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発明の名称 硬質炭素膜被覆工具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−179504(P2001−179504A)
公開日 平成13年7月3日(2001.7.3)
出願番号 特願平11−368986
出願日 平成11年12月27日(1999.12.27)
代理人
発明者 石井 敏夫 / 手島 博幸 / 岡山 史郎
要約 目的
結晶性が良く耐摩耗性の優れたダイヤモンドと摺動性が優れたグラファイトの両者が、相互に密着性良く、適当量含まれている硬質炭素膜を被覆することにより、耐摩耗性と摺動性の両者が優れた被覆工具を実現し、従来に比して格段に工具寿命の長い硬質炭素膜被覆工具を提供する。

構成
ダイヤモンドを含有する硬質炭素膜を被覆した硬質炭素膜被覆工具において、硬質炭素膜に組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるダイヤモンドとX線回折の最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトの両者を含有せしめて構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】 ダイヤモンドを含有する硬質炭素膜を被覆した硬質炭素膜被覆工具において、硬質炭素膜は組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるダイヤモンドとX線回折の最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトの両者を含有していることを特徴とする硬質炭素膜被覆工具。
【請求項2】 請求項1に記載の硬質炭素膜被覆工具において、前記六方晶グラファイトの(008)面指数のX線回折ピーク強度がダイヤモンドの(400)面指数のX線回折ピーク強度の0.1〜3倍であることを特徴とする硬質炭素膜被覆工具。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、硬質炭素膜被覆工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の被加工部材の高硬度及び軽量化に伴って、高硬度、高熱伝導であるダイヤモンド膜を被覆した切削工具や耐摩耗部材を活用する機運が高まっている。特に、ダイヤモンド被覆工具は、アルミ合金やグラファイト材の加工に有望であり、盛んに研究されている。これらのダイヤモンド膜は、一般に、炭化水素などの炭素を含む原料ガスを熱フィラメント(特開昭58−91100)やマイクロ波プラズマ等(特開昭58−110494)により励起し、反応させることにより基体表面に成膜される。
【0003】このように化学蒸着(CVD)法により成膜されたダイヤモンド膜は高硬度であるものの、(111)面や(220)面が基体表面と平行方向に配向しており、膜表面の凹凸が大きく、摺動性が劣る欠点がある。また、(111)面は劈開し易い欠点がある。これに対して、特公平7−13298では、刃部がファセット状の平均粒径0.1μm以上の多結晶質で、且つその表面の50%以上の面積が、劈開の少ない(100)又は(110)の結晶面であることを特徴とするダイヤモンド被覆切削工具が開示されている。また、ダイヤモンド以外に非晶質カーボンやグラファイト、あるいは水素などを硬質膜中に存在させることにより、膜表面の凹凸を小さくし、平滑な膜を得ようとする試みも提案されている。例えば、特開昭60−71597では摺動面にダイヤモンドと六方晶のグラファイトとの混晶からなる硬質カーボン膜を有する摺動用機構部品が開示されている。しかし、これらの方法では、ダイヤモンドと六方晶グラファイトの結晶性や配向および両物質間の密着性に関する考察が行われておらず、工具として用いた場合、耐摩耗性が劣る欠点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の、従来のダイヤモンド被覆工具の欠点を踏まえて、本発明が解決しようとする課題は結晶性が良く耐摩耗性の優れたダイヤモンドと摺動性が優れたグラファイトの両者が、相互に密着性良く、適当量含まれている硬質炭素膜を被覆することにより、耐摩耗性と摺動性の両者が優れた被覆工具を実現し、従来に比して格段に工具寿命の長い硬質炭素膜被覆工具を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究してきた結果、組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるダイヤモンドとX線回折最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトの両者を含有している硬質炭素膜を被覆することにより、優れた切削耐久特性を持つ工具を実現できることを見出し、本発明に想到した。
【0006】すなわち本発明は、ダイヤモンドを含有する硬質炭素膜を被覆した硬質炭素膜被覆工具において、組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるダイヤモンドとX線回折の最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトの両者を含有していることを特徴とする硬質炭素膜被覆工具である。組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるダイヤモンドとX線回折最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトの両者を含有していることにより、ダイヤモンドの優れた耐摩耗性とグラファイトの優れた摺動特性の両者を併せ持った、優れた工具特性が実現されていると判断される。
【0007】ここで、組織係数TC(hkl)は次式により定義される。
TC(hkl)=4×{I(hkl)/I0(hkl)}/[{I(111)/I0(111)}+{I(311)/I0(311)} +{I(400)/I0(400)}+{I(331)/I0(331)}] …数式1但し、(hkl)=(111)、(311)、(400)、(331)I(hkl)はダイヤモンド膜の(hkl)面からの実測X線回折強度である。I(hkl)はJCPDS ファイルNo.6−0675(Powder DiffractionFile Published by JCPDS International Center for Diffraction Data)に記載されているダイヤモンドの標準X線回折強度であり、等方的に配向したダイヤモンド粉末粒子の(hkl)面からのX線回折強度を表すものである。数式1で定義されたTC(hkl)は、ダイヤモンド膜の(hkl)面からの実測X線回折ピーク強度の相対強度を示しており、TC(hkl)値が大きい程(hkl)面が基体表面の接線方向に強く配向していることを示すものである。なお、ダイヤモンドは(111)、(220)、(311)、(400)、(331)の五つのX線回折ピークが観察されるが(220)のX線回折ピーク(2θ=75.30°)はWCの(200)ピーク(2θ=75.51°)と重なるため、数式1の組織係数TC(hkl)の計算には用いなかった。
【0008】本発明の硬質炭素膜に含有されているダイヤモンド成分は、組織係数TC(hkl)の中でTC(400)が最大であるため、ダイヤモンドの(100)結晶面が基体の接線方向に配向しており、結晶粒の劈開が少なく、表面が平坦であり、優れた耐摩耗性を有していると判断される。同時に、X線回折最強ピークが(008)面指数である六方晶グラファイトを含有していることにより、優れた摺動性を有していると判断される。しかも、本発明の硬質炭素膜は、後述の理由により、これらダイヤモンド成分と六方晶グラファイト成分との間に優れた結合力が期待され、その結果、耐摩耗性と摺動性の両特性が優れていると判断される。
【0009】図2はダイヤモンドの単位格子を図示したものである。立方構造で、格子定数は0.35667nmである。図2より、ダイヤモンドは(400)面の位置、即ち面間距離0.08916nmの位置に二個の炭素原子が存在していることがわかる。本発明の一つの特徴は、この(400)のX線回折ピーク強度が強いことである。
【0010】図3は六方晶グラファイト(JCPDS File No.23−64と25−284)の単位格子を図示したもので、格子定数はa=0.2456nm、c=0.6696nm(File No.25−284)乃至はa=0.2463nm、c=0.6714nm(File No.23−64)である。六方晶グラファイトの、C軸の実際の長さは結晶度や層の配向の乱れに依存しており、0.6696〜0.688nmに変化する。表1、2はそれぞれ、JCPDSのFile No.23−64と25−284に示されている、六方晶グラファイトの各面指数に対する標準X線回折強度の(002〜8)に関する部分を抜粋したものである。表1、2より、(008)のX線回折強度IG(008)は(002)のX線回折強度IG(002)の10分の1乃至は100分の1であることがわかる。
【0011】
【表1】

【0012】
【表2】

【0013】図3からもわかるように、六方晶グラファイトの(008)面が基体表面の接線方向に配向していることと(002)面が配向していることとは同一であり、本来は、IG(008)/IG(002)は常に0.1乃至は0.01である。しかし、本発明品の場合、IG(008)≫IG(002)である。この理由は明確ではないが、六方晶グラファイトの(008)面の位置、即ち面間距離0.08370nmの位置に原子が存在している確率が高くなっていると考えられる。
【0014】このように、本発明品に於いては、含有されている六方晶グラファイト成分とダイヤモンド成分の両者において、面間距離が0.08370nmと0.08916nmの位置に原子が存在している確立が高いことから、両者の間で、原子の共有等、何らかの干渉があると見られ、両者間に強い結合力が存在している可能性があると判断される。なお、以上の考察からもわかるように、本発明における(008)X線回折ピークが最強の六方晶グラファイトとは、面間距離が0.08370nm近傍にX線回折ピーク強度を有するグラファイト系の物質であれば良く、一概に六方晶グラファイトである必要は無いことは明らかである。
【0015】上記と同時に、本発明の被覆工具は、六方晶グラファイトの(008)X線回折ピーク強度がダイヤモンドの(400)X線回折ピーク強度の0.1〜3倍であることが好ましく、0.15〜2.5倍あることが更に好ましく、さらに0.35〜2倍であることが最も好ましい。六方晶グラファイトの(008)X線回折ピーク強度とダイヤモンドの(400)X線回折ピーク強度との比IG(008)/ID(400)が0.1〜3であることにより、耐摩耗性の優れたダイヤモンド成分と、摺動性の優れたグラファイト成分が適当量含有されており、耐摩耗性と摺動性のバランスが優れ、優れた工具耐久特性が実現されていると判断される。上記X線回折ピーク強度比IG(008)/ID(400)が0.1倍未満では、六方晶グラファイトの含有量が少なく、摺動特性が劣る欠点が現れ、同3倍を越えると膜の硬度が低下し、耐摩耗性が低下する欠点が現れる。また、上記X線回折ピーク強度比IG(008)/ID(400)が0.15〜2であることにより、耐摩耗性と耐摺動性のバランスが良く、さらに長い工具寿命が得られ、0.35〜2であることにより最も長い工具寿命が得られる。
【0016】また、本発明の被覆工具において、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも一種以上とよりなる超硬合金を基体とすることが更に好ましく、更にはWの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とCoからなり、他の周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物成分が1質量%以下である超硬合金を基体とすることが最も好ましい。上記の超硬合金を基体とすることにより本発明の被覆工具全体の靭性、硬度、耐熱性がバランス良く高まり、被覆工具として良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。また、Wの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とCoからなり、Wを除く周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物成分が1質量%以下である超硬合金を基体とすることにより、超硬合金基体と硬質炭素膜との間の密着性が高まり、更に良好な工具耐久特性が実現されていると判断される。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明における硬質炭素膜被覆工具の代表例である硬質炭素膜被覆エンドミルに則って、本発明をより具体的に詳説する。
【0018】本発明の被覆工具において、ダイヤモンドのX線回折ピークの同定は、先述のJCPDSファイルのX線回折データ(ファイルNo.6−0675)を用い、六方晶グラファイトのX線回折ピークの同定は、同ファイルNo.25−284のデータを用いて行った。
【0019】本発明の被覆工具を製作するためには、熱フィラメント化学蒸着法(熱フィラメントCVD法)やマイクロ波CVD法、rfプラズマCVD法、ECRプラズマCVD法等を用いることができる。用途はソリッドエンドミル型切削工具に限るものではなく、スローアウェイインサートを用いたエンドミル型切削工具やフライス用工具、旋削用工具でも良い。また、硬質炭素膜を被覆した耐摩耗材や金型、溶湯部品等でもよい。
【0020】本発明の被覆工具において、硬質炭素膜の成分は炭素だけに限るものではない。本発明の効果を消失しない範囲でCoやW等の不可避の添加物、不純物を例えば数質量%程度まで含むことが許容される。
【0021】
【実施例】次に本発明の被覆工具を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものでない。
【0022】(実施例1)WC:94質量%、Co:6質量%の組成よりなり、同一ロットで焼結し作製したボールエンドミル型の切削工具用超硬合金基体(直径6mm、2枚刃)とX線回折測定用直方体基板(5×5×10mm)を炉内にセットし、それらの表面に、熱フィラメントCVD法により、約8μm厚さの硬質炭素膜を成膜した。即ち、エンドミルの周辺に配置したタングステン製フィラメントに電流を流すことにより、これを約2,500℃に加熱し、これにCH4/H2比が0.5〜3%のCH4とH2の混合ガスを10〜150cm/minだけ流し、圧力1.33〜13.3kPa、基板温度900〜1200℃で成膜した。
【0023】図1は実施例1の条件で作製した本発明品の代表的なX線回折パターンである。直方体基板の表面に成膜した硬質炭素膜のX線回折パターンを、理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)で、CuKα1線(λ=0.15405nm)を用いて、2θ−θ走査法により測定した。2θの測定範囲は10〜145°で、ノイズ(バックグランド)は装置に内蔵されたソフトにより除去した。表3に、図1のX線回折パターンより求まった本発明品の硬質炭素膜の2θ値とX線回折強度、および各ピークに対応する物質のJCPDSファイルに記載されている2θ、面指数、X線回折強度の値を示す。
【0024】
【表3】

【0025】表4に、表3のダイヤモンド成分の実測値と数式1とより求めたTC(hkl)値を示す。
【0026】
【表4】

【0027】図1と表3、4より、本発明品の硬質炭素膜がダイヤモンドと六方晶グラファイトとより構成されており、ダイヤモンドの組織係数TC(hkl)が最大であるピークは(400)であり、六方晶グラファイトは(008)が最強であることがわかる。また、六方晶グラファイトの(008)のX線回折ピーク強度IG(008)はダイヤモンドの(400)のX線回折ピーク強度ID(400)の0.51倍であることが分かる。
【0028】表5に実施例1によって作製した硬質炭素膜被覆工具のX線回折測定結果を示す。
【0029】
【表5】

【0030】いずれの試料も、ダイヤモンドの組織係数はTC(400)が最大であった。これらの結果より、本発明品は、いずれの硬質炭素膜も、組織係数TC(400)が最大であるダイヤモンドと、(008)が最強である六方晶グラファイトとから成っていることがわかる。また、六方晶グラファイトの(008)のX線回折ピーク強度IG(008)はダイヤモンドの(400)のX線回折ピーク強度ID(400)の0.05〜3.72倍であることがわかる。
【0031】本発明品は、900〜1200℃の範囲内で基板温度を高めるにつれてIG(008)とTC(400)とが強まり、0.5〜3%の範囲内で成膜ガスのCH4/H2比を下げるにつれてID(400)が強まった。
【0032】表5に本発明品の工具寿命の評価結果をまとめて示す。工具寿命は、作製した発明品各3個を用いて、グラファイト材を下記の条件で切削し、外周刃の刃先の逃げ面摩耗量が0.05mmに達するまでに切削した切削長さにより示した。
被削材 グラファイト(Hs105)
工具形状 ボールノーズエンドミル(6φ、二枚刃)
工具回転数 7958 回転/分切削速度 150 m/分送り速度 398mm/分(0.025mm/刃)
切り込み 0.5mm切削油 使用せずショアー硬度Hsが105と硬いグラファイト材を被削材に用いることにより、工具の耐摩耗性を早期に評価できるようにした。逃げ面摩耗量は倍率100の実体顕微鏡と分解能1μmのスライドテーブルを用いて測定した。
【0033】表5より、本発明品は、いずれも切削可能長が5m以上と長く、工具寿命が優れていることがわかる。また、六方晶グラファイトの(008)X線回折ピーク強度IG(008)がダイヤモンドの(400)X線回折ピーク強度ID(400)の0.1〜3倍の時切削可能長が10m以上と長く、優れた工具寿命が得られ、IG(008)/ID(400)が0.15〜2.5の時は切削可能長が15m以上と更に長く、更に優れた工具寿命が得られ、IG(008)/ ID(400)が0.35〜2の時は切削可能長が18m以上と最も長く、最も優れた工具寿命が得られることがわかる。
【0034】(比較例1)硬質炭素膜において、TC(400)が最大であるダイヤモンドと(008)のX線回折強度が最強であるグラファイトの両者を含有することの有無による工具寿命への影響を明らかにするために、実施例1と同一の組成と形状よりなるボールエンドミル型の切削工具用超硬合金基体(直径6mm、2枚刃)とX線回折測定用直方体基板(5×5×10mm)を炉内にセットし、それらの表面に、熱フィラメントCVD法により、約8μm厚さの硬質炭素膜を成膜した。タングステン製フィラメントを約2,300℃に加熱し、これに炭素濃度が4%のCH4とH2の混合ガスを150cm/minだけ流し、圧力13.3kPa、基板温度800℃で成膜した。
【0035】作製した比較例1品の硬質炭素膜は、TC(111)が最大のダイヤモンドから構成されており、六方晶グラファイトのピークは観察されなかった。
【0036】比較例1の条件で作製した切削工具各3個を用いて実施例1と同一の条件で工具寿命を評価した結果、3m以内で外周刃の刃先摩耗量が0.05mmに達し、本発明品よりも工具寿命が短く、工具として劣ることがわかった。
【0037】(実施例2)WC:95.5質量%、Co:4.5質量%の組成よりなるスケアエンドミル型の切削工具用超硬合金基体(直径6mm、2枚刃)を炉内にセットし、それらの表面に、熱フィラメントCVD法により、約8μm厚さの硬質炭素膜を成膜した。即ち、エンドミルの周辺に配置したタングステン製フィラメントに電流を流すことにより、これを約2,500℃に加熱し、これにCH4/H2比が0.5〜3%のCH4とH2の混合ガスを10〜150cm/minだけ流し、圧力1.33〜13.3kPa、基板温度900〜1200℃で成膜した。
【0038】作製した本発明品の、スケアエンドミルの刃先先端にある平坦部を試料面にして、X線回折パターンを、実施例1と同一の条件で測定した。スケアエンドミルの刃先先端の平坦部は面積が少ないため、平坦部以外は出来るだけ加工で除去するとともに、ビニールテープで覆うことにより、出来るだけ、X線回折パターンに影響しないように工夫した。
【0039】表6に上記の方法で測定した、本発明品の硬質炭素膜中に含まれるダイヤモンドのX線回折ピークの代表的な測定結果を記した。
【0040】
【表6】

【0041】表6より、本発明品の硬質炭素膜中は組織係数TC(400)が最大のダイヤモンドと(008)X線回折強度が最大の六方晶グラファイトの両者から成っていることがわかる。また、六方晶グラファイトの(008)のX線回折ピーク強度IG(008)はダイヤモンドの(400)のX線回折ピーク強度ID(400)の1.57倍であることがわかる。
【0042】表7に、実施例2によって作製した硬質炭素膜被覆工具のX線回折測定結果を示す。
【0043】
【表7】

【0044】実施例1と同様に、いずれの試料も、ダイヤモンドの組織係数はTC(400)がTC(hkl)中、最大であった。これらの結果より、本発明品は、いずれの硬質炭素膜も、組織係数TC(400)が最大であるダイヤモンドと、(008)が最強である六方晶グラファイトとから成っていることがわかる。
【0045】作製した発明品各3個を用いて、本発明品の工具寿命を下記の条件で評価した。
被削材 Al−11質量%Si合金工具形状 スケアエンドミル(6φ、二枚刃)
工具回転数 7958 回転/分切削速度 150 m/分送り速度 477mm/分(0.03mm/刃)
切り込み 0.1mm切削油 使用せず工具寿命は実施例1と同様に、刃先の逃げ面摩耗量が0.05mmに達するまでに切削した切削長さで示した。
【0046】表7に工具寿命を併記する。これより本発明品は、いずれも切削可能長が20m以上と長く、工具寿命が優れていることがわかる。また、六方晶グラファイトの(008)X線回折ピーク強度IG(008)がダイヤモンドの(400)X線回折ピーク強度ID(400)の0.1〜3倍の時、切削可能長が30m以上と長く、優れた工具寿命が得られ、IG(008)/ ID(400)が0.15〜2.5の時は切削可能長が40m以上と更に長く、更に優れた工具寿命が得られ、IG(008)/ ID(400)が0.35〜2の時は切削可能長が50m以上と最も長く、特に優れた工具寿命が得られることがわかる。
【0047】(比較例2)硬質炭素膜において、TC(400)が最大であるダイヤモンドと(008)のX線回折強度が最強であるグラファイトの両者を含有することの有無による工具寿命への影響を明らかにするために、実施例2と同一の組成と形状よりなるスケアエンドミル型の切削工具用超硬合金基体を炉内にセットし、それらの表面に、熱フィラメントCVD法により、約8μm厚さの硬質炭素膜を成膜した。タングステン製フィラメントを約2,300℃に加熱し、これにCH4/H2比が0.4%のCH4とH2の混合ガスを150cm/minだけ流し、圧力13.3kPa、基板温度800℃で成膜した。
【0048】作製した比較例2品の硬質炭素膜は、TC(400)が最大のダイヤモンド成分を含有しているものの、六方晶グラファイトのピークは観察されなかった。
【0049】比較例2の条件で作製した切削工具各3個を用いて実施例2と同一の条件で工具寿命を評価した結果、10m以内で外周刃の刃先摩耗量が0.05mmに達し、本発明品よりも工具寿命が短く、工具として劣ることが判明した。
【0050】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、耐摩耗性と摺動性の両特性が良好であり、優れた工具耐久特性を示す硬質炭素膜被覆工具を実現することができる。




 

 


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