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発明の名称 乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−95496(P2001−95496A)
公開日 平成13年4月10日(2001.4.10)
出願番号 特願平11−276648
出願日 平成11年9月29日(1999.9.29)
代理人 【識別番号】390000561
【氏名又は名称】工藤 力
【テーマコード(参考)】
4B001
4B018
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B001 AC05 BC14 EC10 
4B018 LB08 LE03 MD01 MD09 MD22 MF12
4B064 AG01 CA21 CB06 CE10 DA10
4H045 AA10 AA20 CA40 EA01 FA16 GA45 HA31
発明者 早澤 宏紀 / 宮川 博 / 山田 明男 / 越智 浩
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 次のa)〜e)、a)分解率が10〜15%であることb)アミノ酸スコアが100であることc)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量)未満であることd)pH3.8において90℃、10分間加熱処理し、沈殿を生じないことe)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下であることの理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物。
【請求項2】 次のa)〜f)、a)分解率が10〜15%であることb)アミノ酸スコアが100であることc)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量)未満であることd)pH3.8において90℃、10分間加熱処理し、沈殿を生じないことe)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下であることf)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下及びpH7.0において、121℃で20分間加熱処理し、沈殿を生じないことの理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物。
【請求項3】 乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、加水分解液を吸着性樹脂で処理することを特徴とする乳清蛋白質加水分解物の製造方法。
【請求項4】 吸着性樹脂が、予めクエン酸によりpHを5.0以下に調整される請求項3に記載の乳清蛋白質加水分解物の製造方法。
【請求項5】 酸剤が、リン酸である請求項3又は請求項4に記載の乳清蛋白質加水分解物の製造方法。
【請求項6】 酸性プロテア−ゼが、ペプシンである請求項3又は請求項4に記載の乳清蛋白質加水分解物の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、遊離アミノ酸が少なく、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さいことから酸性域で広範な種々の食品及び飲料等に利用できる新規な乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法に関する。
【0002】詳しくは、本発明は、a)分解率が10〜15%であること、b)アミノ酸スコアが100であること、c)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量。以下、分解率を除き、特に断りのない限り同じ。)未満であること、d)pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じないこと、及びe)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下であることの理化学的性質[以下、a)〜e)をまとめて特定の理化学的性質と記載することがある。]を有する乳清蛋白質加水分解物、及び乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、加水分解液を吸着性樹脂で処理することを特徴とする乳清蛋白質加水分解物の製造方法に関する。
【0003】本明細書において、アミノ酸遊離率は、乳清蛋白質加水分解物、即ちペプチドと遊離アミノ酸との混合物(乾燥物)、に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合(百分率)を意味する。
【0004】
【従来の技術】従来、乳清蛋白質は、アミノ酸組成や生体内での利用性等において優れた栄養学的特性を有しており、食品、飲料等に広く利用されている。しかしながら、乳清蛋白質は熱安定性に劣っており、加熱殺菌が必要な液状食品等の用途には事実上使うことができない(月刊フードケミカル7月号、第42頁、1999年)。
【0005】従って、最近では熱安定性の改善、消化吸収性の向上、又は抗原性の低減等を目的として、乳清蛋白質を酵素で加水分解した乳清蛋白質加水分解物が利用されている。
【0006】しかしながら、乳清蛋白質を高度に加水分解した場合、発生する呈味性ペプチド又は遊離アミノ酸等により苦味等の不快な風味が生じるという問題があった。また、加水分解率が高い乳清蛋白質加水分解物を酸性飲料等に使用する場合には、緩衝能が大きいため、酸性に達するまでに大量の酸剤を添加しなければならず、最終製品の風味に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0007】一方、加水分解率を低く抑えた場合には、不快な風味の発生は抑制され、緩衝能も小さくなるが、熱安定性の改善が不十分であり、例えば加水分解後にプロテアーゼを加熱失活させる工程においてゲル化又は沈殿が発生するという問題があった。
【0008】更に、最近、スポーツ栄養学の進歩により各種アミノ酸、ペプチドの運動能力への効果が明らかにされつつあり、スポーツ選手用栄養補助食品等に配合するペプチド組成物にもアミノ酸スコアが100であることが待望されている。
【0009】従来、風味及び熱安定性が改善された乳清蛋白質加水分解物が幾つか開発されているが、これらを例示すれば次のとおりである。
【0010】(1)分子量5,000〜10,000ダルトンの画分が、全加水分解物の1%未満であり、抗原残存活性が10-5以下に低減され、アミノ酸遊離率が10〜15%であり、乳清蛋白質に含まれる全リジンの量に対する遊離リジンの量の割合が12〜20%であり、アンモニア含量が0.2%以下であり、10%溶液を1cmのセル、540nmで測定した透過率が98%以上であり、pH4〜7の5%溶液を120℃で10分間加熱して沈殿を生じない風味良好な乳清蛋白質加水分解物が開示されている(特開平8−112063号公報。以下、従来技術1と記載する。)。
【0011】(2)乳清蛋白質を含有する溶液をイオン交換樹脂処理又は脱塩処理し、蛋白質100g当りのカルシウム濃度を350mg以下に調整し、エンド型プロテアーゼを添加し、全窒素量に対する非蛋白態窒素の割合が50%以下の範囲で乳清蛋白質を加水分解することにより、加水分解率が低く、非蛋白態窒素量が適切である風味良好な乳清蛋白質加水分解物が開示されている(特開平6−153792号公報。以下、従来技術2と記載する。)。
【0012】しかしながら、前記従来技術1の乳清蛋白質を高度に加水分解した乳清蛋白質加水分解物は、抗原性が低く、熱安定性が良い点においては優れているが、前記のとおり緩衝能が大きいため、酸性に達するまでに大量の酸剤を添加しなければならず、最終製品の風味に大きな影響を及ぼすという欠点を有していた。
【0013】また、前記従来技術2の乳清蛋白質を軽度に加水分解した乳清蛋白質加水分解物は、カルシウム濃度を低減しているため、中性域の熱安定性は優れているが、酸性域の熱安定性がないため、酸性飲料等へ使用できないという欠点を有していた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術においては、抗原性が低く、熱安定性が良い点においては優れているが、緩衝能が大きい点に問題がある乳清蛋白質加水分解物、中性域の熱安定性は優れているが、酸性域の熱安定性に問題がある乳清蛋白質加水分解物が開示されているのみであり、風味が良好であり、熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい乳清蛋白質加水分解物については、従来知られていなかった。
【0015】更に、従来、分解率が10〜15%であり、アミノ酸スコアが100であり、アミノ酸遊離率が1%未満であり、pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じない、乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下である、いわゆる風味良好で酸性域の優れた熱安定性を有する緩衝能が小さい乳清蛋白質加水分解物は知られていなかった。
【0016】従って、優れた栄養価を有する乳清蛋白質を原料として用い、酸性域で広範な種々の食品及び飲料等に応用可能な、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、遊離アミノ酸が少なく、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい乳清蛋白質加水分解物が待望されていた。
【0017】本発明者らは、前記従来技術に鑑みて、従来製品の有する前記各種問題点を解決し得る新しい製品を開発することを目的として鋭意研究を行った結果、乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、加水分解液を吸着性樹脂で処理することにより得られる特定の理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物が、従来の乳清蛋白質加水分解物では成し得なかった消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、遊離アミノ酸が少なく、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さいという良好な特性を具備すること、及び該乳清蛋白質加水分解物を安定して製造できる方法であることを見出し、本発明を完成した。
【0018】本発明の目的は、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい乳清蛋白加水分解物を提供することである。
【0019】また、本発明の他の目的は、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい乳清蛋白加水分解物の製造方法を提供することである。
【0020】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明の第一の発明は、次のa)〜e)、a)分解率が10〜15%であることb)アミノ酸スコアが100であることc)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%未満であることd)pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じないことe)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下であることの理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物である。
【0021】前記課題を解決する本発明の第二の発明は、次のa)〜f)、a)分解率が10〜15%であることb)アミノ酸スコアが100であることc)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%未満であることd)pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じないことe)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下であることf)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下及びpH7.0において、121℃で20分間加熱処理し、沈殿を生じないことの理化学的性質を有する乳清蛋白質加水分解物である。
【0022】前記課題を解決する本発明の第三の発明は、乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、加水分解液を吸着性樹脂で処理することを特徴とする乳清蛋白質加水分解物の製造方法であり、吸着性樹脂が、予めクエン酸によりpHを5.0以下に調整されること(以下、態様1と記載する。)、酸剤が、リン酸であること(以下、態様2と記載する。)、及び酸性プロテア−ゼが、ペプシンであること(以下、態様3と記載する。)を望ましい態様としてもいる。
【0023】
【発明の実施の形態】次に、本発明について詳述するが、本発明の理解を容易にするために、最初に本発明の第三の発明、即ち、乳清蛋白質加水分解物の製造方法(以下、本発明の方法と略記する。)から説明する。
【0024】本発明の方法に使用する乳清蛋白質は、乳清蛋白質を主成分とするものであれば、如何なるものでも使用することができるが、市販の各種乳清蛋白質、例えば、乳清蛋白質濃縮物(WPC)、乳清蛋白質分離物(WPI)等が望ましい。また、牛乳、脱脂乳、全脂粉乳、脱脂粉乳から乳清蛋白質を常法により精製することもできる。
【0025】この原料乳清蛋白質を水又は温湯に分散し、溶解する。該溶解液の濃度は格別の制限はないが、通常、蛋白質換算で5〜15%前後の濃度範囲にするのが効率性及び操作性の点から望ましい。
【0026】前記乳清蛋白質を含有する溶液を70〜90℃で3〜10分間程度加熱殺菌することが、雑菌汚染による変敗防止の点から望ましい。
【0027】次いで、前記乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整する。この時、加水分解によってpHが上昇することを勘案し、pH4.0以下に調整することが、沈殿、凝集等の発生防止の点から望ましい。
【0028】尚、pHが5.0を超える場合、酸性プロテアーゼの酵素作用の発現がなく、乳清蛋白質の加水分解が行われないことから、pHを5.0以下に調整することが必要である。
【0029】本発明の方法に使用する酸剤は、食品又は医薬品に許容されるものであれば如何なる酸剤であってもよく、具体的には、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、乳酸、リン酸、塩酸等を例示することができる。
【0030】次いで、pHを5.0以下に調整した乳清蛋白質を含有する溶液に酸性プロテア−ゼを添加し、乳清蛋白質を加水分解する。
【0031】本発明の方法に使用する酸性プロテアーゼは、酸性域に至適pHを有するエンド型の蛋白質分解酵素であれば如何なる酸性プロテアーゼであってもよく、具体的には、アスペルギルス属、ムコール属、ペニシリウム属、サッカロミセス属等に属する微生物に由来する酸性プロテアーゼ、カテプシン、ペプシン等の動物に由来する酸性プロテアーゼ、ハス種子、キュウリ種子等の植物に由来する酸性プロテアーゼ、又はこれらの任意の割合の混合物を例示することができる。
【0032】この酸性プロテアーゼを4〜10℃の冷水に分散し、溶解して使用する。該溶解液の濃度は格別の制限はないが、通常3〜10%程度の酵素濃度として使用することが効率性及び操作性の点から望ましい。
【0033】酸性プロテアーゼの使用量は、基質濃度、酵素力価、反応温度、及び反応時間により異なるが、一般的には、乳清蛋白質1g当たり1000〜20000活性単位の割合で添加する。
【0034】酵素反応の温度は格別の制限はなく、酵素作用の発現する最適温度範囲を含む実用に供され得る範囲から選ばれ、通常30〜60℃の範囲から選ばれる。
【0035】本発明の加水分解反応時間は、反応温度、初発pH等の反応条件によって進行状態が異なり、酵素反応の反応継続時間を一定とすると製造バッチ毎に異なる理化学的性質を有する分解物が生じる可能性があるため、一該に決定できない。従って、酵素反応をモニターし、反応継続時間を決定する必要がある。
【0036】加水分解の程度は、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で、反応温度、反応時間、酵素添加量等の反応条件を設定する。
【0037】酵素反応の停止は、加水分解液中の酵素の失活により行われ、常法による加熱失活処理により実施することができる。加熱失活処理の加熱温度と保持時間は、使用した酵素の熱安定性を考慮し、十分に失活できる条件を適宜設定することができるが、例えば、80〜130℃の温度範囲で30分間〜2秒間の保持時間で行うことができる。
【0038】次いで、加水分解液を吸着性樹脂で処理し、樹脂を分離して、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、遊離アミノ酸が少なく、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さい乳清蛋白質加水分解物を得ることができる。
【0039】吸着性樹脂での処理は、吸着性樹脂を加水分解液へ投入して所定時間接触させるバッチ式、吸着性樹脂を充填したカラムへ加水分解液を通液するカラム式のいずれの方式でも行うことができる。
【0040】バッチ式では、加水分解液に、望ましくない味及び臭いの成分を吸着除去するために十分な量の吸着性樹脂を、その吸着能を考慮して添加し、吸着処理後の吸着性樹脂を濾過等により分離する。
【0041】また、カラム式では、吸着性樹脂を充填したカラムに、その吸着能を考慮して、加水分解液を、望ましくない味及び臭いの成分を吸着除去するために十分な流速で通液し、吸着処理後の加水分解液を回収することにより実施することができる。
【0042】具体的には、カラム式の場合、吸着性樹脂としてKS−35(北越炭素社製)を使用し、加水分解液(蛋白質濃度8%)を吸着性樹脂を充填したカラムにSV=3h-1の流速で通液することにより、望ましくない味及び臭いの成分を吸着除去することができる。
【0043】本発明の方法に使用する吸着性樹脂は、アンバーライトXAD−7(オルガノ社製)、KS−35(北越炭素社製)、セパビーズSP−207(三菱化学社製)、ダウエックスS−112(ダウケミカル社製)等の市販品を例示することができる。
【0044】尚、吸着性樹脂での処理を行う前に、沈殿又は凝集の発生を防止し、カラムの閉塞等を防止する目的で、予め吸着性樹脂及び加水分解液双方のpHを5.0以下の酸性域、又は中性域のいずれかに、酸剤又はアルカリ剤を使用して調整することが望ましい。
【0045】即ち、酸性飲料等にそのまま使用可能な酸性の本発明の乳清蛋白質加水分解物を製造するためには、酸剤により、吸着性樹脂のpHを5.0以下に調整し、加水分解液のpHと一致させることができる。
【0046】また、中性の本発明の乳清蛋白質加水分解物を製造するためには、酵素反応の停止の直前、又は直後に、アルカリ剤により、加水分解液のpHを7.0前後に調整し、吸着性樹脂のpHと一致させることができる。
【0047】前記pH調整に使用するアルカリ剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の如何なるものであってもよいが、酸剤は、本発明の態様1に示すとおり、クエン酸であることが、後記試験例から明らかなとおり、他の酸剤と比較して、最終製品である乳清蛋白質加水分解物の風味を一層良好なものとすることができることから望ましい。
【0048】従って、中性の本発明の乳清蛋白質加水分解物を製造する場合も、pH未調整の酸性の加水分解液を、予めクエン酸によりpHを5.0以下に調整された吸着性樹脂を使用して、吸着処理したのち、アルカリ剤により、吸着処理済加水分解液のpHを7.0前後に調整することが、風味の一層良好な中性の本発明の乳清蛋白質加水分解物を得られることから望ましい。
【0049】得られた本発明の乳清蛋白質加水分解物を含有する溶液は、そのまま使用することもでき、また、必要に応じて濃縮して濃縮液として使用することもでき、更に、この濃縮液を乾燥し、粉末として使用することもできる。
【0050】尚、本発明の態様2に示すとおり、酸剤が、リン酸であることが、後記試験例から明らかなとおり、pH7.0前後の中性域において、蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下、望ましくは、蛋白質1g当たりカルシウム6〜10mgの存在下、即ちカルシウムの大量存在下での乳清蛋白質加水分解物の熱安定性が改善される。
【0051】リン酸は市販のリン酸(例えば、日本化学工業社製等。)を使用することができ、リン酸の添加量は、最終製品である乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりのリン含有量が15mg以上となる量であることが、カルシウム存在下の熱安定性が改善効果に照らして望ましい。
【0052】また、本発明の態様3に示すとおり、酸性プロテア−ゼがペプシンであることが、後記試験例から明らかなとおり、pH7.0前後の中性域において、蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下、望ましくは、蛋白質1g当たりカルシウム6〜10mgの存在下、即ちカルシウムの大量存在下での乳清蛋白質加水分解物の熱安定性が改善される。
【0053】ペプシンは、ウシ由来又はブタ由来のペプシンのいずれであってもよく、簡便には、市販のペプシン・パウダー1:10000NF(ボルフガング・ミュールバウアー社製)、ペプシン1:10000NFXII(日本バイオコン社製)、ペプシン(シグマ社製)等を使用することができる。
【0054】次に、本発明の第一の発明及び第二の発明について記載する。前記のとおり本発明の第三の発明により得られた本発明の第一の発明の乳清蛋白質加水分解物は、後記する実施例からも明らかなとおり、次のa)〜e)の理化学的性質を有している。
a)分解率が10〜15%である。
b)アミノ酸スコアが100である。
c)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%未満である。
d)pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じない。
e)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下である。
【0055】前記a)〜e)に示したとおり、本発明の第一の発明の乳清蛋白質加水分解物は、乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、アミノ酸遊離率を1%未満とし、加熱失活後、疎水性樹脂と接触させ、望ましくない味及び臭いの成分を吸着除去することにより、風味が良好であり、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さいという良好な性質を有する乳清蛋白質加水分解物である。
【0056】本発明の第一の発明の乳清蛋白質加水分解物は、風味が良好であり、緩衝能が小さいにも拘らず酸性域の熱安定性に優れるという従来の乳清蛋白質加水分解物にはない特徴を有している。
【0057】また、前記本発明の態様2及び態様3の方法により得られた本発明の第二の発明の乳清蛋白質加水分解物は、後記する実施例からも明らかなとおり、次のa)〜f)の理化学的性質を有している。
a)分解率が10〜15%である。
b)アミノ酸スコアが100である。
c)乳清蛋白質加水分解物に含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%未満である。
d)pH3.8において90℃で10分間加熱処理し、沈殿を生じない。
e)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で280mg以下である。
f)乳清蛋白質加水分解物の蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下及びpH7.0において、121℃で20分間加熱処理し、沈殿を生じない。
【0058】前記a)〜f)に示したとおり、本発明の第二の発明の乳清蛋白質加水分解物は、乳清蛋白質を含有する溶液に酸剤としてリン酸を添加し、pHを5.0以下に調整し、酸性プロテア−ゼとしてペプシンを添加し、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解し、アミノ酸遊離率を1%未満とし、加熱失活後、疎水性樹脂と接触させ、望ましくない味及び臭いの成分を吸着除去することにより、風味が良好であり、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、酸性域の熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつカルシウム存在下の熱安定性に優れるという良好な性質を有する乳清蛋白質加水分解物である。
【0059】本発明の第二の発明の乳清蛋白質加水分解物は、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れるという良好な特性を具備すると共に、pH7.0前後の中性域において、蛋白質1g当たり少なくともカルシウム6mgの存在下、望ましくは、蛋白質1g当たりカルシウム6〜10mgの存在下、即ちカルシウムの大量存在下での熱安定性が優れるという従来の乳清蛋白質加水分解物にはない特徴を有しており、種々のカルシウム強化食品及び飲料等に利用できる。
【0060】次に、試験例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明においては、次の試験方法を採用した。
【0061】(1)蛋白質の分解率の算出方法ケルダール法(日本食品工業学会編、「食品分析法」、第102ページ、株式会社光琳、昭和59年)により試料の全窒素量を測定し、ホルモール滴定法(満田他編、「食品工学実験書」、上巻、第547ページ、養賢堂、1970年)により試料のホルモール態窒素量を測定し、これらの測定値から分解率を次式により算出した。
【0062】分解率(%)=(ホルモール態窒素量/全窒素量)×100【0063】(2)アミノ酸スコアの算定方法前記アミノ酸スコアの測定方法により測定された試料の各アミノ酸の質量、ケルダール法により試料の全窒素量、及び1973年FAO/WHOアミノ酸評点パタン(一般用)(科学技術庁資源調査会・資源調査所編、「改訂日本食品アミノ酸組成表」、第211〜217ペ−ジ、大蔵省印刷局発行、昭和61年)を使用して、各アミノ酸ごとに1973年のアミノ酸評点パタンに対する割合(%)を次式により算出し、その中の最低値をもってアミノ酸スコアとした。尚、最低値が100を上回る場合のアミノ酸スコアは通例により100とした。
【0064】1973年の評点パタンに対する割合(%)=試料中の各アミノ酸含量(mg/gN) /評点パタンの当該アミノ酸量(mg/gN)×100【0065】(3)アミノ酸組成の測定方法トリプトファン、システイン及びメチオニン以外のアミノ酸については、試料を6規定の塩酸で110℃、24時間加水分解し、トリプトファンについては、水酸化バリウムで110℃、22時間アルカリ分解し、システイン及びメチオニンについては、過ギ酸処理後、6規定の塩酸で110℃、18時間加水分解し、それぞれアミノ酸自動分析機(日立製作所製。835型)により分析し、アミノ酸の質量を測定した。
【0066】(4)アミノ酸遊離率の算定方法試料中の各アミノ酸組成を前記(2)の方法により測定し、これを合計して試料中の全アミノ酸の質量を算出する。次いで、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、残留する各遊離アミノ酸の質量を前記(2)の方法により測定し、これを合計して試料中の全遊離アミノ酸の質量を算出する。これらの値から、試料中の遊離アミノ酸含有率を次式により算出した。
アミノ酸遊離率(%)=(全遊離アミノ酸の質量/全アミノ酸の質量)×100【0067】(5)酸性域の熱安定性の試験方法試料を、クエン酸又は水酸化ナトリウムの添加によりpH3.8に調整し、固形分濃度10%で水に溶解し、250mlの透明ガラスビンに充填し、90℃で10分間加熱して水冷し、沈殿又は凝集の発生を肉眼観察し、沈殿又は凝集の発生の有無を酸性域の熱安定性の指標とした。
【0068】(6)緩衝能の試験方法予めクエン酸又は水酸化ナトリウムの添加によりpH7.0に調整した試料を、蛋白質濃度10%で水に溶解し、これにクエン酸を添加し、pH3.8に調整するために必要なクエン酸の量(mg)を測定し、蛋白質1g当たりのクエン酸の量(mg)を緩衝能の指標とした。
【0069】(7)各試料の風味試験方法各試料のpHを7.0に調整し、脱塩処理後、20歳から40歳までの男女各20人からなるパネルにより、呈味の有無及びその強さについて、次の評価方法により官能的に試験した。各試料を0点:呈味なし1点:呈味弱い2点:呈味やや強い3点:呈味強いの4段階に評価し、各試料の評価点の平均値を算出し、良:0.5点未満やや良:0.5点以上1.5未満やや不良:1.5点以上2.5未満不良:2.5点以上3.0未満の基準により判定した。
【0070】(8)カルシウム存在下の熱安定性の試験方法試料を、クエン酸又は水酸化ナトリウムの添加によりpH7.0に調整し、固形分濃度5%で水に溶解し、これに塩化カルシウムを添加して蛋白質1g当たりカルシウム6mgのカルシウム濃度に調整し、100mlの透明レトルトパウチに充填し、オートクレーブを使用して、121℃で20分間加熱して水冷し、沈殿又は凝集の発生を肉眼観察し、沈殿又は凝集の発生の有無をカルシウム存在下の熱安定性の指標とした。
【0071】試験例1この試験は、従来技術の乳清蛋白質加水分解物と比較して本発明の乳清蛋白質加水分解物が酸性域の熱安定性に優れ、及び緩衝能が小さく優れていることを示すために行った。
【0072】(1)試料の調製次に示す3種類の試料を調製した。
試料1:本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料2:従来技術1の実施例2の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料3:従来技術2の実施例1の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物【0073】(2)試験方法各試料の蛋白質の分解率、酸性域の熱安定性、及び緩衝能を、いずれも前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0074】(3)試験結果この試験の結果は、表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、従来技術の試料2に比較して本発明の試料1は、緩衝能が小さい点で優れていることが判明した。また、従来技術の試料3に比較して本発明の試料1は、酸性域の熱安定性が優れていることが判明した。
【0075】尚、本発明の試料については、乳清蛋白質の種類、酸剤の種類、酸性プロテア−ゼの種類、及び吸着性樹脂の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0076】
【表1】

【0077】試験例2この試験は、アミノ酸スコア、酸性域の熱安定性、及び風味を指標として、適正な蛋白質分解酵素の種類を調べるために行った。
【0078】(1)試料の調製蛋白質分解酵素の種類、酵素反応pH、及び吸着性樹脂のpHを変更したことを除き、実施例1と同一の方法により次に示す5種類の試料(試料番号4〜8)を調製した。
試料4:本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料5:蛋白質分解酵素として、酸性プロテアーゼであるPD酵素(盛進社製)を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料6:蛋白質分解酵素として、中性プロテアーゼであるトリプシン(ノボ・インダストリー社製)を使用し、酵素反応のpHをトリプシンの至適pHであるpH7.0に調整し、及び吸着性樹脂のpHを加水分解液のpHに一致させるため、予めpH7.0に調整したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料7:蛋白質分解酵素として、中性プロテアーゼであるプロテアーゼNアマノ(天野製薬社製)を使用し、酵素反応のpHをプロテアーゼNアマノの至適pHであるpH7.0に調整し、及び吸着性樹脂のpHを加水分解液のpHに一致させるため、予めpH7.0に調整したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料8:蛋白質分解酵素として、アルカリプロテアーゼであるビオプラーゼ(長瀬生化学工業社製)を使用し、酵素反応のpHをビオプラーゼの至適pHであるpH7.0に調整し、及び吸着性樹脂のpHを加水分解液のpHに一致させるため、予めpH7.0に調整したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物【0079】(2)試験方法各試料のアミノ酸スコア、酸性域の熱安定性、及び風味を、いずれも前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0080】(3)試験結果この試験の結果は、表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、酸性域の熱安定性に優れ、かつ風味が良好な乳清蛋白加水分解物を製造するためには、蛋白質分解酵素として、酸性プロテアーゼを使用することが必要であることが判明した。
【0081】尚、乳清蛋白質の種類、プロテア−ゼの種類、及び吸着性樹脂の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0082】
【表2】

【0083】試験例3この試験は、酸性域の熱安定性、緩衝能、及び風味を指標として、適正な蛋白質の分解率を調べるために行った。
【0084】(1)試料の調製蛋白質の分解率を段階的に変更したことを除き、実施例1と同一の方法により次に示す4種類の試料(試料番号9〜12)を調製した。
試料9:蛋白質の分解率を9%としたことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料10:蛋白質の分解率を10%としたことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料11:蛋白質の分解率を15%としたことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料12:蛋白質の分解率を16%としたことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物【0085】(2)試験方法各試料のアミノ酸遊離率、酸性域の熱安定性、緩衝能、及び風味を、いずれも前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0086】(3)試験結果この試験の結果は、表3に示すとおりである。表3から明らかなとおり、酸性域の熱安定性に優れ、緩衝能が小さく、かつ風味が良好な乳清蛋白加水分解物を製造するためには、蛋白質の分解率が10〜15%の範囲で乳清蛋白質を加水分解することが必要であることが判明した。
【0087】尚、乳清蛋白質の種類、酸剤の種類、酸性プロテア−ゼの種類、及び吸着性樹脂の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0088】
【表3】

【0089】試験例4この試験は、風味を指標として、吸着性樹脂処理の条件を調べるために行った。
【0090】(1)試料の調製吸着性樹脂処理の有無、吸着性樹脂のpH調整の有無、及びpH調整に使用する酸剤の種類を変更したことを除き、実施例1と同一の方法により次に示す7種類の試料(試料番号13〜19)を調製した。
試料13:吸着性樹脂処理を行わないことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料14:吸着性樹脂のpH調整を行わないことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料15:本発明の実施例1と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料16:吸着性樹脂のpH調整にグルコン酸を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料17:吸着性樹脂のpH調整に塩酸を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料18:吸着性樹脂のpH調整に乳酸を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料19:吸着性樹脂のpH調整にリン酸を使用したことを除き、本発明の実施例1と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物【0091】(2)試験方法各試料の風味を、前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0092】(3)試験結果この試験の結果は、表4に示すとおりである。表4から明らかなとおり、風味が良好な乳清蛋白加水分解物を製造するためには、加水分解液を吸着性樹脂で処理することが必要であることが判明した。
【0093】また、吸着性樹脂のpH調整に使用する酸剤として、乳清蛋白質加水分解物の風味を一層良好なものとすることができることから、クエン酸が望ましいことも判明した。
【0094】尚、乳清蛋白質の種類、酸性プロテア−ゼの種類、及び吸着性樹脂の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0095】
【表4】

【0096】試験例5この試験は、カルシウム存在下の熱安定性を指標として、乳清蛋白質加水分解物の製造方法の条件を調べるために行った。
【0097】(1)試料の調製乳清蛋白質を含有する溶液のpH調整に使用する酸剤の種類、及び酸性プロテア−ゼの種類を変更したことを除き、実施例4と同一の方法により次に示す8種類の試料(試料番号20〜27)を調製した。
試料20:本発明の実施例4と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料21:酸剤として、クエン酸を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料22:酸剤として、グルコン酸を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料23:酸剤として、塩酸を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料24:酸性プロテアーゼとして、PD酵素(盛進社製)を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した本発明の乳清蛋白質加水分解物試料25:酸剤として、クエン酸を使用し、酸性プロテアーゼとして、PD酵素(盛進社製)を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料26:酸剤として、グルコン酸を使用し、酸性プロテアーゼとして、PD酵素(盛進社製)を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物試料27:酸剤として、塩酸を使用し、酸性プロテアーゼとして、PD酵素(盛進社製)を使用したことを除き、本発明の実施例4と同一の方法により製造した乳清蛋白質加水分解物【0098】(2)試験方法各試料の酸性域の熱安定性、風味、及びカルシウム存在下の熱安定性を、前記の試験方法により各試料毎に5回測定して平均値を算出して試験した。
【0099】(3)試験結果この試験の結果は、表5に示すとおりである。表5から明らかなとおり、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れるという良好な特性を具備すると共に、カルシウム存在下の熱安定性にも優れた乳清蛋白加水分解物を製造するためには、酸剤が、リン酸であり、かつ酸性プロテア−ゼが、ペプシンであることが望ましいことが判明した。
【0100】尚、乳清蛋白質の種類及び吸着性樹脂の種類を適宜変更して試験したが、ほぼ同様の結果が得られた。
【0101】
【表5】

【0102】次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
【実施例】実施例1市販の乳清蛋白質分離物(蛋白質含有量90%。MDフーズ社製)10kgを精製水90kgに溶解し、50%グルコン酸(藤沢薬品工業社製)1.4kgを添加してpHを3.4に調整し、ペプシン1:10000NFXII(日本バイオコン社製)1億4400万活性単位(蛋白質1g当たり16000活性単位)を添加し、45℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が13.2%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させ、10℃に冷却した。
【0104】この加水分解液を、予めクエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)によりpHを3.8に調整した吸着性樹脂(北越炭素社製。KS−35)に対して、10℃、SV=3h-1の条件で吸着処理し、得られた乳清蛋白質加水分解物を含有する溶液を濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約8kgを得た。
【0105】得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で試験した結果、分解率13.2%、アミノ酸スコア100、アミノ酸遊離率0.3%、及び蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で225mgであった。また、酸性域の熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、ほとんど無味無臭で風味が良好であり、酸性であることから、酸性飲料等にそのまま使用可能な優れた物質であった。
【0106】実施例2市販の乳清蛋白質濃縮物(蛋白質含有量75%。MDフーズ社製)10kgを精製水90kgに溶解し、85%リン酸(日本化学工業社製)1kgを添加してpHを3.3に調整し、PD酵素(盛進社製)1500万活性単位(蛋白質1g当たり2000活性単位)を添加し、60℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が14.1%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させ、15℃に冷却した。
【0107】この加水分解液を、予めクエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)によりpHを3.7に調整した吸着性樹脂(オルガノ社製。XAD−7)に対して、15℃、SV=3h-1の条件で吸着処理し、得られた乳清蛋白質加水分解物を含有する溶液を濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約7kgを得た。
【0108】得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で試験した結果、分解率14.1%、アミノ酸スコア100、アミノ酸遊離率0.6%、及び蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で237mgであった。また、酸性域の熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、ほとんど無味無臭で風味が良好であり、酸性であることから、酸性飲料等にそのまま使用可能な優れた物質であった。
【0109】実施例3市販の乳清蛋白質分離物(蛋白質含有量90%。MDフーズ社製)1kgを精製水9kgに溶解し、50%グルコン酸(藤沢薬品工業社製)1357gを添加してpHを3.4に調整し、PD酵素(盛進社製)180万活性単位(蛋白質1g当たり2000活性単位)を添加し、60℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が14.1%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させ、15℃に冷却した。
【0110】この加水分解液を、予めDL−リンゴ酸(理研化学社製)によりpHを3.7に調整した吸着性樹脂(オルガノ社製。XAD−7)に対して、15℃、SV=3h-1の条件で吸着処理し、得られた乳清蛋白質加水分解物を含有する溶液を濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約0.8kgを得た。
【0111】得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で試験した結果、分解率14.1%、アミノ酸スコア100、アミノ酸遊離率0.6%、及び蛋白質1g当たりの緩衝能が、クエン酸換算で240mgであった。また、酸性域の熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、呈味が弱く風味が良好であり、酸性であることから、酸性飲料等にそのまま使用可能な優れた物質であった。
【0112】実施例4市販の乳清蛋白質濃縮物(蛋白質含有量75%。MDフーズ社製)1kgを精製水9kgに溶解し、85%リン酸(日本化学工業社製)105gを添加してpHを3.3に調整し、ペプシン1:10000NFXII(日本バイオコン社製)1200万活性単位(蛋白質1g当たり16000活性単位)を添加し、45℃で加水分解し、酵素反応を分解率によりモニターし、分解率が13.2%に達した時点で、130℃で2秒間加熱して酵素を失活させ、10℃に冷却した。
【0113】この加水分解液を、予めクエン酸(三栄源エフ・エフ・アイ社製)によりpHを3.8に調整した吸着性樹脂(北越炭素社製。KS−35)に対して、10℃、SV=3h-1の条件で吸着処理し、得られた溶液のpHを水酸化ナトリウム(三栄源エフ・エフ・アイ社製)により7.0に調整し、濃縮し、噴霧乾燥し、粉末状の乳清蛋白質加水分解物約0.7kgを得た。
【0114】得られた乳清蛋白質加水分解物は、前記試験方法で試験した結果、分解率13.2%、アミノ酸スコア100、及びアミノ酸遊離率0.3%であった。また、酸性域の熱安定性及びカルシウム存在下の熱安定性に優れており、沈殿又は凝集を発生せず、ほとんど無味無臭で風味が良好であり、カルシウム強化食品及び飲料等に使用可能な優れた物質であった。
【0115】
【発明の効果】以上詳記したとおり、本発明は、消化吸収性が未分解の蛋白質に比較して優れ、アミノ酸スコア100でアミノ酸バランスに優れ、遊離アミノ酸が少なく、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さいことから酸性域で広範な種々の食品及び飲料等に利用できる新規な乳清蛋白質加水分解物及びその製造方法に関するものであり、本発明により奏される効果は次のとおりである。
1)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、風味が良好であり、酸性域の熱安定性に優れ、かつ緩衝能が小さいことから酸性域で広範な種々の食品及び飲料等に使用できる。
2)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、呈味が弱く、又はほとんど無味無臭で風味が良好であることから、一般食品、栄養食品及び医療用の蛋白質素材として広範な用途に使用できる。
3)本発明の乳清蛋白質加水分解物は、アミノ酸スコアが100と優れていることから、スポーツ選手用栄養補助食品等の蛋白質素材として使用できる。
4)本発明の方法により、広範な用途を有する乳清蛋白質加水分解物を製造することができる。




 

 


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