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発明の名称 複合半透膜およびその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−179061(P2001−179061A)
公開日 平成13年7月3日(2001.7.3)
出願番号 特願平11−364020
出願日 平成11年12月22日(1999.12.22)
代理人
発明者 河野 俊司 / 房岡 良成
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 多孔性支持膜上に設けた分離機能層を有し、かつ、分離機能層の膜厚をT(μm)とし、多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さをL(μm)としたとき、TとLとが下記式を満足していることを特徴とする複合半透膜。
L/T≧50【請求項2】 分離機能層が架橋ポリアミドを含んでいる、請求項1に記載の複合半透膜。
【請求項3】 多孔性支持膜上で多官能アミンの水溶液と多官能酸塩化物の有機溶媒溶液とを接触させ、界面重縮合により多孔性支持膜上に分離機能層を形成するにあたり、上記水溶液および上記有機溶媒溶液として、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり5,000個以下である溶液を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項4】 界面重縮合を、エステル基、エーテル基、スルホン酸基、水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む化合物の存在下で行う、請求項3に記載の複合半透膜の製造方法。
【請求項5】 界面重縮合をアシル化触媒の存在下で行う、請求項3または4に記載の複合半透膜の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、海水や灌水の淡水化、半導体洗浄などに利用される超純水の製造、上水の浄化、ボイラー用水の製造、排水や下水を再利用するための処理、自動車の下塗り塗装などに用いる電着塗料の回収、果汁の濃縮やワイン製造などの食品工業用途などに好適に使用できる、複合半透膜およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、省エネルギー化や低コスト化に有利であることから、逆浸透膜などの膜を利用した液体の分離技術が発展し、特に、機械的強度に優れた支持層の上に分離機能層を設けた複合膜の開発が進められている。これら複合膜は、たとえば、脂肪族ポリアミドや芳香族ポリアミドなどを用いた膜が主体であるが、より高い透水性や溶質の排除性を達成するためには、素材面からの研究だけでは限界があった。
【0003】そこで、たとえば、特開平9−85068号公報や特開平9−141071号公報では、分離機能層表面の形態を最適化することが開示されているが、表面形態を規定しただけでは、透水性および溶質の排除性に未だ不足があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記した従来の問題点を解決し、透水性に優れ高排除率を有する複合半透膜およびその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するための本発明は、多孔性支持膜上に設けた分離機能層を有し、かつ、分離機能層の膜厚をT(μm)とし、多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さをL(μm)としたとき、TとLとが下記式を満足している複合半透膜を特徴とする。
【0006】L/T≧50ここで、分離機能層が架橋ポリアミドを含んでいることも好ましい。
【0007】また、多孔性支持膜上で多官能アミンの水溶液と多官能酸塩化物の有機溶媒溶液とを接触させ、界面重縮合により多孔性支持膜上に分離機能層を形成するにあたり、上記水溶液および上記有機溶媒溶液として、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり5,000個以下である溶液を用いる上記の複合半透膜の製造方法も好ましい。
【0008】さらに、界面重縮合を、エステル基、エーテル基、スルホン酸基、水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一つの官能基を含む化合物の存在下で行うことも好ましく、界面重縮合をアシル化触媒の存在下で行うことも好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の複合半透膜は、多孔性支持膜上に設けた分離機能層を有し、かつ、分離機能層の膜厚をT(μm)とし、多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さをL(μm)としたとき、TとLとがL/T≧50なる関係を満足している。L/Tが50未満であれば、分離機能層の表面積に対して膜厚が厚くなりすぎて、透過流束や排除率が低下する傾向がある。透過流束や排除率をより高めるためには、L/Tを100以上とすると好ましく、150以上とすればより好ましい。
【0010】ここで、分離機能層の膜厚T、および、多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さLとは、以下に述べる方法により測定される値をいう。
【0011】まず、TEM用の超薄切片作成のため、サンプルを水溶性高分子で包埋する。水溶性高分子としては、サンプルの形状を保持できるものであれば用いることができる。次に、断面観察を容易にするためOsO4で染色し、これをウルトラミクロトームで切断して超薄切片を作成する。得られた超薄切片を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面写真を撮影する。観察倍率は、分離機能層の膜厚により適宜決定すればよいが、分離機能層の断面形状が観察でき、かつ、測定が局所的にならないようにするため、たとえば、膜厚が10〜100nm程度であれば、観察倍率を5〜10万倍とするとよい。
【0012】上記のようにして得られた断面写真について、分離機能層の膜厚と多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さを測定する。測定の方法について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施態様に係る複合半透膜の断面を表す概略模式図であり、多孔性支持膜1の上に分離機能層2が配されている。まず、多孔性支持膜を等間隔に10点に分けた点a、b、・・・に対応する分離機能層表面の点A、B、・・・を定める。ついで、点A、B、・・・の接線と垂直な方向における分離機能層の厚みTA、TB、・・・を測定する。このとき、たとえば、点bに対応する点が点B1、B2、B3と複数ある場合は、それぞれについて測定を行い、その平均値(TB1+TB2+TB3)/3をTBとする。得られた厚みTA、TB、・・・についての平均値(TA+・・・+TJ)/10を分離機能層の膜厚Tとする。
【0013】また、分離機能層表面の実長さLは、多孔性支持膜の長さ1μmに対応する部分の分離機能層表面の実長さをいい、図1中で実線Mで表される部分の長さをいう。
【0014】上記のようにして得られた値によってL/Tを算出する。
【0015】分離機能層の素材としては、透過流束などの透水性が高く、排除率に代表される選択的な分離性能を高くすることができる素材であることが好ましく、たとえば、ポリアミド、ポリエステル、セルロース、ポリアクリル、ポリメタクリルなどを用いることができる。特に、ポリアミドは透過流束、排除率ともに高くすることができ、さらに、架橋ポリアミドであればさらにそれらの性能を高めることができ、かつ、機械的強度や耐薬品性なども向上させることができ好ましい。
【0016】多孔性支持膜としては、均一で微細な孔、あるいは片面からもう一方の面まで徐々に大きな孔径を持つ微細な孔を有する形態のものが好ましい。孔径としては、1〜100nmの範囲内であると好ましい。孔径が1nmを下回ると、透過流束が低下する傾向にあり、100nmを超えると多孔性支持膜の強度が低下したりしやすい。また、多孔性支持膜の厚みは、1μm〜5mmの範囲内にあると好ましく、10〜100μmの範囲内にあるとより好ましい。厚みが1μmを下回ると多孔性支持膜の強度が低下しやすく、5mmを超えると取り扱いにくくなる。
【0017】上記の孔径は、走査型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0018】多孔性支持膜に用いる素材としては、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして用いることができる。上記のうち、セルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどを用いると好ましい。中でも、ポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーやコポリマーが好ましい。さらに、これらの素材の中でも、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であるポリスルホンを用いることが特に好ましい。
【0019】また、多孔性支持膜は、布や不織布、紙などで裏打ちし、機械的な強度を増しておくと好ましい。
【0020】多孔性支持膜としては、たとえば、「オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート」,No.359(1968)に記載されているように、ポリスルホンのジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚みになるように注型し、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、水などの凝固液中で凝固させることによって得たものを用いることができる。
【0021】次に、複合半透膜の製造方法について述べる。
【0022】本発明の複合半透膜は、多孔性支持膜の上に分離機能層を設けることにより製造することができるが、その方法として、たとえば、分離機能層を構成するポリマなどを多孔性支持膜上に塗布したり、塗布後にポリマをさらに架橋反応させて分離機能層とすることもできる。架橋反応を行うことにより、耐薬品性や耐擦過性などの耐久性、排除率などを向上させることができる。また、多官能アミンと多官能酸塩化物とを多孔性支持膜上で接触させ、界面重縮合させて分離機能層を形成することもできる。界面重縮合反応を用いる場合は、分離機能層の膜厚を制御しやすく、また、非常に薄い膜を形成することができるため好ましい。
【0023】以下、界面重縮合反応を利用した場合について説明する。
【0024】まず、多孔性支持膜に多官能アミンを接触させる。接触の方法としては、多官能アミンが多孔性支持膜上に均一にかつ連続的に配されればよく、たとえば、多官能アミンを多孔性支持膜上にコーティングする方法、多孔性支持膜を多官能アミンに浸漬する方法を用いることができる。
【0025】多官能アミンとしては、一分子中に少なくとも2個の1級および/または2級アミノ基を有するアミン化合物を用いることができ、たとえば、2個のアミノ基がオルト、メタ、パラ、いずれかの位置関係でベンゼンに結合したフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、キシリレンジアミンなどの芳香族多官能アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、4−アミノメチルピペラジンなどの脂環式多官能アミンを用いるとよい。これらのアミンは単独で用いても、混合して用いてもよい。また、単官能アミンを加えると、膜の透過流束を向上させることができ好ましい。多官能アミンはそのまま用いても良いが、分離機能層の膜厚を適度に制御するため溶液の状態で用いることが好ましい。用いる溶媒としては、多官能アミンの溶解性や、毒性、引火性、コストなどを考慮すると水が好ましい。
【0026】水を用いる場合、水溶液中の多官能アミンの濃度を、0.1〜20重量%、より好ましくは0.5〜10重量%の範囲内とすれば、分離機能層の膜厚を精度よく制御することができる。
【0027】ここで、多官能アミンの水溶液中に、ほこりや鉄錆、モノマーの不溶分、ポリマーくず、藻などの懸濁物質が存在すると、形成される分離機能層の形態が損なわれやすく、たとえば、ピンホールが発生して、溶質分離性能が著しく低下する可能性がある。そこで、本発明においては、この多官能アミンの水溶液として、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり5,000個以下、より好ましくは1,000個以下、さらに好ましくは500個以下である水溶液を用いる。これは、後述する多官能酸塩化物の有機溶媒溶液を用いる場合も同様である。
【0028】ここで、懸濁物質の外接円相当径や含有量の測定は、懸濁物質に光線を照射して生ずる陰を測定して外接円相当径を導き出す方式のパーティクルカウンターを用いて行う。
【0029】溶液中の懸濁物質を除去する方法としては、たとえば、膜ろ過や蒸留により行うことができる。膜ろ過についていえば、精密ろ過膜や限外ろ過膜、逆浸透膜などを用いることができ、中でも、限外ろ過膜や精密ろ過膜を用いると、より細かな懸濁物質を除去することができ好ましい。また、逆浸透膜によるろ過により細かな懸濁物質を除去したのち、容器などから混入する大きな粒子を除去するためにさらに精密ろ過膜を用いてろ過を行ったり、また、逆浸透膜によるろ過を効率よく行うために予め精密ろ過膜や限外ろ過膜を用いてろ過を行ったりするなど、組み合わせてろ過を行うことも効果的である。
【0030】上記のようにして調製した水溶液と多孔性支持膜との接触時間は、分離機能層の膜厚を適度に制御する観点から、5秒〜10分間の範囲内であると好ましく、1〜3分間の範囲内であるとさらに好ましい。
【0031】次に、多官能アミンやその水溶液の液滴が膜上に残らないように、十分に液切りする。液滴が残ると、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能の低下を招く傾向がある。液切り方法は、たとえば、特開平2−78428号公報に記載されているように、多孔性支持膜を垂直方向にして過剰の液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付けて強制的に液切りする方法などを用いるとよい。
【0032】こうして得られた多官能アミンが多孔性支持膜上に配された膜に、多官能酸塩化物を接触させる。接触の方法は特に問わないが、膜厚を適度にコントロールすることが容易であることから、多官能酸塩化物を溶媒に溶解し、この溶液を、たとえば、塗布や噴霧や浸漬などにより接触させ、界面重縮合反応により架橋ポリアミドを含む分離機能層を形成させると好ましい。
【0033】多官能酸塩化物としては、一分子中に少なくとも2個の酸塩化物基を有する酸塩化物化合物を用いることができ、たとえば、3官能酸塩化物であるトリメシン酸クロライド、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸トリクロライド、1,2,4−シクロブタントリカルボン酸トリクロライドを用いることができる。また、2官能酸塩化物としては、たとえば、ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロライド、テレフタル酸クロライド、イソフタル酸クロライド、ナフタレンジカルボン酸クロライドなどの芳香族2官能酸塩化物や、アジポイルクロライド、セバコイルクロライドなどの脂肪族2官能酸塩化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロライドなどの脂環式2官能酸塩化物を用いることができる。これらの酸塩化物は単独で用いてもよく、混合物で用いてもよい。また、透過流束を向上させるために単官能酸塩化物を混合することも好ましい。
【0034】上記溶液の多官能酸塩化物濃度は、膜厚を制御しやすい範囲内にすることが好ましく、具体的には、0.01〜5重量%の範囲内、より好ましくは0.02〜2.0重量%の範囲内にあるとよい。
【0035】上記溶液に用いる溶媒は、多官能アミン水溶液を用いた場合は、その水溶液と非混和性であり、かつ多官能酸塩化物を溶解し、また多官能酸塩化物と有為な速度では反応せず、多孔性支持膜を溶解などにより破壊しないものが好ましい。また、毒性や引火性、コストなどが低いものがよい。これらの条件を満たす溶媒の例としては、たとえば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナンn−デカンなどの炭化水素、クロロホルム、四塩化炭素、トクロロエタン、ジクロロメタン、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素がある。中でも、オゾン層保護の観点から、オゾン層を破壊しにくいものであることや、入手のしやすさ、取り扱いの容易さを考慮すると、炭化水素を用いることが好ましい。さらに、常温、常圧で揮発しにくいものであれば取り扱いやすいため、炭素数が6以上である炭化水素を用いると好ましく、炭素数が8以上、または引火点が10℃以上の炭化水素を用いるとより好ましく、さらに好ましくは引火点が10〜300℃の範囲内の炭化水素を用いることが望ましい。引火点が10℃未満では揮発しやすく取り扱いが不便であり、また、引火点が300℃を超えると、粘性が増大してやはり取り扱いにくくなる。上記の条件を満たす溶媒としては、たとえば、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカンなどの直鎖状炭化水素があり、同炭素数の分岐鎖状炭化水素も同様に好適に用いることができる。これらは、単独で用いても、混合して用いてもよい。
【0036】この多官能酸塩化物を含む有機溶媒溶液は、多官能アミンの水溶液の場合と同様に、溶液中の懸濁物質をできるだけ除去しておくことが好ましく、具体的には、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり5,000個以下、より好ましくは1,000個以下、さらに好ましくは500個以下である溶液を用いる。懸濁物質を除去する方法としては、多官能アミンの水溶液の場合と同様に膜ろ過や蒸留により行うことができる。
【0037】多官能酸塩化物を含む溶液の接触時間は、多官能アミンが多官能酸塩化物と反応し、多孔性支持膜上に薄膜を形成しうるだけの十分な接触時間があればよい。具体的には、1秒〜10分間の範囲内であると好ましく、20秒〜2分の範囲内であるとより好ましい。接触時間が1秒を下回ると、膜に欠点が発生しやすくなり、10分を超えると、膜が厚くなりすぎ透過流束が低下する傾向にある。
【0038】分離機能層は、上記のように、多官能アミンと多官能酸塩化物を多孔性支持膜上で接触させて、界面重縮合により形成させることができるが、この重縮合反応を種々の添加剤の存在下で行うことにより、反応速度や膜形態を制御し、複合半透膜の性能を向上させることができる。
【0039】添加剤としては、たとえば、アシル化触媒のような界面重縮合反応を促進させるものや、反応には直接関与しないものの反応の場を変化させる界面活性剤や極性化合物を用いることができる。
【0040】アシル化触媒としては、たとえば、ε−カプロラクタム、N−メチル−ε−カプロラクタム、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、2−ピペリドン、テトラメチルウレア、ビス(ペンタメチレン)ウレア、1,1’−カルボニルジピロリジン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミドのようなアミド化合物を用いることができる。
【0041】またその他の触媒として、相関移動触媒を用いることができる。相間移動触媒は、水相と有機相の間の反応を促進する効果が有し、多官能アミンの水溶液と多官能酸塩化物の溶液を用いて界面重縮合を行う場合に効果がある。具体的には、たとえば、n−ヘプチルトリエチルアンモニウムクロライド、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(Makoszaの触媒)、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライドのような4級のアンモニウム塩や、ホスホニウム塩を用いることができる。
【0042】界面活性剤としては、たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム(DSS)やドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを用いることができる。
【0043】また、極性化合物としては、分子中にエーテル基やエステル基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基などの官能基や分極している結合を含む化合物が好ましい。中でも、エステル基やエーテル基、カルボキシル基を含む化合物は透過流束を高める効果が高く好ましい。
【0044】上記のような添加剤の添加量は、得られる添加剤の効果や用いる多官能化合物の種類、溶媒などに合わせて適宜決定すればよいが、上記のアシル化触媒や層間移動触媒を用いる場合には、溶液量に対して5重量%以下であれば効果的に作用するため好ましく、また、界面活性剤や極性化合物を用いる場合には、溶液量に対して30重量%以下であれば効果的に作用するため好ましい。
【0045】多官能酸塩化物溶液を塗布して分離機能層を多孔性支持膜上に形成したあとは余分な溶媒や多官能酸塩化物を除去する工程を行うとよく、たとえば、膜を垂直方向に維持して過剰の溶媒を自然流下させたり、風を送って強制的に液切りしたり、液体を使用して抽出したり、洗浄したりすることにより行うことができる。
【0046】次に、膜の乾燥を行う。これは、たとえば、自然乾燥したり、送風したり、揮発性の高い溶媒に置換したりする方法を用いることができる。上記のうち、たとえば、送風により乾燥を行う場合は、特開平5−76740号公報に記載されているように、膜面での風速が2〜20m/secの範囲内、好ましくは3〜10m/secの範囲内で、温度が10〜80℃の範囲内、好ましくは20〜40℃の範囲内にある気体を膜に吹き付けて行うとよい。上記の範囲内にある気体を用いることにより、水分の過度な蒸発や、多孔性支持膜の収縮などを発生しにくくし、透水速度をより向上させた膜を得ることができる。
【0047】上記ようにして得られる複合半透膜は、それだけでも十分良好な分離性能を有するが、さらに、炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液に接触させて、残存する酸塩化物を加水分解する工程や、50〜150℃の範囲内、好ましくは70〜130℃の範囲内で、1〜10分間、好ましくは2〜8分間熱処理する工程や、特開昭63−54905号公報に記載されているように塩素含有水溶液などの酸化性液体に浸漬する工程などを付加することで、膜の排除率向上や透水速度向上を図ることができる。
【0048】また、分離機能層のうえにさらにコーティング層を設けて、擦過などによる複合半透膜の物理的損傷を抑えたり、表面荷電の制御を行うことも好ましく、分離機能層の表面を改質して、透過水量や排除率などをコントロールすることも好ましい。コーティング層を構成する材質としては、たとえばポリビニルアルコールを用いると好ましい。また、表面改質を行うには、前記コーティングのような方法もあるが、薬液処理やプラズマ処理、UV処理など、表面の化学構造を変化させ、水酸基やカルボキシル基などの親水性基を増大させて、膜の透過流束を向上させることができる。
【0049】複合半透膜の形態としては、平膜状や中空糸膜状などとすることが好ましい。また、たとえば、布や不織布、紙などの基材のうえに複合半透膜を配して、複合半透膜の機械的強度の向上をはかることもできる。
【0050】本発明で得られる複合半透膜は、たとえば、スパイラル、チューブラー、プレート・アンド・フレームのモジュールに組み込んだり、中空糸状とした膜を束ねてモジュールに組み込んだりして用いることができる。
【0051】本発明の複合半透膜をモジュール内に組み込んで使用する場合は、0.1〜10MPaの範囲内の圧力で、好ましくは0.2〜8MPaの範囲内の圧力で用いるととよい。圧力が0.1MPaを下回ると排除率などの分離性能が低下する傾向にあり、また、10MPaを超えると、膜が変形し透過流束などの特性が変化することがある。
【0052】また、処理対象としては、たとえば、水溶液や有機物などを含有する溶液などを挙げることができるが、特に、水溶液に対して用いると好ましい。さらに、高濃度かん水や海水から淡水を製造したり、超純水の製造に用いたりすることができる。
【0053】
【実施例】実施例および比較例においては、複合半透膜の排除率(Rej)、透過流束(Flux)はそれぞれ下記(1)、(2)式を用いて算出した。
【0054】
Rej(%)=((供給液中の溶質濃度−透過液中の溶質濃度)/供給液中の溶質濃度)×100 ・・・(1)
Flux(m3・m-2・日-1)=一日あたりの透過液量/膜面積 ・・・(2)
また、実施例および比較例において使用した繊維で補強した多孔質支持体(以下、繊維補強多孔質支持体という)は、以下の手法により作成した。
【0055】縦30cm、横20cmの大きさのポリエステル繊維からなるタフタ(縦糸、横糸とも150デニ−ルのマルチフィラメント糸、織密度縦90本/インチ、横67本/インチ、厚さ160μm)をガラス板上に固定し、その上にポリスルホン(アモコ社製のUdel P−3500)の15重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を200μの厚みで室温(20℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって繊維補強多孔質支持体を得た。この繊維補強多孔質支持体の純水透過係数は、圧力0.1MPa、温度25℃で測定したとき0.005〜0.01kg/cm2・sec・atmであった。また、表面孔径は20〜50nmの範囲内であった。
(実施例1)m−フェニレンジアミンを2.0重量%、添加剤としてN−メチルピロリドンを1.5重量%含む水溶液を限外ろ過膜によりろ過処理し、溶液中の懸濁物質を除去した。ろ過後の溶液について、RION製PARTICLE COUNTER KL−11を用いて測定したところ、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり500個であった。この溶液を繊維補強多孔質支持体上に2分間接触させた後、膜面に水滴が残らないように液切りを行った。こうして得られたm−フェニレンジアミンで被覆された膜に、上記と同様にして懸濁物質を除去した(上記と同じ方法で測定した、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質は、100μlあたり100個)、トリメシン酸クロライドを0.05重量%と、添加剤としてカプリル酸エチルを1重量%とを含むヘキサン溶液を1分間接触させた。その後、液切りを1分間行って、送風器を使い20℃の気体を吹き付けて乾燥させた。次に得られた膜を、Na2CO3を1重量%、DSSを0.3重量%含む水溶液に2分間浸漬して反応を停止させた。こうして得られた膜を90℃、2分間熱水洗浄し、その後、500ppm、pH7の塩素濃度の水溶液に2分間浸漬して複合半透膜を得た。得られた複合半透膜は、0.1重量%の亜硫酸水素ナトリウム(SBS)を含む水溶液中に保存した。
【0056】上記のようにして得られた複合半透膜を、pH6.5に調整した1,500ppm食塩水を原水とし、0.5MPa、25℃の条件下で逆浸透テストを行った結果を表1に示す。
(実施例2)ヘキサン溶液に、さらに、N,N−ジ−n−ブチルホルムアミドを0.5重量%添加したほかは実施例1と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例3)N−メチルピロリドンに代えてε−カプロラクタムを5.0重量%添加したほかは実施例2と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例4)カプリル酸エチル、N,N−ジ−n−ブチルホルムアミドを添加しなかったほかは実施例3と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例5)カプリル酸エチルに代えてカプリル酸1重量%を添加したほかは実施例1と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例6)ヘキサン溶液に、さらに、N,N−ジ−n−ブチルホルムアミドを0.5重量%添加したほかは実施例4と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例7)ヘキサン溶液に、さらに、N−メチルピロリドンを0.5重量%添加したほかは実施例4と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例8)ヘキサン溶液に代えてデカン溶液にしたほかは実施例2と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(実施例9)ε−カプロラクタムを添加しなかったほかは実施例4と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
(比較例1)ε−カプロラクタムを使用せず、反応時間を10分とし、限外ろ過膜によるろ過処理を行わなかったほかは実施例4と同様にして複合半透膜を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【発明の効果】本発明によれば、分離機能層の膜厚をT(μm)とし、多孔性支持膜1μm長さあたりの分離機能層表面の実長さLとしたとき、TとLとがL/T≧50なる関係を満足しているので、分離機能層の膜厚に対して分離機能層の表面積が十分に大きく、複合分離膜の透過流束や排除率を高めることができる。
【0059】また、分離機能層が架橋ポリアミドを含んでいる場合には、透過流束や排除率をより高めることができ、また、耐久性にも優れた分離膜とすることができる。
【0060】さらに、分離機能層の形成を、多孔性支持膜上での、多官能アミン水溶液と多官能酸塩化物有機溶媒溶液との接触による界面重縮合によって行うにあたり、上記水溶液および上記有機溶媒溶液として、外接円相当径が10μm以上である懸濁物質が100μlあたり5,000個以下である溶液を用いれば、分離機能層の膜厚を薄く、かつ、均一に形成することができ、しかも、ピンホールなどが少なく、透過流束や排除率がさらに向上した複合半透膜を得ることができる。
【0061】この場合、界面重縮合をエステル基やエーテル基、スルホン酸基、水酸基、カルボキシル基、アシル化触媒の存在下で行うことにより、反応を制御することが容易となり、また、反応速度を高めることができるので、複合半透膜の生産性をより向上させることができる。




 

 


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