上の延伸を行うことはできず、300℃より高い温度では延伸時に糸が溶融して糸の切断を起こす。延伸のしやすさから50℃以上が好ましく、更に好ましくは150〜300℃である。延伸は1段で行っても、延伸温度を徐々に高くして多段延伸で行ってもかまわないが、延伸倍率を高くできること及び延伸速度を早くできる点で多段延伸が好ましい。尚、繊維と延伸機との摩擦、静電気の発生を抑制し延伸を円滑にするために、乾燥から延伸の任意の段階で仕上げ剤を付与することは好ましい。仕上げ剤としては、公知のものが使用できる。
【0029】
【実施例】本発明を、以下の実施例などにより更に詳しく説明するがそれらは本発明の範囲を限定するものではない。実施例の説明中に用いられる各測定値の測定方法は、次の通りである。
(1)極限粘度[η]
極限粘度[η]は、次の定義式に基づいて求めた。

定義式中のt及びTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノール溶媒及び該ヘキサフルオロイソプロパノール溶媒に溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。また、Cは上記100ml中のグラム単位による溶質重量値である。
(2)繊維の強力〔強度、伸度、弾性率〕
繊維の強伸度は、JIS−L−1013に準じて測定した。
(3)光の透過度加温及び冷却の制御が可能なサンプルセルユニットが付属したレーザー式光散乱高度計LSD−101(日本科学エンジニアリング株式会社製)を用いて測定を行った。光源は波長が632.8nmのHe−Neレーザーで、出力が15mW、ビーム径が1.50m/m(1/e2 にて)である。
【0030】
【実施例1】65重量%の塩化亜鉛水溶液に、極限粘度が6.0dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを7重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを110℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で110℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は82℃であった。また、得られたポリケトン溶液を大量の水に落とし、フィブリル状のポリマーを回収した。回収したポリマーを徹底的に水で洗い、塩を完全に除去し、乾燥した。回収されたポリマーの極限粘度は6.2dl/gであり、ほとんど変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0031】
【実施例2】67重量%の塩化亜鉛と塩化ナトリウムの混合塩(塩化亜鉛と塩化ナトリウムの重量比は87/13)水溶液に、極限粘度が6.0dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを7重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを130℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で130℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は93℃であった。また、実施例1と同様に回収したポリマーの極限粘度は5.9dl/gであり、ほとんど変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0032】
【実施例3】64重量%の塩化亜鉛と塩化カルシウムの混合塩(塩化亜鉛と塩化カルシウムの重量比は51/49)水溶液に、極限粘度が4.9dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを10重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを120℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で120℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は83℃であった。また、実施例1と同様に回収したポリマーの極限粘度は4.9dl/gであり、変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0033】
【実施例4】63重量%の塩化亜鉛と塩化カルシウムの混合塩(塩化亜鉛と塩化カルシウムの重量比は51/49)水溶液に、極限粘度が11.3dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを5重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを120℃で5時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で120℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は75℃であった。また、実施例1と同様に回収したポリマーの極限粘度は10.9dl/gであり、ほとんど変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0034】
【比較例1】75重量%の塩化亜鉛水溶液に、極限粘度が4.9dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを9重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを100℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で100℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は0℃より低い温度であった。また、実施例1と同様に回収したポリマーの極限粘度は5.0dl/gであり、ほとんど変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0035】
【比較例2】75重量%の塩化亜鉛と塩化カルシウムの混合塩(塩化亜鉛と塩化カルシウムの重量比は87/13)水溶液に、極限粘度が4.9dl/gで、構造式(1)におけるRがエチレンであるポリケトンを10重量%となるように30℃で混合し、10torrまで減圧した。泡の発生が無くなった後減圧のまま密閉し、これを100℃で3時間攪拌することにより均一で透明なポリケトン溶液を得た。このポリケトン溶液の一部をサンプルセルに移し、溶液の温度を1時間に10℃の速度で100℃から0℃まで冷却しながら光の透過度を測定した。このポリケトン溶液の相分離温度は0℃より低い温度であった。また、実施例1と同様に回収したポリマーの極限粘度は4.9dl/gであり、変化がなかった。このことは、溶解中にポリケトンが架橋や分子量低下を起こしていないことを示す。
【0036】
【実施例5】実施例3で得たポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.1mmの穴が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、110℃、6m/minの速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま−10℃の50重量%メタノール水溶液の浴中を通した後、6m/minの速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いでそのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに2%の硫酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、水を含んだ状態で管上に巻き取った。得られた糸を240℃のホットプレート上を2m/minの速度で通して乾燥した後、ホットプレート上に乾燥糸を通過させながら、240℃で8倍、255℃で1.5倍、265℃で1.2倍のトータル14.4倍の延伸を行った。得られた延伸糸の繊維物性は、強度=13.7cN/dtex、伸度=6.4%、弾性率=310cN/dtexであった。
【0037】
【実施例6】実施例4で得たポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.16mmの穴が20個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、100℃、6m/minの速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま−20℃の30重量%メタノール水溶液の浴中を通した後、6m/minの速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いでそのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに2%の硫酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、水を含んだ状態で管上に巻き取った。得られた糸を240℃のホットプレート上を2m/minの速度で通して乾燥した後、ホットプレート上に乾燥糸を通過させながら、240℃で5.5倍、255℃で1.6倍、265℃で1.4倍、272℃で1.3倍のトータル16.0倍の延伸を行った。得られた延伸糸の繊維物性は、強度=15.3cN/dtex、伸度=5.6%、弾性率=353cN/dtexであった。
【0038】
【比較例3】比較例2で得たポリケトン溶液を20μmのフィルターを通過させた後、直径0.1mmの穴が50個ある紡口口金からプランジャー型押出機を用いて、80℃、6m/minの速度で押し出し、エアギャップ長10mmを通過させ、そのまま10℃の水である浴中を通した後、6m/minの速度でネルソンロールを用いて引き上げた。次いでそのネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、さらに2%の硫酸浴を通してネルソンロールで引き上げた後ネルソンロール上で水を吹きかけて洗浄し、水を含んだ状態で管上に巻き取った。得られた糸を240℃のホットプレート上を2m/minの速度で通して乾燥した後、ホットプレート上に乾燥糸を通過させながら、240℃で8倍、255℃で1.5倍、265℃で1.2倍のトータル14.4倍の延伸を行った。得られた延伸糸の繊維物性は、強度=11.0cN/dtex、伸度=5.9%、弾性率=203cN/dtexであった。
【0039】
【発明の効果】本発明により、不燃、低毒性であって、しかも高分子量ポリケトンに対して高い溶解性を示し、熱的・化学的に安定なゲル紡糸に適したポリケトン溶液と、該溶液を用いた高強度・高弾性率のポリケトン繊維の製造方法を提供することが可能となった。本発明により得られたポリケトン繊維は、強度、弾性率、熱寸法安定性、接着性に優れるため、タイヤコード、ベルトなどのゴム補強材やセメント補強剤等に有用である。




 

 


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