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板圧延反り予測・制御装置 - 新日本製鐵株式会社
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発明の名称 板圧延反り予測・制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−25808(P2001−25808A)
公開日 平成13年1月30日(2001.1.30)
出願番号 特願2000−80390(P2000−80390)
出願日 平成12年3月22日(2000.3.22)
代理人 【識別番号】100068423
【弁理士】
【氏名又は名称】矢葺 知之 (外1名)
【テーマコード(参考)】
4E024
【Fターム(参考)】
4E024 AA02 AA03 AA19 CC02 EE02 
発明者 東田 康宏 / 小川 茂 / 山田 健二
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置を有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される該圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するために付与すべき圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量に基づく、圧延材温度の上下面差の制御装置とから構成される圧延反り予測・制御装置。
【請求項2】 板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置を有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するために付与すべきロールと圧延材との摩擦係数の上下面差の変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記摩擦係数差の変更量に基づく、摩擦係数の上下面差の制御装置とから構成される圧延反り予測・制御装置。
【請求項3】 板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置を有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するために付与すべき圧延材の変形抵抗の上下面差とロールと圧延材との摩擦係数の上下面差との各変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量に基づく、圧延材温度の上下面差の制御装置と前記摩擦係数の上下面差の変更量に基づく、摩擦係数の上下面差の制御装置とから構成される圧延反り予測・制御装置。
【請求項4】 圧延材温度の上下面差の制御装置として、圧延材の上面あるいは下面に、単数あるいは複数のローラーを接触させ、接触条件を制御することにより、圧延材の上下面温度差を制御することを特徴とする請求項1あるいは請求項3記載の圧延反り予測・制御装置。
【請求項5】 圧延材温度の上下面差の制御装置として、圧延材の上面に、流体の吹き付け条件を制御することにより、圧延材の上下面温度差を制御することを特徴とする請求項1あるいは請求項3記載の圧延反り予測・制御装置。
【請求項6】 常に圧延材に接するローラーの熱伝導度を、その他のローラーの熱伝導度よりも小さくすることを特徴とする請求項4記載の圧延反り予測・制御装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板状の金属製品を圧延によって製造する場合における圧延反り予測・制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】板圧延材の先端に生じる圧延反りは、圧延板の平坦度不良の一つであるが、圧延後の矯正が非常に困難である上、板厚の大きい領域での圧延反りは、圧延設備を破壊したり、通板トラブルを引き起こすこともあるため、従来、圧延操業における重大問題としてその防止技術に関する研究開発がなされてきた。
【0003】その結果、温度偏差等に起因する圧延材の変形抵抗の上下面差、摩擦係数の上下面差、ロール周速の上下差、入側テーブルと圧延機の下作業ロール上端との高低差すなわちピックアップ量等が圧延反りにおよぼす影響が明確になりつつあり、定常的および継続的に生じる反りに対しては、温度偏差、摩擦係数差の制御差によって反りを防止する技術が知られている。例えば、特開昭63−63510号公報は、板に上下温度差を付与して反りを制御しようとするものであり、特開昭58−192605号公報は、反りが生じる部分に高潤滑を実施し反りを防止しようとするのものである。
【0004】さらに、特開平7−164031号公報で示されているように、圧延パスで突然反りが発生するパスに対しても、制御する方法が既に開示されている。これは、多パスのリバース圧延において、前パスの圧延時の圧延情報に基づいて、反りの発生要因となる圧延材の変形抵抗の上下面差と摩擦係数の上下面差を分析し、次パス以降に発生する圧延反りの方向および反り量を予測し、これを上下ロール周速度差あるいはピックアップ量によって制御しようとするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年、上下ロール周速度を独立して制御が可能な圧延機、あるいは、パス毎のピックアップ量の制御が可能な圧延機も増加しつつあるが、まだまだ、上下ロール周速度を独立して制御することができず、かつパス毎のピックアップ量制御もできない圧延機も数多く実在している。
【0006】このような圧延機において、反り制御を実施しようとする場合、アクチュエーターがロール周速度差あるいはピックアップ量に限定される特開平7−164031号公報の技術を適用することができない。また、上下温度差を付与する特開昭63−63510号公報、あるいは反りが生じる部分に高潤滑を行う特開昭58−192605号公報は、制御方法としては適用可能であるが、いずれも、反りの発生傾向が継続することを前提としている制御方法のために、突然に発生する反りに対しては、有効な制御を実施することはできない。
【0007】本発明の目的は、以上の点に鑑み、上下ロール周速度を独立して制御することができず、かつパス毎のピックアップ量制御もできない圧延機においても、突然に発生する反りに対応できるような高精度の反り制御が可能な装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために、圧延荷重測定装置と、上下ロールのトルク測定装置とを有し、これらの測定装置に基づく前パスの圧延データから、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、反り制御を実行する圧延パスにおいて発生すると推定される該圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するために付与すべき圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量に基づく、圧延材温度の上下面差の制御装置とから構成される圧延反り予測・制御装置であることを特徴とする。
【0009】すなわち、本発明の趣旨とするところは、以下の通りである。板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置とを有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される該圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するための圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量に基づく、圧延材温度の上下面差の制御装置とから構成されることを特徴とする圧延反り予測・制御装置である。
【0010】また、好ましくは、板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置を有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するためのロールと圧延材との摩擦係数の上下面差の変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記摩擦係数差の変更量に基づく、摩擦係数の上下面差の制御装置とから構成されることを特徴とする圧延反り予測・制御装置である。
【0011】また、さらに好ましくは、板材をリバース圧延作業で複数回圧延して所定の板厚に加工する少なくとも上下2本のロールを有する板圧延機において、前記圧延機の上下少なくともどちらか一方のロール側に負荷される圧延荷重を測定する圧延荷重測定装置と、上下ロールに負荷される圧延トルクを上下ロールそれぞれ独立に測定する圧延トルク測定装置を有し、前記圧延機で板材を圧延する複数回の圧延パスのうちの任意の圧延パスをデータ分析圧延パスとして、このデータ分析圧延パスにおける前記圧延荷重測定データ、圧延トルク測定データに基づいて、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差とを算出する圧延分析演算装置と、前記データ分析圧延パス以降の任意の圧延パスを反り制御圧延パスとし、前記圧延分析演算装置の演算結果と、前記反り制御圧延パスの設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスにおいて発生すると推定される圧延材先端の反り曲率、または圧延材出側の先進率の上下面差を算出予測し、該圧延反りを防止するための圧延材の変形抵抗の上下面差とロールと圧延材との摩擦係数の上下面差との各変更量を算出する反り予測・制御演算装置と、前記圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量に基づく、圧延材温度の上下面差の制御装置と前記摩擦係数差の変更量に基づく、摩擦係数の上下面差の制御装置とから構成されることを特徴とする圧延反り予測・制御装置である。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図1に、本発明を適用するリバース圧延機の一例を示す。上下のワークロール1、2を有する圧延機は、これらのワークロールで、圧延材3を所定の板厚に圧延する。この圧延機には、圧延荷重測定装置6と下ロール圧延トルク測定装置4、上ロール圧延トルク測定装置5が設けられている。ここで測定されたデータは、圧延分析演算装置7に伝送され、その分析データを基に反り予測・制御演算装置8および圧延材温度の上下面差制御装置9で、上面加熱冷却装置10と下面加熱冷却装置11への制御指令値を算出する。算出された制御指令値を基に、上面加熱冷却装置10と下面加熱冷却装置11が圧延材3の上下面を所定の温度に加熱・冷却する。なお、本図においては、上および下加熱冷却装置10,11は圧延機の片側のみの設置としているが、制御の効果からは、上および下加熱冷却装置10,11は、両側に設置する方がより好ましい。
【0013】図1に示す圧延機が、その構造上、上下ロール周速度を独立して制御することができず、かつパス毎のピックアップ量制御もできないとする。この場合、反りの制御を実施する際には、板に上下温度差を付与する方法および摩擦係数の上下面差を付与する方法が考えられる。それに対し、特開昭63−63510号公報あるいは特開昭58−192605号公報を適用しても、その制御が定常的かつ継続的な反りに限定される最大の原因は、圧延の各パス毎に反りの方向および大きさを正確に予測する手段がないことにある。
【0014】このような問題点を解決するため、本発明では、リバース圧延作業を対象として、前パスの圧延データを分析することによって、圧延材の変形抵抗の上面側と下面側の差と、摩擦係数の上面側と下面側の差を算出し、次パス以降の圧延反りの方向と大きさを正確に推定し、これを防止するための変形抵抗の上下面差の変更量に基づく圧延材温度の上下面差の変更量、あるいは摩擦係数の変更量に基づく摩擦係数の上下面差の付与条件(潤滑剤の量、濃度など)を演算して制御する圧延反り予測・制御装置を提供している。
【0015】なお、以下の説明では、圧延材の変形抵抗および摩擦係数の上下面差を分析するためのデータ源となる圧延荷重、圧延トルク等の測定対象となる任意の圧延パスをデータ分析圧延パスと称し、データ分析圧延パス以降で反り予測・制御の対象となる圧延パスを反り制御圧延パスと称することにする。
【0016】ロールバイト内の力学的現象として圧延材の変形を考えることとし、上下非対称性を考慮するため、上下別個の圧延条件に基づく圧延が成立していると仮定して解析するものとする。この場合、ロールバイト出側における圧延反りの要因となり得る力学的および幾何学的パラメータには以下のものが挙げられる。
【0017】
■変形抵抗の板厚方向平均値km および上下差kdf■摩擦係数の上下平均値μm および上下差μdf■入側張力の上下平均値σm および上下差σdf■上下の圧下量の平均値Δhm および上下差Δhdfここで、下添字dfで表記している上下差は、上下差の1/2を表すものとして定義しており、下添字T、Bで表現される上ロール側および下ロール側の各力学パラメータおよび幾何学パラメータは、それぞれ次式のように表現される。
T =km +kdf、 kB =km −kdf (1)
μT =μm +μdf、 μB =μm −μdf (2)
σT =σm +σdf、 σB =σm −σdf (3)
ΔhT =Δhm +Δhdf、 ΔhB =Δhm −Δhdf (4)
【0018】圧延材の入射角あるいはピックアップ量は、反りに大きな影響を与えることはよく知られているが、これらのパラメータは、ロールバイト入口において圧延材が受けるせん断歪の上下差の発生原因となり、これが加工硬化特性を通じて変形抵抗に上下差を生じる要因となったり、テーブルローラからの反力あるいは自重によってロールバイト入口で圧延材に作用する曲げモーメントを通じて後方張力の上下差として作用したりし、その結果、圧下量の上下差の発生要因となったりする。このように、圧延材の入射角あるいはピックアップ量の効果は、ロールバイト近傍の力学パラメータとしては、上記のkdf、σdf、Δhdfで表現されるものと考えることができ、ロールバイト近傍の圧延材の変形を力学的に解析するとき、上記■〜■が独立のパラメータとなる。
【0019】なお、本発明は圧延材の先端反りを対象としており、出側張力は常に零と見なすことができるため上記独立変数からは除外している。ただし、反り制御圧延パスがデータ分析圧延パスの直後の圧延パスとなるときは、反り制御圧延パスでは当然圧延材先端を考慮の対象とするので、データ分析圧延パスでは圧延材後端の圧延データを解析対象としなければならない。この場合は、■の入側張力の代わりに出側張力が独立変数となり、入側張力はほぼ零と見なすことができる。したがって、以下の説明では、圧延材先端、すなわち入側張力を未知パラメータとする場合を対象とするが、圧延材後端を考慮の対象とする場合、すなわち出側張力が未知となる場合は、σm 、σdfを出側張力に読み換えるだけで以下の説明は同様に適用できる。
【0020】上記■〜■のパラメータの中で、直接的に測定できるのは■のうちの平均圧下量Δhm である。平均圧下量Δhm を測定するには、圧延機の入側板厚および出側板厚を測定すればよく、また、Δhm の測定には圧延荷重測定からゲージメータ式を用いて入側板厚・出側板厚を演算してもよい。
【0021】これらに対して、残りのパラメータkm df、μm 、μdf、σm 、σdf、Δhdfは直接的に測定することは本質的に困難なパラメータである。本発明の圧延反り予測・制御装置は、これらの力学的パラメータをデータ分析圧延パスの圧延データより同定して、その同定結果に基づいて反り制御圧延パスにおける圧延材先端反りを予測し、これを防止するために付与すべき圧延材温度の上下面差あるいは摩擦係数の上下面差を演算し、これに基づいて反り制御するものである。
【0022】ところで、上ロール側、下ロール側をそれぞれ独立した圧延現象として解析する場合、圧延荷重計算や圧延トルク計算のため、上ロール側の入側板厚HT 、出側板厚hT 、下ロール側の入側板厚HB 、出側板厚hB が必要となる。これらを、出側板厚hとΔhm 、Δhdfから求める方法には、例えば、出側板厚を上下半分に分割して入側板厚は出側板厚の中心線を水平に延長して案分する方法、あるいは出側板厚は上下の接触弧長比に基づいて決める方法等、種々の方法が考えられるが、何れにしてもHT 、hT 、HB 、hB は、h、Δhm 、Δhdfの関数になる。前述したように、h、Δhm は既知量であるから、結局、HT 、hT 、HB 、hB は、未知量Δhdfの関数として表現できることになり、次式が得られる。
【0023】
【数1】

【0024】単スタンド圧延の場合、入側の全張力は零にならなければならず、また、タンデム圧延の場合でも、圧延材先端を咬み込んだ瞬間の全張力はほぼ零であるから、入側の全張力が零という次の関係式が成立しなければならない。
T σT +HB σB =0上式に式(3)を代入して整理すると次式を得る。
σm =−{(HT −HB )/(HT +HB )}・σdf (9)
式(5)および(7)を用いてHT 、HB を消去すると、式(9)は既知の関数バーHf を用いて次式のように書き改めることができる。
【0025】
【数2】

式(10)を用いることにより、未知数σm は直ちに消去することができる。
【0026】さて、残りの未知パラメータは、km 、kdf、μm 、μdf、σdf、Δhdfであるが、このうち、km 、μm は上下平均値であり上下非対称現象である圧延反りに対して本質的な影響は少なく、上ロール側と下ロール側の差異を表す4個のパラメータkdf、μdf、σdf、Δhdfがより本質的なパラメータである。さらに、これら4個のパラメータの中でも、反りの発生原因として重要なパラメータは、変形抵抗の上下差kdfと摩擦係数の上下差μdfであり、後方張力の上下差σdfと圧下量の上下差Δhdfは、kdf、μdfが原因となって、力学的なバランスをとるために発生する上下差で、むしろ結果的に発生するものである。したがって、圧延反りを予測するには、kdf、μdfを同定することが必須要件となる。さらに、本発明のようにリバース圧延を考慮の対象とするとき、変形抵抗の上下差kdfは圧延材の温度も含めた均質性に依存しているため、次パス以降にもその傾向は継続される性質のものであり、また、摩擦係数の上下差μdfも作業ロールの表面性状および圧延材の温度を含めた表面近傍の性質に支配されるため、次パス以降に一定の傾向が継続される性質を有している。したがって、これらのパラメータをデータ分析圧延パスの圧延データより分析し、データ分析圧延パス以降の反り制御圧延パスの圧延反り予測に利用することによって正確な反り予測・制御が可能になる。
【0027】図2には、請求項1の発明の圧延反り予測・制御装置の構成と、その作用を示している。まず、圧延荷重測定装置、上下圧延トルク測定装置を有する板圧延機で、データ分析圧延パスの圧延荷重、上下圧延トルクのデータを採取する。次に、圧延分析演算装置において、上記圧延データを分析し、圧延材の変形抵抗の上下面差kdfと、摩擦係数の上下面差μdfを算出する。この方法には、例えば、圧延機の設定計算に用いる圧延モデル式をプロセスコンピュータ内で連立して解いてkdfとμdfを計算する方法や、昭和61年度日本塑性加工学会春季講演会論文集第235頁〜第238頁の山田らの論文「剛塑性有限要素法による非対称圧延の解析」に開示されているようなオフラインの解析モデルを用いて種々の場合の計算を予め実行しておき、圧延荷重、上下圧延トルクと圧延材変形抵抗の上下面差と摩擦係数の上下面差の関係を線形近似して影響係数マトリクスとして算出しプロセスコンピュータ内に記憶しておき、この影響係数マトリクスを用いてプロセスコンピュータ内でkdfとμdfを計算する方法等を採用することが可能である。
【0028】さらに、反り予測・制御演算装置において、圧延分析演算装置によるkdfとμdfの演算結果と、データ分析圧延パス以降の反り制御圧延パスに対する設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスで発生すると推定される圧延材の反り曲率κ、または圧延材出側の先進率の上下面差Uを算出予測し、該圧延反りを防止するための圧延材の変形抵抗の上下差の変更量δkdfを算出する。この方法にも、圧延機の設定計算に用いる圧延モデル式をプロセスコンピュータ内で連立して解いて演算する方法や、オフラインの解析モデルを用いて予め影響係数マトリクスを算出しておき、これを利用してプロセスコンピュータ内で演算する方法等を採用することが可能である。
【0029】最後に、圧延材温度の上下面差制御装置によって、上記演算された圧延材の変形抵抗の上下面差の変更量δkdfとなるような、圧延材温度の上下面差Δtを付与することによって、圧延反りの発生を防止することが可能となる。なお、δkdfとΔtの関係は、予めオフラインの解析モデル等で求めておけばよい。また、Δtを付与するためには、板の上下面を加熱(例えば、誘導加熱)・冷却(例えば、水冷)する方法等を用いればよい。板温度の上下面差をΔtとする、加熱あるいは冷却の条件は、オフラインの解析モデルによる計算や実験等で、予め求めておけば良い。
【0030】図3には、請求項2の発明の圧延反り予測・制御装置の構成と、その作用を示している。まず、圧延荷重測定装置、上下圧延トルク測定装置を有する板圧延機で、データ分析圧延パスの圧延荷重、上下圧延トルクのデータを採取する。次に、圧延分析演算装置において、上記圧延データを分析し、圧延材の変形抵抗の上下面差kdfと、摩擦係数の上下面差μdfを算出する。この方法には、例えば、圧延機の設定計算に用いる圧延モデル式をプロセスコンピュータ内で連立して解いてkdfとμdfを計算する方法や、昭和61年度日本塑性加工学会春季講演会論文集第235頁〜第238頁の山田らの論文「剛塑性有限要素法による非対称圧延の解析」に開示されているようなオフラインの解析モデルを用いて種々の場合の計算を予め実行しておき、圧延荷重、上下圧延トルクと圧延材変形抵抗の上下面差と摩擦係数の上下面差の関係を線形近似して影響係数マトリクスとして算出しプロセスコンピュータ内に記憶しておき、この影響係数マトリクスを用いてプロセスコンピュータ内でkdfとμdfを計算する方法等を採用することが可能である。
【0031】さらに、反り予測・制御演算装置において、圧延分析演算装置によるkdfとμdfの演算結果と、データ分析圧延パス以降の反り制御圧延パスに対する設定計算条件とに基づいて、前記反り制御圧延パスで発生すると推定される該圧延材の反り曲率κ、または圧延材出側の先進率の上下面差Uを算出予測し、該圧延反りを防止するために必要な摩擦係数の上下面差の変更量Δμを算出する。この方法にも、圧延機の設定計算に用いる圧延モデル式をプロセスコンピュータ内で連立して解いて演算する方法や、オフラインの解析モデルを用いて予め影響係数マトリクスを算出しておき、これを利用してプロセスコンピュータ内で演算する方法等を採用することが可能である。
【0032】最後に、摩擦係数の上下面差制御装置によって、上記演算された摩擦係数の上下面差の変更量Δμに基づいて、摩擦係数の上下面差の設定変更を実行することにより、圧延反りの発生を防止することが可能となる。なお、Δμを付与する手段としては、上下のワークロールと圧延材との潤滑条件を変更する方法等があり、例えば、圧延材の上下に供給される潤滑油の量や濃度を制御すれば良い。Δμと潤滑等の条件との関係は、予め、オフラインの解析モデルによる計算や実験等で求めておけばよい。
【0033】以上では、圧延荷重、圧延トルク等の圧延データの分析によって、圧延材の変形抵抗の上下面差と摩擦係数の上下面差を算出する方法を説明したが、圧延機近傍に圧延材の上下面温度測定装置を配備し、これによる上下面温度測定結果より、圧延材の変形抵抗の上下面差kdfを変形抵抗式より求め、未知数を減らし、その他の圧延データより、少なくとも摩擦係数の上下面差μdfを求め、反り制御圧延パスの反りを予測・制御する方法も、反り予測・制御の演算時間を短縮し精度を上げる点で好ましい方法である。
【0034】また、反り制御圧延パスはデータ分析圧延パスの直後の圧延パスであることが好ましいが、圧延分析演算装置および反り予測・制御演算装置における演算時間が長く次パスの制御に間に合わない場合は、データ分析圧延パスの次々パスを反り制御圧延パスとしても差し支えない。
【0035】さらに、同一圧延材に対する分析・制御のみならず、次の圧延材の最初の圧延パスの反り制御を、前材の圧延実績から分析した変形抵抗の上下面差および摩擦係数の上下面差を参照して実施するのも本発明の好ましい応用例である。さらにまた、反りの予測までは本請求項1の発明と同様の方法で行い、その反りκを解消するために、圧延材温度の上下面差Δtと摩擦係数の上面差Δμdfの両方を組み合わせて、各々の変更量を算出する制御装置によって、圧延材温度の上下面差Δtと摩擦係数差Δμdfを同時に付与する方法も好ましい方法である。なお、κとΔt、Δμdfの関係は、予めオフラインの解析モデルによる計算や実験等で求めておき、その結果を基にテーブル等を構築し、オンライン制御時に用いれば良い。
【0036】請求項1および請求項3においては、圧延材温度の上下面差を付与する制御装置が必要となるが、この制御装置として、圧延材の上面あるいは下面に、単数あるいは複数のローラーを接触させ、接触条件を制御することにより、圧延材の上下面温度差を制御する装置が好ましい。ここで、接触条件とは、例えば、ローラーの上下の接触本数の差、ローラーの接触時間、ローラー温度等を示す。接触条件と圧延材の上下面温度差の関係は、予め実験等でモデル化しておけば良い。このモデルに基づき、請求項1および請求項3で必要となる圧延材の上下面温度差が得られるようなローラー接触を実施すれば、反りを制御でき、平坦な板を圧延することができる。
【0037】図4(a)に、その一例として、ローラーの上下の接触本数を制御する装置を示す。圧延材3は上ワークロール1と下ワークロール2で圧延される。圧延材の上下には上ローラー12〜15、および下ローラー16〜19が設置されている。上ローラー13及び14、下ローラー17及び18は各々上下移動が可能である。
【0038】図4(b)に、上ローラー13、14を上方向に移動させ、圧延材3の下面を冷却している一例を示す。下ローラーの接触本数が多いために、下面の伝熱による抜熱が大きくなり、下面の温度が上面よりも低くなる。上ローラー12、15は圧延材を下に押しつけ、下ローラー16〜19と圧延材の接触面積を増加させ、冷却の効果を大きくしているが、場合によっては、ローラー13、14と同様、上方向に移動しても良い。図4(c)には、上面を冷却する方法を示す。
【0039】また、図4(b)で説明したように上ローラー12、15で押しつける場合には、図4(b)に示すように、常に接触するローラー12、15、16、19には断熱効果の高い材質(例えば、セラミック、ステンレス)を使用する方が好ましい。これは、例えば、図4(b)であれば、ローラー12、15にも熱が伝わるために、上面もある程度は冷却されることになるので、このローラー12、15に断熱効果の高い材質を使用すれば、上面の冷却を防止できるからである。さらに、上下移動させるローラー13、14、17、18には熱伝導の良い材質(例えば、鋼、銅合金)を用いること、および、上下移動させるローラー13、14、17、18は、冷却(例えば、内部水冷)すること、が好ましい。なお、用いるローラー本数が上下各4本に限らないこと、および上下移動可能なローラーも必要に応じて選択すればよいことは言うまでもない。
【0040】また、さらに、圧延材温度の上下面差の制御装置として、圧延材の上面に、吹き付け条件を制御して流体を吹き付けることにより、圧延材の上下面温度差を制御する装置も好ましい。この流体の吹き付け条件(流量、流速)を変動させることによって、板の上に溜まった冷却水(板上水)の量を制御することができる。例えば、上面温度を上昇させたい場合には、流速を早くして、板上水を吹き飛ばし、冷却効果を低下させればよい。また、上面温度を下降させたい場合には、流体を水とし、板上水の量が増加するように、吹き付け条件を制御すれば良い。この吹き付け条件と圧延材の上下面温度差の関係は、予め実験等でモデル化しておけば良い。このモデルに基づき、請求項1および請求項3で必要となる圧延材の上下面温度差が得られるような、条件での流体吹き付けを実施すれば、反りを制御でき、平坦な板を圧延することができる。無論、この流体吹き付けによる温度制御と上述のローラーによる冷却と組み合わせて使用しても良い。
【0041】
【実施例】実施例1:圧延荷重測定装置、上下ロール圧延トルク測定装置を有し、圧延材の上下面を独立に加熱・冷却可能な板圧延機を用いて板材のリバース圧延を実施する場合の好ましい実施例を説明する。なお、本実施例の板圧延機は、上下ロールの駆動軸はピニオンギアによって結合されており、ロール回転速度は上下必ず等しくなる構造となっている。
【0042】まず、圧延の1パス目をデータ分析圧延パスとして、1パス目で圧延材後端近傍を圧延中の圧延荷重測定値P、圧延トルク測定値GT 、GB を測定する。これらの測定値とプロセスコンピュータで圧延荷重および圧延トルクを求めるために利用している圧延荷重計算式および圧延トルク計算式による計算値とが一致するという条件より、次の方程式が得られる。
【0043】
【数3】

ここで、式(11)〜(14)のバーPT 、バーPB 、バーGT 、バーGB は、それぞれ上下圧延荷重、上下圧延トルク計算式を表しており既知関数である。式(11)〜(14)右辺括弧内の独立変数からはロール直径や平均板厚圧下量Δhm 等の既知量は省略しており、また入側板厚HT 、HB 、出側板厚hT 、hBは、式(5)〜(8)を代入することによってΔhdfの関数として表現している。したがって、式(11)〜(14)は、式(1)〜(3)を考慮することによって、未知変数km 、kdf、μm 、μdf、σdf、Δhdfに関する方程式系となっている。なお、σm は、式(10)により既に消去されているものと考え、本実施例では、圧延材後端近傍の圧延データを採取しているため、σm 、σdfは入側張力ではなく、出側張力の上下平均値および上下差を表すものとする。なお、この場合、入側張力は零と見なすことができる。
【0044】利用できる方程式系としては、式(11)〜(14)の他に出側材料の適合条件式がある。すなわち、ここでは圧延材後端圧延時のデータを分析しているため、出側材料は十分長く、自重の影響もあって出側材料速度は上下面で等しくなるという条件である。上ロール側および下ロール側の先進率をそれぞれfT 、fBとするとき、この条件は次式で表現される。
(1+fT )VT =(1+fB )VB (15)
ここで、VT 、VB は上下ロールの周速度である。本圧延機の場合、VT =VBであるから、式(15)は、下記のように変形できる。
(1+fT )=(1+fB ) (15)′T 、fB は、圧延理論から上記未知数km 、kdf、μm 、μdf、σdf、Δhdfおよび既知の圧延条件の既知関数として表現できるから、式(15)′は既知関数Fを用いて次式のように表現することが可能である。
F(km ,kdf,μm ,μdf,σm ,σdf,Δhdf)=0 (16)
【0045】以上の式(11)〜(14)および式(16)が利用できる5個の方程式系である。これに対して求めるべき未知数は現状では6個である。しかしながら、圧延反りが上下非対称変形挙動に基づくという事実より、これら残る6個の未知変数km 、kdf、μm 、μdf、σdf、Δhdfのうち、圧延反りの予測に本質的に重要となるのが、上ロール側と下ロール側の差を示すkdf、μdf、σdf、Δhdfの4個であり、上下平均値を表すkm 、μm の推定精度は反り予測に対しては、さほど重要ではないことは明らかである。特に、摩擦係数の平均値μm に関しては、温度依存性も少なく各圧延パス毎に変化する要素も少ないため、例えば、設定計算機能で使用している値、あるいは前圧延パスの圧延荷重および圧延トルクから逆算した値を用いても反り予測・制御精度を実質的に悪化させることはない。そこで、μm にこのような値を使用するものとすると、未知数は、km 、kdf、μdf、σdf、Δhdfの5個となる。したがって、上記5個の非線形方程式系を解くことによって解を求めることが可能となる。この非線形方程式の解法には、例えば Newton-Raphson 法等の反復計算手法を用いればよい。以上のようにして、km 、kdf、μdf、σdf、Δhdfの値をすべて求めることが可能となる。
【0046】さて、本実施例では、以上の分析の対象としたデータ分析圧延パスの次の圧延パスを反り制御圧延パスとする。この場合、反り制御圧延パスでは、データ分析圧延パスにおける圧延材後端部が圧延材先端となり、前記反り制御圧延パスの圧延材先端圧延時の反り予測およびそれを防止するための変形抵抗の上下面差の操作量の計算を反り予測・制御演算装置で実施する。
【0047】反り制御圧延パスの反り予測・制御のために使用する変形抵抗の上下面差および摩擦係数の上下面差を今分析したデータ分析圧延パスの値を参照して推定する方法には、いくつかの考え方があるが、オンラインで実行できる最も簡単な手法として、本実施例では以下の方法を採用する。
【0048】変形抵抗の上下差と平均値の比kdf/km 、および摩擦係数の上下差と平均値の比μdf/μm は反り制御圧延パスでも変化しないものとし、反り制御圧延パスの変形抵抗の平均値km および摩擦係数の平均値μm を設定計算モデルより計算し、データ分析圧延パスのkdf/km およびμdf/μm の値より、kdf、μdfを求める。この手続きにより、反り制御圧延パスに関する未知パラメータは、σdfとΔhdfのみとなる。なお、反り制御圧延パスの場合は、先端通板を考慮の対象とするため、出側張力は零と見なすことができ、入側張力の上下平均値σm および上下差σdfが未知数となるが、σm は出側の全張力が零という条件でただちに消去される。
【0049】反り制御圧延パスの検討を行う場合、圧延荷重および圧延トルクの実績値は利用できないが、未知パラメータはσdfとΔhdfの2個だけであるので、以下の方程式を解くことにより解を求めることができる。上下の圧延荷重が等しいという条件式【数4】

および入側材料速度が上下面で等しくなるという条件式 (hT /HT )(1+fT )VT =(hB /HB )(1+fB )VB (18)
ここで、本圧延機の場合、VT =VB なので、式(18)は、式(18)′に変形できる。
(hT /HT )(1+fT )=(hB /HB )(1+fB ) (18)′T 、fB は、圧延理論から上記未知数σdf、Δhdfおよび既知のkm 、kdf、μm 、μdf他の圧延条件の既知関数として表現できる。以上の式(17)、(18)′をσdf、Δhdfに関する非線形方程式として解くことにより、σdf、Δhdfが求められる。これらが求められれば、既に既知量となっているkm 、kdf、μm 、μdf、σm 、Δhm 、VT 、VB と併せて、圧延反りの要因となり得る力学的および幾何学的パラメータが全て求められたことになる。
【0050】ここで、上下の材料のロールバイト出口速度vT 、vB と反り曲率κとの関係を考える。なお、vT 、vB の板厚方向の位置に関しては、材料を上下に2分割していることから、上材料のロールバイト出口速度vT は、上材料の板厚方向の中央位置、すなわち、出側板厚の1/4の位置(上面からの位置)における速度とし、下材料のロールバイト出口速度vB は、下材料の板厚方向の中央位置、すなわち出側板厚の3/4の位置(上面からの位置)おける速度とする。
【0051】この時、上側の圧延材のロールバイト出口速度vT 、下側の圧延材のロールバイト出口速度vB は、先進率をそれぞれfT 、fB として、次式で計算される。
T =VT (1+fT )、 vB =VB (1+fB ) (19)
反り曲率κは、幾何学的関係によりvT 、vB から計算することができ、更に、VT =VB を考慮すると式(20)が得られる。ここで、fT 、fB は上記の各パラメータおよび既知の圧延条件から先進率計算式によって計算できるものである。
κ=4(vB −vT )/h(vB +vT
=4(fB −fT )/h(2+fB +fT ) (20)
なお、hは出側板厚であり、反り曲率κは上側に反る方向を正としている。
【0052】式(20)で予測される反りを防止するための変形抵抗の上下面差の変更量は、式(21)で示される上下圧延材の速度差Wに基づき、式(22)で示す上下圧延材の先進率差Uを零とするように決める。
W=vT −vB =VT (1+fT )−VB (1+fB ) (21)
U=(1+fT )−(1+fB )=fT −fB (22)
【0053】ここで、下式のように、変形抵抗の上下面差の変更量の半分をδkdfとする。
δkdf=δ(kT −kB )/2 (23)
δkdf=0の時のUの初期値をU0 とすると、U=0となるδkVdfの値を求めるには、dU/d(δkdf)を計算して、まず第一次近似解として次式を用いる。
δkdf=−U0 /{dU/d(δkdf)} (24)
さらに精度の高いδkdfの値が必要な場合は、kT 、kB の値を式(24)の計算結果によって更新して以上の手続きを繰り返せばよい。
【0054】なお、dU/d(δkdf)の計算では、正確にはfT 、fB がδkdfの関数であることを考慮しなければならないが、近似的に、これを無視して∂U/∂(δkdf)で代用する方法もある。
【0055】式(24)の計算結果に基づいて、圧延材の上下面の加熱・冷却により、このδkdfを与えるような圧延材温度の上下面差Δtを付与することにより、圧延反りの発生を防止することができる。δkdfとΔtの関係に関しては、オフラインの解析モデルによる計算や実験等により、予め求めておけばよい。また、Δtを付与するための加熱・冷却の設定条件(例えば、冷却水の流量など)に関しても、オフラインの解析モデルによる計算や実験などにより、予め、それらの関係を求めておけばよい。高精度の反り制御には、式(23)に従い、圧延材の変形抵抗を減ずべき面を加熱し、変形抵抗を増すべき面を冷却することが望ましいが、簡易的には、δkdfから導出される上下変形抵抗差となるように、上下面いずれかのみを加熱あるいは冷却することも可能である。
【0056】さらに、反り制御圧延パスの圧延が開始された時点で、反り制御圧延パスを次のデータ分析圧延パスと見なして圧延データを採取し、さらに次の圧延パスを反り制御圧延パスとして同様の手続きを繰り返すことにより、すべての圧延パスの反り制御が可能となる。
【0057】なお、以上の演算がデータ分析圧延パスの次パスに間に合わない場合は、データ分析圧延パスにおける圧延材先端の圧延データを分析し、次々パスを反り制御圧延パスとして、同様に反り予測・制御を実施すればよい。この場合、その間の圧延パスは、さらにその次々パスを反り制御圧延パスとするためのデータ分析圧延パスと見なして圧延データ採取・分析の対象となる。
【0058】実施例2:圧延荷重測定装置、上下ロール圧延トルク測定装置を有し、摩擦係数の上下面差を設定可能とする手段、例えば圧延材の上面と下面の潤滑剤の供給量を制御できる装置を有する板圧延機を用いて板材のリバース圧延を実施する場合の好ましい実施例を説明する。実施例1と同様に、圧延の1パス目をデータ分析圧延パスとして、1パス目で圧延材後端近傍を圧延中の圧延荷重測定値P、圧延トルク測定値GT 、GB を測定する。なお、本実施例の板圧延機も、上下ロールの駆動軸はピニオンギアによって結合されており、ロール回転速度は上下必ず等しくなる構造となっている。
【0059】圧延荷重測定値および圧延トルク測定値から、圧延材の変形抵抗の上下面差kdfおよび摩擦係数の上下面差μdfを算出する際に、実施例1のように、圧延理論に基づいた設定計算式をプロセスコンピュータの中で解く方法ではなく、予め求めておいた影響係数マトリクスを用いる方法を本実施例では採用する。
【0060】例えば、昭和61年度日本塑性加工学会春季講演会論文集第235頁〜第238頁の山田らの論文「剛塑性有限要素法による非対称圧延の解析」に開示されているようなオフラインの解析モデルを用いると、各圧延条件に対して次式で定義される影響係数マトリクスM(3×3行列)を計算することが可能である。
【0061】
【数5】

であり、P:圧延荷重、ld :接触弧長(上下平均値)、Gdf:圧延トルク上下差、Gm :圧延トルク上下平均値、kdf:変形抵抗上下差、km :変形抵抗上下平均値、μdf:摩擦係数上下差、μm :摩擦係数上下平均値、Vdf:ロール周速度上下差、Vm :ロール周速度上下平均値、κ:反り曲率である。
【0062】影響係数マトリクスMの各成分の値は、圧延条件によって変化するが、これをモデル式化するか、テーブル化してプロセスコンピュータに記憶しておけば、各圧延条件毎に圧延開始前の設定計算で、当該圧延条件に対応する影響係数マトリクスMの値をメモリー内に呼び出しておくことが可能である。
【0063】このような準備をした上で、圧延材後端を圧延している時点の圧延荷重測定値、および圧延トルク測定値より、規格化された変形抵抗上下差ハットkdfおよび摩擦係数上下差ハットμdfを次のようにして求める。ロール周速度差ハットVdf=0を考慮した上で、式(25)より、ハットP、ハットGdfに関する式を抽出すると次式を得る。
【数6】

したがって、圧延荷重および圧延トルク測定値よりハットP、ハットGdfが得られるから、式(25)を逆に解いた次式を用いてハットkdf、ハットμdfを求める。
【数7】

【0064】さて、本実施例では、以上の分析の対象としたデータ分析圧延パスの次の圧延パスを反り制御圧延パスとする。この場合、反り制御圧延パスでは、データ分析圧延パスにおける圧延材後端部が圧延材先端となり、該反り制御圧延パスの圧延材先端圧延時の反り予測およびそれを防止するための、ワークロールと板との摩擦係数の上下差の変更量を反り予測・制御演算装置で演算する。
【0065】上記手続きで求められたデータ分析圧延パスにおけるハットkdf、ハットμdfの値が反り制御圧延パスでも同じであると仮定し、これをハットVdf=0とともに反り制御圧延パスに対する式(25)に代入することにより、反り制御圧延パスで発生すると推定される反り曲率κ0 が計算予測できる。
【0066】次に、反り制御圧延パスで圧延材先端圧延時の反りを防止するための摩擦係数の上下差の変更量Δμを算出する。このための準備として、例えば、上記した山田らの論文に開示されているような手法を用いたオフライン計算によって、摩擦係数の上下差Δμと反り曲率Δκの関係を影響係数Jで次式によって表現しておく。
Δκ=J・Δμ (29)
【0067】影響係数Jは、板厚、圧下率、圧延材の変形抵抗等の圧延条件によって変動するが、上記した影響係数マトリクスMと同様に、これをモデル式化するか、あるいはテーブル化してプロセスコンピュータに記憶しておけば、各圧延条件毎に圧延開始前の設定計算で、当該圧延条件に対応するJの値をメモリー内に呼び出しておくことが可能である。式(29)より、次圧延パスで予測される反り曲率κ0 を零にするための摩擦係数の上下面差Δμは、次式で求められる。
Δμ=−κ0 /J (30)
【0068】式(30)の演算結果に基づいて、反り制御圧延パスにおける、摩擦係数の上下面差を変更することによって、先端反りを防止することができる。Δμを付与するためには、上面と下面の潤滑剤の供給量を制御すればよい。なお、Δμと潤滑剤の流量の関係は、予めオフラインの解析モデルによる計算や実験等で求めておけばよい。
【0069】
【発明の効果】本発明の圧延反り予測・制御装置を採用することにより、圧延材先端に発生しがちな圧延反りを未然に防ぐことが可能となり、圧延操業のトラブルを避けることができる上、圧延材の平坦度も大幅に向上せしめることができ、圧延コストの低減および圧延材の品質向上に大きな効果が得られる。




 

 


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