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発明の名称 損耗センサ付きスローアウェイチップ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−121310(P2001−121310A)
公開日 平成13年5月8日(2001.5.8)
出願番号 特願平11−307623
出願日 平成11年10月28日(1999.10.28)
代理人 【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作 (外2名)
【テーマコード(参考)】
3C029
3C046
【Fターム(参考)】
3C029 DD08 
3C046 BB01 EE09
発明者 片岡 英明
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】略平板状の母材を有し、母材の一方表面にすくい面、すくい面と背中合わせの他方表面に着座面、およびすくい面と着座面とに交差する側面に逃げ面が形成されていて、すくい面と逃げ面との交差稜によって切刃稜が形成されているスローアウェイチップにおいて、前記逃げ面には、切刃稜に沿って延びる導電性膜のセンサラインが、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられ、前記着座面には、所定の回路と電気的に接続可能な対をなす2つの接触領域が、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられ、前記2つの接触領域とセンサラインの一端および他端とをそれぞれ接続する2本の接続ラインが、母材表面に、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられていることを特徴とする、損耗センサ付きスローアウェイチップ。
【請求項2】前記センサラインの切刃稜から遠い側の側辺は、切刃稜から逃げ面の摩耗に関連する所定距離離れて切刃稜と平行に延びていることを特徴とする、請求項1記載の損耗センサ付きスローアウェイチップ。
【請求項3】前記所定距離は、逃げ面の摩耗による寿命に等しくされていることを特徴とする、請求項2記載の損耗センサ付きスローアウェイチップ。
【請求項4】前記母材は、絶縁物で形成されており、母材のほぼ表面全体は導電性膜で覆われていて、前記センサライン、接続ラインおよび接触領域は、表面の導電性膜が電気的に切り離されることによって形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の損耗センサ付きスローアウェイチップ。
【請求項5】前記母材は、導電物で形成されており、母材のほぼ表面全体は非導電性膜で覆われ、さらにその上に導電性膜が形成されていて、前記センサライン、接続ラインおよび接触領域は、表面の導電性膜が電気的に切り離されることによって形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の損耗センサ付きスローアウェイチップ。
【請求項6】前記センサライン、接続ラインおよび接触領域を母材表面の導電性膜から電気的に切り離す加工は、レーザ加工により行われていることを特徴とする請求項4または5記載の損耗センサ付きスローアウェイチップ。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、切削加工に使用するスローアウェイチップに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ホルダ等に装着され、切削刃として機能するスローアウェイチップが公知である。スローアウェイチップは、刃先が摩耗したときに再研磨せずに取り換える使い捨てのチップである。スローアウェイチップは、通常は、四角形や三角形を基本とする略平板状の母材の各コーナ部分に切刃稜が形成されている。そしていずれかのコーナ部分の切刃稜が摩耗すると、他のコーナ部分の切刃稜を使用する。そしてすべてのコーナ部分の切刃稜が摩耗したときに取り換えられる。
【0003】ところで、スローアウェイチップの切刃稜がどの程度摩耗したかを調べることは、容易なことではない。特に、切削加工中に、切削加工を中断することなく、切刃稜の摩耗量を検出することは作業環境上大変難しい。従来の切刃稜の摩耗量検知方法としては、(1)切削加工を中断し、スローアウェイチップをホルダ等から取り外し、工具顕微鏡等で切刃稜を観察するというやり方、(2)切刃稜の摩耗に付随して起こる現象、たとえば切削力の低下や振動の増加、異音の発生等を、工作機械上の加工部近傍に設置したセンサで検出し、その検出信号に基づいて切刃稜の摩耗量を推定するやり方、等があった。
【0004】しかしながら、上記(1)のやり方は、切削加工を中断して行わなければならず、しかも切刃稜の摩耗量を定量的に検出できず、精度が良くないという課題があった。また、上記(2)のやり方は、複雑な検出装置を必要とし、しかも、摩耗量の検出感度が悪く、信頼性に欠けるという課題があった。
【0005】これら課題を解決する提案が、実開平3−120323号公報に記載されている。この公報には、スローアウェイチップの逃げ面に、切刃稜に沿って導電膜でセンサラインを設けることが開示されている。センサラインの幅は、摩耗許容幅に対応させることも開示されている。従って、この公報に開示のスローアウェイチップによれば、切刃稜の摩耗に伴いセンサラインも摩耗し、センサラインが途切れたときに切刃稜が寿命に達したと判別することができる。
【0006】また、特開平9−38846号公報には、スローアウェイチップではない通常の切削工具において、その逃げ面に薄膜回路を設け、逃げ面の摩耗に伴って薄膜回路が摩耗することに伴い電気抵抗が変化することを検知して、切削工具の寿命を自動的に判定する方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】逃げ面に切刃稜に沿って導電性膜のセンサラインを形成し、そのラインの抵抗値の変化を検出するというやり方は、切刃稜の摩耗を検知するやり方として好ましい。ところが、このやり方をスローアウェイチップに採用しようとした場合、切刃稜に沿ってセンサラインを設けても、そのセンサラインを外部の検知回路等に接続するのが実際上困難であるという課題に遭遇する。
【0008】より具体的に説明すると、スローアウェイチップは前述したように使い捨てのチップであり、その大きさは1cm3 にも満たない小さなものである。当該チップは、切削液(水や油)および切り屑に晒されながら切削加工を行う。このような環境下で、小さなスローアウェイチップに形成されたセンサラインを外部の検知回路等に支障なく接続するという技術は実現されていなかった。
【0009】本願は、かかる課題を解決し、実用的な実装を行うことのできる損耗センサ付きスローアウェイチップを提供するものである。本願発明の主たる目的は、ホルダ等に装着された際に、スローアウェイチップに形成されたセンサラインと外部回路との電気的接続が確実に行え、しかも切削加工に支障なく接続を達成することのできる損耗センサ付きスローアウェイチップを提供することである。
【0010】この出願の他の目的は、スローアウェイチップに備えられたセンサラインと外部回路との接続部分を保護することのできるスローアウェイチップを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段および発明の効果】請求項1記載の発明は、略平板状の母材を有し、母材の一方表面にすくい面、すくい面と背中合わせの他方表面に着座面、およびすくい面と着座面とに交差する側面に逃げ面が形成されていて、すくい面と逃げ面との交差稜によって切刃稜が形成されているスローアウェイチップにおいて、前記逃げ面には、切刃稜に沿って延びる導電性膜のセンサラインが、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられ、前記着座面には、所定の回路と電気的に接続可能な対をなす2つの接触領域が、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられ、前記2つの接触領域とセンサラインの一端および他端とをそれぞれ接続する2本の接続ラインが、母材表面に、母材に対して電気的に絶縁状態で設けられていることを特徴とする、損耗センサ付きスローアウェイチップである。
【0012】請求項2記載の発明は、前記センサラインの切刃稜から遠い側の側辺は、切刃稜から逃げ面の摩耗に関連する所定距離離れて切刃稜と平行に延びていることを特徴とする、請求項1記載のセンサ付き損耗スローアウェイチップである。請求項3記載の発明は、前記所定距離は、逃げ面の摩耗による寿命に等しくされていることを特徴とする、請求項2記載の損耗センサ付きスローアウェイチップである。
【0013】請求項4記載の発明は、前記母材は、絶縁物で形成されており、母材のほぼ表面全体は導電性膜で覆われていて、前記センサライン、接続ラインおよび接触領域は、表面の導電性膜が電気的に切り離されることによって形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の損耗センサ付きスローアウェイチップである。
【0014】請求項5記載の発明は、前記母材は、導電物で形成されており、母材のほぼ表面全体は非導電性膜で覆われ、さらにその上に導電性膜が形成されていて、前記センサライン、接続ラインおよび接触領域は、表面の導電性膜が電気的に切り離されることによって形成されていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の損耗センサ付きスローアウェイチップである。
【0015】請求項6記載の発明は、前記センサライン、接続ラインおよび接触領域を母材表面の導電性膜から電気的に切り離す加工は、レーザ加工により行われていることを特徴とする請求項4または5記載の損耗センサ付きスローアウェイチップである。請求項1の構成によれば、スローアウェイチップに設けられたセンサラインは、当該スローアウェイチップが所定のホルダに装着された際、ホルダのチップ座に設けられたプローブと接続させることができる。プローブは、ホルダ内部を経由して外部検出回路や判別回路と接続されている。
【0016】ホルダのチップ座は、スローアウェイチップの着座面が当接または密接される領域である。チップ座に当接されたスローアウェイチップの着座面は、外部に露出しておらず、切削液(水や油)や切り屑が直接当たることがない。従って、スローアウェイチップの着座面に外部回路と電気的に接続可能な接触領域を設けると、接触領域とチップ座に備えられたプローブ先端との接触状態を、切削液や切り屑から保護することができる。
【0017】また、スローアウェイチップの接触領域と電気的に接続されるプローブ等をチップ座に設けると、それらをホルダ内部に配置することができる。従って、ホルダに設けられた電気的接続部もホルダから露出しておらず、切り屑や切削液により影響を受けることがない。よってスローアウェイチップのセンサラインを外部回路と良好に接続するための実装構造を実現することができる。そしてその結果、センサラインを利用してスローアウェイチップの寿命等を正確に検知することができる。
【0018】特に、請求項2のようにセンサラインを構成すれば、切刃稜の摩耗とセンサラインの導通の途切れとが関連づけられているから、センサラインの導通が途切れたとき、切刃稜が所定の摩耗状態になったと判別することができる。また、請求項3では、センサラインの導通が途切れたとき、切刃稜が寿命に達したと判定することができる。
【0019】センサライン、接触領域および接続ラインを、母材に対して電気的に絶縁状態で設けるやり方は、母材が絶縁物の場合は、請求項4記載のように形成すればよい。また、母材が導電物の場合は、請求項5記載のように母材表面を一旦非導電性膜で覆った後、その上に導電膜を形成するというやり方を用いればよい。
【0020】センサライン、接続ラインおよび接触領域の形成は、請求項6記載のように、レーザ加工を用いるのが好ましい。なぜなら、レーザ加工によれば、加工精度が良く、かつ回路変更の自由度が高いからである。この発明によれば、スローアウェイチップに形成されたセンサラインと外部回路との電気的接続が確実に行え、しかも切削加工に支障のない接続を行うことのできる、実用的な実装が可能な損耗付きスローアウェイチップを得ることができる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下には、図面を参照して、この発明の具体的な実施形態について説明をする。図1Aは、この発明の一実施形態にかかるスローアウェイチップ1を手前上方から見た斜視図であり、図1Bはそのスローアウェイチップ1を手前下方から見た斜視図である。スローアウェイチップ1は、略平板状(略直方体状)の母材2を有する。母材2は、本来上下の区別はされないが、説明の便宜上、一方を上面、他方を下面として以下に説明する。
【0022】母材2の上面にはすくい面5が形成され、母材2の下面は着座面6とされている。また、母材2の4つの側面には、それぞれ逃げ面8が形成されている。そしてすくい面5と各逃げ面8との交差稜によって切刃稜9が形成されている。さらに、すくい面5および隣接する2つの逃げ面8の交差部分は切削に使用可能なコーナ部10を形成している。
【0023】母材2の中央には、上面から下面に貫通するクランプ孔11が形成されている。スローアウェイチップ1は所定のホルダ等のチップポケットに位置決めされ、クランプ孔11にクランプねじが螺合されることによりそのホルダ等に装着される。装着状態では、たとえば図1Aの手前上側のコーナ部10が切削に用いられる。また、クランプねじを緩めて、クランプ孔11を中心にスローアウェイチップ1を90°回転させると、別のコーナ部10を切削に使用できる。このようにスローアウェイチップ1を90°ずつ回転させることにより、その上面側の4つのコーナ部10を順次切削に使用することができる。
【0024】さらに、スローアウェイチップ1の上下を反転させてホルダ等に装着することにより、図1A,1Bにおいて下面側の4つのコーナ部を順に切削に使用することができる。下面側コーナ部が使用される場合は、上面が着座面とされ、下面がすくい面として機能する。このようにスローアウェイチップ1は、直方体状の母材2の8つのコーナ部分10がそれぞれ切削に使用可能である。
【0025】このため、8つのコーナ部10には、それぞれ、切刃稜9に沿って延びる導電性膜のセンサライン12が設けられている。センサライン12は、逃げ面8に設けられている。具体的には、コーナ部10を形成する隣接する2つの逃げ面8上に、コーナ部10を取り巻くように切刃稜9に沿って延びている。センサライン12は、その上辺が切刃稜9に接しており、切刃稜9に沿って延びる幅Wの導電性膜のラインである。センサライン12は、母材2に対して電気的に絶縁状態で設けられている。
【0026】センサライン12の幅Wは、コーナ部10の寿命基準量(逃げ面8の摩耗限界)に一致されている。通常、この種のスローアウェイチップ1のコーナ部10の寿命基準量は、0.05〜0.7mmの範囲内であるから、センサライン12の幅Wも、かかる寿命基準量と等しい値にされている。たとえば、スローアウェイチップ1の逃げ面8の摩耗が0.2mmで寿命となる場合には、センサライン12の幅Wも0.2mmとして作成される。コーナ部10によって切削加工が行われると、加工時間の増加とともに切刃稜9および逃げ面8の摩耗が進行する。逃げ面8の摩耗が進行すると、それに応じてセンサライン12も摩耗する。そして逃げ面8の摩耗幅が寿命基準量以上に達すると、この寿命基準量に一致された幅Wを有するセンサライン12は摩耗により断線する。センサライン12の両端の抵抗値は、後述するように外部回路により測定されているから、センサライン12の抵抗値が無限大になった時点をもって、コーナ部10の切刃稜9が寿命に達したと判定することができる。
【0027】図1Bに示すように、着座面6には対をなす2つの接触領域13,14が設けられている。2つの接触領域13,14は、導電性膜により形成されており、母材2に対して絶縁状態で設けられている。接触領域13,14は、たとえばホルダの外部に備えられる抵抗値の検知回路と電気的に接続可能な領域である。後述するようにスローアウェイチップ1がホルダに装着されたとき、ホルダのチップ座に設けられた検知回路のプローブが、この接触領域13,14に電気的に接続される。接触領域13,14は、検知回路のプローブ等が接触し易いよう、できる限り大きな領域とするのが好ましい。
【0028】母材2の逃げ面8から着座面6にわたって、導電性膜により、母材2と絶縁状態で、接続ライン15,16が設けられている。接続ライン15は、センサライン12の一端121と一方の接触領域13とを電気的に接続するものであり、接続ライン16は、センサライン12の他端122と他方の接触領域14とを電気的に接続するものである。接続ライン15,16は、センサライン12の幅Wに比べて十分に太いラインとされ、接続ライン15,16の電気抵抗値が、センサライン12の電気抵抗値に比べて十分大きくされている。よって、センサラインの電気抵抗値の変化の検出には、接続ライン15,16は影響を及ぼさない。
【0029】センサライン12の他端122に接続された接続ライン16は、その一部に折り返しライン17を有している。折り返しライン17は、折り返し部18でセンサライン12の他端122とつながっている。折り返しライン17は、センサライン12と所定間隔D隔てて、センサライン12と平行に延びている。接続ライン16の一部を折り返しライン17とすることにより、接続ライン15と接続ライン16とを、所定の間隔で平行に逃げ面8上に設けることができ、接続ライン15,16を面積効率良く配置できるという利点がある。
【0030】センサライン12と折り返しライン17との間隔Dは、0.05mm以上の幅にされている。好ましくは、幅Dは許容される範囲内で広い方が良い。というのは、コーナ部10で切削を行う際、そこに含まれる切刃稜9により被加工物が削られる。削られた切り屑はすくい面5から逃げ面8方向へと、たとえばカールしながら発生する。発生した切り屑はセンサライン12と折り返しライン17との間に付着して、両ライン間を電気的に短絡し得る可能性がある。
【0031】そこで、センサライン12と折り返しライン17の間隔Dを広くしておくことによって、両ライン15,16の間が切り屑等の付着によって電気的に短絡することを防止することができる。逃げ面8に形成された2本の接続ライン15,16は、センサライン12に対して(換言すれば切刃稜9に対して)、直交方向ではなく、所定の傾斜角度で交差する方向に延びる、傾斜ラインとされている。この理由は、下面である着座面6に設けられた接触領域13,14の配置位置と、上面に設けられた接触領域13,14の配置位置とを全く同じ配置にするためである。
【0032】より具体的に説明すると、図1Aの上面側に位置する4つのコーナ部10は、スローアウェイチップ1を90°ずつ回転させることにより、順次切削に使用することができる。スローアウェイチップ1を90°ずつ回転させると、図1Bに示す4対の接触領域13,14も、順に90°ずつ回転する。そして切削に使用されるコーナ部10のセンサライン12に接続された接触領域13,14が、外部回路のプローブに接続される。このため、着座面6に設けられた4対の接触領域13,14は、着座面6の中心に対して90°の回転対象の位置関係になっている。
【0033】また、スローアウェイチップ1は上下逆にして使用することができるから、図1Aに示す上面に設けられた4対の接触領域13,14も、上面の中心に対して90°の回転対象の位置関係になっている。このように上面に設けられた接触領域13,14と、下面に設けられた接触領域13,14とを全く同じ配置にするために、接続ライン15,16を逃げ面8に斜めに設ける必要がある。
【0034】なお、いわゆるポジタイプと呼ばれる片面(たとえば上面)のコーナ部だけを切削に使用するスローアウェイチップの場合等は、接続ライン15,16を逃げ面8に斜めに設けなくてもよいこともある。図2は、スローアウェイチップ1の着座面6に設けられた4対の接触領域13,14の変形例を示す平面図である。着座面6には4対の接触領域13,14が設けられていて、それぞれ、対応するコーナ部が切削に使用される際に外部回路のプローブに接触される。
【0035】ところで、接触領域13,14が外部回路と接続されてセンサライン12の電気抵抗値が測定される際には、一方の接触領域13には外部回路から所定の電圧が印加され、他方の接触領域14は外部回路のアース電位に接続される。つまり、いずれの対の接触領域13,14が使用される場合であっても、一方の接触領域はアース電位に接続されるわけである。従って、たとえば接触領域14をアース電位として用いることにし、4対の接触領域の各一方の接触領域14を電気的に共通に接続した構成にしてもよい。かかる構成例が、図2に示されている。
【0036】このような接続領域の形状は、着座面6全体に導電性膜が形成されていて、その膜をレーザで加工して接触領域13,14や接続ライン15,16等を形成する際に、レーザ加工時間を短縮できるという利点がある。レーザ加工により除去すべき導電性膜の面積が少なくてすむからである。図3は、センサラインの他の実施形態を示す斜視図である。図1で説明したセンサライン12は、その上辺が切刃稜9に接しており、コーナ部10を取り囲むように、幅Wで切刃稜9に平行に延びていた。これに対し、図3のセンサライン123は、幅がX(W>X)で、センサライン12よりも幅の細いラインになっている。センサライン123も、センサライン12と同様、導電性膜で、母材2に絶縁状態で形成されている。このセンサライン123は、その下辺、すなわち切刃稜9から遠い側の側辺124が、切刃稜9から距離Wになるように、切刃稜9に平行に延びている。
【0037】この距離Wは、図1で説明したセンサライン12の幅Wと同様、逃げ面8の寿命基準量に一致されている。従って、切刃稜9の使用時間の増加に伴い、逃げ面8の摩耗が切刃稜9側から進行し、やがては摩耗がセンサライン123およびその下辺124まで達する。するとセンサライン123が断線状態となる。このようにセンサライン123は、切刃稜9から遠い側の側辺(下辺)124が切刃稜9から所定距離W離れた構成であってもよい。
【0038】図4は、センサラインのさらに他の実施形態を示す斜視図である。図4に示すセンサライン125は、平行に延びる複数本、たとえば3本のライン126,127,128によって構成されている。そして切刃稜9から一番離れたライン128の下辺までの距離がWとされている。このWは、図1で説明したセンサライン12の幅Wと等しい値である。
【0039】このようにセンサライン125を平行に延びる複数本のライン126,127,128で構成すると、逃げ面8の摩耗の進行具合に応じて、切刃稜9から近いセンサラインから順次摩耗による断線が生じる。よって、切削に使用しているコーナ部10の切刃稜9がどの程度摩耗したかを、段階的に検出することが可能になる。
【0040】図1、図3および図4では、切刃稜9からセンサラインの下辺までの距離Wが、いずれも、コーナ部10の寿命基準量(逃げ面8の摩耗限界)に一致されている場合を説明した。しかし、この寸法Wは、逃げ面8の摩耗限界とせず、逃げ面8の摩耗に関連する寸法であってもよい。たとえば、予備切削(粗削り)や標準切削の場合には、逃げ面8の摩耗限界が比較的大きいが、仕上げ切削では、逃げ面8がある程度摩耗したときに、スローアウェイチップを交換する必要がある。このような状況に則して、上記寸法Wを、スローアウェイチップとしては使用できるが、仕上げ切削には使用できない程度の摩耗を検知できる寸法としてもよい。
【0041】図5は、図1A,1Bに示すスローアウェイチップ1を、ホルダに装着する様子を示す図解的な斜視図である。ホルダ20の先端にはチップ装着用のポケット21が形成されている。ポケット21の底面はチップ座22となっている。またポケット21の側面はチップの側面に当接し、チップを拘束するための拘束面23となっている。スローアウェイチップ1はこのポケット21に納められ、着座面6がチップ座22に当接される。またその側面が拘束面23に当接される。そして上方からクランプねじ24がスローアウェイチップ1のクランプ孔11に差し込まれて、その先端がチップ座22の中央に形成されたねじ孔25に螺合される。これによりスローアウェイチップ1はホルダ20に装着される。
【0042】チップ座22には、装着されたスローアウェイチップ1の切削に使用するコーナ部10に設けられたセンサライン12と接続された接触領域13,14に対向する位置に、一対のプローブ26,27が突設されている。プローブ26,27は上方へ弾力付勢されていて、チップ座22からたとえば数mm突出している。スローアウェイチップ1がポケット21に装着されると、スローアウェイチップ1の着座面6によってプローブ26,27は押し下げられ、その上端はチップ座22と面一となる。このときプローブ26,27の上端はスローアウェイチップ1の着座面6に設けられた接触領域13,14とそれぞれ電気的に接触した状態となる。
【0043】プローブ26,27には、一点鎖線で示すように、ホルダ20内に敷設されたリード線28がつながれていて、このリード線28はオーム計等の抵抗値の検知回路29に接続されている。よって、検知回路29により、ポケット21に装着されたスローアウェイチップ1の切削に使用するコーナ部10に設けられたセンサライン12の抵抗値を測定することができる。
【0044】スローアウェイチップ1がポケット21に装着された状態では、スローアウェイチップ1の着座面6は、そのほぼ全面がチップ座22に密着している。このため、切削時に、ホルダ20の先端部に対して切削液(水や油)がかけられたり、スローアウェイチップ1で削られた切り屑がスローアウェイチップ1の周囲に飛散しても、それら切削液や切り屑は密着したチップ座22と着座面6との間に進入することがない。つまりスローアウェイチップ1の着座面6およびチップ座22は切削液や切り屑から保護された状態である。よって、チップ座22に設けられたプローブ26,27と着座面6に設けられた接触領域13,14とは、切削中も、良好に電気的接続が維持された状態となる。
【0045】さらに、プローブ26,26およびそれに接続されたリード線28をホルダ20内に設けることができる。図5に示すホルダ20は、一例を示しただけであり、この実施形態にかかるスローアウェイチップ1が装着可能なホルダとしては、たとえば本願出願人の先願(特願平11−277548号)を用いてもよい。
【0046】図6A,B,C,D,Eに、この発明を適用可能なスローアウェイチップの各種形状の例を、それぞれ、平面図および正面図(正面側の側面図)により示す。図6Aは図1で説明した形状であり、母材の平面形状が略正方形のスローアウェイチップを示している。図6Bは、母材の平面形状が正三角形のスローアウェイチップであり、このチップは上面および下面各3つのコーナ部分を切削に使用できる。つまり合計6つのコーナ部があり、それぞれにセンサラインが設けられ、着座面には各センサラインに対応した接触領域が設けられている。
【0047】図6Cは母材の平面形状が菱形のチップを示す。図6Cに示すスローアウェイチップでは、対角方向に位置する鋭角のコーナ部4つが切削に使用される。図6Dは、図6Bと同様、平面形状が正三角形の母材で構成されたスローアウェイチップである。図6Dのスローアウェイチップは、図4で説明したのと同様、センサラインが複数のセンサラインを有するものである。
【0048】図6Eは、図6A〜Dとは異なり、いわゆるポジタイプと呼ばれる片面だけが切削に使用されるスローアウェイチップである。このチップは、上面がすくい面、下面が着座面となっていて、それを上下逆にして使うことはできない。上面の3つのコーナ部が切削に利用される。このため3つのコーナ部には、それぞれセンサラインが設けられている。また下面の着座面には接触領域が設けられ、側面の逃げ面には接続ラインが設けられている。
【0049】以上説明した形状の他、たとえば平面形状が丸形や楕円形のスローアウェイチップ等にもこの発明を適用することが可能である。次に、この発明にかかるスローアウェイチップの母材ならびにセンサライン、接触領域および接続ライン等の材質や製造方法につき説明をする。
(1)母材の種類スローアウェイチップ母材の材料としては、アルミナ質焼結体、窒化珪素質焼結体、サーメット、超硬合金、立方晶窒化ホウ素質焼結体(cBN/cubic Boron Nitride)、ダイヤモンド焼結体(PCD/Polycrystalline Diamond) 等が使用できる。
【0050】(2)母材組成および製法以下、この発明に好適に使用できる母材組成およびその製造方法について説明する。
■アルミナ質焼結体アルミナ質焼結体としては、ZrO2 を2ないし30重量%、Fe,Ni,Coの酸化物のうち少なくとも1種を0.01ないし5重量%、残部がAl2 3および不可避不純物からなるアルミナ質焼結体が使用できる。Al2 3 −ZrO2 系に第3成分としてFe, Ni, Coの酸化物のうち少なくとも1種を特定の範囲で含有させ、これを熱間静水圧焼成によって高緻密化することにより、破壊靭性を顕著に向上させることができる。
【0051】このアルミナ質焼結体の製造方法は、ZrO2 を10ないし20重量%、Fe,Ni,Coの酸化物のうち少なくとも1種を0.2ないし2重量%、残部がAl2 3 と不可避不純物からなる混合粉末を成形した後、該成形体を1400〜1500℃で焼成し、さらに1300〜1500℃の温度で熱間静水圧焼成して強度110kg/mm2 以上の焼結体となる。
【0052】第3成分としてのCo, Ni, Feの酸化物の少なくとも1種を0.2ないし2重量%の割合で含有させる。含有量が0.2重量%を下回ると破壊靭性の向上が得られず、2重量%を超えると抗折強度が低下する。また、焼結体中のZrO2 の量は、10ないし20重量%、特に15ないし20重量%の割合で含有されることが望ましい。ZrO2 の量が10重量%を下回るとZrO2 添加によるクラック先端のエネルギ吸収が少なく、靭性の改善が少ない。一方、20重量%を超えると、焼結体中のZrO2 結晶相のうち単斜晶ZrO2 (m−ZrO2 )の量が多くなり、クラック先端でのエネルギ吸収に関与するZrO2 が実質的に減少し、破壊靭性が低下する。
【0053】さらにまた、焼結体中のZrO2 結晶相は、ZrO2 全量のうち、単斜晶ZrO2 (m−ZrO2 )が50%以下、特に30%以下であることが好ましい。50%を超えると破壊靭性が著しく低下する。その他の結晶相は、正方晶ZrO2(t−ZrO2 )あるいは立方晶ZrO2 (c−ZrO2 )であって、これらを50%以上含有することによって、t−ZrO2 →m−ZrO2 あるいはc−ZrO2 →t−ZrO2 →m−ZrO2 の相転移により、クラック先端のエネルギが有効的に吸収される。
【0054】アルミナ質焼結体中における各結晶の粒径はAl2 3 結晶が1μm以下、ZrO2 結晶が1μm以下、特に0.5 μm以下が良く、これらの数値より大きくなるといずれも抗折強度が低下する。このアルミナ質焼結体の製造方法としては、平均粒子径1μm以下のAl2 3 に対して、ZrO2 を10ないし20重量%、Co、Ni、Feの酸化物もしくは焼成により酸化物に変わり得る化合物の酸化物換算で0.2 ないし2重量%の割合で秤量混合し、これらを分散剤および蒸留水等の媒質とともに混合粉砕する。粉砕後、公知の成形手段で成形した後、焼成する。
【0055】焼成方法としては、まず、大気中で常圧焼成、ホットプレスによって1400〜1500 ℃で焼成した後、さらに1300〜1500 ℃で熱間静水圧焼成する。
■窒化珪素質焼結体窒化珪素質焼結体としては、窒化珪素を85〜96モル%、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜5モル%、不純物的酸素をSiO2 換算で3〜10モル%の割合で含有し、アルミニウム化合物の含有量が酸化物(Al2 3 )換算で1重量%以下のものである。ここで、不純物的酸素とは、焼結体中の全酸素量から周期律表第3a族元素酸化物として混入する酸素を差し引いた残りの酸素であり、そのほとんどは窒化珪素原料粉末中の不純物酸素や添加した酸化珪素中の酸素である。
【0056】窒化珪素が85モル%より少なくあるいは周期律表第3a族元素の酸化物換算量が5モル%より多いと、焼結体の硬度が低下する。窒化珪素が96モル%より多くまた周期律表第3a族元素の酸化物換算量が1モル%より少ないと、緻密体が得られず焼結体の強度が低下する。一方、不純物的酸素の酸化珪素(SiO2)換算量が10モル%より多いと、靭性が低下して耐欠損性が低下する。また、不純物酸素量が3モル%より少ないと、緻密体が得られず、焼結体の強度が低下する。そして、アルミニウム化合物の量が1重量%より多いと、鋳鉄に対する耐反応性が劣化し高速即切削時の耐摩耗性が劣化する。
【0057】望ましい焼結体組成としては、窒化珪素が88〜95モル%、周期律表第3a族元素が酸化物換算で2〜5モル%、不純物的酸素が酸化珪素に換算して2〜8モル%の割合で含有するのがよい。また、アルミニウム化合物は酸化物換算量で0.5重量%以下、特に0.3重量%以下であることが望ましい。なお、周期律表第3a族元素としては、Y,Sc,Yb,Er,Dy,Ho,Lu等が挙げられ、これらの中でもEr,Yb,Luがよい。
【0058】また、窒化珪素質焼結体は、組織上、窒化珪素結晶相と、周期律表第3a族元素、珪素、窒素、酸素を含む粒界相により構成されている。このとき、窒化珪素結晶相の格子定数がa軸で7.606オングストローム以下、特に7.602オングストローム以下、c軸で2.910オングストローム以下、特に2.908オングストローム以下であることが重要である。これは、a軸が7.606オングストローム、c軸が2.910オングストロームよりそれぞれ大きいと、窒化珪素のイオン結合性が増して窒化珪素の結合力が低下し、切削中に被削材と容易に反応し、いわゆる拡散摩耗が大きくなって耐摩耗性が劣化するからである。なお、窒化珪素結晶相は、β型の針状結晶として存在し、その短径が0.1〜3μmで、平均アスペクト比(長径/短径)は2〜10の粒子である。
【0059】また、粒界相は、非晶質である場合もあるが、望ましくは、結晶化しているのがよい。結晶相としては、アパタイト、YAM、ワラストナイト、ダイシリケート、モノシリケートがよい。また窒化珪素質焼結体には、W,Mo,Ti,Ta,Nb,Vなどの周期律表第4a、5a、6a族元素金属や、それらの炭化物、窒化物、珪化物を適量添加したり、またはSiCなどは、分散粒子やウィスカ−として焼結体に適量添加し、複合材料として特性の改善を行うことも可能である。
【0060】窒化珪素質焼結体の製造方法としては、まず、原料粉末として窒化珪素粉末を主成分として用いる。窒化珪素粉末はそれ自体α−Si3 4 、β−Si3 4のいずれでも用いることができる。それらの粒径は0.4〜1.2μmが好ましい。次に、添加成分として、周期律表第3a族元素酸化物、酸化珪素粉末を用い、これらを適量秤量し、ボールミル等により混合粉砕する。これらは、焼結前の成形体において、周期律表第3a族元素酸化物が1〜5モル%、酸化珪素が3〜10モル%の割合となるように混合し、アルミニウム化合物は実質的には添加せず、不純物として成形体中に混入しても酸化物換算で1重量%以下となるように制御する。なお、酸化珪素は、窒化珪素粉末中の不純物酸素を酸化珪素換算した量が含まれる。従って、混合粉砕中のボールミル等からのアルミニウム成分の混入や酸化による酸素分も考慮して出発組成を決定する。
【0061】成形体は、混合粉末を、例えば、プレス成形、鋳込み成形、押出し成形、射出成形、冷間静水圧成形などによりスローアウェイチップ母材に成形することにより得られる。この得られた成形体を、例えば、ホットプレス方法、常圧焼成、窒素ガス圧力焼成法により焼成し、さらには、これらの焼成後に2000気圧もの高圧下で焼成する熱間静水圧焼成法(HIP)を施したり、成形体をガラス浴中に浸漬したり、ガラスシールを表面に形成して上記HIP処理を行い緻密化を図る。この時の焼成温度は、高温すぎると主相である窒化珪素結晶中へのアルミニウムの固溶が促進されたり、粒成長し強度が低下し、また製造装置上も高価となるため、1650〜2000℃、特に1700〜1950℃の窒素ガス含有非酸化性雰囲気で焼成するのがよい。
【0062】■サーメットサーメットとしては、Tiを炭化物、窒化物あるいは炭窒化物換算で50ないし80重量%、周期律表第6a族元素を炭化物換算で10ないし40重量%の割合で含有するとともに(窒素/炭素+窒素)で表される原子比が0.4ないし0.6の範囲内にある硬質相成分70ないし90重量%と、鉄族金属から成る結合相成分10ないし30重量%とから成る成形体を真空炉内に設置後、昇温し、鉄族金属による液相出現温度以上で1ないし30torrの圧力の窒素ガスを導入し、焼結最高温度到達後、該窒素ガス圧力を減圧して焼成することにより、焼肌面の最大表面粗さが3.5 μm以下、有孔度がA−1以下で、且つ表面から1000μmまでの表層部に内部よりも高靭性、高硬度の改質部が存在するTiCN基サーメットを得ることができる。
【0063】TiCN基サーメットは、硬質相成分として、Tiを炭化物、窒化物あるいは炭窒化物換算で50ないし80重量%、特に55ないし65重量%と、W,Mo等の周期率表第6a族元素を炭化物換算で10ないし40重量%、特に15ないし30重量%とを含有させる。このとき硬質相成分において、Tiの量が50重量%を下回ると耐摩耗性が低下し、80重量%を越えると焼結性が低下し好ましくない。また、第6a族元素は、粒成長抑制、結合相との濡れ性を向上させる効果を有するが、10重量%を下回ると上記効果が得られず、硬質相が粗大化し、硬度、強度が低下する。また、40重量%を越えるとη相等の不健全相が生じると共に焼結が困難となる。
【0064】また、硬質相成分としては上記の外、耐クレータ摩耗性向上を目的としてTa,Nbを、さらに耐塑性変形性向上を目的としてZr,V,Hf等を窒化物、炭化物、炭窒化物として5ないし40重量%の割合で含めることも可能である。しかし、40重量%を越えると耐摩耗性劣化、ポア、ボイドの発生が著しく増加する傾向にあり好ましくない。
【0065】一方、結合相はFe,CO,Ni等の鉄族金属を主体として成るもので、一部、硬質相形成成分が含まれる場合もある。焼結体全体としての硬質相成分は70ないし90重量%、結合相成分は10ないし30重量%の割合からなる。本発明の母材として用いるサーメットの大きな特徴は、硬質相成分中において(窒素/炭素+窒素)で表わされる原子比が0.4ないし0.6、特に0.4ないし0.5の範囲に設定される点にある。この原子比が0.4を下回ると靭性、耐摩耗性の向上が望めない。一方、0.6を越えると焼結体中にポア、ボイドが発生し、スローアウェイチップとしての信頼性が低下する。
【0066】また、このサーメットの特徴は、窒素量が前述したように多量であるにもかかわらず、内部にポア、ボイドが実質的に存在せず、焼結体の焼肌面が非常になめらかでその最大表面粗さが3.5μm以下であり、靭性、耐摩耗性、耐熱性の向上効果を長期にわたり維持することができ、スローアウェイチップとして長寿命化、高信頼性を図ることが可能となることである。しかも焼結後の焼結体に対し研摩工程等を行うことなく、製品化することも可能となる。
【0067】TiCN基サーメットの製造方法としては、組成としてTiを炭化物、窒化物あるいは炭窒化物換算で50ないし80重量%、周期律表第6a族元素を炭化物換算で10ないし40重量%の割合で含有するとともに、(窒素/炭素+窒素)で表わされる原子比が0.4ないし0.6の範囲内にある硬質相成分70ないし90重量%と、結合相10ないし30重量%とからなる成形体を作成する。
【0068】具体的には、原料粉末としてTiC,TiN,TiCN等を、また第6a族系としてはWC,Mo2C,MoC等を、あるいはこれらの複合炭化物、複合炭窒化物を用い、上記の組成となるように調合した後、公知の成形手段、例えばプレス成形、押出し成形、鋳込み成形、射出成形、冷間静水圧成形等で成形する。この時、前述したように、TA,Nb,Zr,V,Hf等の炭化物、窒化物、炭窒化物等を組合わせて用いることも当然可能である。なお、Ti系としてはTiCを用いると焼結性が低下し、部分的粒成長を起こす場合があるため、Ti(CN)あるいはTi(CN)とTiNとの組合せがより好ましい。
【0069】得られた成形体は真空炉内に設定し、焼成に移される。具体的には、0.5Torr以下の真空炉内で加熱し、所定の時期に1ないし30Torrの圧力の窒素ガスを導入する。この窒素ガスの導入によって成形体中に含まれるTiN等の窒化物の熱分解を抑制し、熱分解に伴うポア、ボイドの発生を防止するものである。焼成に際しては、この窒素ガス導入時期が特に重要となる。この理由は、通常昇温過程において鉄族金属の液相出現温度付近で緻密化が始まるが、この液相出現温度以上、特に対理論密度比が初期の成形体よりも5%以上緻密化した段階で導入させる。5%以上緻密化した段階では、成形体の表面には液相により被膜が形成される。この被膜形成後に窒素ガスを導入することにより、成形体中に存在する空隙に窒素ガスが残留し、結果的にポア、ボイドが形成されるのを防止するためである。
【0070】しかし、窒素ガス導入の時期が対理論密度比90%を越えた付近では、実質上、窒化物の分解抑制効果は得られず、焼結体表面に荒れが生じ易くなるため、90%以下の密度の段階で導入することが望ましい。窒素ガスは炉内の温度が焼結最高温度に達した後は、該窒素ガスの圧力を先に設定した圧力よりも減圧し、真空に戻すか、徐々に圧力を降下させながら焼成する。なぜなら、焼結最高温度到達後にさらに圧力を上げると、焼結体表面部に粗粒で金属をほとんど含有しない、脆い窒化層が生成され、焼肌面の荒れを生じるとともに、表面部の靭性を著しく低下させてしまうからである。
【0071】なお、窒素ガス圧力を1ないし30Torrに限定した理由は、1Torr未満では窒化物に対する分解抑制効果が得られず、30Torrを超えると焼結性が低下するとともに遊離炭素が析出することもあり、焼結体の靭性が低下するからである。このような製造方法によって、焼結体中のポア、ボイドを実質的に皆無にするとともに、表面状態をなめらかなものにすることができる。さらにこの製造方法によれば、前述したように焼結体の表面層に高硬度、高靭性の改質部が形成されるという特異的性質をもつ。
【0072】また、サーメットによって種々の形状のスローアウェイチップ母材を形成できるが、その形状の複雑化に伴って、焼結時の収縮速度を制御することが望ましい。この理由は、成形体の収縮曲線に差異があるため、成形体の形状の複雑化に伴い、最終焼結体の表面に微細なポアやクラックが生じる恐れがあるからである。このような現象を防止するためには、焼結時の収縮速度を緩やかにすることが必要である。そのため、窒素ガスを導入するに際し、予め、He,Ar等の不活性ガスを導入することによって、焼結性を阻害することなく、窒化物の分解を抑制し、収縮をなだらかに進行させることができる。この不活性ガスは、窒素ガス導入温度よりおよそ50〜200 ℃低い温度で導入する。その圧力は、1気圧以下であることが望ましい。
【0073】■超硬合金超硬合金は、硬質相と結合相で構成されている。硬質相は、炭化タングステン、または炭化タングステンの5〜15重量%を周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物で置換したものからなる。炭化タングステン以外の成分が配合される場合、硬質相は、WC相と複合炭化物固溶体相あるいは複合炭窒化固溶体相からなる。また結合相は、Co等の鉄族金属を主成分とするもので、Coは全量中に5〜15重量%の割合で含有される。
【0074】好適に使用される超硬合金は、上記の硬質相、結合相以外にコバルトタングステン炭化物からなる相を存在させるのがよい。このコバルトタングステン炭化物としては、Co3 3 C,Co6 6 C,Co2 4 C,Co3 9 4 の化合物が知られている。これらのコバルトタングステン炭化物のX線回折曲線における最大ピークは、Co3 3 Cでは(333)と(511)の合成ピーク、Co6 6 Cでは(333)と(511)の合成ピーク、Co2 4 Cでは(333)と(511)の合成ピーク、Co3 9 4 では(301)であるが、これらのコバルトタングステン炭化物のピークの内、最も強度の大きいピーク高さをI1、炭化タングステンの最大ピークであるWCの(001)のピーク高さをI2とした時、I1 /I2 で表されるピーク強度比が0より大きく、0.15以下、望ましくは0.01〜0.10であることが重要である。ピーク強度比を上記の範囲に設定したのは、この強度比が0であると合金中にコバルトタングステン炭化物の析出がなく、母材の耐摩耗性が低下するためであり、0.15を越えると過剰のコバルトタングステン炭化物の析出のため、合金強度が低下するためである。
【0075】なお、上記コバルトタングステン炭化物相は、合金中に平均粒径が5μm以下、特に3μm以下の相として存在することが望ましい。これは、平均粒径が5μmを越えると、コバルトタングステン炭化物が本来脆性であるために、合金全体の強度が低下するためである。最適には平均粒径2μm以下である。また、コバルトタングステン炭化物相の生成に伴い、結合相であるCo中にWが固溶するためにCoの格子定数が変動するが、超硬合金のCoの格子定数は3.55〜3.58の範囲にあることが望ましい。
【0076】超硬合金を製造するに当たっては、原料粉末としてWC粉末、周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物から選ばれた1種または2種以上の粉末、およびCo粉末を前述した量だけ秤量後、混合粉砕し、プレス成形などの公知の成形方法により成形後、焼成する。焼成は、真空度10-1〜10-3Torrの真空中で1623〜1773Kの温度範囲で10分〜2時間行う。なお、コバルトタングステン炭化物の析出は、1次原料の炭素量中および炭素粉末の添加量を含めた総炭素量、炭化タングステンの一部を置換する周期律表第4a,5a,6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物の添加量で制御することができる。例えば、使用する原料の炭素量が化学量論組成よりも低い場合に析出し易い。
【0077】超硬合金としてコバルトタングステン炭化物を非常に微量な量で析出させることにより、特にステンレスを切削した時に優れた切削性能を得ることができる。これは、コバルトタングステン炭化物自身が高硬度であるために、耐摩耗性に優れ、さらにコバルトタングステン炭化物の生成に伴い結合相に固溶する炭素量が低下しW固溶量が増大するため結合相が固溶強化される。さらに、生成するコバルトタングステン炭化物の熱膨張係数が合金の大部分を占めるWC相のそれとは異なるために、残留圧縮応力が生じて耐欠損性も向上するからである。
【0078】(3)センサライン等の導電性膜についてスローアウェイチップの母材の逃げ面に形成されるセンサラインは、それ自体が所定の電気抵抗値を有する。この電気抵抗値の変化をオーム計で測定することによって、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無が検出できる。
【0079】センサラインは、Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W等の4a、5a、6a族金属、Co,Ni,Fe等の鉄族金属、あるいはAlなどの金属材料やTiC,VC,NbC,TaC,Cr3 2 ,Mo2 C,WC,W2 C,TiN,VN,NbN,TaN,CrN,TiCN,VCN,NbCN,TaCN,CrCN等の4a、5a、6a族金属の炭化物、窒化物、炭窒化物、(Ti,Al)N等で形成される。
【0080】この中でも、TiNはスローアウェイチップの母材に対する接合力が強いこと、被削材と反応性せず、センサラインの電気抵抗値が常に所定値を示し、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること、被削材の加工表面に反応生成物による傷が形成されるのを有効に防止できること、耐酸化性に優れ、酸化物生成によるセンサラインの電気抵抗値の変化がなく、スローアウェイチップの摩耗度合い、欠損の発生の有無を正確に検出することができること、等の理由から好適に使用し得る。
【0081】センサラインは、次のように作られる。まず、CVD法やイオンプレーティング、スパッタリング、蒸着等のPVD法、めっき法等を採用することによってスローアウェイチップの母材の逃げ面に所定厚みに導電性膜が被着される。その後、レーザ加工やエッチングによって、導電性膜が所定パターンに加工される。センサラインの具体的な形成方法は、次の通りである。
【0082】例えば、センサラインがTiNから成り、CVD法を採用することによって形成される場合には、スローアウェイチップの母材を、温度が900℃〜1050℃、圧力が10〜100kPaに設定されている耐熱合金製反応容器内に配置する。次に、前記反応容器内にTiCl4 を1〜5ml/min、H2 を20〜301/min、N2 を10〜201/minを20分間流入させ、TiNとHClの反応生成物を形成するとともに、該TiNをスローアウェイチップの母材表面に被着させる。
【0083】また、PVD法の一つであるイオンプレーティングによって(Ti,Al)Nまたは(Ti,Al)CNからなるセンサラインを形成する場合には、例えば、アークイオンプレーティング装置内に、スローアウェイチップの母材とカソード電極(蒸発源)としてのTi−Al合金を設置する。次に、装置内を1×10-5torrの真空に保持しながら500℃に加熱した後、Arガスを装置内に導入して1×10-3torrのAr雰囲気となる。しかる後、この状態で母材に−800Vのバイアス電圧を印加して、母材表面をArガスボンバート洗浄する。そして、最後に装置内に反応ガスとして窒素ガス、または窒素ガスとメタンガスを導入して5×10-3torrの反応雰囲気とするとともに、母材に印加するバイアス電圧を−200Vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、カソード電極から放出されたTi−Al合金を反応雰囲気で反応させて(Ti,Al)Nまたは(Ti,Al)CNとなし、母材表面に被着させる。
【0084】スローアウェイチップの母材表面に被着されたTiNや(Ti,Al)N、(Ti,Al)CN等の導電性膜は、レーザ加工やエッチング等によって、センサライン、接触領域、接続ライン等の所定パターンに加工される。例えば、レーザ加工により所定パターンに加工する場合には、母材表面に被着されたTiN等に対し、波長が1.06μmのYAGレーザを35kHz,10Aの出力で幅50μm,描画スピード100〜300mm/sで照射走査することによって、あるいはCO2 レーザを20Wの出力で照射面積径0.3mm、描画スピード0.3m/minで照射走査することによって行われる。
【0085】導電性膜は、その厚みが0.05μm未満の薄いものでは、母材表面への接合が弱くなるとともにセンサラインの電気抵抗値が高くなり、スローアウェイチップの摩耗度合いや欠損を正確に検出するのが困難となってしまう危険性がある。また20μmを超える導電性膜を形成しようとすると、形成時に導電性膜の内部に大きな応力が発生内在し、該内在応力によって、導電性膜の母材表面への接合が弱いものとなってしまう危険性がある。従って、導電性膜は、その厚みを0.05〜20μmの範囲とすることが好ましく、最適には0.1〜5μmの範囲とするのが良い。
【0086】センサライン等は、スローアウェイチップの母材がアルミナ質焼結体、窒化珪素質焼結体、cBN等の絶縁物で形成されている場合には、その表面に直接形成される。また、母材が超硬合金やサーメット等の導電物で形成されている場合は、アルミナ等の絶縁物からなる中間層を間に挟んで形成される。前記アルミナ等の絶縁物からなる中間層は、センサライン等を電気的に独立させる作用をなす。中間層は、CVD法等の方法を採用することによって、母材表面とセンサライン等(導電性膜)との間に所定の厚みに形成される。
【0087】中間層の具体的な形成方法は、中間層がアルミナからなる場合、スローアウェイチップの母材を、温度が約1050℃、圧力が6.5kPaに設定されている耐熱合金製反応容器内に配置する。次に、反応容器内にH2 を40〜501/min、CO2 を1〜31/min、AlCl3 を0.5〜21/minを2時間流入させ、Al2 3 を生成するとともに、それを母材表面に被着させることによって行われる。
【0088】また中間層は、その厚みが1μm未満では、母材とセンサライン等との間に電気的な短絡が発生して、センサラインによりスローアウェイチップの摩耗度合いや欠損の検出を正確に行うことができなくなる危険性がある。また10μmを超える中間層を形成しようとすると、形成の際に中間層内部に応力が発生内在し、該内在した応力によって中間層の母材に対する接合強度が弱いものとなり、小さな外力印加によっても中間層が母材表面より容易に剥離してしまう危険性がある。従って、中間層は、その厚みを1μmないし10μmの範囲としておくことが好ましい。
【0089】次に、この発明の損耗センサ付きスローアウェイチップを用いた摩耗検知の実施例を説明する。
実施例1スローアウェイチップの母材材質としてアルミナ質焼結体を使用し、図1に示すようなセンサーラインの配置形状をTiNからなる導電性膜にて形成した。このとき、センサラインの膜厚を0.3μm、幅を0.186μmとした。この損耗センサ付きスローアウェイチップを図5に示すホルダーに装着し、SCM435(クロムモリブデン鋼)からなる丸棒状の被削材を、NC旋盤にて下記加工条件で連続切削加工し、センサラインの抵抗値を測定した。その結果を図7のグラフに示す。
【0090】加工条件:切削速度 V=200m/min切り込み d=2mm送り f=0.2mm/rev湿式加工被削材 SCM435(クロムモリブデン鋼):丸棒図7のグラフ中、ギザギザ状の折れ線は計測された抵抗値の変化を示しており、縦軸が抵抗値の大きさを、横軸が時間の経過を示している。このグラフでは、加工開始より16.6分後に大きく抵抗値が跳ね上がっていることがわかる。参考までに加工開始11分と18分の切刃の損傷状況(摩耗幅)を計測し、直線的な折れ線として示した。この折れ線が、切削境界部分の摩耗幅の経時変化を示している。
【0091】この計測から、加工開始より抵抗値が大きく跳ね上がった16.6分後にセンサ膜幅(0.186μm)まで摩耗が進み、この時点で摩耗が使用限界摩耗幅に達したことが明確に検知できた。
実施例2実施例1で用いたのと同じスローアウェイチップを、図5に示すホルダーに装着し、SCM435(クロムモリブデン鋼)からなる4本溝入り丸棒状の被削材を、NC旋盤にて前記下記加工条件で断続切削加工し、センサラインの抵抗値を測定した。その結果を図8のグラフに示す。
【0092】加工条件:切削速度 V=200m/min切り込み d=2mm送り f=0.2mm/rev湿式加工被削材 SCM435(クロムモリブデン鋼):4本溝入り丸棒結果は、40数秒の時点で抵抗値が無限大に跳ね上がった。加工を中止し、スローアウェイチップの切刃を確認したところ、切刃稜欠損が発生していた。この実験から、切刃稜欠損により使用不能状態となった場合には、センサラインも断線し、結果として計測している抵抗値の異常から、スローアウェイチップの切刃稜欠損が明確に検知できた。
【0093】実施例3スローアウェイチップの母材材質として窒化珪素質焼結体を使用し、図4に示す並列3ラインの配置形状をTiNからなる導電性膜にて形成した。このとき、センサラインの膜厚を0.3μm、各センサラインの幅を0.146mmとした。また、隣接する一対のセンサラインの間隔は0.01mmである。この損耗センサ付きスローアウェイチップを図5に示すホルダーに装着し、FC250(ねずみ鋳鉄)からなる丸棒状の被削材を、NC旋盤にて下記加工条件で連続切削加工し、センサラインの抵抗値を測定した。その結果を図9のグラフに示す。
加工条件:切削速度 V=200m/min切り込み d=2mm送り f=0.2mm/rev湿式加工被削材 FC250(ねずみ鋳鉄):丸棒【0094】計測した抵抗値は、加工時間の経過と共に階段状に変化し、最終的に無限大まで上昇した。このことから、チップの摩耗の進行に伴って各センサラインに断線が生じ、抵抗値が段階的に上昇する。そして3本目のセンサラインが断線した時点(約10分)で抵抗値が無限大まで跳ね上がり、センサライン全体が摩耗し、スローアウェイチップの切刃が使用限界摩耗幅まで至ったことが検出できた。以上、この発明の実施形態につき具体的に、かつ詳細に説明したが、この発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。




 

 


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