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発明の名称 ABS樹脂板接着用硬化型粘接着テープ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−139901(P2001−139901A)
公開日 平成13年5月22日(2001.5.22)
出願番号 特願平11−319809
出願日 平成11年11月10日(1999.11.10)
代理人
発明者 三浦 誠 / 石澤 英亮
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤が含有されて成り、且つ、ABS樹脂(被着体)中に含有されるアクリロニトリル成分のモル濃度に対する上記光カチオン重合開始剤により発生するカチオンのモル濃度の比率が0.3〜5%であることを特徴とする硬化型粘接着剤組成物が支持体の少なくとも片面に積層されて成るABS樹脂板接着用硬化型粘接着テープ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ABS樹脂板接着用硬化型粘接着テープに関する。
【0002】
【従来の技術】硬化型粘接着テープ(硬化型粘接着シートを包含する)は、通常の粘着テープのように常温で貼り合わせができて、接着後に何らかの方法で硬化(後硬化)させることにより接着剤化し、優れた接着性能を発現する接着材料である。この硬化型粘接着シートは、通常の液状接着剤のように接着前に被着体に塗布する必要がなく、また、貼り直しができるので位置決めが容易である等の特長を有しており、作業性や使い勝手にも優れる。
【0003】このような優れた利点を有する硬化型粘接着テープは、近年、従来の接着剤に代わる新規な接着材料として、電気・電子部品の接着や自動車・車両部品の接着あるいは構造接着等の分野でその用途を拡大しつつある。
【0004】このような硬化型粘接着テープ用の硬化型粘接着剤組成物として、例えば、特表平10−508636号公報では、「少なくとも1種の遊離基重合ポリマーと、少なくとも1種のカチオン重合性単量体と、少なくとも1種の有機金属錯塩または少なくとも1種のオニウム塩を含むカチオン重合性単量体に用いる光活性触媒成分と、任意に、一価アルコールまたは多価アルコールとを含む硬化性感圧接着剤」が開示されており、また、特開平7−138550号公報では、「常温で液状のエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂と相溶する常温で固形の熱可塑性樹脂と、平均粒子径が3μm以下の架橋ゴム粒子及びエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂系粘接着剤組成物」が開示されている。
【0005】一方、ABS樹脂は、強靱性と柔軟性を兼備し、加工性や機械的強度にも優れるので、汎用プラスチックとして広く用いられている。特に近年においては塩化ビニル樹脂の代替樹脂としても注目されており、例えば、繊維補強された強化型ABS樹脂などの成形体が自動車用のインパネ等として用いられるようになって来つつあり、これに伴い、ABS樹脂用の接着材料にも高い接着強度等の高性能を有することが要求されている。
【0006】しかし、従来の液状接着剤は、被着体であるABS樹脂に事前に塗布する必要がある上に、一般に成形体は曲面が多く水平面が少ないので、塗布した液状接着剤が流れ出して接着部分からはみ出し、外観を損ねる等の問題点がある。
【0007】また、予めテープ化したいわゆるフィルム状接着剤は、上記流れ出しやはみ出し等は少ないものの、接着時に加熱する必要があるため成形体が変形しがちであるという問題点や、粘着性(タック)が乏しいため、接着時に加圧する必要があり、特に曲面の多い成形体の接着の場合には専用治具が必要になるという問題点等がある。
【0008】さらに、従来の粘着テープは、粘着性を有するので指圧等の簡易な方法で貼り合わせることが可能であり作業性に優れるものの、接着力や耐久性、信頼性等が不十分であるという問題点がある。
【0009】また、前記特表平10−508636号公報に開示されている硬化性感圧接着剤を用いた硬化型粘接着テープの場合、アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂を主成分とする硬化性感圧接着剤は、常温における粘着性は優れているものの、アクリル系ポリマーが柔軟であるため、硬化後の凝集力が十分に上がらないという問題点がある。硬化後の凝集力を高めるためにエポキシ樹脂の含有量を多くすると、常温における粘着性が低下したり、硬化後の弾性率が高くなり過ぎて、耐衝撃性や耐寒性が低下する等の不具合が生じる。
【0010】さらに、前記特開平7−138550号公報に開示されているエポキシ樹脂系粘接着剤組成物を用いた硬化型粘接着テープの場合、エポキシ樹脂系粘接着剤組成物中の液状エポキシ樹脂の含有量が多いため、硬化後の剪断接着力は優れているものの、硬化前は凝集力が低く、粘接着テープ化すると経時的にあるいは圧着時の圧力により変形して粘接着剤組成物が染み出し、取扱い性が悪くなるという問題点がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、硬化前は常温において優れた粘着性や初期粘着力を有し、はみ出しや染み出しも殆どないので作業性や取扱い性に優れ、被着体の貼り合わせ前もしくは貼り合わせ後に光を照射することにより硬化し、硬化後は優れた接着力や耐熱性、耐衝撃性等を発現するABS樹脂板接着用硬化型粘接着テープを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のABS樹脂板接着用硬化型粘接着テープは、熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤が含有されて成り、且つ、ABS樹脂(被着体)中に含有されるアクリロニトリル成分のモル濃度に対する上記光カチオン重合開始剤により発生するカチオンのモル濃度の比率が0.3〜5%であることを特徴とする硬化型粘接着剤組成物が支持体の少なくとも片面に積層されて成る。
【0013】以下、本明細書中において「硬化型粘接着剤組成物」、「硬化型粘接着テープ」をそれぞれ単に「粘接着剤組成物」、「粘接着テープ」と略記する。
【0014】本発明で用いられる熱可塑性樹脂としては、後述するカチオン重合性化合物と良好な相溶性を有するものであれば如何なる熱可塑性樹脂であっても良く、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、これらは単独重合体であっても良いし、共重合体であっても良い。また、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】上記熱可塑性樹脂は、後述するカチオン重合性化合物と光カチオン重合開始剤とによるカチオン重合のネットワーク中に取り込まれ、いわゆるIPN構造や架橋構造、疑似架橋構造などの相構造を形成するので、硬化後の粘接着テープは優れた接着力や耐熱性、耐久性や耐候性等を発現する。
【0016】熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、接着温度によっても選択の幅があり、特に限定されるものではないが、一般的には30℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下である。熱可塑性樹脂のTgが30℃を超えると、熱可塑性樹脂の凝集力が高くなり過ぎて、粘接着テープの粘着性や初期粘着力が低下したり、耐衝撃性や耐寒性が不十分となることがある。
【0017】このため、熱可塑性樹脂のTgを調整するために、例えばブタジエン、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のTg調整成分が上記熱可塑性樹脂に共重合されていても良い。
【0018】また、上記熱可塑性樹脂の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、一般的には3000〜10万が好ましい。熱可塑性樹脂の数平均分子量が3000未満であると、凝集力が不十分となることがあり、逆に10万を超えると、カチオン重合性化合物との相溶性が低下することがある。
【0019】さらに、熱可塑性樹脂に架橋性を付与するために、例えば水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、不飽和二重結合等の架橋可能な官能基が上記熱可塑性樹脂中に導入されていても良い。但し、アミノ基等の塩基性官能基はカチオン重合反応を阻害することがあるので、導入しないか、導入するとしても可及的に少ない方が好ましい。
【0020】上記熱可塑性樹脂のなかでも、ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂が好適に用いられる。ポリエステル系樹脂やポリウレタン系樹脂は、極性が高く、カチオン重合性化合物との相溶性に優れるのみならず、凝集力が高いので、相対的に分子量の低いものを使用しても十分な皮膜強度を有する粘接着テープを得ることが可能であり、テープ化が容易であると共に、光照射後の接着可能時間も長くなるという利点を有する。
【0021】特にポリエステル系樹脂は、分子中にエステル基を有し分子末端に水酸基やカルボキシル基を有するので極性が高く、例えばABS、PET、PVC、PEN、ポリカーボネート等の高極性プラスチックに対する接着性に優れるので特に好適に用いられる。
【0022】上記ポリエステル系樹脂の具体例としては、例えば、東洋紡績社製の商品名「バイロン」シリーズや「バイロナール」シリーズ、ユニチカ社製の商品名「エリーテル」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の商品名「スピノドール」シリーズ、武田薬品工業社製の商品名「タケラック」シリーズ、クラレ社製の商品名「クラボール」シリーズ等が挙げられる。これらのポリエステル系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0023】本発明で用いられるカチオン重合性化合物とは、カチオン重合により高分子量化して粘接着剤組成物を硬化させ、硬化後に前記熱可塑性樹脂とIPN構造や架橋構造、疑似架橋構造などの相構造を形成して高度な凝集力や接着力を付与しうる化合物であり、例えば、分子中にエポキシ基、脂環式エポキシ基、ビニルエーテル基、水酸基、エチレンイミン基、エピスルフィド基等のカチオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。上記カチオン重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0024】上記カチオン重合性化合物中のカチオン重合性官能基のモル当量は1000g・resin/mol以下であることが好ましい。カチオン重合性官能基のモル当量が1000g・resin/molを超えると、架橋密度が低下して、十分な接着力や耐熱性を得られないことがある。
【0025】また、上記カチオン重合性化合物は、特に限定されるものではないが、常温で液状の数平均分子量が5000以下のものが好ましく、より好ましくは3000以下である。カチオン重合性化合物の数平均分子量が5000を超えると、前記熱可塑性樹脂との相溶性が低下して相分離を起こしたり、被着体表面への濡れ性が低下して十分に密着せず、接着力が不十分となることがある。
【0026】上記カチオン重合性化合物のうち、カチオン重合性に優れるエポキシ基や脂環式エポキシ基を有するエポキシ系化合物あるいはビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物が好適に用いられ、なかでも硬化物の弾性率が高いためより優れた接着力や耐熱性を発現しうるエポキシ系化合物が特に好適に用いられる。
【0027】上記エポキシ系化合物の具体例としては、例えば、油化シェルエポキシ社製の商品名「エピコート」シリーズ、シェルケミカル社製の商品名「エポン」シリーズ、旭電化工業社製の商品名「アデカレジン」シリーズや「アデカオプトマー」シリーズ、ダイセル化学工業社製の商品名「セロキサイド」シリーズ、「サイクロマー」シリーズ、「エポフレンド」シリーズ及び「エポリード」シリーズ等の所謂エポキシ樹脂が挙げられる。また、上記ビニルエーテル系化合物の具体例としては、例えば、ISP社製の商品名「ラピキュア」シリーズ等が挙げられる。
【0028】これらのカチオン重合性化合物は、後述する光カチオン重合開始剤によりカチオン重合し、前記熱可塑性樹脂をカチオン重合性化合物のポリマーネットワーク中に包含して動きを拘束したり、熱可塑性樹脂中の水酸基やカルボキシル基等と架橋反応することによりIPN構造を形成して高度な架橋構造を構築するので、粘接着テープの硬化後の弾性率を高め、接着力や耐熱性を著しく向上させる機能を発揮する。但し、粘接着テープの硬化後の弾性率が高くなり過ぎると、耐衝撃性や耐寒性が低下することがあるので、必要に応じて、例えばゴムのような可撓性付与剤、粘着性付与剤、軟化剤、可塑剤等を添加して硬化後の弾性率を調整しても良い。
【0029】本発明で用いられる光カチオン重合開始剤とは、光を照射することにより活性化され、光カチオン重合開始物質を発生して、比較的低エネルギーで上記カチオン重合性化合物を光カチオン重合させ得るものであれば良く、例えば、イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であっても良いし、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であっても良い。
【0030】イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0031】上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤の具体例としては、例えば、旭電化工業社製の商品名「オプトマーSP−150」や「オプトマーSP−170」、ゼネラルエレクトロニクス社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」等の市販品が挙げられる。
【0032】また、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、燐酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
【0033】上記光カチオン重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。2種類以上の光カチオン重合開始剤を併用する場合、有効活性波長の異なる2種類以上の光カチオン重合開始剤を用いて、多段階硬化をさせても良い。また、例えば光ラジカル重合開始剤や光アニオン重合開始剤等の他の光重合開始剤の1種もしくは2種以上が併用されても良い。この場合、光カチオン重合開始剤を活性化する光の波長と上記他の光重合開始剤を活性化する光の波長とは必ずしも同等である必要はない。さらに、例えばベンゾフェノンや9,10−アントラキノン等の光増感剤の1種もしくは2種以上が併用されても良い。
【0034】上記光カチオン重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではないが、前記カチオン重合性化合物中のカチオン重合性官能基のモル濃度に対する上記光カチオン重合開始剤により発生するカチオンのモル濃度の比率(カチオン/官能基)が0.001〜10%となる量であることが好ましく、より好ましくは上記比率(カチオン/官能基)が0.1〜10%となる量である。上記比率(カチオン/官能基)が0.001%未満であると、カチオン重合反応が遅くなって硬化に長時間を要することがあり、逆に上記比率(カチオン/官能基)が10%を超えると、光照射後の接着可能時間を得られなくなることがある。従って、本発明の粘接着テープを被着体に貼り合わせた後に光照射をする場合、換言すれば光照射後の接着可能時間を必要としない場合には、上記比率(カチオン/官能基)は必ずしも10%以下である必要はない。
【0035】上記光カチオン重合開始剤を活性化するための光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられるが、なかでも安全性が高くコスト的にも有利な紫外線の波長以上の光が好適に用いられ、特に好適に用いられるのは取扱いが容易で簡便であり且つエネルギー量も高い波長200〜400nmの紫外線である。上記紫外線を発生する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
【0036】光カチオン重合開始剤は、上記光を照射されることにより活性カチオンを発生し、前記カチオン重合性化合物をカチオン重合反応により硬化させ、高弾性率化させる。一般にカチオン重合反応は、ラジカル重合反応に見られるような酸素による重合阻害がなく、一旦発生した活性カチオンは光遮断後も連鎖的に重合反応を継続させるので、カチオン重合反応速度を制御することにより、光照射後も粘着性を保持し接着可能な状態を維持し得る半硬化状態の粘接着剤組成物もしくは粘接着シートとすることも出来る。
【0037】この場合、粘着性が保持されている間に被着体に貼り合わせることが可能であり、貼り合わされた半硬化状態の粘接着剤組成物もしくは粘接着テープは経時的に重合硬化が進行し、最終的には接着剤のような強固な接着力や耐熱性を発現する。従って、光を透過しない不透明な材料の接着も可能であり、また、加熱を必要とせず常温で重合反応が進行するので、耐熱性の弱い材料の接着も可能である。
【0038】本発明の粘接着テープを構成する粘接着剤組成物には、必須成分として含有される前記熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び上記光カチオン重合開始剤以外に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、粘着性付与剤、充填剤、増量剤、揺変剤、軟化剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、架橋剤、架橋助剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、溶解もしくは希釈のための有機溶剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていても良い。
【0039】上記有機溶剤としては、熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤あるいは他の添加剤に対する溶解性や相溶性が良く、沸点が40〜200℃程度のものが好ましく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、p−キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられ、これらは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0040】上記粘接着剤組成物の製造方法は、特別なものではなく、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール等の混合機を用いて、常温または加温下で、熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤の各所定量と、必要に応じて添加される上記各種添加剤の1種もしくは2種以上の各所定量とを、均一に攪拌混合することにより、所望の粘接着剤組成物を得ることが出来る。
【0041】一般にABS樹脂中のアクリロニトリル成分(AN)はカチオン重合反応の阻害因子となるので、例えばABS樹脂板(被着体)に粘接着テープを接着した場合、被着体界面に接している粘接着剤組成物の硬化速度の方が被着体界面に接していないバルク状態の粘接着剤組成物の硬化速度より遅くなる。
【0042】従って、被着体界面に接している粘接着剤組成物は比較的長時間低い硬化率に保たれ、被着体表面に十分に濡れることが可能なので有効接着面積が増大し、高い接着力を得ることが出来る。アクリロニトリル成分(AN)によるカチオン重合反応の遅延は光カチオン重合開始剤により発生したカチオンの可逆的な捕捉と考えられ、硬化速度は遅くなるものの、最終的には被着体界面に接している粘接着剤組成物も被着体界面に接していないバルク状態の粘接着剤組成物と同等のレベルまで硬化するので、耐熱性や耐久性、耐候性等が阻害されることはない。
【0043】本発明においては、被着体であるABS樹脂中に含有されるアクリロニトリル成分(AN)のモル濃度に対する前記粘接着剤組成物中に含有される光カチオン重合開始剤により発生するカチオンのモル濃度の比率(カチオン/AN)が0.3〜5%であることが必要である。
【0044】上記比率(カチオン/AN)が0.3%未満であると、カチオン重合反応が遅くなって、特に被着体界面に接している粘接着剤組成物の硬化に時間がかかり過ぎるようになり、逆に上記比率(カチオン/AN)が5%を超えると、被着体界面に接している粘接着剤組成物の低硬化率保持時間が短くなり、被着体表面への濡れが不十分となるので有効接着面積が十分に増大せず、高い接着力を得ることが困難となる。
【0045】本発明の粘接着テープは、上述した粘接着剤組成物が支持体の少なくとも片面に積層されて成る。尚、ここで言う支持体とは、例えばセロハンやクラフト紙のような通常の粘着テープの基材として一般的に用いられている支持体のみならず、通常セパレーターとして用いられている離型フィルムや離型紙等も包含する。
【0046】本発明の粘接着テープは、片面粘接着テープであっても良いし、両面粘接着テープであっても良く、また、サポート型の粘接着テープであっても良いし、ノンサポート型の粘接着テープであっても良い。粘接着剤組成物を支持体の非離型面に塗工すればサポート型の粘接着テープとなり、粘接着剤組成物を支持体の離型面に塗工すればノンサポート型の粘接着テープとなる。
【0047】上記粘接着テープの製造方法は、特別なものではなく、例えば、シート状の支持体面に、ロールコート法、グラビアコート法、キャスティングコート法、カレンダーコート法、押出コート法等の各種塗工方法で粘接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥工程や冷却工程を経て粘接着テープを得る直接塗工方式や、離型フィルムもしくは離型紙の離型面に上記各種塗工方法で粘接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥工程や冷却工程を経た後、支持体面にラミネートして粘接着テープを得る転写方式により、所望の粘接着テープを得ることが出来る。
【0048】上記支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのようなプラスチックフィルム、金属箔、紙、布、不織布等のシート状の各種材料が挙げられ、これらを単独もしくは複合して任意に用いることが出来る。これらの支持体には、必要に応じて、離型処理、コロナ処理のような表面酸化処理やプライマー塗工等の易接着処理、エンボス加工やマット加工のような賦型処理、摩擦加工、印刷や蒸着、ラミネート等の積層処理等の表面処理を施すことにより、様々な特性を有する粘接着テープを得ることが可能となる。例えば、シリコーン系や非シリコーン系の離型剤で離型処理を施されたプラスチックフィルムで粘接着剤組成物面を保護することにより、切断や打ち抜き等の形状加工性に優れる粘接着テープを得ることが出来る。
【0049】本発明の粘接着テープの厚みは、特に限定されるものではないが、一般的には1〜1000μmであることが好ましく、より好ましくは10〜500μmである。粘接着テープの厚みが1μm未満であると、接着力が不十分となることがあり、逆に1000μmを超えると、硬化に長時間を要するようになり生産性が低下することがある。
【0050】本発明の粘接着テープを用いる接着方法はロールラミネート、プレス、指圧等による圧着により行われる。本発明で用いる粘接着剤組成物及び本発明の粘接着シートは、常温で優れた粘着性や初期粘着力を有するので、上記圧着方法により容易に接着することが出来る。
【0051】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0052】硬化型粘接着剤組成物用として下記原料を用いた。
1.熱可塑性樹脂(1)ポリエステル樹脂商品名「バイロン550」(Tg:−15℃、東洋紡績社製)
(2)ウレタン変性ポリエステル樹脂商品名「バイロンUR3200」(Tg:−3℃、東洋紡績社製)
2.カチオン重合性化合物(1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂商品名「エピコート#828」(エポキシ当量:190、油化シェルエポキシ社製)
(2)脂環式エポキシ樹脂商品名「セロキサイド2081」(エポキシ当量:150、ダイセル化学工業社製)
3.光カチオン重合開始剤芳香族スルホニウム塩型光カチオン重合開始剤商品名「オプトマーSP−170」(分子量:1280、旭電化工業社製)
4.有機溶剤メチルエチルケトン(MEK)
【0053】(実施例1)ホモディスパーを用いて、熱可塑性樹脂としてポリエステル樹脂「バイロン550」70重量部、カチオン重合性化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂「エピコート#828」29重量部及び光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩型光カチオン重合開始剤「オプトマーSP−170」1部から成る組成物を、同量のMEKに溶解し、均一に攪拌混合して、固形分50重量%の粘接着剤組成物を作製した。
【0054】次いで、ロールコーターを用いて、片面に離型処理が施された厚み50μmのPETフィルム(セパレーター)の離型処理面に上記で得られた粘接着剤組成物を乾燥後の塗工厚みが50μmとなるように塗工し、乾燥して、粘接着テープを作製した。
【0055】(実施例2〜4)及び(比較例1、2)
粘接着剤組成物を表1に示す配合組成としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着剤組成物及び粘接着テープを得た。
【0056】(比較例3)粘接着剤組成物及び粘接着テープを作製することなく、通常の湿気硬化型接着剤(商品名「スーパーX」、セメダイン社製)を用いた。
【0057】実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘接着剤組成物のエポキシ当量とカチオンの濃度(モル/100g)を算出して、エポキシ基(官能基)濃度に対するカチオン濃度の比率(カチオン/官能基)を算出した。また、被着体として用いたABS樹脂中に含有されるアクリロニトリル成分(AN)の濃度(モル/100g)を算出して、アクリロニトリル成分濃度に対するカチオン濃度の比率(カチオン/AN)を算出した。その結果は表1に示した。
【0058】次いで、実施例1〜4及び比較例1、2で得られた粘接着テープと比較例3で用いた湿気硬化型接着剤「スーパーX」の性能(■対ABS樹脂板剥離接着力、■対硬質PVC板剥離接着力、■はみ出しの有無)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示した。尚、上記性能評価は、特に記載の無い限り、23℃−65%RHの雰囲気下で行った。
【0059】■対ABS樹脂板剥離接着力:ラミネーターを用いて、片面にコロナ処理が施された厚み100μmのPETフィルムのコロナ処理面に粘接着テープを線圧20N/cm、ラミネート速度1m/分の条件でラミネートした。次いで、セパレーターを剥離し、高圧水銀灯を使用して、粘接着テープの粘接着剤組成物面に中心波長360nmの紫外線を2J/cm2 の光量となるように照射した後、直ちに、JIS K−6873「ABS樹脂板」に規定されるABS樹脂を幅50mm、長さ100mm、厚み2mmのサイズに加工した試験板に圧着し、接着試験片を作製した。得られた接着試験片を60℃の雰囲気下に1日間、3日間、5日間放置した後、取り出して、剥離速度50mm/分で180度角剥離接着力を測定した。但し、比較例3で用いた湿気硬化型接着剤「スーパーX」は、PETフィルムのコロナ処理面に塗布し、試験板に圧着した。また、180度角剥離接着力の測定は60℃の雰囲気下に5日間放置した接着試験片についてのみ行った。尚、試験板(被着体)として用いたABS樹脂はANの含有量が25重量%のものであり、ANの分子量を53とすると、ANの濃度は0.47モル/100g・resinであった。
【0060】■対硬質PVC板剥離接着力:試験板(被着体)として幅50mm、長さ100mm、厚み2mmの硬質PVC板を用いたこと以外は■の場合と同様にして、180度角剥離接着力を測定した。
【0061】■はみ出しの有無:■において、試験板と圧着する時の圧力による粘接着剤組成物または湿気硬化型接着剤のはみ出しの有無を目視で観察した。
【0062】
【表1】

【0063】
【発明の効果】本発明の粘接着テープを構成する粘接着剤組成物は、熱可塑性樹脂、カチオン重合性化合物及び光カチオン重合開始剤が含有されて成るので、上記熱可塑性樹脂はカチオン重合性化合物により適切に可塑化されており、従って優れた粘着性や初期粘着力を発現する共に、粘接着テープ化された際に未硬化状態においても良好な凝集力を有し、圧着時の圧力によるはみ出しや染み出しも殆どないので作業性や取扱い性に優れる。
【0064】また、光照射されてカチオン重合した硬化後の粘接着剤組成物は、熱可塑性樹脂とカチオン重合性化合物とがIPN構造を形成して高度な架橋構造を構築しているので、優れた接着力、耐熱性、耐衝撃性、耐久性、耐候性等を発現する。
【0065】さらに、上記粘接着剤組成物は、被着体であるABS樹脂中に含有されるアクリロニトリル成分(AN)のモル濃度に対する光カチオン重合開始剤により発生するカチオンのモル濃度の比率(カチオン/AN)が特定の範囲となるように規定されているので、ABS樹脂中のアクリロニトリル成分(AN)によるカチオン重合反応阻害性を有効に逆用して、ABS樹脂(被着体)界面に接している粘接着剤組成物の硬化率を比較的長時間低い状態に保つことが出来る。その結果、粘接着剤組成物はABS樹脂(被着体)表面に十分に濡れることが可能となり、有効接着面積が増大するので、高い接着力を発現すると共に、優れた耐熱性や耐衝撃性、耐久性や耐候性等も保持される。
【0066】以上述べたように、本発明による硬化型粘接着テープは、上記硬化型粘接着剤組成物を用いて作製されているので、上述の優れた諸特性を兼備するものであり、ABS樹脂板の接着用として好適に用いられる。




 

 


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