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発明の名称 射出装置及びその制御方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−79903(P2001−79903A)
公開日 平成13年3月27日(2001.3.27)
出願番号 特願平11−257375
出願日 平成11年9月10日(1999.9.10)
代理人 【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠 (外1名)
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206 AM32 JA07 JD03 JM01 JM04 JM12 JM16 JN04 JN13 JQ14 JQ17 JT02 
発明者 今冨 芳幸 / 平岡 和夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 (a)加熱シリンダと、(b)スクリュー本体の外周面にフライトが形成されたフライト部、及び該フライト部の前端に配設されたスクリューヘッドを備え、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、(c)該スクリューを回転させるための第1の駆動手段と、(d)前記スクリューを進退させるための第2の駆動手段と、(e)射出工程において前記第2の駆動手段を駆動して、スクリューを所定のスクリュー速度で前進させるスクリュー前進制御手段と、(f)前記射出工程において前記第1の駆動手段を駆動して、前記フライトを見掛け上スクリュー速度より低いフライト速度で前進させるフライト速度制御手段と、(g)前記スクリュー速度を多段で変更するためのスクリュー速度指令を発生させるスクリュー速度設定手段と、(h)前記フライト速度をスクリュー速度に対応させて多段で変更するためのフライト速度指令を発生させるフライト速度設定手段と、(i)該フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令を鈍らせる指令緩衝手段とを有することを特徴とする射出装置。
【請求項2】 (a)計量工程において、第1の駆動手段を駆動してスクリューを正方向に回転させ、(b)スクリュー速度を多段で変更するためのスクリュー速度指令を発生させ、(c)フライト速度を前記スクリュー速度に対応させて多段で変更するためのフライト速度指令を発生させ、(d)フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令を鈍らせ、(e)射出工程において、第2の駆動手段を駆動し、前記スクリューをスクリュー速度指令に従って所定のスクリュー速度で前進させ、かつ、前記第1の駆動手段を駆動し、前記フライトを、鈍らせられたフライト速度指令に従って見掛け上前記スクリュー速度より低いフライト速度で前進させることを特徴とする射出装置の制御方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、射出装置及びその制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、射出成形機においては、射出装置が配設され、該射出装置の加熱シリンダ内にスクリューが回転自在に、かつ、進退自在に配設され、該スクリューを駆動手段によって回転及び進退させることができるようになっている。また、前記スクリューの本体、すなわち、スクリュー本体の外周面には、螺(ら)旋状のフライトが形成され、該フライトによって溝が形成される。そして、計量工程時に、加熱シリンダ内においてスクリューを正方向に回転させながら後退させることによって、加熱シリンダに取り付けられたホッパから落下した樹脂を溶融させて前記溝に沿って前進させてスクリューヘッドの前方に蓄え、射出工程時に、スクリューを前進させることによって、スクリューヘッドの前方に蓄えられた樹脂を射出ノズルから射出するようにしている。
【0003】そのために、前記スクリューにおいては、後方から前方にかけて順に、ホッパから落下した樹脂が供給される樹脂供給部、供給された樹脂を圧縮しながら溶融させる圧縮部、及び溶融させられた樹脂を一定量ずつ計量する計量部が形成される。なお、前記溝内の樹脂は、前記樹脂供給部においてペレット状の形状を有し、圧縮部において半溶融状態に置かれ、計量部において完全に溶融させられて液状になる。
【0004】ところで、前記スクリューの外周面及び加熱シリンダの内周面の粗さが互いに等しいと、計量工程時にスクリューを回転させても、前記溝内の樹脂は、スクリューと一体的に回転させられ、前進しない。そこで、通常は、加熱シリンダの内周面がスクリューの外周面より粗くされる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の射出装置においては、前記加熱シリンダの内周面が粗くされるので、スクリューを前進させる際に、加熱シリンダの内周面の近傍の樹脂に大きな摩擦抵抗が加わってしまう。
【0006】したがって、射出工程において、後方からスクリューに加えられる射出力と、スクリューの前進に伴ってスクリューヘッドの前端に加わる射出圧力とが対応せず、十分な射出圧力で樹脂を射出することができない。
【0007】そこで、加熱シリンダに対してフライトが見掛け上前進する速度をフライト速度としたとき、射出工程において前記フライトをスクリュー速度より低いフライト速度で前進させることが考えられる。この場合、加熱シリンダの内周面の近傍の樹脂に加わる摩擦抵抗を小さくすることができるので、射出工程において、射出力と射出圧力とを対応させることができ、十分な射出圧力で樹脂を射出することができる。
【0008】ところで、スクリュー速度を多段で変更するのに伴って、フライト速度をスクリュー速度に対応させて多段で変更しようとすると、計量用モータを逆回転させるための計量用モータ回転数指令を多段で変更する必要がある。ところが、射出用モータとスクリューとの間に配設されたプーリ、タイミングベルト等における慣性、機械的なガタ等による特性と、計量用モータとスクリューとの間に配設されたプーリ、タイミングベルト等における慣性、機械的なガタ等による特性とが異なり、スクリュー速度の変更のタイミングがフライト速度の変更のタイミングより遅れてしまう。したがって、射出圧力が計量用モータ回転数指令の変更に伴って変動し、成形不良が発生し、成形品の品質が低下してしまう。
【0009】本発明は、前記従来の射出装置の問題点を解決して、射出工程において樹脂に加わる摩擦抵抗を小さくすることができるとともに、成形品の品質を向上させることができる射出装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の射出装置においては、加熱シリンダと、スクリュー本体の外周面にフライトが形成されたフライト部、及び該フライト部の前端に配設されたスクリューヘッドを備え、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、該スクリューを回転させるための第1の駆動手段と、前記スクリューを進退させるための第2の駆動手段と、射出工程において前記第2の駆動手段を駆動して、スクリューを所定のスクリュー速度で前進させるスクリュー前進制御手段と、前記射出工程において前記第1の駆動手段を駆動して、前記フライトを見掛け上スクリュー速度より低いフライト速度で前進させるフライト速度制御手段と、前記スクリュー速度を多段で変更するためのスクリュー速度指令を発生させるスクリュー速度設定手段と、前記フライト速度をスクリュー速度に対応させて多段で変更するためのフライト速度指令を発生させるフライト速度設定手段と、該フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令を鈍(なま)らせる指令緩衝手段とを有する。
【0011】本発明の射出装置の制御方法においては、計量工程において、第1の駆動手段を駆動してスクリューを正方向に回転させ、スクリュー速度を多段で変更するためのスクリュー速度指令を発生させ、フライト速度を前記スクリュー速度に対応させて多段で変更するためのフライト速度指令を発生させ、フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令を鈍らせ、射出工程において、第2の駆動手段を駆動し、前記スクリューをスクリュー速度指令に従って所定のスクリュー速度で前進させ、かつ、前記第1の駆動手段を駆動し、前記フライトを、鈍らせられたフライト速度指令に従って見掛け上前記スクリュー速度より低いフライト速度で前進させる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】図2は本発明の実施の形態における射出装置の要部拡大図、図3は本発明の実施の形態における射出装置の概念図である。
【0014】図において、11はシリンダ部材としての加熱シリンダ、12は該加熱シリンダ11内に回転自在に、かつ、進退自在に配設された射出部材としてのスクリュー、13は前記加熱シリンダ11の前端(図2における左端)に形成された射出ノズル、14は該射出ノズル13に形成されたノズル口、15は前記加熱シリンダ11の後端(図2における右端)の近傍の所定位置に形成された樹脂供給口、16は該樹脂供給口15に取り付けられ、樹脂を収容するホッパである。
【0015】前記スクリュー12は、フライト部21、及び該フライト部21の前端に配設されたスクリューヘッド27から成る。そして、前記フライト部21は、スクリュー本体の外周面に螺旋状に形成されたフライト23を備え、該フライト23によって螺旋状の溝24が形成される。また、フライト部21には、後方(図2における右方)から前方(図2における左方)にかけて順に、ホッパ16から落下した樹脂が供給される樹脂供給部P1、供給された樹脂を圧縮しながら溶融させる圧縮部P2、及び溶融させられた樹脂を一定量ずつ計量する計量部P3が形成される。そして、前記溝24内の樹脂は、前記樹脂供給部P1において図2に示されるようにペレット状の形状を有し、圧縮部P2において半溶融状態に置かれ、計量部P3において完全に溶融させられて液状になる。
【0016】前記溝24の底、すなわち、溝底の外径は、樹脂供給部P1において比較的小さくされ、圧縮部P2において後方から前方にかけて徐々に大きくされ、計量部P3において比較的大きくされる。したがって、加熱シリンダ11の内周面とスクリュー12の軸部の外周面との間の間隙(げき)は、前記樹脂供給部P1において比較的大きくされ、圧縮部P2において後方から前方にかけて徐々に小さくされ、計量部P3において比較的小さくされる。
【0017】計量工程時に前記スクリュー12を正方向に回転させながら後退させると、ホッパ16から落下した樹脂が樹脂供給部P1に供給され、溝24内を前進(図2における左方に移動)させられ、スクリューヘッド27の前方に蓄えられる。続いて、射出工程時に前記スクリュー12を前進させると、スクリューヘッド27の前方に蓄えられた樹脂は、射出ノズル13から射出され、図示されない金型装置のキャビティ空間に充填(てん)される。このとき、スクリューヘッド27の前方に蓄えられた樹脂が逆流しないように、スクリューヘッド27の周囲に逆流防止装置が配設される。
【0018】そのために、前記スクリューヘッド27は、前半部(図2における左半部)に円錐(すい)形のヘッド本体部25を、後半部(図2における右半部)に円柱部26を有する。そして、該円柱部26の外周に環状の逆止リング28が回動自在に配設され、前記フライト部21の前端に押金29が固定される。なお、前記逆止リング28及び押金29によって逆流防止装置が構成される。
【0019】また、前記逆止リング28には、円周方向における複数箇所に、軸方向に延びる穴28aが形成され、前端に所定の角度にわたって切欠28bが形成される。そして、前記ヘッド本体部25に係止突起25aが形成され、該係止突起25aが前記切欠28b内に置かれる。この場合、前記逆止リング28はスクリュー12の回転に伴ってスクリューヘッド27に対して所定の角度θだけ回動させられ、それ以上の回動が規制される。
【0020】一方、前記押金29には、円周方向における複数箇所に、前記穴28aと対応させて軸方向に延びる穴29aが形成される。したがって、逆止リング28がスクリューヘッド27に対して所定の角度θだけ回動させられると、前記穴28a、29aが選択的に連通させられる。そして、逆止リング28は、計量工程時には図2に示されるような前記スクリューヘッド27の前方とフライト部21との間を連通する連通位置に置かれ、射出工程時には前記スクリューヘッド27の前方とフライト部21との間を遮断する遮断位置に置かれる。
【0021】ところで、前記加熱シリンダ11の後端(図3における右端)は前方射出サポート31に取り付けられ、該前方射出サポート31と所定の距離を置いて後方射出サポート32が配設される。そして、前記前方射出サポート31と後方射出サポート32との間にガイドバー33が架設され、該ガイドバー33に沿ってプレッシャプレート34が進退(図3における左右方向に移動)自在に配設される。なお、前記前方射出サポート31及び後方射出サポート32は、図示されないボルトによって図示されないスライドベースに固定される。
【0022】また、前記スクリュー12の後端にドライブシャフト35が連結され、該ドライブシャフト35はベアリング36、37によってプレッシャプレート34に対して回転自在に支持される。そして、スクリュー12を回転させるために、第1の駆動手段としての電動の計量用モータ41が配設され、該計量用モータ41とドライブシャフト35との間に、プーリ42、43及びタイミングベルト44から成る第1の回転伝動手段が配設される。したがって、前記計量用モータ41を駆動することによって、スクリュー12を正方向又は逆方向に回転させることができる。なお、本実施の形態においては、前記第1の駆動手段として電動の計量用モータ41を使用しているが、該電動の計量用モータ41に代えて油圧のモータを使用することもできる。
【0023】また、前記プレッシャプレート34より後方(図3における右方)に、互いに螺合させられたボールねじ軸45及びボールナット46から成る運動方向変換手段としてのボールねじ47が配設され、該ボールねじ47によって回転運動が直線運動に変換される。そして、前記ボールねじ軸45はベアリング48によって後方射出サポート32に対して回転自在に支持され、前記ボールナット46はプレート51及びロードセル52を介してプレッシャプレート34に固定される。さらに、スクリュー12を進退させるために、第2の駆動手段としての射出用モータ53が配設され、該射出用モータ53とボールねじ軸45との間に、プーリ54、55及びタイミングベルト56から成る第2の回転伝動手段が配設される。したがって、前記射出用モータ53を駆動し、ボールねじ軸45を回転させることによってボールナット46及びプレッシャプレート34を移動させ、スクリュー12を前進(図3における左方に移動)又は後退(図3における右方に移動)させることができる。なお、本実施の形態においては、前記プレッシャプレート34を移動させる手段として射出用モータ53を使用しているが、該射出用モータ53に代えて射出用シリンダを使用することもできる。
【0024】次に、射出装置の制御回路について説明する。
【0025】図1は本発明の実施の形態における射出装置の制御回路の要部ブロック図、図4は本発明の実施の形態における射出装置の制御回路の概略図、図5は本発明の実施の形態における制御装置の動作を示す第1のタイムチャート、図6は本発明の実施の形態における制御装置の動作を示す第2のタイムチャートである。
【0026】図において、41は計量用モータ、53は射出用モータ、62は制御装置、64は射出用サーボアンプ、65は計量用サーボアンプ、66はスクリュー速度設定手段としてのスクリュー速度設定器、67はメモリ、68はフライト速度設定器、71は射出用モータ回転数nI を検出する射出用モータ回転数検出器、72は計量用モータ回転数nM を検出する計量用モータ回転数検出器、81はスクリュー12(図3)の位置を検出するスクリュー位置検出器である。そして、前記制御装置62は、射出用モータ回転数設定器73、減算器74、78、計量用モータ回転数算出手段としてのゲイン設定器(−K)75、指令緩衝手段としてのフィルタ(F)76及び計量用モータ回転数設定器77から成る。なお、前記フライト速度設定器68及びゲイン設定器75によってフライト速度設定手段が構成される。
【0027】この場合、計量工程において、計量用モータ回転数設定器77はあらかじめ設定された計量用モータ回転数指令NM を減算器78に送る。該減算器78は、前記計量用モータ回転数指令NM 及び計量用モータ回転数nM を受け、計量用モータ回転数指令NM と計量用モータ回転数nM との偏差ΔnM を算出し、該偏差ΔnM を電流指令IM として計量用サーボアンプ65に送る。このようにして、制御装置62は計量用モータ41を駆動する。
【0028】また、射出工程において、スクリュー速度Vsをスクリュー位置Si (i=1、2、…)に対応させて多段で変更するようになっている。そのために、前記スクリュー速度設定器66においては、各スクリュー位置Si に対応させてスクリュー速度指令Vsoi(i=1、2、…)が発生させられ、該スクリュー速度指令Vsoiが射出用モータ回転数設定器73に送られる。該射出用モータ回転数設定器73は、スクリュー速度指令Vsoiを受けると、各スクリュー位置Si に対応させて射出用モータ回転数指令NIi(i=1、2、…)を発生させ、該射出用モータ回転数指令NIiを減算器74に送るとともに、ゲイン設定器75に送る。前記減算器74は、前記射出用モータ回転数指令NIi及び射出用モータ回転数nIを受け、射出用モータ回転数指令NIiと射出用モータ回転数nI との偏差ΔnIを算出し、該偏差ΔnI を電流指令II として射出用サーボアンプ64に送る。このようにして、制御装置62は射出用モータ53を駆動する。
【0029】この場合、スクリュー12を前進させるのに伴って、スクリューヘッド27の前方に蓄えられた樹脂による反力が発生させられ、該反力によって、前記プレッシャプレート34及びドライブシャフト35を介してロードセル52が押圧される。このとき、ロードセル52の歪(ひず)みが電気信号に変換され、該電気信号に基づいて、前記スクリュー12を後方から所定の圧力で押すための射出力が算出される。
【0030】ところで、前記スクリュー12の外周面及び加熱シリンダ11の内周面の粗さが互いに等しいと、計量工程時にスクリュー12を回転させても、溝24(図2)内の樹脂は、スクリュー12と一体的に回転させられ、前進しない。そこで、通常は、加熱シリンダ11の内周面がスクリュー12の外周面より粗くされる。
【0031】ところが、前記加熱シリンダ11の内周面が粗くされると、スクリュー12を前進させる際に、加熱シリンダ11の内周面の近傍の樹脂に大きな摩擦抵抗が加わってしまう。しかも、溝24内の樹脂の溶融状態は、樹脂供給部P1、圧縮部P2及び計量部P3を移動する間に変化するので、前記樹脂に加わる摩擦抵抗も変化してしまう。
【0032】そこで、射出工程において、射出用モータ53を駆動してスクリュー12を前進させる際に、計量用モータ41を駆動してスクリュー12を逆方向に回転させることによってフライト速度Vfをスクリュー速度Vsより低くするようにしている。
【0033】すなわち、前記スクリュー速度Vsに対するフライト速度Vfの速度比γγ=Vf/Vsとしたとき、γ<1にする。この場合、見掛け上フライト速度Vfがスクリュー速度Vsより低くされるので、樹脂はスクリュー12の外周面上を滑って加熱シリンダ11の内周面上で停滞することになる。したがって、加熱シリンダ11の内周面の近傍の樹脂に加わる摩擦抵抗を小さくすることができる。
【0034】ところが、フライト速度Vfが樹脂の種類によって決まる限界値より低くされると、スクリュー12が前進するのに対して、樹脂は前記加熱シリンダ11の内周面上でほぼ停止した状態になる。この場合、前述されたように、射出工程時に逆止リング28は遮断位置に置かれ、穴28a、29aが遮断された状態に置かれるので、樹脂がフライト部21側に流れ込むことはない。したがって、前記樹脂供給部P1から計量部P3にかけて、特に、フライト部21の前端の近傍において樹脂圧力が低下してしまう。その結果、計量工程時に樹脂の計量を安定して行うことができず、成形品にボイド、シルバーストリーク等が発生し、成形品の品質を低下させてしまう。
【0035】そこで、樹脂の種類に対応させて設定された速度比γの最小値γMIN が、γMIN ≦γにされる。したがって、速度比γは、1より小さく、かつ、最小値γMIN 以上、例えば、0.1〜0.9の範囲に設定される。
【0036】そして、フライト速度設定器68は、このようにあらかじめ設定された速度比γをゲイン設定器75に送る。該ゲイン設定器75は、速度比γ、及び射出用モータ回転数設定器73から送られた射出用モータ回転数指令NIiを受けると、前記速度比γをゲインとして、各スクリュー位置Si に対応させて一次のフライト速度指令としての一次の計量用モータ回転数指令Nfi(i=1、2、…)を算出して発生させ、該一次の計量用モータ回転数指令Nfiをフィルタ76に送る。
【0037】前記フィルタ76は、一次の計量用モータ回転数指令Nfiを所定の緩衝要素で緩衝させることによって、一次の計量用モータ回転数指令Nfiの波形を鈍らせ、各スクリュー位置Si に対応させて二次のフライト速度指令としての二次の計量用モータ回転数指令NFi(i=1、2、…)を算出し、該二次の計量用モータ回転数指令NFiを減算器78に送る。該減算器78は、前記二次の計量用モータ回転数指令NFi及び計量用モータ回転数nM を受けると、二次の計量用モータ回転数指令NFiと計量用モータ回転数nM との偏差ΔnF を算出し、該偏差ΔnF を電流指令IF として計量用サーボアンプ65に送る。このようにして、前記スクリュー12はスクリュー回転数Nfで回転させられる。なお、前記ゲイン設定器75、フィルタ76及び減算器78によってフライト速度制御手段が構成され、該フライト速度制御手段によってフライト速度Vfが制御される。
【0038】前記フィルタ76において、一次の計量用モータ回転数指令Nfiの波形を鈍らせる場合、一次遅れ、正弦波等の波形を利用したり、一次関数、指数関数、ランプ関数等の関数を利用したりすることができる。なお、記憶手段としてのメモリ67に、一次、二次の計量用モータ回転数指令Nfi、NFiの回転数パターンを格納し、該回転数パターンを読み出してフライト速度Vfを制御することもできる。
【0039】ところで、射出用モータ53とスクリュー12との間の第1の回転伝導手段における慣性、機械的なガタ等による特性と、計量用モータ41とスクリュー12との間の第2の回転伝動手段における慣性、機械的なガタ等による特性とが異なるので、スクリュー速度Vsの変更のタイミングがフライト速度Vfの変更のタイミングより遅れると、スクリューヘッド27の前端に加わる射出圧力が変動し、成形不良が発生し、成形品の品質が低下してしまう。
【0040】ところが、前述されたように、フィルタ76によって一次の計量用モータ回転数指令Nfiの波形が鈍らせられ、各スクリュー位置Si に対応させて二次の計量用モータ回転数指令NFiが算出されて発生させられるようになっているので、スクリュー速度Vsの変更のタイミングとフライト速度Vfの変更のタイミングとを一致させることができる。したがって、スクリュー12の前進に伴って発生させられる射出圧力が、二次の計量用モータ回転数指令NFiの変更に伴って変動するのを防止することができる。その結果、成形不良が発生することがなく、成形品の品質を向上させることができる。
【0041】本実施の形態においては、図6に示されるように、射出用モータ回転数指令NIi及び一次の計量用モータ回転数指令Nfiは、いずれもステップ状に変化させられるようになっているが、制御の追随性を向上させるために、一次遅れ、正弦波等の波形を利用したり、一次関数、指数関数、ランプ関数等の関数を利用したりして射出用モータ回転数指令NIi及び一次の計量用モータ回転数指令Nfiをあらかじめ鈍らせることができる。その場合、フィルタ76は、一次の計量用モータ回転数指令Nfiを更に鈍らせ、二次の計量用モータ回転数指令NFiを算出する。
【0042】次に、前記構成の制御装置62の動作について説明する。
【0043】なお、図5の波形は、スクリュー12の回転方向を表し、正の値を採る場合、スクリュー12は正方向に回転させられ、0である場合、スクリュー12の回転は停止させられ、負の値を採る場合、スクリュー12は逆方向に回転させられる。
【0044】まず、制御装置62内の図示されない逆止リング28の連通制御手段は、タイミングt1で前記計量用モータ41を正方向に駆動して、スクリュー12を時間τ1だけスクリュー回転数N1で正方向に回転させる。したがって、スクリュー12に対して逆止リング28が角度θだけ回動させられて連通位置に置かれ、前記穴28a、29aが連通させられる。続いて、タイミングt2で計量工程が開始され、制御装置62内の図示されない計量制御手段は、前記計量用モータ41を計量用モータ回転数指令NM に従って正方向に駆動し、スクリュー12を時間τ2だけスクリュー回転数N2で正方向に回転させるとともに、射出用モータ53を駆動してスクリュー12を後退させて、計量を行う。この間、逆止リング28は連通位置に置かれ、前記穴28a、29aが連通させられたままにされる。その結果、前記樹脂は、前記溝24に沿って前進し、その間に加熱シリンダ11によって加熱され溶融させられた後、穴28a、29aを通って前方に流れ、スクリューヘッド27の前方に蓄えられる。
【0045】このようにして、タイミングt3で計量工程が完了すると、制御装置62内の図示されない逆止リング28の遮断制御手段は、タイミングt4で前記計量用モータ41を逆方向に駆動してスクリュー12を時間τ3だけスクリュー回転数N3で逆方向に回転させる。したがって、スクリュー12に対して逆止リング28が角度θだけ回動させられて遮断位置に置かれ、前記穴28a、29aが遮断される。
【0046】続いて、タイミングt5で射出工程が開始され、制御装置62内の図示されない射出制御手段及びスクリュー前進制御手段は、射出用モータ53を射出用モータ回転数指令NIiに従って駆動し、スクリュー12を所定のスクリュー速度Vsで前進させ、前記スクリューヘッド27の前方に蓄えられた樹脂を射出ノズル13から射出する。この間、前記フライト速度制御手段は、計量用モータ41を二次の計量用モータ回転数指令NFiに従って逆方向に駆動してフライト23を見掛け上のフライト速度Vfで前進させる。
【0047】このとき、スクリューヘッド27の前方に蓄えられた樹脂の一部は、逆流して後方に移動しようとするが、前記穴28a、29aが遮断されているので、スクリューヘッド27の前方の樹脂がフライト部21に逆流するのを防止することができる。したがって、射出工程時における樹脂の充填量を安定させることができ、成形品の品質を向上させることができる。また、射出工程時のフライト部21における樹脂を安定させることができるので、計量工程時に計量を安定して行うことができ、樹脂の熱履歴を安定させることができ、さらに、樹脂の温度を安定させることができる。
【0048】そして、前記制御装置62は、スクリュー位置検出器81によって検出されたスクリュー位置Si が所定の位置になると、速度制御から圧力制御に切り換え、前記射出力に基づいて保圧制御を行い、タイミングt6で射出工程を完了する。
【0049】なお、本実施の形態においては、前記スクリュー12を時間τ1だけ正方向に回転させた後、計量工程が開始されるまでにわずかな時間を置くようにしているが、前記スクリュー12を時間τ1だけ正方向に回転させた後、直ちに計量工程を開始することもできる。また、計量工程が完了した後、スクリュー12が逆方向に回転させられるまでにわずかな時間を置くようにしているが、計量工程が完了した後、直ちにスクリュー12を逆方向に回転させることもできる。さらに、前記スクリュー12を時間τ3だけ逆方向に回転させた後、射出工程が開始されるまでにわずかな時間を置くようにしているが、前記スクリュー12を時間τ3だけ逆方向に回転させた後、直ちに射出工程を開始することもできる。また、射出工程を開始する前にサックバックを行うこともできる。
【0050】次に、前記最小値γMIN について説明する。
【0051】図7は本発明の実施の形態における速度比と摩擦抵抗との第1の関係図、図8は本発明の実施の形態における速度比と樹脂圧力との第1の関係図、図9は本発明の実施の形態における速度比と摩擦抵抗との第2の関係図、図10は本発明の実施の形態における速度比と樹脂圧力との第2の関係図である。なお、図7及び9において、横軸に速度比γを、縦軸に加熱シリンダ11(図2)の内周面の近傍の樹脂に加わる摩擦抵抗Fを、図8及び10において、横軸に速度比γを、縦軸にフライト部21の前端の近傍における樹脂圧力Pfを採ってある。
【0052】例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル樹脂(メタクリル樹脂)のように、粘度の高い樹脂を使用して成形を行う場合、図7及び8に示されるように、速度比γが0.2≦γ<1の範囲では、フライト速度Vfが低くなるほど、摩擦抵抗Fは小さくなり、樹脂圧力Pfは低くなる。また、速度比γが0≦γ<0.2の範囲では、フライト速度Vfを低くしても摩擦抵抗Fはほとんど変化しないが、樹脂圧力Pfは低くなり、負の値を採る。
【0053】そして、例えば、ポリアミド樹脂のように、粘度の低い樹脂を使用して成形を行う場合、図9及び10に示されるように、速度比γが0.5≦γ<1の範囲では、フライト速度Vfが低くなるほど、摩擦抵抗Fは小さくなり、樹脂圧力Pfは低くなる。また、速度比γが0≦γ<0.5の範囲では、フライト速度Vfを低くしても摩擦抵抗Fはほとんど変化しないが、樹脂圧力Pfは低くなり、負の値を採る。
【0054】そこで、前記ポリメチルメタクリル酸メチル樹脂のように粘度の高い樹脂を使用して成形を行う場合、速度比γを0.1〜0.3、好ましくは約0・2にし、ポリアミド樹脂のように粘度の低い樹脂を使用して成形を行う場合、速度比γを0.4〜0.6、好ましくは約0・5に設定すると、フライト部21の樹脂圧力Pfを負圧にすることなく、摩擦抵抗Fを最も小さくすることができる。
【0055】このように、前記摩擦抵抗Fを小さくすることができるので、射出工程において、射出力と射出圧力とを対応させることができ、十分な射出圧力で樹脂を射出することができる。
【0056】また、溝24内の樹脂の溶融状態が、樹脂供給部P1、圧縮部P2及び計量部P3を移動する間に変化しても、前記樹脂に加わる摩擦抵抗Fを一定にすることができるので、射出圧力を安定させることができる。そして、型内圧を安定させることができるので、成形品の品質を向上させることができる。
【0057】また、射出工程中はスクリュー12が常に逆方向に回転させられるので、逆止リング28は常に遮断位置にバイアスが加えられた状態に置かれる。したがって、射出工程中に逆止リング28が外力を受けて連通位置に置かれることがなくなるので、樹脂が逆流するのを防止することができる。その結果、樹脂の計量を安定して行うことができるので、成形品の品質を向上させることができる。
【0058】そして、十分な射出圧力で樹脂を射出することができるので、射出力をその分小さくすることができる。したがって、射出装置を小型化することができるだけでなく、射出装置のコストを低くすることができる。また、摩擦抵抗Fが小さくなるので、樹脂が受ける剪(せん)断熱が少なくなり、樹脂焼けが発生するのを防止することができる。
【0059】なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0060】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、射出装置においては、加熱シリンダと、スクリュー本体の外周面にフライトが形成されたフライト部、及び該フライト部の前端に配設されたスクリューヘッドを備え、前記加熱シリンダ内において回転自在に、かつ、進退自在に配設されたスクリューと、該スクリューを回転させるための第1の駆動手段と、前記スクリューを進退させるための第2の駆動手段と、射出工程において前記第2の駆動手段を駆動して、スクリューを所定のスクリュー速度で前進させるスクリュー前進制御手段と、前記射出工程において前記第1の駆動手段を駆動して、前記フライトを見掛け上スクリュー速度より低いフライト速度で前進させるフライト速度制御手段と、前記スクリュー速度を多段で変更するためのスクリュー速度指令を発生させるスクリュー速度設定手段と、前記フライト速度をスクリュー速度に対応させて多段で変更するためのフライト速度指令を発生させるフライト速度設定手段と、該フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令を鈍らせる指令緩衝手段とを有する。
【0061】この場合、加熱シリンダの内周面の近傍の樹脂に加わる摩擦抵抗を小さくすることができるので、射出工程において、射出力と射出圧力とを対応させることができ、十分な射出圧力で樹脂を射出することができる。
【0062】また、フライトによって形成される溝内の樹脂の溶融状態が、フライト部を移動する間に変化しても、前記樹脂に加わる摩擦抵抗を一定にすることができるので、射出圧力を安定させることができる。そして、型内圧を安定させることができるので、成形品の品質を向上させることができる。
【0063】しかも、十分な射出圧力で樹脂を射出することができるので、射出力をその分小さくすることができる。したがって、射出装置を小型化することができるだけでなく、射出装置のコストを低くすることができる。また、摩擦抵抗が小さくなるので、樹脂が受ける剪断熱が少なくなり、樹脂焼けが発生するのを防止することができる。
【0064】そして、フライト速度設定手段によって発生させられたフライト速度指令が鈍らせられるので、スクリュー速度の変更のタイミングとフライト速度の変更のタイミングとを一致させることができる。したがって、スクリューの前進に伴って発生させられる射出圧力が、鈍らせられたフライト速度指令の変更に伴って変動するのを防止することができる。その結果、成形不良が発生することがなく、成形品の品質を向上させることができる。




 

 


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