米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 繊維;紙;印刷 -> 株式会社リコー

発明の名称 インクジェットヘッド及びその製造方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000−108342(P2000−108342A)
公開日 平成12年4月18日(2000.4.18)
出願番号 特願平10−281862
出願日 平成10年10月5日(1998.10.5)
代理人 【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057 AF65 AF93 AG44 AP02 AP11 AP26 AP27 AP61 AQ02 AQ08 
発明者 秋山 善一
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 シリコン基体で構成した圧力発生ユニットと、セラミックス基材で構成した流路ユニットとを接着剤を用いないで接合したことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記流路ユニットには、前記圧力発生ユニットの圧力室にインクを供給する共通液室、共通液室から圧力室にインクを供給するインク供給路、インク滴を吐出するノズル及びノズルと前記圧力室とを連通するノズル連通路を設けたことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のインクジェットヘッドにおいて、前記セラミックス基材は、燒結体の熱膨張率において室温から600℃の温度範囲でSiとの熱膨張率比が2以下のセラミックス材料からなることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれかに記載のインクジェットヘッドにおいて、前記セラミックス基材は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素を主成分とするセラミックス材料からなることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧力発生ユニットと流路ユニットとをSi−金属の共晶接合で接合することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項6】 請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、加圧加熱処理により脱水反応にて接合することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項7】 請求項1乃至4のいずれかに記載のインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、シロキ酸結合を有するシリコン有機化合物を堆積させ、加水分解・重縮合反応により接合することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項8】 請求項2乃至4のいずれかに記載のインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、前記共通液室、インク供給路、及びノズル連通路を構成する通孔を形成したセラミックス材料からなる複数枚のグリーンシートを積層して熱圧着し、焼成により一体化させる工程と、前記ノズルを形成したノズル形成部材とを一体に接合して流路ユニットを構成する工程と、前記圧力発生ユニットと流路ユニットを接合する工程とからなることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
【請求項9】 請求項8に記載のインクジェットヘッドの製造方法において、前記グリーンシートのインク供給路を構成する通孔はレーザー光の照射により部分的に脱脂を行なうことで開孔することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はインクジェットヘッド及びその製造方法に関し、特に、シリコン基体で構成した圧力発生ユニットと、セラミックス基材で構成した流路ユニットとからなるインクジェットヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プリンタ、ファクシミリ、複写装置等の画像記録装置(画像形成装置)として用いるインクジェット記録装置において使用するインクジェットヘッドは、少なともインク滴を吐出するノズルと、このノズルが連通する加圧室(インク加圧室、吐出室、圧力室、加圧液室、液室、インク流路等とも称される。)と、各加圧室内のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させるための圧力を発生するする圧電素子等の電気機械変換素子、或いはヒータ等の電気熱変換素子、若しくは加圧室壁面を形成する振動板と対をなす電極などの静電気力発生手段などからなる圧力発生手段とを備え、この圧力発生手段を画像情報に応じて駆動することで所要のノズルからインク滴を吐出させて画像を記録する。
【0003】従来のインクジェットヘッドとしては、例えば、特開平6−234218号に記載されているように、表面に圧電振動子を有したセラミックスからなる振動板と、圧力室を形成する複数の通孔を有するセラミックスからなるスペーサ部材と、スペーサ部材の他方を封止するとともに、リザーバと圧力室との流路を形成する通孔を有する蓋部材とを焼成により形成した圧力発生ユニットと、ノズル開口と圧力室、及び圧力室とリザーバを接続する通孔を備えた金属板からなるインク供給部材と、リザーバ及びノズル開口と圧力室とを接続する通孔を備えた巣ペーサ部材と、スペーサ部材の他方の面に固定されるノズルプレートとを一体に接続してなる流路ユニットとからなり、蓋部材とインク供給部材との面を接着剤により一体に接合したものがある。
【0004】また、特開平7−156396号公報に記載されているように、セラミックスからなる圧力室を形成する圧力室形成板に振動板とこの振動板表面に設けた圧電素子とを有する圧力発生ユニットと、圧力室に連通するノズルと、圧力室にインクを供給する連通路を形成した単層構造のセラミックスからなる流路ユニットとを接合したものもある。この場合、セラミックスからなる流路ユニットは、レーザー加工によって多数の開口や流路を形成し、また連通路や共通液室流路をセラミックスグリーンシートの加圧変形にて形成するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したインクジェットヘッドのように、積層構造を採用することで、プレス加工やエッチング加工した板材を接着するという簡単な方法を適用することができて、製造工程の簡素化を図ることができる。しかしながら、各板材を接着剤で接合すると、微細な小孔への接着剤の流れ込みによって流路抵抗が変動し、信頼性が十分でなく、また、ヘッドの高集積化に伴なって微細加工が要求され、特に流体抵抗部などの一部のインク流路は従前からの加工法では作製が困難になっている。
【0006】また、流路ユニットをセラミックスの単層構造で構成しても、加工法としてレーザー加工を施して多数の開口や流路を形成するのでは、加工に手間がかかり、また連通路や共通液室流路をセラミックスグリーンシートの加圧変形にて形成させるため、焼成体の均一収縮が得られず、歩留まりが低下する。
【0007】さらに、セラミック振動板に圧電素子を印刷法などで形成して圧力発生ユニットを構成する、セラミックス振動板一体形成構造ではヘッドの高密度化に対応することが困難になっている。
【0008】そこで、シリコン単結晶基板を用いて、シリコンマイクロマシ−ニング技術を適用することで、現状の4ヘッド/mmをその2倍まで集積することが可能になると推測されるが、この場合、圧力発生ユニットと流路ユニットとを接着剤で接合すると、接着層のはみ出しによる信頼性の低下を招くことになる。また、金属製流路ユニットを用いた場合、シリコンと金属との熱膨張率差によって接着硬化温度を80℃程度にしても熱応力による素子変形が発生する。
【0009】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、各部材間の接合工程を少なくし、また接合部位の信頼性を向上したインクジェットヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、請求項1のインクジェットヘッドは、シリコン基体で構成した圧力発生ユニットと、セラミックス基材で構成した流路ユニットとを接着剤を用いないで接合した構成とした。
【0011】請求項2のインクジェットヘッドは、上記請求項1のインクジェットヘッドにおいて、前記流路ユニットには、圧力発生ユニットの圧力室にインクを供給する共通液室、共通液室から圧力室にインクを供給するインク供給路、インク滴を吐出するノズル及びノズルと前記圧力室とを連通するノズル連通路を設けた構成とした。
【0012】請求項3のインクジェットヘッドは、上記請求項1又は2のインクジェットヘッドにおいて、前記セラミックス基材は、燒結体の熱膨張率において室温から600℃の温度範囲でSiとの熱膨張率比が2以下のセラミックス材料からなる構成とした。
【0013】請求項4のインクジェットヘッドは、上記請求項1乃至3のいずれかのインクジェットヘッドにおいて、前記セラミックス基材は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素を主成分とするセラミックス材料からなる構成とした。
【0014】請求項5のインクジェットヘッドの製造方法は、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、前記圧力発生ユニットと流路ユニットとをSi−金属の共晶接合で接合する構成とした。
【0015】請求項6のインクジェットヘッドの製造方法は、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、加圧加熱処理により脱水反応にて接合する構成とした。
【0016】請求項7のインクジェットヘッドの製造方法は、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、シロキ酸結合を有するシリコン有機化合物を堆積させ、加水分解・重縮合反応により接合する構成とした。
【0017】請求項8のインクジェットヘッドの製造方法は、上記請求項2乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、前記共通液室、インク供給路、及びノズル連通路を構成する通孔を形成したセラミックス材料からなる複数枚のグリーンシートを積層して熱圧着し、焼成により一体化させる工程と、前記ノズルを形成したノズル形成部材とを一体に接合して流路ユニットを構成する工程と、前記圧力発生ユニットと流路ユニットを接合する工程とからなる構成とした。
【0018】請求項9のインクジェットヘッドの製造方法は、上記請求項8のインクジェットヘッドの製造方法において、前記グリーンシートのインク供給路を構成する通孔はレーザー光の照射により部分的に脱脂を行なうことで開孔する構成とした。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明を適用したインクジェットヘッドの要部断面図である。このインクジェットヘッドは、シリコン基体で構成した圧力発生ユニット1と、セラミックス基材で構成した流路ユニット2とを接着剤を用いないで接合したものである。
【0020】圧力発生ユニット1は、シリコン基体11を異方性エッチングして複数の圧力室(加圧室)12を形成する凹部13と振動板14を形成し、このシリコン基体11の振動板13上に各圧力室12に対応して圧電振動子15を印刷法などで設け、この圧電振動子15の上下面にそれぞれ共通電極16及び個別電極17を形成したものである。
【0021】ここでは、シリコン基体11には400μmの結晶面方位(110)のSi ウェハを用いている。このシリコンウェハは張り合わせSOIウェハであり、SiO2上のSi厚さは7μmである。また、振動板14はシリコン基体11の異方性エッチング時に精度良くエッチングを終了させて一定板厚を残すことで形成している。
【0022】流路ユニット2は、第1のスペーサ部材21と、第2のスペーサ部材22と、第3のスペーサ部材23と、ノズルプレート24とからなり、圧力発生ユニット1の各圧力室12にインクを供給するための共通液室25と、共通液室25から圧力室12にインクを供給するための連通路となる流体抵抗部を含むインク供給路26と、圧力発生ユニット1の圧力室12とノズルプレート24のノズル開口27とを連通するノズル連通路28とを形成している。
【0023】第1のスペーサ部材21は、主として共通液室25を形成するのに適した厚さ、例えば150μmのコーディエライトのセラミックス板に、共通液室25を形成する通孔31と、ノズル連通路28の一部を構成する通孔32を形成している。
【0024】第2のスペーサ部材22は、共通液室25と圧力室12とを連通するインク供給路28を構成する開口33と、ノズル連通路28の一部を構成する開口34とを形成している。この第2のスペーサ部材22もコーディエライトのセラミックス板を用いている。
【0025】第3のスペーサ部材23は、インク供給路26のうちの流体抵抗部35を形成する開口と、ノズル連通路28の一部を構成する開口36とを形成している。この第3のスペーサ部材23もコーディエライトのセラミックス板を用いている。
【0026】なお、流体抵抗部(開口)35は、圧力室25を圧電振動子15で加圧してインク滴を吐出させるとき、圧力室12からインク供給路26を通って共通液室25にインクも流れ込むときに、インクに対して流体抵抗を与えることによってインク滴の飛翔に影響を与えないようにするための機能を有している部分である。また、圧電振動子15への駆動信号の印加が解除されて振動板14が元の形状に復帰すると、圧力室12の容積が膨張して負圧が生じ、共通液室25から圧力室12に対して消費分に相当するインクが補給される。このとき、圧力室12に発生した負圧は、ノズル開口27にも作用するが、ノズル開口27に生じているメニスカスによりインクが圧力室12側に後退するのが阻止されて共通液室25からのインク吸引に有効に作用する。
【0027】一般に、流体抵抗部35の口径は30μm程度が好適で、加工精度においてアスペクト比(加工縦寸法/横寸法)が「1」の場合、第3のスペーサ部材23の厚さは30μmとする。なお、後述する高いアスペクト加工が可能な場合には、上述した第2のスペーサ部材22にこの流体抵抗部を形成することもでき、ここでは副部材として示している。
【0028】ノズルプレート24は、第3のスペーサ部材23の他方の面に固定され、例えば直径33μmのノズル開口27を穿設するのに適した厚さ30μmのステンレス鋼板からなり、圧力室12に対向する位置にノズル開口27を形成している。また、ノズルプレート24のノズル表面にはインク濡れ性を適正化した表面処理を施している。
【0029】この流路ユニット2の第1、第2、第3のスペーサ21〜23は上述したようにセラミックス材料からなり一体に焼結している。また、ノズルプレート24との接合は、接着剤や溶着等により一体に積層して流路ユニット2としてまとめ上げられている。なお、これらは、後述する共晶接合工程が終了した後、実施するものである。これら部材は剛性が高く、変形を生じることがなく、高い精度寸法を維持して層状にまとめあげることができる。
【0030】そして、これらの圧力発生ユニット1と流路ユニット2は、その対向する面を後述する各種接合反応によって接着剤を用いることなく接合されインクジエツトヘツドとして構成される。
【0031】そこで、先ず、ノズルプレート24を除く流路ユニット2を構成する各スペーサ部材21〜23で構成される流路部材について説明するこれらの第1〜第3のスペーサ部材21〜23は、セラミック材料を用いて、ドクタブレード法によりグリーンシートを作製し、所望する開口(通孔)を施し、積層、熱圧着、焼成工程を経て一体化に焼結して流路部材としている。
【0032】これを具体的に説明すると、下記の如くして各スペーサ部材21〜23を作製し、積層圧着して、焼成を行なった。
■ セラミック粉体の調製市販品コーディエライト粉末をアルミナボールを用い、湿式ボールミルにて粉砕し、比表面積4m2/gを有する粉体と比表面積8m2/gを有する粉体を作製し、重量比1:1にて混合させ、セラミック粉を調製した。
【0033】

なお、溶媒はトリクロロエチレン60wt%、テトラクロロエチレン23wt%、ブタノール17wt%の混合溶媒である。
【0034】上記の組成を、アルミナボールを用いてポットミル混合してスラリーを得、その後、真空脱泡、粘度調整をし、10000cpsとした後、ドクターブレード法にて、かかるスラリーから、焼成後の厚みが所望する膜厚になるようグリーンシートを成形した。なお、乾燥は、80℃で3時間行なった。
【0035】上述のようにして得られたグリーンシートを所定の金型にてパターン打ち抜きをした。このシートの焼成収縮に伴う形状変化は、初期寸法に対して、等方的に15%縮む。したがって、この収縮を見越して打ち抜きを行なう。なお、アルミナ多層セラミックス基板に採用されているドリルなどの機械加工によって開孔形成を行ってもよい。更に好適なことは、従来の金属板開孔工程で加工される寸法の更に15%小さな開孔を形成できることになり、最小加工限界を向上することができる。
【0036】十分に工程管理されたグリーンシート、及び焼結によって得られる構造体の加工寸法変動は±0.1%に達し、十分実用に耐えるものであった。このような処方により各スペーサ部材21〜23のセラミックグリーンシートを作製し、重ね合わせた後、60kg/cm2 の圧力下で、120℃×30分の条件にて熱圧着した。そして、このようにして得られた一体積層物を1150℃の温度で2時間焼成し、流路ユニット2の各スペーサ部材21〜23からなるセラミックス基材で構成される流路部材を形成した。
【0037】次に、圧力発生ユニット1のシリコン基体11と流路ユニット2のセラミックス部材(流路部材)との接合について説明すると、この接合は共晶接合を適用した。Si−金属材料の共晶反応は、Si元素がほとんどの金属と化合し、一般にシリサイドと呼ばれる材料群を形成する。ここでは、プロセス温度の上限を600℃以下と限定し、その温度範囲内にて、共晶化合物を容易に作り、良好な接合強度を与えるものなら特に制約は与えられない。これらの要請を充足する材料として、Si-Auの共晶反応を行った。
【0038】具体的には流路ユニット2のセラミックス部材の片面にAu薄膜をメタライズ処理し、Si基体の圧力発生ユニット1のシリコン基体11との共晶接合を実施する。流路ユニット2のセラミックス部材のメタライズ処理は、十分洗浄したセラミックス部材にスパッタリング法によりAu を1μm堆積させて行なう。
【0039】この場合、セラミックス/Au界面の密着性向上のために、SiO2Auの同時堆積を行い、熱処理(600℃−30分)にて堆積膜中のSiO2とセラミック界面での反応層を形成させてもよい。また1μmの堆積膜中にSiO2成分を傾斜化させてもよい。
【0040】さらに、圧力発生ユニット1の接合面は、弗化水素水溶液によってシリコン基体11表面の自然酸化膜を除去した後、真空蒸着法にて膜厚100Åほどの島状のAu堆積膜を配置した。
【0041】なお、共晶接合とは処理温度において2種以上の物質が相互拡散により物質移動が生じ、合金化反応が進行し、接合が完了するものであり、その特徴は原子レベルでの均一、かつ強固になされる点にある。従来の接着剤による接合では、接着代を配置しなければならないために、余計なデザインを施さなければならず、ヘッドの集積化が阻害され、また界面でのはみ出しによるインク滴吐出の安定性、信頼性を阻害する。
【0042】上述したように、あらかじめ表面をメタライズした流路ユニット2のセラミックス部材(流路部材)と圧力発生ユニット1のシリコン基板11とを、加圧荷重lkg/cm2、処理温度500℃、加圧加熱時間2時間にて反応処理を行った。
【0043】そして、接合状態の評価として、試料断面をSEM観察、及びX線マイクロアナライザにより分析したところ、均一に接合がなされ、かつ共晶反応層は均一に界面に存在していることが分かった。
【0044】さらに、実際にインクを充填し、1ヘッドを駆動させたときの隣接ヘッドへの影響を観察した。圧力室12はSi隔壁にて独立しており、接合不良による液体のリークがない限り隣接ヘッドのメニスカス振動は観察されない。今回、この観察を行ったところ、隣接ヘッドの影響はなく、良好な接合が得られた。
【0045】次に、流路ユニット2の第1〜第3のスペーサ部材21〜23を形成するセラミック基材として用いるセラミックス材料の選定について説明する。本実施例における接合技術においては反応が高温でなされるために、異種材料間における熱膨張率差が問題になる。また、本実施例では圧力発生ユニット1をシリコン基体11(Si基体)で構成しているので、共晶可能なメタライズ材料、共晶反応開始温度と室温の温度範囲内での熱膨張率の整合がとれるセラミックス材料を選定しなければならない。なお、Siの熱膨張率は2.6ppm/℃である。
【0046】そこで、接合不良は熱膨張率差に起因する熱応力のみであると仮定し、実験の簡便さから、メタライズ処理を施したSi基板と、同様にメタライズ処理したセラミックス基板を接合し、目視にて剥離するかしないかの判断を行った。各種セラミックスでの結果を表1に示している。なお、同表中の熱膨張率は室温から600度の温度範囲での線形膨張率(ppm/℃)である。サイズ1は、接合面積:3cm×3cm、サイズ2は、接合面積:5cm×5cmの試料である。
【0047】
【表1】

【0048】この表1から分かるように、熱膨張比2.5になると、サイズ1の寸法の試料では良かったものの、サイズ2の寸法の試料では悪かった。したがって、スループットの向上面から見ると、熱膨張比は「2」以下にすることが好ましい。
【0049】次に、流路ユニット2の第1〜第3のスペーサ部材21〜23を形成するセラミックス材料について説明する。流路ユニット2を上述したようにグリーンシートの積層体から作製するにあたり、セラミックス材料としては、シート成形できること、熱圧着、焼成にてシート間の界面が形成されぬほどの強固な一体化がなされること、製造コストの面から焼成温度は1500℃以下、好ましくは1400℃以下、更に好ましくは1200℃以下の低温であることが望まれる。この焼成温度は電気炉の各種方式に依存し、前述の低温度で焼成できることが量産性、設備の面などの工業的な面で重要である。
【0050】そこで、これら要求される条件と上述した熱膨張比とを兼ねそろえたセラミックス材料として、ここでは、MgO、Al23、SiO2を主成分とするコーディエライトセラミックスを用いている。具体的な組成として、MgO:2.6〜13.8%、Al23:25.5〜38.8%、SiO2:51.4〜64.9%の組成範囲にて、更に、基本式:2MgO・2Al23・5SiO2を基にしているものが好ましい。また、副成分として、Fe23、TiO2、CaO、K2O、Na2Oを含む場合もある。
【0051】具体的には、流路ユニット2の第1〜第3のスペーサ部材21〜23からなるセラミックス部材を以下の工程に従って作製した。
■ セラミック粉体の調製市販品コーディエライト粉末をアルミナボールを用いて、湿式ボールミルにて粉砕し、比表面積4m2/gを有する粉体と比表面積8m2/gを有する粉体を作製し、重量比1:1にて混合させ、セラミック粉を調製した。
【0052】
■ グリーンシートの作製 重量比率 セラミック粉体 100 ポリビニルブチラール樹脂(バインダ) 6.0 ブチルベンジルフタレート(可塑剤) 3.0 溶媒 55.0なお、溶媒はトリクロロエチレン60wt%、テトラクロロエチレン23wt%、ブタノール17wt%の混合溶媒である。
【0053】そして、上記の組成を、アルミナボールを用いてポットミル混合しスラリーを得、その後、真空脱泡、粘度調整し、10000cpsとした後、ドクタブレード法にて、このスラリーから、焼成後の厚みが所望する膜厚になるようグリーンシートを成形した。なお、乾燥は、80℃で3時間行なった。
【0054】このようにして得られたグリーンシートを所定の金型にてパターン打ち抜きをした。打ち抜きによる加工限界はグリーンシート形成処方により異なる。具体的にはアクリル樹脂を用いた場合、シート強度が不十分であり、φ150μmの開孔が限界であった。一方、ポリビニルブチラール樹脂においてはシート強度が確保され、φ100μmの開孔が可能であった。ただし、開口可能な径は可塑剤量の最適化により変化する。
【0055】このシートの焼成収縮に伴う形状変化は、初期寸法に対し、等方的に15%縮む。従って、得られた孔径は85μm±0.5μmの分布を示した。またバッチ処理間のバラツキは、セラミックス粉の管理(特に吸着水)、グリーン乾燥状態の管理、グリーン密度(粉体充填率)などを管理することで加工中心値の±0.15%の範囲で再現できた。このことは、この加工が十分使用できることを示している。
【0056】また、微小ドリルによる機械加工によって開口形成を行った。微小ドリルは80μm径を用いた。この種の機械加工の利点は、高いアスペクトが実施できる点にある。この加工においても上述した加工バラツキの範囲で作製することができた。
【0057】さらに、従来の金属板開孔工程で加工される寸法の更に15%小さな孔を形成できるので、最小加工限界が向上し、上述した80μmドリルにて加工代がかみされ90μmの孔ができたものの、焼成後の孔径は77μmのものが厚さ200μmのシート(焼成後厚さ)にでき、アスペクト2.6を実現できた。
【0058】次に、流路ユニット2の第3のスペーサ23に形成する流体抵抗部35の微小開口の加工について説明する。上述したように、セラミックス母材を用いた加工によって約77μmを達成できている。そこで、流路ユニット2の流体抵抗部35の微小径は次の方法にて作製することができる。
【0059】一般に、加工精度は加工材料の厚さに比例して、加工寸法が制約されてくる場合が大きい。したがって、微小加工を行なうには、その板厚を制限し、すなわち薄層化することが重要になる。本実施例では、流路ユニット2の流体抵抗部35の加工に関して、その第3スペーサ部材23となるシートの厚さを30μm以下にして、30μm程度の微小孔の作製を行った。
【0060】セラミックスグリーンシートを構成するブチラール樹脂が効率よく光吸収を行うことから、レーザ波長1.064nm、Nd:YAGレーザを用いて、1J/cm2・ショット以下のパワーでスリットを介して限定した領域に照射する。この場合、光学系倍率及びメカニカルスリットの精度により、照射面積は5平方μm以上の領域が照射可能になる。
【0061】このようにレーザー光が照射されたセラミックスグリーンシートは、バインダー樹脂が燃焼・除去され、セラミック粉のみが存在する。次の工程で、この部分的に脱バインダーされた領域の粉体を除去することでグリーンシート開孔を行った。シート厚さとレーザー照射パワーの最適化を行い、3030μmシートでは800J/cm2・ショットにより30平方μmの開孔を形成できた。そして、これを焼成することで、約25.5平方μmの通孔を作製することができた。
【0062】次に、圧力発生ユニット1のシリコン基体11と流路ユニット1の第2のスペーサ部材22との他の接合方法について説明する。ここでは、圧力発生ユニット1のシリコン基体11と流路ユニット1の第2のスペーサ部材22とを加熱・脱水反応によって接合している。
【0063】この加熱・脱水反応による接合は、Si−Si直接接合技術として知られており、近年SOI(Silicon on Insulater)ウェハ作製などに応用されている。この反応は実際にはSi最表面が酸化膜、更にその最表面は水酸基にて終端されており、両者のもつ水酸基2個から加熱により、水が脱水反応することで酸素を介した化学結合が形成され、強固な接合がなされることを基本にするものである。
【0064】圧力発生ユニット1はシリコン基体(Si基体)11から構成され、流路ユニット2の接合部材である第2のスペーサ部材22はセラミックス基材から形成されており、両者最表面は上述のSi−Si直接接合と同様な水酸基終端がなされているので、同様な原理に基づいて接合することができる。
【0065】ここでは、強力な接合力を低温で得るために、Si接合表面は、真空チャンバーに装着した後、酸素プラズマ処理を施す。次に、ヘリコンガンを用い、水により、水酸基イオンソースを発生させ、チャンバー内の基板に照射してする。セラミックス部材についても同様の処理を行った。
【0066】このようにして、表面改質をしたシリコン基体11の接合面と第2のスペーサ部材22の接合面を加圧しながら合わせ、この状態で減圧下、500℃にて脱水反応を行い接合処理を施した。貼り合わせの加圧圧力は10kg/cm2、脱水により系外に水を排出し易くするため、減圧は0.01Torrとし、また処理時間は3時間とした。温度は300℃以上にて接合が開始されるものの、その強度は不十分であり、脱水反応時の温度の上昇に伴い接合力は増加し、500℃で飽和し、その接合強度は8kg/cm2になり、十分な接合強度が得られた。
【0067】次に、圧力発生ユニット1のシリコン基体11と流路ユニット1の第2のスペーサ部材22との更に他の接合方法について説明する。ここでは、圧力発生ユニット1のシリコン基体11と流路ユニット1の第2のスペーサ部材22とを金属有機化合物の重縮合・脱水反応によって接合している。
【0068】ここで、金属有機化合物をSi−O−R(Rはアルキル基などの有機物)とし、一般には珪酸エチルエステル(テトラエトキシシラン)などの名称で知られている、シロキ酸を含む化合物である。これらの重縮合脱水反応は、アルコキシド基(シロキ酸よりも広い概念で一般に用いられる用語)の加水分解が生じ、重縮合の結果、水と低級アルコールを形成し、これらが系外に取り除かれることにより、Si−O−金属の化学結合が形成されるものである。
【0069】本発明においてはセラミックスを構成する金属酸化物に相当する、金属アルコキシドを用いてもかまわないが、一般に金属アルコキシドは徴量の水分、大気中の湿度から供給される水に対してでさえ、反応してしまい、操作性が悪くなる。アルコキシド化合物の中で、Si、Geのアルコキシドは比較すると、最も安定であり、本発明の実施においては、特にSi−アルコキシド(テトラエトキシシラン)が好適である。
【0070】セラミックス接合面には各種流略に接続するための開孔が形成されるので、一般の塗布法は好ましくない。ここでは、超音波アトマイザーによる、テトラエトキシシラン+メトキシエタノール溶液のミストによる塗布が好ましい。
【0071】そこで、上述したように、強力な接合力を低温で得るために、Si接合表面は、真空チャンバーに装着した後、酸素プラズマ処理を施す。次に、ヘリコンガンを用い、水により、水酸基イオンソースを発生させ、チャンバー内の基板に照射してする。セラミックス部材についても同様の処理を行った。
【0072】このようにして、表面改質をした後、テトラエトキシシラン/メトキシエタノール溶液、濃度0.1mol/1、部分加水分解はアルコキシ基mol数の10倍量添加処理品を、超音波アトマイザー(ミスト発生周波数700kHz)にて、約2μmのミストを発生させ、表面に堆積させた。そして、80℃乾燥により、溶媒のメトキシエタノールを一部乾燥させ、前述したと同様にして接合処理を行う。
【0073】この反応における反応生成物は、水と、エタノールであり、容易に系外に排出できる。ただし、IRからの結果、Si−OH結合に基づく吸収ピークは500℃加熱により消失するものの、それ以下の温度では検出され、強固な化学結合には500℃以上の処理温度が必要であった。また、このテトラエトキシシラン堆積層による、最終接合膜の膜厚は200nmであった。
【0074】なお、上記実施形態においては、圧電振動子を用いるインクジェットヘッドに本発明を適用した例で説明したが、圧力発生ユニットがシリコン基体を用いて構成されるものであればよく、例えば振動板と微小ギャップを置いて対向する電極を配置して、電界印加によって発生する静電気力にて振動板を変形させて圧力室内のインクを加圧する静電型インクジェットヘッドにも同様に適用することができる。
【0075】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1のインクジェットヘッドによれば、シリコン基体で構成した圧力発生ユニットと、セラミックス基材で構成した流路ユニットとを接着剤を用いないで接合した構成としたので、ヘッド製作工程が簡略化され、信頼性が向上する。
【0076】請求項2のインクジェットヘッドによれば、上記請求項1のインクジェットヘッドにおいて、流路ユニットには共通液室、インク供給路、ノズル及びノズル連通路を設けた構成としたので、ヘッド製作工程が簡略化され、信頼性が向上する。
【0077】請求項3のインクジェットヘッドによれば、上記請求項1又は2のインクジェットヘッドにおいて、セラミックス基材は、燒結体の熱膨張率において室温から600℃の温度範囲でSiとの熱膨張率比が2以下のセラミック材料からなる構成としたので、接合界面にて熱応力を発生させることなく良好な接合を得ることができる。
【0078】請求項4のインクジェットヘッドによれば、上記請求項1乃至3のいずれかのインクジェットヘッドにおいて、セラミックス基材は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素を主成分とするセラミックス材料からなる構成としたので、接合界面にて熱応力を発生させることなく良好な接合を得ることができる。
【0079】請求項5のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、圧力発生ユニットと流路ユニットとをSi−金属の共晶接合で接合する構成としたので、強固な接合を行なうことができて、信頼性が向上する。
【0080】請求項6のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、加圧加熱処理により脱水反応にして接合する構成としたので、強固な接合を行なうことができて、信頼性が向上する。
【0081】請求項7のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記請求項1乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、各ユニットの接合面を水酸基で表面改質した後、シロキ酸結合を有するシリコン有機化合物を堆積させ、加水分解・重縮合反応により接合する構成としたので、強固な接合を行なうことができて、信頼性が向上する。
【0082】請求項8のインクジェットヘッドによれば、上記請求項2乃至4のいずれかのインクジェットヘッドを製造するインクジェットヘッドの製造方法において、共通液室、インク供給路、及びノズル連通路を構成する通孔を形成したセラミックス材料からなる複数枚のグリーンシートを積層して熱圧着し、焼成により一体化させる工程と、ノズルを形成したノズル形成部材とを一体に接合して流路ユニットを構成する工程と、圧力発生ユニットと流路ユニットを接合する工程とからなる構成としたので、良好な接合を行なうことができて、信頼性が向上する。
【0083】請求項9のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記請求項8のインクジェットヘッドの製造方法において、グリーンシートのインク供給絽を構成する通孔はレーザー光の照射により部分的に脱脂を行なうことで開孔する構成としたので、微小寸法加工が可能になる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013