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発明の名称 人工皮革靴及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−190307(P2001−190307A)
公開日 平成13年7月17日(2001.7.17)
出願番号 特願2000−5730(P2000−5730)
出願日 平成12年1月6日(2000.1.6)
代理人
発明者 米田 久夫 / 延藤 芳樹 / 松井 美紀宏 / 山田 友
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】0.01デシテックス以下の極細繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(A)、接着剤層(B)及び0.05デシテックス以上の繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(C)が順次積層された積層体から(A)層側の面を外側にして形成された甲材と靴底材とを接着剤により固定されている靴であって、甲材と靴底材との接着部において、甲材の(A)層及び(B)層が実質的に除去され、直接(C)層が接着剤により靴底材と固定されることを特徴とする人工皮革靴。
【請求項2】(A)層を構成する絡合不織布が、ポリアミドの極細繊維束から構成され、外側表面の少なくとも一部が起毛されているか、または外側表面に高分子弾性体の樹脂層が積層されている請求項1記載の人工皮革靴。
【請求項3】下層の基体(C)の接着剥離強力が7.0kg/2.5cm以上であり且つ基体(A)層の接着剥離強力に対する(C)層の接着剥離強力の割合が1.5倍以上である請求項1又は2に記載の人工皮革靴。
【請求項4】基体(A)と接着剤層(B)との色差ΔEA及び基体(C)と接着剤層(B)との色差ΔECが共に2.0以上である請求項1〜3のいずれかに記載の人工皮革靴。
【請求項5】0.01デシテックス以下の極細繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(A)、接着剤層(B)及び0.05デシテックス以上の繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(C)が順次積層された積層体から(A)層側の面を外側にして甲皮を形成し、該甲皮を用いて製靴する際に、該甲皮と靴底材とを接着するに先立って、甲皮と靴底材との接着部となる甲皮の(A)層及び(B)層を実質的に研削して、(c)層と靴底材を直接接着剤にて固定することを特徴とする人工皮革靴の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、甲材として十分な接着剥離強力を有していないがソフトで高級感を有している素材を用いて、感性面を維持した状態で靴としての十分な剥離強力を有している人工皮革靴及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、靴の甲材に関しての開発は急速であり、特に足の単なる保護材からファッション性や履き心地を追求した靴に関しての開発が多く見られる。しかしながら、履き心地及びファッション性を追求するも、製靴後の剥離強力及び製靴性の問題で靴の甲材として使用出来ないものがある。また靴種によっては、靴としてより優れた剥離強力が要望されている。剥離強力の低いものを縫製靴にして製靴する方法は公知であるが、このような方法は生産性が劣り、使用できる靴種には制限がある。
【0003】特開平9―103303号公報には、靴底と接着する甲材に貫通孔をあけて接着剤で補強し剥離強力を高める方法を提案されている。しかし十分な剥離強力が得られるためには貫通孔を多数設けなければならず、大幅な甲皮の強度低下をもたらす。また特開平10―192004号公報には、靴底と甲材の接着面の中間に接着シートをはさみ加熱圧着して接着する方法が提案されているが、このような方法の場合には、基材の有しているソフト性が損なわれることとなる。このように従来の方法では、基材の本来の持っているソフト性、ファッション性、高級感等を損なわず、靴とのしての基材以上の剥離強力を有する靴を製造することは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、基材が本来有しているソフト性、ファッション性、高級感等を損なうことなく、基材以上の剥離強力を有する人工皮革靴を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明らは鋭意検討の結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、0.01デシテックス以下の極細繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(A)、接着剤層(B)、及び0.05デシテックス以上の繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(C)が順次積層された積層体から甲材の(A)層側の面を外側にして形成された甲皮と靴底材とを接着剤により固定されている靴であって、該甲材と靴底材との接着部において、該甲材の(A)層及び(B)層が実質的に除去され、直接(C)層が接着剤により靴底材と固定されることを特徴とする人工皮革靴である。
【0006】また本発明は、0.01デシテックス以下の極細繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(A)、接着剤層(B)及び0.05デシテックス以上の繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含有された基体層(C)が順次積層された積層体から(A)層側の面を外側にして甲皮を形成し、該甲皮を用いて製靴する際に、甲皮と靴底材とを接着するに先立って、該甲皮と靴底材との接着部となる甲皮の(A)層及び(B)層を実質的に研削して、(c)層と靴底材を直接接着剤にて固定することを特徴とする人工皮革靴の製造方法である。
【0007】以下、本発明について具体的に詳細に説明する。まず本発明に用いられる甲皮用シートは、基体層(A)と接着層(B)と基体層(C)で構成される。このような甲皮用シートは、甲材として十分な接着剥離強力を有していないがソフトで高級感を有している。このような甲皮用シートの製造に際しては、基体層(A)と基体層(C)をそれぞれ別々に作製してから接着することにより接着層(B)が形成される。(A)層は、0.01デシテックス以下の極細繊維が絡合されて形成されている不織布とそれに含有された弾性重合体からなる。極細繊維の繊度は、0.01デシテックス以下であり、好ましくは0.005デシテックス以下、より好ましくは0.001〜0.0001デシテックスの範囲である。0.01デシテックスを越える場合には、表面を起毛しても、ヌバック調或いはスエード調の高級で且つきめの細かい光沢や触感が得られないし、銀付調にした場合には繊維の太さに基づく表面凹凸感が生じて、薄膜での仕上げ処理ができず、天然皮革とはほど遠いものとなる。また0.0001デシテックス未満の場合には、起毛品とした場合に染色による着色では所望する濃度の色が得られない。
【0008】極細繊維の製造方法としては、溶解性または分解性の異なる2種類以上のポリマーを使用して混合紡糸法、海島型複合紡糸法、分割型複合紡糸法等の紡糸方法により得られた極細繊維発生型繊維の一部(例えば海成分)を抽出または分解除去、或いは分割処理して極細繊維とする方法や、溶融紡糸ノズルから繊維形成性ポリマーを吐出した直後に高速気体で吹き飛ばして繊維を極細化する、いわゆるメルトブロー法などの公知の極細繊維の製造方法を用いて製造することができるが、好ましくは繊維太さの管理や極細繊維の安定性から、上記極細繊維発生型繊維を経由する方法である。
【0009】極細繊維を構成する樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル類や、ナイロン−6、ナイロン−66、ナイロン−610等のポリアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類等の公知の樹脂から選ばれた繊維形成性ポリマーが挙げられる。なかでもポリアミド類を島成分とする海島構造繊維から海成分を抽出または分解除去して得られる極細繊維束が、もっともソフトで高級感ある皮革様シートが得られることから好ましい。
【0010】また、極細繊維発生型繊維を構成する抽出または分解除去される樹脂成分(海成分)の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン−アクリル系モノマー共重合体、スチレン−エチレン共重合体等のポリマーから選ばれた少なくとも1種類のポリマーが挙げられる。極細繊維発生型繊維を構成する極細繊維用樹脂(島成分)と抽出除去又は分解除去される樹脂(海成分)とは、溶融状態で相溶性を有していないことが好ましい。
【0011】次に上記極細繊維または極細繊維発生型繊維を用いて基材を形成する方法について説明する。基材を形成する方法としては、公知の方法、例えば極細繊維発生型繊維からなる絡合不織布を製造する工程、その絡合不織布に弾性重合体溶液を含浸・凝固する工程、極細繊維発生型繊維を極細繊維に変成する工程を順次行うことにより達成できる。もちろん極細繊維に変成する工程と弾性重合体を含浸・凝固させる工程の順序を逆転させても良い。
【0012】極細繊維発生型繊維を用いて絡合不織布を製造する方法としては、極細繊維発生型繊維を、従来公知の方法により、紡糸、延伸、熱固定、捲縮、カット等の処理を行って、同繊維の原綿を作製し、かかる原綿をカードで解繊し、ウェーバーでランダムウェブまたはクロスラップウェブに形成する。得られたウェブを必要に応じて積層し、所望の重さにする。ウェブの重さは目的とする最終的な用途分野に応じて適宜選択され、一般的に100〜3000g/m2の範囲が好ましい。また低コスト化などの目的で、必要とする重量の約2倍の絡合不織布に弾性重合体溶液を含浸させた後にバンドナイフなどにより厚さ方法に2分割することにより、効率よく一度に2枚の基材を製造することもできる。
【0013】ウェブの積層の工程に次いで公知の手段、たとえばニードルパンチング法や高圧水流噴射法等を用いて絡合処理を施して、絡合不織布を形成する。ニードルパンチング数及びニードルパンチング条件は使用針の形状やウェブの厚みにより異なるが、一般的には200〜2500パンチ/cm2の範囲で設定するのが好ましい。
【0014】絡合不織布に対して、弾性重合体の含浸処理に先立って、必要に応じて熱プレスなどの公知の方法により表面の平滑化処理を行うこともできる。絡合不織布を構成する繊維が、例えばポリエチレンを海成分とし、ポリエステルやポリアミドを極細の島成分とする極細繊維形成性繊維である場合には、熱プレスで海成分の低融点ポリマー、例えばポリエチレンを融着させることにより極めて表面平滑性に優れた絡合不織布とすることができるので特に好ましい。また絡合不織布を構成する繊維が一成分を溶解除去して極細繊維に変成することのできる極細繊維形成性繊維でない場合には、含浸させる弾性重合体が繊維に固着して得られる皮革様シートの風合いが硬くなることを防止するために、弾性重合体溶液の含浸処理に先立ってポリビニルアルコールなどの仮充填物質で繊維表面を覆っておくことが好ましい。また1成分を溶解除去することにより極細繊維とすることができる極細繊維形成性繊維の場合にも、絡合不織布の段階で仮充填物質を付与することにより、一層柔軟なシートとすることができる。
【0015】次に絡合不織布に含浸させる弾性重合体としては、公知のものが使用できるが、風合いの点からポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。好ましいポリウレタン樹脂としては、ソフトセグメントとして、ジオールとジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とを反応させて得られるポリエステル系ジオール、ポリラクトン系ジオール、ポリカーボネート系ジオール、ポリエーテル系ジオール、ポリエーテルエステル系ジオール等からなる群から選ばれた数平均分子量が500〜5000の少なくとも1種のポリマージオールを使用し、これをソフトセグメント成分として、これとジイソシアネート化合物と低分子鎖伸長剤とを反応させて得られる、いわゆるセグメント化ポリウレタンが挙げられる。
【0016】ソフトセグメントを構成する上記ポリエステルジオールとしては、耐久性あるいは皮革様シートの風合いの点で、炭素数2以上10以下の脂肪族ジオール化合物とジカルボン酸から合成されたものが好ましく、炭素数2以上10以下の脂肪族ジオール化合物の好適例として、エチレングリコール、ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。またジカルボン酸の代表例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0017】ポリマージオールの数平均分子量が500未満の場合には、柔軟性に欠け、天然皮革様の風合いが得られないため好ましくない。またポリマージオールの数平均分子量が5000を越える場合には、得られるポリウレタンのウレタン基濃度が減少するため、柔軟性、耐久性、耐熱性及び耐加水分解性においてバランスのとれた基体シートが得られにくい。ジイソシアネート化合物の代表例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また低分子鎖伸長剤の例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、エチレンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミンなどの活性水素原子を2個有する低分子化合物が挙げられる。また必要に応じて、弾性重合体には、顔料、染料、凝固調節剤、各種安定剤などを添加しても良く、さらに弾性重合体として2種以上のポリマーを併用してもかまわない。弾性重合体は溶液として或いは分散液として用いることもできる。
【0018】絡合不織布に弾性重合体を含浸させる方法については特に限定されるものではないが、風合いのバランスの点から、絡合不織布を弾性重合体溶液中に浸漬して弾性重合体溶液を直接含浸させ、必要によりマングルで絞る方法や、弾性重合体溶液をコーターでコーティングしながら含浸させる方法などが好ましい。含浸させた弾性重合体を引き続き凝固させる。凝固させる方法としては、湿式凝固方法が天然皮革調の風合いや柔軟性が得られやすくもっとも好ましい。天然皮革様の柔軟な風合いの点から、シートを構成する繊維と弾性重合体との重量比率は90/10〜20/80の範囲が好ましく、さらに好ましくは80/20〜40/60の範囲である。繊維の比率が低くなりすぎると、皮革様シートがゴムライクな風合いとなり好ましくなく、繊維の比率が高くなりすぎるとペーパーライクな風合いとなるため、目標とする天然皮革様の風合いが得られない。
【0019】絡合不織布に弾性重合体を含浸させた後に、弾性重合体及び極細繊維発生型繊維の島成分に対しては非溶剤でかつ海成分に対しては溶剤または分解剤として働く液体で処理することにより極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成し、極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなるシートとする。もちろん、弾性重合体を含浸させるのに先立って、極細繊維発生型繊維を極細繊維束に変成する方法を用いてシートとすることもできる。
【0020】得られた極細繊維絡合不織布と弾性重合体からなるシートの意匠性を高めるために、種々の公知の表面処理を行っても良く、特に限定するものでない。たとえば起毛処理によりスエード調またはヌバック調とする方法、型押しとバフの組み合わせにより銀スリ調とする方法、樹脂層をコーティングして銀付調とする方法、ポリウレタン発泡層を付与したのちバフしてポリウレタンスエード調とする方法等がある。基体層(A)の厚さとしては0.2〜2.0mm、目付けとしては60〜600g/m2がシート作製時の工程通過性、製靴時の研削性の点で好ましい。
【0021】次に基体層(C)について説明する。基体層(C)は、0.05デシテックス以上の繊維からなる絡合不織布に弾性重合体が含浸された層である。特に基体層(C)は本発明の目的とする製靴した場合に実質的に靴底と接着され、本発明の目的とする、十分な剥離強力を有するところである。そのために(C)層を構成する繊維の繊度は0.05デシテックス以上であり、好ましくは0.05デシテックス〜4.0デシテックスである。(C)層を構成する繊維の繊度が0.05デシテックス未満の極細繊維絡合不織布になると、靴にした場合の製靴性、風合い、引裂強力等は向上するものの、製靴後の靴底との剥離強力が満足できるものとならない。また4.0デシテックスを越えると、靴にした場合に製靴後の靴底との剥離強力は強いものとなるが、折れシボ、製靴性、風合いが悪くなり、更に引裂強力は低いものとなる。次に基体層(C)の構成する繊維の太さ以外は、上記記載の高分子弾性体は実質的に基体層(A)と同じものが使用でき、また製造方法も同様な方法が採用される。基体層(C)の厚さとしては0.5〜3.0mm、目付けとしては100〜1000g/cm2が剥離強力及び製靴性の点で好ましく、更に基体層(A)と基体層(C)の厚さ比としては、1:1〜10が製靴性、セット性、剥離強力の点で好ましい。
【0022】本発明を構成する接着剤層(B)は、上記(A)層と(C)層を接着するための樹脂である。該接着剤層(B)に用いられる樹脂としては、公知の樹脂を用いれば良く何ら限定されない。たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。なかでもポリウレタン樹脂が風合いの面で最も望ましい。また塗布形態としては全面塗布と部分塗布があるが、風合い面、通気性、透湿性等から部分塗布、特に点状塗布が望ましい。次に接着方法は公知の方法を用いれば良く特に限定されない。たとえば該接着剤樹脂を溶剤に溶解し、又は分散液としてグラビヤ塗布する方法や、ホットメルト法、フレームラミ等がある。塗布する量としては、接着剤固形分で2〜20g/m2が透湿度、剥離強力、製靴時の研削工程の作業性の点で好ましい。なお本発明において、基体(A)と接着剤層(B)との色差ΔEA及び基体(C)と接着剤層(B)との色差ΔECが共に2.0以上であることが製靴する時に研削箇所の確認しやすい点で好ましい。色差を2.0以上とするためには、基体(A)及び基体(C)が中濃色であれば接着剤層(B)に白色系顔料、例えば酸化チタン、パール顔料等を添加して白色系の色相に、基体(A)及び基体(C))が白色または淡色であれば接着剤層(B)の樹脂の中に黒味系顔料、例えばカーボンブラック等を添加して黒色の色相にして色差をつければよい。
【0023】このような基体層(A)、接着剤層(B)および基体層(C)からなる積層体を靴の甲皮として用いる。その際に基体層(A)が靴の外側となるように、靴の甲皮を作製する。そして、この甲皮を用いて製靴する際に、甲皮と靴底材とを接着するに先立って、甲皮と靴底材との接着部となる甲皮の(A)層及び(B)層を実質的に研削して、(c)層と靴底材を直接接着剤にて固定する。(A)層及び(B)層を研削する方法としては、サンドペーパー、ワイヤーブラシ、砥石などが挙げられる。なお本発明において、(A)層及び(B)層は完全に研削除去される必要はなく、一部残っていてもよい。すなわち靴底材と接着するために塗布する接着剤の少なくとも一部が(C)層に到達して(C)層による剥離強度が得られるような状態であればよい。
【0024】また本発明において、基体層(C)の接着剥離強力が7.0kg/2.5cm以上であり且つ基体層(A)の接着剥離強力に対する基体層(C)の接着剥離強力の割合が1.5倍以上であることが好ましい。基体層(C)の接着剥離強度が7.0kg/2.5cm未満である場合には、目的とするスポーツ靴としての剥離強力が出ずスポーツ靴には不向きとなり、また基体層(A)の接着剥離強力に対する層(C)の接着剥離強力の割合が1.5倍未満の場合には、本発明の目的とする製靴後の剥離強力向上には効果の少ないものとなる。ここで言う接着剥離強力の測定方法に関しては後述する方法により測定される。すなわち剥離強力の対象とする基体層が靴底と直接接着されている場合には、後述する靴の剥離強力の測定方法により求められる値を意味し、剥離強力の対象とする基体層が靴底と直接に接着されていない場合には、後述する基体の剥離強力の測定方法により求められる値を意味する。
【0025】靴底材としては、通常加硫ゴム、EVAスポンジ、ウレタン、塩ビ、ナイロン等が用いられる。また靴底材と甲皮を接着するのに用いられる接着剤としてはポリウレタン系、クロロプレン系、天然ゴム等が用いられるが、なかでもポリウレタン系、クロロプレン系が作業性、接着性、耐久性、耐黄変性の点で好ましい。接着剤の塗布方法としては、手塗り、自動コーター等が挙げられ、塗布量としては、接着剤固形分で5〜20g/m2が好ましい。本発明の靴は、ソフトで高級感を有している素材を用いて、感性面を維持した状態で靴としての十分な剥離強力を有しているため、スポーツ靴、競技靴、登山靴、安全靴、一般靴等に適している。
【0026】
【実施例】次に、本発明を具体的な実施例で説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の部はことわりのない限り、重量に関するものである。また実施例中、剥離強力、繊維の繊度及び色差は次の方法にて測定した。
【0027】〈基体の剥離強力〉測定試料:巾2.5cm、長さ23cm接着板:巾3.0cm、長さ5.0cm、厚さ5.0mmのポリウレタン系ゴム板接着剤 :二液タイプのポリウレタン系接着剤測定試料の作製:測定資料及び接着板に接着剤を塗布して、予備乾燥後に重ね合わせしてプレスし、25℃で24時間キュアリングしてから測定。
測定装置:島津オートグラフ引張速度100mm/分、記録用紙速度50mm/分判定:最初の極大ピーク及び極小ピークを除外して、極大ピークの中から値の大きい5個(Ma1,Ma2,Ma3,Ma4,Ma5)及び極小ピークの中から値の小さい5個(Mi1, Mi2, Mi 3, Mi4, Mi5)を選び出し、それら10個の平均値を求める。
剥離強力(kg/2.5cm)=(Ma1+Ma2+ Ma3+Ma4+Ma5+Mi1+Mi2+Mi3+ Mi4+Mi5)/10〈靴の剥離強力〉靴のつま先部を巾2.5cmに靴底及び原反を切断し、靴底部をゴム板に接着剤で貼り付けて上記原反と同様に底と原反の剥離強力を測定する。
【0028】(極細繊維の繊度)繊維が極細繊維形成性繊維から形成されたもの(すなわち極細繊維束)である場合には、繊維束断面の顕微鏡写真をとり繊維束を構成する極細繊維の本数を数え、極細繊維束の太さ(デシテックス)をその本数で割り、繊度を求める。繊維が極細繊維束以外である場合には、基体層の断面写真から任意の繊維50本を選び出し、その断面積から個々の繊維の繊度を求め、それを加算し、最後に本数で割る。
〈色差〉クラボウCCM ハンター色差式を採用また、外観は、触感や光沢等を加味して発明者らが判断し、良好:◎、○、△、×:不良で表現した。
【0029】製造例1ナイロン−6とポリエチレンをチップの状態で50:50の重量比で混合して押出機により溶融紡糸を行い、ポリエチレンが海成分でナイロン−6が島成分となっている海島構造繊維を紡糸し、延伸、捲縮、カットして、太さが4デシテックス、長さが51mm、島成分の平均繊度が0.0002デシテックスの短繊維を作製した。この繊維を用いて、ウエーバーでクロスラップを作り、ニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た。この絡合不織布の目付は540g/m2であった。この繊維質シートにポリエチレンアジペート/ポリエチレングリコール共重合系ポリウレタン樹脂のジメチルホルムアミド(DMF)溶液を含浸し、湿式凝固させた後、繊維の海成分であるポリエチレンをトルエンで抽出し、目付450g/m2、厚み1.3mm、ポリウレタン樹脂と繊維の比率が40/60の基体(1)を得た。この基体の剥離強力を測定すると5.7kg/2.5cmであった。
【0030】製造例2溶融流動特性の異なる2種のポリマーを独立した溶融系で溶融し、接合―分割を繰り返して両者の混合系を形成して紡糸する15島の複合紡糸装置を用いて複合紡糸繊維を製造した。すなわち、海成分となる側にポリエチレン35部、他方の島成分となる側に6―ナイロン65部仕込み、平均繊度10デシテックスの原糸を得た。この原糸を延伸、捲縮、カットして、太さが4デシテックス、長さが51mm、海成分の太さ0.17デシテックスの短繊維を作製し、この短繊維からウエーバーでクロスラップを作り、ニードルパンチング機を用いて700パンチ/cm2のニードルパンチングを施して絡合不織布を得た。この繊維質シートにポリエチレンアジペート/ポリエチレングリコール共重合系ポリウレタン樹脂のDMF溶液を含浸し、湿式凝固させた後、繊維の海成分であるポリエチレンを80度のトルエンで抽出し、目付450g/m2、厚み1.3mm、ポリウレタン樹脂と繊維の比率が 20/80の基体(2)を得た。基材(2)の剥離強力を測定すると12.3kg/25mmであった。
【0031】製造例3繊度2デシテックスで繊維長さ51mmのナイロン−6の綿と繊度が2デシテックスで繊維長が51mmのポリエステルの綿を混合比率50:50に混綿し、カード機で解繊したあとクロスラップウエーバーでウエブを作製し、ウエブの両面から交互に600パンチ/cm2のニードルパンチを行い、この不織布にシリコン系油剤のエマルジョンを含浸処理して乾燥して、目付が325/m2の不織布を得た。この繊維絡合不織布にポリエステル/ポリエーテル系ポリウレタンの12%DMF溶液を含浸し、DMF10%の水溶液中で凝固し、乾燥すると厚さ1.3mmで重量が442g/m2の基体(3)を得た。この基体の剥離強力を測定すると13.0kg/2.5cmであった。
【0032】実施例1製造例1で作製した基体(1)を用いて厚み方向に完全2分割スライスを行い、スライスした面をバフ機を用いて厚み合わせを行い、スライス面とは反対側面を400番のサンドペーパーを用いて起毛を行い、厚さ0.5mm、重量183g/m2のシートを得た。このシートを次の条件で染色し、乾燥した後にブラッシング処理すると茶色のスエード調の基体(1A)を得た。
染色組成ラニール ブラウン BG 4% owfイルガランブラウン 2RL 1% owfレベランNK−D 2g/L染色時間 90℃ 60分【0033】一方、製造例2で得た基体(2)の片面をバフして0.8mmの基体(2A)を準備した。次にポリエステル系ポリウレタン8%のDMF溶液を140メッシュのグラビヤロールでのバフを処理していない面に塗布し、塗布直後に塗布面と基体(1A)の裏面を重ね合わせてプレスし、その後に100℃の乾燥機の中で乾燥してスエード調甲材Aを得た。この甲材の表面の剥離強力を測定すると5.9kg/2.5cmであった。この甲材Aを基体(1A)側を表側に縫製後、略靴形に整形し、ラストに装着装着し、該甲材Aにおける靴底側周縁部を、上記ラストの底部に定置した中底の底面外周部に吊り込んで貼着した。このラストに装着した甲材の靴底との接着部を研磨機を用いて甲材Aの基体(1A)層を研削して、接着剤層も同時に研削し、実質的に基体(2)を露出させ、該研磨部及び靴底整形物に接着剤としてポリウレタン系接着剤を塗布して靴底整形物を接着し、人工皮革靴を作製した。この靴のつま先部の剥離強力を測定すると12.4kg/cmであった。
【0034】実施例2基体層(A)用に実施例1で使用の茶色の基体(1A)を、基体層(C)用に、製造例3で作製した基体(3)を0.8mmに研削した基体(3B)を準備した。基体(3B)の未研削部に次の二液形ポリウレタン接着剤をコンマコーターを用いて茶色の基体(1A)を貼合わせて厚み1.3mm甲材Bを得た。この剥離強力は5.8kg/cmであった。この甲材を用いて実施例1と同様に製靴すると充実感のある靴が得られた。この靴のつま先部の剥離強力を測定すると15.3kg/2.5cm であった。
【0035】実施例3基体層(A)用に実施例1で使用の茶色の基体Aを、基体層(C)用に、製造例2で作製した基体(3)を0.8mmに研削し、サーキュラー染色機で酸性染料を用いて基体(1A)と同色の茶に染色し、基体(3D)を準備した。実施例2の接着剤に白の顔料を添加する以外は同じ方法を用いて、基体Aと基体(3D)を接着すると表裏面が同系色のヌバック調の甲材Cを得た。この甲材の表面の剥離強力を測定する5.6kg/2.5cmであった。甲材Cの基体層(A)及び基体層(C)と接着層(B)のとの色差を測定するために、接着剤を基体(3D)にコーティングした後に基材Aを貼合わせず乾燥して色差を測定すると共にΔE=3.5となった。この甲材を実施例2と同様の方法で製靴した。ただし研磨機を用いて靴底部の研磨は、接着層(B)の層が色差があり、色を確認しながら研削することにより、接着層を除去するまで研削して靴底と接着した。この靴のつま先部の剥離強力を測定すると11.8kg/2.5cmであった。
【0036】実施例4実施例1で使用基材Aの表面に次の処理条件で乾式造面を行い、柔軟剤でシリコン系柔軟を処理した結果、茶色のシープ調の銀付調人工皮革基体(1G)が得られた、この基体(1G)を基体層(A)とし、その他の基体層(C)及び接着層(B)の製造方法は、実施例3と同様に処理した結果、厚みが1.33mmの銀付調の人工皮革が得られた。
[造面方法]
離型紙 DE-123(大日本印刷(株)製)
TOP層組成 レザミンME−8115LP (大日精化製) 100部 MEK 25部 DMF 25部 セイカセブンDUT−4891(大日精化製)(茶) 20部 塗布量 110g/m2 乾燥 90℃[接着層]
レザミンUD8310 (大日精化製) 100部 DMF 50部 レザミンNE架橋剤 12部 レザミンUD103 8部 塗布量 110g/m2 乾燥 70℃【0037】この人工皮革の表面の剥離強力は6.5kg/2.5cmであった。この原反を用いて実施例3に準じて製靴を行った。靴底の接着部の研磨機による研削は、接基体(A)層と着剤層(B)を除去して、基体層(C)の一部まで行い、そして靴底と基体層(C)を接着して靴を作った。この靴のつま先部の接着強力は12.0kg/2.5cmであった。
【0038】比較例1製造例1で作製した基体(1)をバフ機を用いて400番のサンドペーパーで起毛して、厚さ1.28mmのシートを得た。このシートを実施例1と同じように染色仕上げすると厚さ1.3mmの茶色のスエード調の基体Eを得た。この基体を用いて剥離強力を測定すると5.5kg/2.5cmであった。この原反を製靴してつま先部の剥離強力は6.5kg/2.5cmしかなく、スポーツシューズの剥離強力としては使用不可のレベルのものであった。
【0039】比較例2製造例2で使用の基体(2)の片面をバフ機を用いて400番のサンドペーパーで起毛して、厚さ1.25mmのシートを得た。このシートを実施例1と同じように染色仕上げして、厚さ1.3mmのシートを得た。このシートの表面の毛羽感はラフな茶色のベロア調のものであった。このシートを用いて剥離強力を測定すると11.5kg/2.5cmであった。このシートを用いて実施例1と同様の靴を製靴したが、表面感がラフなベロア調の靴であった。この靴のつま先部の剥離強力を測定すると11.9kg/2.5cmであった。
【0040】比較例3製造例3で使用した基体(3)を用いて、バフ機で厚み1.2mmに研削し、その反対面に離型紙を用いて実施例4と同じ方法にて乾式造面を行い、機械で揉み加工を施して茶色の人工皮革シートを得た。この基材を用いて剥離強力を測定すると11.9kg/2.5cmであった。この原反を製靴してつま先部の剥離強力は12.6kg/2.5cmでスポーツシューズの剥離強力としては使用可能であるが、硬い靴であるため、到底高級感を有するものではなかった。
【0041】
【表1】

【0042】
【発明の効果】本発明により、ソフト性とファッション性に優れ、更に高級感を有しているが、剥離強力が低いことから、従来は靴の甲材として使用できなかった素材から、その優れた特性を損なうことなく靴素材として十分な剥離強力を有する人工皮革靴が得られる。




 

 


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