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発明の名称 食品の物性改良剤及びその製造法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−78684(P2001−78684A)
公開日 平成13年3月27日(2001.3.27)
出願番号 特願平11−263836
出願日 平成11年9月17日(1999.9.17)
代理人 【識別番号】390000561
【氏名又は名称】工藤 力
【テーマコード(参考)】
4B018
4B032
4B034
4B035
4B046
4B047
【Fターム(参考)】
4B018 LE03 MD21 MD22 ME02 MF03 MF06 MF12 
4B032 DB01 DB05 DK23 DL02 DL03
4B034 LC06 LK20X LK29X LK34X LP01
4B035 LC03 LE01 LG15 LG44 LK04 LK05 LK13
4B046 LA05 LC01 LG20 LG43
4B047 LB09 LE01 LG19
発明者 早澤 宏紀 / 宮川 博 / 齋藤 仁志 / 越智 浩
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳糖を含有し、かつ純度80%(重量)以上のカゼインのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素との併用による加水分解物であって、次のa)〜e)の理化学的性質、a)蛋白質含量が85%(重量)以上であることb)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計1400±300mg、リン700±200mg並びに塩素300mg以下の無機質を含有することc)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が15mPa・s以上であることd)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量)未満であることe)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、1000ダルトン以下の画分が10%以下であることを有することを特徴とする食品の物性改良剤。
【請求項2】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項1に記載の食品の物性改良剤。
【請求項3】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項1又は請求項2のいずれかに記載の食品の物性改良剤。
【請求項4】 他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌破砕物である請求項1に記載の食品の物性改良剤。
【請求項5】 乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム属に属する微生物からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項4に記載の食品の物性改良剤。
【請求項6】 それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳糖を含有し、かつ純度が80%(重量)以上のカゼインを溶解し、カゼイン溶液にカゼイン1g当たり20〜200単位のエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素と併用して添加し、40〜60℃で2〜10時間処理し、処理液を80℃以上140℃以下の温度で殺菌し、減圧濃縮機により濃縮し、チャンバー温度を80℃以上95℃以下に調整した噴霧乾燥機により乾燥し、得られた粉を40℃以下に冷却することを特徴とする食品の物性改良剤の製造法。
【請求項7】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項6に記載の食品の物性改良剤の製造法。
【請求項8】 エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項6又は請求項7のいずれかに記載の食品の物性改良剤の製造法。
【請求項9】 他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌破砕物である請求項6に記載の食品の物性改良剤の製造法。
【請求項10】 乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム属に属する微生物からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である請求項9に記載の食品の物性改良剤の製造法。
【請求項11】 カゼイン溶液又は処理液が、強酸性陽イオン交換樹脂に通液され、製品100g当りのカルシウム含量を50mg以下、マグネシウム含量を10mg以下に低減された請求項6に記載の食品の物性改良剤の製造法。
【請求項12】 カゼイン溶液又は処理液が、風味及び臭気の低減のため吸着樹脂に通液される請求項6に記載の食品の物性改良剤の製造法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、水産練製品、麺、パン、クリーム、ドレッシング等の食品に増粘、結着、乳化、保水、増量、及び起泡性の保持等の目的で添加される風味良好な食品の物性改良剤、及びその製造方法に関する。
【0002】本明細書において、百分率の表示は特に断りの無いかぎり重量による値であり、蛋白質はケルダール法により測定した全窒素量に6.38を乗じて得た値である。
【0003】本明細書において、プロテアーゼの単位はPUN単位であり、ミルクカゼイン[例えば、メルク社製のハマーシュタイン(Hemmersten)等]に酵素を作用させ、30℃で1分間に1μgのチロシンに相当するアリルアミノ酸のフォリン試薬での呈色反応を示す酵素活性度が1単位である。
【0004】
【従来の技術】カゼイン及びカゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイン化合物(以下、これらをまとめてカゼイン類と記載することがあり、カゼイン化合物をカゼイネイトと記載する)は、生体利用性を示すアミノ酸スコアが高く、栄養学的に優れた蛋白質であることは広く知られている。更に、カゼイン類は、ゲル化性、乳化性、起泡性、結着性等の様々な機能を有することも公知であり、これらの機能を利用して、麺、パンの品質改良剤、ハム、ソーセージ等の畜肉製品及び水産練製品等の結着剤及び増量剤、ポーションクリーム、ドレッシング、シチュー、カレールウ等の乳化剤、菓子及びケーキ等の起泡剤等として利用されている。
【0005】しかしながら、これらのカゼイン類の機能は、食品のテクスチュアーを変化させるためには必ずしも十分でない場合があり、更に、特有の風味が官能上の障害となって、機能を発揮させるために十分な量を添加できない場合もある。また、水に不溶であるカゼインに対してカゼイネイトは可溶性であり、添加が容易であるので、広範な用途を有するが、カゼイネイトは食品添加物であるために、製品によっては添加が制限される場合がある。
【0006】従って、カゼイン類の優れた栄養価及び物性改良機能を生かし、食品への応用を拡大した物性改良剤を調製するためには、これらカゼイン類の複数の物性改良特性を可能な限り低下させることなく、一部の特性を増強し、風味を改良するとともに、物性改良剤としてカゼイネイトとは明確に区別できる理化学的性状を付与することが必要である。
【0007】カゼイン及び乳清蛋白質を分解することにより得られる食品の物性改良剤及び物性改良方法については、従来より種々の方法が開示されている。例えば、全カゼインに蛋白質分解酵素を作用させて得られる反応生成物から、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、又は電気泳動の一種以上を用いて分離して得られる5乃至50個のアミノ酸から構成されるポリペプチドから成る乳化剤(特公平2−968号公報)、乳蛋白質に蛋白分解酵素を作用させ、その分解度を5〜20%の範囲に部分的に加水分解してなることを特徴とする乳蛋白性界面活性剤(特開平1−160458号公報)、酵素により加水分解された乳清蛋白質を主成分として含む加水分解物を含有することを特徴とする水中油型乳化脂組成物(特開平2−257838号公報)、蛋白質に特定のプロテアーゼを、前記特定のプロテアーゼの至適pH以外であって、苦味又はえぐ味の成分である低分子量画分の生成が少なくなるような選択的加水分解が起こる特定のpHで作用させて蛋白質を選択的に加水分解することを特徴とする蛋白分解物の製造方法(特開平6−197788号公報)、油相原料と水相原料とを水中油型に乳化して水中油型乳化液を製造するに際して、乳化剤として蛋白分解酵素処理したカゼインを用いることを特徴とする水中油型乳化液の製造方法(特開昭57−125643号公報)等が開示されている。
【0008】しかしながら、これらの従来技術においては、カゼイン及び乳清蛋白質の乳化性、起泡性等、単一の機能を改良した乳蛋白質の酵素分解物を提供することを目的としており、乳化性、増粘性、保水性等の複数の物性改良効果を併有する物性改良剤には言及しておらず、また、ミネラル組成の相違による物性改良効果の相違、噴霧乾燥条件、得られた粉末の冷却条件が風味に及ぼす影響、及び吸着処理による風味改良効果等については一切言及されていない。
【0009】尚、本発明者らはこれらの先行技術に鑑み、先に食品の物性改良剤及びその製造方法(特開平7―303455号公報)を発明して特許出願している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】前記従来技術において、乳蛋白質を酵素処理することにより得られる物性改良剤は、単一の機能を増強することを目的としており、例えばカゼイン類を原料とした場合には、カゼイン類の乳化性を向上させることは可能であっても、カゼイン類に特徴的な増粘、結着、保水性等の物性改良効果は逆に低下する傾向にあった。
【0011】通常の食品にカゼイン類を使用する場合には、複数の物性改良効果を期待して配合、添加することが多いため、単一の機能を増強させた従来のカゼイン類を原料とした物性改良剤は、単純にカゼイン類の代替品として置換することが難しいという問題点があった。また前記のとおり、水に不溶であるカゼインに対して、カゼイネイトは可溶性であり、食品に添加する際の応用範囲が広いが、カゼイネイトは食品添加物扱いであるために、製品によっては添加が制限される場合もあり、また、特有の臭いを有するために十分な量を添加できない場合もあった。
【0012】従って、カゼイン及びカゼイネイトが有する複数の物性改善機能を有し、理化学的性質によりカゼイネイトとは明確に区別可能であり、広範囲の食品に応用可能であり、風味の良好な可溶性物性改良剤が待望されていた。
【0013】本発明者らは、前記の特許出願後、更にカゼイン類が有する複数の物性改良機能を有し、かつ特に乳化性に優れた食品の物性改良剤について鋭意検討を行なった結果、それぞれ2%以下の脂肪及び乳糖を含有し、かつ純度が80%以上のカゼインを、カゼイン1g当たり20〜200単位のエンド型プロテアーゼ活性を有する植物由来、動物由来、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上のプロテアーゼ又は該プロテアーゼと他の酵素との混合物により処理することにより、カゼインを水酸化ナトリウム等のpH調整塩で可溶化したカゼイン溶液、又はカゼイネイト溶液と比較して、粘度は同等であるが乳化性が増強された物性改良剤が得られること、該物性改良剤の風味が良好であり、かつ高速液体クロマトグラフィーによる分析結果から理化学的性質をカゼイネイトとは明確に区別できること、並びに該物性改良剤を安定的に製造する方法を見出し、本発明を完成した。
【0014】本発明は、本発明者らが既に特許権出願した前記発明に比べて、乳化性の面で更に高い物性改良機能を有していること、高速液体クロマトグラフィーによる分析結果からカゼインナトリウムとの理化学的相異をより明確にできること、ミネラル組成が物性改良効果に及ぼす影響を明確にしたこと、使用する酵素が乳酸菌由来の特殊なものではないために該物性改良剤の産業上の利用範囲が広いこと、により進歩性及び新規性を有している。
【0015】本発明の目的は、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、水産練製品、麺、パン、ポーションクリーム等の種々の食品に、増粘、結着、乳化、保水、増量、及び起泡性の保持等の目的で添加され、風味良好な食品の物性改良剤を提供することである。
【0016】本発明の他の目的は、前記特性を有する物性改良剤の製造方法を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記課題を解決する本発明の第一の発明は、それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳糖を含有し、かつ純度80%(重量)以上のカゼインのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素との併用による加水分解物であって、次のa)〜e)の理化学的性質、a)蛋白質含量が85%(重量)以上であることb)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計1400±300mg、リン700±200mg並びに塩素300mg以下の無機質を含有することc)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が15mPa・s以上であることd)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量)未満であることe)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、1000ダルトン以下の画分が10%以下であることを有することを特徴とする食品の物性改良剤である。
【0018】また、エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であること、エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であること、他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌破砕物であること、並びに乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム属に属する微生物からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であることを望ましい態様としてもいる。
【0019】前記課題を解決する本発明の第二の発明は、それぞれ2%(重量)以下の脂肪及び乳糖を含有し、かつ純度が80%(重量)以上のカゼインを溶解し、カゼイン溶液にカゼイン1g当たり20〜200単位のエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素と併用して添加し、40〜60℃で2〜10時間処理し、処理液を80℃以上140℃以下の温度で殺菌し、減圧濃縮機により濃縮し、チャンバー温度を80℃以上95℃以下に調整した噴霧乾燥機により乾燥し、得られた粉を40℃以下に冷却することを特徴とする食品の物性改良剤の製造法である。
【0020】また、本発明の第二の発明は、エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であること、エンド型プロテアーゼ活性を有する酵素が、パパイン、ブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、及びズブチリシンからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であること、他の酵素が、乳酸菌そのもの又は乳酸菌破砕物であること、乳酸菌が、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、及びビフィドバクテリウム属に属する微生物からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物であること、カゼイン溶液又は処理液が、強酸性陽イオン交換樹脂に通液され、製品100g当りのカルシウム含量を50mg以下、マグネシウム含量を10mg以下に低減されること、並びにカゼイン溶液又は処理液が、風味及び臭気の低減のために吸着樹脂に通液されることを望ましい態様としてもいる。
【0021】
【発明の実施の形態】次に本発明について詳細に説明するが、本発明の理解を容易にするために、最初に本発明の第二の発明について説明する。
【0022】本発明の原料として使用するカゼインは、脂肪及び乳糖をそれぞれ2%以下の濃度で含有し、純度が80%以上であるものであれば、市販品、常法により牛乳から分離された乳酸カゼイン、塩酸カゼイン等の酸カゼイン、又はこれらの任意の混合物を使用することができる。また、添加物表示が問題とならない場合には、カゼインナトリウム、カゼインカリウム等のカゼイネイトを使用することもできるが、カゼインカルシウム、カゼインマグネシウムは、含有されているカルシウム及びマグネシウムを低減するために余分な工程が必要となるので望ましくない。また、カゼイン類の純度が低く、夾雑物を多く含有している原料は、望まれる物性改良効果が得られない場合、殺菌工程及び乾燥工程等において風味の劣化が認められる場合等があるため、脂肪及び乳糖をそれぞれ2%以下の濃度で含有し、純度が80%以上の原料が望ましい。
【0023】原料カゼインとして酸カゼインを使用する場合には、酸カゼインを5%以上15%以下、望ましくは10%以上13%以下、の濃度で水又は温湯に分散し、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム等の溶解塩を単独又は混合して添加し、溶液のpHを7.0±1.0、望ましくは7.0±0.5、に調整し、70℃から90℃に加温して溶解する。溶解時の濃度が5%未満の場合には製造の効率が悪く、また、15%を超える場合には粘度が上昇するために製造が困難となるので、それぞれ望ましくない。
【0024】また、溶液のpHが6.0未満では酸カゼインを完全に溶解することが困難であり、pHが8.0を超える場合には処理後の加熱時に風味が劣化することがあるので、それぞれ望ましくない。
【0025】原料としてカゼイネイトを用いる場合には、そのまま5%以上15%以下、望ましくは10%以上13%以下、の濃度で水又は温湯に溶解し、溶液のpHが7.0±1.0、望ましくは7.0±0.5、となっているのを確認し、殺菌を兼ねて70℃から90℃に加温する。pHが所定の範囲外の場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム等の溶解塩を単独又は混合して添加し、pHを所定範囲に調整する。
【0026】使用するエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素としては、植物由来のプロテアーゼ、動物由来のプロテアーゼ、及び微生物由来のプロテアーゼからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物である。具体的にはエンド型プロテアーゼ活性と比較してエキソ型プロテアーゼ活性が低いか、又は殆ど有していないプロテアーゼが望ましく、植物由来のプロテアーゼとしてはパパイン、ブロメライン等、動物由来のプロテアーゼとしてはパンクレアチン、トリプシン等、微生物由来のプロテアーゼとしてはバシラス属に属する微生物より抽出されるズブチリシン等が望ましく、特にパパインが望ましい。
【0027】また、風味の更なる改良を目的として、これらのプロテアーゼと他の酵素を併用することもできる。他の酵素としては、乳酸菌そのもの、乳酸菌破砕物又は乳酸菌由来の酵素を例示することができる。乳酸菌としては、ラクトコッカス属に属する微生物、ラクトバシラス属に属する微生物、ストレプトコッカス属に属する微生物、又はビフィドバクテリウム属に属する微生物を例示することができる。簡便には市販されている製品を使用することも可能であり、具体的にはSF−10(商標。森永乳業社製。ストレプトコッカス・フェカリスの乾燥菌体)、Bifilon―10(商標。森永乳業社製。ビフィドバクテリウム・ロンガムの乾燥菌体)、FC−H(商標。森永乳業製。ラクトバシラス・ヘルベチカスの菌体破砕物の濃縮凍結液)等を例示することができる。
【0028】カゼイン1g当たりのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素の添加量は、20〜200単位が望ましく、乳酸菌又は乳酸菌破砕物を併用する場合の固形分としての添加量は1%以下が望ましい。乳酸菌又は乳酸菌破砕物の添加量が1%を超える場合、菌体培養液の特有の風味が逆に強調されること、乳酸菌に由来する酵素により物性改良剤の特性、特に粘度が低減されること、熱安定性が低下することが認められるので、望ましくない。これらのエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素及び他の酵素の添加量については、処理時間及び処理温度を考慮して、所定の範囲内で適宜調整することができる。
【0029】前記カゼイン溶液に、所定量のエンド型プロテアーゼ活性を有する酵素単独又は他の酵素と併用して添加し、40〜60℃で2〜10時間、望ましくは4時間から8時間保持し、カゼインを加水分解する。加水分解後に、80℃以上140℃以下の温度で殺菌処理し、減圧濃縮機で濃縮し、チャンバー温度を80℃以上95℃以下に調整した噴霧乾燥機で乾燥し、得られた粉末を40℃以下に冷却して粉末状の物性改良剤を製造する。
【0030】殺菌温度が低い場合には酵素の失活が不十分となり、製品に本発明の物性改良剤を添加した時に未失活の酵素が製品の風味及び物性を変化させる場合がある。また、殺菌温度を140℃を超える温度とすることに工程上のメリットは無く、加熱臭が生じる原因にもなるために望ましくない。
【0031】噴霧乾燥機のチャンバー温度についても、乾燥効率と加熱臭の着臭防止の両面から80℃以上95℃以下が望ましい。吹上粉が高温で保持された場合、風味の劣化を招くため、直ちに40℃以下に冷却することが望ましい。
【0032】また、原料カゼインのカルシウム含量が高い場合、又は溶解水に含有されるカルシウム濃度が高い場合には、得られる物性改良剤のカルシウム含量が高くなるために熱安定性の低下、クリームに使用した時のフェザリングの原因となるため、これを防止する目的で、カゼイン溶液又は処理液をナトリウム型又はカリウム型の強酸性陽イオン交換樹脂に通液し、カルシウム含量を低減することが必要となる場合もある。
【0033】ただし、カルシウム含量の低いカゼインを原料として使用し、カルシウム濃度の低い水、即ち硬度の低い水、又は樹脂処理、膜処理等により硬度を低減した水を使用することにより、物性改良剤100g当たりのカルシウム含量を50mg以下に調整し得る場合には、カゼイン溶液又は処理液を強酸性陽イオン交換樹脂に通液する必要はない。
【0034】以上のとおり処理された物性改良剤の100g当たりのミネラル組成は、カルシウム含量50mg以下、マグネシウム含量10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計1400±300mg、リン700±200mg、塩素300mg以下である。また、風味と臭気を低減するために、カゼイン溶液又は処理液を吸着樹脂に通液することもできる。
【0035】次に本発明の第一の発明について説明する。前記の方法により製造された本発明の第一の発明である食品の物性改良剤は、次のa)〜e)の理化学的性質、a)蛋白質含量が85%(重量)以上であることb)製品100g当たりカルシウム50mg以下、マグネシウム10mg以下、ナトリウム及びカリウムの合計1400±300mg、リン700±200mg並びに塩素300mg以下の無機質を含有することc)10%(重量)濃度溶液の25℃における粘度が15mPa・s以上であることd)蛋白質100g当たりに含まれる全アミノ酸の質量合計に占める遊離アミノ酸の質量合計の割合が1%(重量)未満であることe)10000ダルトン超の画分が75%以上であり、1000ダルトン以下の画分が10%以下であることを有している。
【0036】本発明の食品の物性改良剤は、後記試験例及び実施例から明らかなとおり、高速液体クロマトグラフィーによる分析結果から理化学的性状をカゼイン類とは明確に区別が可能であり、粘度がカゼイン類と同等であるにもかかわらず、優れた乳化性を有し、風味も良好である。
【0037】本発明の食品の物性改良剤は、ハム、ソーセージ等の畜肉製品、蒲鉾、魚肉ソーセージ、はんぺん、すり身、竹輪等の水産練製品、うどん、そば、ラーメン、マカロニ、スパゲッティ等の麺製品、パン、ケーキ、マシュマロ等の製パン製菓製品、ポーションクリーム、アイスクリーム、スプレッド、スープ等の油脂含有製品等に使用することが可能であり、常法により加工することができる。
【0038】本発明の食品の物性改良剤を使用することにより、前記の製品に、増粘、結着、乳化、保水、増量、及び起泡性の保持等優れた効果を付与することが可能である。
【0039】次に試験例及び参考例を示して本発明を詳細に説明する。
【0040】試験例1この試験は、カゼインに添加するエンド型プロテアーゼ活性を有するプロテアーゼの添加量と、加熱失活後の熱安定性、粘度、分子量分布、アミノ酸遊離率、乳化性との関係を調べるために行われた。
【0041】(1)試料の調製市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)を13%の濃度で精製水に分散させ、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解し、のち50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.005〜0.5%の範囲で添加し、50℃で5時間保持し、次いで酵素の失活と溶液の殺菌を兼ねて85℃で10分間加熱し、25℃に冷却し、試料液を調製した。また、分子量分布とアミノ酸組成の測定に供するために、試料液の一部を凍結乾燥した。
【0042】(2)試験方法1)粘度の測定方法試料100mlを100ml容量のビーカーに分注し、振動式粘度形(VibroViscometer。エー・アンド・ディー社製)により25℃における粘度を測定した。
【0043】2)分子量分布高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた常法により、分子量分布を測定した(宇井信生ら編、「タンパク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人、1984年)。ポリハイドロキシエチル・アスパルタミド・カラム[Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column、ポリ・エル・シー(Poly LC )社製。直径4.6mm、長さ200mm]を用いて、20mM塩化ナトリウム含有50mMギ酸溶液により、溶出速度0.5ml/分で溶出し、UV検出器(島津製作所製)により検出し、GPC分析システム(島津製作所製)でデータの解析を行った。
【0044】3)アミノ酸遊離率常法により試料を酸又はアルカリ分解した後、アミノ酸自動分析機(日立製作所社製。835型)を用いて、試料中の全アミノ酸組成を測定し、これを合計して全アミノ酸の質量を算出した。また、遊離アミノ酸については、スルホサリチル酸で試料を除蛋白し、同様にアミノ酸自動分析機を用いて組成を測定し、同様に合計して遊離アミノ酸の質量を算出した。全アミノ酸の質量合計及び遊離アミノ酸の質量合計から、全アミノ酸に対する遊離のアミノ酸の質量比を算出し、アミノ酸遊離率とした。
【0045】4)乳化性精製コーン油10部、精製水90部に対して、試料濃度0.5%の割合で添加し、ホモジナイザー[エー・ピー・ブイ社製。ゴーリン(GAULIN)]を用いて20MPa(200kgf/cm2)の条件で5分間循環して乳化し、得られた乳化液を100ml容量のビーカーに分注して常温で1日保持し、液上層部に分離した脂肪層を目視により観察し、次の基準により乳化性を試験した。
【0046】
△:脂肪分離あり○:わずかに脂肪分離あり◎:脂肪分離なし【0047】5)沈澱加熱失活後の試料を目視により観察し、次の基準により評価して試験した。
【0048】
−:沈澱なし±:わずかに沈澱あり+:沈澱あり【0049】(3)試験結果この試験結果は表1に示すとおりである。表1から明らかなとおり、加熱しても沈殿を生じない程度に熱安定性が良好であり、カゼインに特有の粘度特性を有しており、乳化性を向上させ得るパパインの添加量は、カゼイン当たり0.005〜0.05%であり、この添加量は力価に基づいて換算すると、カゼイン1g当たり20〜200単位であることが判明した。
【0050】また、この方法により調製された物性改良剤は、10000ダルトン超の分子量画分が75%以上、1000ダルトン以下の分子量画分が10%以下の分子量分布を有しており、アミノ酸遊離率は1%以下であることも判明した。
【0051】尚、カゼインの代わりにカゼイネイト[ニュージーランドデイリーボード製。アラネート(ALANAYE) 。純度90%]、パパインの代わりにブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、ズブチリシンを用いた場合にも、力価に換算するとほぼ同様の結果が得られた。
【0052】
【表1】

【0053】試験例2この試験は、物性改良剤中のミネラル含量が、熱安定性と物性改良効果に及ぼす影響を調べるために行われた。
【0054】(1)試料の調製試験例1と同一の方法によりカゼインを溶解し、溶液の温度を50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン1g当たり80単位添加し、50℃で5時間保持し、のち酵素の失活と溶液の殺菌を兼ねて85℃で10分間加熱し、25℃に冷却した。次いで冷却液を分注し、各々の冷却液にカゼイン処理物の固形分100g当たり、塩化カルシウム(CaCl2)を0〜500mgの範囲で添加し、凍結乾燥して試料とした。
【0055】(2)試験方法1)熱安定性試料を10%の濃度で溶解し、121℃で15分の条件でオートクレーブで加圧加熱し、生成した沈澱を目視により観察し、次の基準により評価して試験した。
【0056】
−:沈澱なし±:わずかに沈澱あり【0057】2)フェザリング試験脱脂粉乳50g、砂糖30g、リン酸塩10g、ショ糖脂肪酸エステル5g及び安定剤5gを精製水700gに混合溶解して80℃に加温した水相部溶液と、予め植物脂肪250g、レシチン1g、グリセリン脂肪酸エステル2gを混合して80℃に加温した油相部溶液とを混合した後、試料50gを添加し、ホモジナイザーを用いて均質圧力10MPa(100kgf/cm2)の条件で乳化した後に冷却してコーヒーホワイトナーを調製した。
【0058】得られたコーヒーホワイトナーをコーヒーに一定割合で添加し、フェザリングの有無を目視により観察し、次の基準により評価して試験した。
【0059】
△:フェザリングあり○:わずかにフェザリングあり◎:フェザリングなし【0060】3)カルシウム含量常法のICP(inductively coupled plasma)発光分光分析法により定量した。
【0061】(3)試験結果この試験結果は表2に示すとおりである。表2から明らかなとおり、熱安定性が良好であり、フェザリングをほとんど生じないカルシウム含量は、物性改良剤100g当たり50mg以下であることが判明した。
【0062】尚、カゼインの代わりにカゼイネイト[ニュージーランドデイリーボード製。アラネート(ALANATE) 。純度90%]、パパインの代わりにブロメライン、パンクレアチン、トリプシン、ズブチリシンを用いた場合にも、ほぼ同様の結果が得られた。
【0063】
【表2】

【0064】試験例3この試験は、吸着処理工程、殺菌濃縮工程、乾燥工程の相異が風味に及ぼす影響を調べるために行われた。
【0065】(1)試料の調製試験例2と同一の方法によりカゼインのパパイン処理物を調製し、この溶液を分割し、そのまま凍結乾燥した群(第1群)、プレート式殺菌機(日阪製作所製)により120℃で15秒の殺菌処理をし、減圧濃縮機(みずほ工業製)で濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥した群(第2群)、殺菌前に吸着樹脂(北越炭素工業製。KS樹脂)により、SV(空間速度)=2h-1、樹脂量の10倍容量通液の条件で処理し、第2群と同様に濃縮、乾燥した群(第3群)、の3種の試料を調製した。
【0066】(2)試験方法得られた3種類の試料を10%の濃度で水に溶解し、男女各5人の熟練したパネラーによるパネルテストを実施し、評点法による官能検査を行なった。官能検査は次の5段階の評価基準により数値化し、評点は10人のパネラーの平均値を算出して試験した。
【0067】
2:素材臭が気にならない1:素材臭が殆ど気にならない0:素材臭が少し気になる−1:素材臭が気になる−2:素材臭が非常に気になる【0068】(3)試験結果試験結果は表3に示すとおりである。表3から明らかなとおり、物性改良剤の風味を向上させるためには、加熱殺菌、減圧濃縮及び噴霧乾燥工程が必要であること、及び吸着処理により風味を更に向上させ得ることが判明した。この理由は、原料カゼインに由来するか、酵素処理により産生されるわずかな揮発性成分が、加熱殺菌、減圧濃縮及び噴霧乾燥工程により低減すること、又はこの揮発性成分と微量の低分子量画分(例えば脂肪酸、アミン類等)が吸着処理により更に低減されること、に起因するものと推定される。
【0069】
【表3】

【0070】試験例4この試験は、乳化液の脂肪球の大きさを調べるために行われた。
【0071】(1)試料の調製後記参考例1と同一の方法により調製した試料(試料1)、及びカゼインナトリウム(ニュージーランドデイリーボード製)を使用したことを除き参考例1と同一の方法により調製した試料(試料2)の2種の試料を調製した。
【0072】(2)試験方法得られた各試料の脂肪球の平均直径をレーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製。LA−500)により測定した。
【0073】(3)試験結果この試験の結果、脂肪球の平均直径は、試料1では0.53μm、試料2では0.79μmであり、本発明の物性改良剤を使用した試料の脂肪球の平均直径が小さく、乳化性が良好であることが判明した。
【0074】次に実施例を記載して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0075】
【実施例】実施例1市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)2kgを18kgの精製水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解した。のち溶液を50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.01%(カゼイン1gに対して40単位)添加し、50℃で5時間保持し、のち酵素の失活と溶液の殺菌を兼ねて85℃で6分間、120℃で15秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)により噴霧乾燥し、物性改良剤約1.5kgを得た。
【0076】得られた物性改良剤は、蛋白質含量91%、製品100g当たりカルシウム40mg、マグネシウム5mg、ナトリウム及びカリウムの合計1400mg、リン750mg、塩素150mgを含有しており、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の粘度は30mPa・s、遊離アミノ酸率0.2%、10000ダルトン超の分子量画分83.6%、1000ダルトン以下の分子量画分4.1%であった。
【0077】参考例1精製コーン油100g、精製水900gを計量した後、予め水相部に溶解した実施例1と同一の方法によりで調製した物性改良剤を固形量として2g添加し(最終濃度0.2%)、実験用ホモジナイザー[エー・ピー・ブイ社製。ゴーリン(GAULIN)]を用いて20MPa(200kgf/cm2)の条件で5分間循環して乳化し、乳化液を得た。
【0078】実施例2市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)1kgを6.7kgの水道水に分散し、炭酸カリウムを添加して溶液のpHを6.8に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解し、溶液を55℃に冷却し、ブロメラインF(天野製薬製。力価800U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.01%(カゼイン1gに対して80単位)、パパインW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対して80単位)添加し、55℃で4時間保持し、のち酵素の失活と溶液の殺菌を兼ねて120℃で10秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度20%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.8kgを得た。
【0079】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90%、製品100g当たりカルシウム45mg、マグネシウム8mg、ナトリウム及びカリウムの合計1600mg、リン770mg、塩素120mgを含有しており、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の粘度は19mPa・s、遊離アミノ酸率0.6%、10000ダルトン超の分子量画分81.2%、1000ダルトン以下の分子量画分6.3%であった。
【0080】参考例2得られた物性改良剤の乳化性を試験するために、参考例1と同様の方法により実施例2で調製した物性改良剤を添加した乳化液(乳化液1)及びカゼインナトリウムを添加した乳化液(乳化液2)を調製し、試験例4と同一の方法により乳化液中の脂肪球の平均直径を測定した。その結果、脂肪球の平均直径は、乳化液1では0.48μm、乳化液2では0.79μmであり、本発明の物性改良剤を使用した乳化液1の乳化性が良好であった。
【0081】実施例3市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)1kgを7kgの井戸水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.5に調整し、85℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解し、溶液を25℃に冷却し、ナトリウム型の強酸性イオン交換樹脂(三菱化学製。SK−1B)を用いて、SV=4h-1で樹脂量の20倍容量を通液し、次いで60℃に加温してパパインW−40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対して80単位)添加し、60℃で8時間保持し、のち85℃で10分間加熱して酵素の失活と殺菌を行い、20℃に冷却して吸着樹脂(北越炭素工業製。HS)を用いてSV=2h-1で樹脂量の10倍容量を通液し、次いで120℃で10秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.75kgを得た。
【0082】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90%、製品100g当たりカルシウム3mg、マグネシウム1mg、ナトリウム及びカリウムの合計1410mg、リン770mg、塩素200mgを含有しており、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の粘度は25mPa・s、遊離アミノ酸率0.5%、10000ダルトン超の分子量画分82.4%、1000ダルトン以下の分子量画分4.8%であった。
【0083】参考例3実施例3で得られた物性改良剤50g、脱脂粉乳50g、砂糖30g、リン酸塩10g、ショ糖脂肪酸エステル5g及び安定剤5gを混合倍散し、精製水700gと混合加温(80℃)して溶解した水相部と、予め植物性油脂250g、レシチン1g、グリセリン脂肪酸エステル2g、香料0.2gを混合加温(80℃)した油相部とを混合し、ホモジナイザーを用いて均質圧力10MPa(100kgf/cm2)の条件で乳化し、85℃で15秒間殺菌し、冷却し、コーヒーホワイトナー約1kgを調製した。
【0084】得られたコーヒーホワイトナーを試験例2と同一の方法によりコーヒーに添加し、フェザリング試験を行った結果、脂肪分離及びフェザリングは無く、風味も良好であった。
【0085】実施例4市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)0.4kgを7kgの精製水に分散し、リン酸カリウムを添加して溶液のpHを6.5に調整し、70℃で30分間加熱してカゼインを完全に溶解した。のち溶液の温度を50℃に冷却した後、PTN6.0S(ノボノルディスク社製。トリプシン製剤。力価1250U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.01%(カゼイン1gに対して125単位)、FC−H(森永乳業製。ラクトバシラス・ヘルベチカスの菌体破砕物の濃縮凍結液)を0.3%添加し、50℃で5時間保持し、85℃で10分間、120℃で2秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度15%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.3kgを得た。
【0086】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90%、製品100g当たりカルシウム45mg、マグネシウム10mg、ナトリウム及びカリウムの合計1450mg、リン1200mg、塩素100mgを含有しており、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の粘度は22mPa・s、遊離アミノ酸率0.8%、10000ダルトン超の分子量画分80.5%、1000ダルトン以下の分子量画分6.2%であった。
【0087】参考例4実施例4で得られた物性改良剤10gと準強力小麦粉(日清製粉社製)1000gとを均一に混合し、食塩4g及び粉末かん水15gを溶解した水469gを添加し、10分間攪拌混合し、得られた生地を圧延ロールにより圧延して麺帯を調製し、18番切刃で切り出して生麺線となし、室温で12時間熟成し、生中華麺約1000gを得た。
【0088】この生中華麺を沸騰水中で3分20秒間茹で、茹で麺試料とした(試料A)、何も添加せずに製造した茹で麺試料(試料B)、及び実施例4で得られた物性改良剤の代わりにカゼインナトリウム(ニュージーランドデイリーボード製)を添加して同様に得た茹で麺試料(試料C)をそれぞれ製造した。
【0089】これら3種の茹で麺試料について、試験例3と同一のパネルにより外観(色調、光沢、及び肌荒れ)、風味、食感(こしの強さ、滑らかさ、及び湯伸びし難さ)の各項目について、次の基準により評価し、その平均値を算出(少数第2位を四捨五入)し、外観、風味、及び食感の項目ごとに集計し、かつ外観、風味、及び食感の合計を総合点として集計して試験した。
【0090】
2:良好1:やや良好0:普通−1:やや不良−2:不良【0091】その結果は、表4に示すとおりであり、総合点は試料Aが3.6、試料Bが1.6、試料Cが2.9、であり、外観、風味、及び食感の各項目も試料Aが最も高い値を示し、本発明の物性改良剤を使用することにより、麺の風味を損なわずに食感を向上させ得ることが認められた。
【0092】
【表4】

【0093】実施例5市販の乳酸カゼイン(ニュージーランドデイリーボード製。純度85%)0.5kgを4kgの水道水に分散し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを7.0に調整し、90℃で10分間加熱してカゼインを完全に溶解し、溶液を50℃に冷却し、パパインW―40(天野製薬製。力価400U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対して80単位)、プロテアーゼNアマノ(天野製薬社製。バシラス・ズブチルス由来のズブチリシン。力価150U/mg)を固形分量でカゼイン当たり0.02%(カゼイン1gに対して30単位)添加し、50℃で5時間保持し、のち85℃で10分間加熱して酵素の失活と殺菌を行い、25℃に冷却し、吸着樹脂(北越炭素工業製。KS)を用いてSV=2h-1で樹脂量の10倍容量を通液し、次いで120℃で15秒間加熱し、減圧乾燥機を用いて濃度18%に濃縮し、噴霧乾燥機(パウダリングジャパン社製)で噴霧乾燥し、物性改良剤約0.35kgを得た。
【0094】得られた物性改良剤は、蛋白質含量90%、製品100g当たりカルシウム15mg、マグネシウム3mg、ナトリウム及びカリウムの合計1650mg、リン780mg、塩素150mgを含有しており、試験例1と同一の方法により測定した10%濃度溶液の粘度は28mPa・s、遊離アミノ酸率0.6%、10000ダルトン超の分子量画分83.2%、1000ダルトン以下の分子量画分4.8%であった。
【0095】参考例5特級すり身(日本水産社製)1kgをサイレントカッターで5分間粉砕し、食塩30gを添加して5分間攪拌し、これに実施例5で得られた物性改良剤20gを700gの水に溶解した溶液と、澱粉50g、冷凍卵白20g、調味料80gを添加して6分間攪拌して混合した。得られた混合物をケーシング詰めとして10℃で一晩静置し、90℃で30分間加熱後放冷し、かまぼこを得た(試料A)。
【0096】一方、物性改良剤を添加せずに同様に調製した試料(試料B)、及び物性改良剤の代わりにカゼインナトリウム20gを使用して同様に調製した試料(試料C)をそれぞれ製造した。
【0097】これらの3種のかまぼこについて参考例4と同一の方法により試験を行った結果は、表5に示すとおりであり、総合評点は試料Aが4.6、試料Bが4.0、試料Cが4.2であり、外観、風味、及び食感の各項目も試料Aが最も高い値を示し、本発明の物性改良剤を使用することにより、かまぼこの風味を損なわずに弾力を向上させ、食感を向上させ得ることが認められた。
【0098】
【表5】

【0099】
【発明の効果】以上詳細に説明したとおり、本発明は、食品の物性改良剤及びその製造法に係るものであり、本発明により奏される効果は、次のとおりである。
【0100】1)合成の物性改良剤とは異なり、食品成分を原料とした天然の物質であり、優れた栄養価を有している。
2)カゼイン類の複数の物性改良特性を保有しており、食品の増粘、結着、乳化、保水、増量、及び起泡性の保持等の目的で広範囲に使用することができる。
3)カゼイン類に特有の素材臭が低減されている。
4)理化学的性状をカゼインナトリウムとは明確に区別できる。




 

 


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