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発明の名称 車両の車体横滑り角推定方法及び推定装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000−52951(P2000−52951A)
公開日 平成12年2月22日(2000.2.22)
出願番号 特願平10−227242
出願日 平成10年8月11日(1998.8.11)
代理人 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外3名)
発明者 神永 眞杉
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 車両の前後方向及び横方向について、夫々当該車両が鉛直軸周りの運動をしている状態を記述する運動モデルを有し、該運動モデルは、前後方向の運動を記述する運動モデルから推定される推定前後運動物理量と、実際に測定される前後運動物理量及び他の推定方法から得られる前後運動物理量の何れかとの誤差信号をフィードバック信号として使用し、前記運動モデルに基づいて車体の横滑り角を推定するようにしたことを特徴とする車両の車体横滑り角推定方法。
【請求項2】 前記前後方向物理量として、前後方向速度が設定されていることを特徴とする請求項1記載の車両の車体横滑り角推定方法。
【請求項3】 前記前後方向速度は、車輪速度及び車輪速度の推定値の何れかを使用することを特徴とする請求項2記載の車両の車体横滑り角推定方法。
【請求項4】 駆動輪の車輪速の大きな方の値が、非駆動輪のそれに対してある一定値又は一定比率以上大きく、且つ前輪の車輪速又は車体速度がある一定値より小さい場合に請求項1の車体横滑り角推定方法を使用し、それ以外の場合に他の車体横滑り角推定方法を使用するようにしたことを特徴とする車両の車体横滑り角推定方法。
【請求項5】 車両の各車輪の車輪速度を算出する車輪速度算出手段と、車体に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、前記車輪速度算出手段で検出した車輪速度と前記ヨーレート検出手段で検出したヨーレートとに基づいて前後方向速度を算出する前後方向速度算出手段と、該前後方向速度算出手段で算出した前後方向速度と推定前後方向速度との誤差信号をフィードバックして前後方向及び横方向速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定した前後方向及び横方向速度に基づいて横滑り角を算出する横滑り角算出手段とを備えたことを特徴とする車両の車体横滑り角推定装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の車体横滑り角推定方法及び推定装置に関し、特に、低車速域での車体横滑り角の推定精度の向上を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の技術としては、例えば特開平8−268306号公報(以下、第1従来例と称す)及び特開平8−332934号公報(以下、第2従来例と称す)に開示されたものが知られている。
【0003】第1従来例は、オブザーバーの状態方程式に基づいて計算した推定横滑り角及び推定ヨーレートと検出前後速度とにより推定横滑り角を計算する一方で、検出横加速度と前記計算した推定横加速度との比を補正係数として計算し、その補正係数をオブザーバーの状態方程式におけるコーナリングパワーに関する因子に乗算するようになっていて、これにより、オブザーバーの状態方程式に基づいて横滑り角を推定すると、コーナリングパワーが的確に補正されているので、横滑り角の推定精度が良好になる、というものである。
【0004】また、第2従来例は、車速、ヨーレート、及び横加速度をパラメータとする積分演算により車両の横滑り物理量を演算する横滑り物理量演算ブロックと、検出された車両の状態量を入力変数として車両モデルにより車両の横滑り量を推定する横滑り物理量推定ブロックと、車両の旋回挙動が不安定なときには積分演算の積分時定数を大きくする積分時定数設定ブロックとを有し、横滑り物理量演算ブロックにより演算された横滑り物理量及び横滑り物理量推定ブロックにより推定された横滑り物理量に基づき最終演算ブロックにより最終的に車両の横滑り物理量を演算するようにしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ここで、一般的にタイヤの横力やコーナリングフォースは、タイヤスリップ角が大きな領域では非線形な特性を有するため、タイヤモデルに基づいた推定式を用いて車両の車体横滑り角を推定する場合に、タイヤ特性(タイヤ横滑り角とコーナリングフォースとの関係)が非線形な領域では車体横滑り角の推定精度が低下することが判っている。
【0006】そのため、例えば上記第1従来例のように、検出横加速度と推定横加速度との比に応じた補正係数を用いる等して推定式に含まれるコーナリングパワーを補正することにより、車体横滑り角の推定精度が低下しないようにすることが考えられる。しかし、このような補正係数を用いる方法であっても、車体質量、車体ヨーイング慣性モーメント、車両重心から前後車軸までの水平距離、車両前後速度、コーナリングパワー等を使用した車両の旋回運動モデルを使用するため、車速が低い領域では近似式が有効でないために、横滑り角の推定精度が悪化するという未解決の課題がある。特に、後輪を駆動する自動車の発進直後の駆動力により所謂パワーオーバーステアと呼ばれる現象をはじめ、低速走行時にも車体横滑り角が増大する可能性は高くこのような領域で横滑り角を高精度で推定することが望まれている。
【0007】また、第2従来例のように、車速、ヨーレート、及び横加速度をパラメータとする積分演算により車両の横滑り物理量を演算する場合には、上記第1従来例のような低車速域での推定精度の悪化という問題点は発生しないものの、積分処理を使用しているためにセンサ間の動特性の違い、積分誤差によって推定値が真値から外れていくドリフトが発生する可能性があり、このために車両モデルを使用する方法との併用等が必要となるという未解決の課題がある。
【0008】そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、低車速域での車体横滑り角の推定精度を向上させることができる横滑り角推定方法及び推定装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1に係る車両の車体横滑り角推定方法は、車両の前後方向及び横方向について、夫々当該車両が鉛直軸周りの運動をしている状態を記述する運動モデルを有し、該運動モデルは、前後方向の運動を記述する運動モデルから推定される推定前後運動物理量と、実際に測定される前後運動物理量及び他の推定方法から得られる前後運動物理量の何れかとの誤差信号をフィードバック信号として使用し、前記運動モデルに基づいて車体の横滑り角を推定するようにしたことを特徴としている。
【0010】また、請求項2に係る車両の車体横滑り角推定方法は、請求項1に係る発明において、前記前後方向物理量として、前後方向速度に設定されていることを特徴としている。
【0011】さらに、請求項3に係る車両の車体横滑り角推定方法は、請求項2に係る発明において、前記前後方向速度が、車輪速度及び車輪速度の推定値の何れかを使用することを特徴としている。
【0012】さらにまた、請求項4に係る車両の車体横滑り角推定方法は、駆動輪の車輪速の大きな方の値が、非駆動輪のそれに対してある一定値又は一定比率以上大きく、且つ前輪の車輪速又は車体速度がある一定値より小さい場合に請求項1の車体横滑り角推定方法を使用し、それ以外の場合に他の車体横滑り角推定方法を使用するようにしたことを特徴としている。
【0013】なおさらに、請求項5に係る車両の車体横滑り角推定装置は、車両の各車輪の車輪速度を算出する車輪速度算出手段と、車体に発生するヨーレートを検出するヨーレート検出手段と、前記車輪速度算出手段で検出した車輪速度と前記ヨーレート検出手段で検出したヨーレートとに基づいて前後方向速度を算出する前後方向速度算出手段と、該前後方向速度算出手段で算出した前後方向速度と推定前後方向速度との誤差信号をフィードバックして前後方向及び横方向速度を推定する速度推定手段と、該速度推定手段で推定した前後方向及び横方向速度に基づいて横滑り角を算出する横滑り角算出手段とを備えたことを特徴としている。
【0014】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、前後方向の運動を記述する運動モデルから推定される推定前後運動物理量と、実際に測定される前後運動物理量又は他の推定方法から得られる前後運動物量との誤差信号をフィードバック信号として使用するので、低車速域で高精度の横滑り角の推定を行うことができると共に、推定値が初期値を誤って与えた等の何らかの理由で真値を離れた場合にも真値に収束させることができ、前述した第2従来例のようにドリフトが生じることがないという効果が得られる。
【0015】また、請求項2に係る発明によれば、前後方向運動物理量として、前後方向速度が設定されているので、正確な実測が可能であり、より高精度の横滑り角推定を行うことができるという効果が得られる。
【0016】さらに、請求項3に係る発明によれば、前後方向速度を、車輪速度及び車輪速度の推定値の何れかを使用して算出するので、実際の車両の走行状態に応じた値として算出することができ、より高精度の横滑り角推定を行うことができるという効果が得られる。
【0017】さらにまた、請求項4に係る発明によれば、発進時等の低車速域では、請求項1の発明を適用して、高精度の横滑り角推定を行い、中・高車速域では、他の推定方法に切換えることにより、高精度の横滑り角推定を継続し、すべての車速域で横滑り角を高精度に推定することができるという効果が得られる。
【0018】なおさらに、請求項5に係る発明によれば、請求項1に係る発明と同様に、低車速域で高精度の横滑り角の推定を行うことができると共に、推定値が初期値を誤って与えた等の何らかの理由で真値を離れた場合にも真値に収束させることができ、前述した第2従来例のようにドリフトが生じることがないという効果が得られる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態の全体構成を示すブロック図であり、本実施の形態における車両は、車体横滑り角等の状態量を推定する車両状態量推定装置10と、目標制動力設定装置20と、制動力制御装置30と、を備えて構成されている。なお、目標制動力設定装置20は、車体横滑り角推定装置10から供給される各値等に基づいて適切な制動力を設定するための装置であって、その具体的構成は、実行される制御(例えば、VDC,ABS,TCS等のように車両に適用可能な制御)に応じて適宜決定されるものであるが、その内容は本発明の本質ではないため、その具体的な説明は省略する。また、制動力制御装置30も、実行される制御に応じて適宜公知の構成が採用可能であるから、その具体的な説明も省略する。
【0020】そして、車両状態量推定装置10は、実際にはマイクロコンピュータや必要なインタフェース回路等によって構成され、車両に発生しているヨーレートを検出するヨーレートセンサ11から供給される実ヨーレートrと、車両に発生している前後加速度を検出する前後加速度センサ12から供給される前後加速度αX と、車両に発生している横加速度を検出する横加速度センサ13から供給される横加速度αY と、各車輪の車輪速を検出する車輪速センサ14から供給される車輪速VwFL〜VwRRとに基づいて、所定の演算処理を実行して、車体の横滑り角βを推定する。
【0021】すなわち、車両の前後方向及び横方向について車両が鉛直軸周りの運動をしている状態を記述する一般的な2輪運動モデルは、図2に示すように、操舵機構を有する前輪1F及び操舵機構を有さない後輪1Rを有し、前輪操舵角をδ、前輪横滑り角をβf 、後輪横滑り角をβr 、重心点2での車速をV、前後方向速度をVX 、横方向速度をVY 、前後加速度をαX 、横加速度をαY 、ヨーレートをγ、横滑り角をβとし、重心点から前輪側車軸までの水平距離をLf 、重心点から後輪側車軸までの水平距離をLr としたときに、その運動方程式は、車両の質量をM、車両のヨー方向回転慣性モーメントをIZ 、前後輪のタイヤコーナリングパワーをCPf ,CPr とすると、下記(1)式及び(2)式で表すことができる。
【0022】
MVX (β′+γ)=2CPf βf +2CPr βr …………(1)
Z γ′=2Lf CPf βf −2Lf CPf βf …………(2)
そして、横滑り角が大きな状態の運動を正確に記述するために、図2の運動モデルから車両の前後加速度αX 横加速度αY と前後方向速度VX 及び横方向速度VY との関係は、下記(3)式及び(4)式で表すことができる。
【0023】
αX =VX ′+VY γ …………(3)
αY =VY ′−Vx γ …………(4)
ここで、VX ′は前後方向速度VX の微分値、VY ′は横方向速度の微分値である。
【0024】上記(3)は、車両が減速を行っている場合に、もし車両が重心点での横方向の速度成分とヨーレイトとが発生していれば、前後加速度センサの検出値と、前後方向加速度の微分値が一致しないことを示している。
【0025】また、上記(4)式は、車両に遠心力が働いている場合には、車両の横方向速度VY の微分値VY ′と横加速度センサの検出値とが一致しないことを示している。
【0026】これら(3)式及び(4)式から分かるように、車両にヨーレートが発生している状態では、前後方向及び横方向の車両の運動はヨーレートを介して密接に関係している。
【0027】また、前後方向速度VX が横方向速度VY に対して十分に大きくない状況においては、それを考えて車両の運動をモデル化する必要がある。そこで、上記(3)式及び(4)式に使われる変数のうち車両においてセンサによって直接測定が可能な物理量は、ヨーレートγ、横前後加速度α及び横方向加速度αY である。
【0028】また、車両の前後方向の速度VX は、車輪の速度等によって比較的容易に測定若しくは推定することが可能である。さらに、上記(3)式及び(4)式は、前後方向の加速度αX 及び横方向の加速度αy と前後方向速度VX 及び横方向速度VY との関係を表す式であるが、同時に前後方向速度VX 及び横方向速度VY を状態量とした下記(5)及び(6)式で表される運動方程式と考えることが可能となる。
【0029】
X ′=−VY γ+αX …………(5)
Y ′=VX γ+αY …………(6)
したがって、上記(5)式及び(6)式を直接使用して車両の運動を記述することが可能となる。
【0030】このため、上記(5)式及び(6)式をもとに前後方向速度VX を既知量としてのその誤差信号を用い、未知量である横方向速VY を推定するオブザーバを設定すれば、横滑り角が大きな領域においても横滑り角を高精度で求めることが可能となる。
【0031】ここで、前記(5)式及び(6)式は非線型な運動式となっているために下記(7)式及び(8)式に示すオブザーバを使用する。
V^X ′=-V^Y γ+αX −K11(V^X −VX )-K12sign(V^X −VX
…………(7)
V^Y ′= V^X γ+αY −K21(V^X −VX )-K22sign(V^X −VX
…………(8)
ここで、K11,K21は誤差信号に対して線型なフィードバックを与えるゲイン、K12,K22は誤差の符号についてのみフィードバックを与えるゲインとなっている。これらのゲインの値は実験結果などから決定することができる。
【0032】そして、上記(7)式及び(8)式で推定された前後方向速度V^X 及び横方向速度V^Y を用いて、下記(9)式に従って最終的な横滑り角β^を算出する。
【0033】
β^=tan-1(V^Y /V^X ) …………(9)
このように、上記第1の実施形態においては、車両状態量推定装置10で、ヨーレイトセンサ11で検出した実ヨーレートγ、前後加速度センサ12で検出した前後加速度αX ,横加速度センサ13で検出した横加速度αY 、車輪速センサ14で検出した車輪速VwFL〜VwRRに基づいて算出される前後方向速度VX に基づいて前記(7)式および(8)式のオブザーバ演算を行うことにより、横方向速度VY に推定前後方向速度V^X と実際に検出した前後方向速度VX との誤差信号をフィードバックして、推定横方向速度V^Y を算出し、これと推定前後方向速度V^X とに基づいて推定横滑り角β^を算出することができる。
【0034】このとき、前記(7)式および(8)式で推定前後方向速度V^X と実際に検出した前後方向速度VX との誤差信号をフィードバックするようにしているだけであり、非線型な運動を線型化してモデル化する必要がないので、低車速の急発進時などに車両の挙動が不安定になり車両に大きな横滑り角を発生してスピンしている状態においても、より正確な横滑り角の推定を行うことができる。
【0035】しかも、推定前後方向速度V^X と実際に検出した前後方向速度VX との誤差信号をフィードバックするので、推定値が初期値を誤って与えた等の何らかの理由で真値から離れた場合にも真値に収束することになり、前述した第2従来例のように積分処理を利用した方式におけるドリフトの発生を確実に防止することができる。
【0036】次に、本発明の第2の実施形態を図3について説明する。この第2の実施形態は、前後方向速度VX を車輪速度又はその推定値から求めるようにしたものである。
【0037】すなわち、前輪又は後輪駆動車では非駆動輪が存在するために、駆動時において非駆動輪の車輪速を使用して前後方向速度を算出することが可能である。一般に、低速時に大きな横滑り角が発生するのは、後輪駆動車などが急発進を行った場合が想定される。そのような状態では、前輪には駆動力等が発生していないために車輪速度は概略その位置でのタイヤの前後方向の車体速度と考えて差し支えない。このた、下記(10)式を用いることで、車輪の回転速度より車輪位置での前後方向速度を得ることができる。
【0038】
VwX =Vw・cosδ …………(10)
ここで、Vwは車輪の回転速度を並進速度に換算したものであり、δは舵角(後輪では零又は4輪操舵システム登載時にはその舵角となる)、VwX はVwの車体の前後方向の成分であり、車輪のスリップが零の状態では車輪位置での車体の前後方向速度となる。
【0039】また、前記第1の実施形態における(7)および(8)式のオブザーバ演算で使用されるのは、重心位置での前後方向速度であるが、これは下記(11)式を用いて重心位置での前後方向速度に変換することで算出することができる。
【0040】
X =VwX +(−1)i ・γ・tr/2 …………(11)
ここで、trはトレッド、iは車輪位置を表す添え字で奇数が左輪、偶数が右輪を夫々表す。
【0041】そして、前記(7)および(8)式のオブザーバ演算で必要な前後方向速度VX として上記(11)式を適用することにより、後輪駆動車が加速している場合の横滑り角β^を算出することができる。
【0042】一方、制動時においては、車輪速の推定を行うために、車両の四輪の内の一輪の制動力を意図的に下げてスリップを抑制することにより、概略スリップがないときと同じと見なせることになり、前後方向速度VwX を算出することが可能となる。また、全ての車輪において制動力によって車輪のスリップが発生している状態でも、例えば車輪の回転運動のモデルを使用し、車輪速度を他の手段によりって推定することによって前記(7)および(8)式のオブザーバ演算で必要な前後方向速度VX を算出することができる。ここで、タイヤの摩擦係数は摩擦係数推定手段によって与えられる。
【0043】このように加速状態および減速状態の何れの状態においても、車輪の回転を使用して、車輪位置若しくは重心位置での前後方向速度を求めることができる。具体的には、図3に示すように、車両状態量推定装置10に、前述したヨーレートセンサ11、前後加速度センサ12、横加速度センサ13及び車輪速センサ14に加えて、前輪1Fの操舵角を検出する操舵角センサ15で検出した操舵角δ及びマスタシリンダ圧を検出するマスタシリンダ圧センサ16で検出したマスタシリンダ圧MPが入力されると共に、制動力制御装置30からの制動力制御状態であるか否かを表す制動力制御状態信号SBが入力され、且つこの車両状態量推定装置10で、図4に示す状態量演算処理を実行することにより、車輪速度に基づいて推定横滑り角β^を算出する。
【0044】この状態量演算処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理によって実行され、先ずステップS1でマスタシリンダ圧センサ16で検出したマスタシリンダ圧MPを読込み、これが予め設定した比較的小さい1MPa程度の閾値MPS 以上であるか否かを判定することにより、運転者がブレーキペダルを踏込んだ制動状態であるか否かを判定し、MP<MPS であるときには運転者による制動状態でないと判断して、ステップS2に移行し、制動力制御装置30からの制動力制御状態信号SBを読込んで、これがオン状態であるか否かを判定することにより、ブレーキペダルの踏込以外のトラクション制御又はヨーモーメント抑制制御による制動力制御が行われているか否かを判定し、制動力制御が行われていないときにはステップS3に移行して、非駆動輪となる前輪の左右何れか一方の車輪速度VwFL,VwFRを車輪速度Vwとして設定してからステップS4に移行する。
【0045】このステップS4では、車輪速度Vwをもとに前記(10)式の演算を行って前後方向速度VwX を算出し、次いでステップS5に移行して、ヨーレートセンサ11で検出したヨーレートγ(n) を読込んでからステップS6に移行する。
【0046】このステップS6では、前後方向速度VwX 及びヨーレートγ(n) をもとに前記(11)式の演算を行って、重心位置での前後方向加速度VX (n) を算出する。
【0047】次いで、ステップS7に移行して、重心位置での前後方向速度VX (n) をもとに下記(12)式及び(13)式に従って車両の前後方向推定車体速度V^X (n) 及び横方向推定車体速度V^Y (n) を算出する。
【0048】
V^X (n) =V^X (n) +Δt(−A+αX (n) −B−C) ……(12)
V^Y (n) =V^Y (n) +Δt(D+αY (n) −E−F) ……(12)
A=V^Y (n-1) γ(n-1)B=K11(V^X (n-1) −VX (n) )
C=K12sign(V^X (n-1) −VX (n) )
D=V^X (n-1) γ(n-1)E=K21(V^X (n-1) −VX (n) )
F=K22sign(V^X (n-1) −VX (n) )
次いで、ステップS8に移行して、車両の前後方向推定車体速度V^X (n) 及び横方向推定車体速度V^Y (n) をもとに、前記(9)式に従って推定横滑り角β^(n) を算出し、次いでステップS9に移行して、算出した車両の前後方向推定車体速度V^X (n) 及び横方向推定車体速度V^Y (n) を前回値V^X (n-1)及びV^Y (n-1) として記憶してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0049】一方、ステップS1の判定結果が、運転者がブレーキペダルを踏込んでいる制動状態であるときには、ステップS10に移行して、例えばアンチロックブレーキ制御装置で使用する推定車体速度を参照して、これを車輪速度Vwとして設定してから前記ステップS4に移行する。
【0050】また、ステップS2の判定結果が、車両が制動力制御を行っているときには、ステップS11に移行して、非駆動輪に制動制御力を解除可能な車輪があるか否かを判定し、解除可能な車輪があるときにはステップS12に移行して、該当車輪の制御力を解除してから該当車輪の車輪速を車輪速度Vwとして設定してから前記ステップS4に移行し、解除可能な車輪がないときには前記ステップS10に移行する。
【0051】この図4の横滑り角演算処理において、ステップS1〜S6の処理前後方向速度算出手段に対応し、ステップS7の処理が速度推定手段に対応し、ステップS8の処理が横滑り角算出手段に対応している。
【0052】したがって、運転者がブレーキペダルを踏込んでおらず、トラクション制御やヨーレート制御等の制動力制御が行われていないときには、非駆動輪となる前輪1Fの左右輪の何れか一方の車輪速VwFL又はVwFRに基づいて重心位置における前後方向速度VX (n) を算出し、これと前回の推定前後方向速度V^X (n-1)及び推定横方向速度V^Y (n-1) と、前後加速度αX 及び横加速度αY に基づくオブザーバ演算によって推定前後方向速度V^X (n) 及び推定横方向速度V^Y(n) を算出し、これらに応じて推定横滑り角β^(n) を算出する。
【0053】一方、運転者が制動操作を行っていないが、トラクション制御やヨーレート制御が行われている場合には、トラクション制御では非駆動輪となる前輪では制動力制御されていないので、これらの何れかの車輪速が選択され、ヨーレート制御では内輪側又は外輪側の何れかの車輪が制動力制御されないので、この車輪が選択されて、これらに基づいて重心位置における前後方向速度VX (n) を算出する。
【0054】また、運転者が制動操作を行っている場合や制動操作を行っていないがトラクション制御やヨーレート制御によって全ての車輪が制動力制御されている場合には、例えばアンチロックブレーキ制御での推定車体速度に基づいて重心位置における前後方向速度を算出する。
【0055】この結果、車両の制動状態に応じてそのときの前後方向速度を的確に表す車輪速を選択して、これに基づいて重心位置おける前後方向速度を算出することができ、高精度で横滑り角を推定することができる。
【0056】なお、上記第2の実施形態においては、運転者の制動操作をマスタシリンダ圧センサ16でマスタシリンダ圧を検出することにより検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ブレーキペダルの踏込み時にオンとなるブレーキランプスイッチのスイッチ信号等によって検出するようにしてもよい。
【0057】次に、本発明の第3の実施形態を図5について説明する。この第3の実施形態は、前述した第1及び第2の実施形態においては、推定横滑り角を算出する際に、操舵角δを使用していないので、低車速域での前後方向加速度αX に対して横方向加速度αY が大きい状態では高精度で横滑り角を推定することができるが、それ以外の高車速域では、推定精度が低下することになるため、高車速域では他の推定方法に切換えることにより、全ての車速域で高精度の横滑り角推定を行うことができるようにしたものである。
【0058】すなわち、車両状態量推定装置10で、図5に示す推定方法切換処理を実行する。この推定方法切換処理は、所定時間(例えば10msec)毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS21で、前回使用した推定方法が前述した第1従来例と同様の運動モデルを使用した高速用横滑り角推定方法であったか否かを判定し、高速用横滑り角推定方法であったときには、ステップS22に移行して、駆動輪としての後輪1Rの左右輪のうちの高い車輪速VwRHから非駆動輪としての前輪1Fの左右輪のうちの高い車輪速VwFHを減算した値(VwRH−VwFH)が予め設定した設定値ΔVw1 より大きく且つ非駆動輪としての前輪1Fの高い車輪速VwFHが予め設定した設定車速VwS1より小さいか否かを判定し、(VwRH−VwFH)>ΔVw1 且つVwFH<VwS1であるときには、低車速域での駆動輪スピン状態であると判断して、ステップS23に移行する。
【0059】このステップS23では、前述した第1の実施形態又は第2の実施形態による前後方向速度VX (n) と推定前後方向速度V^X (n) との誤差信号をフィードバックすることにより、推定前後方向速度V^X (n) 及び推定横方向速度V^Y (n) を算出し、これらから推定横滑り角β^(n) を算出する横滑り角推定方法を使用する低速用横滑り角推定方法によって推定横滑り角β^(n) を算出してからステップS24に移行する。
【0060】このステップS24では、後述する高車速用横滑り角推定方法で推定ヨーレートγ^(n) を使用するので、ヨーレートセンサ11で検出した実ヨーレートγ(n) を推定ヨーレートγ^(n) として記憶してからステップS25に移行して、今回の推定結果(γ(n) 、β(n) 、VX (n) 、VY (n) )を前回値として記憶すると共に、使用した横滑り推定方法に応じた種別を表すフラグFを設定してからタイマ割込処理を終了して所定のメインプログラムに復帰する。
【0061】一方、ステップS22の判定結果が設定条件を満足しないときには、ステップS26に移行して、高速用横滑り角推定方法によって推定横滑り角β^(n) を算出し、次いでステップS27に移行して、ステップS23での低速用横滑り角推定方法で使用する推定前後方向速度V^X として車速V(n) を設定すると共に、下記(13)式に従って推定横方向速度V^Y (n) を算出してから前記ステップS25に移行する。
【0062】
V^X (n) =V(n) *tan(β^(n) ) …………(13)
また、ステップS21の判定結果が前回の推定方法が低速用横滑り角推定方法であるときには、ステップS28に移行して、前記ステップS22と同様に駆動輪としての後輪1Rの左右輪のうちの高い車輪速VwRHから非駆動輪としての前輪1Fの左右輪のうちの高い車輪速VwFHを減算した値(VwRH−VwFH)が予め設定した前記設定値ΔVw1 より大きい設定値ΔVw2 より大きく且つ非駆動輪としての前輪1Fの高い車輪速VwFHが予め設定した前記設定車速VwS1よ大きい設定車速VwS2より大きいか否かを判定し、(VwRH−VwFH)>ΔVw1且つVwFH>VwS2であるときには、高車速域であるか駆動輪にホイールスピンを生じていないものと判断して前記ステップS26に移行し、そうでないときには駆動輪にホイールスピンを生じているものと判断して前記ステップS23に移行する。
【0063】また、ステップS26での高速用横滑り角推定方法は、前述した図2の2輪運動モデルから前輪のタイヤの横滑り角βf 及び後輪のタイヤの横滑り角βr は、下記(14)式及び(15)式で表すことができる。
【0064】
βf =tan-1{(VY −Lf γ)/VX }+δ …………(14)
βr =tan-1{(VY −Lr γ)/VX } …………(15)
さらに、車速VX がある程度大きい状態では線形化が可能であり、下記(16)式で表される車体横滑り角βと車体前後方向速度VX 及び横方向速度VY との関係を用い、前記(14)式及び(15)式に代えて下記(17)式及び(18)式の関係が得られ、以上より最終的に下記(19)式及び(20)式の線形2輪モデルが得られる。
【0065】
β=−VY /VX …………(16)
βf =−β−(Lf γ/VX )+δ …………(17)
βr =−β+(Lr γ/VX ) …………(18)
MVX (β′+γ)=2CPf {−β−(Lf γ/VX )+δ}
+2CPr {−β+(Lr γ/VX )}……(19)
Z γ′=2Lf CPf {−β−(Lf γ/VX )+δ}
−2Lr CPr {−β+(Lr γ/VX )} ……(20)
この線形2輪モデルは制御設計を行うために下記(21)〜(28)の状態空間で表現できる。
【0066】
【数1】

【0067】そして、上記(21)式及び(22)式の車両モデルに対し、オブザーバは下記(30)式ように設計される。
x^′=Ax^+Bu+Ly〜 …………(30)
ここで、A,B,C,Dは車両の運動を計算するための行列である。x^は、推定された状態量、Lは状態推定量の補正量を決定するゲインである。ここで、誤差信号y〜は、下記(31)式によって求められ、推定状態量x^は下記(32)式で求められる。
【0068】
y〜=y−(Cx^+Du) …………(31)
【0069】
【数2】

【0070】したがって、図6におけるステップS31で前記(25)式〜(28)式の行列A〜Dを計算し、次いでステップS32に移行して、前記(29)式及び(30)式を使用して推定ヨーレートγ^及び推定横滑り量β^を算出し、次いでステップS33に移行して、算出した推定ヨーレートγ^及び推定横滑り量β^を前回値として記憶してから処理を終了する。
【0071】この第3の実施形態によると、車両の発進時等の低車速域で駆動輪となる後輪にホイールスピンを生じる状態となると、前回の処理時に高速用横滑り角推定方法が選択されているものとしても、ステップS22からステップS23に移行して、第1又は第2の実施形態による前後方向速度VX (n) と推定前後方向速度V^X (n) との誤差信号をフィードバックすることにより、推定前後方向速度V^X (n) 及び推定横方向速度V^Y (n) を算出し、これらから推定横滑り角β^(n) を算出する横滑り角推定方法を使用する低速用横滑り角推定方法によって推定横滑り角β^(n) を算出するので、高精度で推定横滑り角β^を算出することができる。
【0072】この状態から、駆動輪としての後輪のホイールスピンが収まるか、車速が速くなると、ステップS28での判定条件を満足しなくなると、ステップS26に移行して、図8に示す高速用横滑り角推定処理が実行されるので、高車速域で高精度の横滑り角推定を行うことができる。
【0073】なお、上記第3の実施形態においては、高速用横滑り推定方法として、(25)式〜(31)式を使用して推定ヨーレートγ^及び推定横滑り角β^を算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、前述した第1従来例や第2従来例のような他の横滑り角推定方法を適用することができる。




 

 


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