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発明の名称 ジルコニウム含有膜被覆工具
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−170804(P2001−170804A)
公開日 平成13年6月26日(2001.6.26)
出願番号 特願平11−355004
出願日 平成11年12月14日(1999.12.14)
代理人
発明者 石井 敏夫 / 権田 正幸 / 福永 有三 / 岡山 史郎
要約 目的
高温においても膜硬度が急激に低下せず、膜の密着性と耐摩耗性とが優れた被覆工具を実現し、切削耐久特性の優れるジルコニウム含有膜被覆工具を提供する。

構成
工具基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を設け、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムを含有し且つX線回折ピーク最強度面が、(422)面または(311)面として構成する。
特許請求の範囲
【請求項1】 基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムを含有し且つX線回折ピーク最強度面が、(422)面または(311)面であることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項2】 請求項1に記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成されていることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項3】 請求項1または2に記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜の下層がチタンの炭窒化物膜またはチタンの炭窒酸化物膜であることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜中にジルコニウムが0.3〜50質量%含有されていることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜に含まれるジルコニウム以外の主たる金属成分はチタンであることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が引張り残留応力を有するととも、膜中の塩素量が2質量%以下であることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
【請求項7】 請求項1乃至6のいずれかに記載のジルコニウム含有膜被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が、原料ガスとして少なくとも有機CN化合物ガスを用い、温度750〜950℃で熱化学蒸着法により成膜されていることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ジルコニウム含有膜被覆工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、被覆工具は超硬合金、高速度鋼、特殊鋼等からなる基体表面に硬質皮膜を化学蒸着法や物理蒸着法により成膜して作製される。このような被覆工具は皮膜の耐摩耗性と基体の強靭性とを兼ね備えており、広く実用に供されている。特に、高速で切削する場合や切削液を用いずに旋削加工する場合には、切削工具の刃先の温度が1000℃前後まで達するため、高温環境下における被削材との接触による摩耗や断続切削等の機械的衝撃に耐える必要があり、耐摩耗性と靭性の両者が優れた被覆工具が重宝されている。
【0003】一般の被覆工具用硬質皮膜には、耐摩耗性と靭性とが優れる、周期律表IVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物からなる非酸化膜や、耐酸化性に優れる酸化アルミニウム膜が単層膜あるいは複層膜として用いられている。
【0004】これら硬質皮膜は、化学蒸着(CVD)法あるいは物理蒸着(PVD)法により成膜されている。PVD法の特長は、多数の元素を含有する膜を比較的容易に成膜できることであり、欠点は、CVD膜に比べて基体と膜の間の密着性が劣ることである。これに対して、CVD法の欠点は、化学反応を用いて成膜するために、多数の元素を含有する膜を成膜することが困難なことであり、長所は、600〜1050℃と高温で成膜するため膜の密着性が高いことと、より高温で使用しても膜特性の劣化が少ないことである。このため、切削加工時に刃先が1000℃前後まで昇温する旋削工具にはCVD法で成膜されたTiC、TiN、TiCN、Al2O3膜のみが実用化されているのが現状である。
【0005】このようにTiC、TiN、TiCN膜は、常温で測定したビッカース硬度Hvが約3200、2100、2700と硬く、耐摩耗性が優れているため、旋削用工具に多用されているが、これらの膜の硬度は高温で急激に低下し、乾式切削等により刃先の温度が1000℃前後に達すると、耐摩耗性が急激に低下する欠点を有している。
【0006】また、これらTiC、TiN、TiCN膜の特性を改善するため(Ti,Al)Nや(Ti,Zr)N、(Ti,Zr)C膜等、二種類以上の金属成分を含有した膜が検討されている。このうち(Ti,Al)N膜は実用化されているが、これらはいずれも、スッパタ法やイオンプレーティング法等のPVD法、またはプラズマCVD法で成膜したものであり、成膜温度が低く、当該膜が圧縮応力を有しており膜の密着性が低い、あるいは膜中に塩素が残留しており膜の硬度が低く、耐摩耗性が劣る欠点がある。
【0007】引っ張り残留応力を有するZr含有膜を熱CVD法で成膜する例は特開平1−252305、特開平5−177412、特開平5−177413で開示されている。しかし、これらはいずれもZrC、ZrN、ZrCN、ZrCO、ZrCNOと、金属成分がZrのみからなるCVD膜を用いており、(Ti,Zr)N、(Ti,Zr)C、(Ti,Zr)CN等、Zrと他の金属成分との混合膜は検討していない。ZrC膜等、Zr単独からなる膜の硬度は室温における膜硬度が低く、湿式切削や低速で切削し刃先温度が高温にならないときに、耐摩耗性が劣る欠点がある。
【0008】TiとZrの両者を含有するCVD膜としては、特開平3−267361によってTi−Zr−N膜が開示されているが、プラズマCVD法を用いており、膜中に塩素が残留するため、膜硬度が低く、工具として耐摩耗性が劣る欠点がある。また、基板にアルミナ板を用いており、基板自体の靭性が低いため、工具として使用時に欠落を生じ易く、切削耐久特性が劣る欠点がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは 上記の従来膜被覆工具の欠点を解決するため、鋭意研究してきた結果、ジルコニウム含有膜、例えば、(Ti,Zr)N、(Ti,Zr)C、(Ti,Zr)CN膜等が高温においても膜硬度が急激に低下せず、膜の密着性と耐摩耗性とが優れることを見いだし、先に特願平11−182622を出願した。本発明が解決しようとする課題は、上記発明を更に改善し、耐摩耗性と高温耐久特性とが更に優れたジルコニウム含有膜被覆工具を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の特願平11−182622の発明内容に加えて、ジルコニウム含有膜の結晶配向や結晶形状等を更に制御することにより、更に優れた切削耐久特性を持つ工具を実現できることを見出し、本発明に想到した。
【0011】すなわち本発明は、基体表面に周期律表のIVa、Va、VIa族並びにアルミニウムの炭化物、窒化物、酸化物、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、炭窒酸化物のいずれか一種の単層皮膜または二種以上の多層皮膜を有し、前記皮膜の少なくとも一層がジルコニウムを含有し且つX線回折ピーク最強度面が、(422)面または(311)面であることを特徴とするジルコニウム含有膜被覆工具、である。
【0012】同時に、前記ジルコニウム含有膜が膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成されている場合、前記ジルコニウム含有膜の下層がチタンの炭窒化物膜またはチタンの炭窒酸化物膜である場合、前記ジルコニウム含有膜中にジルコニウムが0.3〜50質量%含有されている場合、前記ジルコニウム含有膜が引張り残留応力を有するととも、膜中の塩素量が2質量%以下である場合、前記ジルコニウム含有膜に含まれるジルコニウム以外の主たる金属成分はチタンである場合、前記ジルコニウム含有膜が原料ガスとして少なくとも有機CN化合物ガスを用い、温度750〜950℃で熱化学蒸着法により成膜されている場合も同様に、夫々本発明の優れた実施形態である。
【0013】
【作用】ジルコニウム含有膜のX線回折ピーク最強度面が、(422)面または(311)面であることにより、ジルコニウム含有膜が高い結晶性と粒界強度を持つとともに、被覆する膜厚を増加させても膜表面の結晶粒幅が粗大化せず、局所的な突起が形成されないことにより、耐摩耗性と靱性とが優れる良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0014】本発明の被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成されていることが好ましい。ジルコニウム含有膜が膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成されていることにより、結晶粒径を粗大化させることなく膜厚を厚くできるとともに、膜表面の凹凸を小さく出来、膜表面の摺動性を高めるとともに、膜の靱性を高めることが出来、優れた切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0015】また、本発明の被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜の下層がチタンの炭窒化物膜またはチタンの炭窒酸化物膜であることが好ましい。下層がチタンの炭窒化物膜またはチタンの炭窒酸化物膜であることにより、ジルコニウム含有膜のX線回折最強度面が(422)面または(311)に成りやすく、前記の理由により良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0016】また、本発明の被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜中に、ジルコニウムが0.3〜50質量%含まれていることが好ましい。また、1〜40質量%含まれていることが更に好ましく、5〜30質量%含有されていることが最も好ましい。膜中に、ジルコニウムが0.3〜50質量%含有されていることにより、ジルコニウム含有膜の良好な耐熱特性や高温での高硬度性の特長が実現されていると判断される。0.3質量%以下ではジルコニウム含有の効果が小さく、50質量%を越えるとTiCやTiCN膜に比べて常温での膜硬度が低下し、結果的に切削耐久特性が低下する傾向があらわれる。また、ジルコニウムが1〜40質量%含有されている場合は、ジルコニウム含有膜の良好な耐熱特性や高温高硬度の特長が顕著に実現されていると判断される。また、ジルコニウムが5〜30質量%含有されていることにより、ジルコニウム含有膜の良好な耐熱特性や高温高硬度の特長が最も顕著にあらわれ、最も良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0017】また、ジルコニウム含有膜中の他の主な金属成分がチタンであることが好ましい。ジルコニウム含有膜中の他の主な金属成分がチタンであることにより、チタン含有膜(例えば、TiC、TiCN膜等)の常温での膜硬度が高い特長とジルコニウム含有膜の高温での膜硬度が高い特長の、両特長が得られ、優れた耐摩耗性を持ち、良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。また、ジルコニウム含有膜がチタンとの炭窒化物膜または炭窒酸化物膜であることが好ましい。ジルコニウム含有膜がチタンとの炭窒化物膜または炭窒酸化物膜であることにより、ジルコニウム含有膜のX線回折ピーク最強度面が、(422)面または(311)面に成りやすく、膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成され易くなり、切削耐久特性の優れたジルコニウム含有膜被覆工具をより実現しやすくなる。
【0018】また、本発明の被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が引っ張り残留応力を有するととも、膜中の塩素量が2質量%以下であることが好ましく、塩素量が1質量%以下であることが更に好ましい。ジルコニウム含有膜が引っ張り残留応力を有することにより膜の緻密性が高まるとともに、基体乃至は下地膜との間に優れた密着性を得ることが出来、膜中の塩素量が2質量%以下、好ましくは1質量%以下であることにより、膜の硬度が高く、優れた切削耐久特性を持つ被覆工具が実現されていると判断される。ジルコニウム含有膜が引っ張り残留応力を有しないと膜の緻密性が低く、基体や下地膜との密着性が劣る欠点が現れ、塩素量が2質量%を越えると膜硬度が低下し、耐摩耗性が悪くなる。
【0019】また、本発明の被覆工具において、周期律表のIVa、Va、VIa族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの少なくとも一種以上とFe、Ni、Co、W、Mo、Crのうちの少なくとも一種以上とよりなる超硬合金を基体とすることが好ましい。上記の超硬合金を基体とすることにより本発明の被覆工具全体の靭性、硬度、耐熱性がバランス良く高まり、被覆工具として良好な切削耐久特性が実現されていると判断される。
【0020】また、本発明の被覆工具において、前記ジルコニウム含有膜が、原料ガスとして少なくとも有機CN化合物を用い、温度750〜950℃で熱化学蒸着法により成膜されていることが好ましい。また、有機CNガスとしてCH3CNガスを用いていることが更に好ましく、更にジルコニウムのガス源としてジルコニウムのハロゲン化ガスを用いていることが最も好ましい。また、温度800〜900℃で熱化学蒸着法により成膜されていることが更に好ましい。ジルコニウム含有膜が、原料ガスとして少なくとも有機CN化合物ガスを用いて、温度750〜950℃で熱化学蒸着法により成膜されていることにより、(422)または(311)面のX線回折強度が高く、結晶粒径が小さく、緻密で膜間の密着性が優れたジルコニウム含有膜が得られ、優れた切削耐久特性が実現されていると判断される。また、有機CNガスとしてCH3CNガスを用いることにより(422)または(311)面のX線回折強度が更に高くなり、ジルコニウム含有膜の特長が顕著に実現されていると判断される。また、更にジルコニウムのガス源としてジルコニウムのハロゲン化ガスを用いていることにより、より安価にジルコニユムを供給出来ると共に、(422)または(311)面のX線回折強度が高いジルコニウム含有膜がより安定して実現されていると判断される。温度750〜950℃以上で熱化学蒸着法により成膜されることにより、(422)または(311)面のX線回折強度が更に強くなり、優れた切削耐久特性が実現されていると判断される。特に800〜900℃以上で熱化学蒸着法により成膜されることにより(422)または(311)面のX線回折強度が更に強くなり、更に優れた切削耐久特性が実現されていると判断される。温度750℃未満で熱化学蒸着法により成膜されると、ジルコニウム含有膜の成膜速度が極端に低下し、経済的では無く、950℃を越えて成膜するとジルコニウム含有膜の結晶粒径が大きくなり、膜の靱性や切削耐久特性が低下する欠点が現れる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明におけるジルコニウム含有膜の代表例である炭窒化チタン・ジルコニウム(Ti,Zr)CNに則って、本発明をより具体的に詳説する。本発明の被覆工具において、炭窒化チタン・ジルコニウム膜のX線回折ピークの同定は、JCPDSファイル(Powder Diffraction File Published by JCPDS InternationalCenter for Diffraction Data)に記載がないため、TiCとTiNのX線回折データ(ASTMファイルNo.29−1361とNo.38−1420)および本発明品を実測して得たX線回折パターンから求めた表1の数値を用いて行った。
【0022】
【表1】

【0023】本発明の被覆工具において、結晶粒の形状は膜の破断面を走査電子顕微鏡で観察する事により測定した。また、ジルコニウム含有膜の組成は膜断面を研磨し、研磨面をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により分析することにより測定した。
【0024】膜の残留応力σは、X線応力測定法による並傾法を用いて、次式に示す応力計算式により求めた。
σ=-(1/2){E/(1+ν)}cotθ0{∂(2θ)/∂(sin2Ψ)} …(1)
ここで、Eは弾性定数、νはポアソン比、θ0は無歪みの格子面からの標準ブラッグ回折角、Ψは回折格子面法線と試料面法線との傾き、θは測定試料の角度がΨの時のブラッグ回折角である。式(1)より、膜応力の符号(±)の決定には2θ−sinΨ線図の勾配のみが必要とされ、弾性定数Eやポアソン比ν、cotθ0(常に+)の正確な値は必要としないことがわかる。
【0025】本発明の被覆工具を製作するためには、熱化学蒸着法(熱CVD)以外でも、種々の既知の成膜方法、例えば、プラズマを付加した化学蒸着法(PACVD)、アークイオンプレーティング法、スッパタ法等を用いることができる。用途は切削工具に限るものではなく、ジルコニウム含有膜を含む単層あるいは複層や多層の硬質皮膜を被覆した耐摩耗材や金型、溶湯部品等でもよい。
【0026】本発明の被覆工具において、ジルコニウム含有膜は例えば(Ti,Zr)C、(Ti,Zr)N、(Ti,Zr)CN、(Ti,Zr)CO、(Ti,Zr)NO、(Ti,Zr)CNO等に限るものではない。これらの成分に例えばCr、Ta、Nb、Hf、Mg、Y、Si、Bを単独または複数組み合わせて各元素を0.3〜10質量%添加した膜でも良い。0.3質量%未満ではこれらを添加する効果が現れず、10質量%を超えるとジルコニウム含有膜の高温高硬度の効果が低くなる欠点が現れる。また、上記膜には本発明の効果を消失しない範囲で不可避の添加物、不純物を例えば数質量%程度まで含むことが許容される。
【0027】本発明の被覆工具において、有機CNガスはCH3CNに限るものではなく、(CH3)3N、CH3(NH)2CH3等でも良い。また、Zr供給用のガスはZrCl4、ZrCl3、ZrCl2ガス等の塩化ジルコニウムに限るものではなく、他のハロゲン化ジルコニウムやZr(t−OC4H9)等の有機金属ガスを用いてもよい。
【0028】本発明の被覆工具に被覆することができる酸化アルミニウム膜としてκ型酸化アルミニウム単相またはα型酸化アルミニウム単相の膜を用いることができる。また、κ型酸化アルミニウムとα型酸化アルミニウムとの混合膜でもよい。また、κ型酸化アルミニウムおよび/またはα型酸化アルミニウムと、γ型酸化アルミニウム、θ型酸化アルミニウム、δ型酸化アルミニウム、χ型酸化アルミニウムの少なくとも一種以上とからなる混合膜でもよい。また、酸化アルミニウムと酸化ジルコニウム等に代表される他の酸化物との混合膜でもよい。
【0029】また、本発明の被覆工具において、酸化アルミニウム膜、酸化ジルコニウム膜、または酸化アルミニウムと酸化ジルコニウムからなる複合膜の上に、例えばさらにその上に少なくとも一膜のチタン化合物(例えばTiN膜やTiCN膜およびその多層膜等)やジルコニウム化合物(例えばZrN膜やZrCN膜およびその多層膜等)を被覆してもよい。
【0030】
【実施例】次に本発明の被覆工具を実施例によって具体的に説明するが、これら実施例により本発明が限定されるものでない。
(実施例1)WC:72質量%、TiC:8質量%、(Ta,Nb)C:11質量%、Co:9質量%の組成よりなるスローアウェイインサートCNMG120408の切削工具用超硬合金基体をCVD炉内にセットし、その表面に、熱化学蒸着法により、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiN膜を900℃でまず形成した。次いで、TiCl4ガスを0.5〜2.5vol%、CH3CNガスを0.5〜2.5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、圧力6.6kPa、成膜温度900℃の条件で、1μm厚さのTiCN膜を成膜した。さらに続いて、TiCl4ガス0.3〜2.5vol%、ZrCl4ガス0.3〜2.5vol%、CH3CNガス0.6〜5vol%、N2ガス25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力2.7k〜13.3kPa、成膜温度750〜950℃で、TiとZr、C、Nからなる(Ti,Zr)CN膜を13μm厚さ成膜した。
【0031】図1は実施例1の条件で作製した本発明品の代表的なX線回折パターンである。工具表面平坦部の皮膜部分を試料面にして、理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)により、X線源にCuKα1線(λ=0.15405nm)を用いて2θ−θ走査法により測定した。2θの測定範囲は10〜145度で、ノイズ(バックグランド)は装置に内蔵されたソフトにより除去した。図1のX線回折パターンから求めた、本発明品のZr含有膜(Ti,Zr)CNの各ピークの2θ値とX線回折強度および各2θ値から求めた格子定数を表2にまとめて示す。
【0032】
【表2】

【0033】表2より、(Ti,Zr)CNの結晶構造が立方晶であり格子定数が0.429nmであるとして計算した各ピークの2θ値と本発明品の実測値とが良く一致することがわかる。表2中に、各ピークの立方晶での面指数を記した。なお、(111)面の回折ピーク位置は2θが低角度のため測定誤差が大きく、(400)面は回折ピーク強度が弱く読み取りが困難であり、(511)面は回折ピーク強度が低く、ピーク幅も広いため、2θ値の読み取りが困難である。このため、上記の格子定数の計算では、(111)面、(400)面、(511)面の値を用いずに計算した。図1と表2から、本発明品の、(Ti,Zr)CNのX線回折強度I(hkl)は(422)面が最も強く、次が(311)面、その次に(111)面の強度が強いことがわかる。
【0034】図2は、本発明の代表的な被覆工具の皮膜部の破断面を走査電子顕微鏡装置(S―4200)により撮影したものである。ジルコニウム含有膜が膜厚方向に細長い柱状の結晶粒から構成され、膜厚に比べて結晶粒径が小さく、膜表面の凹凸も小さくなっていることがわかる。
【0035】表3は、同様にして測定した、実施例1で作製した代表的な本発明品の(Ti,Zr)CNのX線回折最強度面と膜中のジルコニユム含有量と塩素量(質量%)をまとめて示したものである。表3中には、後述の、連続切削時の工具寿命も合わせて示した。
【0036】
【表3】

【0037】表3において、750〜950℃の範囲で成膜温度を高めるにつれてジルコニウム含有膜の(422)と(311)への配向が強くなり、膜中の塩素ガス量も減少した。特に、成膜温度が800〜900℃の範囲で(422)と(311)への配向が強く、膜中の塩素ガス量が1質量%以下であるジルコニウム含有膜を安定して成膜する事が出来た。また、ZrCl4ガス量を高めTiCl4やCH4CNガス量を下げるにつれて、ジルコニウム含有膜中のZr含有量が増加した。
【0038】膜中のジルコニユム含有量と塩素量とは、本発明品の膜断面を研摩し、(Ti,Zr)CN断面の研摩面中の5点に含まれるジルコニユム量と塩素量とを電子プローブマイクロアナライザー(EPMA、日本電子(株)製JXA−8900R)を用い、加速電圧15KV、試料電流0.2μAで分析した。
【0039】また、膜の残留応力を理学電気(株)製のX線回折装置(RU−200BH)と応力測定用ソフト(Manual No.MJ13026A01)を用いて、並傾法(X線の走査面と応力の測定方向面とが平行)とΨ一定法(θ−2θ連動スキャン)により測定した結果、表3中試料の膜の残留応力はいずれも+であり、引っ張り残留応力を有していることがわかった。
【0040】表3より、本発明品の(Ti,Zr)CNのX線回折強度最強面は(311)面または(422)面であることがわかる。
【0041】表3の「膜特性」欄から、本発明品の、ジルコニウム含有膜は、Zrが0.1〜90質量%、塩素量は0.1〜2.5質量%含有されていることがわかる。金属成分の内、ジルコニウム以外の大部分はTiであり、他には、WあるいはCoが数%以下検出されるだけであった。
【0042】表3の「連続切削寿命」欄に、本発明品の切削寿命特性の評価結果を示した。実施例1の条件で作製した発明品各3個を用いて、下記の条件で被削材を連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達した時間を測定し、3個の平均値を「連続切削寿命」とした。
被削材 FC250(HB230)
切削速度 300m/分送り 0.3mm/rev切り込み 1.0mm水溶性切削油使用【0043】表3より、本発明品は、いずれも連続切削寿命が25分以上と長く優れていることがわかる。また、ジルコニウム含有膜中のジルコニウム含有量が0.3〜50質量%(試料No.2〜19)の時、連続切削寿命が65分以上と長く優れた工具特性が得られ、1〜40質量%(試料No.4〜17)の時は連続切削寿命が75分以上と更に長くなり更に優れた工具特性が得られ、5〜30質量%(試料No.5〜15)では90分以上と最も長くなっており最も優れた工具特性が得られることがわかる。また、試料No.7〜12より、ジルコニウム含有膜中の塩素量が0.1〜2質量%の時に連続切削寿命が95分以上と長くなり、塩素量が1質量%以下の時には、連続切削寿命が100分以上と更に長くなり、切削耐久特性が更に優れていることがわかる。
【0044】(比較例1)ジルコニウム含有膜におけるX線回折ピーク最強度面の相違による切削耐久特性への影響を明らかにするために、本発明品と同一の組成と形状よりなる切削工具用超硬合金基板をCVD炉内にセットし、その表面に、実施例1と同一の条件でTiN膜を形成した。さらに続いて、TiCl4ガスを0.2vol%、ZrCl4ガスを0.2vol%、CH3CNガスを0.4vol%、N2ガスを45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力2.7kPa、成膜温度790℃で、TiとZr、C、Nからなる(Ti,Zr)CN膜を14〜18μm厚さ成膜することにより、比較品を作製した。この場合、TiN膜と(Ti,Zr)CN膜との間にTiCN膜は成膜しなかった。
【0045】作製した比較例1の(Ti,Zr)CN膜の代表的なX線回折測定結果を図3に示す。図3に示すように、比較例1のX線回折強度は、いずれも(220)面が最強であった。
【0046】図4は、比較例1の皮膜部の破断面をSEMにより撮影したものである。ジルコニウム含有膜の膜厚が厚くなるにつれて、急激に結晶粒が粗大化しており、膜表面の凹凸も大きくなっていることがわかる。
【0047】比較例1の条件で作製した切削工具各3個を用いて実施例1と同一の条件で切削耐久特性を評価した結果、切削中に、膜中にクラックが発生するとともに結晶粒の脱落等により急激に摩耗が進んだ。その結果、10分で工具寿命に達し、本発明品よりも切削耐久特性が劣ることがわかった。
【0048】(実施例2)WC:72質量%、TiC:8質量%、(Ta,Nb)C:11質量%、Co:9質量%の組成よりなるスローアウェイインサートCNMG120408の切削工具用超硬合金基板をCVD炉内にセットし、その表面に、熱化学蒸着法により、H2キャリヤーガスとTiCl4ガスとN2ガスとを原料ガスに用い0.3μm厚さのTiN膜を900℃でまず形成した。次いで、TiCl4ガスを0.5〜2.5vol%、CH3CNガスを0.5〜2.5vol%、N2ガスを25〜45vol%、COガス0.5〜10vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、圧力6.6kPa、温度850℃の条件で、1μm厚さのTiCNO膜を成膜した。さらに続いて、750〜950℃でTiCl4ガスを0.3〜2.5vol%、ZrCl4ガスを0.3〜2.5vol%、CH3CNガスを0.6〜5vol%、N2ガスを25〜45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力2.7k〜13.3kPa、成膜温度750〜950℃で、TiとZr、C、Nからなる(Ti,Zr)CN膜を6μm厚さ成膜した。そして、トータル2,200ml/分だけのTiCl4ガス、CH4ガス、H2キャリヤーガスを流して、温度950〜1020℃でチタンの炭化物膜を15分間成膜した後、そのまま連続して本構成ガスにさらに2.2〜550ml/分のCO2とCOの混合ガスを追加して15分間成膜することによりチタンの炭酸化物膜を作製した。続いてAlCl3ガスとH2ガス2l/分とCO2とCOの混合ガス500ml/分とをCVD炉内に流し、1010〜1020℃で120分間反応させることにより酸化アルミニウム膜を成膜した。この酸化アルミニウムの表面に、更に、H2キャリヤーガスとZrCl4ガスとN2ガスとにより0.5μm厚さのZrN膜を1000℃で成膜することにより、本発明品を作製した。
【0049】本発明品の(Ti,Zr)CN膜のX線回折強度を実施例1と同じ方法で測定した結果、いずれも最強度面は(422)面または(311)面であった。なお、ピークの同定は、表1に示したピーク位置を中心にして、その前後のWCのピーク(JCPDSファイルNo.25−1047)、TiCのピーク(同No.32−1383)、TiNのピーク(同No.38−1420)、κ型酸化アルミニウムのピーク(同No.4−878)、α型酸化アルミニウム(同No.10−173)のピーク等との位置関係も考慮して決定した。
【0050】(比較例2)ジルコニウム含有膜におけるX線回折ピーク最強度面の相違による切削耐久特性への影響を明らかにするために、本発明品と同一の組成と形状よりなる切削工具用超硬合金基板をCVD炉内にセットし、その表面に、実施例2と同一の条件でTiN膜を形成した。続いて、TiCl4ガスを0.2vol%、ZrCl4ガスを0.2vol%、CH3CNガスを0.4vol%、N2ガスを45vol%、残H2キャリヤーガスで構成された原料ガスを毎分5500mlだけCVD炉内に流し、成膜圧力2.7kPa、成膜温度790℃で、TiとZr、C、Nからなる(Ti,Zr)CN膜を7μm厚さ成膜した。TiN膜と(Ti,Zr)CN膜との間にTiCNやTiCNO膜は成膜しなかった。その後更に、実施例2と同じ条件でチタンの炭化物および炭酸化物からなる膜、酸化アルミニウム膜、ZrN膜を成膜することにより、比較品を作製した。
【0051】作製した比較例の(Ti,Zr)CN膜のX線回折強度は、いずれも(220)面が最強であった。
【0052】実施例2の本発明品と比較例2の従来品の切削寿命特性は、切削工具各3個を用いて、下記の条件で被削材を連続切削し、平均逃げ面摩耗量が0.4mm、クレーター摩耗が0.1mmのどちらかに達する時間を測定し、これらの平均値を連続切削寿命時間とした。
被削材 S53C(HS35)
切削速度 250m/min送り 0.2mm/rev切り込み 1.5mm水溶性切削油使用【0053】切削テストの結果、比較例2の比較品は、切削中に膜中にクラックが発生するとともに結晶粒の脱落等により急激に摩耗が進み、20分以内で切削寿命に達したのに対して、実施例2で作製した本発明はいずれも30分以上切削でき、優れた切削耐久特性を示すことが判明した。
【0054】
【発明の効果】上述のように、本発明によれば、高温での膜硬度が高く、しかも、膜厚が厚くなるに連れても膜表面付近の結晶粒の幅が粗大化せず、膜表面に局所的な突起が形成され難いジルコニウム含有膜が形成されており、良好な耐摩耗性と靱性を有しており、優れた切削耐久特性を示すジルコニウム含有膜被覆工具を実現することができる。




 

 


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