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発明の名称 テンタークリップ及び熱可塑性樹脂フィルムの製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−187421(P2001−187421A)
公開日 平成13年7月10日(2001.7.10)
出願番号 特願2000−339(P2000−339)
出願日 平成12年1月5日(2000.1.5)
代理人
発明者 饗場 美加 / 原田 裕 / 高島 直弘 / 古野 良治
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】テンターにおける延伸、熱処理または冷却する工程に用いるテンタークリップにおいて、クリップ把持部の機構が延伸工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動せず、熱処理及び/または冷却工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動可能となる機構に変化することを特徴とするテンタークリップ。
【請求項2】熱処理及び/または冷却工程において、フィルム長手方向のフィルム拘束力x(N)のクリップ把持幅L1 (mm)に対する比x/L1 (N/mm)が2(N/mm)以下であり、かつ、フィルム幅方向のフィルム把持力y1(N)のクリップ把持幅L2 (mm)に対する比y1 /L2 (N/mm)が0.5(N/mm)以上であることを特徴とする請求項1に記載のテンタークリップ。
【請求項3】延伸工程において、フィルム幅方向のフィルム把持力y2 (kg)のクリップ把持幅L2 (mm)に対する比y2 /L2 (N/mm)が1(N/mm)以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のテンタークリップ。
【請求項4】熱処理及び/または冷却工程における該テンタークリップの把持部の形態がロール形状であることを特徴とする請求項1、2または3に記載のテンタークリップ。
【請求項5】請求項1、2、3、または4に記載のテンタークリップを用いて、テンターにおいて延伸、熱処理及び/または冷却することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項6】該テンターにおいて、長手方向に弛緩処理を施すことを特徴とする請求項5に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】該弛緩率が0.5%以上、10%以下であることを特徴とする請求項6に記載の二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テンタークリップ及び熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するものである。更に詳しくは、テンターにおいて、フィルムをクリップ外れが生じることなく機能性よく、延伸もしくは熱処理及び/または冷却するためのテンタークリップ、及び熱寸法安定性、機械的特性に優れ、平面性が良好で幅方向の物性が均一な熱可塑性樹脂フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】熱可塑性樹脂フィルムは、その物理的、熱的特性に応じて様々な分野で利用されている。特に、縦方向、横方向の二軸方向に延伸をかけたポリエステルフィルムは、機械的特性などにも優れるため、より好ましく用いられている。中でもポリエステルフィルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6ナフタレートフィルムは、その機械的特性、熱的特性、電気的特性が優れるため、複写機やプリンタなどに使用されるオーバーヘッドプロジェクタ(OHP)用シートや製図用原紙、モーターやトランスなどにおける電気絶縁用材料、また、ICカード用途、FPC基板用や磁気記録用ベースフィルム、プリンタリボンなどのOA用途などさまざまな用途で用いられている。
【0003】ここで、ポリエステルの二軸配向フィルムは、延伸により分子配向させることで、ヤング率などの機械的特性を向上させたものであるが、このフィルムには延伸による歪みが分子鎖に残留するため、加熱によりこの分子鎖の歪みが開放され、収縮するという性質を持っている。この収縮特性を利用して、包装用のシュリンクフィルムなどへ展開されているが、一般には、上述したような用途においては、この収縮特性は障害となることが多い。
【0004】そこで、二軸延伸後に、横延伸に用いられるテンター中で、横延伸に引き続き、熱処理(熱固定とも呼ばれる)を行うことで、この分子鎖の歪みを開放する方法が用いられている。一般に、この熱処理の温度に応じて熱収縮量は低下していくが、この熱処理だけでは完全に歪みを除去することができず、熱収縮が残留するという問題が生じる。従来、この残留歪みを除去するために、テンターのレール幅を先細りになるようにして(トウイン、リラックスなどと呼ばれる)、幅方向に若干収縮させるようにして、この残留歪みを完全除去する方法が採用されている。
【0005】しかしながら、この方法では、幅方向の熱収縮率は除去可能であるが、長手方向の熱収縮を除去することはできない。このため長手方向の熱収縮を除去する方法について、過去にいろいろな方法が検討されている。
【0006】例えば、特公平4−28218号公報では、テンターのクリップ間隔が除々に狭くなるようにすることで、長手方向に弛緩処理を行う方法が提案されている。
【0007】しかしながら、この方法では、装置上の問題で弛緩率に上限があり、また、弛緩率を大きくすると、弛緩処理前のクリップ間隔が広くなり、クリップ把持部と非把持部の物性むらが大きくなるという問題が生じる。また、いったん、フィルムを巻き取った後に、ゆっくりと巻き出しながらオーブンで加熱処理し、その際に長手方向に速度差をつけて弛緩処理を施す方法が行われているが、この方法ではフィルムが幅固定されていないため、フィルム面が波打つような状況が生じて、平面性が悪化するという問題が生じる。また、特公昭60−226160号公報には、フィルムの製膜工程中に、オーブンによる長手方向の弛緩処理装置を設ける方法が提案されているが、フィルムの製膜速度との兼ね合いで、処理温度を高めるとフィルムの平面性が悪化するため、温度をあまり高められず、結果として熱収縮が十分に除去されないという問題が生じるため、低熱収縮性、平面性に優れたフィルムが得られていない。
【0008】また、製品化されるフィルム幅方向の物性の均一化は、収率を向上させる上で重要である。一般に、幅方向の物性むらは、テンターにおける加熱時に生じる熱収縮応力によるものと、テンターにおける横延伸工程で生じる縦方向の収縮力により、熱処理室での加熱から、剛性が低いフィルムのうち長手方向への拘束が弱いフィルム中央部が、横延伸工程側に引き込まれることにより生じると考えられている。
【0009】また、このようにして生じる物性むらは、テンター入り口でフィルムの横方向に平行に引いた直線が、出口で弓状に湾曲するボーイング現象と同様に、フィルム幅方向に分布を示す。そこで、このボーイング現象を抑える方法として、例えば、一軸延伸したフィルムをテンターで横延伸し、いったん、クリップ把持を開放し、更に再度クリップでフィルムを把持し、120〜240℃の温度領域において昇温させながら熱固定する方法(例えば、特開昭57−87331号公報)、未延伸フィルムを延伸温度以上で予熱した後、縦横方向に同時二軸延伸し、次いで等温ずつ多段階に分割昇温させて再熱処理する方法(例えば、特開昭54−137076号公報)、横延伸直後にフィルム温度をいったんガラス転移温度以下まで下げて剛性を増し、熱処理室側のフィルムが延伸室に引き込まれるの防止する方法(例えば、特開平3−13027号公報、特開平3−216326号公報)、冷却工程を入れる代わりに、横延伸と熱処理間にニップロールを設けて、中央部を強制的に進行させる方法(例えば、特公昭63−24459号公報)、また、フィルムを二軸延伸後、フィルムの中央部より端部の温度が高くなるように加熱する方法(例えば、特開昭61−233523号公報、特開昭62−83327号公報、特開昭62−183328号公報)などが提案されている。
【0010】しかしながら、このような方法ではボーイング現象を多少抑制することはできても、熱寸法安定性、機械的特性、平面性などを損なわずにフィルム幅方向における諸物性を均一化するには不十分であったり、装置が大型化するといった問題が生じる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題を解決し、幅方向において物性が均一であり、かつ熱寸法安定性に優れ、平面性も良好な二軸配向熱可塑性樹脂フィルムの製造を可能にするテンタークリップと、該テンタークリップを用いた熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明のテンタークリップは、延伸、熱処理及び/または冷却する工程に用いるテンタークリップにおいて、クリップ把持部の機構が延伸工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動せず、熱処理及び/または冷却工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動可能となる機構に変化することを特徴とするテンタークリップである。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】本発明におけるテンタークリップとは、テンターにおける製膜工程で使用するクリップをいい、テンターにおける延伸、熱処理または冷却する工程に用いるテンタークリップにおいて、クリップ把持部の機構が延伸工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動せず、一方、熱処理及び/または冷却工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動可能となる機構に変化するものである。
【0015】従来、通常用いられてきたテンタークリップは、テンターにおける各製膜工程においてクリップ把持部の機構が変化することはなく、クリップ把持部内のフィルムは長手方向にも拘束されているため、クリップ自体の動きに伴って移動している。そのため、加熱や冷却時に発生する収縮応力により、フィルム中央部は発生する収縮応力に応じて比較的自由に収縮することができるが、端部はクリップの動きに伴って移動しているために収縮することができず、中央部と端部とで物性の異なったフィルムとなってしまう。
【0016】しかしながら、本発明のテンタークリップはクリップ把持部の機構が、延伸工程においてはクリップ外れを起こすことなく延伸できる機構となり、熱処理及び/または冷却工程においてはフィルム端部が収縮応力に応じて長手方向に移動可能となる機構に変化するため、装置を大型化することなく長手方向に弛緩処理を施すことが可能となる。そのため、ボーイング現象を抑制して幅方向に物性が均一なフィルムを容易に得ることが可能となる。
【0017】また、本発明においては、熱処理及び/または冷却工程において、フィルム長手方向のフィルム拘束力x(N)のクリップ把持幅L1 (mm)に対する比x/L1 (N/mm)が2(N/mm)以下であり、かつ、フィルム幅方向のフィルム把持力y1 (N)のクリップ把持幅L2 (mm)に対する比y1 /L2 (N/mm)が0.5(N/mm)以上であることが好ましい。より好ましくはx/L1 は1(N/mm)以下、更に好ましくは0.5(N/mm)以下、最も好ましくは0.3(N/mm)以下であり、またy1 /L2 は1(N/mm)以上がより好ましく、更に好ましくは2(N/mm)以上、最も好ましくは3(N/mm)以上である。x/L1 が2(N/mm)以下であることにより、フィルム端部も収縮応力に応じて長手方向に移動可能となり幅方向に物性が均一なフィルムを得ることが可能となるため好ましい。また、一般に同じ条件で得た厚みの異なる未熱処理二軸延伸フィルムは、厚みの薄いフィルムの方が収縮力が小さくなる。そのため、x/L1 が上記範囲を超えると、特に厚みの薄いフィルムの場合はフィルム端部が長手方向に移動しにくくなるため好ましくない。
【0018】また、一般にテンターにおいて熱処理及び/または冷却などを施す際にはフィルムの幅方向において収縮応力が発生するが、円滑に製膜を行うためには、これらの応力によるクリップ外れを生じさせないことが重要である。しかしながら、y1 /L2 (N/mm)が0.5(N/mm)未満であると収縮応力に耐えきれず、フィルムのクリップ外れが生じやすくなるため好ましくない。
【0019】さらに、本発明においては、延伸工程において、フィルム幅方向のフィルム把持力y2 (N)のクリップ把持幅L2 mmに対する比y2 /L2 (N/mm)が1(N/mm)以上であることが好ましい。より好ましくは5(N/mm)以上、更に好ましくは6(N/mm)以上、最も好ましくは8(N/mm)以上である。一般にテンターで延伸を行う際には延伸応力が発生するために、この応力によるクリップ外れを生じさせないことが重要である。しかしながら、y2 /L2(N/mm)が1(N/mm)未満であると、特に、横延伸倍率が3倍を越えるような高倍率延伸の際に延伸応力に耐えきれずフィルムのクリップ外れが生じやすくなるため好ましくない。
【0020】なお、本発明において、1つのクリップがフィルム幅方向を把持している長さをクリップ把持幅L1 とし、フィルム長手方向を把持している長さをクリップ把持幅L2 (mm)とした。また、フィルム拘束力とは、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム両端部をクリップで把持し、(株)今田製作所製のプッシュスケール「PS−10K」及び「PSH−100K」を使用して、フィルムを引張り速度0.3m/分で長手方向に走行させた際の走行力を測定し、該走行力をクリップの拘束力x(N)とした。さらに、フィルム把持力とは、自作製フィルム把持力試験機(クリップテスター)を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム両端部をクリップで把持し、フィルムを引張り速度0.3m/分で幅方向に引張った際に、フィルムがクリップ外れを起こした際の張力を測定し、該張力をクリップのフィルム把持力y1 (N)とし、同様にして測定した厚み300μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム把持力をy2 (N)とした。
【0021】また、本発明においては、熱処理及び/または冷却工程におけるテンタークリップの把持部の形態はロール形状であることが好ましい。
【0022】ここで、本発明における熱処理及び/または冷却工程における把持部とは、図1〜4に示す下ロール3と上ロール9を指し、円柱形状、そろばん玉形状および太鼓ロール形状等がより好ましい。特に、円柱形状のものを用いることはフィルム両端部を把持しながらフィルムを長手方向に自由に移動させることが容易となるため、該テンタークリップの機能性を向上させる上でも好ましいことである。
【0023】また、この際、該把持部の上ロール1個と下ロール1個を一組とした場合、該組数に対する該クリップ把持幅L2 の比は1/60以上が好ましく、更に好ましくは1/30以上であり、また該把持部のロールの表面粗さを表すパラメータである最大高さは2μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下、更に好ましくは0.6μm以下である。
【0024】以下に、本発明のテンタークリップを図面に基づいて説明する。
【0025】図1ないし図4は、本発明の一実施例に係るテンタークリップの構造例をモデル的に示した概略図であり、図1および図4は本発明のテンタークリップのフィルム解放状態を示す側断面図、図2は延伸工程におけるテンタークリップのフィルム把持状態を示す側断面図、図3は熱処理及び/または冷却工程におけるテンタークリップのフィルム把持状態を示す側断面図である。
【0026】図において、1はフィルム4の幅方向端部を把持・解放するテンタークリップを示しており、テンタークリップ1はクリップ台(図示せず)に支持されている。テンタークリップ1はベース1aとアーチ形に起立した形状の起立部1bを有し、ベース1aの凹部には軸2に支持されフィルム長手方向に回転自在に軸支され、内部に軸受材が組み込まれた下ロール3が複数個設けられている。
【0027】起立部1bの先端部にはクリップレバー軸5が設けられている、6はそのほぼ中央部を軸5に回転自在に軸支されたクリップレバーで、クリップレバー6は軸5による軸支部を境に上部レバー6aと下部レバー6bとで構成されている。下部レバー6bにはベース1aとほぼ同等の長さを有する爪部7と、凹部にフイルム長手方向に回転自在に軸8に支持され、内部に軸受材が組み込まれた上ロール9が複数個設けられている。ここで、下ロール3と上ロール9の内部に組み込む軸受材はすべり軸受やベアリング等を用いる。
【0028】10はクリップレバー6のフィルム把持・解放の位置を保持するための圧縮コイルバネである。11はクリップクローザーであり、テンター入口部に、12はクリップ制御板であり、熱処理及び/または冷却工程に、13はクリップオープナーであり、テンター出口部にそれぞれ設けられている。
【0029】次に、テンタークリップの動作について説明する。
【0030】テンター入口部では図1に示すようにテンタークリップは解放状態であり、フィルム4がテンタークリップ1のベース1aと下部レバー6bとの間に挿入される。次に、テンター入口部に設けられたクリップクローザー11により図2に示すように、クリップレバー6がクリップレバー軸5を中心に回動し、フィルム4の端部をベース1aの下ロール3と下部レバー6bの爪部7で把持される。その後、テンタークリップ1はレール(図示せず)に案内され延伸工程でフィルム4の横延伸が行われる。ここで、下ロール3と上ロール9の関係は、クリップレバー軸5の中心から下ロール3の外周(下ロール3の上面)に向け引いた垂線Sの長さと、クリップレバー軸5の中心に上ロール9の下面までの最大径Rが同じかまたは短くなっており、クリップクローザー11の作用により下ロール3に当接せず、下ロール3の外側(フィルム4の中央方向)へ回動可能な構造になっている。一方、下部レーバ6bの爪部7は軸心がクリップレバー5の中心とXだけ離れたところにオフセットされており、またその軸長Lは垂線Sの長さと等しいか、または長く設定されいるため、フィルム4が横延伸工程でa方向に引っ張られと、それにつられてクリップレバー軸5を中心に爪部7が回動するため、下ロール3との間で、フィルム4の把持力が増大するセルフロック機構となっているため、横延伸工程でフィルム4がクリップから外れることがない。
【0031】延伸工程が終わると、クリップはレールに案内され熱処理及び/または冷却工程に入る。
【0032】テンタークリップ1は熱処理及び/または冷却工程で、上部レバー6aがクリップ制御板12と当接し、クリップレバー6が図3に示すようにクリップレバー軸5を中心に回動し、フィルム4の耳部をベース1aの下ロール3と下部レバー6bの上ロール9で把持する。ここで、下ロール3と上ロール9はフィルム4の長手方向に回転自在となっているため、フィルム4の端部はフィルム4の長手方向に自由に移動が可能で、熱処理及び/または冷却工程で発生する収縮応力に応じてテンタークリップ上をフィルム長手方向に移動する。その結果、フィルム中央部に対する端部の遅れを低減でき、ボーイング現象を抑制して幅方向に物性が均一なフィルムを容易に得ることが可能となる。
【0033】その後、テンタークリップ1はレールに沿ってテンター出口部へ案内される。テンター出口部にはクリップオープナー13があり、テンタークリップ1は上部レバー6aがクリップオープナー13に当接し、クリップレバー6が図4に示すようにクリップレバー軸5を中心に回動し、フィルム4の端部をテンタークリップ1から解放する。その後、テンタークリップ1はレールに案内されて180度反転して入口部へ戻る。
【0034】上述したような把持部機構であるテンタークリップとすることにより、テンターにおける延伸工程と、熱処理及び/または冷却工程で機構を容易に変化させることが可能となるのである。
【0035】本発明において、該テンタークリップを用いて、テンターにおいて延伸、熱処理及び/または冷却することは、熱寸法安定性、機械特性に優れ、平面性が良好で幅方向の物性が均一なフィルムを容易に得ることができるため好ましい。特に、上記特性を持った熱可塑性樹脂フィルムを得る上で有効である。
【0036】ここで、本発明における熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ナイロン6,ナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、その他、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂などを用いることができる。また、これらの樹脂はホモ樹脂であってもよく、共重合またはブレンドであってもよい。また、これらの樹脂の中に、公知の各種添加剤、例えば酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子および有機粒子などが添加されてもよい。特に無機粒子や有機粒子はフィルムの表面に易滑性を与え、フィルムの取り扱い性を高めるためにも有効である。
【0037】また、本発明のフィルムは、積層構造をとっていることも好ましい。積層構造としては、フィルムを横延伸する前に塗材をフィルムに塗布して、テンター内で溶媒の乾燥、横延伸および熱処理を行う方法が好ましく行われる。例えば、インクやトナーなどの易接着性、静電気を抑える帯電防止性などの多様な特性の付与に効果的である。
【0038】さらに、本発明における熱可塑性樹脂フィルムは、フィルムの長手方向と、長手方向と垂直な方向(幅方向)に分子を配向させることが好ましい。具体的には、溶融押出し、実質的に無配向なフィルムを長手方向に延伸後、幅方向に延伸する方法、幅方向に延伸後、長手方向に延伸する方法、あるいは、長手方向、幅方向同時に延伸する方法、また長手方向の延伸、幅方向の延伸を複数回組み合わせて行ってもよい。
【0039】本発明においては、より熱寸法安定性に優れ、幅方向の物性が均一なフィルムを得るために、該テンターにおいて、長手方向に弛緩処理を施すことが好ましく、該弛緩率は0.5%以上、10%以下とすることが好ましい。
【0040】さらに、熱寸法安定性に優れ、平面性が良好で幅方向の物性が均一なフィルムを効果的に得るためのテンターにおける製膜方法としては、例えば、長手方向に一軸延伸したフィルムをテンターにおいて幅方向に延伸した後の熱処理について、長手方向に弛緩処理を施し、引き続き、熱固定を施すことは、熱寸法安定性に優れたフィルムを得る上で有効であるが、特に幅方向の物性を均一にする上で効果的である。この際、弛緩率は2%以上、10%以下、好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下で、弛緩処理温度は(Tm−165)℃〜(Tm−20)℃で熱固定温度に昇温しながら行うのが好ましい。また、熱固定温度は(Tm−30)℃〜Tm、好ましくは(Tm−20)℃〜Tmである。
【0041】また、長手方向に一軸延伸したフィルムをテンターにおいて幅方向に延伸して熱処理を施した後、長手方向に弛緩処理を施すことは、より熱寸法安定性に優れたフィルムを得る上で効果的である。この際、熱処理温度は(Tm−30)℃〜Tm、好ましくは(Tm−20)℃〜Tmとするのが好ましい。また、弛緩率は0.5%以上、5%以下であることが好ましく、更に好ましくは3%以下で、弛緩処理温度は(Tg+135)℃〜(Tg+25)℃で徐冷しながら行うのがより効果的である。
【0042】もちろん、テンターにおける各処理条件(温度、時間など)を適宜変更し最適化することや、幅方向の熱収縮率を抑えるために熱処理後に冷却しながら幅方向に弛緩処理を施すことも好ましいことである。
【0043】次に本発明の製造法について具体的に説明するが、かかる例に限定されるものではない。
【0044】また、ここでは熱可塑性樹脂としてポリエチレンテレフタレートの例を示すが、これに限定されるものではない。
【0045】まず、重合したポリエチレンテレフタレートのペレットを180℃で5時間真空乾燥した後、270〜300℃の温度に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に押出す。この溶融されたシートを、ドラム表面温度25℃に冷却されたドラム上に静電気力により密着固化し、実質的に非晶状態の成形フィルムを得る。このフィルムを80〜120℃の加熱ロール群で加熱し長手方向に3〜6倍に一段もしくは多段で縦延伸し、20〜50℃のロール群で冷却する。
【0046】続いて、テンターに導いてこのフィルムの両端部をクリップで把持しながら、80〜140℃に加熱された熱風雰囲気中で予熱し、幅方向に3〜6倍に横延伸し、熱処理を行い二軸延伸フィルムを得る。この際、熱処理温度は220〜255℃、好ましくは235〜250℃にするのが熱寸法安定性に優れたフィルムを得るのに有効である。
【0047】また、横延伸後に90〜235℃で熱固定温度に昇温しながら長手方向に2〜10%の弛緩処理を施し、引き続き200〜255℃で熱固定を行うことは低熱収縮性のフィルムが得られるだけでなく、幅方向における物性をより均一化する上でも効果的である。次いで、熱処理後に120〜210℃で冷却する。この冷却区間においては幅方向の熱収を抑えるために、幅方向に5%以下の弛緩処理を行うことが好ましい。また、より熱寸法安定性のフィルムを得るには、引き続き100〜210℃において長手方向に0.5〜5%の弛緩処理を行うことが好ましい。
【0048】ここで、本発明において、テンターで使用するクリップはクリップ把持部の機構が図1〜4に示すような、テンターにおける延伸工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動せず、熱処理及び/または冷却工程ではクリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動可能となる機構に変化するものを使用することにより、熱寸法安定性に優れ、かつ、幅方向の物性が均一なフィルムを、平面性を悪化させることなく大規模な装置を用いずに容易に得ることが可能となる。また、この際、延伸工程におけるy2 /L2 (N/mm)が1(N/mm)以上で、熱処理または冷却工程におけるx/L1 (N/mm)が2(N/mm)以下で、y1 /L2 (N/mm)が0.5(N/mm)以上であるもを用いることが好ましく、さらに、熱処理及び/または冷却工程におけるテンタークリップの把持部の形態はロール形状のものであることが好ましい。また、該把持部の上ロール1個と下ロール1個を一組とした場合、該組数に対する該クリップ把持幅L2 の比は1/60以上が好ましく、該把持部のロールの表面粗さを表すパラメータである最大高さは2μm以下が好ましい。このようにして得られたフィルムを室温まで徐冷して巻き取ることで本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0049】
【物性値の評価法】(1)クリップのフィルム把持力、及びフィルム拘束力厚み75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム両端部をクリップで把持し、(株)今田製作所製のプッシュスケール「PS−10K」及び「PSH−100K」を使用して、室温でフィルムを引張り速度0.3m/分で長手方向に走行させた際の走行力を測定し、該走行力をクリップの拘束力x(N)とした。
【0050】また、自作製フィルム把持力試験機(クリップテスター)を用いて、厚み75μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム両端部をクリップで把持し、室温でフィルムを引張り速度0.3m/分で幅方向に引張った際に、フィルムがクリップ外れを起こした際の張力を測定し、該張力をクリップのフィルム把持力y1(N)とし、同様にして測定した厚み300μmのポリエチレンテレフタレートのフィルム把持力をy2 (N)とした。
(2)熱収縮率幅10mm、長さ250mmにサンプリングした試料に、約200mm間隔となるように直線を引き、その間隔の長さを万能投影機により測定し、L0 (mm)とする。次に、該サンプルを150℃に加熱された熱風オーブン中で30分間保持し、その後、室温で2時間冷却した後、再び、直線の間隔を万能投影機で正確に測定し、1 (mm)とする。この測定結果から熱収縮率=((L0 −L1)/L0)×100)(%)とし、n数5サンプルの平均値を採用した。
(3)フィルム幅方向の物性均一性フィルム幅方向における配向角の最大値と最小値の差z(°)のフィルム幅Lt(m)に対する比をz/Lt(°/m)とし、以下のようにしてフィルム幅方向物性均一性を判定した。なお、配向角は、白色光を光源として偏光顕微鏡を用い、その消光値から配向主軸とフィルム幅方向との狭角を求め配向角(°)とした。また、配向主軸は幅方向を0°、幅方向と垂直な方向(長手方向)を90°とした。
【0051】○:z/Lt(°/m)が15°/m未満のもの。
【0052】△:z/Lt(°/m)が15°/m以上、30未満のもの。
【0053】×:z/Lt(°/m)が30°/mを越えるもの。
(4)F−5値オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置テンシロンAMF/RTA−100を用いて、幅10mm、試長200mmとなるようにセットし、引張り速度200m/分、温度25℃、湿度65RH%の条件でフィルムの長手方向の5%伸長に対するF5値とした。
(5)熱特性至差走査熱量計として、セイコー電子工業株式会社製のロボットDSC「RDC220」を用い、データ解析装置として、同社製ディスクステーション「SSC/5200」を用いて、サンプル約5mgをアルミニウム製の受皿上300℃で5分間溶融保持し、液体窒素中で急冷固化した後、室温から20℃/分で昇温した。このときに観測されるガラス状態からゴム状態への移転に基づく、各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の段階状変化部分の曲線とが交わる点の温度をガラス転移点(Tg)とした。また、融解ピークの頂点の温度を融点(Tm)とした。
(6)平面性A4サイズにカットしたフィルムをコルク板の上に置き、不織布を巻き付けた棒でフィルムをしごき、空気を排除した後、以下のようにして平面性を目視で判定した。
【0054】○:コルク板から浮き上がった部分が見られないもの。
【0055】△:コルク板から浮き上がった部分が3ヶ所以下であるもの。
【0056】×:コルク板から浮き上がった部分が3ヶ所以上を越えるもの。
【0057】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0058】実施例1o−クロロフェノール中で測定した固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートを用いた。DSCを用いて熱特性を測定したところ、Tg:75℃、Tm:255℃であった。このポリエチレンテレフタレートのペレットを180℃で5時間真空乾燥した後に、270〜300℃に加熱された押出機に供給し、Tダイよりシート状に成形した。さらにこのフィルムを表面温度25℃の冷却ドラム上に静電気力で密着固化して未延伸フィルムを得た。
【0059】この未延伸フィルムを80〜120℃の加熱ロール群で加熱し長手方向に3.3倍一段階で縦延伸し、20〜50℃のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。続いて、該一軸延伸フィルムの両端部をクリップで把持しながらテンターに導き、90℃に加熱された熱風雰囲気中で予熱し、95℃の熱風雰囲気中で横方向に4倍に横延伸し二軸配向フィルムを得た。
【0060】このようにして二軸配向されたフィルムをそのままテンター中で、95〜230℃の昇温区間でフィルムをクリップ把持部で長手方向に移動させて2%弛緩処理を施し、引き続き250℃で熱固定を行い、熱処理後、いったん200℃まで緊張下で冷却し、200〜120℃の冷却区間でテンターのレール幅を縮めて幅方向に3%、長手方向に2.5%弛緩処理を施し、さらにテンターから取り出し、フィルムエッジ部分をトリミングして巻き取り、厚み75μmの本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0061】なお、この際に用いたテンタークリップは、図1〜4に示すようなクリップの機構であり、具体的には延伸工程では把持部上部の爪部と下部の円柱形状であるロール形状のものとの間で、フィルム長手方向を移動させずにフィルム両端部を把持する機構となり、熱処理及び冷却工程ではクリップ把持部上部、下部共に円柱形状のロール形状のものが3組あり、該上ロールと下ロール間でフィルムが長手方向に移動、かつフィルム幅方向における両端部を把持する機構に変化するクリップを用いた。
【0062】また、該クリップ把持部の上ロールと下ロールの表面粗さを表すパラメータである最大高さは0.6μmであった。さらに、クリップ把持幅L1 は10mmでL2 は73mmであり、延伸工程でのフィルム把持力は350(N)でありy2/L2 が4.8(N/mm)で、熱処理及び冷却工程でのフィルム拘束力は3(N)でありx/L1 が0.3(N/mm)、フィルム把持力が57(N)でありy1 /L2 が0.78(N/mm)であった。
【0063】得られた熱可塑性樹脂フィルムの特性を表1に示す。
【0064】平面性が良好で、機械的特性、熱寸法安定性に優れ、幅方向における物性も均一化されたものが得られた。
【0065】実施例2実施例1と同様にして一軸延伸フィルムを得た後、引き続き、テンターに導き、実施例1でのテンタークリップの把持部のロールの組数が2組であり、延伸工程でのフィルム把持力は58.4(N)でありy2 /L2 が0.8(N/mm)で、熱処理または冷却工程でのフィルム拘束力は3(N)でありx/L1 が0.3(N/mm)、フィルム把持力が57(N)でありy1 /L2 が0.78(N/mm)であるテンタークリップを用いて、横延伸倍率を2.5倍に変更する以外は、実施例1と全く同様にして、テンターから取り出し、フィルムエッジ部をトリミングして巻き取り、厚み75μmの本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0066】得られた熱可塑性樹脂フィルムの特性を表1に示す。
【0067】延伸工程におけるクリップのフィルム把持力は小さい値であったが、横延伸倍率が低倍であったため、クリップ外れを起こすことなく、平面性が良好で、機械的特性、熱寸法安定性に優れ、幅方向における物性も均一化されたものが得られた。
【0068】実施例3実施例1と同様にして一軸延伸フィルムを得た後、引き続き、テンターに導き、実施例1でのテンタークリップを該把持部のロールの表面粗さを表すパラメータである最大高さが3μmであり、延伸工程でのフィルム把持力は480(N)でありy2 /L2 が6.6(N/mm)で、熱処理または冷却工程でのフィルム拘束力は25(N)でありx/L1 が2.5(N/mm)、フィルム把持力が65(N)でありy1 /L2 が0.89(N/mm)であるテンタークリップを用いて、厚みが200μmのフィルムを得る以外は、実施例1と全く同様にして、テンターから取り出し、フィルムエッジ部をトリミングして巻き取り本発明に従い熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0069】得られた熱可塑性樹脂フィルムの特性を表1に示す。
【0070】クリップの拘束力が大きかったが、フィルム厚みが厚かったため若干フィルムが長手方向に移動しにくく、設定値よりも低い実行弛緩率となったが弛緩処理を施すことができた。また、実施例1と比較して熱収縮率が若干高く、幅方向における物性も若干不均一なものとなった。
【0071】比較例1実施例1と同様にして一軸延伸フィルムを得た後、引き続き、テンターに導き、実施例1でのテンタークリップをフィルム把持部の機構が通常のテンタークリップに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、テンターから取り出し、フィルムエッジ部をトリミングして巻き取り、厚み75μmの本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0072】なお、延伸工程でのフィルム把持力は510(N)であり、y2 /L2 が7(N/mm)で、熱処理または冷却工程でのフィルム拘束力は510(N)でありx/L1 が51(N/mm)、フィルム把持力が510(N)でありy1 /L2が6.99(N/mm)であった。
【0073】得られた熱可塑性樹脂フィルムの特性を表1に示す。
【0074】クリップのフィルム拘束力が大き過ぎるために、フィルムが長手方向に移動できず、結果として、弛緩処理が施すことができなかったため、熱収縮率が大きく、幅方向における物性も不均一なものとなった。
【0075】比較例2実施例1と同様にして一軸延伸フィルムを得た後、引き続き、テンターに導き、実施例1のテンタークリップをクリップ把持部の機構が延伸工程においても熱処理及び冷却工程と同様に、クリップ把持部内においてフィルムが長手方向に移動可能であるものに変更する以外は、実施例1と全く同様にして、テンターから取り出し、フィルムエッジ部をトリミングして巻き取り、厚み75μmの本発明の熱可塑性樹脂フィルムを得た。なお、延伸工程でのフィルム把持力は350(N)でありy2 /L2 が4.8(N/mm)で、熱処理または冷却工程でのフィルム拘束力は3(N)でありx/L1 が0.3(N/mm)、フィルム把持力が57(N)でありy1 /L2 が0.78(N/mm)であった。
【0076】得られた熱可塑性樹脂フィルムの特性を表1に示す。
【0077】フィルム把持部の機構が変化しないため、延伸工程でもクリップ把持部でフィルムが長手方向に移動可能となり、実質的に長手方向に弛緩処理が施されてしまったため、幅方向における物性も不均一で、平面性が劣ったものとなった。
【0078】
【表1】

【0079】
【発明の効果】本発明によれば、フィルム幅方向における物性が均一であり、かつ熱寸法安定、機械的特性に優れ、平面性も良好な二軸配向熱可塑性樹脂フィルムを生産性よく得ることが可能となる。




 

 


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