発明の名称 |
酸化ニッケル粉末の製造方法 |
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発行国 |
日本国特許庁(JP) |
公報種別 |
公開特許公報(A) |
公開番号 |
特開2001−32002(P2001−32002A) |
公開日 |
平成13年2月6日(2001.2.6) |
出願番号 |
特願平11−203779 |
出願日 |
平成11年7月16日(1999.7.16) |
代理人 |
【識別番号】100084087 【弁理士】 【氏名又は名称】鴨田 朝雄
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発明者 |
続木 浩二 / 紀井 伸之 / 森 芳秋 / 古川 和則 / 高石 和幸 / 杉浦 卓 |
要約 |
目的
構成
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特許請求の範囲
【請求項1】 硫酸ニッケルを酸化雰囲気下で焙焼して酸化ニッケル粉末を製造する方法において、950℃以上、1000℃未満を焙焼温度とする第1段焙焼、および1000〜1200℃を焙焼温度とする第2段焙焼から該焙焼がなることを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法。 【請求項2】 第1段焙焼の焙焼温度が970〜990℃である請求項1に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。 【請求項3】 第1段焙焼の焙焼時間が15〜60分である請求項1または2に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。 【請求項4】 第2段焙焼の焙焼時間が30〜120分である請求項1に記載の酸化ニッケル粉末の製造方法。
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発明の詳細な説明
【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、硫酸ニッケルを焙焼して酸化ニッケル粉末を製造する方法に関する。 【0002】 【従来の技術】酸化ニッケル粉末は、キルンなどを用い酸化雰囲気下で硫酸ニッケルを焙焼して製造される。そして、酸化ニッケル粉末を他の材料と混合し焼結して得た焼結体は、フェライトの部品などに用いられる。 【0003】近年、上記焼結体の用途が多様化するに伴い、該焼結体をより高密度にするなどのため、種々の平均粒径をもつ酸化ニッケル粉末が要求されるようになった。しかし、平均粒径を制御する酸化ニッケル粉末の製造方法は、知られていなかった。 【0004】また、上記多様化に伴い、不純物濃度、とりわけ残留硫黄が例えば50重量ppm以下に低い酸化ニッケル粉末が要求されるようになってきた。それは、硫黄が酸化ニッケル粉末中に多く残留すると、混合する他の材料と反応し、製品のフェライトの特性を劣化させるからである。しかし、硫黄濃度の低い酸化ニッケル粉末の製造方法は、知られていなかった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、市場からの上記要求に応えるべく、硫酸ニッケルを酸化雰囲気下で焙焼して酸化ニッケル粉末を製造する方法において、平均粒径が制御され、かつ硫黄濃度が50重量ppm以下に低い酸化ニッケル粉末の製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明は、硫酸ニッケルを酸化雰囲気下で焙焼して酸化ニッケル粉末を製造する方法において、950℃以上、1000℃未満を焙焼温度とする第1段焙焼、および1000〜1200℃を焙焼温度とする第2段焙焼から該焙焼がなることを特徴とする酸化ニッケル粉末の製造方法である。 【0007】上記本発明において、第1段焙焼の焙焼温度は970〜990℃が、焙焼時間は15〜60分が好ましく、また、第2段焙焼の焙焼時間は30〜120分が好ましい。 【0008】 【発明の実施の形態】(1)原料硫酸ニッケル本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法において原料硫酸ニッケルを焙焼する際、該原料硫酸ニッケルの分解がおこる。この分解によって、酸化ニッケル粉末とSOxが生成する。そして、上記生成酸化ニッケル粉末の焼結がおこる。 【0009】原料硫酸ニッケル中に含まれている不純物のうちアルカリ金属やアルカリ土類金属は、原料硫酸ニッケルの分解をおこりにくくする、つまり製造する酸化ニッケル粉末の硫黄濃度を高めやすいため、含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属が少ない、例えば1000重量ppm未満の原料硫酸ニッケルを用いるのが好ましい。また、原料硫酸ニッケル中に含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属の量によって、上記焼結速度、ひいては製造する酸化ニッケル粉末の平均粒径も影響を受ける。 【0010】従って、焙焼(第1段焙焼および第2段焙焼)条件や、製造する酸化ニッケル粉末の所望硫黄濃度および所望平均粒径を勘案し、適当な品位の原料硫酸ニッケルを選択して用いることが好ましい。 【0011】(2)第1段焙焼および第2段焙焼本発明の酸化ニッケル粉末の製造方法において上記硫酸ニッケル分解反応を調節することにより、製造される酸化ニッケル粉末の硫黄濃度を制御する。すなわち、製造される酸化ニッケル粉末の硫黄濃度は、この分解反応が進行するほど低下する。 【0012】また、上記生成酸化ニッケル粉末の焼結を調節することにより、製造される酸化ニッケル粉末の平均粒径を制御する。すなわち、製造される酸化ニッケル粉末の平均粒径は、上記生成酸化ニッケル粉末の焼結が進行するほど増大する。 【0013】製造する酸化ニッケル粉末の硫黄濃度および平均粒径を、第1段焙焼および第2段焙焼からなる二段焙焼によって制御するのは、一段焙焼で平均粒径を制御することが、充分な焼結速度が得られないため困難であるからである。なお、一段焙焼で充分焼結しないのは、一段焙焼温度が低い場合は当然であるが、比較的高い一段焙焼温度でも充分焼結しないのは、融液相が生じて硫酸ニッケルが分解しにくくなるからと考えられる。つまり、第1段焙焼によって酸化ニッケル粉末とSOxの生成反応をおこさせて、第2段焙焼で充分な焼結速度が得られる程度に硫黄濃度を低下させる。そして、この第1段焙焼の後の第2段焙焼によって、酸化ニッケル粉末の平均粒径および硫黄濃度を制御する。 【0014】(3)第1段焙焼条件(a)焙焼温度硫酸ニッケルは800℃程度で粒子が一旦溶融し、さらに温度を高めていくと約950℃で分解反応がおこる。1000℃以上では上述したように充分な焼結速度が得られない。分解反応に要する時間をより短くできるため、970〜990℃が好ましい。 【0015】(b)焙焼時間第1段焙焼の作用効果は、15分未満では充分得られず、また、60分を超えても60分以下に比べて向上しない。 【0016】(c)第1段焙焼で生成した酸化ニッケル粉末の平均粒径第1段焙焼で生成した酸化ニッケル粉末は、平均粒径が0.5μm以下の微粉である。 【0017】(4)第2段焙焼条件第1段焙焼で生成した平均粒径0.5μm以下の酸化ニッケル粉末をさらに1000℃以上の高温で保持することにより、充分な速度で焼結がおこって平均粒径が増大する。それとともに硫黄濃度も低下する。 【0018】第2段焙焼の作用効果は、1000℃未満の焙焼温度または30分未満の焙焼時間では充分得られない。また、焙焼温度が1200℃を超えるか焙焼時間が120分を超えても、1200℃以下の焙焼温度や120分以下の焙焼時間に比べて作用効果が向上しない。 【0019】 【実施例】[実施例1〜4、参考例1]試験用小型転動焙焼炉を用い、反応管(SUS製、内径:125mm、長さ:200mm)内に500gの硫酸ニッケルA(6水和物。化学組成を表1に示す)を装入した。 【0020】次に、空気を1リットル/分の流量で流し、反応管を12rpmの回転数で回転させながら、硫酸ニッケルAを昇温させた後に第1段焙焼および第2段焙焼した。ここで、いずれの例においても、第1段焙焼の焙焼温度は970℃で、焙焼時間は60分であった。また、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間は、実施例1が1050℃・120分、実施例2が1100℃・90分、実施例3が1150℃・60分、実施例4が1200℃・45分、および参考例1が1200℃・20分であった。これらの第1段焙焼条件および第2段焙焼条件を表2に示す。 【0021】第2段焙焼後、常温まで放冷した。 【0022】製造した酸化ニッケル粉末の硫黄濃度を化学分析した。硫黄濃度の分析結果を表2に示す。 【0023】[実施例5、6、比較例1]実施例5は第1段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が950℃・60分、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が1200℃・120分、実施例6は第1段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が990℃・60分、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が1050℃・120分、および比較例1は第1段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が900℃・60分、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間が1100℃・60分であった。これらの第1段焙焼条件および第2段焙焼条件を表2に示す。 【0024】上記以外は、実施例1と同様に試験した。硫黄濃度の分析結果を表2に示す。 【0025】[比較例2〜5]第1段焙焼の焙焼時間を、15分(比較例2)、30分(比較例3)および120分(比較例5)とした以外は、実施例1と同様にして第1段焙焼を行った。また、実施例1と同様にして第1段焙焼を行った(比較例4)。第1段焙焼後、常温まで冷却した。これらの第1段焙焼条件を表2に示す。 【0026】その後は、第2段焙焼を行わず、上記第1段焙焼で得られた酸化ニッケル粉末の硫黄濃度を化学分析した。分析結果を表2に示す。 【0027】[比較例6]第1段焙焼を行わず、いきなり第2段焙焼した以外は、実施例1と同様に試験した。ここで、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間は、1100℃・60分であった。この第2段焙焼条件、および硫黄濃度の分析結果を表2に示す。 【0028】[実施例7〜9]第1段焙焼の焙焼温度・焙焼時間はいずれの実施例も970℃・30分で、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間は実施例7が1050℃・30分、実施例8が1100℃・60分、および実施例9が1200℃・30分であった。これらの第1段焙焼条件および第2段焙焼条件を表3に示す。 【0029】上記以外は、実施例1と同様にして酸化ニッケル粉末を製造した。 【0030】製造した酸化ニッケル粉末の平均粒径をフィッシャーサブシーブサイザー(FSSS)を用いて測定した。平均粒径の測定結果を表3に示す。 【0031】[比較例7]第2段焙焼を行わず、第1段焙焼後に常温まで放冷した以外は、実施例7と同様に試験した。第1段焙焼の焙焼条件、および平均粒径の測定結果を表3に示す。 【0032】[実施例10〜14]反応管内に装入した硫酸ニッケルを硫酸ニッケルB(6水和物。硫酸ニッケルAより低品位であり、化学組成を表1に示す)とし、第2段焙焼の焙焼温度・焙焼時間を、実施例10で1000℃・30分、実施例11で1000℃・60分、実施例12で1050℃・30分、実施例13で1050℃・60分、および実施例14で1100℃・30分とした。これら以外は、実施例7と同様に試験した。第1段焙焼条件、第2段焙焼条件、および平均粒径の測定結果を表3に示す。 【0033】[比較例8]第2段焙焼を行わず、第1段焙焼後に常温まで放冷した以外は、実施例7と同様に試験した。第1段焙焼条件、および平均粒径の測定結果を表3に示す。 【0034】 【表1】
(注)Niは重量%、Ni以外は重量ppm。 【0035】 【表2】
【0036】 【表3】
【0037】表1〜3から次のことが分かる。 【0038】(1)第1段焙焼について(a)焙焼温度・焙焼時間を950〜990℃・60分として第1段焙焼を行い、焙焼温度・焙焼時間を1050〜1200℃・45〜120分として第2段焙焼を行うと、硫黄濃度が50重量ppm以下の酸化ニッケル粉末を製造することができる(実施例1〜6)。 【0039】(b)第1段焙焼を行わなかったり(比較例6)、第1段焙焼温度が低かったり(比較例1)すると、硫酸ニッケルの分解が非常におこりにくくなる。 【0040】(c)硫黄濃度を50重量ppm以下にするために、第1段焙焼温度は950℃が臨界的であり(実施例5)、970℃や990℃は硫黄濃度を充分低下できる温度である(実施例1〜4、6)。 【0041】(d)第1段焙焼温度を高めても、硫黄濃度はほとんど変化しない(実施例1、6)。 【0042】(e)第1段焙焼時間を60分より長くしても、硫黄濃度は大きく低下しない(比較例2〜5)。 【0043】(2)第2段焙焼について(a)焙焼温度・焙焼時間を1000〜1200℃・30〜60分として第2段焙焼を行うと、平均粒径が制御された酸化ニッケル粉末を製造することができる(実施例7〜14)。 【0044】(b)第2段焙焼温度が高くなるほど平均粒径が顕著に増大する(実施例7・9・比較例7(A原料・第2段焙焼時間30分)、実施例8・比較例7(A原料・第2段焙焼時間60分)、実施例10・12・14・比較例8(B原料・第2段焙焼時間30分)、および実施例11・13・比較例8(B原料・第2段焙焼時間60分))。 【0045】(c)第2段焙焼時間が長くなるほど硫黄濃度が減少する(実施例4、参考例1)。 【0046】(d)第2段焙焼時間が長くなるほど平均粒径が増大する(実施例10・11(B原料・第2段焙焼温度1000℃)、および実施例12・13(B原料・第2段焙焼温度1050℃))。 【0047】(e)第2段焙焼の焙焼温度および焙焼時間の平均粒径に及ぼす影響は、原料硫酸ニッケル中に含まれる不純物の種類や量が相違すると、異なる、すなわち不純物の多い原料Bの方が不純物の少ない原料Aより平均粒径が大きくなりやすい(実施例7(原料A)・12(原料B)(第2段焙焼温度1050℃・第2段焙焼時間30分))。 【0048】 【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、平均粒径が制御され、かつ硫黄濃度が50重量ppm以下に低い酸化ニッケル粉末の製造方法を提供することができる。
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