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発明の名称 指紋が目立ちにくい金属板
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−47105(P2001−47105A)
公開日 平成13年2月20日(2001.2.20)
出願番号 特願平11−228775
出願日 平成11年8月12日(1999.8.12)
代理人 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4E002
【Fターム(参考)】
4E002 AA07 AD06 AD10 BB09 BC10 BD10 BD20 CB03 
発明者 紀平 寛 / 菊池 正夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上で、かつ、表面を1μmピッチの微小平面に置き換える3次元表面解析において、その法線がマクロな平均表面の法線に対して5度未満の角度をなす微小平面の割合が、全微小平面の85%以下である素材表面を有し、さらに、その上に、平均膜厚が0.2μm以上の透明なコーティング層を有することを特徴とする指紋が目立ちにくい金属板。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉄道、自動車、船舶、飛行機、建築内外装材、厨房部材、食器、工具、家具、器物、装身具、装飾品などに使用する指紋がついても目立ちにくい金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】人の手が接触する可能性の高い部位に使用される金属表面に、使用中に指紋が付着すると、見る角度により、指紋付着部が、その周囲に対し青白く見えたり、赤褐色を帯びた色に見えたり、場合によっては黒みがかった色に見えたりして汚く、金属板の使用目的によっては、それが大きな問題となる。
【0003】なぜこのように見えるかについては、特開平8−27544号公報にも記載されているとおり、これまで、そのメカニズムに立ち入っての研究は、十分にはなされていなかった。経験的には、金属表面に有機または無機クリアー塗装を施すと指紋が目立ちにくくなることが知られており、業務用冷蔵庫向けステンレス鋼板表面などに、この技術が広く適用されている。
【0004】しかしながら、この技術を適用しても、表面をよく見ると、容易に指紋の付着を確認できるので、近年、より完全性の高い表面の設計が求められている。このような状況の中、金属表面に微細な凹凸を付与した場合、人の手が軽く接触しても、指紋の脂が凸部にのみしか付着しないことに着眼して、金属表面における凸部面積率を30%以下とする技術が、特開平6−335705号公報に開示されている。しかし、この技術の場合、強く手や指を押しつけて凹部にも指紋を付けると、やはり、この付着した指紋による汚れが目立つことになるため、その適用範囲は限定される。
【0005】また、予め指紋に似た形状の凹凸模様を金属表面に付与しておくと、指紋が目立ちにくくなるという発見に基づき、幅100μm以上2mm以下、深さ5μm以上の均等幅の溝を、隣接する溝同士の中心間距離を溝幅以上として多数併設した指紋が目立たないダル仕上げ金属板が、特開平7−9007号公報に開示されている。しかし、この金属板の場合、溝状の凹凸を金属板に付与することが前提となるため、意匠性において、その適用範囲が限定され、より多くの市場ニーズに対し十分に応えきれないでいる。また、この金属板においては、強く指を押し付けると、前記技術と同様に、溝内部にも指紋が付着し、汚れが目立つようになる。
【0006】また、フロッピーディスクシャッター用の耐指紋性に優れた薄鋼板に関する技術が、特開平8−27544号公報に開示されている。この技術では、その薄鋼板が、「好ましくはマルテンサイト量が10vol%以下で残部オーステナイト相となる金属板表面に、中心線平均粗さ(Ra):0.2〜2.0μm、粗さ曲線の中心線に対する片寄り指数であるスキューネス(Rsk):−0.8〜+1.5、粗さ曲線の平均山間隔:50〜300μmであり、入射角および受光角20°の時の鏡面光沢度が30〜200%、白色度が25〜50%である表面」、を有することを特徴としている。
【0007】しかし、この技術は、フロッピーディスクシャッター用薄鋼板に限定されていると同時に、上記公報にも記載されているとおり、原理について未解明のまま経験的に見い出されたものであるため、その他の分野への適用が容易とは言えず、多くの市場ニーズに対し十分に応えきれないものである。このような状況の中、本発明者らは、特願平10−29716号出願において、指紋が見えるメカニズムを光学的な考察により初めて解明するとともに、金属表面において、ごく微細な凹凸を無くし、より多くの方向に強い乱反射を起させることで上記課題の解決が可能であるとの指針の下で、「中心線平均粗さ(Ra)が0.1μm 以上で、かつ、表面粗さのパワースペクトル解析で10μm 以下の波長領域の凹凸が検出されないこと、および/または、表面を1μmピッチの微小平面に置き換える3次元表面解析において、その法線がマクロな平均表面の法線に対して5度未満の角度をなす微小平面の割合が、全微小平面の50%以下であることを特徴とする指紋の目立ちにくい金属表面」、を開示した。
【0008】この金属表面では、指紋付着前後で、金属表面の微小な凹凸に起因して光散乱条件が変化するのを抑えるため、表面粗さのパワースペクトル解析で10μm 以下の波長領域の凹凸が殆ど検出されないという条件を設定しているが、工業的にそのような金属表面を量産するには、最終工程にてバフ研摩や電解研摩処理などを行う必要があると考えられ、従って、上記条件を満たす金属表面は、生産性においてややコスト高になるという問題を抱えている。
【0009】また、上記条件を満たす金属表面は、ややギラついたものとなるために、人間の感性に鑑みると、直射日光下や光が長時間目に入るような用途には使用しにくいという難点もある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる問題点を解決し、より高い生産性で、かつ、人間感性からより広い用途で受け入れられやすい、指紋が目立ちにくい金属板を提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するため、まず、金属表面で起こる光学的現象の本質について理論的に考察する。金属表面に光が入射すると、そこでは、反射、乱反射、透過、吸収、弾性散乱、非弾性散乱、皮膜による干渉などの複雑な光学的現象がおこる。そのなかで、100オングストローム以下の皮膜厚が典型的な一般の金属表面において、人間の目で感知しうる支配的現象は、反射、乱反射、吸収、弾性散乱であり、金や銅が呈するような黄色を呈しない金属であれば、吸収の効果も小さい。
【0012】そして、これらの支配的現象が、光の入射角に対し角度依存性を有することは、よく知られていることである。つまり、視点の置く位置により反射光、乱反射光、弾性散乱光の相対的強度が異なり、金属表面の見え方は変幻することとなる。ここで、指紋が付着した金属表面で起こる光散乱現象について説明する。
【0013】光散乱現象とは、物体内の光学的ゆらぎに起因する光の再放射過程と定義され、古くは、Rayleighによりその現象が解明されている。Rayleigh理論によると、散乱光強度は入射した光の波長の4乗に逆比例するから、白色光が入射された場合、波長の短い青っぽい光が全方位に散乱し、その結果、透過光は減光され、長波長成分の相対強度が高まり赤っぽくなる。
【0014】このことは、平滑な金属表面に指紋が付着した場合、指紋内部の水と脂のコロイド状微細構造により光学的ゆらぎが形成され、光が入射すると、指紋部分で全方位に青っぽい光が散乱されると同時に、指紋を透過した金属表面からの反射光が赤っぽく着色されることを意味している。また、指紋が付着していない周辺部分から反射されてくる光に比べ、指紋付着部では減光されるため相対的に暗く見えることになり、反射光側で金属表面をみると、茶色っぽく汚れてみえることになる。
【0015】一方、反射光と大きな角度をなす視点から金属表面をみると、清浄な金属表面から出射される光は極めて弱く、その反面、指紋からの散乱光が青白く目立つことになる。金属表面に、可視光の波長と同程度の波長の凹凸が存在すると、これも金属と媒体(空気、水、脂など)により形成される光学的ゆらぎの原因となり、光散乱の原因となる。金属表面をダル仕上げすると、条件により、白色度の高い表面ができることもあるが、これは、金属表面の微細凹凸に起因した白色光の散乱現象に基づいている。この場合、光散乱理論によると、微細凹凸をなす金属とその周囲の媒体の屈折率比が、散乱光強度に大きな影響を与えるため、金属表面に接する媒体の種類により、白色度に差異が生ずることとなる。
【0016】つまり、微細凹凸を有する金属表面に指紋を付着させた場合、清浄部に比べ、指紋付着部にて金属表面から起こる白っぽい散乱光の強度が低下するため、結果として、黒っぽく汚れて見えることになる。したがって、これらの原理を熟考し、指紋が付着しても目立ちにくい表面を光学的に設計しようとする場合には、まず、金属表面からの光散乱が、指紋付着前後で変化しないようにすることが重要な要件として導出される。
【0017】つまり、指紋が付着する前後において、金属表面のごく微細な凹凸に起因する光散乱の条件が変化しないように、あらかじめ、金属表面の全面に、透明度のある有機、無機、もしくは有機・無機ハイブリッド素材からなる透明なコーティング層を施しておけば、指紋が付いても目立ちにくい金属表面が製造可能であるという結論が得られる。この場合、コーティング層のコーティングは、既存の塗装ラインを活用して行うことができるから、本発明では、電解研磨やバフ研磨に比べ、遥かに高い生産性を確保できることは言うまでもない。
【0018】また、さらに指紋を目立ちにくくするため、ある方向から光が入射してくる場合でも、付着している指紋に対しては、より多方向から光を入射させ、マクロな反射光方向へも指紋からの散乱光を重畳させ、このことによって、その指紋部透過光の赤色化を防止すると同時に、強い乱反射光により全方位への微弱な散乱光を隠蔽することによって、清浄表面および指紋付着部の色調の差異を最小化するという指針も得られる。
【0019】すなわち、金属表面の極微細凹凸における光散乱条件を、透明度のあるコーティング層により、指紋付着前後で変化しないようにし、さらには、より多くの方向へ強い乱反射光が出射するような表面条件を整えることで、指紋が付着しても目立ちにくい、例えば、ステンレス鋼板やチタン板をはじめとする金属板を提供できることが見い出され、本発明を完成させたのである。そして、その要旨とするところは、「中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上で、かつ、表面を1μmピッチの微小平面に置き換える3次元表面解析において、その法線がマクロな平均表面の法線に対して5度未満の角度をなす微小平面の割合が、全微小平面の85%以下である素材表面を有し、さらに、その上に、平均膜厚が0.2μm以上の透明なコーティング層を有することを特徴とする指紋が目立ちにくい金属板。」である。
【0020】
【発明の実施の形態】中心線平均粗さ(Ra)の測定、および、表面を1μmピッチの微小平面に置き換える3次元表面解析のデータ収集には、それぞれ、市販の触針式2次元表面粗さ測定機および同3次元表面粗さ測定機(例えば、東京精密製サーフコム1400A−3D)を用いればよい。
【0021】中心線平均粗さ(Ra)は、測定機に付与されたソフトウェアにより行い、Raが0.5μm以上であることを確認する。3次元表面解析は、200×200μmの領域において、縦横とも1μm間隔で高さを測定し、金属表面上の隣り合う3測定点よりなる3角形を一つの微小平面としてその法線ベクトルを計算し、マクロな平均表面の法線ベクトルとの角度を算出する。
【0022】マクロな平均表面とは、前記200×200μmの領域の凹凸をならして形成される平面であり、その中に含まれる微小表面の個数は80000個程度となる。そして、これら微小表面のうち、その法線が、マクロな平均表面の法線に対して5度未満の角度をなす割合が、全微小表面の85%以下であることを確認する。
【0023】これらは、前述のとおり、金属表面からの乱反射光を確保するために最低限必要と考えられる金属表面の表面形態を規定するものである。このような金属表面の表面形態を得る方法として、最も代表的なものは、冷間圧延後の焼鈍酸洗処理、光輝焼鈍後のダルロールによる調質圧延等であるが、エンボス圧延、各種ブラスト処理、直接機械加工、所定の凹凸を持った金型の押し付け、レーザー加工、放電加工、あるいは、それらの組み合せなどによっても得ることが可能である。
【0024】メッキ被覆する場合は、下地材に予め本発明の表面形態を付与してから、電解、溶融、無電解メッキ等を施すなどの方法、あるいは、メッキ後に、その表面を本発明の表面形態に加工する方法等を用いることができる。上記のような条件を満たす金属表面の上に、さらに、平均膜厚0.2μm 以上の透明なコーティング層を施すことにより、金属表面にある極微細な凹凸からの光散乱条件が、指紋の付着前後で変化しないようにするのが本発明の特徴である。膜厚測定方法は、特に特定されるものではないが、電磁膜厚計によれば比較的簡便に表面の平均的な膜厚を精度よく測定できる。コーティング層の膜厚の上限は特に規定しないが、300μmを超えて付着した場合、素材表面の性状限定による効果が十分に発揮されにくくなるので、300μm以下とするのがよく、さらには、200μm以下とするのがより好ましい。
【0025】指紋付着面と清浄面との光散乱や反射挙動の差異を最小化するためのコーティング層の材質は、シリカなどの無機物質、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコンポリエステル系樹脂などの有機樹脂、シリカとフッ素系樹脂のハイブリッド物質など、透明度があり金属表面へコーティングが可能なものであれば特に限定されるものではない。ただ、指紋とコーティング層との界面での新たな光散乱現象などを抑制するためには、指紋を構成する水や油脂と類似の屈折率(1.3〜1.6)を有する物質が好ましい。
【0026】なお、コーティング層の塗布は、ロールコーター、カーテンフローコーター、スプレイコーター、ドライプロセスなどの従来方法やそれらの組み合わせによればよく、特に限定されるものではない。
【0027】
【実施例】(実施例)金属板として、ステンレス鋼の代表的鋼種、SUS430とSUS304、および、その他に、工業用純チタン第1種を用い、本発明の金属表面、および、それと比較する金属表面を試作した。試作に係る素材条件は、表1に示すとおりである。なお、表1中備考欄で※印を付したものは、本発明の素材表面に係る条件を満たすものである。
【0028】また、本発明の金属表面の試作に用いたコーティング剤およびコーティング方法は、表2に示すとおりである。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】表1に示す素材条件と表2に示すコーティング条件を組み合わせて、本発明が意図する効果が意図どおりに発揮されるか否かを、試作したステンレス鋼板およびチタン表面に指を押し付け、指紋の目立ち方を目視して評価した。その結果を表3および表4に示す。なお、具体的な評価は、任意に選んだ10人の評価者のうち、何人が指紋が目立つと判断するかによって行なった。評価記号の意味を表5に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】この表3および表4より、本発明によれば、金属板の表面に指紋がついても目立ちにくくなることが理解できる。なお、この表1および表2に、それぞれ示した素材条件およびコーティング条件は、性能を確認するための一例であり、全てのステンレス鋼、チタンおよびチタン合金はもちろん、鉄、アルミ、クロム、ニッケル、金、白金やそれらの合金など、金属光沢を有する金属の全てに、本発明の適用は可能である。また、コーティング剤も、透明であればいかなるものも使用が可能である。
【0036】
【発明の効果】本発明は、鉄道、自動車、船舶、飛行機、建築内外装材、厨房部材、食器、工具、家具、器物、装身具、装飾品などに使用する、指紋がついても目立ちにくい金属板を提供する。そして、本発明の金属板は、指紋がついても目立ちにくいだけでなく、その表面仕様は、幅広い感性的ニーズに応えられるものである。したがって、本発明は、産業上の価値が極めて高いものである。




 

 


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