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天然アユ・放流アユの識別方法 - 住友金属鉱山株式会社
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発明の名称 天然アユ・放流アユの識別方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2001−275512(P2001−275512A)
公開日 平成13年10月9日(2001.10.9)
出願番号 特願2000−105393(P2000−105393)
出願日 平成12年4月3日(2000.4.3)
代理人
発明者 青木亜紀代 / 村上 旭 / 越智英里
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 河川で捕獲されたアユが、海から遡上してきた天然アユか、人為的に河川に放流された放流アユかを識別する方法において、該アユの耳石の成長基点を通る断面におけるSrの濃度分布を測定し、該成長基点周囲のSr高濃度領域の面積が前記断面の面積に対して特定の基準値以上であれば天然アユ、そうでなければ放流アユとすることを特徴とする天然アユ・放流アユの識別方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、河川で捕獲されたアユが海から遡上してきた天然アユか、人為的に河川に放流された放流アユかを識別する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 河川に棲息するアユには海産アユ、人工産アユ、湖産アユの3種類がある。そうして海産アユには海から河川に遡上してきた天然アユと、今では数が非常に少なくなっているが、海で捕獲されたアユの稚魚が河川に放流された海産放流アユとがある。
【0003】アユは1年生魚であり、天然アユは秋(10から11月)に河川(淡水)でふ化し、数日で海に下り、一生の約半分の期間(翌年の3月頃まで)を海で過ごし、4月頃から河川に遡上し、河川で成長したのち産卵して一生を終える。海産放流アユは、河川に遡上する前に海で捕獲され河川に放流されるので、海中での生活期間は天然アユより短い。
【0004】人工産アユは、天然アユから採卵・ふ化され、稚魚まで育成された後河川に放流されたもの(人工産初代アユ)、あるいは放流されずに成魚まで育成されたアユから採卵・ふ化・育成された後放流されたものである(人工産継代アユ)。人工産アユは、初代も継代も秋季に淡水中でふ化され、その後例えば、3日目から約70日の間、海水を淡水で2倍に希釈した人工海水中で飼育され、その後、更に海水濃度を徐々に下げ約10日後から淡水中で飼育される。そうして翌年の4〜5月まで淡水中での飼育が継続された後河川に放流される。
【0005】湖産アユは、陸封性アユである琵琶湖のアユの稚魚が捕獲されて河川に放流されたものである。
【0006】上記の海産放流アユ、人工産アユ、湖産アユの3種類が河川に放流されるアユで、以下本明細書ではまとめて放流アユと称することとする。
【0007】ところでアユをはじめ多くの魚類には、音や自体の転位あるいは直線的な動きを感知するために内耳という感覚器官が存在し、内耳の中に耳石が存在する。この耳石を構成する主要元素は、骨を構成する主要元素と同じくカルシウム(Ca)である。このCaは海水中あるいは河川などの淡水中で生活する間に水中から摂取されたものである。またこれらの水中には微量ながらストロンチウム(Sr)などの元素も存在し、これらもCaと共に耳石中に取り込まれる。
【0008】このSrは淡水中よりも海水中に多量に存在する元素である。そのため海中に棲息する魚の耳石中にはSrが多量に蓄積し、一方淡水中に棲息する魚の耳石中にはSrは微量しか存在しない。そこで耳石中のSr濃度を測定すればその魚の棲息場所が海中であるか淡水中であるかを容易に特定することが可能である。
【0009】アユにおいても、海水中での生活期間の長い天然アユのほうが、海水中での生活期間の短い海産放流アユ、人工産アユ、海水中で生活することのない湖産アユより、耳石中に蓄積されるSrの量が多い傾向がある。そこで従来、河川で捕獲されたアユが天然か、放流かの識別にこのSr濃度の差が利用されてきた。その具体的な応用例は河川の環境評価である。河川の下流域の水質が家庭排水や農薬により悪化したり、ダム・堰および河川工事により濁りが満性化すると、上流域の清流を好むアユは遡上できなくなる。もし汚染された河川の上流域にアユが棲息していたとすれば、それはその上流域に放流された放流アユである可能性が高い。そこで河川の特定地点でアユを捕獲し、その耳石を採取して、耳石中に含まれるSr濃度あるいはSrとCaとの濃度比(以下「Sr/Ca比」と記載する)を測定して天然アユか放流アユかを識別する。耳石中のSr濃度あるいはSr/Ca比がある基準値より高ければ天然アユ、そうでなければ放流アユと識別する。そうして捕獲したアユの中に天然アユが存在する否かによって、捕獲地点から下流域の汚染状況を評価することが行われて来た。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】 しかし耳石中のSr濃度を基準とする従来の天然アユか放流アユの識別方法は信頼性に欠け満足できるものではなかった。というのは前に述べたように放流アユの場合でも海産放流アユや人工産アユの場合は、海水中で生活するために耳石中にSrが濃縮蓄積されているからである。また耳石が非常に小さいために分析精度が上げられないことも信頼性に欠ける原因の一つである。そのため耳石中のSr濃度あるいはSr/Ca比を測定しても、天然アユと放流アユとの識別精度が充分でなく識別を誤ることがあった。
【0011】そこで本発明は、河川で捕獲されたアユが天然か放流かを精度高く識別する方法を提供することを課題とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するための本発明の方法は、河川で捕獲されたアユが、海から遡上してきた天然アユか、人為的に河川に放流された放流アユかを識別する方法において、該アユの耳石の成長基点を通る断面におけるSrの濃度分布を測定し、該成長基点周囲のSr高濃度領域の面積が前記断面の面積に対して特定の基準値以上であれば天然アユ、そうでなければ放流アユとすることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】 以下本発明の実施の形態を詳述する。
【0014】本発明は、1個の耳石の中にもSr濃度の高い領域と低い領域があり、それらがアユが生活していた海水中と淡水中のSr濃度の差の影響であることを見出し達成されたものである。
【0015】耳石はアユが稚魚のときは非常に小さいものであるが、アユが成長するに伴い耳石もその小さい耳石を成長基点としておおよそ円盤状に成長する。そうしてアユが海水中で生活していた期間に成長した耳石の部分にはSrが高濃度に蓄積し、淡水中で生活していた期間に成長した耳石の部分にはSrはあまり蓄積されない。そのためアユが海から遡上しアユ漁が解禁となって河川で捕獲される時期になると、耳石の成長基点を中心とした領域、すなわち海中で耳石が成長した領域はSrが高濃度に分布し、その周辺、すなわち淡水中で耳石が成長した領域はSrが低濃度に分布する領域となっている。
【0016】そこで河川で捕獲したアユの耳石を採取し、耳石の中央部にある成長起点を通る断面において、例えばEPMA(電子線マイクロアナライザー)などによりSrの特性X線像を撮影するなどしてSrの濃度分布を測定する。そうすると耳石の成長基点の周囲にSr濃度の高いSr高濃度領域が認められる。図1の右が天然アユのSrの特性X線像、図2の右が放流アユのSrの特性X線像である。なお図1および図2において、bと表示された位置がほぼ耳石の成長基点に相当し、成長基点の周囲の白色度の高い領域がSr高濃度領域である。なお湖産アユは海水中で生活することがないのでSr高濃度領域は存在しない。
【0017】ここで本発明に関わるSr高濃度領域の面積についてであるが、表1はSr高濃度領域の面積と前記断面の面積を測定して、Sr高濃度領域の面積の前記断面の面積に対する比率(以下「Sr高濃度領域の面積率」と記載する)を求めたものである。
【0018】
【表1】

【0019】表1の検体No.天然−1〜13の天然アユの値は、放流アユが棲息していないことが保証されている徳島県の吉野川中流で6月10日に捕獲された天然アユのSr高濃度領域の面積率であり、検体No.放流−1〜15は、河川で捕獲されたものではないが天然アユの捕獲と同時期にアユの養殖場で採取されたアユのSr高濃度領域の面積率である。なおその養殖場では琵琶湖のアユの稚魚と人工的に育成されたアユの稚魚とを入手して淡水中で飼育しており、このアユを放流アユの代用とした。
【0020】表1の天然アユでは、Sr高濃度領域の面積率は47.8〜65.4%の範囲に分布している。これらの値はアユの捕獲時期がより遅ければその間に耳石が成長するのでより小さい値となる。またこのばらつきは海中での生活期間の固体差によるものと考えられる。
【0021】このデータより天然アユか放流アユかを識別する基準値の決め方について一例を説明する。Sr高濃度領域の面積率の平均は56.8%、標準偏差は5.5%である。そこで下限側の99%信頼限界である(平均−3×標準偏差)を基準値とする。その値はこのデータの場合40.3%である。そこで同時期に河川で捕獲されたアユのSr高濃度領域の面積率がこの値以上であればそのアユは天然アユ、そうでなければ放流アユとする。ここで基準値を決めるための天然アユと、識別の対象とするアユの捕獲時期は同時期でなければならず、また両アユの捕獲時期が上記の時期から大きくずれていれば40.3%という値が使えないことは言うまでもない。
【0022】次にこのようにして決めた基準値と放流アユ(養殖アユで代用)の値を比較する。表1の放流アユのデータをみるとSr高濃度領域の面積率は0〜31.1%までばらついている。ここで0%のものは琵琶湖産のアユの稚魚を入手して養殖されていたものと思われる。その他のアユは人工的に育成されたアユの稚魚を入手して養殖されていたものと思われる。そこで最大値である31.1%と基準値である40.3%を比較すると、31.1%は基準値以下であり、天然アユと放流アユの差が明確に現れている。このようにSr高濃度領域の面積率をもってアユの天然・放流を識別する方法が非常に有効である事がわかる。
【0023】次にこのSr高濃度領域の面積率を基準とする識別方法と、従来の識別方法であるSr濃度を基準にする方法およびSr/Ca比を基準にする方法とを比較する。表2は、表1のデータを採ったアユと同時期、同場所で採取したアユについてのSr濃度とSr/Ca比である。
【0024】
【表2】

【0025】表2のSr濃度をみると、天然アユでは0.136〜0.231(重量%)の範囲に分布し、一方放流アユ(養殖アユで代用)では0.019〜0.144(重量%)の範囲に分布しており、両分布範囲には重複する領域(0.136〜0.144)が存在する。そのため基準値をいくらに設定しても誤った識別を避けることは不可能である。
【0026】またSr/Ca比をみると、天然アユでは30.9〜50.0(×1/104)の範囲に分布し、一方放流アユでは4.1〜32.7(×1/104)の範囲に分布しており、両分布範囲にはSr濃度の場合と同様に重複する領域(30.9〜32.7(×1/104))が存在する。そのため天然アユか放流アユかを識別するための基準となるSr/Ca比の値をいくらに設定しても、Sr濃度による識別法同様誤った識別を避けることは不可能である。このように本発明であるSr高濃度領域の面積率を基準として、アユの天然・放流を識別する方法は、従来のSr濃度あるいはSr/Ca比を基準とする方法より優れているといえる。
【0027】次に本発明に関わるSr高濃度領域の面積率の求め方を実施手順に従って説明する。まず耳石の成長基点を通る断面を観察するための試料の作製方法について例を説明する。耳石は直径1mm前後の大略円盤状を呈したものである。この耳石をアユから採取したら、その盤面を縦にして顕微鏡観察用などに用いられるエポキシ系、あるいはポリエステル系などの透明な埋め込み樹脂中に埋め込む。埋め込んだ耳石を樹脂ごと端部から研磨紙で研磨し除去していく。透明樹脂を用いているので樹脂内部の耳石が観察できる。耳石を観察しながら成長基点まで研磨する。成長基点の位置は、アユが成長する過程で形成された同心円状の模様が成長基点を中心にして観察されるので、それを利用すれば確認できる。以上が試料作製方法の一例である。あるいは精密な切断機があれば耳石を成長基点から切断して試料としてもよい。
【0028】次に、このようにして現れた耳石断面におけるSrの濃度分布を測定し、Sr高濃度領域を像として浮き上がらせることであるが、上記したようにEPMAによるSrの特性X線像を撮影することによって可能である。その他にEDX(エネルギー分散形X線分析装置)搭載のSEM(走査型電子顕微鏡)などによる特性X線像、あるいは特性X線像を用いなくても本目的を達成できるものであれば何であってもよい。
【0029】更に、この耳石断面の全体像の表示方法であるが、その手法も目的を達成できるものであれば何であってもよい。例えば低倍率の顕微鏡である実体顕微鏡あるいはSEMで断面の全体像を撮影してもよい。しかし最も容易に且つ正確にその目的が達成されるのは、図1の左および図2の左に示したように耳石を構成する主元素であるCaの特性X線像を撮影することである。EPMAを用いればSrとCaの特性X線像は同一測定装置内で同時に撮影できるので便利である。
【0030】次に、表示された耳石断面のSr高濃度領域の面積と耳石断面の面積の計測方法であるが、この手法も目的を達成できるものであれば何であってもよい。コンピュータを利用した画像解析の手法を利用してもよいし、プラニメータ(面積計)などを利用してもよい。
【0031】このようにして得られたSr高濃度領域の面積と断面の面積から前記したSr高濃度領域の面積率を算出する。
【0032】以下に本発明に係るSr高濃度領域の面積率を基準にして、ある河川の環境評価の一手段として、その河川の特定地点に棲息するアユが天然か、放流かを識別した例を説明する。
【0033】
【実施例】[実施例1] 前記表1および表2用の天然アユを捕獲した時期と同時期に、環境評価を行う河川の特定地点でアユを30尾捕獲し、各アユ中から検体として1個づつ耳石を採取した。採取した30個の耳石を真空デシケータ中にて乾燥後、それぞれ透明のエポキシ系埋め込み樹脂中に埋め込み、耐水研磨紙で研磨して耳石の成長起点を通る断面を得た。得られた耳石の断面において日本電子(株)製のEPMA(型式JXA−8900R型)を用いてSrの特性X線像を撮影し、その像からコンピュータを用いた画像解析によってSr高濃度領域の面積を測定した。またSrと同時にCaの特性X線像を撮影し、同様に画像解析処理して上記断面の総面積を測定した。このようにして測定した値から求めたSr高濃度領域の面積率を表3に示す。
【0034】
【表3】

【0035】表3中のSr高濃度領域の面積率は最大値は33.5%であり、天然アユか放流アユかを識別する基準値40.3%以上の面積率がなかったので、捕獲したアユの中には天然アユが存在しない事がわかった。そこでアユの捕獲地点より下流側にアユの遡上を妨げる要因があって、アユがその地点まで遡上できないものと判断した。
【0036】なおアユを放流している現地の漁業組合の話によれば、放流しているのは人工産と湖産とが約半々とのことである。この実施例でも人工産が30尾中16尾、湖産が14尾で似たような結果が出ている。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、河川で捕獲されたアユが海から遡上してきた天然アユか、人為的に河川に放流された放流アユであるかを精度高く識別することが可能であるために、アユが遡上できるような清流が保たれているか否かなどの河川の環境評価に対して寄与するところは極めて大きい。




 

 


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