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発明の名称 生体組織中吸光物質濃度測定装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000−83933(P2000−83933A)
公開日 平成12年3月28日(2000.3.28)
出願番号 特願平11−65489
出願日 平成11年3月11日(1999.3.11)
代理人 【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
発明者 青柳 卓雄 / 布施 政好 / 謝 承泰 / 金本 理夫
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 生体組織に複数波長の光を照射して、その透過光または反射光を受光して、その光強度を電気信号に変換して、これに基づいて生体組織中の複数の吸光物質の濃度比を計算する装置において、組織上の照射光の散乱度が十分に大であるように構成された光照射部と、無吸収減光度は波長によらず等しいとして、複数の吸光物質の濃度比を計算する濃度比計算部と、を具備することを特徴とする生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項2】 前記濃度比計算部は、前記各波長についての血液以外の組織に関する項を等しいとする理論式を用いて複数の吸光物質の濃度比を計算することを特徴とする請求項1に記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項3】 前記濃度比計算部は、透過光強度の脈動分に基づいて生体組織の減光度の変動分を求め、これに基づいて複数の吸光物質の濃度比を計算することを特徴とする請求項1または2に記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項4】 前記濃度比計算部は、前記光照射部により照射された光の生体組織の透過光または反射光の脈動からn個の波長について減光度変化分ΔA1, ΔA2, …ΔAnを求める減光度変化分検出手段と、この減光度変化分検出手段により求められたn個の減光度変化分ΔA1, ΔA2,…ΔAnから予め決定された2つの組み合わせの減光度変化分(ΔAi, ΔAj)のm組についてそれぞれにその比Φijを求める変化分比検出手段と、前記減光度変化分は血液の減光度変化分と血液以外の組織の減光度変化分との差であるとして前記各波長についての血液以外の組織に関する項が等しいとするm個の連立方程式と、前記変化分比検出手段が求めたm個のΦijと、に基づいて酸素飽和度またはその他の血中吸光物質の濃度比を演算する演算部と、を具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項5】 前記光照射部は、光散乱板と、この光散乱板を介して光を生体組織に照射する光源とを具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項6】 前記光照射部は、反射面を有する反射板と、光散乱板と、前記反射面および前記光散乱板を介して光を生体組織に照射する光源とを具備することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項7】 前記生体組織上の光照射範囲に対して、前記生体組織上における透過光または反射光の受光範囲を十分に大きく、または十分に小さく、したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項8】 前記生体組織上の実質的な光照射範囲の面積と、前記生体組織上の実質的な受光範囲の面積とは、1対2以上の差または2対1以上の差があることを特徴とする請求項7に記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
【請求項9】 光散乱板は白色のアクリル板であることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の生体組織中吸光物質濃度測定装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、生体組織の透過光または反射光の光強度に基づいて、組織中の複数の吸光物質の濃度比を測定する生体組織中吸光物質濃度の測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の測定技術の例として、パルスオキシメトリがある。それは生体組織の透過光の脈動を利用して動脈血の酸素飽和度を無侵襲的に測定するものである。パルスオキシメトリは従来、2波長の光を生体組織に照射してそれぞれの透過光L1,L2 の脈動を求めこれに基づいて生体組織の減光度の変化分ΔA1, ΔA2を求め、更にこれに基づいて血液の酸素飽和度SaO2を計算する装置である。ここで、ΔA1, ΔA2からSaO2を求めるには、まずΦ12= ΔA1/ΔA2を求める必要がある。そして、Φ12をSaO2に換算するには、人体実測により得られるΦ12とSaO2の関係に基づいて行っていた。この原理は動脈血中のあらゆる吸光物質の測定にも応用できるものであるので、一般的にパルスフォトメトリと呼ばれ、すでに色素希釈曲線の測定に用いられている。
【0003】この種の測定技術としてはまた、近赤外分光測定法(NIRS)がある。それは生体組織の透過光に基づいて組織中の動脈血と静脈血とをあわせた平均的な酸素飽和度を無侵襲的に測定する。これはまた、血液以外の組織中の吸光物質、例えばチトクロムやミオグロビンについての測定にも応用されている。近赤外分光測定法においては、各波長の光強度の測定値を、光散乱に関する理論式に代入することによって、目的とする値を得ている。この理論式は今日において各種のものが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような生体組織中の複数の吸光物質の濃度比の測定、あるいは血中の複数の吸光物質の濃度比の測定、を無侵襲に行う場合には多くの誤差要因がある。例えば、パルスオキシメトリにおいては、従来2波長が用いられているが、その測定対象であるSaO2 の他にも、測定の都度異なるものとして生体および測定系に起因する多くの要因があるので、これによってSaO2 の測定値は誤差を含むことになる。
【0005】それらの影響を排除して精度の良い測定を行うには、用いる光波長を増やし、それに伴って計算式の数を増やして、それらを連立方程式として解くことが必要である。また、血液中に他の吸光物質が含まれている場合には、それによる誤差を防ぐため、およびその吸光物質の濃度の測定のために、より多くの波長を用いることが必要になる。このための計算式は理論的に妥当でなくてはならないし、また実用的観点から簡単なものであることが好ましい。
【0006】ところで、生体は、その組織もまたその主要な吸光物質である血液も、光散乱性である。そして、光散乱性試料の光学的測定には多くの要因が関与している。従って、簡単な光学系と簡単な計算式とによって生体組織中の吸光物質を正しく測定することは困難である。例えば、光散乱は短い波長において強く生じるから、生体組織に入射した平行光が組織内を進行するにおいて、その散乱度を次第に増すと共に、その光路は波長によって異なったものになる。このことを考慮しなくては高い測定精度は得られないし、そのためには計算式は複雑なものとなる。
【0007】また、近赤外分光測定法(NIRS)においては、各種の手法が行われているが、今日ではまだ十分に信頼できるものが実現していない。これも、生体が光散乱性であることによる問題の難しさを示すものである。
【0008】本発明の目的は、生体組織に装着する光学的測定系の構造について工夫をすることによって、光散乱のある測定系が比較的簡単な理論式で表されるようにし、これによって計算を簡単にし、かつ精度の良いものにすることである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の原理を説明する。空は光吸収物質を持たないが条件によって青く見えたり赤く見えたりする。その原因は空気中に極めて稀薄に存在する微粒子によって波長依存性のある光散乱が生じているからである。一方、雲が白い原因は光吸収をしない微粒子が密に存在して光が多重散乱して、光散乱に波長依存性が無くなっているからである。このように、散乱に波長依存性がないことは光散乱性試料の内部の光吸収物質を測定する上で好都合である。この様な理由で、本発明では測定対象である生体組織に散乱光を照射することを前提としている。
【0010】多重散乱の場における減光度の理論式を導いたのは、シャスター(A.Schuster)である。この理論の概要を次に述べる(参考文献、Arther Schuster:Radiationthrough a foggy atmosphere. Astrophysical Journal 21(1),1-22(1905))。
【0011】シャスター理論が対象とする試料は、散乱が十分に強いことによって散乱に波長依存性がない、というものである。また、シャスター理論におけるモデルは、入射光は散乱度の十分大きい散乱光であり、十分に広い面に均一に入射していることを前提としている。
【0012】これによれば、次の式が成立する。
Iin/Iout=Pexp(QD)-(P-1)exp(-QD)ただし、Q={K(K+2B) }1/2 、P= (1+a)2 /4a 、a={K/(K+2B)}1/2 ,Iin=入射光強度、Iout= 透過光強度、K=吸収係数、B=散乱係数、である。
【0013】吸光が十分に大であり、かつQDが十分に大ならば、Iin/Iout=Pexp(QD) 、従って減光度A は、A=ln(Iin/Iout)=lnP+QD である。NIRSの場合はこの式が基になる。またパルスフォトメトリでは次の様になる。試料の厚みD がΔD だけ変化した場合の減光度変化ΔA は、ΔA=Q ・ΔD={K(K+2B) }1/2 ・ΔD である。このように、減光度と吸光度との関係式も、また、減光度変化分と吸光度との関係式も、ともに光波長に依存するものは吸収係数のみであり、これは既知の値とすることができるので、実用上で好都合である。
【0014】また、もし吸光がないならば、Iin/Iout=1+BD 、従って減光度は、A=ln(Iin/Iout)=ln(1+BD) である。厚みD がΔD だけ変化した場合の減光度変化は、 ΔA=Δln(Iin/Iout)=ln {1+B(D+ΔD)}- ln(1+BD)= ln[{1+B(D+ΔD)}/(1+BD)]=ln[ 1+BΔD /(1+BD)]
厚みが十分大ならばΔA=ln1=0 となる。この様に、吸光がない場合の減光度の光波長特性は平坦なものになる。
【0015】従って、シャスター理論に基づいて散乱性試料中の吸光物質の測定を行うには、測定系は次の条件を満足するものであることが必要である。
(1)無吸収減光は波長依存性がないこと。
(2)吸収減光と吸収係数との関係は上記の理論式に合致すること。
【0016】上記条件(1)を考える。光散乱性試料に平行光が入射した場合に、光が試料中を進行するにつれて光の散乱度は増す。従って平行光が十分な散乱光になるまでにはある厚みを通過することが必要であり、その途中における光路は波長依存性である。従って散乱の波長依存性を完全になくするためには、測定対象の表面上における入射光の散乱度を十分に大にすることが必要である。
【0017】上記条件(1)を満足させるための前記の方法の有効性を示すための実験的方法について述べる。
【0018】分光光度計に積分球を組み込んで、試料として牛乳を厚み1mm,2mm,3mm,4mm,5mm のセルに入れて測定する。セルの高さおよび幅は6mm とした。厚み増加分ΔD=1mm毎の減光度増加分ΔAを求め、これから減光率Z=ΔA/ΔDを求めた。Z は図10に示すようになる。すなわち、試料の厚みが大になって試料内部の光散乱が強くなるに従ってZ が減少すると共に、その波長依存性が減少する。なお、この測定で対象とした牛乳は3種類であって、脂肪%が、0%4.2%18% のものである。測定波長は図示のように、600nm,700nm,800nm であるが、このような波長を選んだ理由は、より短波長では牛乳中の脂肪分の吸光があるからであり、またより長波長では水の吸光が大きいからである。
【0019】上記条件(2)を考える。吸収減光においては、散乱によって吸光物質中の光路長が増加し、これのせいで吸光が増加する。この増加率は前記の式で示されるように、散乱係数が一定として、吸光係数が大であるほど小であって、吸光と減光との関係は曲線を示す。もし散乱がないならばB=0 であって、光路長の増加はなく、吸光と減光との関係は直線を示し、その傾斜は散乱がある場合に比して緩いものとなる。散乱が大になるにつれて光路長の増加が生じるとともに、傾斜と湾曲は強くなり、ある極限の曲線に漸近する。この極限が前記の吸収減光の理論式の示すものであって、そこにおいては吸光と減光とは1対1に対応する。しかし従来の測定系では、前記の2条件が満たされていなかったので、シャスター理論による測定の精度はよくなかった。
【0020】前記の条件(2)を満足させるためになすべきことは、入射光に関する前述の条件を満たすことのほかに、生体組織上の光照射範囲の面積を、生体組織上の受光範囲の面積に対して十分に大にすることである。ただし、この場合に光照射範囲内の光強度はほぼ均一であることを前提としている。このようにすれば、試料中を十分にかつ均一に散乱した光を測定することになるので、シャスター理論の前提が満たされ、正しい測定ができる。
【0021】条件(2)を満足させる別の方法としては、前記とは逆に、生体組織上の光照射範囲の面積に対して、生体組織上の受光範囲の面積を十分に大にしてもよい。その理由を模式図を用いて説明する。図5(a),(b)はいずれも、測定対象に密着して入射窓および透過窓を設定し、これに光を入射した場合の光路を模式的に示す。図5(a)は入射窓径が透過窓径より十分に大の場合であり、図5(b)は透過窓径が入射窓径より十分に大の場合である。(a)において、各入射光線は対象の内部を通過する途中で広がる。その一部分づつを集めたものが受光される。(b)においては、入射光線が対象の内部を通過する途中で広がって、そのすべてが受光される。(b)において受光される光線の光路は、(a)において受光される光線の光路と、方向は逆であるが同じ形のものである。従って、(b)の光学系で得られる測定結果は、(a)の光学系で得られる測定結果と同じはずである。図では(a)の透過窓および(b)の入射窓を極めて小に描いているが、これはわかりやすいためであって、それぞれがもっと大であっても、前記の条件が満たされている限りは、上記の結論が成立する。なお、実用上では(a)より(b)の方が受光エネルギーが大になるので有利である。
【0022】次に、条件(2)を満足させるための前記の方法の有効性を示すための実験的方法について述べる。この実験に用いた装置は、分光光度計に積分球が組込まれたものである。図6にその要部の構成を示す。分光光度計のモノクロメータから出た単一の波長の光は試料に照射され、それの透過光が積分球26に入り、積分球内で均一に分布し、積分球内部の光強度が測定される。この光線の中心的経路が、図の中央を通る直線である。生体組織に相当するものは図の試料24である。これは、乳白色アクリルの1mm板を重ねたものである。この物質の散乱減光特性は生体組織に近い。試料の入射側の面に散乱板23を密着させた。これにより試料の入射光を散乱光にする。試料の透過側は、透過窓25を密着させ、これによって試料の所定の面積内の透過光だけが積分球26に入射して測定されるようにした。この積分球26の窓は透過窓25より十分に大にしている。光の照射には、モノクロメータからの光を凹レンズ27で所要の大きさにして、これと散乱板23との間に置いた入射窓22で限定された範囲を照射する。
【0023】試料の枚数を1枚増加すればこれは試料の厚みの1mm増加でありこれをΔDとする。それによる透過光の減衰に基づいて、厚み増加分の減光度ΔA を計算する。両者の比が減光率Z=ΔA/ΔD である。これをモノクロメータの波長を変化させて、400-900nm について測定した。
【0024】試料が乳白色アクリルである場合には、この波長域では光吸収がないから得られるものは無吸収減光である。これは散乱板がない場合には左上がりである。その原因は光が短い波長において散乱しやすいからである。散乱板があると左上がりが弱くなる。散乱板が1mm厚みの白色アクリル板である場合には減光率の波長特性はほぼ平坦になる。これは入射窓、透過窓、などの大きさによらない。なお、光を散乱板に通過させると、散乱板による光減衰が生じるが、その一方で、入射光が散乱光である方が試料の減光度は低くなるから、散乱板の減光度分だけ全体の減光度が増すのではない。
【0025】試料とする乳白色アクリル1mm板のそれぞれに透明な色フィルムを張り付けた場合には、光吸収は波長によって異なるから、これによって光吸収と吸収減光との関係を求めることができる。この場合に、散乱板は白色アクリル1mm板を用いることにより、試料の入射光を十分な散乱光にした。光吸収を横軸にとり、吸収減光を縦軸にとると、図7〜9のような関係が描ける。dA12、dA23は、それぞれ、試料を1枚から2枚に増加した場合、および2枚から3枚に増加した場合、の減光度の増加分を示す。なお、分光器の雑音が少し重畳している。
【0026】図7は、入射窓4mmφ、透過窓6mmφ、(面積比2.2)の場合である。吸光の変化に対する減光の変化は、dA12とdA23とにおいてほぼ等しいが、dA23の方がわずかに、立上りが急峻かつ湾曲が強くて、2枚目と3枚目との測定値が一致しないことがわかる。図8は、入射窓12mmφ、透過窓6mmφ、(面積比4)の場合であって、dA12、dA23、は完全に一致している。図9は、入射窓6mmφ、透過窓12mmφ、(面積比4)の場合であって、これもdA12、dA23、は完全に一致している。
【0027】このようにして、生体組織の測定においてシャスター理論の前提が満たされるためには、生体組織の照射面積を生体組織の受光面積の少なくとも2倍以上にするか、または生体組織の受光面積を生体組織の照射面積の少なくとも2倍以上にすることが必要であることがわかる。
【0028】そこで請求項1の発明は、生体組織に複数波長の光を照射して、その透過光または反射光を受光して、その光強度を電気信号に変換して、これに基づいて生体組織中の複数の吸光物質の濃度比を計算する装置において、組織上の照射光の散乱度が十分に大であるように構成された光照射部と、無吸収減光度は波長によらず等しいとして、複数の吸光物質の濃度比を計算する濃度比計算部と、を具備することを特徴とする。
【0029】請求項2の発明は、請求項1に記載の装置において、前記濃度比計算部は、前記各波長についての血液以外の組織に関する項を等しいとする理論式を用いて複数の吸光物質の濃度比を計算することを特徴とする。
【0030】請求項3の発明は、請求項1または2に記載の装置において、前記濃度比計算部は、透過光強度の脈動分に基づいて生体組織の減光度の変動分を求め、これに基づいて複数の吸光物質の濃度比を計算することを特徴とする。
【0031】請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の装置において、前記濃度比計算部は、前記光照射部により照射された光の生体組織の透過光または反射光の脈動からn個の波長について減光度変化分ΔA1, ΔA2, …ΔAnを求める減光度変化分検出手段と、この減光度変化分検出手段により求められたn個の減光度変化分ΔA1, ΔA2, …ΔAnから予め決定された2つの組み合わせの減光度変化分(ΔAi, ΔAj)のm組についてそれぞれにその比Φijを求める変化分比検出手段と、前記減光度変化分は血液の減光度変化分と血液以外の組織の減光度変化分との差であるとして前記各波長についての血液以外の組織に関する項が等しいとするm個の連立方程式と、前記変化分比検出手段が求めたm個のΦijと、に基づいて酸素飽和度またはその他の血中吸光物質の濃度比を演算する演算部と、を具備することを特徴とする。
【0032】請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の装置において、前記光照射部は、光散乱板と、この光散乱板を介して光を生体組織に照射する光源とを具備することを特徴とする。
【0033】請求項6の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の装置において、前記光照射部は、反射面を有する反射板と、光散乱板と、前記反射面および前記光散乱板を介して光を生体組織に照射する光源とを具備することを特徴とする。
【0034】請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の装置において、前記生体組織上の光照射範囲に対して、前記生体組織上における透過光または反射光の受光範囲を十分に大きく、または十分に小さく、したことを特徴とする。
【0035】請求項8の発明は、請求項7に記載の装置において、前記生体組織上の実質的な光照射範囲の面積と、前記生体組織上の実質的な受光範囲の面積とは、1対2以上の差または2対1以上の差があることを特徴とする。
【0036】請求項9の発明は、請求項5乃至8のいずれかに記載の装置において、光散乱板は白色のアクリル板であることを特徴とする。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の第1の実施の形態のパルスオキシメータを説明する。まず、本実施の形態の原理を説明する。血液の厚み変化ΔDbによる減光度の変化分ΔAbの理論式は、シャスター理論に基づいて次のように書くことができる。その詳細は次の論文に述べられている:青柳卓雄;血液減光の理論的実験的検討;医用電子と生体工学 30(1),pp1-7(1992)。
【0038】
ΔAb={Eh(Eh+F) }1/2 *Hb ΔDb (1) ここで Eh=SEo+(1-S)Er (2) Eoは酸化ヘモグロビンの吸光係数、Hbはヘモグロビン濃度、ΔDbは血液の実質的な厚さの変化分、F は血液の散乱係数である。S は動脈血の酸素飽和度SaO2、Eoは酸化ヘモグロビンの吸光係数、Erは還元ヘモグロビンの吸光係数である。
【0039】血液を除く組織を純組織と呼ぶことにする。純組織中の光吸収物質は、その一つは水であるが、これは光波長を適当に選べば吸光は十分に小とみなせる。その他の吸光物質は血液の光吸収に比べれば十分に小とみなせる。従って純組織においては吸光はないものと近似する。純組織の厚み変化ΔDtによる減光度の変化分ΔAtは次式で表される。
ΔAt=Zt*ΔDt (3) ここで、Ztは組織の減光率である。生体組織中には動脈血があり、それは脈動しているから、組織内の血液の実質的な厚みは周期的に変化している。またこれの影響で純組織の実質的な厚みも周期的に変動しており、これは多くの場合に血液とは逆方向である。従って、血液を含む組織の全体的な減光度の変化ΔA は、血液の減光度変化ΔAbと純組織の減光度変化ΔAtとの差となる。従って次のように書ける。
ΔA=ΔAb- ΔAt ={Eh(Eh+F) } 1/2 *Hb ΔDb- Zt* ΔDt (4) 【0040】ここで、3つの波長λ1 、λ2 、λ3 についての生体組織の減光度の変化分の相互の比を求める。波長λ1 、λ2 では、その比は次のように表わされる。
Φ12= ΔA1/ΔA2 = [{Eh1(Eh1+F) }1/2 *Hb ΔDb- Zt1*ΔDt] /[{Eh2(Eh2+F) }1/2 *Hb ΔDb- Zt2*ΔDt] (5) ここで、Ex1=(Zt1* ΔDt)/(Hb*ΔDb) (6) Ex2=(Zt2* ΔDt)/(Hb*ΔDb) (7) とおくと、(5) 式は次のようになる。
Φ12= ΔA1/ΔA2 = [{Eh1(Eh1+F) }1/2 - Ex1]/[{Eh2(Eh2+F) } 1/2 - Ex2] (8) 同様に、波長λ2 、λ3 では、その比は次のように表わされる。
Φ32= ΔA3/ΔA2 = [{Eh3(Eh3+F) }1/2 - Ex3]/[{Eh2(Eh2+F) } 1/2 - Ex2] (9) 【0041】上記の式におけるZt1,Zt2,Zt3,はいずれも無吸収減光である。本発明の測定系によれば無吸収減光は波長によらない。従って、Ex1,Ex2,Ex3,は等しいから、これらをExを書くことにする。従って、(8) 式、(9) 式は次のようになる。
Φ12= ΔA1/ΔA2 = [{Eh1(Eh1+F) }1/2 - Ex]/[{Eh2(Eh2+F) }1/2 - Ex] (10) Φ32= ΔA3/ΔA2 = [{Eh3(Eh3+F) }1/2 - Ex]/[{Eh2(Eh2+F) }1/2 - Ex] (11) 但し、Ehi=SEoi+(1-S)Eri (添字i=1,2,3 は波長λ1 、λ2 、λ3 にそれぞれ対応するものであることを示す) (12)【0042】この連立方程式において、Φ12、Φ32は、減光度の変化分ΔA1, ΔA2, ΔA3を測定すれば、求めることができ、Eoi,Eri,F は既知とすることができるから未知数はS,Exの2つとなり、この連立方程式を解けばS,Exを求めることができる。
【0043】以上の原理により構成された本発明のパルスオキシメータの全体構成を図1に示す。この装置は、プローブ1と装置本体2とから成る。
【0044】プローブ1は、散乱光を発生する光照射部3と、受光部4とから成る。光照射部3は、LED から成る光源5と、この光源5の光を散乱させる光散乱板6を備えている。図2に光照射部3の具体的な構成を示す。この図に示すように、光源5の3個のLED は、ハウジング5Aの開口部に対向する内壁面に取り付けられており、その開口部に光散乱板6が嵌合している。3個のLED は、それぞれ異なる波長λ1,λ2,λ3 の光を発生するものである。光散乱板6としては厚さ1mmの白色のアクリル板が好適である。図1に示すように光照射部3と受光部4は対向する状態に配置されている。ここで入射面は受光面よりも十分に大とされており、少なくとも両者の径は2対1以上に開きがあるように構成されている。またプローブ1は、これら光照射部3と受光部4を生体組織(例えば指先や耳朶)に密着させるように保持する保持手段(図示せず)を備えている。一方、受光部4は、フォトダイオードから成り、光照射部3からの光を受け取り、電気信号に変換するものである。
【0045】装置本体2は、アナログ処理部7、A/D変換部8、光源駆動部9およびデジタル処理部10を備えている。アナログ処理部7は、受光部4の出力信号のノイズ除去や増幅を行なう回路であり、A/D変換部8は、アナログ処理部7の出力信号をデジタル信号に変換する回路である。光源駆動部9は、光源5のLED を駆動する回路である。デジタル処理部10は、コンピュータにより構成され、演算制御を行なうCPU(中央処理装置)と、処理プログラムと必要なデータが書き込まれるメモリと、外部との信号の授受を行なうための入出力インタフェースを備えている。このデジタル処理部10は機能ブロックで示すと図1のようになり、A/D変換部8の出力からΦを計算するΦ計算部11、このΦ計算部11が求めたΦに基づいて動脈血の酸素飽和度SaO2を求める変換部12および本装置全体を制御する制御部13から成る。この様にして得られたSaO2の値は通常はSpO2と表記される。
【0046】次にこのように構成された本装置の動作を説明する。図3はデジタル処理部10が行なう処理のフローチャートである。この図を参照して説明する。
【0047】本装置が動作開始となると、光照射部3は散乱光を生体組織に照射する。そしてデジタル処理部10は、A/D変換部8からのデータの取り込みを開始する(ステップ101)。ここで得られるのは3波長λ1,λ2,λ3 の光による生体組織の透過光データである。
【0048】次に、3波長それぞれの減光度の変化分ΔA を求める(ステップ102)。生体組織の透過光は脈動しており、その最大値をL,その最小値をL-ΔL とすると、減光度の変化分ΔA1、ΔA2、ΔA3は次式により得られる。
ΔA1=Log[L1/(L1-ΔL1)] (13) ΔA2=Log[L2/(L2-ΔL2)] (14) ΔA3=Log[L3/(L3-ΔL3)] (15)【0049】次に、Φを求める(ステップ103)。すなわち、前のステップ102で求めたΔA1、ΔA2、ΔA3を、次式に代入してΦ12、Φ32を求める。
Φ12= ΔA1/ΔA2 (16) Φ32= ΔA3/ΔA2 (17)【0050】次に、求めたΦを(10)式、(11)式の連立方程式に代入し、未知数S,Exを求める(ステップ104)。このステップで求めたS を酸素飽和度SpO2として記録し、出力する(ステップ105)。
【0051】図11は、光照射部の他の例を示す図である。この例では、ハウジング5aの内側を反射面として光源(LED )5からの光を光散乱板6に均等にふり分けるようにしたものである。図12は、光照射部の更に他の例を示す図である。この例ではハウジング5bの内側の湾曲面に反射面21を設けて光源(LED )5からの光を光散乱板6に均等にふり分けるようにしたものである。いずれの例においてもこのような構成としたのは生体組織に対し、十分に広い範囲に十分に散乱した光線を照射するためである。
【0052】また、上記の装置では光照射部に対し受光部を対向配置させ、透過光を受ける構成としたが、反射光を受ける構成としても同様の作用効果が得られる。
【0053】また本実施の形態では、入射面を受光面に対し十分大きくしたが、この逆であっても良い。この場合のプローブの例を図4に示す。この図に示すように、光照射部3のハウジング5cの開口部には光散乱板6が嵌合している。LEDからなる光源5の光はこの光散乱板6で散乱光にされて生体組織に照射される。ハウジングの内壁は例えば塗料で白色に塗られており光反射散乱面が形成されている。一方、受光部4はフォトダイオード41と、これを収容するハウジング42を備えている。ハウジング42には開口面側に至るに従って径大となる凹部43が形成されており、フォトダイオード41は凹部43の最も奥に配置されている。凹部43内面も例えば塗料で白色に塗られており光反射散乱面が形成されている。このプローブによれば受光面は入射面よりも十分に大きい。その面積の比は少なくとも2倍以上としている。この例によっても入射面が受光面に対し十分大きい場合と同様の効果を有する。
【0054】以上はパルスオキシメータの例であり、3波長の光を用いて2つの未知数S 、Exを求めた例である。
【0055】次に、本発明の第2の実施の形態である色素希釈曲線の測定装置を説明する。この場合も上記の例と同様の構成であれば色素希釈曲線を求めることができる。但し、この場合、血中吸光物質として色素が加わるので未知数が酸素飽和度S 、血中色素濃度Cd、組織項Exの3つであり、連立方程式は3つ必要になる。このため、光照射部は4波長の光を生体組織に照射するようにし、3つのΦすなわち、Φ12、Φ32、Φ42を測定し、次の連立方程式に求めたΦ12、Φ32、Φ42を代入してS 、Cd、Exを求める。
Φ12= [{(Eh1+Ed1Cd/Hb)(Eh1+Ed1Cd/Hb+F) }1/2 - Ex] /[{(Eh2+Ed2Cd/Hb)(Eh2+Ed2Cd/Hb+F) } 1/2 - Ex] (18) Φ32= [{(Eh3+Ed3Cd/Hb)(Eh3+Ed3Cd/Hb+F) }1/2 - Ex] /[{(Eh2+Ed2Cd/Hb)(Eh2+Ed2Cd/Hb+F) } 1/2 - Ex] (19) Φ42= [{(Eh4+Ed4Cd/Hb)(Eh4+Ed4Cd/Hb+F) }1/2 - Ex] /[{(Eh2+Ed2Cd/Hb)(Eh2+Ed2Cd/Hb+F) } 1/2 - Ex] (20)ここでEdは色素の吸光係数、Cdは血中色素濃度、Hbはヘモグロビン濃度を示している。これによって、血中色素濃度Cdを連続測定すれば色素希釈曲線が求められる。同様にして他の血中吸光物質COHb等の測定も行うことができる。
【0056】以上は組織透過光の脈動を利用した血中吸光物質濃度の測定に関する例であるが、脈動によらない近赤外線分光測定(NIRS)に利用しても同様に有効である。
【0057】
【発明の効果】本発明によれば、生体組織中の光吸収物質の濃度測定において次の特長が得られる。
(1)光路が波長によらなくなる。
(2)無吸収減光度が波長によらなくなる。
(3)吸収減光度が簡単な式で表される。
これにより、生体組織中の吸光物質の濃度を精度よく測定できる。特に多波長を用いて多成分を同時測定することが容易にかつ高精度にできるようになる。




 

 


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