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発明の名称 高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板およびその成形方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−105527(P2001−105527A)
公開日 平成13年4月17日(2001.4.17)
出願番号 特願平11−285233
出願日 平成11年10月6日(1999.10.6)
代理人 【識別番号】100059096
【弁理士】
【氏名又は名称】名嶋 明郎 (外2名)
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4H104
【Fターム(参考)】
4D075 AE24 CA09 DB02 DC10 
4F100 AB03A AK01B AK01C AR00B AR00C BA02 BA03 BA06 BA13 CA30B CA30C GB90 JA05B JA05C JA20A JA20B JA20C JK16B JK16C JM02B JM02C YY00A YY00B YY00C
4H104 AA04C AA13C AA18C AA19C AA22C AA23C AA24C CA01A CB13A CD02A CE13A EA04A FA02 FA04 LA20 PA23 PA34 QA12
発明者 片山 知久 / 仲澤 眞人
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 熱延鋼板または冷延鋼板の片面または両面に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を有し、かつ、板厚減少率R(R=100 ×(t0-t1) /t0、t0:初期板厚、t1: 加工後の板厚)が40%以上、60%以下となるU曲げシゴキ加工を受けた際に、最大成形荷重Pmaxと板厚減少率Rとの間に下式(I)の関係を有することを特徴とする高面圧強しごき加工での耐型カジリ性に優れた潤滑処理鋼板。
Pmax/(t1×W0×TS) ≦A×R (I)
W0:鋼板の試験片幅 TS:鋼板の引張強度A=−0.00287× to +0.0702(t0、t1、W0の単位はmm、TSの単位はMPa、Pmaxの単位はN)
【請求項2】 鋼板の板厚が1mm以上、8mm以下、潤滑性皮膜の厚さが1μm 以上、15μm 以下であって、かつ、連続成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の材料物性が下式(II)(III) を満足することを特徴とする請求項1記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
TS(L) ≧ 15 MPa (II)El(L) ≧ 100% (III)TS(L):潤滑性皮膜の引張強度El(L):潤滑性皮膜の破断伸び【請求項3】 潤滑性皮膜の主成分が、有機高分子化合物(樹脂)であることを特徴とする請求項2記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
【請求項4】 潤滑性皮膜中にさらに潤滑剤を含有し、その含有量が潤滑性皮膜の全重量に対して5〜30wt%であって、かつその融点が100 ℃以上であることを特徴とする請求項3記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
【請求項5】 高速連続成形に際し、鋼板の加工発熱による金型の温度上昇を防ぐために金型を冷却し、鋼板の温度を潤滑性皮膜の樹脂成分のガラス転移温度+30℃以下に制御することを特徴とする請求項3〜4の鋼板の成形方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面に潤滑処理皮膜を有する熱延鋼板もしくは冷延鋼板に関する。特に、従来、金属石鹸系のボンデ処理が必須とされてきた高面圧下での強しごき加工において、ボンデ処理を省略しても成形が可能で、かつ高速連続成形時にも、ボンデ処理と同等以上の良好な耐型カジリ性を有する潤滑処理鋼板およびその成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】熱延鋼板もしくは冷延鋼板に潤滑性を付与してその用途を広げようとする試みは、従来から行われてきた。まず熱延鋼板に関しては、コストダウンのため冷延鋼板の代替品として使用する場合に、そのままの機械的特性値では深絞り成形性が得られないことから、表面に潤滑性皮膜を付与することでこの問題を解決しようとする試みがなされている。例えば、特開平9−239896号公報および特開平9−267430号公報においては、親水性樹脂と潤滑剤を含む皮膜を0.5〜3.0g/m2 付着させることで、熱延鋼板でありながら、SPCC並みの限界絞り比(LDR)が得られると記載されている。また、特開平8−257494号公報においては、親水性樹脂、潤滑剤および防錆剤を含む皮膜を0.5 〜5.0g/m2 付着させることで、成形性のみならず一次防錆性においても、防錆油を塗布した冷延鋼板に匹敵する潤滑熱延鋼板が得られると記載されている。また、特開平1−48604号公報には、潤滑性樹脂皮膜を形成させる熱延鋼板の表面粗度を制御することで、型カジリやプレス割れを軽減できるとの記載がある。
【0003】一方、冷延鋼板では主として家電用途において、プレス成形に必要な潤滑油の脱脂工程を省略する目的から、亜鉛めっき、クロメートを介して潤滑性皮膜を付与する試みが従来から行われており、例えば特開平7−195029号公報、特開平7−185455号公報、特開平7−41962号公報などにその例を見ることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来技術は、自動車や家電用部品の通常の成形法である、低面圧の深絞り・張り出し成形等を対象としているため、本発明の対象となるような高面圧強しごき加工においては潤滑皮膜が高面圧、高伸びに耐えきれずに破断し、この結果型かじりを発生する。ここで低面圧とは、通常1MPaのオーダーの面圧であり、高くても10 MPaのオーダーである。一方、ここで言う高面圧強しごき加工では、面圧は低くても100 MPa のオーダーであり、高い時は、1000MPa のオーダーとなる。さらに、通常の低面圧の成形では引張力により成形されるため、成形性の良好な軟鋼板でも高々50%伸びると破断する。この結果、表面の潤滑皮膜の伸びも高々50%である。一方、高面圧強しごき加工では、鋼板は圧延のように板厚方向の圧縮力によって伸ばされるため、100%以上破断することなく変形する。このため、表面の潤滑皮膜も100%以上伸ばされることになる。このように、通常の低面圧の成形に比べ高面圧強しごき加工において、表面の潤滑皮膜は極めて過酷な変形を被るため、従来技術では、型かじりを防止することが不可能である。具体的に高面圧強しごき加工とは、例えば従来鋼材を用い鍛造で製造されていた部品を板金化する際に行われる、最低でも10%、最大60%程度の板厚減少を伴うしごき成形であり、適用部品としては寸法精度や平坦度を要求される部品、あるいはグローブ転造で成形されている部品、例えばオートマチック・トランスミッション用歯形部品等である。
【0005】また従来技術は、高面圧強しごき加工での加工発熱に対する考慮が十分でないため、従来技術の潤滑性皮膜を単に厚くするだけでは、単独成形時には一応の加工が出来るケースがあっても、連続成形時には、発熱による皮膜特性の劣化により成形不能となる。
【0006】本発明は、従来、金属石鹸系のボンデ処理が必須とされてきた高面圧強しごき加工において、ブランキングした材料に一旦ボンデ処理をオフラインで行い、そののちに高面圧強しごき加工による連続成形を行う従来方式(3工程)に代えて、潤滑性皮膜を有する鋼板のコイルもしくはフープから順送によりブランキングを行い、引き続きオンラインで連続成形を行う(2工程)ことにより、工程省略およびボンデ処理コストの削減を可能とするものである。
【0007】本発明者らは公知例を詳細に調査した結果、これらがいずれも板厚1mm前後の鋼板を円筒成形やハット成形することで、成形性の評価を行っていることに気づいた。これらの成形方式では面圧が100 MPa にも満たないため、本発明の対象である高面圧強しごき加工をシミュレートすることは到底できず、従って、本課題を解決する潤滑性皮膜を見出すことは決してできない。そこで、本発明者らは高面圧での強しごき加工をシミュレートする試験方法を鋭意検討した結果、板厚2.6mm 以上、板厚減少率40〜60%でのU曲げシゴキ加工がこれに相当すること、この試験法において型カジリを発生しない鋼板は、実際の高面圧強しごき加工においても型カジリを発生しないことを見出した。ここで得られた知見の一例を図1に示す。このように、従来技術1(パラフィン系固体潤滑皮膜鋼板)では、10%程度、従来技術2(家電用潤滑皮膜鋼板)でも30%の板厚減少率の低しごき成形で型かじりが発生するのに対し、本発明では40%以上の高しごき成形でも型かじりが発生せず、ボンデ処理を施した鋼板と同等の性能を示すことがわかる。
【0008】続いて本発明者らは、上記の試験法で型カジリを発生しない鋼板が、加工発熱を伴う高速連続成形においても高面圧強しごき加工により型カジリを発生しないための条件について鋭意検討した。この結果、連続成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の破断強度および破断伸びが適正であれば、高速連続成形においても高面圧強しごき加工により型カジリを発生しないことを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下の(1)〜(3)より成る。
(1)熱延鋼板または冷延鋼板の片面または両面に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を有し、かつ、板厚減少率R(R=100 ×(t0-t1) /t0、t0:初期板厚、t1: 加工後の板厚)が40%以上、60%以下となるU曲げシゴキ加工を受けた際に、最大成形荷重Pmaxと板厚減少率Rとの間に下式(I)の関係を有することを特徴とする高面圧強しごき加工での耐型カジリ性に優れた潤滑処理鋼板。
Pmax/(t1×W0×TS) ≦A×R (I)
W0:鋼板の試験片幅 TS:鋼板の引張強度A=−0.00287× to +0.0702(t0、t1、W0の単位はmm、TSの単位はMPa、Pmaxの単位はN)
(2)鋼板の板厚が1mm以上、8mm以下、潤滑性皮膜の厚さが1μm 以上、15μm 以下であって、かつ、連続成形時の鋼板温度における潤滑性皮膜の材料物性が下式(II)(III) を満足することを特徴とする前記(1)記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
TS(L) ≧ 15 MPa (II)El(L) ≧ 100% (III)TS(L):潤滑性皮膜の引張強度El(L):潤滑性皮膜の破断伸び(3)潤滑性皮膜の主成分が、有機高分子化合物(樹脂)であることを特徴とする前記(2)記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
(4)潤滑性皮膜中にさらに潤滑剤を含有し、その含有量が潤滑性皮膜の全重量に対して5〜30wt%であって、かつその融点が100 ℃以上であることを特徴とする前記(3)記載の高面圧強しごき加工での耐型カジリ性、連続成形性に優れた潤滑処理鋼板。
(5)高速連続成形に際し、鋼板の加工発熱による金型の温度上昇を防ぐために金型を冷却し、鋼板の温度を潤滑性皮膜の樹脂成分のガラス転移温度+30℃以下に制御することを特徴とする前記(3)〜(4)の鋼板の成形方法。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳述する。まず前記(1)は、本発明の対象である高面圧強しごき加工において、潤滑性鋼板が型カジリを発生させないための要件を定量的に規定したものであり、特に潤滑性鋼板の高面圧における摩擦係数にかかわる。ここで式(I)について説明する。
【0011】通常、金型との摩擦係数が低い材料ほど成形性が優れることは一般に知られているが、本発明の対象となるような高面圧での摩擦係数を通常の試験方法で求めることは不可能である。そこで、板厚減少率が40%以上60%以下となるU曲げしごき加工で得られる最大ポンチ荷重(Pmax)から、塑性力学の考え方に基づき、高面圧下での金型と材料の摩擦特性を評価する手法を発明した。
【0012】U曲げしごき加工におけるPmaxは、摩擦係数以外の材料特性や成形条件の影響を受けるため、そのままでは摩擦特性の評価値とならない。そこで、U曲げしごき加工における釣り合い方程式を解き、まず摩擦係数以外の影響因子を明らかにした。その結果、摩擦係数以外に鋼板の引張強度(TS)、試験片幅(W0)、試験片の初期板厚(t0)、試験片の加工後の板厚(t1)がPmaxに影響を与えることが明らかになった。さらに塑性力学の理論式から、Pmaxを式(I)の左辺のように補正すれば高面圧下の摩擦特性を評価できることがわかった。
【0013】つぎに、U曲げしごき加工と実部品の高面圧強しごき加工との相関関係を得るために、潤滑性皮膜の仕様を変えて数多くの実験を行ったところ、式(I)を満足すれば実部品の加工においても、成形性、耐型かじりともに問題無いことが明らかとなった。すなわち、面圧により樹脂が損傷すると摩擦係数が上昇しPmaxが大きくなり、型かじりが発生する。
【0014】以上のように、前記(1)は、高面圧での強しごき加工が可能であるために鋼板が具備すべき必要条件を表わしている。図1に(I)式の境界線を太線で示した。(I)式を満足する本発明が、特に板厚減少率40%〜60%の範囲でも型かじりが無く、従来技術を大幅に凌駕して、ボンデ処理並みの成形性を示すことが分かる。
【0015】なお、U曲げしごき加工とは、図2に示したように固定したダイスに鋼板を置きポンチをその上方から下降させ、鋼板をU型に成形する際に、ポンチとダイスの隙間を鋼板の板厚より小さくし、すなわち(Ld−Lp)/2を鋼板板厚より小さくし板厚方向に強度の圧縮変形を加えるしごき加工である。
【0016】本発明において、熱延鋼板や冷延鋼板の上に、下地処理を介さずに潤滑性皮膜を設けた理由は、一般に、亜鉛めっき鋼板などに比べて熱延鋼板や冷延鋼板が、皮膜との密着性に優れるため、および製造工程の簡略化によりコストダウンをはかるためである。
【0017】前記(2)は、前記(1)の試験法で型カジリを発生しない潤滑性皮膜鋼板が、さらに、加工発熱を伴う高速連続成形においても高面圧強しごき加工により型カジリを発生しないための条件について規定したものである。
【0018】プレス成形においては、鋼板の塑性変形による加工発熱、および鋼板と金型の摺動による摩擦熱により、金型および鋼板の温度が上昇することが一般に知られている。高速で連続的に成形が行われる場合には、放熱される間もなく次の成形が行われるため、温度上昇はより顕著となる。通常、金型温度は成形開始と同時に上昇し、その後一定となる。この最高到達温度は成形条件や金型の寸法・形状により変化するが、これは材料の加工の程度の違いにより発熱の程度が異なるためであり、また、金型の寸法・形状により熱伝達が異なるためである。そこで、各種金型を用い成形条件を変化させ、金型温度が定常状態になった時点での鋼板温度を測定するため、熱電対を取り付けた鋼板サンプルにより実部品の高面圧強しごき加工を連続して行ったところ、鋼板温度はおおよそ80℃〜160℃になることが明らかとなった。また、成形後の板厚減少率は最大で60%であった。
【0019】そこで、このような鋼板温度での高面圧強しごき加工においても、良好な成形性、耐型カジリ性を有するために必要な潤滑性皮膜の要件について検討した結果、前記(2)を得た。
【0020】まず、鋼板の板厚を1mm以上、8mm以下としたのは、本発明の対象となる実部品の板厚がこの範囲にあるためであり、特に3mm以上、6mm以下のものが多い。必要となる潤滑性皮膜の厚さは、加工の程度や工程数により異なり、加工が厳しいほど、工程が多いほど、必要膜厚は厚くなる。そこで、種々の実部品を成形したところ、最低でも1μm は必要であることが分かった。より好ましくは3μm以上である。15μm 以上では効果が飽和する。
【0021】つぎに、潤滑性皮膜の材料物性と高面圧強しごき加工の連続成形性の関係を検討した。この結果、前記(1)を満足するような高面圧でも低摩擦係数を示す潤滑性皮膜において、連続成形性の良否に影響したのは、潤滑性皮膜の引張り破断強度TS(L) と破断伸びEl(L) であった。潤滑性皮膜の単離膜(膜厚10〜20μm)を作成し、先に述べた連続成形時の鋼板温度において単軸引張り試験を行ったところ、式(II)、(III) を同時に満足する皮膜のみが、実部品の連続成形においても、高面圧強しごき加工に対して良好な成形性、耐型かじり性を発現した。これらの式のいずれか一方でも満足されないと、高面圧強しごき加工による連続成形時に潤滑性皮膜が損傷し、型カジリが発生する。潤滑性皮膜として使用可能なものは、前記(I)〜(III) を満足する限りにおいては、とくに制限はないが、(3)で述べるような樹脂皮膜であってもよいし、無機系皮膜であっても構わない。
【0022】なお従来技術においても、例えば特開平7−41962号公報のように、潤滑性皮膜の引張り破断強度TS(L) と破断伸びEl(L) を規定したものがあるが、いずれも引張り試験の温度が先に述べた連続成形時の鋼板温度から大きくはずれており、高面圧強しごき加工の連続成形において必要な皮膜特性を表わしたものとは言えない。また、前述したように、本発明が対象とする成形における面圧および鋼板の伸びひずみ量は、従来技術が対象としている成形に比べ極めて大きいため、従来技術では、そもそも前記(1)を満足することができない。
【0023】前記(3)は、潤滑性皮膜の好適例を述べたものである。皮膜の主成分の有機高分子化合物(樹脂)は、前記(I)、(II)および(III) の要件を考慮して選択しなければならない。ただし、必ずしもその樹脂単独でこれらを満足する必要はなく、2種類以上の樹脂をブレンドしてポリマーアロイとしたり、樹脂中に添加剤を充填するなどの方法により、TS(L) 、El(L) を調整してもよい。あるいは、(4)で述べるように、潤滑剤を付与することにより(I)にかかわる摩擦係数を調節することも可能である。また、中には、成形条件を限定することで使用可能な樹脂もある。
【0024】以上含めて、使用が可能な樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン樹脂(ポリアミド樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、テフロン(PTFE)やその他のフッ素樹脂(PFA, FEP, ETFE, ECTFE, PCTFE, PVDF, PVF 等)、ポリエチレンテレフタレート(PET) 等のポリエステル樹脂などが例示できる。反対に、主成分としては使用が困難な樹脂の例としては、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、不飽和ポリエステルなどがあげられる。これらはいずれも破断伸びが数〜数十%であり、主成分として用いると(III) 式を満足できない。ただし、皮膜物性を損なわない範囲で、少量添加したり主成分の樹脂をこれらで変性したりすることは構わない。
【0025】図3は、樹脂のTS(L) 、El(L) が連続成形時の鋼板温度に対してどのように変化するか、その結果、その樹脂の可使用範囲がどこにあるかを、模式的に表わしたものである。鋼板温度が高いほど樹脂のTS(L) は小さくなり、逆にEl(L) は大きくなる。従って、(II)式を満足する下限と(III) 式を満足する下限の間の領域が、その樹脂の可使用範囲となる。実部品の成形条件がこの可使用範囲にあれば、その樹脂を主成分とする潤滑性皮膜を鋼板に付与することで、高面圧強しごき加工による連続成形が可能となる。可使用範囲の大小は樹脂物性の温度依存性によって異なり、樹脂によっては可使用範囲のないものもある。あるいは、可使用範囲が狭く、成形条件をその範囲内に入るように変更することで初めて使用できる樹脂もある。
【0026】なお、成形条件としては、鋼板温度だけではなく成形速度も樹脂のTS(L) 、El(L) に影響するが、その影響代が温度に比べて小さい事から、ここでは、引張り速度を1000mm/minで固定し、温度のみを実成形時の鋼板温度と一致させて、単離塗膜の引張り試験を行い、こうして求めた樹脂のTS(L) 、El(L) を用いた。
【0027】潤滑性樹脂皮膜の成膜方法は特に制限しないが、樹脂の種類に応じて、例えば、溶融状態にしてからこれを押し出して鋼板上にコーティングする方法(押し出しラミネーション)、あらかじめフィルムとして成形したものを鋼板上に熱圧着する方法(フィルムラミネーション)、樹脂を溶剤に溶解して鋼板上に塗布したのち、乾燥・成膜する方法、樹脂をエマルジョンとして水に分散させ、これを鋼板に塗布して、乾燥・成膜する方法などがある。
【0028】樹脂中に充填可能な添加剤としては、例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、タルク、クレー、ドロマイト、炭酸カルシウム、硫酸ベリウム、カーボンファイバー、グラスファイバー、雲母、チタン酸カリウイスカー、滑石などの充填剤、あるいはリン酸系、アミン系、含チッソ系などの防錆剤が例示できる。
【0029】前記(4)は、前記(3)の潤滑性皮膜のうちで、特に、前記(1)を満足させるために潤滑剤の添加を必要とするものについて、その要件を述べたものである。
【0030】潤滑剤の添加量が潤滑性皮膜の全重量に対して5%未満では効果が十分でなく、一方、30%を越えるとむしろ皮膜強度が低下して、前記(2)の(II)式を満足することが困難となる。潤滑剤の融点が100 ℃未満では、鋼板温度が80℃以上となる高面圧強しごき加工での連続成形に耐えられない。使用可能な潤滑剤としては、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タングステン、窒化ホウ素、フッ化黒鉛、フッ化セリウム、メラミンシアヌレート、テフロン等のフッ素樹脂系ワックス、ポリエチレンワックス等がある。
【0031】前記(5)は、図3における樹脂の可使用範囲が、実部品の高面圧強しごき加工による連続成形条件からずれている場合に、成形条件を可使用範囲内に入るように変更するための手段を示したものである。これを図4に示す。
【0032】一般に、ガラス転移温度(Tg)を超える温度では、樹脂のTS(L) は急激に小さくなり、逆にEl(L) は急激に大きくなる。従って、図3における可使用範囲の温度上限は、Tgを大きく越えることができない。ここで言うガラス転移温度(Tg)とは、市販の動的粘弾性測定装置を用いて、tan δのピーク温度として測定された値である。もしも実部品の高面圧強しごき加工による連続成形条件が、図4の成形条件Iのように樹脂の可使用範囲外であれば、この樹脂は使用できない。しかし、金型を冷却することにより、成形条件をIIの範囲に変更できれば、この樹脂が使用可能になる。成形条件IIの要件は、鋼板の最高到達温度が樹脂のTg+30℃である点にある。これを満足させるために、金型温度を何度まで冷却すべきかは、金型の寸法・形状や材料の加工の程度により異なるため、その都度、経験的に決定しなければならない。より重要なのは成形時の鋼板温度であり、鋼板に熱電対をつけて成形する方法やサーモビュアーを利用する方法などで、実際に確かめる必要がある。
【0033】
【実施例】以下、本発明を実施例を用いて、非限定的に説明する。
実施例1第2図に示した金型で板厚減少率が45%となるU曲げしごき加工を行った。鋼板のTSは475MPa、試験片幅は50mmである。表1のうち、A、F、Gの樹脂皮膜を、下地処理無しでこの鋼板の両面に形成させた。表2の通り本発明の範囲内であれば、型かじりが発生することなく、良好な成形品が得られることがわかる。
【0034】実施例2表1の潤滑皮膜のうち、実施例1以外のものについても、U曲げしごき加工を行ったところ、いずれも(I)式を満足する特性が得られ、本発明の範囲内であることが分かった。そこで今度は直径50mmの円筒形状のポンチを用い、連続円筒成形を行った。成形速度は20spm である。使用した鋼板は、板厚が2.6mm 、TSが475MPaの高張力熱延鋼板である。しごき率を10〜60%まで変化させることにより、連続成形における鋼板温度を変化させた。さらに、第5図に示す温度制御装置を含む成形装置により金型冷却を行い、ポンチ及びダイスに温度制御した水を循環させ、鋼板温度を変化させた。結果を表3に示す。式(II)、(III) を同時に満足するものだけが、高温での連続成形性に優れることが分かる。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【発明の効果】本発明により、従来、金属石鹸系のボンデ処理が必須とされてきた高面圧下での強しごき加工において、ボンデ処理を省略しても成形が可能で、かつ高速連続成形時にも、ボンデ処理と同等以上の良好な耐型カジリ性を有する潤滑処理鋼板を提供できる。この結果、工程省略、ボンデ処理費用削減、金型寿命延長などによるメリットは大きく、工業的にきわめて価値が高い発明であるといえる。




 

 


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