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発明の名称 圧延ロール用外層及び圧延ロール
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−150007(P2001−150007A)
公開日 平成13年6月5日(2001.6.5)
出願番号 特願平11−339443
出願日 平成11年11月30日(1999.11.30)
代理人 【識別番号】100066728
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 敏之
【テーマコード(参考)】
4E016
【Fターム(参考)】
4E016 EA03 FA02 
発明者 森川 長 / 瀬戸 良登 / 辻本 豊 / 渡部 誠
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 圧延用複合ロールの外層であって、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、Cのバラツキ度S1が12%以下であり、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有することを特徴とする圧延ロール用外層。但し、Cのバラツキ度S1は、外層断面を、EPMA(X線マイクロアナライザー)により径方向に1mm以下のピッチで夫々複数箇所を走査し、各ピッチにおけるCの測定数(cps)の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、Cの全測定数(cps)の平均値をδ1としたとき、バラツキ度S1は、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100%で表わされる。
【請求項2】 圧延用複合ロールの外層であって、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、炭化物のバラツキ度S2が20%以下であり、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有することを特徴とする圧延ロール用外層。但し、炭化物のバラツキ度S2は、外層断面の炭化物面積率を、径方向に5mm以下のピッチで夫々複数箇所について測定し、各ピッチにおける炭化物面積率の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ2max、最小値をγ2minとし、炭化物面積率の全測定値の平均値をδ2としたとき、バラツキ度S2は、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100%で表わされる。
【請求項3】 圧延用複合ロールの外層であって、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、硬さのバラツキ度S3が10%以下であり、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有することを特徴とする圧延ロール用外層。但し、硬さのバラツキ度S3は、外層断面の硬さを、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける硬さの平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、硬さの全測定値の平均値をδ3としたとき、バラツキ度S3は、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100%で表される。
【請求項4】 バラツキ度は、外層の端面での測定により求められた値である請求項1乃至請求項3の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項5】 鋳鉄材は、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.1〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Niを3.0%以下、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%、残部実質的にFeからなるハイス系鋳鉄材である請求項1乃至請求項4の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項6】 ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、Nb:3.0%以下、Co:5.0%以下の1種又は2種を含有する請求項5に記載の圧延ロール用外層。
【請求項7】 ハイス系鋳鉄材は、重量%にて、Ti:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:0.5%以下及びB:0.5%以下からなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項5又は請求項6に記載の圧延用ロール用外層。
【請求項8】 遠心力鋳造は、外周部分における重力倍数を150G以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項9】 遠心力鋳造は、鋳造外径寸法が250mm以上350mm未満のとき、金型の回転数を1030rpm以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項10】 遠心力鋳造は、鋳造外径寸法が350mm以上500mm未満のとき、金型の回転数を870rpm以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項11】 遠心力鋳造は、鋳造外径寸法が500mm以上700mm未満のとき、金型の回転数を710rpm以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項12】 遠心力鋳造は、鋳造外径寸法が700mm以上900mm未満のとき、金型の回転数を610rpm以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項13】 遠心力鋳造は、鋳造外径寸法が900mm以上のとき、金型の回転数を550rpm以上とする条件で行われたものである請求項1乃至請求項7の何れかに記載の圧延ロール用外層。
【請求項14】 請求項1乃至請求項13の何れかに記載の外層を、内層と機械的又は冶金的に一体化することにより形成される圧延ロール。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、外層にハイス系鋳鉄材を用いた熱間又は冷間圧延用複合ロールにおける外層の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱間又は冷間圧延用ロールは、外面側に耐摩耗性、内部側に強靱性が要求されることから、耐摩耗性にすぐれるハイス系鋳鉄材を遠心力鋳造により形成した外層と、強靱性にすぐれる鋳鉄若しくは鋳鋼又は合金鋼の内層(又はコア)を、冶金的又は機械的に一体化した複合構造のロールが従来より使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】この種ハイス系鋳鉄材は、Cr、Mo、W、V等の炭化物形成元素を相当量含んでおり、溶湯の凝固過程で炭化物を晶出する。この晶出炭化物が耐摩耗性の向上に大きく寄与する。ところで、このハイス系材料を用いて、遠心力鋳造によりロール外層を作製した場合、炭化物は、均一に分布して晶出するのではなく、炭化物量の多い層と少ない層とが交互に同心円状に形成されることが、横断面のミクロ組織観察によって認められる。この炭化物の濃淡層は、一般に、年輪状偏析(又はバンド状偏析)と称されている。
【0004】この年輪状偏析は、同じハイス系鋳鉄材でも、横型遠心力鋳造の場合に特に発生し易いことが判っている。この理由について、溶湯の状態を模式的に示した図1を参照して検討すると、横型遠心力鋳造の場合、溶湯に対して、上昇時に重力による減速力、下降時に重力による加速力が働くため、上部の流速は小さく、下部の流速は大きくなっている。この現象から、遠心力鋳造時における年輪状偏析の発生原因の1つとして、凝固途中の溶湯の回転速度が変化していることが考えられる。
【0005】ロールの外層に生ずる年輪状偏析は、完全な同心円ではないため、ロールの外層表面には炭化物の多い高硬度領域と炭化物の少ない低硬度領域が存在する。それゆえ、実際の圧延作業において、ロール外表面は、炭化物の多い領域では摩耗が生じ難く、一方炭化物の少ない領域では摩耗を生じ易いことから、ロールの外表面に摩耗差が生じ、それが圧延製品に転写されて、品質に影響を及ぼす。圧延製品の転写模様を回避するには、圧延に供されるロール表面の研磨をより頻繁に行わねばならず、ロールの表面研磨1回当たりの圧延量が低下し、またロールの低寿命化を招く。
【0006】本発明の目的は、炭化物のバラツキ度が小さく、炭化物の年輪状偏析が殆んど存在しない略均質な金属組織を有する圧延ロールの外層及び圧延ロールを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載された圧延用複合ロールの外層は、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、Cのバラツキ度S1が12%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。ここで、Cのバラツキ度S1は、外層断面を、EPMA(X線マイクロアナライザー)により径方向に1mm以下のピッチで夫々複数箇所を走査し、各ピッチにおけるCの測定数(cps)の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、Cの全測定数(cps)の平均値をδ1としたとき、バラツキ度S1は、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100%で表わされる。
【0008】請求項2に記載された圧延用複合ロールの外層は、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、炭化物のバラツキ度S2が20%以下であって、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。ここで、炭化物のバラツキ度S2は、外層断面の炭化物面積率を、径方向に5mm以下のピッチで夫々複数箇所について測定し、各ピッチにおける炭化物面積率の平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ2max、最小値をγ2minとし、炭化物面積率の全測定値の平均値をδ2としたとき、バラツキ度S2は、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100%で表わされる。
【0009】請求項3に記載された圧延用複合ロールの外層は、遠心力鋳造により作製され、重量%にて、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有する鋳鉄材からなり、硬さのバラツキ度S3が10%以下であり、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有している。ここで、硬さのバラツキ度S3は、外層断面の硬さを、径方向に5mm以下のピッチでそれぞれ複数箇所について測定し、各ピッチにおける硬さの平均値を算出することにより求められ、該平均値の最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、硬さの全測定値の平均値をδ3としたとき、バラツキ度S3は、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100%で表される。
【0010】なお、Cのバラツキ度S1、炭化物のバラツキ度S2、硬さのバラツキ度S3の測定は、外層の端面で行なうことができる。即ち、「外層断面」とは、外層の端面を含む意味と解されるべきである。
【0011】
【作用及び効果】本発明の圧延ロールの外層は、炭化物がほぼ均一に分布した組織を有しており、年輪状偏析は殆んど存在しないか、あるいはロールとしての使用上、問題のない範囲まで大幅に軽減されており、実際の圧延作業において、ロール外表面に摩耗差を生ずることは殆んどない。従って、圧延製品にロール外表面の凹凸模様が転写されることは殆んどなく、圧延に供されるロール表面の研磨回数を少なくすることができる。それゆえ、表面研磨1回当たりの圧延量が増大し、圧延ロールの高寿命化及び生産効率の向上を達成できる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の圧延ロール用外層は、例えば、横型遠心力鋳造用金型の中に所定成分の鋳鉄材溶湯を鋳込んで中空状に形成される。なお、横型遠心力鋳造は、遠心力鋳造金型の軸心がほぼ水平の状態で回転するものであるが、本発明は、横型遠心力鋳造装置に限定されず、遠心力鋳造金型の軸心が約35°以下の傾きである傾斜型遠心力鋳造装置を用いても、実質的に同じ条件で遠心力鋳造を行なうことができる。
【0013】鋳鉄材溶湯を鋳込んだ後、金型の回転を停止し、金型を直立させて、ロール軸部となる鋳型をセットし、次に内層溶湯を鋳込むことにより、外層と内層(ロール軸部)が冶金的に一体化された圧延用複合ロールが形成される。なお、必要に応じて、外層の鋳造時、金型の回転を停止させる前に、外層の凝固後直ちに中間層溶湯を鋳込んで外層と中間層を冶金的に一体化させておくこともできる。この中間層は、外層材と内層材の中間成分の材質を有し、外層と内層との溶着性改善のために設けられるものであり、本願明細書では、広義の内層という概念に含まれるものとする。また、圧延用複合ロールについては、遠心力鋳造により形成された中空状外層を、ロール軸部となる内層に対して焼嵌め等を行なうことにより、外層と内層(ロール軸部)を機械的に一体化することもできる。
【0014】外層の遠心力鋳造(横型)に際しては、年輪状偏析が形成されないようにするために、重力倍数又は金型の回転数を次の鋳造条件で行なうことが望ましい。重力倍数Gについては、外層の外周部分において、150G以上の条件で行ない、180G以上の条件で鋳込むことが望ましい。なお、外層鋳鉄材にMoのみを含有する場合、Moの重量%をα%とし、αが5以上のとき、重力倍数を(40×α−50)G以上、望ましくは(44×αー40)G以上とすることが望ましい。外層鋳鉄材にWのみを含有する場合、Wの重量%の2倍の値をα%とし、αが10以上のとき、重力倍数を(20×α−50)G以上、望ましくは(22×α−40)G以上とすることが望ましい。
【0015】重力倍数Gを決定すると、遠心力鋳造金型の内径を基準として、以下の式に示すように、鋳造時の金型の回転数が算出される。なお、外層の鋳造外径寸法は、凝固による収縮のため、式中の金型内径寸法よりも若干小さくなるが、本願明細書では、この凝固収縮分は考慮しないものとする。
【0016】
【数1】

【0017】金型の回転数については、外層の鋳造外径寸法が350mm未満のときは1030rpm以上、望ましくは1130rpm以上とし、350mm以上500mm未満のときは870rpm以上、望ましくは900rpm以上とし、500mm以上700mm未満のときは710rpm以上、望ましくは760rpm以上とし、700mm以上900mm未満のときは610rpm以上、望ましくは640rpm以上とし、900mm以上のときは550rpm以上、望ましくは580rpm以上とする条件で鋳込むことにより作製することができる。なお、圧延に供される面を形成するために、外層の外周面を削り取る場合、削り取られた後の外径仕上がり寸法が、230mm以上330mm未満のときは金型の回転数を1030rpm以上とする条件で、外径仕上がり寸法が330mm以上480mm未満のときは金型の回転数を870rpm以上とする条件で、外径仕上がり寸法が480mm以上680mm未満のときは、金型の回転数を710rpm以上とする条件で、外径仕上がり寸法が680mm以上880mm未満のときは、金型の回転数を610rpm以上とする条件で、外径仕上がり寸法が880mm以上のときは、金型の回転数を550rpm以上とする条件で鋳込むようにすることが望ましい。「外径仕上がり寸法」とは、圧延ロールとして圧延に使用されるときの最初の外径寸法を意味している。
【0018】なお、溶湯の凝固が進行すると、溶湯部の回転半径が次第に小さくなり、重力作用の影響も変動するが、鋳込み終了時における金型の回転数を、鋳込み開始時における金型の回転数よりも大きくすることによって、その変動をより小さくすることもできる。
【0019】形成された外層は、少なくとも、Cを1.0〜4.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%含有している。C:1.0〜4.0%とするのは、Cの含有量が1.0%に満たないと、Mo又はW等の炭化物の晶出量が不足し、耐摩耗性が不十分となるためであり、Cの含有量が4.0%を越えると内層を形成するための鋳鉄又は鋳鋼材との凝固点差が過大となり、溶着不良が発生し易くなるためである。Mo又はWは、どちらか一方を含有するのは、Mo又はWが炭化物の晶出と年輪状偏析に最も影響を及ぼす元素であるためであり、Mo又はWの含有量が1.0%に満たないと、炭化物の晶出量が不足し、16.0%を越えると、靱性の低下を招くためである。
【0020】外層用材料として、より具体的には、重量%にて、Cを1.0〜4.0%、Siを0.1〜3.0%、Mnを0.2〜2.0%、Niを3.0%以下、Crを3.0〜12.0%、Mo又はWのどちらか一方を1.0〜16.0%、Vを1.0〜8.0%、残部実質的にFeのハイス系鋳鉄材を示すことができる。Siは湯流れ性の確保、あるいは場合によっては黒鉛を晶出させるために0.1〜3.0%含有させる。Mnは硬化能を増し、Sによる脆化を防ぐために、0.2〜2.0%含有させる。Niは基地組織を改良するために3.0%以下含有させる。Cr及びVは、Cと結合して炭化物を晶出し、耐摩耗性の向上を図るために、夫々、3.0〜12.0%、1.0〜8.0%の範囲内でそれぞれ含有させる。
【0021】このハイス系鋳鉄材は、重量%にて、Nb:3.0%以下、Co:5.0%以下の1種又は2種、及び/又は、Ti:1.0%以下、Zr:1.0%以下、Al:0.5%以下、B:0.5%以下からなる群から選択される少なくとも1種を必要に応じて含むことができる。Nbは極めて硬いM11型の炭化物を形成し、耐摩耗性を改善すると共に、基地中に入って基地の強化に寄与する。Coも基地中に固溶されて基地の強化に寄与する。Ti、Zr、Al及びBは溶湯中で酸化物あるいは窒化物を生成して、溶湯中の酸素含有量、窒素含有量を低下させ、製品の健全性を向上させる。生成した酸化物、あるいは窒化物が結晶核として作用するために凝固組織の微細化に効果があり、耐摩耗性も改善される。さらに、ハイス系鋳鉄材の耐摩耗性は、極めて硬いM11型炭化物に負うところが大きい。このM11型2炭化物は実質的にはV11炭化物、Nb11炭化物、あるいは(V、Nb)11炭化物であるが、溶湯の凝固過程においては固相率の小さい段階で晶出するため、遠心力鋳造すると、晶出したM11型炭化物の粒子と溶湯の平均比重との差異によって、粒子に内面向きあるいは外面向きの遠心分離力が働き、偏析を助長する。粘性流体中(この場合はハイス系鋳鉄材溶湯)での粒子の移動速度は粒子の径に比例するから、遠心力鋳造された溶湯中に晶出したM11型炭化物の粒子が小さいほど、遠心力による移動は抑えられる。Ti、Zr、Al、Bの酸化物、あるいは窒化物は溶湯中で微細に分散し、M11型炭化物晶出の核となるため、M11型炭化物を微細・分散化させる効果があり、上記のメカニズムによって遠心力鋳造における偏析を軽減する効果がある。従って、これら元素は、前記範囲内で、必要に応じて含有させることが好ましい。
【0022】内層材としては、高級鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、黒鉛鋼、鋳鋼等の強靱性を有する材料が使用される高級鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:0.8〜2.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。ダクタイル鋳鉄の好適な組成例として、C:2.5〜4.0%(重量%、以下同じ)、Si:1.3〜3.5%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、Mg:0.02〜0.1%、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。黒鉛鋼の好適な組成例として、C:1.0〜2.3%(重量%、以下同じ)、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:3.0%以下、Cr:2.0%以下、Mo:2.0%以下、W、V、Nbを総計で4%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0023】内層と外層との溶着性を改善するために、中間層を設ける場合、中間層として、アダマイト材あるいは黒鉛鋼等が好適に用いられる。中間層のアダマイト材の好適な組成として、重量%にてC:1.0〜2.5%、Si:0.2〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:4.0%以下、Cr:4.0%以下、Mo:4.0%以下、W、V、Nbを総計で12%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。中間層の黒鉛鋼の好適な組成として、重量%にて、C:1.0〜2.3%、Si:0.5〜3.0%、Mn:0.2〜1.5%、P:0.2%以下、S:0.2%以下、Ni:4.0%以下、Cr:4.0%以下、Mo:4.0%以下、W、V、Nbを総計で12%以下、残部実質的にFeからなるものを示すことができる。
【0024】鋳造された外層は、通常、表面に鋳造欠陥等を含んでいるため、外周面から5mm〜40mmの部分が機械加工によって取り除いて使用され、その面より数mm〜数十mmの厚さ部分が圧延に供される。この機械加工は、外層の鋳造完了後に実施してもよいし、内層を一体化した後に実施してもよい。
【0025】
【実施例】横型遠心力鋳造により、各種鋳鉄材の溶湯を、80mmの厚さになるまで鋳込んで供試用ロール外層(発明例1〜発明例6、比較例1〜比較例2)を作製した。溶湯の鋳込み温度は1385℃であり、凝固完了後、常温まで冷却して、700℃で10時間軟化熱処理を実施した。金型の内径、金型の回転数、重力倍数及び外層の組成を表1に記載している。なお、遠心力鋳造用金型は、内面に耐火材(塗型)が塗布されており、内径587mm、長さ1150mmの鋼製のものと、内径770mm、長さ2200mmの鋼製のものを使用した。この供試用ロール外層について、炭素又は炭化物の分布状態と、金型の回転数及び重力倍数との関係を調べた。
【0026】
【表1】

【0027】作製された発明例1と比較例1のロール外層を、ロールの長手方向に切断して、粒度240のサンドペーパーを用いて研磨後、硝酸水溶液のエッチング処理を施し、長手方向に100mm、径方向に80mmの範囲のマクロ組織写真を撮影した。図3は発明例1、図4は比較例1の組織写真である。図3と図4を比較すると、図4では偏析が生じた結果、複数の帯状模様が観察されたのに対し、図3にはそのような帯状模様は認められなかった。
【0028】次に、図2に示すように、各々の供試用ロール外層(10)の軸方向中央部から、外層の長手方向に20mm(試験片については「幅方向」という)、周方向に10mm(試験片については「奥行方向」)という)、径方向に80mm(試験片については「高さ方向」という)の試験片(20)を切り出した。試験片は、1150℃で30分間オーステナイト化熱処理した後焼入れ熱処理を行ない、550℃で10時間の焼戻し熱処理を2回実施した。熱処理終了後、各試験片を粒径6μmのダイヤモンド粒子でバフ研磨した。
【0029】作製されたロール外層(10)は、削り代分を考慮し、図2に斜線で示すように、外周面から高さ方向に10〜50mmの部分(以下「被測定部分」という)について炭素又は炭化物の分布状態を調べた。
【0030】〔EPMA(X線マイクロアナライザー)による測定〕EPMAを用いて、試験片の炭素の分布状態を測定した。各試験片の被測定部分の幅14.98mmの範囲に対し、EPMA装置を用いて、加速電圧15kV、ビーム径50μmの電子線を、高さ方向に70μm、幅方向に70μmのピッチで走査した。炭素の分布状態は、Kα線の波長分散分析による測定数(cps:Count Per Second)で評価した。
【0031】測定終了後、各ピッチ毎における測定数(cps)の平均値を算出した。さらに算出された平均値について、その最大値をγ1max、最小値をγ1minとし、全測定数の平均値をδ1としたときに、S1=[(γ1max−γ1min)/δ1]×100を、EPMAによるCのバラツキ度(%)と規定した。バラツキ度S1が大きいほど、炭素の分布が不均一で炭化物の偏析が多く存在することを意味し、年輪状偏析が認められる。一方、バラツキ度S1が小さければ、炭素の分布が均一で炭化物の偏析が少ないことを意味し、年輪状偏析は殆んど認められない。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】表2を参照すると、発明例1〜発明例6は、Cのバラツキ度S1が比較例1及び比較例2に比べて小さく、炭素の分布が均一であることがわかる。また、発明例どうしを比較すると、同一組成では金型の回転数と重力倍数が大きいほど、Cのバラツキ度S1が小さくなっており、炭素の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなるにつれて、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響がより小さくなったためと考えられる。比較例1及び比較例2のバラツキ度S1が大きいのは、図4に示すように、ロール外層中に炭化物の年輪状偏析が存在するためである。
【0034】なお、Cのバラツキ度S1は、12%以下であれば、炭化物の偏析が少ないから、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。バラツキ度S1が12%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多くなり、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラが生じ易くなる。このCのバラツキ度S1は、10%以下がより望ましい。
【0035】〔炭化物面積率による評価〕炭化物の分布状態を調べるために、外層断面における炭化物が占める面積の割合を測定した。各試験片には、5%濃度のナイタール液を用いてエッチング処理を施し、光学顕微鏡を用いて被測定部分の100倍の組織写真を撮影した。撮影は、試験片の高さ方向に5mmピッチで行ない、各ピッチ毎に、幅方向にずらして7枚の組織写真を撮影した。各ピッチ毎に、画像解析手法によって組織写真の50mm×100mm(試験片における実寸0.5mm×1mm)の範囲の全炭化物の面積率(以下「炭化物面積率」)を測定し、異常値を削除するために最大と最小を除いた5つのデータについて、その平均値を算出した。さらに算出された各ピッチ毎の炭化物面積率の平均値のうち、最大値をγ2max、最小値をγ2min、すべての炭化物面積率の平均δ2としたときに、S2=[(γ2max−γ2min)/δ2]×100を炭化物面積率のバラツキ度(%)と規定した。バラツキ度S2が大きいほど、炭化物面積率の変動が大きく、炭化物量に偏りが生じていることを意味する。結果を表2に示す。
【0036】表2を参照すると、発明例1〜発明例6は、炭化物面積率のバラツキ度S2が比較例1及び比較例2に比べて小さく、炭化物の分布が均一であることがわかる。また、発明例どうしを比較すると、同一組成では金型の回転数と重力倍数が大きいほど、バラツキ度S2が小さくなっており、炭化物の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなると、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響が小さくなるためと考えられる。一方、比較例1及び比較例2のバラツキ度S2が大きな値となっているのは、図4に示すように、ロール外層中に炭化物の年輪状偏析が存在するためである。
【0037】なお、炭化物面積率のバラツキ度S2は、20%以下であれば、炭化物の偏析が少なく、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。バラツキ度S2が20%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多く、圧延に使用した際、ロール外層表面に摩耗ムラが生じ易くなる。この炭化物面積率のバラツキ度S2は15%以下がより望ましい。
【0038】〔硬さによる評価〕ハイス系鋳鉄材のミクロ組織は、M11型炭化物、M73型炭化物、M61型炭化物、M2C型炭化物などの各種晶出炭化物と基地からなる。これら晶出炭化物の硬さは、基地の硬さに比べて硬く、また、炭化物量の多い部分は炭化物の少ない部分に比べて硬い。そこで、試験片の硬さを測定することによって、炭化物の分布状態を評価した。なお、この実施例での測定は、ロックウェル硬さ試験法(Cスケール)を用いた。試験片の被測定部分を高さ方向に5mmピッチで測定し、各ピッチについて、幅方向にずらして7回ずつロックウェル硬さを測定した。異常値を削除するために測定結果の最大と最小を除く5回の測定値から平均値を算出した。さらに算出された平均値のうち、その最大値をγ3max、最小値をγ3minとし、すべての硬さの平均値δ3としたとき、S3=[(γ3max−γ3min)/δ3]×100を硬さのバラツキ度(%)と規定した。バラツキ度S3が大きいほど、硬度の変動が大きく、炭化物量の偏りが大きい。結果を表2に示す。
【0039】表2を参照すると、発明例1〜発明例6は、硬さのバラツキ度S3が比較例1及び比較例2に比べて小さく、炭化物の分布が均一であることがわかる。また、発明例どうしを比較すると、同一組成では金型の回転数と重力倍数が大きいほど、バラツキ度S3が小さくなっており、炭化物の分布がより均一となることを示している。これは、金型の回転数と重力倍数が大きくなると、ロール外層鋳込み時の重力作用の影響が小さくなるためと考えられる。一方、比較例1及び比較例2のバラツキ度S3が大きな値となっているのは、図4に示すように、ロール外層中に炭化物が年輪状に偏析しているためである。
【0040】なお、硬さのバラツキ度S3は、10%以下であれば、炭化物の偏析が少なく、圧延に使用した際、外層表面に摩耗ムラを生じ難い。バラツキ度S3が10%を越えると、高さ方向(ロール外層の径方向)での炭化物の偏析が多く、圧延に使用した際、ロール外層表面に摩耗ムラが生じ易くなる。この硬さのバラツキ度S3は、5%以下がより望ましい。
【0041】硬さの測定器具については、前述のロックウエル硬度計の他に、マイクロビッカース、ショアなどの種々の硬度計を用いることができる。また、先端に超硬球が埋め込まれたハンマを試料表面に衝突させて、その反発量によって硬度を判定するエコーチップ硬度計を使用することもできる。
【0042】EPMAのバラツキ度S1、炭化物面積率のバラツキ度S2又は硬さのバラツキ度S3が上記範囲内にある外層を有する圧延用複合ロールを、実際の圧延作業に用いたところ、摩耗ムラを生じ難く、従来のロールよりも外層の研磨頻度を少なくすることができた。




 

 


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