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発明の名称 ポリオレフィン系樹脂発泡体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−123000(P2001−123000A)
公開日 平成13年5月8日(2001.5.8)
出願番号 特願平11−305882
出願日 平成11年10月27日(1999.10.27)
代理人
発明者 岩佐 航一郎 / 柴山 晃一 / 植田 直樹
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 平均気泡径A(μm)と発泡倍率Bとが、下記の式(1)を満足することを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡体。
平均気泡径A/(発泡倍率B−1)1/3 ≦30・・・(1)
【請求項2】 ポリオレフィン系樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜50重量部からなることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
平均気泡径A/(発泡倍率B−1)1/3 ≦30・・・(1)
【請求項3】 X線回折測定によって検出される前記層状珪酸塩の平均層間距離が6nm以上であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】 層状珪酸塩が、膨潤性スメクタイト系粘土鉱物、膨潤性雲母のうちの1種以上より選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】 ポリオレフィン系樹脂が、エチレン単独重合体、エチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体のうちの1種より選ばれるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のポリオレフィン系樹脂発泡体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩とからなるポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリマー材料の機械物性、熱的特性、ガスバリヤー性等の性質を改善するために、層状珪酸塩を有機ポリマー中に分散させることが、従来より行われている。粘土鉱物を構成する層状珪酸塩は、極めて微細な薄片状結晶がイオン結合により凝集されたものであり、この凝集構造を化学的又は物理的な手段により離砕し、有機ポリマー中に薄片を均一に分散させることにより上記ポリマー材料の特性を改善しようとするものである。
【0003】例えば、特公平8−22946号公報には、アミノカルボン酸を層状珪酸塩にインターカレートすることで層間の間隔を予め拡げておき、次いで、ポリアミドモノマーであるε−カプロラクタムを層間に挿入させると同時に重縮合させることによって、ポリアミド樹脂中に層状珪酸塩の薄片を均一に分散させた構造を形成することができることが開示されている。しかしポリアミドのようにモノマーを層状珪酸塩の層間に挿入できるポリマー種以外のポリマー種において層状珪酸塩をマトリックス中に均一分散せしめることは一般に極めて困難である。この問題を解決するために、種々のアプローチが開示されている。
【0004】この問題を解決するために、例えば、特開平9−183910号公報には、有機化層状珪酸塩を膨潤分散させた有機分散液とビニル系高分子化合物を溶融状態で混合することによって、層状珪酸塩をポリマー中に分散するという方法が開示されており、また、特開平10−182892号公報には、有機化層状珪酸塩と、水素結合性官能基を含有するポリオレフィンオリゴマー及びポリオレフィンポリマーとを溶融混練することによって、層状珪酸塩の単位層の層間がポリマー中で無限膨潤したポリオレフィン系樹脂複合材料を調製することができることが開示されている。
【0005】一方で、樹脂の軽量化、低コスト化、意匠性付与の点から、樹脂を発泡体として用いること、さらには、発泡体の機械強度、断熱性能、衝撃吸収性能等を高めるために発泡体中に無機フィラーを含有せしめることが旧来より行われている。例えば、特開平8−143697号公報には、ポリプロピレン発泡体組成物中に層状珪酸塩を含有せしめることにより、前記発泡体強度等の物性を改善することができると記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、本発明者らの検討によれば、特開平9−183910号公報記載の方法では溶媒の使用が必須であり、得られる複合材料は、残存溶媒が抜け切らないためか、曲げ弾性率等の強度が充分なものとはいえなかった。さらに、ポリマーの溶解工程、有機化層状珪酸塩の膨潤化工程、溶媒除去工程等の煩雑な工程を含むために工業的側面からは必ずしも実際的な方法ではなかった。
【0007】また、特開平10−182892号公報記載のような、層状珪酸塩の結晶薄片をポリマー中に均一に分散させた材料を工業材料として使用することは、以下の如く実際上は極めて困難であった。
【0008】即ち、オリゴマー中の官能基と層状珪酸塩表面の水酸基とを溶融混練中に反応させるため、必ずしも層状珪酸塩の水酸基が前記オリゴマーの官能基により効率的に処理されるわけではなく、そのために、実際に層状珪酸塩の均一分散を達成するためには多量のオリゴマーが必要となり、このようなオリゴマー成分がポリマー中に多量に含有されることは、物性及びコストの点から好ましくないからである。
【0009】一方、上記特開平8−143697号公報には、ポリプロピレン発泡体組成物中に発泡剤を吸着した層状珪酸塩を含有せしめることにより高発泡倍率・高強度のポリプロピレン発泡体を形成することが開示されている。しかし該公報には、層状珪酸塩の凝集構造を解砕し、樹脂中に均一分散させることによる効果については考慮されておらず、層状珪酸塩を配合した効果を充分に引き出しているとはいえない。また、予め特定の発泡剤を層状珪酸塩に吸着させておかなければならず、このような多段処理を要することは、生産コストの点からは必ずしも好ましくない。
【0010】本発明は、上記従来のポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩とからなるポリオレフィン系発泡体組成物の問題点に鑑み、発泡セル及び層状珪酸塩が均一かつ微細な分散構造を有する、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩とからなるポリオレフィン系樹脂発泡体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、平均気泡径A(μm)と発泡倍率Bとが、下記の式(1)を満足することを特徴とする。
平均気泡径A/(発泡倍率B−1)1/3 ≦30・・・(1)
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、平均気泡径A(μm)と発泡倍率Bとが、下記の式(1)を満足することを特徴とする。
平均気泡径A/(発泡倍率B−1)1/3 ≦30・・・(1)
【0013】上記式(1)の値が30を超えると、ポリオレフィン系樹脂発泡体の断熱性能、圧縮強度、曲げクリープ等の物性が低下する。上記式(1)において、上記発泡倍率Bは、1.01〜100の範囲内にあることが望ましい。
【0014】上記ポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜50重量部からなることが好ましい。層状珪酸塩の添加量が0.1重量部未満であると、気泡成長の抑制が充分になされず、一方、層状珪酸塩の添加量が50重量部を超えると、セル壁を脆性的にしてしまうために、独立気泡構造を形成しにくい。
【0015】上記ポリオレフィン系樹脂としては結晶性樹脂が好ましく用いられる。上記結晶性樹脂は非溶融状態において結晶部位の存在により形状保持効果が高いため、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物中でガス状の化学物質をガス化する際においても、発泡体形状を保持しやすい。
【0016】上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、α−オレフィンの重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ペプテン、1−オクテン等が挙げられる。また、これらの重合体としては、例えば、エチレン単独重合体、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレンとα−オレフィンの共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンとα−オレフィンの共重合体、ブテン単独重合体、イソプレンの単独重合体等が挙げられる。また、これらのポリオレフィン類は、得られる物性を考慮した上で、適当な組み合わせにてブレンドされていても構わない。
【0017】また、上記ポリオレフィン系樹脂の分子量及び分子量分布は特に制限されず、重量平均分子量は、通常、5, 000〜5, 000, 000、好ましくは20, 000〜300, 000であり、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)が2〜80、好ましくは3〜40である。
【0018】上記ポリオレフィン系樹脂には適宜、他種の高分子化合物がアロイ化又はブレンドされていても構わない。例えば、マレイン酸等のカルボン酸をグラフトした高分子化合物を少量添加しておき、あらかじめポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩の親和性を良くしておくことも可能である。
【0019】また、上記ポリオレフィン系樹脂には、所望の物性を得るために、例えば、酸化防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤等の添加剤が適宜添加されていても構わない。結晶核剤となり得るものを少量添加して、結晶を微細化して、物性を均一化する補助とすることも可能である。
【0020】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体を構成する上記層状珪酸塩とは、層間に交換性陽イオンを有する珪酸塩鉱物を意味し、通常、厚さが約1nm、平均アスペクト比がおよそ20〜200程度の微細な薄片状結晶がイオン結合により凝集してなるものである。
【0021】上記層状珪酸塩の種類は特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;バーミキュライト、ハロイサイト、セピオライト等の天然鉱物;膨潤性雲母(膨潤性マイカ)等の合成雲母等が挙げられる。これらの層状珪酸塩は、天然のものでも合成されたものでも用いることができる。好ましくは、モンモリロナイト、合成雲母が用いられる。
【0022】詳しい発泡のメカニズムについて、以下に説明する。上記層状珪酸塩は、隔壁として気泡成長を抑制し、ガス抜けを抑制する働きを有するため、高いアスペクト比を有する層状珪酸塩により、微細な発泡セルや高い発泡倍率を獲得することができる。このため、例えば、アスペクト比が約100程度の値を有するモンモリロナイトや、アスペクト比が約150程度の値を有する膨潤性マイカがさらに好ましく用いられる。アスペクト比は、一般に、板状又は針状物質である層状珪酸塩の長径と短径の比で定義され、本明細書においても、この定義に従う。
【0023】図1は、層状珪酸塩の結晶薄片の構造を示す説明図であり、図2は、上記層状珪酸塩の結晶薄片の立方体部分を拡大した結晶構造を示す概念図である。上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンとしては、例えば、図1に示した結晶表面(B)上に存在するナトリウム、カルシウム等のイオンが挙げられる。これらのイオンは、カチオン性物質とのイオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を層間に挿入することができる。
【0024】このため、上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性陽イオンは、予めカチオン系界面活性剤等によりイオン交換されていても構わない。特に、ポリオレフィン系樹脂の非極性樹脂を用いる場合には、予め、例えば、層間をカチオン系界面活性剤を用いた陽イオン交換により、疎水化しておく方が、層状珪酸塩とポリオレフィン系樹脂との間に高い親和性が得られるので好ましい。
【0025】上記の如く、層状珪酸塩の層間が、疎水性基を有するカチオン系界面活性剤にてイオン交換されている物を「有機化層状珪酸塩」と称するが、この有機化層状珪酸塩は、有機化されていない層状珪酸塩よりも樹脂中に分散されやすいので好適に用いられる。
【0026】上記した層間を予め疎水化する物質としては特に限定されず、通常、用いられるカチオン系界面活性剤が用いられ、例えば、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等が挙げられる。好ましくは、炭素数8以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩が用いられる。炭素数が8以上のアルキル鎖を含有しない場合には、アルキルアンモニウムイオンの親水性が強く、層状珪酸塩の層間を充分に非極性化することが困難となる場合がある。
【0027】4級アンモニウム塩としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩(以下、DSDMともいう)、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0028】上記層状珪酸塩の陽イオン交換容量は特に限定されないが、50〜200ミリ当量/100gであることが好ましい。50ミリ当量/100g未満の場合には、結晶層間にイオン交換によりインターカレートされるカチオン系界面活性剤の量が少ないために、層間が充分に非極性化されない場合があり、一方、200ミリ等量/100gを超える場合には、層状珪酸塩の層間の結合力が強固となり、結晶薄片をデラミネートすることが困難な場合がある。なお、上記陽イオン交換容量とは、上記層状珪酸塩100gで交換可能な陽イオンの量である。
【0029】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体を構成する層状珪酸塩の平均層間距離は、X線回折測定によって検出されるが、この平均層間距離は、6nm以上であることが好ましい。一般に、分散されていない層状珪酸塩の層間はイオン結合力により互いに凝集し、1nm程度の層間距離にて安定に存在する。この層間のイオン相互作用を極力小さくせしめること、すなわち層間距離を6nm以上にせしめることにより、層状珪酸塩の薄片を離砕し樹脂中に分散させることが可能となる。
【0030】また、上述のように、層状珪酸塩の薄片を樹脂中に分散することができれば、複合体の機械強度、熱的特性を著しく改善することが可能となる。さらには、層状珪酸塩が発泡時のガスの拡散を抑制するため、均一かつ微細な発泡体を形成せしめることが可能となる。
【0031】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、ポリオレフィン系樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜50重量部からなる複合物に対し、常温常圧でガス状の化学物質を高圧下含浸し、次いで、上記ガス状化学物質を上記複合物内で気化させ、発泡体を形成せしめることにより製造することが好ましい。
【0032】上記ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法においては、まず、ポリオレフィン系樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜50重量部からなる複合物に対し、常温常圧でガス状の化学物質を高圧下含浸する。
【0033】ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩とからなる複合物は、これらを上記の割合でラボプラストミル等に投入した後、加熱しながら溶融混練等を行うことにより調製することができる。
【0034】上記常温常圧でガス状の化学物質(以下、ガス化物質という)は、常温・常圧で気体状態の有機ないしは無機質のガスであれば、特に限定されず使用できる。上記ガス化物質としては、例えば、二酸化炭素ガス(炭酸ガス)、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、フロンガス、低分子量の炭化水素等の有機ガス等が挙げられるが、ガスの回収が不要で取り扱いが安全な二酸化炭素ガスが好ましく用いられる。
【0035】また、二酸化炭素ガスは、比較的低い温度及び低い圧力により超臨界化することできる。上述のように超臨界流体は、層状珪酸塩の分散に対してより効果的に作用するため、この意味でも二酸化炭素ガスは好ましく用いることができる。
【0036】上記ガス化物質を高圧下でポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物に含浸させる方法としては、例えば、密閉したオートクレーブ中にガスを封入し圧力を印加する方法等が挙げられる。この方法は、圧力及び温度のコントロールが容易であるという点で好ましく用いられる。
【0037】また、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出機に投入し、スクリューとしてベントタイプスクリューを使用して、シリンダーの途中から高圧ガス又は超臨界流体をベント部分に注入してポリオレフィン系樹脂発泡体を製造してもよい。
【0038】この場合、溶融状態の樹脂にて圧力シールを行うことにより、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物に対して効果的に高圧ガス又は超臨界流体を含浸させることができ、連続的に発泡体を製造することができる。従って、この方法は、工業的に好ましく用いられる。
【0039】高圧ガスを含浸させる際のガスの圧力は、9.8×105 Pa以上が好ましく、9.8×106 Pa以上がさらに好ましい。また、超臨界流体となる条件は、ガス化物質の種類により異なるため、超臨界流体として用いることができるガス化物質はある程度限定され、これらのガス化物質のなかで、比較的穏やかな条件で超臨界状態の性質を示すものが好ましく用いられる。例えば、二酸化炭素の場合、60℃、60気圧で超臨界流体となるため、好ましく用いられる。
【0040】上記ガス化物質をポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物に含浸させる温度については、該複合物が劣化しない温度であれば、いかなる温度においても好ましく行うことができるが、温度が高い程、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物に対する該ガスの溶解量は上昇し、高い発泡倍率が得られるという点で温度は高い方が好ましい。
【0041】さらに良好な発泡状態を得るためには、結晶性樹脂の場合は、(融点±20)℃の温度が好ましく、非晶性樹脂の場合は、(ガラス転移温度±20)℃の温度が好ましい。すなわち、ガス化物質の含浸温度が、(融点+20)℃又は(ガラス転移温度+20)℃よりも高い場合には、ポリオレフィン系樹脂の分子運動が活発化するために、複合物中に溶解した化学物質が容易に抜けてしまう。一方、含浸温度が、(融点−20)℃又は(ガラス転移温度−20)℃よりも低い場合は、ポリオレフィン系樹脂の分子運動が充分でないために、複合物へガス化物質が充分に溶解しない場合がある。
【0042】上記工程においてガス化物質を含浸した後、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物中で上記ガス化物質をガス化させてポリオレフィン系樹脂発泡体を形成する。ガス化させる方法としては特に限定されず、例えば、ガスを含浸した後に、圧力を常圧に戻す方法等が挙げられる。
【0043】上記ガス化物質をポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物中でガス化させる温度としては特に限定されないが、結晶性樹脂の場合は、(融点−50)℃〜(融点+10)℃の温度であることが好ましく、非晶性樹脂の場合は、(ガラス転移温度−50)℃〜(ガラス転移温度+10)℃であることが好ましい。すなわち、含浸温度が、(融点+10)℃又は(ガラス転移温度+10)℃よりも高い場合には、複合物中に溶解した化学物質が容易にガス抜けしてしまうために発泡体としての構造体を維持することができない。一方含浸温度が、(融点−50)℃又は(ガラス転移温度−50)℃よりも低い場合には、ポリオレフィン系樹脂の分子運動が拘束されるために、高い発泡倍率が得られない。
【0044】(作用)上記ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法において最も注目すべきことは、圧縮ガス又は超臨界流体の含浸、及び、該圧縮ガス又は超臨界流体を樹脂中で気化させることにより、有機ポリマー中に層状珪酸塩の薄片を均一に分散せしめることが可能であることにある。以下、上記ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法における作用について詳述する。
【0045】一般に層状珪酸塩の結晶薄片は、例えば、図2に示すモンモリロナイトのように、珪素等のイオンの回りに4つの酸素イオンが配位した4面体(2)、アルミニウム等のイオンの回りに6つの酸素イオンが配位した8面体(3)、及び、水酸基から構成され、各々の結晶薄片は、結晶表面(B)上にナトリウムやカルシウム等のカチオンが配列することによりイオン結合力により結びつけられている。
【0046】一般に、結晶表面(B)上のナトリウムやカルシウム等のイオンは、カチオン性物質とのイオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を層間に挿入することができる。この性質を利用し、該イオンをカチオン性界面活性剤とイオン交換することが可能であり、これに使用するカチオン性界面活性剤に非極性性の高いカチオン種を用いることで、層状結晶表面(B)は非極性化され、非極性ポリマー中における層状珪酸塩は分散しやすくなる。
【0047】さらに、このような、層状珪酸塩の薄片を分散させるためには、結晶表面(B)同士の電気的相互作用に購うエネルギーを層間に与え、媒体中に均一に分散させる必要がある。そのため、本発明では、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物に対し、「常温常圧でガス状の化学物質を高圧下含浸」或いは「常温常圧でガス状の化学物質を超臨界状態にて含浸」する。これにより、これらの化学物質は、ポリオレフィン系樹脂及び層状珪酸塩の層間に侵入する。引き続いて印加した圧力を急激に解放することにより、結晶表面(B)を剥離させるのに充分なエネルギーを付与することができる。
【0048】また、超臨界状態とは、以下のように定義される。すなわち、気相と液相の相変化を示す蒸気圧曲線は、臨界点で終わり、これより高い温度及び圧力では、気体と液体の区別がないので超臨界流体と呼ぶ。超臨界流体は、気体と液体の中間的な性質を持ち、熱伝導が良く、拡散が早く、粘性が小さいという性質を持っている。このため、上記超臨界流体を樹脂に含浸しこれを急激にガス化させることにより、結晶表面(B)を剥離させるのに充分なエネルギーを付与することができる。超臨界状態からガス状態への体積変化は、急激かつ大きな体積膨張を伴うため、結晶表面(B)を剥離させるのに充分なエネルギーをより簡便に付与することが可能である。この点で、本発明中で複合物中に含浸させるガスとしては、超臨界流体を使用することがさらに望ましい。
【0049】さらに、本発明によると、層状珪酸塩は、上記ガス化物質がポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との複合物中でガス化する際に、層状珪酸塩が隔壁として作用するために、ポリオレフィン系樹脂分子鎖の間からのガス化物質の過剰な拡散が抑制される。これにより、微細かつ均一に発泡セルが分散した発泡体が必然的に得られる。またガス化物質の過剰な拡散が抑制されることからガス抜けが生じにくく、必然的に高い発泡倍率を得ることも可能である。
【0050】このようにして製造される本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、上記式(1)の値が30以下であり、微細な発泡セルを有するために、必然的に発泡体の高い圧縮強度、圧縮クリープ、形状回復性、高断熱性が得られる。
【0051】また、上記製造方法を展開することにより、分子鎖の拘束による耐熱変形温度の上昇が期待でき、また、燃焼ガスの拡散の抑制効果や無機結晶による核剤効果も期待できるので、ポリオレフィン系樹脂の耐熱性、難燃性、寸法安定性等、諸物性についても大幅に向上させることが可能である。
【0052】
【実施例】次に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。以下の実施例、比較例で用いた原材料について説明する。
【0053】〔用いた原材料〕
(1)層状珪酸塩層状珪酸塩として、以下に示す鉱物を用いた。
・モンモリロナイト:豊順鉱業社製モンモリロナイト(商品名;ベンゲルA)
・膨潤性マイカ:コープケミカル社製膨潤性マイカ(商品名;ME−100)
【0054】(2)カチオン系界面活性剤含有層状珪酸塩カチオン系界面活性剤を含有する層状珪酸塩として、以下に示す市販品を用いた。
・DSDM変性モンモリロナイト:豊順鉱業社製DSDM変性モンモリロナイト(商品名;ニューエスベンD=ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドにてモンモリロナイト層間のナトリウムイオンを全量イオン交換した有機化モンモリロナイト)
・DSDM変性膨潤性マイカ:コープケミカル社製DSDM変性膨潤性マイカ(商品名;MAE=ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドにてモンモリロナイト層間のナトリウムイオンを全量イオン交換した有機化膨潤性マイカ)
【0055】(3)ガス化物質ガス化物質として以下の物を用いた。
・二酸化炭素(炭酸)ガス・窒素ガス【0056】(4)ポリオレフィン系樹脂ポリオレフィン系樹脂として以下の物を用いた。
・ポリプロピレン:(日本ポリケム社製、商品名;EA9、密度0.91、MFR=0.5)
・ポリエチレン:(日本ポリケム社製、商品名;HB530、密度0.96、MFR=0.5)
・ポリエチレン:(日本ポリケム社製、商品名;UE320、密度0.92、MFR=0.7)
【0057】(5)酸変性ポリオレフィン樹脂ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩の親和性を高めるため、また従来技術との比較に用いるために以下の物を用いた。
・無水マレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマー:(三洋化成社製、商品名;ユーメックス1001、官能基含有量=0.23mmol/g)
・無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー:(三洋化成社製、商品名;ユーメックス2000、官能基含有量=0.92mmol/g)
【0058】実施例1〜11及び比較例1〜4表1に、実施例及び比較例に使用した上記各原材料を示した。
発泡体サンプルの作製東洋精機社製のラボプラストミル中に、本実施例及び比較例中で用いるポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩を重量比率で99/1〜40/60となるようにフィードし、設定温度200℃にて溶融混練した。層状珪酸塩については、システアリルジメチルアンモニウム塩にて予めイオン交換したものを用いた。また、ポリオレフィン系樹脂と層状珪酸塩との親和性を高めるために、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5〜15重量部の酸変性ポリオレフィン等を添加することも行った。これらの組成割合については、表1に記載した。
【0059】得られた複合組成物を溶融プレスにて200℃で5分間予熱し、1分間9.8×106 Paにて押圧することにより1mmの厚さのシート状物を成形した。次に、この1mm厚さのシートを3cm角に切り出し、オートクレーブ中に密閉し、ポリオレフィン系樹脂の融点又はガラス転移温度より10℃高い温度にオートクレーブの内部温度を設定した。
【0060】次いで、炭酸ガス又は窒素ガスをオートクレーブに高圧にて注入し、オートクレーブ内の内圧が1.7×107 Paである状態にて30分間保持した。さらにオートクレーブ内の温度を、ポリオレフィン系樹脂の融点又はガラス転移温度より10℃低い温度に設定し、この状態で一気にオートクレーブ内のガスを抜き、内圧を常圧にまで戻した。そして、このようにして得られた発泡体を評価用サンプルとした。
【0061】比較例5特開平9−183910号公報に開示の組成物に熱分解型発泡剤を5phr添加(溶媒膨潤した層状珪酸塩と熱可塑性樹脂との複合物)従来技術との比較に用いるために、溶媒膨潤した層状珪酸塩と熱可塑性樹脂の複合物として以下の組成物を使用した。DSDM変性モンモリロナイト(豊順鉱業社製、商品名;ニューエスベンD)500gを5リットルのキシレン(和光純薬工業社製 試薬)中に投入し、モーター撹拌機を用いて、常温で2時間撹拌し、スラリー状物を得た。
【0062】ポリプロピレン(日本ポリケム社製、商品名;EA9、密度0.91、MFR=0.5)を溶融押出機で、押出し温度200℃にて押出しながら、押出途中に設けた液添ノズルより該スラリーを圧入し、さらに液添ノズルよりも押出機先端側に設けたベント口よりキシレンを吸引した。
【0063】押出機先端に取り付けたシートダイより押出された複合物をペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットに対し熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド)を5phr添加し、ラボプラストミル中で170℃、30rpmにて3分間溶融混練を行った。得られた複合物を溶融プレスにて200℃で5分間予熱し1分間9.8×106 Paにて押圧することにより1mm厚さのシート状物を作製した。さらに、得られたシート状物を200℃に熱したシリコンオイル中に10秒間浸漬し、発泡体サンプルを得た。
【0064】比較例6特開平10−182892号公報に開示の組成物に熱分解型発泡剤を5phr添加(層状珪酸塩と熱可塑性樹脂及び酸変性オリゴマーとの複合物)東洋精機社製のラボプラストミル中に、ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製、商品名;EA9、密度0.91、MFR=0.5)とDSDM変性モンモリロナイト(豊順鉱業社製、商品名;ニューエスベンD)と無水マレイン酸変性ポリプロピレンオリゴマー(三洋化成社製 商品名;ユーメックス1001、官能基含有量=0.23mmol/g)を重量比で80/5/15の割合でフィードし、設定温度200℃にて溶融混練した。
【0065】得られた複合組成物に対し熱分解型発泡剤(アゾジカルボンアミド)を5phr添加し、ラボプラストミル中で170℃、30rpmにて3分間溶融混練を行った。得られた複合物を溶融プレスにて200℃で5分間予熱し、1分間9.8×106 Paにて押圧することにより1mm厚さのシート状物を成形した。さらに該シート状物を200℃に熱したシリコンオイル中に10秒間浸漬し、発泡体サンプルを得た。
【0066】比較例7特開平8−143697号公報に開示の組成物(発泡剤吸着層状珪酸塩と熱可塑性樹脂の複合物)従来技術との比較に用いる発泡剤吸着層状珪酸塩として、以下の組成物を使用した。モンモリロナイト(豊順鉱業社製、商品名;ベンゲルA)80g、5−アミノ−1H−テトラゾール(HAT)80g 、ビニルトリエトキシシラン(Vsi)40g、メチルアルコール2リットル及び水0.1リットルを3リットル丸底フラスコに投入し、モーター撹拌機を用いて、60℃で24時間撹拌し、乾留した後、ろ紙を用いて濾過物を取り出した。
【0067】この濾過物を真空乾燥機を使用して50℃で24時間真空乾燥することにより調製した組成物を、発泡剤吸着層状珪酸塩として使用した。層状珪酸塩に吸着した発泡剤とシランカップリング剤の吸着率は併せて45.3%であった。該組成物を東洋精機社製のラボプラストミル中にて、ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム社製、商品名;EA9、密度0.91、MFR=0.5)と160℃にて溶融混練し、さらに得られた組成物を180℃のシリコンオイル中に浸漬することにより発泡体サンプルを得た。
【0068】サンプル評価法1)層状珪酸塩の層間距離X線回折測定装置(リガク社製;RINT1100)により複合物中の層状珪酸塩の積層面の回折より得られる回折ピークの2θを測定し、ブラックの回折式(2)を用いて該層状珪酸塩の面間隔を算出した。
λ=2dsinθ ・・・・(2)
(λ=1.54、d;層状珪酸塩の面間隔、θ;回折角)
(2)式より得られたdを平均層間距離と称することとした。
【0069】2)発泡倍率次式より発泡体の発泡倍率を求めた。尚、発泡体の比重は、発泡体を水に沈めた際の発生浮力より算出したものである。
発泡倍率=発泡体の比重/発泡前の比重・・・・(3)
3)平均気泡径発泡体を、2次電子反射式電子顕微鏡(JOEL製;JSM−5800LV)により観察し、観測された発泡セル50ケの平均を平均気泡径とした。
【0070】下記の表2に、実施例及び比較例にて行った発泡体中の層状珪酸塩の面間隔、発泡体の発泡倍率、平均気泡径、及び、平均気泡径と発泡倍率に関する式(1)の値を示した。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】表2に示したように、実施例1〜11においては、ポリオレフィン系樹脂及び層状珪酸塩を含有する複合物に高圧ガス、又は、超臨界流体を含浸し、複合物中でガス化することにより高い発泡倍率及び均一なセル径を有する発泡体が得られた。また、いずれの平均気泡径も10〜75μmと、5倍以上の発泡倍率を有する発泡体としては非常に小さいレベルの平均気泡径が得られ、式(1)の値も30以下となった。これに対し、比較例1〜4では、ポリオレフィン系樹脂にガス状物質又は超臨界流体を含浸しても有意な発泡倍率は殆ど得られなかった。
【0074】また、実施例1〜11により得られた発泡体のX線回折測定では、層間距離に相当する回折は得られなかった。測定に用いたX線装置は、2θ=1.5、則ち層間距離6nmが検出限界であり、6nm以上の層間距離は検出することができない。測定の性質上、平均層間距離が6nm以下であれば、必ず回折が得られるはずであることから、本発明にて得られた発泡体中の層状珪酸塩は、いずれも6nm以上の平均層間距離を有することが示唆されるものである。
【0075】比較例5(特開平9−183910号公報)に開示の方法及び比較例6(特開平10−182892号公報)に開示の方法を用いても、層状珪酸塩の平均層間距離を6nm以上とすることはできないが、本発明の方法によれば、いずれも平均層間距離を6nm以上とすることができる。
【0076】また、比較例7(特開平8−143697号公報)に開示の方法によれば、高い発泡倍率を得ることは可能であるが、層状珪酸塩の平均層間距離は2.8nmであり、平均気泡径も402μmと非常に大きいものしか得ることができなかった。これは、層状珪酸塩が均一に分散されないために、ガスの拡散の抑制が充分になされないことに由来すると考えられる。また、比較例5〜7の場合には、式(1)の値は、いずれも30を大きく上回っていた。
【0077】
【発明の効果】本発明のポリオレフィン系樹脂発泡体は、上述の通り構成されており、均一かつ微細の発泡セルを有するため、高い圧縮強度、高い圧縮弾性率、高い引張伸度、高い寸法安定性、高い断熱効果が得られ、今迄にないハイレベルな物性バランスを有し、実用的にも価値の高いものである。




 

 


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