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発明の名称 制動力制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000−62501(P2000−62501A)
公開日 平成12年2月29日(2000.2.29)
出願番号 特願平10−232852
出願日 平成10年8月19日(1998.8.19)
代理人 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外3名)
【テーマコード(参考)】
3D041
3D046
3G092
3G093
【Fターム(参考)】
3D041 AA49 AA66 AB01 AC09 AC19 AC20 AD00 AD02 AD04 AD05 AD09 AD10 AD14 AD15 AD22 AD23 AD31 AD41 AD50 AD51 AE03 AE11 AE31 AE39 AE41 AE45 AF01 AF03 
3D046 BB00 BB17 EE01 GG02 GG06 HH07 HH17 KK06 KK07 KK11
3G092 BB01 DC01 EC01 FA03 HA01Z HA06Z HB01X HB01Z HD05Z HE01Z HE03Z HE08Z HF08Z HF12Z HF21Z HF28Z HG06Z
3G093 AA01 BA15 DA01 DA05 DA06 DA07 DA09 DB04 DB05 DB11 DB16 EA05 EA09 EB03 EB04 FA04
発明者 岡本 勝 / 山村 吉典 / 川邊 武俊
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 エンジンブレーキ力を調整するエンジンブレーキ力調整手段と、各車輪のブレーキ力を調整する車輪ブレーキ力調整手段と、車両の運転走行状況に応じて目標制動力を設定する目標制動力設定手段と、この目標制動力に基づいて変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記目標制動力に基づいて目標エンジン出力を設定する目標エンジン出力設定手段と、変速機の変速比及びエンジンのエンジン出力に基づいてエンジンブレーキ力を算出するエンジンブレーキ力算出手段と、このエンジンブレーキ力に基づいて、前記目標制動力の変化速度の速い成分を抽出する目標制動力高周波成分抽出手段と、この目標制動力の変化速度の速い成分に基づいて車輪への目標ブレーキ力を設定する目標ブレーキ力設定手段と、この目標ブレーキ力が達成されるように前記車輪ブレーキ力調整手段による各車輪のブレーキ力を制御する車輪ブレーキ力制御手段とを備えたことを特徴とする制動力制御装置。
【請求項2】 前記目標変速比設定手段は、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標変速比を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標変速比を設定することを特徴とする請求項1に記載の制動力制御装置。
【請求項3】 前記目標変速比設定手段は、目標変速比に対する実変速比の応答の逆応答特性を表す関数を用いて目標変速比を算出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を前記変速比応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標変速比を算出することを特徴とする請求項2に記載の制動力制御装置。
【請求項4】 前記目標エンジン出力設定手段は、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標エンジン出力を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標エンジン出力を設定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項5】 前記目標エンジン出力設定手段は、目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答の逆応答特性を表す関数を用いて目標エンジン出力を算出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を前記エンジン出力応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標エンジン出力を算出することを特徴とする請求項4に記載の制動力制御装置。
【請求項6】 前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段は、エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出するものであることを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項7】 前記目標制動力高周波成分抽出手段は、前記エンジンブレーキ力の応答むだ時間に応じて遅らせたエンジンブレーキ力を前記目標制動力から減じて目標制動力の変化速度の速い成分を抽出するものであることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項8】 前記エンジンブレーキ力調整手段は、前記目標変速比に基づいて変速機の変速比を制御する変速比制御手段と、前記目標エンジン出力に基づいて目標スロットル開度を算出する目標スロットル開度算出手段と、この目標スロットル開度に基づいてスロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とによって制御されることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項9】 前記目標ブレーキ力設定手段は、目標ブレーキ力の配分が零でなく且つスロットル開度が所定値以下であるときにのみ、ブレーキ力が作用する目標ブレーキ力を設定するものであることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項10】 前記エンジンブレーキ力算出手段は、トルクコンバータのトルク増倍比を算出する手段を有し、前記エンジン出力に前記変速機の実変速比とトルクコンバータのトルク増倍比とを乗じてエンジンブレーキ力を算出するものであることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項11】 前記車輪ブレーキ力制御手段は、前記目標ブレーキ力を目標制動流体圧に変換して制御するものであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の制動力制御装置。
【請求項12】 前記エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出する手段は、前記目標制動力の低周波成分を抽出するローパスフィルタで構成されることを特徴とする請求項6に記載の制動力制御装置。
【請求項13】 前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段は、目標制動力の周波数成分を分離するバンドパスフィルタで構成されることを特徴とする請求項2又4に記載の制動力制御装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば目標車速を達成するために必要な目標制動力を求め、それをエンジンブレーキ力と車輪ブレーキ力とに配分して制御する制動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】このような制動力制御装置としては、例えば本出願人が先に提案した特開平7−81463号公報に記載されるものがある。この従来技術は、制動力だけでなく、所謂駆動力も同時に制御可能とするものであるが、目標とする制(駆)動力を達成するために必要な変速機の目標変速比とエンジンの目標出力トルクと目標ブレーキトルクとを設定し、夫々変速比制御アクチュエータ及びスロットルアクチュエータ及びブレーキアクチュエータで目標値追従制御を行う。具体的には、まずエンジンと変速機とで達成できる制動力,つまりエンジンブレーキ力を算出する。そして、このエンジンブレーキ力で達成できない目標制動力の残りの分を車輪ブレーキ力で達成するようにしている。また、この従来技術では、車輪ブレーキ力の応答がエンジン及び変速機によるエンジンブレーキ力の応答よりも高速であるという特性を利用し、目標制動力のうちの車輪ブレーキ力による制御領域を拡大して目標制動力追従制御の応答性を高めている。また、制動力の配分のタイミングを調整することも提案されており、例えばエンジンブレーキ力で達成できなかった目標制動力の残りの分が零でなく且つ目標スロットル開度が下限値以下にあるときに車輪ブレーキ力を作用させるようにする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の制動力制御装置は、夫々以下のような問題がある。その夫々を、図14〜図16を用いて説明する。なお、これ以後、制動力は所謂駆動力の負値の領域を示し、エンジンブレーキ力はエンジントルクの負値の領域を示す。つまり、図中での制動力及びエンジンブレーキ力は、負値表示されていることになる。但し、制動力及びエンジンブレーキ力の大きさについては、絶対値で評価する。
【0004】これらは共に、時刻t1 の前後で,具体的には後述する時刻t0 から、正値の駆動力td1 から負値の制動力td2 まで目標値が変化したときのシミュレーションであり、図14はスロットル開度に下限値を設定せず、スロットル開度が零,つまり全閉状態になったと想定される時刻t2 から車輪ブレーキ力を作用させるように設定したものである。この例では、実際のスロットル開度は、応答遅れのため、図14bに点線で示すように変化し、実際のエンジンブレーキ力は更にむだ時間分だけ遅れて図14cに点線で示すように変化する。これに対して、ブレーキ力は、前記目標スロットル開度が零となる時刻t2 以降にしか作用しないので、当該時刻t2 から次第に増大する。但し、車輪ブレーキ力は応答性が高いので、目標値に対する遅れは殆どなく、目標制動力td2 を満足する目標ブレーキ力tb3 で安定する。この間、少なくとも前記時刻t2 までは応答性の低いエンジンブレーキ力しか作用していないので、実際の制動力は実質的に正値の駆動力となる図14に点線で示すように変化し、車輪ブレーキ力が作用する時刻t2から漸く次第に制動力側に転じる。その結果、車輪ブレーキ力が目標値tb3 となるまでに、目標制動力との間に大きな偏差が残り、目標値追従応答性は低い。
【0005】次に図15は、前記図14と同様にスロットル開度の下限値を設定しないが、応答性を補うために目標制動力(駆動力)が減少に転ずる時刻t0 から直ぐに車輪ブレーキ力を次第に作用させるようにしたものである。なお、車輪ブレーキ力は、目標制動力との偏差を是正するフィードバック制御とした。このシミュレーションでは、前記目標制動力が減少し始める時刻t0 から車輪ブレーキ力が次第に増大されるので、実際の制動力は、図15aに点線で示すように時刻t0 から目標制動力に向けて次第に漸近し、図14のものより目標制動力との偏差は小さい。しかしながら、このようにしても目標制動力に対する実際の制動力の追従性は十分とは言えない。
【0006】次に図16は、スロットル開度の下限値α2 (>0)を設定し、スロットル開度が下限値α2 以下となったと想定される時刻t1 から車輪ブレーキ力を作用させる。このスロットル開度の下限値α2 は零より相当大きいので、スロットル開度が下限値α2 になっても正値のエンジン出力te2 までしか低減せず、エンジンブレーキ力は作用しない。しかしながら、スロットル開度が全閉になる以前,つまり前記下限値α2 になった時刻t1 から、目標制動力td2 を満足する車輪ブレーキ力tb2 が即座に立ち上がるので、実際の制動力は、前記時刻t2 より速い時刻で目標制動力に一致する。このようにすることで、制動力の目標値追従性のうち、過渡期後半については改善されるが、やはり過渡期前半については改善の余地がある。
【0007】本発明はこれらの諸問題に鑑みて開発されたものであり、制動力を目標値に追従させるときの過渡期前半についても追従性を高めて、全般に応答性を向上させることができる制動力制御装置を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載される制動力制御装置は、エンジンブレーキ力を調整するエンジンブレーキ力調整手段と、各車輪のブレーキ力を調整する車輪ブレーキ力調整手段と、車両の運転走行状況に応じて目標制動力を設定する目標制動力設定手段と、この目標制動力に基づいて変速機の目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記目標制動力に基づいて目標エンジン出力を設定する目標エンジン出力設定手段と、変速機の変速比及びエンジンのエンジン出力に基づいてエンジンブレーキ力を算出するエンジンブレーキ力算出手段と、このエンジンブレーキ力に基づいて、前記目標制動力の変化速度の速い成分を抽出する目標制動力高周波成分抽出手段と、この目標制動力の変化速度の速い成分に基づいて車輪への目標ブレーキ力を設定する目標ブレーキ力設定手段と、この目標ブレーキ力が達成されるように前記車輪ブレーキ力調整手段による各車輪のブレーキ力を制御する車輪ブレーキ力制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0009】また、本発明のうち請求項2に係る制動力制御装置は、前記請求項1の発明において、前記目標変速比設定手段は、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標変速比を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標変速比を設定することを特徴とするものである。
【0010】また、本発明のうち請求項3に係る制動力制御装置は、前記請求項2の発明において、前記目標変速比設定手段は、目標変速比に対する実変速比の応答の逆応答特性を表す関数を用いて目標変速比を算出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を前記変速比応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標変速比を算出することを特徴とするものである。
【0011】また、本発明のうち請求項4に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至3の発明において、前記目標エンジン出力設定手段は、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標エンジン出力を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標エンジン出力を設定することを特徴とするものである。
【0012】また、本発明のうち請求項5に係る制動力制御装置は、前記請求項4の発明において、前記目標エンジン出力設定手段は、目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答の逆応答特性を表す関数を用いて目標エンジン出力を算出する手段を有し、前記目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を前記エンジン出力応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標エンジン出力を算出することを特徴とするものである。
【0013】また、本発明のうち請求項6に係る制動力制御装置は、前記請求項2乃至5の発明において、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段は、エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出するものであることを特徴とするものである。
【0014】また、本発明のうち請求項7に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至6の発明において、前記目標制動力高周波成分抽出手段は、前記エンジンブレーキ力の応答むだ時間に応じて遅らせたエンジンブレーキ力を前記目標制動力から減じて目標制動力の変化速度の速い成分を抽出するものであることを特徴とするものである。
【0015】また、本発明のうち請求項8に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至7の発明において、前記エンジンブレーキ力調整手段は、前記目標変速比に基づいて変速機の変速比を制御する変速比制御手段と、前記目標エンジン出力に基づいて目標スロットル開度を算出する目標スロットル開度算出手段と、この目標スロットル開度に基づいてスロットル開度を制御するスロットル開度制御手段とによって制御されることを特徴とするものである。
【0016】また、本発明のうち請求項9に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至8の発明において、前記目標ブレーキ力設定手段は、目標ブレーキ力の配分が零でなく且つスロットル開度が所定値以下であるときにのみ、ブレーキ力が作用する目標ブレーキ力を設定するものであることを特徴とするものである。
【0017】また、本発明のうち請求項10に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至9の発明において、前記エンジンブレーキ力算出手段は、トルクコンバータのトルク増倍比を算出する手段を有し、前記エンジン出力に前記変速機の実変速比とトルクコンバータのトルク増倍比とを乗じてエンジンブレーキ力を算出するものであることを特徴とするものである。
【0018】また、本発明のうち請求項11に係る制動力制御装置は、前記請求項1乃至10の発明において、前記車輪ブレーキ力制御手段は、前記目標ブレーキ力を目標制動流体圧に変換して制御するものであることを特徴とするものである。
【0019】また、本発明のうち請求項12に係る制動力制御装置は、前記請求項6の発明において、前記エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出する手段は、前記目標制動力の低周波成分を抽出するローパスフィルタで構成されることを特徴とするものである。
【0020】また、本発明のうち請求項13に係る制動力制御装置は、前記請求項2又は4の発明において、前記目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段は、目標制動力の周波数成分を分離するバンドパスフィルタで構成されることを特徴とするものである。
【0021】
【発明の効果】而して、本発明のうち請求項1に係る制動力制御装置によれば、車両の運転走行状況に応じて目標制動力を設定し、この目標制動力に基づいて変速機の目標変速比及び目標エンジン出力を設定すると共に、そのときの変速機の変速比及びエンジンのエンジン出力に基づいてエンジンブレーキ力を算出し、このエンジンブレーキ力に基づいて目標制動力の変化速度の速い成分を抽出し、更にこの目標制動力の変化速度の速い成分に基づいて目標ブレーキ力を設定し、この目標ブレーキ力が達成されるように各車輪のブレーキ力を制御する構成としたため、エンジンブレーキ力では達成できない目標制動力の変化速度の速い成分を車輪ブレーキ力で達成させることが可能となり、特に目標制動力が変化する過渡期の前半における目標値追従性が高まり、全般の応答性が向上する。
【0022】また、本発明のうち請求項2に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1の発明において、目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標変速比を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標変速比に対する実変速比の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標変速比を設定する構成としたため、目標制動力の変化速度が変速比の応答速度を越えないときには変速比を制御することで、目標制動力を達成するだけのエンジンブレーキ力を得て不要な車輪ブレーキ力の発生を抑制し、変速比を制御しても目標制動力を達成することができないときには車輪ブレーキ力を作用させて、目標制動力が変化する過渡期の前半における目標値追従性を高めることができる。
【0023】また、本発明のうち請求項3に係る制動力制御装置によれば、前記請求項2の発明において、目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を変速比応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標変速比を算出する構成としたため、目標変速比を変速比応答の遅れ分だけ進めて変速比応答における遅れをなくすことができる。
【0024】また、本発明のうち請求項4に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至3の発明において、目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より速いときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて目標エンジン出力を算出し且つ目標制動力の変化速度が目標エンジン出力に対する実エンジン出力の応答速度より遅いときには当該目標制動力に基づいて目標エンジン出力を設定する構成としたため、目標制動力の変化速度がエンジン出力の応答速度を越えないときにエンジン出力を制御することで、目標制動力を達成するだけのエンジンブレーキ力を得て不要な車輪ブレーキ力の発生を抑制し、エンジン出力を制御しても目標制動力を達成することができないときには車輪ブレーキ力を作用させて、目標制動力が変化する過渡期の前半における目標値追従性を高めることができる。
【0025】また、本発明のうち請求項5に係る制動力制御装置によれば、前記請求項4の発明において、目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分をエンジン出力応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて目標エンジン出力を算出する構成としたため、目標エンジン出力をエンジン出力応答の遅れ分だけ進めてエンジン出力応答における遅れをなくすことができる。
【0026】また、本発明のうち請求項6に係る制動力制御装置によれば、前記請求項2乃至5の発明において、エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出する構成としたため、エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を、当該エンジンブレーキ力で目標制動力を達成するか又は補うための成分として抽出することができる。
【0027】また、本発明のうち請求項7に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至6の発明において、エンジンブレーキ力の応答むだ時間に応じて遅らせたエンジンブレーキ力を目標制動力から減じて目標制動力の変化速度の速い成分を抽出する構成としたため、実際のエンジンブレーキ力の応答むだ時間に応じて演算処理上のエンジンブレーキ力を遅らせることができ、従ってこのエンジンブレーキ力が目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて算出されているときには、このエンジンブレーキ力を目標制動力から除することで目標制動力の変化速度の速い成分を抽出することができ、この目標制動力の変化速度の速い成分に基づいて設定される車輪ブレーキ力を、エンジンブレーキ力が作用しない期間の目標制動力成分に付加することができる。
【0028】また、本発明のうち請求項8に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至7の発明において、目標変速比に基づいて制御される変速機の変速比と、目標スロットル開度に基づいて制御されるスロットル開度とでエンジンブレーキ力を制御する構成としたため、エンジンブレーキ力を連続的に制御することが可能となる。
【0029】また、本発明のうち請求項9に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至8の発明において、目標ブレーキ力の配分が零でなく且つスロットル開度が所定値以下であるときにのみ、ブレーキ力が作用する目標ブレーキ力を設定する構成としたため、スロットル開度の所定値を零より大きな値に設定することにより、車輪ブレーキ力が作用する目標ブレーキ力の設定領域を広げることができるように、スロットル開度の所定値を適宜設定することでブレーキ力による制御領域を変化させて、実際の制動力の応答速度を変化させることができる。
【0030】また、本発明のうち請求項10に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至9の発明において、エンジン出力に変速機の実変速比とトルクコンバータのトルク増倍比とを乗じてエンジンブレーキ力を算出する構成としたため、変速比の応答速度を考慮することができると共にトルクコンバータのロックアップ制御が行われない低速領域でのエンジンブレーキ力を正確に得ることができる。また、エンジン出力を算出するときに、下限値で規制された前記目標スロットル開度を用いることにより、実際に出力可能なエンジン出力を得ることができるので、この出力可能なエンジン出力を用いて発現可能なエンジンブレーキ力を正確に求めることができる。
【0031】また、本発明のうち請求項11に係る制動力制御装置によれば、前記請求項1乃至10の発明において、目標ブレーキ力を目標制動流体圧に変換して制御する構成としたため、装置を実施化し易い。
【0032】また、本発明のうち請求項12に係る制動力制御装置によれば、前記請求項6の発明において、エンジンブレーキ力の応答速度と同等か又はそれより遅い成分を目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分として抽出する手段として、目標制動力の低周波成分を抽出するローパスフィルタを用いる構成としたため、装置を実施化し易い。
【0033】また、本発明のうち請求項12に係る制動力制御装置によれば、前記請求項2又は4の発明において、目標制動力の変化速度に応じた目標制動力の成分を抽出する手段として、目標制動力の周波数成分を分離するバンドパスフィルタを用いる構成としたため、抽出する目標制動力の周波数成分をより高周波側に変化させることで、車輪ブレーキ力の効き具合をマイルドにすることができる。
【0034】
【発明の実施形態】以下、本発明の制動力制御装置を前二輪駆動車両に展開した一実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0035】図1は本発明の一実施形態を示すパワートレーン及び車輪ブレーキ装置及びそれらの制御装置の概略構成図である。この実施形態では、エンジン1の出力軸を、後述するトルクコンバータを介して、無段変速機3の入力軸に接続し、この無段変速機3の最終出力軸で前二輪4FL,4FRを駆動する。また、この実施形態では、後段に詳述するように、エンジン1及び無段変速機3は、夫々、エンジンコントロールユニット5及び無段変速機コントロールユニット7によって独自に電子制御可能であり、各車輪4FL〜4RRのホイールシリンダ9FL〜9RRへの制動流体圧を、ブレーキペダルの踏込みとは個別に調整する制動流体圧アクチュエータユニット2は制動流体圧コントロールユニット6によって独自に電子制御可能であるが、同時にこれらを統括する統括コントロールユニット8があって、この統括コントロールユニット8から、各コントロールユニット5,6,7に対して、夫々、目標スロットル開度,目標変速比,目標制動流体圧が指令値として与えられ、それらを達成するように各コントロールユニット5,6,7が後述する各制御量を制御する。また、統括コントロールユニット8は、個別の目標車速設定装置11からの目標車速を読取り、当該目標車速が達成されるような制動力や駆動力の状態を設定し、それに基づいて前記目標スロットル開度や目標変速比等を算出する。なお、前記目標車速設定装置11は、例えば運転者によって入力された車速や、或いは前走車両との車間距離を最適に保持するように自動的に算出された車速を目標車速とする。また、この目標車速設定装置11では、目標車速が急速に変化する場合には、例えば所定値以上の加速度や減速度にならないように目標車速の変化速度にリミッタをかける処理が施される。なお、前記ホイールシリンダ9FL〜9RRによるブレーキ装置は、ホイールシリンダの推力によってパッドをディスクロータに押圧する,所謂ディスクブレーキである。
【0036】図2には、エンジンコントロールユニット5を含むエンジン1の詳細を示す。このエンジン1は、吸気管内燃料噴射型水冷ツインカムガソリンエンジンであり、アクセルペダルと共に連動するスロットルバルブの開度(以下、単にスロットル開度とも記す)を、当該アクセルペダルの操作量とは個別に調整するためのスロットルアクチュエータ111を備える。そして、エンジンコントロールユニット5は、制御入力として、エアフローメータ101で検出される吸入空気量ASP,スロットルセンサ102で検出されるスロットル開度TVO,O2 センサ103で検出される排気中の酸素量VOL,液温センサ104で検出される冷却液温度TMPLLC ,ディストリビュータ105の回転状態DBR,車速センサ106で検出される車速VSPや、図示されないクランク角センサからのエンジン回転数NE 及びエンジン回転の位相信号等を用いる。また、制御出力として、前記スロットルアクチュエータ111への吸入空気量制御信号SASP ,各インジェクター112への空燃比制御信号SA/F ,ディストリビュータ105への点火時期制御信号SDBR ,燃料ポンプ113への燃料ポンプ制御信号SFPを出力し、前記点火時期制御信号SDBR を入力したディストリビュータ105から各スパークプラグ114に点火信号が出力される。そして、エンジンコントロールユニット5は、図示されないマイクロコンピュータ等の演算処理装置を介装して構成される。つまり、このエンジンコントロールユニット5では、例えば前記エアフローメータ101で検出される吸入空気量ASPと図示されないクランク角センサで検出されるエンジン回転数及びエンジン回転の位相とに基づいて、当該吸入空気量ASPに見合った燃料量とエンジン負荷及びエンジン回転数に見合った点火時期とを算出し、その燃料量を達成するように各インジェクタ112への空燃比制御信号SA/F を出力すると共に、当該点火時期に応じてディストリビュータ105への点火時期制御信号SDBR を出力する。また、前記統括コントロールユニット8から目標スロットル開度の指令がある場合には、当該目標スロットル開度を達成するように前記スロットルアクチュエータ111への吸入空気量制御信号SASPを出力する。なお、ガソリンエンジンの代わりにディーゼルエンジンを用いる場合には、トルクが燃料噴射量に比例することから、燃料噴射量を制御することでトルクを制御することができる。
【0037】次に、図3には無段変速機コントロールユニット7を含むトルクコンバータ10及び無段変速機3の詳細を示す。まず、無段変速機3の概略構成から説明する。この無段変速機3は、駆動プーリ301と従動プーリ302とにベルト303を巻回してなる,所謂ベルト型無段変速機であり、各プーリ301,302の可動円錐体301a,302aを軸線方向に移動することでベルト303との接触半径を変更して変速比(減速比)を変更制御する。また、各プーリ301,302の可動円錐対301a,302aの後方には、ベルト303が滑らないように挟持するための作動流体圧を供給する。なお、このような作動流体圧の元圧となるのが、所謂ライン圧であり、夫々アクチュエータユニット304内の作動流体圧制御(電磁ソレノイド)バルブや,ライン圧制御(電磁ソレノイド)バルブ305によって創成される。従って、前記駆動プーリ302には、無段変速機3の入力軸3aが延設されており、この入力軸3aとエンジン1の出力軸1aとはトルクコンバータ10を介して接続されている。なお、このトルクコンバータ10はロックアップ機構付きの既存のものと同様であり、当該ロックアップ機構を締結(アプライ)したり、開放(リリース)したりするための作動流体圧も、前記アクチュエータユニット304内のトルコン圧制御(電磁ソレノイド)バルブによって創成される。
【0038】そして、無段変速機コントロールユニット7は、制御入力として、セレクトレバー311による選択レンジINHB,アクセルペダル312の操作量,即ちアクセル開度APO,ブレーキペダル313の踏込み量BST,エンジン回転数センサ310で検出されるエンジン回転数NE ,入力回転数センサ314で検出される入力軸回転数NI ,出力回転数センサ315で検出される出力回転数NO 等を用いる。また、制御出力として、前記作動流体圧制御バルブ304への作動流体圧制御信号SPP,SPS,前記ライン圧制御バルブ305へのライン圧制御信号SPL,前記トルクコンバータ10へのロックアップ制御信号SCA,SCRが出力される。そして、無段変速機コントロールユニット7は、図示されないマイクロコンピュータ等の演算処理装置を介装して構成される。つまり、この無段変速機コントロールユニット7では、例えば前記統括コントロールユニット8から目標変速比の指令がある場合には、前記入力回転数センサ314で検出される入力軸回転数NI と出力回転数センサ315で検出される出力回転数NO との比から得られる変速比が、当該目標変速比に一致するように前記駆動プーリ301,従動プーリ302の各可動円錐体301a,302aへの作動流体圧を制御すべく,前記作動流体圧制御バルブ304への作動流体圧制御信号SPP,SPSを出力する。なお、一般的には、前記出力回転数センサ315で検出される信号を車速として用いるが、実際に出力回転数NO を車速VSPとして用いるためには最終減速比qを乗ずる必要などがあるため、ここでは出力回転数NO と車速VSPとは個別のものとして取扱う。但し、両者はNO =VSP・qにより容易に変換可能,或いは代用可能であるものとする。
【0039】次に、図4には制動流体圧コントロールユニット6を含む制動流体圧アクチュエータユニット2の詳細を示す。前記各車輪4FL〜4RRに設けられた各ホイールシリンダ9FL〜9RRとマスタシリンダ251との間に前記制動流体圧アクチュエータユニット2が介装されているのであるが、原則的に前二輪のホイールシリンダ9FL,9FRは、ブレーキペダル313の踏力に応じた当該マスタシリンダ251からの一方のマスタシリンダ圧PMCF が、後二輪のホイールシリンダ9RL,9RRは他方のマスタシリンダ圧PMCR が作用して制動力を発現する。一方、前記マスタシリンダ251には、各マスタシリンダ圧を倍増するためのブースタ252が介装されており、このブースタ252内から取出したブースタ圧PBSTRも、前記制動流体圧アクチュエータユニット2を介して各ホイールシリンダ9FL〜9RRに供給されるようになっている。また、各車輪4FL〜4RRには車輪速センサ12FL〜12RRが取付けられており、そこで検出された各車輪の回転速度(以下、単に車輪速とも記す)VwFL〜VwRRは、駆動輪を含む各車輪の回転状態の制御入力として前記制動流体圧コントロールユニット6に読込まれる。
【0040】前記制動流体圧アクチュエータユニット2は、車輪のロック傾向を抑制防止するアンチスキッド制御と、駆(制)動力制御,或いはトラクション制御とを一つのユニットで達成できるようにしたものである。具体的にまず前輪側の構成について説明すると、前記マスタシリンダ251の前輪用マスタシリンダ圧PMCF の供給径路と前左右の各ホイールシリンダ2FL,2FRとの間には、電流値によって位置制御される3位置電磁切換弁254FL,254FRが介装されている。これらの電磁切換弁254FL,254FRのPポートがオリフィス255FL,255FRを介して前記マスタシリンダ251の前輪用マスタシリンダ圧PMCF 系に接続され、そのRポートがオリフィス257FL,257FRを介して共通する前輪用リザーバ256Fに接続され、そのCポートが前左右の各ホイールシリンダ2FL,2FRに接続されている。合わせて、前記電磁切換弁254FL,254FRのRポートは、前記リザーバ256F側から吸入し且つ前記マスタシリンダ251の前輪用マスタシリンダ圧PMCF 系側に吐出し且つ両側にチェック弁260F,261Fを介装する前輪用ポンプ262Fにも接続されている。なお、この前輪用ポンプ262Fは、後述する後輪用ポンプ262Rと共通するモータ263で回転駆動される。
【0041】従って、原則的に、各3位置電磁切換弁254FL,254FRのソレノイド258FL,258FRへの電流値が零であるときには、リターンスプリング259FL,259FRの弾性力によってスプールが図示の最下方に位置している状態(図中の(増)のポジション)となり、例えばマスタシリンダ圧PMCF がホイールシリンダ2FL,2FRに供給される増圧ポジションとなる。また、各電磁切換弁254FL,254FRのソレノイド258FL,258FRへの電流値が、予め設定された小電流値であるときには、リターンスプリング259FL,259FRの弾性力と均衡してスプールが図示の中央に位置している状態(図中の(保)のポジション)となり、ホイールシリンダ2FL,2FRを遮断して内部の液圧を保持する保持ポジションとなる。また、各電磁切換弁254FL,254FRのソレノイド258FL,258FRへの電流値が、予め設定された大電流値であるときには、リターンスプリング259FL,259FRの弾性力に抗してスプールが図示の最上方に位置している状態(図中の(減)のポジション)となり、ホイールシリンダ2FL,2FR内の液圧が前輪用リザーバ256F又はマスタシリンダ251側に抜圧される減圧ポジションとなる。
【0042】従って、前左右のホイールシリンダ圧PFL,PFRを増減圧制御するには、前記前輪用の3位置電磁切換弁254FL,254FRへの制御信号を前述のように切換えることで行う。なお、例えばアンチスキッド制御中の減圧ポジション又は駆動力制御中の増圧ポジションの制御信号の出力と同時に前輪用ポンプ262Fが回転駆動され始め、以後、アンチスキッド制御中は常時回転駆動され続けるようになっている。また、アンチスキッド制御におけるホイールシリンダ圧の増減圧制御態様は、既存の制御態様を用いる。また、前記電流値制御には、既存のPWM(Pulse Width Modulation)制御法によるデューティ比制御を用いることもできる。
【0043】次に後輪側のアクチュエータの構成等について説明すると、前記後左右のホイールシリンダ2RL,2RRに接続されている3位置電磁切換弁254RL,254RRや後輪用リザーバ256R,後輪用ポンプ262R等の構成及び作用は、夫々、前記前輪用の電磁切換弁254FL,254FR,前輪用リザーバ256F,前輪用ポンプ262Fと同等であるから、夫々の符号に用いられる,前輪を表す“F”を、後輪を表す“R”に置換して図示し、それらの詳細な説明を省略する。
【0044】また、この制動流体圧アクチュエータユニット2では、前記各3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートとCポートとを結ぶバイパスにチェック弁264FL〜64RRが設けられ、前輪用及び後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR の各供給径路中に2位置電磁切換弁270,265が夫々介装されている。また、前記各3位置電磁切換弁254RL〜254RRのPポートと前記ブースタ252とがブースタ用の2位置電磁切換弁266を介して接続されている。また、前記マスタシリンダ用の2位置電磁切換弁270,265及び各3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートと前記前輪用及び後輪用ポンプ262F,262Rとの間には、夫々、アキュームレータ267F,267R及びオリフィス268F,268Rが介装されている。更に、前記前輪用及び後輪用リザーバ256F,256R及び各3位置電磁切換弁254FL〜254RRのRポートは、夫々、チェック弁269F,269Rを介してマスタシリンダ251の前輪用及び後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR の各系に接続されている。
【0045】前記マスタシリンダ用電磁切換弁270,265は、ソレノイド270a,265aへの制御電流値が零の状態でリターンスプリング270b,265bの作用によりマスタシリンダ251の前輪用及び後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を直接前記3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートの供給し(ノーマルポジション)、ソレノイド270a,265aに所定の制御電流値が供給されている状態で、当該3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートへの高過ぎる元圧をマスタシリンダ251側に戻す(切換えポジション)ためのものである。また、前記ブースタ用電磁切換弁266は、ソレノイド266aへの制御電流値が零の状態でリターンスプリング266bの作用によりブースタ252のブースタ圧PBSTRを前記3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートから遮断し(ノーマルポジション)、ソレノイド266aに所定の制御電流値が供給されている状態で当該ブースタ圧PBSTRを3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートに供給する(切換えポジション)ためのものである。
【0046】従って、前記マスタシリンダ用電磁切換弁270,265及びブースタ用電磁切換弁266が共にノーマルポジションにある状態で、前輪用及び後輪用ポンプ262F,262Rや3位置電磁切換弁254FL〜254RRを駆動することで、アンチスキッド制御における増減圧制御を行うことができる。一方、前記前輪用及び後輪用ポンプ262F,262Rを駆動した状態で前記マスタシリンダ用切換弁270,265を切換えポジションにすると、当該各ポンプ262F,262Rからの吐出圧はアキュームレータ267F,267Rに蓄圧されると共に、ブレーキペダル313の踏込みがない状態でも前輪用及び後輪用マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR を昇圧する。なお、各マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR が一旦昇圧してしまえば、前記切換えポジションにあるマスタシリンダ用切換弁270,265のチェック機能により、それが低下してしまうことはない。また、この各マスタシリンダ圧PMCF ,PMCR はブースタ252から出力されるブースタ圧PBSTRを更に加圧している。そこで、この状態で、前記ブースタ用電磁切換弁266を切換えポジションにすると、高いブースタ圧PBSTRが3位置電磁切換弁254FL〜254RRのPポートの元圧として供給される。従って、この状態で各3位置電磁切換弁254FL〜254RRを、前述と同様に増減圧及び保持ポジションに切換制御すれば、ブレーキペダルの踏込みのない状態でも後左右輪の制動力を発生・制御することができ、これにより例えば駆動力制御,つまり過大な駆動力による駆動輪のスリップを制御することができる。
【0047】なお、前記マスタシリンダ用電磁切換弁270,265は後述する制動流体圧コントロールユニット6からの制御信号STCS1F ,STCS1R で、ブースタ用電磁切換弁266は同じく制御信号STCS2で切換制御され、各3位置電磁切換弁254FL〜254RRは同じく制御信号SwFL〜SwRRで切換制御される。
【0048】一方、前記制動流体圧コントロールユニット6は、前記車輪速センサ12FL〜12RRで得られる車輪速VwFL〜VwRRや、前記ブレーキスイッチ信号や操舵角或いは前記マスタシリンダ圧PMCF 及びPMCR 等に基づいて、アンチスキッド制御及び駆動力制御の演算処理を司るマイクロコンピュータを備えている。このマイクロコンピュータは、例えばアンチスキッド制御においては、例えば目標車輪速Vw* に対し、PD(比例−微分)制御法に則った目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* RRを算出し、この目標ホイールシリンダ増減圧量ΔP* FL〜ΔP* R が達成されるように、前記各3位置電磁切換弁254FL〜254RRに制御信号SwFL〜SwRRを出力する。また、駆動力制御においては、駆動力制御が必要な場合には前記ブースト圧モードを、そうでない場合には前記ノーマル圧モードを選択すると共に、各制御閾値に対する車輪速VwFL〜VwRRや車輪加減速度V'wFL〜V'wRRに基づいて急増圧モード,保持モード,緩減圧モードを選択し、夫々のモードに応じた制御信号STCS1F ,STCS1R ,STCS2,SwFL〜SwRRを出力する。また、このようなアンチスキッド制御や駆動力制御が実行されておらず、前記統括コントロールユニット8から目標制動流体圧が指令されているときには、例えば各ホイールシリンダ9FL〜9RRの制動流体圧の元圧を圧力センサ271で監視しながら、例えば前記駆動力制御時と同様にして、それを制動流体圧PBRK として目標値に対してフィードバック制御する。
【0049】また、前記統括コントロールユニット8内にも独自のマイクロコンピュータ等の演算処理装置を介装している。従って、この統括コントロールユニット8内では、後述する図5及び図6の所定のロジックに従ってシリアルなディジタル処理が行われる。
【0050】図5は、この演算処理装置で実行される演算処理のゼネラルフローである。この演算処理は、例えば10msec. 程度に設定された所定サンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行される。また、この実施形態では、特に通信のためのステップを設けていないが、演算処理に必要なプログラムやマップ,テーブル等は随時記憶装置から読込まれるし、また必要な演算結果は随時記憶装置に更新記憶される。また、演算結果は、前記各コントロールユニットとの相互通信機構によって相互に授受され、例えば算出設定される目標変速比C* は前記無段変速機コントロールユニット7で読込まれ、目標スロットル開度TVO* は前記エンジンコントロールユニット5で読込まれ、目標制動流体圧PBRK * は前記制動流体圧コントロールユニット6で読込まれる。
【0051】この演算処理では、まずステップS1で、前記目標車速設定装置11から目標車速追従制御スイッチ信号(運転者の手動入力による)SVSP 及び目標車速VSP* 、車速センサ106からの車速VSP、エンジンコントロールユニット5からのフューエルカット信号SCUT 、スロットルセンサ102からのスロットル開度TVO、エンジン回転数センサ310からのエンジン回転数NE 、入力回転数センサ314からの変速機入力回転数NI ,圧力センサ271からの制動流体圧PBRK 等を読込む。
【0052】次にステップS2に移行して、前記目標車速追従制御スイッチ信号SVSP が、ON状態を示す論理値“1”であるか否かを判定し、当該目標車速追従制御スイッチ信号SVSP が論理値“1”である場合にはステップS3に移行し、そうでない場合にはメインプログラムに復帰する。
【0053】前記ステップS3では、スロットル開度TVOが所定値TVO0 以下であるか否かを判定し、当該スロットル開度TVOが所定値TVO0 以下である場合にはステップS4に移行し、そうでない場合にはステップS5に移行する。なお、このスロットル開度の所定値TVO0 は、例えば運転者が入力して設定するようにしてもよいし、車両の運転走行状態に応じて自動的に設定されるようにしてもよい。また、設定のないときには、全閉か或いは全開の何れかになるようにしてもよい。
【0054】前記ステップS4では、後述する図6の演算処理に従って制動力制御を行ってからメインプログラムに復帰する。また、前記ステップS5では、図示されない既存の演算処理に従って駆動力制御を行ってからメインプログラムに復帰する。この駆動力制御では、例えば目標車速VSP* 追従のための駆動力を求め、それを達成するための目標変速比と目標エンジン出力とを設定し、それらの目標値を例えば前記無段変速機コントロールユニット7やエンジンコントロールユニット5に供給して目標値追従制御を行えばよい。
【0055】次に、前記図5の演算処理のステップS4で実行される図6のマイナプログラムについて説明する。この演算処理では、まずステップS11で、下記1式に従って目標制(駆)動力Td* を算出する。なお、算出される目標制(駆)動力Td* は、正値の場合は目標駆動力であり、負値の場合は目標制動力である。つまり、ここでも制動力は負値表示される。
【0056】
Td* =((KP2・S+1)/(KP1・S+1)・VSP* −VSP)・M/KP2 +TFLCT ……… (1)但し、式中、KP1:規範モデル時定数KP2:フィードバック保障器の時定数M :車両質量TFLCT:転がり抵抗,空気抵抗,勾配抵抗等の走行抵抗を示し、走行抵抗TFLCTは推定計算式によって算出する。
【0057】次にステップS12に移行して、例えば目標制(駆)動力Td* の前回値と今回値との差分値を前記所定サンプリング時間ΔTで除したり、或いは目標制(駆)動力Td* に所定の位相進み特性を有するハイパスフィルタ処理を施して時間微分値を求めたりするといった個別の演算処理に従って、前記目標制(駆)動力の変化速度Td'*を算出する。
【0058】次にステップS13に移行して、前記目標制(駆)動力の変化速度の絶対値|Td'*|が、予め設定された所定値|Td'*0 |以上であるか否かを判定し、当該目標制(駆)動力の変化速度の絶対値|Td'*|が所定値|Td'*0 |以上である場合にはステップS14に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。この所定値|Td'*0 |は、例えば後述する目標変速比に対して変速機が達成し得る実変速比の追従応答速度の上限値であるとか、目標エンジン出力に対してエンジンが達成し得る実エンジン出力の追従応答速度の上限値であるとか、或いは後述する目標エンジンブレーキ力に対して実際のパワーユニットが発生し得るエンジンブレーキ力の追従応答速度の上限値等が用いられる。即ち、目標制動力のうちパワーユニット側で達成可能なエンジンブレーキ力による応答速度の上限値であると考えればよい。
【0059】そして、前記ステップS14では、下記2式に従って、目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* を算出してからステップS16に移行する。
Td-SLW* =G(s)・Td* ……… (2) G(s)=1/(1+Ts) …… (2-1)但し、式中、T:ローパスフィルタの時定数G(s):ローパスフィルタのラプラス変換伝達関数この実施例では、目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* を低周波数成分と捉え、これをローパスフィルタで抽出するようにしている。この抽出された目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* は、後述するエンジンブレーキ力によって達成可能な前記目標制動力成分であるから、前記ローパスフィルタ中の時定数Tは、前記エンジンブレーキ力の追従応答速度に応じたものに設定すればよい。また、これに代えて、前記目標変速比に対して変速機が達成し得る実変速比の追従応答速度であるとか、目標エンジン出力に対してエンジンが達成し得る実エンジン出力の追従応答速度などを用いることもできる。
【0060】一方、前記ステップS15では、前記目標制(駆)動力Td* を、そのまま目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* に設定してから前記ステップS16に移行する。
【0061】前記ステップS16では、前記目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* を用いて、下記3式に従って、変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR * を算出する。
【0062】
Td-TR * =GTR(s)-1・Td-SLW* ……… (3)但し、式中、GTR(s)-1:変速比逆応答関数を示す。
【0063】次にステップS17に移行して、前記変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR* を用いて、例えば後述する図7の制御マップに従って、変速機目標入力回転数NI * を算出する。この図7に示す制御マップは、前記変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR * をパラメータとし、車速VSPに関する変速機目標入力回転数NI * の関係を表したものである。ここで、一般的に車速VSPが大きくなると変速機目標入力回転数NI * も大きくなるが、変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR * が正値の領域で大きいと変速機目標入力回転数NI * も大きくなる。また、変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR * が正値の領域で小さくなると変速機目標入力回転数NI * は一旦小さくなるものの、当該変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR * が負値の領域となり、その絶対値が大きくなる(数直線上では小さくなり続ける)と、今度は変速機目標入力回転数NI * が大きくなる。
【0064】次にステップS18に移行して、下記4式に従って、目標変速比C* を算出する。
* =KC ・(NI * /VSP
=(2πR)/(q・(60)) ・(NI * /VSP) ……… (4)但し、式中、R:タイヤ転がり動半径q:最終減速比を示す。また式中の(60)は、変速機目標入力回転数NI * が(rpm)表示、車速VSPが(m/S)表示であるときの換算係数である。
【0065】次にステップS19に移行して、下記5式に従って、現在の変速機の実変速比Cを算出する。
C=(2πR・NI )/(q・(60)・VSP) ……… (5)この式中の(60)も前記4式のそれと同じである。
【0066】次にステップS20に移行して、トルクコンバータ(図中ではトルコン)入出力回転数比NI /NE を算出する。次にステップS21に移行して、前記目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* を用いて、下記6式,7式に従って、目標エンジン出力TE * を算出する。なお、6式で導出されるTd-E* は目標エンジントルクであり、負値のときに目標エンジンブレーキ力となる。
【0067】
Td-E* =GE (s)-1・Td-SLW* ……… (6) TE * =Td-E* /q/C/NI /NE ……… (7)但し、式中、GE (s)-1:エンジン出力逆応答関数を示す。
【0068】次にステップS22に移行して、前記目標エンジン出力TE * を用いて、例えば後述する図8の制御マップを用いて目標スロットル開度TVO* を算出する。この制御マップは、前記目標エンジン出力TE * をパラメータとし、エンジン回転数NE に関する目標スロットル開度TVO* の関係を示すものであり、一般にエンジン回転数NE が大きいほど目標スロットル開度TVO* も大きく、目標エンジン出力TE * が大きいほど目標スロットル開度TVO* も大きくなる。逆に、目標エンジン出力TE * が負値となってエンジンブレーキ力が必要となれば、エンジン回転数NE は大きく,目標スロットル開度TVO* は小さくなる。但し、このスロットル開度に下限値TVOMIN が設定されているときには、目標スロットル開度TVO* を下限値TVOMIN で規制する。
【0069】次にステップS23に移行して、前記目標スロットル開度TVO* を用いて、例えば後述する図9の制御マップから出力可能なエンジン出力TE を求め、更に下記8式に従ってエンジンブレーキ力TE-BRK を算出する。この制御マップは、前記目標スロットル開度TVO* をパラメータとし、エンジン回転数NE に関するエンジン出力TE の関係を示すものであり、一般にエンジン回転数NE が増加するとエンジン出力TE は一旦増加してやがて減少に転じ、目標スロットル開度TVO* が大きくなるとエンジン出力TE は大きくなる。また、目標スロットル開度TVO* の小さいときにエンジン回転数NE が大きいとエンジン出力TE は負値となり、これがエンジンブレーキ力になる。なお、この制御マップは、前記フューエルカットの有無でマップを交換する必要がある。
【0070】
E-BRK =TE ・q・C・NI /NE ……… (8)次にステップS24に移行して、前記エンジンブレーキ力TE-BRK を用いて、下記9式に従って、目標制(駆)動力の変化速度の速い成分Td-FST* を目標ブレーキ力TBRK * として算出する。なお、これまでの符号の設定から、目標ブレーキ力TBRK * が負値であるときに、実質的な車輪ブレーキ力が要求されていることになる。
【0071】
BRK * =Td-FST* =Td* −etds ・TE-BRK ……… (9)但し、式中、td:エンジンブレーキ力の応答むだ時間etds :エンジンブレーキ力の応答むだ時間のラプラス変換表現を示す。
【0072】次にステップS25に移行して、前記目標ブレーキ力TBRK * が負値であるか否かを判定し、当該目標ブレーキ力TBRK * が負値であるときにはステップS26に移行し、そうでないときにはステップS27に移行する。
【0073】前記ステップS26では、下記10式に従って、前記目標ブレーキ力TBRK *を発現するために必要な目標制動流体圧PBRK * を算出してからメインプログラムに復帰する。
【0074】
BRK * =−KB ・TBRK * =−TBRK * /(A・r・μ) ………(10)但し、式中、A:ホイールシリンダ総面積r:ロータ有効半径μ:パッド摩擦係数を示す。
【0075】また、前記ステップS27では、目標制動流体圧PBRK * を零としてからメインプログラムに復帰する。次に、前記実施形態の演算処理の作用について、図10,図11のタイミングチャートを用いて説明する。図10のタイミングチャートは、時刻30秒から35秒までの間に目標車速VSP* が50km/hから10km/hまで減少したときの目標制動力追従制御をシミュレートしたものであり、図11は、図10の時刻29秒から32秒までを拡大したものである。そして、各図とも、分図(a)に車速の経時変化を、(b)に制動力(負値表示)の経時変化を、(c)にスロットル開度の経時変化を、(d)にエンジンブレーキ力(負値表示)の経時変化を、(e)に(車輪)ブレーキ力の経時変化を夫々示し、各図とも実線で目標値を、破線で実際値を示す。
【0076】シミュレーションの条件としては、前記制動力制御に移行するためのスロットル開度の所定値TVO0 を80度,つまり制動力の要請があれば殆どの場合に制動力制御に移行できるようにした。また、前記目標スロットル開度の下限値TVOMIN は零とした。また、目標車速VSP* を50km/hから10km/hまで減少するときの変化速度はリミッタによって規制される。
【0077】このシミュレーションでは、前記実施形態の図6に示す演算処理のステップS11で、モデルマッチング制御法による目標制(駆)動力Td* が設定されるので、前記時刻30秒後、目標制(駆)動力Td* は負値の領域で急速に絶対値が大きくなり、後述のエンジンブレーキ力並びに車輪ブレーキ力によって、最終的な目標車速VSP* (=10km/h)と車速VSPとの偏差ΔVSP* が小さくなるにつれて次第に安定する。また、目標車速と車速との偏差ΔVSP* の大きさで各ゲインKP1,KP2が変わるので、車速VSPが目標車速VSP* に一致する時刻35秒以前に、目標制動力Td* は負値の領域で絶対値が小さくなる,つまり減少に転じ、当該時刻35秒前後から零に漸近する。
【0078】このような目標制動力Td* に対し、図6の演算処理のステップS14では、前記時刻30秒後、即座に、その変化速度の絶対値|Td'*|が前記所定値|Td'*0 |を越えたため、ステップS13からステップS14に移行して、目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* がローパスフィルタ処理によって抽出され、続くステップS16〜ステップS18では、この目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* に応じた変速機出力側目標制(駆)動力Td-TR *から変速機目標入力回転数NI * 及び目標変速比C* が算出される。また、続く図6の演算処理のステップS19〜ステップS21では、目標エンジントルクTd-E* ,目標エンジン出力TE * が算出されるが、ここでは目標制(駆)動力Td* が、前記時刻30秒以後、即座に絶対値の大きな負値になることから、目標エンジントルク(ブレーキ力)Td-E* ,目標エンジン出力TE * とも、急速に絶対値の相応大きな負値となる。従って、図6の演算処理のステップS22では、この絶対値の大きな負値である目標エンジン出力TE * を満足する目標スロットル開度の算出値TVO-ORG* も負値となるが、目標スロットル開度の下限値TVOMIN は零なので、実際に目標スロットル開度TVO* も零に規制され、比較的応答性のよい実スロットル開度TVOは即座にこれに応答して零となった。なお、各図の分図dに示す目標エンジンブレーキ力(実線)は、前記目標エンジントルク(ブレーキ力)TE * を示しており、実質的なエンジンブレーキ力の応答むだ時間は考慮していない。
【0079】一方、図6の演算処理のステップS23では、例えばフューエルカットの有無をも考慮して、前記規制された目標スロットル開度TVO* に応じたエンジンブレーキ力TE-BRK を算出する。この目標スロットル開度TVO* は、前記目標エンジントルク(ブレーキ力)Td-E* 算出の際に、エンジン出力の応答遅れを考慮して求めたものであるから、当該目標スロットル開度TVO* に応じたエンジンブレーキ力TE-BRK はエンジン出力応答遅れを見込んだものとなる。そして、本実施形態では、図6の演算処理のステップS24で、このエンジンブレーキ力TE-BRK を、実際にエンジンブレーキ力が作用するまでの応答むだ時間で更に補正し、それを前記目標制(駆)動力Td* から減じた目標制(駆)動力の変化速度の速い成分Td-FST* を目標ブレーキ力TBRK * とし、続くステップS25〜ステップS27では、この目標ブレーキ力TBRK * に応じた目標制動流体圧PBRK * を算出する。各タイミングチャートの分図dには前記応答むだ時間を含んだ実際のエンジンブレーキ力を破線で示し、分図eには前記算出された目標ブレーキ力TBRK * を実線で示す。なお、同図eの実ブレーキ力(破線)が目標値に対して若干遅れているのは、前記制動流体圧アクチュエータユニットを始めとするアクチュエータ類のダイナミクスのためである。
【0080】この実施形態では、特に前記目標エンジンブレーキ力に対して実際のエンジンブレーキ力が作用するまでの時間に、前記目標ブレーキ力TBRK * が大きく且つ速やかに立上り、特に図11に示すように制動初期の目標制動力追従性が良好になっている。また、この時間のスロットル開度に着目すると、時刻30秒の直後に目標スロットル開度TVO* の傾きが変化している。つまり、この早い時点で、前記目標制(駆)動力の変化速度の絶対値|Td'*|が前記所定値|Td'*0|を上回り、当該目標スロットル開度TVO* を導出するための目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* が、目標制(駆)動力Td* からローパスフィルタ処理を施されたものに切換わったため、制動初期の目標制動力追従性が向上したとも言える。
【0081】次に、従来の制動力制御装置の作用について、図12,図13のタイミングチャートを用いて説明する。各タイミングチャートに示す要素並びにシミュレーションの条件は、前記図10,図11のものと同様である。また、この制動力制御の内容は、前記実施形態のように目標制動力の成分を、変化速度の速いものや遅いものに分類したり、或いはエンジンブレーキ力の応答むだ時間を考慮したりしないものである。つまり、目標制動力を単にエンジンブレーキ力と車輪ブレーキ力とに分解し、目標エンジンブレーキ力で補えない目標制動力を車輪ブレーキ力に振り当てたに過ぎない。
【0082】このシミュレーションでは、前記実施形態のそれに比して、時刻30秒直後の目標ブレーキ力の立上りが小さい。これは、前記エンジンブレーキ力の応答遅れ並びに応答むだ時間を考慮していないためであり、従って制動初期の目標制動力追従性はよくない。但し、それ以外の目標制動力追従性はほぼ良好である。
【0083】また、特に車輪ブレーキ力が零となっている時刻34秒から時刻35秒の時間に着目すると、目標制動力と実制動力との時系列変化が、前記実施形態のものと同じになっている。これは、前記実施形態で、前記目標制(駆)動力の変化速度の絶対値|Td'*|が前記所定値|Td'*0 |より小さくなり、目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* をローパスフィルタ処理したものから、Td* そのものに戻したことによる。このように車輪ブレーキ力を必要としない状況で、目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* に従って目標エンジンブレーキ力Td-E* を設定すると、目標制動力に対して実制動力がより一層遅れてしまうのである。
【0084】このように本実施形態の制動力制御装置によれば、目標制(駆)動力の変化速度の速い成分Td-FST* に基づいて目標ブレーキ力TBRK * を設定し、この目標ブレーキ力TBRK * が達成されるように各車輪のブレーキ力を制御する構成としたため、エンジンブレーキ力では達成できない目標制動力の変化速度の速い成分を車輪ブレーキ力で達成させることが可能となり、目標制動力が変化する過渡期の前半における目標値追従性が高まり、全般の応答性が向上する。また、変速比やエンジン出力やエンジンブレーキ力の目標値を設定するにあたり、目標制(駆)動力の変化速度(の絶対値)|Td'*|が、それらの目標値に対する実際値の応答速度,つまり前記所定値|Td'*0 |より大きい(速い)ときには当該目標制動力の変化速度の遅い成分に基づいて各目標値を算出し且つそうでないときには当該目標制動力に基づいて各目標値を設定する構成としたため、目標制動力の変化速度が変速比の応答速度を越えないときには、目標制動力を達成するだけのエンジンブレーキ力を得て不要な車輪ブレーキ力の発生を抑制し、エンジンブレーキ力を制御しても目標制動力を達成することができないときには車輪ブレーキ力を作用させて、目標制動力が変化する過渡期の前半における目標値追従性を高めることができる。
【0085】また、変速比やエンジン出力やエンジンブレーキ力の目標値を設定するにあたり、前記目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* ,つまり目標制動力の変化速度に応じて抽出した成分を、変速比やエンジン出力やエンジンブレーキ力等の各制御量応答の逆応答特性関数で変換した成分に基づいて、それらの目標値を算出する構成としたため、各制御量の目標値を夫々の応答遅れ分だけ進めて遅れをなくすことができる。また、エンジンブレーキ力TE-BRK の応答むだ時間tdに応じて遅らせたエンジンブレーキ力を目標制(駆)動力Td* から減じて目標制動力の変化速度の速い成分Td-FST* を目標ブレーキ力TBRK * として抽出する構成としたため、実際のエンジンブレーキ力の応答むだ時間に応じて演算処理上のエンジンブレーキ力を遅らせることができ、この目標制動力の変化速度の速い成分に基づいて設定される車輪ブレーキ力を、エンジンブレーキ力が作用しない期間の目標制動力成分に付加することができる。
【0086】また、目標変速比C* に基づいて制御される変速機の変速比と、目標スロットル開度TVO* に基づいて制御されるスロットル開度とでエンジンブレーキ力を制御する構成としたため、エンジンブレーキ力を連続的に制御することが可能となる。また、目標ブレーキ力TBRK * が零でなく且つスロットル開度TVOが下限値TVO0 より小さいときにのみ、最終的な目標ブレーキ力TBRK * を設定する構成としたため、スロットル開度の下限値TVO0 を零より大きな値,例えば前記80度等に設定することにより、車輪ブレーキ力が作用する目標ブレーキ力の設定領域を広げることができるように、実際の制動力の応答速度を変化させることができる。また、エンジン出力TE に変速機の実変速比Cとトルクコンバータのトルク増倍比NI /NE とを乗じてエンジンブレーキ力TE-BRK を算出する構成としたため、変速比の応答速度を考慮することができると共にトルクコンバータのロックアップ制御が行われない低速領域でのエンジンブレーキ力を正確に得ることができ、そのエンジン出力を算出するときに、下限値で規制された前記目標スロットル開度TVO* を用いることにより、実際に出力可能なエンジン出力を得ることができるので、この出力可能なエンジン出力を用いて発現可能なエンジンブレーキ力を正確に求めることができる。
【0087】以上より、前記スロットルアクチュエータ111及びアクチュエータユニット304内の作動流体圧制御バルブが本発明のエンジンブレーキ力調整手段を構成し、以下同様に、前記制動流体圧アクチュエータユニット2が車輪ブレーキ力調整手段を構成し、前記目標車速設定装置12及び統括コントロールユニット8内で実行される図6の演算処理のステップS11が目標制動力設定手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS18が目標変速比設定手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS21が目標エンジン出力設定手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS23がエンジンブレーキ力算出手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS24が目標制動力高周波成分抽出手段及び目標ブレーキ力設定手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS25乃至ステップS27及び前記制動流体圧コントロールユニット6が車輪ブレーキ力制御手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS18及び前記無段変速機コントロールユニット7が変速比制御手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS22が目標スロットル開度算出手段を構成し、前記図6の演算処理のステップS22及び前記エンジンコントロールユニット5がスロットル開度制御手段を構成している。
【0088】なお、前記実施形態では、ローパスフィルタを用いて目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* を抽出したが、これより少し透過周波数特性の高いバンドパスフィルタを用いてもよく、そのようにすると当該目標制(駆)動力の変化速度の遅い成分Td-SLW* に基づいて設定されたエンジンブレーキ力TE-BRKを目標制(駆)動力Td* から減じた、目標制(駆)動力の変化速度の速い成分Td-FST* からなる目標ブレーキ力TBRK * の低周波側成分が減少することから、車輪ブレーキ力の効き具合をマイルドにすることができるという特性がある。
【0089】また、前記各実施形態では、各コントロールユニットをマイクロコンピュータで構築したものについてのみ詳述したが、これに限定されるものではなく、演算回路等の電子回路を組み合わせて構成してもよいことは言うまでもない。




 

 


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