米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 化学;冶金 -> 積水化学工業株式会社

発明の名称 硬化型粘接着剤組成物
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−98246(P2001−98246A)
公開日 平成13年4月10日(2001.4.10)
出願番号 特願平11−276733
出願日 平成11年9月29日(1999.9.29)
代理人
発明者 三浦 誠 / 石澤 英亮
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 水酸基を有するポリエステル樹脂100重量部に対し、カチオン重合性化合物を60〜95重量%含有する常温で液状の樹脂20〜170重量部、全組成物中の潜在イソシアネート基含有率が0.01〜5重量%となる量のブロックイソシアネート化合物及び光カチオン重合開始剤が添加されて成ることを特徴とする硬化型粘接着剤組成物。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬化型粘接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】硬化型粘接着シート(硬化型粘接着テープを包含する)は、通常の粘着テープのように常温で貼り合わせが出来る、接着後に何らかの方法で硬化(後硬化)させることにより接着剤化し、優れた接着性能を発現する接着材料である。この硬化型粘接着シートは、通常の液状接着剤のように接着前に被着体に塗布する必要がなく、また、貼り直しが出来るので位置決めが容易であり、作業性や使い勝手に優れる等の利点を有しているので、近年、従来の接着剤に代替し得る新規な接着材料として電気・電子分野や自動車・車両分野あるいは各種構造接着分野等でその用途を拡大しつつある。
【0003】ところが、例えば電気・電子分野において、プリント基板や電子部品等をハンダ付けするような工程では、160〜300℃程度に加熱されるため、被着体や接着材料に含まれる水分が突沸して発泡したり、それに起因する接着不良が生じる等の不具合が発生する。
【0004】上記不具合の発生を抑制するために、例えば、被着体や接着材料をハンダ付け温度より低い温度で事前に乾燥したり、ハンダ付け温度を低くする等の対策が採られることがあるが、前者の場合、工程負荷が大きくなって生産性が低下したりコストが嵩む等の問題点があり、後者の場合、被着体表面へのハンダの濡れ性が低下したりハンダにクラックが生じて導通不良を来す等の問題点がある。
【0005】従って、事前の乾燥工程が不要であり、且つ、高温でのハンダ付けが可能な接着材料(例えば、硬化型粘接着シート)に対する要求がますます高まっている。
【0006】硬化型粘接着シート用の硬化型粘接着剤組成物として、例えば、特表平10−508636号公報では、「少なくとも1種の遊離基重合ポリマーと、少なくとも1種のカチオン重合性単量体と、少なくとも1種の有機金属錯塩または少なくとも1種のオニウム塩を含むカチオン重合性単量体に用いる光活性触媒成分と、任意に、一価アルコールまたは多価アルコールとを含む硬化性感圧接着剤」が開示されている。
【0007】しかし、アクリル系ポリマーとエポキシ樹脂を主成分とする上記硬化性感圧接着剤は、常温における粘着性は優れているものの、アクリル系ポリマーが柔軟であるため硬化後の凝集力が十分に上がらず、水の突沸による発泡やそれに起因する接着不良の発生等を十分に抑制出来ないという問題点がある。また、硬化後の凝集力を高めるためにエポキシ樹脂の含有量を多くすると、常温における粘着性が低下したり、硬化後の弾性率が高くなり過ぎて、耐衝撃性や耐寒性が低下する等の不具合が生じる。
【0008】また、例えば、特開平7−138550号公報では、「常温で液状のエポキシ樹脂と、該エポキシ樹脂と相溶する常温で固形の熱可塑性樹脂と、平均粒子径が3μm以下の架橋ゴム粒子及びエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂系粘接着剤組成物」が開示されている。
【0009】しかし、上記エポキシ樹脂系粘接着剤組成物は、熱可塑性樹脂に対する液状エポキシ樹脂の含有量が多いため、架橋密度が高くなり、硬化後の剪断接着力や耐熱性は優れているものの、硬化前は凝集力が低く、粘接着シート化すると経時的にあるいは圧着時の圧力により変形して粘接着剤組成物が染み出して取扱い性が悪くなるという問題点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記問題点に鑑み、硬化前は常温において優れた粘着性や初期粘着力を有し、被着体の貼り合わせ前もしくは貼り合わせ後に光を照射することにより硬化し、硬化後は水分の突沸による発泡や接着力低下等の水分に起因する不具合を発生せず、且つ、優れた接着力や例えば高温でのハンダ付けにも耐え得る優れた耐熱性を発現する硬化型粘接着剤組成物を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明による硬化型粘接着剤組成物は、水酸基を有するポリエステル樹脂100重量部に対し、カチオン重合性化合物を60〜95重量%含有する常温で液状の樹脂20〜170重量部、全組成物中の潜在イソシアネート基含有率が0.01〜5重量%となる量のブロックイソシアネート化合物及び光カチオン重合開始剤が添加されて成ることを特徴とする。
【0012】以下、本明細書中において「硬化型粘接着剤組成物」、「硬化型粘接着シート」をそれぞれ単に「粘接着剤組成物」、「粘接着シート」と略記する。尚、潜在イソシアネート基とは、ブロックイソシアネート化合物が分解して遊離のイソシアネート基を発生することの出来るセグメント中のN,C,O各1原子分を指すものとするが、このものも簡単のためにイソシアネート基と略記する。
【0013】本発明で用いられる水酸基を有するポリエステル樹脂(以下、単に「ポリエステル樹脂」と略記する)とは、一般的にジオールとジカルボン酸との縮合重合によって生成する重合体の総称であり、ジオールとジカルボン酸の種類や組合せを変えることにより種々の特性を有する重合体が得られる。
【0014】上記ポリエステル樹脂の具体例としては、例えば、東洋紡績社製の商品名「バイロン」シリーズや「バイロナール」シリーズ、ユニチカ社製の商品名「エリーテル」シリーズ、大日本インキ化学工業社製の商品名「スピノドール」シリーズ、武田薬品工業社製の商品名「タケラック」シリーズ、クラレ社製の商品名「クラボール」シリーズ等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0015】ポリエステル樹脂は、分子内にエステル基を有し分子末端に水酸基やカルボキシル基を有するので極性が高く、例えば塩ビやPET、PEN、ABS、ポリカーボネート、金属等の高極性材料に対する接着性に優れる。また、結晶性を有し凝集力が高いので、硬化前の粘接着剤組成物に適度な凝集力を付与する。
【0016】上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、接着温度によっても選択の幅があり、特に限定されるものではないが、一般的には100℃以下が好ましく、より好ましくは50℃以下である。ポリエステル樹脂のTgが100℃を超えると、ポリエステル樹脂の凝集力が高くなり過ぎて、粘接着剤組成物の粘着性や初期粘着力が低下したり、高温で接着する必要が生じて作業性が低下することがあるが、後述する常温で液状の樹脂(以下、単に「液状樹脂」と略記する)により凝集力を調整することが可能なので、一義的には定められない。
【0017】また、上記ポリエステル樹脂の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、一般的には3000〜10万が好ましい。ポリエステル樹脂の数平均分子量が3000未満であると、凝集力が不十分となることがあり、逆に10万を超えると、後述するカチオン重合性化合物との相溶性が低下することがあるが、これも液状樹脂により調整することが可能なので、一義的には定められない。
【0018】本発明で用いられる液状樹脂とは、上記ポリエステル樹脂と相溶する常温で液状の樹脂であり、結晶性を有し剛直である上記ポリエステル樹脂を可塑化して、粘接着組成物に優れた粘着性や初期粘着力を付与する機能を発揮する。
【0019】上記液状樹脂の数平均分子量は、特に限定されるものではないが、一般的には300〜5000が好ましい。液状樹脂の数平均分子量が300未満であると、揮発性が生じて粘接着剤組成物の安定性が損なわれることがあり、逆に5000を超えると、ポリエステル樹脂との相溶性が低下したり、ポリエステル樹脂に対する可塑化効果が乏しくなって、粘接着剤組成物の粘着性や初期粘着力が不十分となることがある。但し、液状樹脂の数平均分子量は、ポリエステル樹脂や他の配合成分との相溶性やポリエステル樹脂に対する所望の可塑化水準あるいは揮発性の程度等によって適宜設定されれば良く、一義的には定められない。
【0020】上記液状樹脂としては、例えば、キシレン樹脂やアルキルフェノール樹脂等のフェノールもしくはビスフェノール誘導体、ロジンエステル、フェノール変性ロジンエステルのような変性ロジンエステル等のロジン誘導体、テルペン誘導体、有機酸エステル、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、液状ゴム、ポリアルキレングリコール類等が挙げられる。これらの液状樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0021】本発明においては、前記ポリエステル樹脂100重量部に対し、上記液状樹脂20〜170重量部が添加されていることが必要である。ポリエステル樹脂100重量部に対する液状樹脂の添加量が20重量部未満であると、粘接着剤組成物の粘着性や初期粘着力が不十分となることがあり、逆に170重量部を超えると、粘接着剤組成物の凝集力が低くなり過ぎて、粘接着シートとされた時に、巻き回した側面より粘接着剤組成物が染み出したり、圧着により粘接着剤組成物がはみ出すことがあるので不適当である。
【0022】本発明で用いられるカチオン重合性化合物とは、カチオン重合により高分子量化して粘接着剤組成物を硬化させ、硬化後に前記ポリエステル樹脂と所謂IPN構造を形成して高度な凝集力や接着力を付与しうる化合物であり、例えば、分子中にエポキシ基、脂環式エポキシ基、ビニルエーテル基、水酸基、エチレンイミン基、エピスルフィド基等のカチオン重合性官能基を有する化合物が挙げられる。これらのカチオン重合性化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0023】カチオン重合性化合物のカチオン重合性官能基当量は1000g・resin/mol以下であることが好ましい。カチオン重合性官能基当量が1000g・resin/molを超えると、架橋密度が低下して、十分な接着力や耐熱性を得られないことがある。
【0024】上記カチオン重合性化合物のうち、カチオン重合性に優れるエポキシ基や脂環式エポキシ基を有するエポキシ系化合物あるいはビニルエーテル基を有するビニルエーテル系化合物が好適に用いられ、なかでも硬化物の弾性率が高いためより優れた接着力や耐熱性を発現しうるエポキシ系化合物が特に好適に用いられる。
【0025】上記エポキシ系化合物の具体例としては、例えば、油化シェルエポキシ社製の商品名「エピコート」シリーズ、シェルケミカル社製の商品名「エポン」シリーズ、旭電化工業社製の商品名「アデカレジン」シリーズや「アデカオプトマー」シリーズ、ダイセル化学工業社製の商品名「サイクロマー」シリーズ、「エポフレンド」シリーズ及び「エポリード」シリーズ等の所謂エポキシ樹脂が挙げられる。また、上記ビニルエーテル系化合物の具体例としては、例えば、ISP社製の商品名「ラピキュア」シリーズ等が挙げられる。
【0026】これらのカチオン重合性化合物は、後述する光カチオン重合開始剤によりカチオン重合して高分子量化すると共に、ポリエステル樹脂をカチオン重合性化合物のポリマーネットワークに包含して動きを拘束したり、ポリエステル樹脂中の水酸基やカルボキシル基等と架橋反応することによりIPN構造を形成して高度な架橋構造を構築するので、粘接着剤組成物の硬化物の弾性率を高め、接着力や耐熱性を著しく向上させる機能を発揮する。
【0027】本発明においては、前記液状樹脂の添加量、即ちポリエステル樹脂100重量部に対し20〜170重量部の内の60〜95重量%が上記カチオン重合性化合物であることが必要である。液状樹脂の添加量の内のカチオン重合性化合物の量が60重量%未満であると、硬化物の凝集力が不足して弾性率が十分に向上しないため、接着力や耐熱性、例えば高温でのハンダ付けに対する耐熱性が不十分となり、逆に95重量%を超えると、硬化物の弾性率が高くなり過ぎて剛直になり、耐剥離性や耐衝撃性が低下したり、耐寒性が低下して低温時に脆くなる。
【0028】本発明で用いられるブロックイソシアネート化合物とは、イソシアネート化合物中のイソシアネート基(NCO基)を何らかの方法でブロック(マスキング)して常温で安定な物質に変性した化合物であり、例えばフェノールや亜硝酸等のような通常ブロック化剤と呼称される活性水素含有化合物をイソシアネート化合物と反応させてNCO基をブロックすることにより得られる。
【0029】上記ブロックイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、武田薬品工業社製の商品名「タケネート」シリーズ、日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネート」シリーズ、住友バイエルウレタン社製の商品名「デスモジュール」シリーズ等が挙げられる。これらのブロックイソシアネートは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0030】本発明の粘接着剤組成物においては、全組成物中のNCO基含有率が0.01〜5重量%となる量の上記ブロックイソシアネート化合物が添加されていることが必要である。
【0031】上記NCO基の量(全組成物の0.01〜5重量%)は、粘接着剤組成物全体の単位重量に対するNCO基部分の重量割合であり、用いられるブロックイソシアネート化合物のNCO基含有量と組成物中への添加量とによって上記範囲となるように調整される。
【0032】上記NCO基の量が全組成物の0.01重量%未満であると、NCO基による後述の脱水効果が不十分となるので、例えば高温でのハンダ付け時等に起こりがちな水分の突沸による発泡や接着力低下等の水分に起因する不具合の発生に対する抑制効果が不十分となり、逆にNCO基の量が全組成物の5重量%を超えると、NCO基中の窒素原子により前記カチオン重合性化合物のカチオン重合が阻害されるので、硬化物の分子量が十分に上がらず、耐熱性が不十分となったり、硬化時間が長くなり、生産性が低下する等の不具合が生じる。
【0033】また、組成物中におけるブロックイソシアネート化合物の添加量は、用いられるブロックイソシアネート化合物のNCO基含有量によって決定され、特に限定されるものではないが、一般的には全組成物の30重量%以下であることが好ましい。
【0034】ブロックイソシアネート化合物の上記添加量が全組成物の30重量%を超えると、組成物中における前記ポリエステル樹脂やカチオン重合性化合物の濃度が相対的に低くなって架橋密度も低くなるので、凝集力が十分に上がらず、接着力や耐熱性が不十分となることがある。
【0035】粘接着剤組成物中に添加された上記ブロックイソシアネート化合物は一定の条件下で分解して遊離のNCO基を生じる。このNCO基は、水と反応して尿素結合を生じ粘接着剤組成物中の水分を減少させるので、例えば高温でのハンダ付け時等に起こりがちな水分の突沸による発泡や接着力低下等の水分に起因する不具合の発生を効果的に抑制することが出来る。また、上記NCO基は、前記ポリエステル樹脂やカチオン重合性化合物中に含有される水酸基と反応して架橋するので、硬化物の架橋密度や凝集力が向上し、接着力や耐熱性がさらに向上する。
【0036】本発明で用いられる上記ブロックイソシアネート化合物は、熱分解型であっても良いし、また、例えば光、電子線、γ線等の電磁波を照射されて分解する電磁波分解型であっても良い。
【0037】ブロックイソシアネート化合物が熱分解型である場合、分解温度が60℃程度〜220℃程度であるものが好ましく、より好ましくはハンダ付け時の予熱により分解するものである。
【0038】上記分解温度が60℃程度より低いと、常温でも分解が起こって粘接着剤組成物の貯蔵安定性が悪くなることがある。また、本発明の粘接着剤組成物を例えば有機溶剤に溶解して溶剤型粘接着剤組成物とし、支持体(基材)に塗工して粘接着シートを製造する場合、溶剤を飛散(乾燥)させるための加熱によりブロックイソシアネート化合物が分解して架橋反応を起こし、粘接着シートの粘着性や初期粘着力が阻害されたり、この段階でNCO基が消費され、例えば高温ハンダ時における前記水分に起因する不具合の発生に対する抑制効果や水酸基との反応による接着力や耐熱性の向上効果を十分に得られなくなることがある。
【0039】逆に上記分解温度が220℃程度より高いと、例えばクリームハンダのような比較的低い温度下ではブロック化剤が遊離しないため、NCO基が発生せず、前記水分に起因する不具合の発生に対する抑制効果や水酸基との反応による接着力や耐熱性の向上効果を得られなくなることがある。
【0040】また、ブロックイソシアネート化合物が電磁波分解型である場合、後述する光カチオン重合開始剤が分解活性化する活性波長とは異なる波長で分解するものが好ましい。光カチオン重合開始剤の活性波長で分解するブロックイソシアネート化合物であると、光カチオン重合開始剤の活性化時に同時にNCO基が発生するので、電磁波の照射直後からNCO基と水酸基との反応が始まり、粘接着剤組成物の粘着性や初期粘着力が損なわれるので、被着体同士の貼り合わせが困難になるという不具合を生じることがある。但し、被着体の少なくとも一方が電磁波透過性である場合、先に被着体同士を貼り合わせた後、電磁波透過性の被着体側から電磁波を照射することにより上記不具合を回避することが出来る。また、ブロックイソシアネート化合物の分解速度が光カチオン重合開始剤の分解速度と比較して例えば反応速度定数で1/10以下程度と十分に遅い場合には、NCO基の発生量も少ないので、上記不具合が現実的問題となることは少ない。
【0041】ブロックイソシアネート化合物は、常温常態ではR−NHCO−M(ここで、Rは有機官能基、Mはブロック化剤残基を表す)の構造を有するが、熱や電磁波等により分解してR−NCOとM−Hを生成する。R−NCOとM−Hを生成するブロックイソシアネート化合物は分解時に酸を発生するので、この酸が粘接着剤組成物中に残っている未反応のカチオン重合性化合物を硬化させ低分子量成分を減少させたり、ゲル化率を高めることにより、接着力や耐熱性がより向上する効果も期待出来る。但し、ブロックイソシアネート化合物が、例えばケトン類のような非酸系の配位子でブロックされた化合物であっても、前述した接着力向上効果や耐熱性向上効果は十分に得ることが出来る。
【0042】本発明で用いられる光カチオン重合開始剤とは、光を照射することにより活性化され、光カチオン重合開始物質を発生して、比較的低エネルギーで前記カチオン重合性化合物を光カチオン重合させ得るものであれば良く、例えば、イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であっても良いし、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤であっても良い。
【0043】イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0044】上記イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤の具体例としては、例えば、旭電化工業社製の商品名「オプトマーSP−150」や「オプトマーSP−170」、ゼネラルエレクトロニクス社製の商品名「UVE−1014」、サートマー社製の商品名「CD−1012」等の市販品が挙げられる。
【0045】また、非イオン性光酸発生型の光カチオン重合開始剤としては、例えば、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、燐酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナート等が挙げられる。
【0046】上記光カチオン重合開始剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。2種類以上の光カチオン重合開始剤を併用する場合、有効活性波長の異なる2種類以上の光カチオン重合開始剤を用いて、多段階硬化をさせても良い。また、例えばベンゾフェノンや9,10−アントラキノン等の光増感剤の1種もしくは2種以上が併用されても良い。
【0047】上記光カチオン重合開始剤の添加量は、特に限定されるものではなく、前記カチオン重合性化合物の反応性や分子量あるいは粘接着剤組成物に付与したい粘弾性等に応じて適宜設定されれば良い。
【0048】上記光カチオン重合開始剤を活性化するための光としては、例えば、赤外線、可視光線、紫外線、X線、α線、β線、γ線、電子線等が挙げられるが、なかでも安全性が高くコスト的にも有利な紫外線以上の波長の光が好適に用いられ、特に好適に用いられるのは取扱いが容易で簡便であり且つエネルギー量も高い波長200〜400nmの紫外線である。上記紫外線を発生する光源としては、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ等が挙げられる。
【0049】光カチオン重合開始剤は、上記光を照射されることにより活性カチオンを発生し、前記カチオン重合性化合物をカチオン重合反応により硬化させる。カチオン重合反応は、ラジカル重合反応に見られるような酸素による重合阻害がなく、一旦発生した活性カチオンは光遮断後も連鎖的に重合反応を継続させるので、カチオン重合反応速度を制御することにより、光照射後も粘着性を保持しうる半硬化状態の粘接着剤組成物もしくは粘接着シートとすることも出来る。
【0050】この場合、粘着性が保持されている間に被着体に貼り合わせることが可能であり、貼り合わされた半硬化状態の粘接着剤組成物もしくは粘接着シートは経時的に重合硬化が進行し、最終的には接着剤のような強固な接着力や耐熱性を発現する。従って、光を透過しない不透明な材料の接着も可能であり、また、加熱を必要とせず常温で重合反応が進行するため、耐熱性の弱い材料の接着も可能である。
【0051】本発明の粘接着剤組成物には、必須成分であるポリエステル樹脂、カチオン重合性化合物を含有する液状樹脂、ブロックイソシアネート化合物及び光カチオン重合開始剤以外に、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、粘着性付与剤、充填剤、増量剤、揺変剤、軟化剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、有機溶剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていても良い。
【0052】本発明の粘接着剤組成物の製造方法は、特別なものではなく、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリウムミキサー、ニーダー、三本ロール等の混合機を用いて、常温もしくはブロックイソシアネート化合物の分解温度以下の加温下で、ポリエステル樹脂、カチオン重合性化合物を含有する液状樹脂、ブロックイソシアネート化合物及び光カチオン重合開始剤の各所定量と、必要に応じて添加される上記各種添加剤の1種もしくは2種以上の各所定量とを、均一に攪拌混合することにより、所望の粘接着剤組成物を得ることが出来る。
【0053】本発明の粘接着剤組成物は、そのままの形態で被着体の片面もしくは両面に塗工し、被着体の貼り合わせ前もしくは貼り合わせ後に光を照射して、光カチオン重合させ、硬化せしめても良いが、被着体に対する影響を少なくし、より良好な取扱い作業性や簡便性を得るためには、予め支持体の少なくとも片面に粘接着剤組成物を積層してシート状に加工した粘接着シートの形態で使用することが好ましい。尚、ここで言う支持体とは、例えばセロハンやクラフト紙のような通常の粘着テープの支持体として一般的に用いられているもののみならず、通常セパレーターとして用いられている離型フィルムや離型紙等も包含する。
【0054】上記粘接着シートは、片面粘接着シートであっても良いし、両面粘接着シートであっても良く、また、サポート型の粘接着シートであっても良いし、ノンサポート型の粘接着シートであっても良い。粘接着剤組成物を支持体の非離型面に塗工すればサポート型の粘接着シートとなり、粘接着剤組成物を支持体の離型面に塗工すればノンサポート型の粘接着シートとなる。
【0055】上記粘接着シートの製造方法は、特別なものではなく、例えば、シート状の支持体面に、ロールコート法、グラビアコート法、キャスティングコート法、カレンダーコート法、押出コート法等の各種塗工方法で粘接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥工程や冷却工程を経て粘接着シートを得る直接塗工方式や、離型フィルムもしくは離型紙の離型面に上記各種塗工方法で粘接着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥工程や冷却工程を経た後、支持体面にラミネートして粘接着シートを得る転写方式により、所望の粘接着シートを得ることができる。
【0056】支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのようなプラスチックフィルム、金属箔、紙、布、不織布等のシート状の各種材料が挙げられ、これらを単独もしくは複合して任意に用いることが出来る。これらの支持体には、必要に応じて、離型処理、コロナ処理のような表面酸化処理やプライマー塗工等の易接着処理、エンボス加工やマット加工のような賦型処理、摩擦加工、印刷や蒸着、ラミネート等の積層処理等の表面処理を施すことにより、様々な特性を有する粘接着シートを得ることが可能となる。例えば、シリコーン系や非シリコーン系の離型剤で離型処理を施されたプラスチックフィルムで粘接着剤組成物面を保護することにより、切断や打ち抜き等の形状加工性に優れる粘接着シートを得ることが出来る。
【0057】上記粘接着シートの厚みは、特に限定されるものではないが、一般的には1μm〜1mmであることが好ましい。粘接着シートの厚みが1μm未満であると、接着力が不十分となることがあり、逆に1mmを超えると、硬化に長時間を要するようになり生産性が低下することがある。
【0058】上記粘接着シートを用いる接着方法はロールラミネート、プレス、指圧等による圧着により行われる。本発明の粘接着剤組成物は、常温で優れた粘着性や初期粘着力を有するので、上記圧着方法により容易に接着することが出来る。
【0059】本発明の粘接着剤組成物は、凝集力に富むポリエステル樹脂の特定量に対して液状樹脂が特定量添加されているので、ポリエステル樹脂は液状樹脂により適切に可塑化されており、従って優れた粘着性や初期粘着力を発現すると共に、粘接着シートとされた時も染み出しが殆どなく、取扱い性に優れる。
【0060】また、上記液状樹脂の内の特定量がカチオン重合性化合物であるので、光照射されてカチオン重合した硬化後はポリエステル樹脂とカチオン重合性化合物とがIPN構造を形成して高度な架橋構造を構築し、優れた接着力や耐熱性を発現する。
【0061】さらに、特定量のNCO基を含有するブロックイソシアネート化合物が添加されているので、ブロックイソシアネート化合物の分解により発生したNCO基は水と反応し、粘接着剤組成物中の水分を減少させる。従って、例えば高温でのハンダ付け時のような高温に暴露される場合でも、水分の突沸による発泡や接着力低下等の水分に起因する不具合の発生を効果的に抑制することが出来る。また、NCO基は、ポリエステル樹脂やカチオン重合性化合物中の水酸基と反応してこれらを架橋させるので、硬化物の架橋密度や凝集力が向上し、接着力や耐熱性が著しく向上する。
【0062】
【発明の実施の形態】本発明をさらに詳しく説明するため以下に実施例を挙げるが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。尚、実施例中の「部」は「重量部」を意味する。
【0063】(実施例1)
(1)粘接着剤組成物の作製ホモディスパーを用いて、ポリエステル樹脂(商品名「エリーテルUE3500」、ユニチカ社製)100部、液状樹脂としてキシレン樹脂(商品名「ニカノールH」、非カチオン重合性、三菱瓦斯化学社製)30部及びビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(商品名「エピコート#828」、カチオン重合性、カチオン重合性官能基当量190g・resin/mol、油化シェルエポキシ社製)30部、ブロックイソシアネート化合物(商品名「タケネートB870N」、NCO基含有量12.6重量%、分解温度200℃、武田薬品工業社製)30部及び光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩(商品名「オプトマーSP170」、旭電化工業社製)2部をメチルエチルケトン(MEK)に溶解し、均一に攪拌混合して、固形分40重量%の粘接着剤組成物を作製した。
【0064】(2)粘接着シートの作製ロールコーターを用いて、厚み100μmのポリイミドフィルム(支持体)に上記で得られた粘接着剤組成物を乾燥後の塗工厚みが100μmとなるように塗工し、100℃で3分間乾燥して、粘接着シートを作製した。乾燥後の粘接着剤組成物中におけるNCO基の量は1.97重量%であり、ブロックイソシアネート化合物の添加量は15.6重量%であった。
【0065】(3)評価上記で得られた粘接着シートの性能(■剥離接着力、■ハンダ耐熱性)を以下の方法で評価した。その結果は表1に示した。
【0066】■剥離接着力:23℃の雰囲気下で、粘接着シートの粘接着剤組成物面に、高圧水銀灯を用いて中心波長360nmの紫外線を光強度3J/cm2 で照射し、照射1分後に厚み0.5mmのガラスエポキシ基板にゴムローラーで積層し、圧着した。圧着時の線圧は2kg/cmであり、圧着速度は2m/分であった。上記で得られた積層体を80℃の雰囲気下で1日間硬化させた後、23℃の雰囲気下に放置し、剥離接着力(N/cm)を測定した。
【0067】■ハンダ耐熱性:■の場合と同様にして作製した積層体を80℃の雰囲気下で1日間硬化させた後、23℃の雰囲気下に5日間放置した。次いで、280℃の溶融ハンダ浴に10秒間浸漬した後、取り出して、発泡や剥離等の接着異常の有無を目視で観察し、ハンダ耐熱性を評価した。
【0068】(実施例2)粘接着剤組成物の作製において、ブロックイソシアネート化合物「タケネートB870N」の添加量を10部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着剤組成物及び粘接着シートを得た。乾燥後の粘接着剤組成物中におけるNCO基の量は0.73重量%であり、ブロックイソシアネート化合物の添加量は5.8重量%であった。
【0069】(実施例3)粘接着剤組成物の作製において、液状樹脂として、キシレン樹脂「ニカノールH」30部の代わりに、ロジンエステル樹脂(商品名「KE6130」、非カチオン重合性、荒川化学社製)60部を添加し、ブロックイソシアネート化合物「タケネートB870N」の添加量を10部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着剤組成物及び粘接着シートを得た。乾燥後の粘接着剤組成物中におけるNCO基の量は0.62重量%であり、ブロックイソシアネート化合物の添加量は5.0重量%であった。
【0070】(比較例1)粘接着剤組成物の作製において、ブロックイソシアネート化合物「タケネートB870N」の添加量を150部としたこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着剤組成物及び粘接着シートを得た。乾燥後の粘接着剤組成物中におけるNCO基の量は6.06重量%であり、ブロックイソシアネート化合物の添加量は48.1重量%であった。
【0071】(比較例2)粘接着剤組成物の作製において、ブロックイソシアネート化合物「タケネートB870N」を添加しなかったこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着剤組成物及び粘接着シートを得た。
【0072】実施例2及び3、及び、比較例1及び2で得られた粘接着シートの性能(■剥離接着力、■ハンダ耐熱性)を実施例1の場合と同様にして評価した。その結果は表1に示した。
【0073】(比較例3)比較例2で得られた粘接着シートを用い、ハンダ耐熱性の評価において、23℃の雰囲気下に5日間放置した積層体を120℃で20分間乾燥して水分を飛散させた後、ハンダ耐熱性評価に供したこと以外は実施例1の場合と同様にして、粘接着シートの性能(■剥離接着力、■ハンダ耐熱性)を評価した。その結果は表1に示した。
【0074】
【表1】

【0075】表1から明らかなように、本発明による実施例1〜3の粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着シートは、剥離接着力に優れ、ハンダ耐熱性試験においても発泡や剥離等の異常は認められなかった。
【0076】これに対し、粘接着剤組成物中におけるNCO基量が5重量%を超えていた比較例1の粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着シートは、剥離接着力が低く、ハンダ耐熱性試験においても剥離が発生した。これは、ブロックイソシアネート化合物の添加量が多かったので相対的にポリエステル樹脂やカチオン重合性化合物を含有する液状樹脂の組成物中における濃度が低くなり、硬化後も凝集力が十分に向上しなかったことによる。
【0077】また、ブロックイソシアネート化合物を添加しなかった比較例2の粘接着剤組成物を用いて作製した粘接着シートは、ハンダ耐熱性試験において発泡及び剥離が発生した。さらに、比較例3においては、比較例2の粘接着シートを用いたが、120℃で20分間の水分乾燥工程を経た後にハンダ耐熱性試験に供したので、発泡や剥離等の異常は認められなかった。これは、比較例2の粘接着シートがハンダ耐熱性試験において発泡及び剥離を発生したのは水分に起因するものであることを裏付けている。
【0078】
【発明の効果】以上述べたように、本発明による硬化型粘接着剤組成物は、硬化前は優れた粘着性や初期粘着力を発現し、光照射による硬化後は水分の突沸による発泡や接着力低下等の水分に起因する不具合を発生せず、且つ、優れた接着力や耐熱性を発現するので、例えば高温でのハンダ付け工程のような高温雰囲気下に暴露される用途にも好適に用いられる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013