米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 車両 -> 三菱重工業株式会社

発明の名称 磁性体壁面走行装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−151170(P2001−151170A)
公開日 平成13年6月5日(2001.6.5)
出願番号 特願平11−334462
出願日 平成11年11月25日(1999.11.25)
代理人 【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
発明者 永岡 悦雄 / 高浦 勝寿
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 磁性体壁面上を走行する磁性体壁面走行装置であって、車体と、該車体に装備され該車体を該磁性体壁面に吸着させる磁力式吸着機構と、該車体に装備された前輪及び後輪とをそなえ、該磁力式吸着機構は、該車体に固定され内部にガスチャンバを有するシリンダ,該シリンダ内の該ガスチャンバの上方に装備されたピストン,該ピストンに結合され該シリンダの下方から該磁性体壁面方向へ向けて突出し該磁性体壁面方向に対して離接方向へ移動しうるピストンロッドからなるガスシリンダ機構と、該ガスシリンダ機構の該ピストンロッドの下端部に所定範囲内で揺動可能に装備され該磁性体壁面上を従動走行する従動走行装置と、該従動走行装置の該磁性体壁面への接地時に該磁性体壁面から所定距離だけ離隔した位置となるように該従動走行装置に配設された磁石と、をそなえ、上記の前輪及び後輪の該磁性体壁面への接地時に上記の従動走行装置を所定の接地圧で該磁性体壁面に接地させるように、該ガスチャンバ内のガス圧が設定されていることを特徴とする、磁性体壁面走行装置。
【請求項2】 該車体に中空部が設けられ、該中空部が該ガスチャンバと連通されて補助チャンバとして機能することを特徴とする、請求項1記載の磁性体壁面走行装置。
【請求項3】 上記の前輪及び後輪のうちの一方は、左右に離隔して配設された一対の駆動輪として構成され、上記の前輪及び後輪のうちの他方は、車体の左右方向中央に左右に隣接して配設された一対の従動輪として構成されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の磁性体壁面走行装置。
【請求項4】 磁性体壁面上を移動する磁性体壁面走行装置であって、車体と、該車体に装備され該車体を該磁性体壁面に吸着させる磁力式吸着機構と、該車体に装備された前輪及び後輪とをそなえ、上記の前輪及び後輪のうちの一方は、左右に離隔して配設された一対の駆動輪として構成され、上記の前輪及び後輪のうちの他方は、車体の左右方向中央に左右に隣接して配設された一対の従動輪として構成されていることを特徴とする、磁性体壁面走行装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁性を利用して磁性体壁面に吸着させながら磁性体壁面上を簡易に走行可能な、磁性体壁面走行装置に関し、特に、鋼板製壁面の塗装等作業ロボット等に用いて好適の、磁性体壁面走行装置に関する。
【0002】
【従来の技術】鋼板製壁面等の磁性体で壁面を形成された構造物については、磁力により構造物への吸着を行なえるので、このような構造物の塗装等のために、磁性を利用して走行体を構造物(磁性体壁面)に吸着させうる磁性体壁面走行装置(以降、走行装置と略す)が、従来より開発されている。かかる走行装置では、磁力により走行装置本体を構造物へ吸着させるので、鉛直面に対しても走行を行なうことができる。
【0003】例えば、図4は従来の走行装置の模式的な構成図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。図4に示すように、走行装置は、構造物の表面(磁性体壁面、以下、走行壁面という)170に沿って走行しうる車体フレーム部材(本体)300と、車体フレーム部材300の長手方向の一端に左右〔図4(a)中の上下方向〕に隔離して同一軸心線上に配設された一対の駆動車輪120a,120bと、車体フレーム部材300の他端の左右中央〔図4(a)中の上下方向の中央〕に配設されたステアリング機構140をそなえる駆動車輪130と、車体フレーム部材300内の中央部近傍に設置された吸着機構200とから構成され、駆動車輪120a,120b,130は、それぞれ図示しない駆動機構をそなえている。
【0004】駆動車輪130は、上述のとおりステアリング機構140をそなえてこのステアリング機構140により転舵されるようになっている。走行装置を右折及び左折させる時は、ステアリング機構140により駆動車輪130を転舵させるとともに、駆動車輪130の回転角度に応じて、それぞれ所定の回転数になるように駆動車輪120a,120b,130の回転が制御されるようになっている。
【0005】また、吸着機構200は、車体フレーム部材300内中央部近傍に設置されており、磁石150と、走行壁面170に対して磁石150を離接駆動して磁石150の走行壁面170への吸着力を一定に保持する上下駆動機構部160とからなっている。この吸着機構200は、走行装置の走行壁面170への吸着力(磁力)を所定の大きさに保持するが、これは、吸着力が小さいと例えば走行壁面170が鉛直面の場合に走行装置が自重で移動してしまう虞があり、吸着力が大きいと駆動車輪120a,120b,130の負荷が大きくなってしまうため、吸着力を適当な大きさに保持するようにしているのである。
【0006】上下駆動機構部160では、磁石150と走行壁面170との距離を調整することにより磁石150の磁力(即ち、吸着力)を調整するが、この磁石150と走行壁面170との間に働く磁力の強さを検出する図示しない力センサがそなえられている。上下駆動機構部160は、この力センサから磁石150と走行壁面170との間に働く磁力(吸着力)に応じた検出信号を受けて、この磁力(吸着力)が所定値になるように走行壁面170と磁石150との距離を調整する。
【0007】つまり、磁石150と走行壁面170との間に働く磁力(吸着力)は、磁石150と走行壁面170との距離(ギャップ)に応じて変化するため、磁石150と走行壁面170との間に所定の磁力が働くようにするには、磁石150と走行壁面170との距離を調整すればよい。上下駆動機構部160は、上述のように、力センサの検出信号をフィードバックしながら、磁石150と走行壁面170との間に働く磁力が所定の大きさになるように、磁石150と走行壁面170との距離を制御しているのである。
【0008】従来の磁性体壁面走行装置は上述のように構成されるので、上下駆動機構部160による制御によって、例えば走行壁面170に凹凸等があって不整地面のような状態であっても、この走行壁面170に応じて磁石150の位置が調整されて磁石150による吸着力が常にほぼ一定を保持される。これにより、所要の吸着力が安定して発揮され、車体フレーム部材300の走行壁面170への吸着を確実に過不足なく行なえ、ステアリング機構140により駆動車輪130を操舵し、そしてこの駆動車輪130の回転角度に応じて駆動車輪120a,120b,130をそれぞれ所定の回転数に制御して走行壁面170上の所定の経路で走行できるのである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の磁性体壁面走行装置では、右折及び左折時にはステアリング機構140の角度に応じて駆動車輪120a,120b,130のそれぞれの回転数を個別に制御しなければならず、また、磁石150の走行壁面170への吸着力を力センサで検知しながら、磁石150の走行壁面170への吸着力が一定となるように、上下駆動機構部160により磁石150の位置を逐一上下調整しなければならず、このため、制御が極めて複雑になり、走行装置の操作及び取扱が煩雑となるという不具合がある。走行壁面170に凹凸等の障害物がある場合は、さらに、壁面形状変化量の検知機能を設けてこの検知信号をフィードバックしながら上下駆動機構部160を制御することが必要となり、より制御が複雑化してしまう。
【0010】本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、容易に操作でき、且つ、十分な壁面吸着性能及び走行性能を得られるようにした、磁性体壁面走行装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1記載の本発明の磁性体壁面走行装置は、磁性体壁面上を走行する磁性体壁面走行装置であって、車体と、該車体に装備され該車体を該磁性体壁面に吸着させる磁力式吸着機構と、該車体に装備された前輪及び後輪とをそなえ、該磁力式吸着機構は、該車体に固定され内部にガスチャンバを有するシリンダ,該シリンダ内の該ガスチャンバの上方に装備されたピストン,該ピストンに結合され該シリンダの下方から該磁性体壁面方向へ向けて突出し該磁性体壁面方向に対して離接方向へ移動しうるピストンロッドからなるガスシリンダ機構と、該ガスシリンダ機構の該ピストンロッドの下端部に所定範囲内で揺動可能に装備され該磁性体壁面上を従動走行する従動走行装置と、該従動走行装置の該磁性体壁面への接地時に該磁性体壁面から所定距離だけ離隔した位置となるように該従動走行装置にそれぞれ配設された磁石と、をそなえ、上記の前輪及び後輪の該磁性体壁面への接地時に上記の従動走行装置を所定の接地圧で該磁性体壁面に接地させるように、該ガスチャンバ内のガス圧が設定されていることを特徴としている。
【0012】請求項2記載の本発明の磁性体壁面走行装置は、請求項1記載の装置において、該車体に中空部が設けられ、該中空部が該ガスチャンバと連通されて補助チャンバとして機能することを特徴としている。請求項3記載の本発明の磁性体壁面走行装置は、請求項1又は2記載の装置において、上記の前輪及び後輪のうちの一方は、左右に離隔して配設された一対の駆動輪として構成され、上記の前輪及び後輪のうちの他方は、車体の左右方向中央に左右に隣接して配設された一対の従動輪として構成されていることを特徴としている。
【0013】請求項4記載の本発明の磁性体壁面走行装置は、磁性体壁面上を移動する磁性体壁面走行装置であって、車体と、該車体に装備され該車体を該磁性体壁面に吸着させる磁力式吸着機構と、該車体に装備された前輪及び後輪とをそなえ、上記の前輪及び後輪のうちの一方は、左右に離隔して配設された一対の駆動輪として構成され、上記の前輪及び後輪のうちの他方は、車体の左右方向中央に左右に隣接して配設された一対の従動輪として構成されていることを特徴としている。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。図1〜図3は本発明の一実施形態にかかる磁性体壁面走行装置を示すもので、図1はその側面視に応じた縦断面図(ただし、一部は側面を示す)、図2はその平面図、図3はその駆動車輪及び駆動装置の構成を示す要部断面図である。
【0015】図1,図2に示すように、本実施形態の磁性体壁面走行装置(以下、走行装置と略す)は、車体である正四面体状テトラポッド型フレーム(以下、フレームと略す)10と、フレーム10の中央部に設置されてフレーム10を走行壁面170に吸着させる磁力式吸着機構50と、左右一対の駆動車輪(駆動輪)60a,60bと、左右一対の従動車輪(従動輪)80a,80bとから構成されている。フレーム10の走行壁面170に面する3つの稜角のうち、2つの稜角に、駆動車輪60a,60bがそれぞれ駆動装置70a,70bを介して隔離して平行に配設され、残る1つの稜角に、従動車輪80a,80bが支持部材90を介して互いに隣接して配設される。
【0016】また、図1に二点差線で示すように、駆動車輪60a,60bに近接して作業ツールAを付設したり、走行装置の作業状況を監視するための監視カメラユニットBをフレーム10の上部に挿設することもできるように構成されている。以下に、フレーム10、移動機構(駆動車輪60a,60b,駆動装置70a,70b,従動車輪80a,80b)、磁力式吸着機構50について詳細に説明する。
【0017】まず、フレーム10について説明する。フレーム10は、図1,図2に示すように、その4つの稜角にそれぞれ配設された円筒フレーム部材11a〜11dと、これらの円筒フレーム部材11a〜11dを相互に結ぶ6つの稜辺にそれぞれ配設された中空矩形状フレーム12a〜12fとをそなえて形成される。各中空矩形状フレーム12a〜12fの両端部はそれぞれ対応する円筒フレーム部材11a〜11dに気密結合され、正四面体状のフレーム10が形成されている。
【0018】ここで、中空矩形状フレーム12a〜12fは、内部を中空とするとともに、図示しない配管によりそれぞれ直列に連通して、磁力式吸着機構50にそなえられるシリンダ21の内部のガスチャンバ25に連通するよう接続されている。つまり、中空矩形状フレーム12a〜12fは、フレーム10を構成する部材であると同時に、このガスチャンバ25の補助チャンバとしても機能しうるように、ガスチャンバ25及び中空矩形状フレーム12a〜12fは配管により互いに直列に接続されている。これにより、大容量のチャンバを形成しており、チャンバ内よりガス抜けが生じた場合にも圧力の急低下がないように構成されているのである。
【0019】また、円筒フレーム部材11cの端部には、円筒状の中継箱100が挿設され、直列に連通する中空矩形状フレーム12a〜12fへ接続される図示しないガス配管や、作業ツールA,監視カメラユニットBにかかるケーブル等がこの中継箱100に接続されている。そして、これらの配管やケーブルは、中継箱100でケーブル類110として1つにまとめられて図示しない操作盤へ接続されている。
【0020】次に、移動機構について説明する。前述の通り、駆動車輪60a,60bは、図1,図2に示すように、それぞれ、両方向に回転駆動可能な駆動装置70a,70bを介してフレーム10に設置され、また、従動車輪80a,80bは、互いに同一軸心線上に配置された車軸81a,81bを介してそれぞれ支持部材90に軸支される。
【0021】つまり、駆動車輪60a,60bは個別に駆動可能になっており、駆動車輪60a,60bを同期回転させることによって、走行装置を前後方向に直進させることができ、また、駆動車輪60a,60bを差動回転させることによってステアリング機能(車輪を転舵する機能)を設けること無しに走行装置を左折・右折旋回できるようになっている。さらに、従動車輪80a,80bもそれぞれ個別の車軸81a,81bにより駆動車輪60a,60bに独立して追従できるようになっており、走行装置の旋回を容易に行なえるようになっている。
【0022】ここで、駆動車輪60a,60bは、図3に示すように、それぞれ、外周面が幅方向に円弧状となって走行壁面に曲面があっても対応可能な球体状高摩擦タイヤ(外周面が球面状で且つ摩擦係数の大きいタイヤ)61a,61bを、軽量・高剛性のΣ型ホイール62a,62bに装着されたもので、Σ型ホイール62a,62bが駆動装置70a,70bにそれぞれ軸支されている。
【0023】また、駆動装置70a,70bは、それぞれ、円筒フレーム部材11a,11bに固設されるモータ71a,71bと、減速機72a,72bと、ベベルギヤ機構73a,73bとをそなえて構成される。ベベルギヤ機構73a,73bは、それぞれ、一端を駆動車輪60a,60bのΣ型ホイール62a,62bに接続され、他端を減速機72a,72bの出力軸に接続される。また、減速機72a,72bは、それぞれ、入力軸を、モータ71a,71bに接続されている。かかる構造により、モータ71a,71bの回転を、減速機72a,72bで減速したのち、互いに噛合する1対のベベルギヤからなるベベルギヤ機構73a,73bを介して、モータ71a,71bの軸心線方向と角度を有する軸心線上に配設された駆動車輪60a,60bに屈曲伝達させているのである。
【0024】次に、磁力式吸着機構50について説明する。磁力式吸着機構50は、図1,図2に示すように、走行壁面170に垂直をなすように方向設定されてフレーム10の中央部に固設される壁面接地力調整用のガスシリンダ機構20と、このガスシリンダ機構20の可動部に揺動可能に軸支される磁石付き従動走行装置(従動走行装置)55とから構成されており、ガスシリンダ機構20により所定の引張力で従動走行装置55を支持することにより、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bの走行壁面170への接地力(吸着力)を所定の大きさに調整するようになっている。
【0025】ここで、従動走行装置55は、上面をヒンジ52によりガスシリンダ機構20にそなえられたロッドエンド部材33に枢着された車体部材51と、車体部材51内に固設された磁石40と、車体部材51の両側面に配設されて走行壁面170上を従動走行する左右一対のクローラユニット53a,53bとから構成され、ヒンジ52は、車体部材51とロッドエンド部材33とを枢着するピン54をそなえ、車体部材51をガスシリンダ機構20に揺動可能に接続する。
【0026】磁石40は車体部材51内に固設されクローラユニット53a,53bの接地レベルよりも上方に位置しているので、従動走行装置55が走行壁面170へ接地していれば、当然ながら磁石40は走行壁面170から所定距離だけ離隔した位置となり、これにより磁石40の走行壁面170への吸着力は一定になる。また、前述のように、従動走行装置55はガスシリンダ機構20に揺動可能に接続されているため、例えば、走行壁面170に局所的な傾きや凹凸や段差があった場合には、駆動車輪60a,60b及び従動車輪80a,80bの各接地点を結んだ基準面に対して、クローラユニット53a,53bが前後に傾動しながら走行面170の傾き等に沿わせることができるようになっている。したがって、走行壁面170に傾き等があっても従動走行装置55の磁石40は走行壁面170から所定距離範囲内に離隔した位置に維持されて磁石40の吸着力が略一定に保たれるようになっているのである。
【0027】さらに、走行装置が、図1中に二点鎖線で示すような段差付きの走行面180を走行する場合、その段差185を乗り越える(即ち、走行壁面180の低面部180aから高面部180bへと乗り上げる)際には、磁石付き従動装置55のクローラユニット53a,53bは、走行壁面180の低面部180aに面接地した状態から前端部を段差185の角部185aに当接すると角部185aから反力を受ける。これにより、磁石付き従動装置55は、ピン54を中心に傾動し、図1に二点鎖線で示すように走行壁面180の低面部180aに対して段差185に応じた揺動角度θだけ上方に傾き、段差185を容易に乗り越えることができるようになっている。
【0028】次に、ガスシリンダ機構20について説明する。ガスシリンダ機構20は、図1に示すように、フレーム10の円筒フレーム部材11dに固定されて内部にガスチャンバ25を有するシリンダ21と、このガスチャンバ25の上方に装備されたピストン30と、ピストン30の下方に結合されガスチャンバ25を貫通するようにそなえられたピストンロッド32aと、ピストンロッド32aの下端に結合されてピン54をそなえるロッドエンド部材33と、シリンダ21の内部下端に固設される筒状のスペーサ部材22とからなり、ピン54はヒンジ52の構成要素となっている。
【0029】ピストンロッド32aは、シリンダ21の下方から走行壁面170側へ突出して、走行壁面170に対して離接方向へ移動しうるようになっており、ガスチャンバ25に圧力を供給することによって、ロッドエンド部材33を介して、従動走行装置55を懸吊する引張力を発揮して磁石40によるの走行壁面170への接地力(吸着力)を調整して、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bに分散伝播させるようになっている。
【0030】ロッドエンド部材33は、図1に示すように、下に凸の曲面で形成されたガイド面33aをそなえている。このガイド面33aは、ピン54を中心とした従動走行装置55の揺動を一定範囲内に規制するもので、部分円筒面状に形成されている。このガイド面33aの下方には、車体部材51の上面部51aが近設されており、車体部材51がピン54を中心に揺動した場合、ガイド面33aの両端部33b,33cが車体部材51の上面部51aに当接して車体部材51の傾動を規制するようになっている。この構造により、従動走行装置55は、ピン54を中心に揺動可能であるとともに、この揺動角度がロッドエンド部材33により一定範囲内に規制されるようになっているのである。
【0031】このように、従動走行装置55の揺動を規制するのは次の理由による。つまり、従動走行装置55の揺動を規制しない場合には、例えば、走行装置が段差185を乗り越えようとする時に、走行装置の移動速度が速かったり、段差185が大きなものであったりすると、従動走行装置55が段差185に弾かれるようにして上方へと過剰に揺動してしまう(揺動角度θが過剰に大きくなってしまう)虞がある。
【0032】また、走行装置が、蛇行しながら段差185を乗り越えようとしたり、駆動車輪60a,60bが片輪ずつ段差185を乗り越えていくような姿勢で段差185に突入する等の場合も、従動走行装置55への力の作用によっては従動走行装置55が過剰に揺動してしまう(揺動角度θが過剰に大きくなってしまう)ことが考えられる。
【0033】このように、走行壁面180に対する従動走行装置55(磁石40)の傾き(揺動角度θ)が過剰に大きくなると、磁石40の走行壁面180への吸着力が減少してしまう。つまり、従動走行装置55の過剰な傾斜は、磁石40の走行壁面180からの隔離を招くことによる吸着力の低下だけでなく、磁力の方向が走行壁面180に対して傾斜することによる吸着力の低下も生じて、吸着力の大幅な低下を招いてしまうのである。例えば、揺動角度θが0度のとき、つまり、従動走行装置55が走行壁面180に完全に接地しているときの磁石40の走行壁面180への磁力(吸着力)Fは、走行壁面180に対して磁束の発生する面積S(磁石40の走行壁面180に向き合う面の面積)と磁束密度qとの積(F=q・S)で表される。揺動角度θが生じると、磁石40の走行壁面170への磁力(吸着力)Fは、面積S,磁束密度q,cosθの積(F=q・S・cosθ)にほぼ等しくなる。これは、磁石40と走行壁面180との距離を考慮しない場合であり、揺動角度θが大きくなるほど磁石40と走行壁面180との距離も大きくなるため、揺動角度θが過剰に大きくなることは、吸着力の大幅な低下を招いてしまうのである。
【0034】このため、従動走行装置55が、必要以上に上方へと揺動して走行装置を走行壁面180へと吸着させるのに必要な吸着力が失われることのないように、上述のように従動走行装置55の揺動を規制している。換言すれば、従動走行装置55を走行壁面180に指向させるようにしているのである。つまり、従動走行装置55を揺動可能にロッドエンド部材33に取り付けるとともに、この従動走行装置55の揺動を所定角度内に規制することで、段差185への乗り移り容易性の確保と、走行装置の走行壁面180からの剥離の防止とを両立させようとしているのである。
【0035】さて、スペーサ部材22は、シリンダ21,ピストンロッド32a間に同円心上に上方に向けて配設され、そのフランジ状の下端をシリンダ21に固設されている。このスペーサ部材22は、その内周面に軸方向に走る複数の図示しないキー溝をそなえ、ピストンロッド32aにはこの溝と摺動可能に係合するキー32bが装着されており、ピストンロッド32aが軸心線回りに回動しないようになっている。これにより、従動走行装置55もガスシリンダ機構20も軸心線回りに回転することなく所定の姿勢で走行及び前後傾動を行なえるようになっている。
【0036】また、スペーサ部材22の径はピストン30の径よりも小さいので、ピストン30がシリンダ21内を下降しても、スペーサ部材22の上端がピストン30の下面に当接してピストン30の動きを規制するようになっている。これにより、ガスチャンバ25の容積が、最低限、スペーサ部材22の高さに対応した分だけは確保され、上述のチャンバ兼用の中空矩形状フレーム12a〜12fとともに所要量のチャンバ容積を確保している。これにより、ガスチャンバ25及び中空矩形状フレーム12a〜12f内の圧力変動が抑制されてガスシリンダ機構20の耐久性の向上に寄与するようになっている。
【0037】もちろん、スペーサ部材22によりピストン30のストローク規制は、走行装置の通常走行時に、走行壁面170への従動走行装置55の接地を妨げるようなものではない。尚、ピストン30の頂部には、図1に示すように離脱用のチャッキング穴aが設けられて、走行装置を走行壁面170又は走行壁面180から離脱させる時には、このチャッキング穴aにジャッキアップ用の機械等に接続された吊要具をチャッキングし、この吊要具をジャッキアップすることにより、磁石40を走行壁面170,180から隔離させて吸着力を弱めることができる。これにより、走行装置を走行壁面170,180から離脱させることができるようにしている。
【0038】ここで、ガスシリンダ機構20による、従動走行装置55(磁石40)の走行壁面170への接地力(吸着力)の、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bへの分散伝播の仕組みについて詳細に説明する。上述のようにシリンダ21内のガスチャンバ25とチャンバ兼用の中空矩形状フレーム12a〜12fは図示しない配管によって互いに直列に接続されて連通している。また、中空矩形状フレーム12a〜12fには、円筒フレーム部材11cに挿設された中継箱100を介して、ケーブル類110によって例えばコンプレッサー等により外部からガスが供給されて圧力が加えられている。つまり、中空矩形状フレーム12a〜12fを介して外部からガスチャンバ25に所要圧力が供給され、ガスチャンバ25内は供給圧力に応じた内圧に調整されているのである。
【0039】ガスチャンバ25に圧力が供給されると、当然ながら、ガスチャンバ25の容積が増大する方向、即ちピストン30を上昇させる方向に、シリンダ21とピストン30が付勢される。つまり、ガスチャンバ25内へのガス圧力によって、ピストン30に接続された従動走行装置55には走行壁面170から引き離す方向への力が作用し、シリンダ21に車体フレーム部材10を介して接続された駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bには走行壁面170へ押し付ける方向への力が作用する。
【0040】したがって、ガスチャンバ25内の圧力を高めると、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bを走行壁面170に押し付け、同時に、従動走行装置55には走行壁面170から引き離す方向に力を作用させて走行壁面170への吸着力を減少させることができるようになっている。逆に、ガスチャンバ25内の圧力を低くすると、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bの走行壁面170への押し付け力は弱まり、同時に、従動走行装置55に作用する引張力(走行壁面170から引き離す力)も弱まって従動走行装置55の走行壁面170への吸着力を増加させることができるようになっている。
【0041】このため、従動走行装置55の走行壁面170への吸着力の、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bへの分散の割合を、ガスチャンバ25に供給する圧力を変化させることで、容易に調節できる。これにより、磁石40の壁面への吸着力を、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80b、即ち、走行装置全体にわたって分散伝播させて、安定した状態で走行装置を走行壁面170に吸着させるとともに、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bに適当な接地圧を与えて、これらの駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bが、走行壁面170上の走行装置を前後・左右に適宜に移動させることができるようになっているのである。
【0042】但し、誤操作によりこのガスシリンダ機構20への供給ガス圧力を高くしたとしても、従動走行装置55が走行壁面170より引き離されて走行装置が走行壁面170より滑落することがないように、かかる供給ガス圧力は最大でも磁石40の走行壁面170への吸着力よりも低くなるように設定されている。つまり、走行装置が、磁石40の吸着力と供給ガス圧力による引張力との差に相当する吸着力により必ず走行壁面170へ吸着するようにしているのである。
【0043】本発明の一実施形態としての磁性体壁面走行装置は上述のように構成されているので、以下のような作用,効果が得られる。本走行装置は、上述のように、磁力式吸着機構50により、走行壁面170に吸着されるとともに、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bを、走行装置を移動及び操舵可能な接地圧で、走行壁面170に接地させながら、以下に示すように、駆動車輪60a,60bを制御して、直進,旋回を行なう。
【0044】駆動車輪60a,60bを同期回転させることで走行装置を直進させることができ、また、駆動車輪60a,60bを差動回転させることで走行装置を差動状態に応じた度合いで旋回させることができる。この時、駆動車輪60a,60bは、両方向に回転可能であるので、適宜に、この駆動車輪60a,60bの回転方向を選択して走行装置を前進及び後進させる。また、従動車輪80a,80bは上述のように個別の車軸をそなえて互いに独立して回転可能であるので、駆動車輪60a,60bに追従して、直進時は同期回転を、旋回時は差動回転する。つまり、前後方向については駆動車輪60a,60bの回転方向を制御し、左右方向については駆動車輪60a,60bの回転速度を独立して制御するだけでよい。このように、本走行装置では、駆動車輪60a,60bのみの制御で、走行装置を任意に前後左右に容易に移動させることができるという利点がある。
【0045】また、走行壁面170に部分的な傾斜や曲面が場合でも、この傾斜及び曲面に応じて、ガスシリンダ機構20にそなえられたピン54を中心に従動走行装置55が前後に揺動するので、従動走行装置55が走行壁面170に安定して接地する。したがって、磁石40と走行壁面170との間隙が一定に規制されて、走行装置の走行壁面170への吸着力を容易に一定に保持できるという利点がある。
【0046】また、走行壁面170に段差があったとしても、前述のとおり、従動走行装置55が前後に揺動して、この段差への乗り移りを容易に行なえるとともに、この従動走行装置55はロッドエンド部材33により揺動を規制されているため、走行壁面170に対する従動走行装置55の角度が所定以上に大きくなることはない。つまり、従動走行装置55の走行壁面170への吸着力が減衰して、従動走行装置55(走行装置)が走行壁面170から剥離することがないという利点もある。
【0047】さらに、このガスシリンダ機構20には、ガスチャンバ25と補助チャンバとして機能する中空矩形状フレーム12a〜12fとからなる十分な大きさのチャンバがそなえられているので、上述のように従動走行装置55の上下位置が路面に追従するようにガスシリンダ機構20が伸縮しても、ガスシリンダ機構20のガス圧の変化は僅かであり、このガスシリンダ機構20のガス圧を通じて調整される駆動車輪60a,60bの走行壁面170への接地圧力の変化も殆ど無い。このため、走行装置は走行壁面170上を安定した吸着力で走行できるという利点がある。また、吸着力が安定すると、駆動車輪60a,60bを一定の負荷で操作できる利点もある。したがって、駆動車輪60a,60b及びガスシリンダ機構20と従動走行装置55とからなる磁力式吸着機構50の走行壁面170の形状にあわせた制御が不要で、その取扱および操作が容易にできるという利点がある。
【0048】そして、磁石40の走行壁面170への吸着力の、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bへの分散の割合を、ガスシリンダ機構20に供給する圧力を調整することで容易に設定できるという利点もある。また、作業終了時の走行装置の走行壁面170からの離脱は、ピストン30のそなえるチャッキング穴aに吊要具をセットして、ガスシリンダ機構20へのガス圧力を最大として従動走行装置55の走行壁面170からの引張力を最大にする。これにより、従動走行装置55の磁石40の走行壁面170への吸着力と、ガスシリンダ機構20が従動走行装置55を走行壁面170から引っ張る力との差分を最小とすることができ、かかる差分に応じた小さな力で吊要具によりジャッキアップして、走行装置を走行壁面170から容易に離脱できるという利点もある。
【0049】また、駆動車輪60a,60bの故障時には、ガスシリンダ機構20への供給ガスの圧力を減圧して、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bの走行壁面170への接地力を所定の接地力まで減少させ、走行装置を走行壁面170に吸着させつつ中継箱100を介して円筒フレーム部材11c(即ち、走行装置)に繋がれたケーブル類110を引き寄せることで、走行装置を容易に回収できるという利点もある。
【0050】加えて、本走行装置は、ガスチャンバ25と補助チャンバに兼用される中空矩形状フレーム12a〜12fとを図示しない配管で直列に連通させる構造として、大容量のチャンバを構成しているので、これらのチャンバ内の一部からガス抜けが生じても、急激がガス圧の低下が生じにくい。このようにチャンバ内の圧力は急激に減ること無く緩やかに減っていくので(減圧冗長効果)、ガス抜け故障時にも、駆動車輪60a,60b,従動車輪80a,80bの走行壁面170への接地力が失われて走行装置が走行壁面上170を滑落してしまうまでに十分な時間があり、この間に走行装置を回収するなどの対処が可能であるという利点もある。
【0051】なお、本発明の磁性体壁面走行装置は、上述の実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。例えば、本実施形態では、図1及び図2に示すように、従動走行装置55にクローラユニットをそなえているが、クローラユニットの代わりに複数の車輪を並設されてなるガイドローラ群を用いてもよい。
【0052】また、ガスチャンバ25と補助チャンバに兼用される中空矩形状フレーム12a〜12fとを直列に連通させているが、並列に連通させる構造や、直列,並列を組み合わせた構造としてもよい。
【0053】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1記載の本発明の磁性体壁面走行装置によれば、磁性体壁面に傾斜や曲面や段差等がある場合でも、この傾斜,曲面,段差等に応じて、従動走行装置が傾くので、従動走行装置が磁性体壁面に安定して接地することができ、従動走行装置の磁石が磁性体壁面から所定距離だけ離隔した位置に保持されることになり、磁性体壁面走行装置の磁性体壁面への吸着力を一定に保持でき、これにより十分な壁面吸着性能を得られるという利点がある。
【0054】また、この従動走行装置の揺動角度は所定範囲内に規制されているため、磁性体壁面に対する従動走行装置の揺動角度が所定以上に大きくなることがなく、従動走行装置の過剰な傾斜による磁性体壁面への吸着力の大幅な低下が防止され、磁性体壁面走行装置の磁性体壁面からの剥離を防止でき、さらには、段差での乗り移りを容易に行なえるという利点もある。そして、従動走行装置の磁性体壁面への吸着力と、この吸着力に応じて前輪,後輪への分散して伝播される各車輪の吸着力とを、ガスシリンダ機構に供給する圧力を調整することにより制御するので、容易な操作により壁面吸着性能を変更できるという利点もある。
【0055】請求項2記載の本発明の磁性体壁面走行装置によれば、請求項1記載の本発明の磁性体壁面走行装置に対して、車体に設けられた中空部がガスチャンバと連通して補助チャンバとして機能するため、チャンバ容量を大きなものにでき、従動走行装置が、磁性体壁面の傾斜や曲面等にあわせて追動する場合にも、ガスシリンダのピストンの変動に対するガス圧変動が小さくなり、前輪,後輪の磁性体壁面への接地圧力への変化が少なくなるため、磁性体壁面上をさらに安定して走行できるという利点がある。
【0056】加えて、ガスシリンダ機構のガスチャンバ内の圧力を所定圧力以上に保てなくなった場合でも、補助チャンバにより得られるチャンバ容量の増大によって、ガスシリンダ機構(ガスチャンバ)内の圧力の減少がより緩やかになるので、前輪,後輪の接地力が失われて磁性体壁面走行装置が磁性体壁面上を滑落するまでの時間がより長くなり、その時間内に行なう対応の幅もひろがり、時間的により余裕を持って処置できるという利点もある。
【0057】請求項3,請求項4記載の本発明の磁性体壁面走行装置によれば、駆動輪,従動輪がそれぞれ単独に回転可能であるため、駆動輪のみの制御で、磁性体壁面走行装置を任意に前後左右に容易に走行させることができ、したがって、容易な操作により十分な走行性能を得られるという利点がある。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013