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発明の名称 脳波データ処理装置及び記録媒体
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開2000−126148(P2000−126148A)
公開日 平成12年5月9日(2000.5.9)
出願番号 特願平10−321378
出願日 平成10年10月28日(1998.10.28)
代理人 【識別番号】100100893
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 勝 (外3名)
【テーマコード(参考)】
4C027
【Fターム(参考)】
4C027 AA03 FF00 FF01 GG00 GG13 HH08 KK03 KK05 
発明者 山崎 敏正 / 剣持 聡久
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 単一試行の際に得られた個々の脳波データから特徴的なパターンを検出する脳波データ処理装置において、デジタル脳波データを格納する脳波データ格納手段と、前記脳波データ格納手段から読み出されたデジタル脳波データに対してウエーブレット変換を施してウエーブレット係数を求めるウエーブレット変換手段と、前記ウエーブレット変換でのスケール・パラメータ及びシフト・パラメータの関数値として、前記ウエーブレット係数を出力するウエーブレット係数曲面出力手段と、ウエーブレット係数ウインドーを設定するウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段と、前記スケール・パラメータ、前記シフト・パラメータ及び前記ウエーブレット係数とによって規定されるウエーブレット係数曲面から、前記ウエーブレット係数ウインドーに基づいて、所定の領域を抽出するウエーブレット係数ウインドー手段と、個々のデジタル脳波データごとに、前記ウエーブレット係数ウインドー手段によって前記ウエーブレット係数曲面から前記所定の領域が抽出されたかどうかを判別する脳波データ判別手段と、を有することを特徴とする脳波データ処理装置。
【請求項2】 脳波用電極と、前記脳波用電極で観測された信号を増幅するアンプと、前記アンプから出力されるアナログ脳波データをデジタル脳波データに変換するアナログ/デジタルコンバータとをさらに備える請求項1に記載の脳波データ処理装置。
【請求項3】 特徴的なパターンが検出された脳波データに対応するウエーブレット係数曲面に基づいて、前記ウエーブレット係数ウインドーが設定される、請求項1または2に記載の脳波データ処理装置。
【請求項4】 前記ウエーブレット変換におけるマザーウエーブレットとして、メキシカン・ハット(Mexican Hat)を使用する、請求項1乃至3いずれか1項に記載の脳波データ処理装置。
【請求項5】 前記ウエーブレット係数曲面内で前記所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみを加算平均する脳波データ加算平均手段をさらに有する請求項1乃至4いずれか1項に記載の脳波データ処理装置。
【請求項6】 前記ウエーブレット係数曲面内で前記所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみについて、当該デジタル脳波データに含まれる特徴的なパターンの頂点潜時を求めるパターン潜時抽出手段を有する請求項1乃至4いずれか1項に記載の脳波データ処理装置。
【請求項7】 単一試行による個々のデジタル脳波データが入力されるコンピュータで読み取り可能な記録媒体であって、前記デジタル脳波データに対してウエーブレット変換を施してウエーブレット係数を求める機能と、前記ウエーブレット変換でのスケール・パラメータ及びシフト・パラメータの関数値として、前記ウエーブレット係数を求める機能と、ウエーブレット係数ウインドーを設定する機能と、前記スケール・パラメータ、前記シフト・パラメータ及び前記ウエーブレット係数とによって規定されるウエーブレット係数曲面から、前記ウエーブレット係数ウインドーに基づいて、所定の領域を抽出する機能と、個々のデジタル脳波データごとに、前記ウエーブレット係数曲面から前記所定の領域が抽出されたかどうかを判別する機能とを有し、前記コンピュータで実行されるプログラムを格納した記録媒体。
【請求項8】 前記プログラムが、前記所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみを加算して平均する機能をさらに有する、請求項7に記載の記録媒体。
【請求項9】 前記プログラムが、前記所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみについて、当該デジタル脳波データに含まれる特徴的なパターンの頂点潜時を求める機能をさらに有する、請求項7に記載の記録媒体。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脳波データを処理して特徴的なパターンを検出するために使用される脳波データ処理装置に関し、特に、単一試行の際に得られた個々の脳波データのうち特徴的なパターンが検出されたもののみを加算平均する脳波データ処理装置と、この脳波データ処理装置を実現するためのプログラムを格納したコンピュータ可読の記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】刺激または事象を被験者に与える(試行)と、被験者の脳や脊髄では、与えれた刺激または事象によって誘発された電位(誘発電位)が生じる。特に、刺激または事象と一定の時間関係をもって大脳皮質に発生する電位変化のことを事象関連電位(ERP; event-related potential)と呼ぶ。こうした電位ないし電位変化は、一般には脳波データとして観測され、例えば、感覚や知覚、心理現象のメカニズムを知るために、あるいは、傷害部位を知るために、有効なデータとして利用されている。しかしながら、試行に伴う電位変化の振幅は、律動的な通常の脳波に比べてかなり小さいため、1回の観測ではその信号が明確でないことが多い。そこで、同一条件での多数回の試行を行い、刺激(事象)時点を基準点として各試行で得られた脳波データを加算して平均することにより、律動的な通常の脳波の成分をキャンセルして、刺激(事象)によって得られた誘発電位のみを抽出する方法が考案されている。この方法を加算平均法という。
【0003】ところで、時間変化する非定常的な信号を処理し、特徴的な成分が含まれているか否かなどを解析する手法として、近年、ウエーブレット(wavelet)変換が注目を浴びている。単一試行における脳波データにウエーブレット変換を施した例としては、中村政俊氏、久富康氏、杉鋼直氏、西田茂人氏、池田昭夫氏、柴崎浩氏による「ウエーブレット変換によるP300単一試行記録処理」(第15回SICE九州支部学術講演会予稿集(pp.355-358)、1996年11月23日)がある。しかしながら、中村氏らの装置は、脳波データに対してウエーブレット変換及び逆ウエーブレット変換を施すのみにとどまっており、実データのノイズ除去を目的としたフィルタリング機能しか有していない。さらに、同氏らは、実データへのフィルタリング結果に基づいて、ウエーブレット変換に含まれるパラメータを限定しようと試みているが、真の波形として数式モデルを利用しているので、結果の信頼性に乏しい。また、ウエーブレット変換パラメータを限られた範囲でしか調べていないので、実データに含まれる情報がかなり失われている可能性がある。中村氏らの報文の最大の問題点は、フィルタリングされた波形(ウエーブレット変換や逆ウエーブレット変換された波形データ)をどう利用するか、記載していないことである。結局、ウエーブレット変換、逆ウエーブレット変換によって脳波データを解析しようという試みはあるものの、未だ、実用段階には到っていないと言えるのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】加算平均法によって脳波データの加算平均を求め、事象関連電位(ERP)などの誘導電位を観測する場合、従来、個々の脳波データから特徴的なパターンを抽出して脳波データの加算平均を得るために、膨大な時間を要していた。その理由は、パターン抽出の作業が、すべて実験者(あるいは脳波判読者)の視察によるものであったからである。
【0005】本発明の目的は、脳波から特徴的なパターンを抽出する作業を自動化し、実験者の負担軽減や脳波データ解析作業の効率化とともに、得られる脳波データの品質及び信頼性の向上を図ることができる脳波データ解析方法を提供することにある。
【0006】また、上述したようにこれまでは、脳波データのウエーブレット変換の具体的な応用が明らかにされていなったが、本発明は、具体的な応用例を提示することも目的とする。すなわち本発明は、ウエーブレット変換の具体的な応用例として、脳波データの加算平均を挙げるとともに、ウエーブレット変換の結果を比較検討する場合に、従来技術のように波形データそのものに着目するだけでなく、ウエーブレット変換パラメータの値全体に着目し、元波形データの情報を極力失わずに加算平均する装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の脳波データ処理装置は、単一試行の際に得られた個々の脳波データから特徴的なパターンを検出する脳波データ処理装置において、デジタル脳波データを格納する脳波データ格納手段と、脳波データ格納手段から読み出されたデジタル脳波データに対してウエーブレット変換を施してウエーブレット係数を求めるウエーブレット変換手段と、ウエーブレット変換でのスケール・パラメータ及びシフト・パラメータの関数値として、ウエーブレット係数を出力するウエーブレット係数曲面出力手段と、ウエーブレット係数ウインドーを設定するウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段と、スケール・パラメータ、シフト・パラメータ及びウエーブレット係数とによって規定されるウエーブレット係数曲面から、ウエーブレット係数ウインドーに基づいて、所定の領域を抽出するウエーブレット係数ウインドー手段と、個々のデジタル脳波データごとに、ウエーブレット係数ウインドー手段によってウエーブレット係数曲面から所定の領域が抽出されたかどうかを判別する脳波データ判別手段と、を有する。
【0008】本発明の脳波データ処理装置では、ウエーブレット係数曲面内で所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみを加算平均する脳波データ加算平均手段をさらに設けてもよく、また、ウエーブレット係数曲面内で所定の領域が抽出されたデジタル脳波データのみについて、当該デジタル脳波データに含まれる特徴的なパターンの頂点潜時を求めるパターン潜時抽出手段をさらに設けてもよい。
【0009】本発明において、ウエーブレット係数ウインドーは、例えば、特徴的なパターンが視察等によって検出されている脳波データを予め用意してこの脳波データから対応するウエーブレット係数曲面を求め、このウエーブレット係数曲面の形状や値に基づいて設定すればよい。また、ウエーブレット変換におけるマザーウエーブレットとして、各種のものが考えれられるが、好ましいものを例示すれば、メキシカン・ハット(Mexican Hat)を挙げられる。
【0010】(作用)本発明の脳波データ処理装置では、脳波データにウエーブレット変換を施して得られた結果をウエーブレット係数曲面とし、このウエーブレット係数曲面にウエーブレット係数ウインドーを施して、ウエーブレット係数曲面内で所定の領域が抽出されるかどうかを判別するので、脳波データの計測から脳波データに特徴的なパターンが存在するどうかまでを、すべて自動的に行うことができる。
【0011】さらに、脳波データ加算平均手段を設けることにより、脳波データの計測から加算平均処理までをすべて自動的に行うことができ、パターン潜時抽出手段を設けることにより、抽出されたパターンの頂点潜時を自動的に求めることが可能になる。
【0012】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0013】《第1の実施の形態》図1は、本発明の第1の実施の形態による脳波データ処理装置の構成を示すブロック図である。この脳波データ処理装置は、被験者からの脳波信号(アナログ脳波データ)を入力としこの脳波信号に対してアナログ/デジタル(A/D)変換を施してデジタル脳波データとする脳波データ入力手段11と、脳波データ入力手段で得られたデジタル脳波データを格納する脳波データ格納手段12と、脳波データ格納手段12からデジタル脳波データを読み出して読み出されたデジタル脳波データに対してウエーブレット変換を施すウエーブレット変換手段13と、ウエーブレット変換手段13でのウエーブレット変換で得られたウエーブレット係数値を、ウエーブレットに含まれるスケール・パラメータ及びシフト・パラメータの関数値として出力するウエーブレット係数曲面出力手段14と、ウエーブレット係数曲面出力手段14から出力される関数値のうちから所定の領域(ウエーブレット係数ウインドーに対応する領域)を抽出するウエーブレット係数ウインドー手段15と、ウエーブレット係数ウインドーを設定するためのウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段16と、個々のデジタル脳波データに対してウエーブレット変換手段13によりウエーブレット変換を行ったときにウエーブレット係数ウインドー手段15によって所定の領域が抽出されたかどうかを判定し、これによってデジタル脳波データに特徴的なパターンが含まれているかを判定する脳波データ判定手段17と、を備えている。
【0014】ここで、脳波データ格納手段12、ウエーブレット変換手段13、ウエーブレット係数曲面出力手段14、ウエーブレット係数ウインドー手段15、ウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段16及び脳波データ判定手段17は、それぞれ、それらの機能を発揮する独立したハードウェアブロックとして構成してもよいが、一般的には、1台のコンピュータとこのコンピュータで実行され各手段に対応する機能を有するソフトウェアプログラムとの組み合わせによって、一括して実現することができる。ここでは、コンピュータとコンピュータプログラムとによって、これら各手段が構成されているものとする。ここでいうコンピュータとしては、ワークステーションやパーソナル・コンピュータなどを用いることができ、パーソナル・コンピュータとしては、例えば、日本電気(株)製PC−9821Xaを用いることができる。
【0015】脳波データ入力手段11としては、脳波用電極と、脳波用電極で観測した微弱な脳波信号を増幅する生体信号アンプ(例えば、NECメディカルシステムズ(株)製6R12)と、生体信号アンプから出力されるアナログ脳波データをデジタル脳波データに変換するA/Dコンバータ(例えば、カノープス電子(株)製A/D変換ボードADXM−98A)との構成からなるものを使用できる。ここで挙げたA/D変換ボードとは、パーソナル・コンピュータなどの拡張スロットに挿入され、パーソナル・コンピュータ側からの制御によって、アナログ/デジタル変換を実行するもののことである。また、脳波データ格納手段12は、パーソナル・コンピュータに設けられる記憶媒体、例えば、パーソナル・コンピュータ本体に内蔵された記憶装置、光磁気デイスク、フロッピーデイスク、あるいは取り外し可能なハードデイスクが、これに該当する。
【0016】ウエーブレット変換手段13は、脳波データ格納手段12から読み出されたデジタル脳波データに対し、所定のチャネル及びサンプル数分、ウエーブレット変換を施すものである。ウエーブレット変換手段13を実現するためのソフトウェアとしては、上述したパーソナル・コンピュータ、日本電気(株)製PC−9821Xa上で実行可能なものとして、ウエーブレット変換ソフトウエアMatlab Version 5.2及びMatlab Wavelet Tool Box 1.1が挙げられる。
【0017】ウエーブレット係数曲面出力手段14は、ウエーブレット変換手段13で得られたウエーブレット係数Ca,bを、ウエーブレット変換に含まれるパラメータであるスケール・パラメータa及びシフト・パラメータbの関数値として出力するものであるが、後述するようにこの脳波データ処理装置では、スケール・パラメータ及びシフト・パラメータをxy座標とし、ウエーブレット係数をz座標とする3次元空間を考えて、関数値をこの3次元空間内の曲面として扱っている。この曲面のことをウエーブレット係数曲面121(図6参照)と呼ぶ。したがって、ウエーブレット係数ウインドー手段15は、ウエーブレット係数曲面内から所定の領域を抽出するものであり、ウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段16は、ウエーブレット係数曲面の形状や値に応じてウエーブレット係数ウインドーを設定するものであり、脳波データ判別手段17は、個々のデジタル脳波データに対応するウエーブレット係数曲面にウエーブレット係数ウインドーを施したときに、各ウエーブレット係数曲面内で所定の領域が抽出されるかどうかを判別するものである。
【0018】次に、この脳波データ処理装置の動作について説明する。
【0019】まず初めに、脳波データ入力手段11の構成要素である脳波用電極及び生体信号アンプによって被験者から導出・増幅された脳波データをA/Dコンバータによってサンプリングし、デジタル脳波データとして、脳波データ格納手段12内に格納する。次に、ウエーブレット変換手段13は、デジタル脳波データを【0020】
【数1】

に基づいて変換する。ただし、信号s(t)がデジタル脳波データに相当し、Ψ(t)はマザーウエーブレット、aはスケール・パラメータ、bはシフト・パラメータである。Ca,bはウエーブレット係数と呼ばれ、スケール・パラメータaとシフト・パラメータbの関数と見なすことができる。この関数値は、スケール・パラメータa、シフト・パラメータb、ウエーブレット係数Ca,bを座標とする3次元空間内に曲面を構成する。また、この曲面を、スケール・パラメータとシフト・パラメータによって作られる平面上に、関数値をグレースケールとして表現することも可能である。こうしたウエーブレット係数曲面及びその平面的な表現を出力するのが、ウエーブレット係数曲面出力手段14である。
【0021】単一試行における脳波データ(視覚的なoddballパラダイムにおける事象関連電位)(図2(a)参照)に対しウエーブレット変換を施したときの、ウエーブレット係数曲面出力手段12の出力結果(ウエーブレット係数曲面の平面的な表現)を、7種類のマザーウエーブレット(Mexican Hat, Morlet, Symlet(4), Daubechies(3), Haar, Meyer, Coiflet(1))についてそれぞれ例示したものが、図2(b)〜(h)である。これらの図において、黒から白へ行くにしたがい関数値(ウエーブレット係数)が高くなっている。これらの図から、脳波データにおける特徴的なパターン(潜時300〜500msの正の成分)を最も顕著に強調するウエーブレット変換は、Mexican Hat(メキシカン・ハット)をマザーウエーブレットとした場合であることが分かる。したがって、以下では、Mexican Hatをマザーウエーブレットとしたウエーブレット変換のみを扱う。なお、Mexican HatのマザーウエーブレットΨ(t)は、【0022】
【数2】

で表わされる。
【0023】図2(b)から明らかなように、ウエーブレット係数が高い領域は、スケール・パラメータ値のある特定の区間とシフト・パラメータの値のある特定の区間に挟まれた長方形あるいは楕円であることが分かる。実際、単一試行における各脳波データから、特徴的なパターン(P300成分)が視察によって検出された場合は、対応するウエーブレット係数曲面にこうした長方形あるいは楕円の領域が認められる(図3〜図5参照)。図3〜図5は、第1試行(Trial#1)から第50試行(Tria#50)までの単一試行における事象関連電位(ERP)波形とウエーブレット係数曲面を示す図であり、特徴的なパターンが検出された波形には、“*”が付されている。この長方形あるいは楕円の形状を決めるのが、ウエーブレット係数ウインドー・パラメータ設定手段16であり、設定されたウインドーを利用して、ウエーブレット係数曲面内にある所定の領域を抽出するのがウエーブレット係数ウインドー手段15である。
【0024】図6(a)は、長方形のウエーブレット係数ウインドーを例示している。同図では、ウエーブレット係数の値が最大となる点を含む長方形の領域が、40<a<110,300<b<500(ms)に設定されている。図6(b)は楕円のウエーブレット係数ウインドーを例示している。まず、ウエーブレット係数Ca,bのしきい値を定める(例えば、100)。この平面による切り口は、図6(b)から明らかなように、一般に楕円の形状をなす。さらに、個々のデジタル脳波データに対応するウエーブレット係数曲面に、ウエーブレット係数ウインドー手段15によってウエーブレット係数ウインドーを施したときに、各ウエーブレット係数曲面内で所定の領域が抽出されるかどうかを判別するのが脳波データ判別手段17である。所定の領域が抽出されれば、その脳波データには特徴的なパターンが含まれているということになるから、脳波データ判別手段17は、結局、個々の脳波データにおける特徴的なパターンの有無を判別することになる。
【0025】例えば、図6(a)の場合、ウエーブレット係数ウインドー内の最大値がある値(例えば、100)を超えるのであれば、その脳波データには特徴的なパターンが存在すると判断する。また、図6(b)の場合、しきい値平面で切り取られた領域について、同図右側の格子点が、シフト・パラメータ平面内でなす角度αとスケール・パラメータ平面内でなす角度βを求め、「α<180°かつβ<180°、かつ、中央の格子点におけるウエーブレット係数値がしきい値及び他の格子点における値よりも大きい」とき、特徴的なパターンが検出されたと判断する。
【0026】以上のようにして、この脳波データ処理装置では、特徴的なパターンを有する脳波データのみを検出することができる。したがって、以下に述べる第2の実施の形態のように、特徴的なパターンを有する脳波データのみの加算平均を自動的に行うことが可能になり、また、第3の実施の形態のように、特徴的なパターンを有する脳波データにおけるパターンの頂点潜時を自動的に求めることが可能になる。
【0027】《第2の実施の形態》図7は、本発明の第2の実施の形態の脳波データ処理装置の構成を示すブロック図である。この脳波データ処理装置は、図1に示す脳波データ処理装置に、脳波データ加算平均手段18を付加した構成のものである。脳波データ加算平均手段18は、脳波データ判別手段17において特徴的なパターンを有すると判断された脳波データのみをトリガー信号に同期させて足し合わせ、加算平均を求めるものである。ここでトリガー信号は、各試行ごとに、その試行での刺激あるいは事象の発生に同期して発生する信号のことである。第1の実施形態の脳波データ処理装置は、脳波データ入力手段11を除いて、パーソナル・コンピュータ、例えば、日本電気(株)製PC−9821Xaを用いて構成できるところ、本実施の形態における脳波データ加算平均手段18も、脳波データ処理装置を構成するパーソナル・コンピュータに、ここで述べる脳波データ加算平均手段18の動作を実行するためのプログラムを実装することにより実現できる。
【0028】次に、この第2の実施形態の脳波データ処理装置の動作について説明する。この脳波データ処理装置において、第1の実施形態の脳波データ処理装置と共通の構成の部分は、第1の実施形態の装置におけるのと同じ動作を行っているので、ここでは、脳波データ加算平均手段18での動作を中心に説明する。脳波データ加算平均手段18は、脳波データ判別手段17において特徴的なパターンを有すると判断された脳波データのみを、脳波データ格納手段12から読み出す。また、刺激に関するトリガー信号が脳波データ加算手段18に入力している。そして、脳波データ加算平均手段18は、脳波データ格納手段12から読み出した脳波データを、トリガー信号に同期させて足し合わせることにより、その脳波データの加算平均を算出し、出力する。ここで、特徴的なパターンを有する脳波データとは、ウエーブレット係数曲面内で、第1の実施の形態において説明したように所定の領域が抽出された脳波データのことである。
【0029】以下、第2の実施の形態の脳波データ処理装置によって、特徴的なパターンを有する脳波データのみの加算平均を求めた結果を説明する。図8は、視覚的なoddball課題[例えば、3種類の視覚刺激(rare target: 刺激頻度20%; rarenon-target: 刺激頻度20%; frequent non-target: 刺激頻度60%)をランダムに被験者に提示し、rare targetのみに注意を向けさせる(例えば、rare targetの提示の時のみボタンを押させたり、rare targetの提示回数を実験終了後に実験者に報告させる)課題]を、途中に休憩を入れながら、3セッション行い、各セッションごとに、個々の単一試行の脳波データを、3種類の方法で加算平均した結果を示している。図8(a),(b),(c)は、それぞれ、1回目、2回目、3回目のセッションの結果を示し、縦軸は事象関連電位(ERP)であり、横軸は潜時(latency)である。ここでは、潜時が300ms程度である正の成分(P300成分)を特徴的なパターンとしている。図において、曲線(i)は、脳波データ判別手段17で特徴的なパターン(P300成分)が存在すると判断された脳波データのみを加算平均した結果を示し、曲線(ii)は、全試行に対応する脳波データの加算平均結果を示し、曲線(iii)は、特徴的なパターンが顕著に見られない脳波データのみを加算平均した結果を示している。例えば、3回目のセッション(図8(c))の場合、全試行回数43回(曲線(ii))について、特徴的なパターンが見られた試行が20回であってこれら20回の試行を加算した結果が曲線(i)であり、また、特徴的なパターンが見られなかった試行が23回であってこれら23回の試行を加算した結果が曲線(iii)である。この図から明らかなように、特徴的なパターンを有する脳波データのみを加算平均することによって、P300成分について、最も振幅値の大きい波形が得られる。これに対して、潜時150〜200msの正の成分は、どのような脳波データを加算平均の対象にするかには、ほとんど依存しない。
【0030】このように、第2の実施形態の脳波データ処理装置によれば、脳波データの計測から加算平均処理までをすべて自動的に行うことができる。
【0031】《第3の実施の形態》図9は、本発明の第3の実施の形態の脳波データ処理装置の構成を示すブロック図である。この脳波データ処理装置は、図1に示す脳波データ処理装置に、パターン潜時抽出手段19を付加した構成のものである。パターン潜時抽出手段19は、脳波データ判別手段17によって特徴的なパターンを有すると判断された脳波データのみについて、その特徴的なパターンの頂点潜時(脳波データの振幅値が最大となる潜時)を求めるものである。第1の実施形態の脳波データ処理装置は、脳波データ入力手段11を除いて、パーソナル・コンピュータ、例えば、日本電気(株)製PC−9821Xaを用いて構成できるところ、本実施の形態におけるパターン潜時抽出手段19も、脳波データ処理装置を構成するパーソナル・コンピュータに、ここで述べるパターン潜時抽出手段19の動作を実行するためのプログラムを実装することにより実現できる。
【0032】次に、この第3の実施の形態の脳波データ処理装置の動作を説明する。この脳波データ処理装置において、第1の実施形態の脳波データ処理装置と共通の構成の部分は、第1の実施形態の装置におけるのと同じ動作を行っているので、ここでは、パターン潜時抽出手段19での動作を中心に説明する。パターン潜時抽出手段19は、脳波データ判別手段17において特徴的なパターンを有すると判断された脳波データのみについて、その脳波データを脳波データ格納手段12から読み出すとともに、ウエーブレット係数ウインドー手段15によって設定された領域内で、ウエーブレット係数の値が最大となるシフト・パラメータの値bmaxを求める。そして、読み出したデジタル脳波データにおいて、ある定数tbに対して[bmax−tb,bmax+tb]で定義される閉区間内において、脳波データの振幅値が最大となる潜時を求める。
【0033】図10は、パターン潜時抽出手段19のよる潜時の抽出過程を説明する図である。図10(a)の波形は、上述の視覚的なoddball課題におけるrare targetに対する単一試行脳波データである。この脳波データ波形にウエーブレット変換を施し、ウエーブレット係数を算出した結果が図10(b)である。図10(b)において、図示長方形の領域にウエーブレット係数ウインドーを設定すると、設定されたウエーブレット係数ウインドーの領域内でウエーブレット係数の値が最大となるシフト・パラメータの値bmaxが特定される。そして、図10(a)に示すように、ある定数tb(例えば、50ms)に対して、[bmax−tb,bmax+tb]で定義される閉区間内において、脳波データの振幅値が最大となる潜時を求めると、P300成分の頂点潜時pmaxを得ることができる。
【0034】このようにパターン潜時抽出手段19を設けることにより、抽出されたパターンの頂点潜時を自動的に求めることが可能になる。さらに、第2の実施の形態で用いた脳波データ加算平均手段と組み合わせることにより、特徴的なパターンがある脳波データのみの加算平均結果から、パターンの頂点潜時を求めることが可能となり、頂点潜時の測定精度を高めることができる。
【0035】《パーソナル・コンピュータによる構成》以上説明した各実施の形態の脳波データ処理装置は、上述したように、パーソナル・コンピュータなどの計算機システムを用い、脳波データ処理装置を実現するためのプログラムをその計算機システムに読み込ませ、そのプログラムを実行させることによっても実現することができる。脳波データ処理装置を実現するためのプログラムは、磁気テープやCD−ROMなどの記録媒体によって、計算機システムに読み込まれる。ここでは、脳波データ処理装置がパーソナル・コンピュータによって構成されているとして、このパーソナル・コンピュータについて説明する。図11は、脳波データ処理装置を構成するためのパーソナル・コンピュータの構成を示すブロック図である。
【0036】このパーソナル・コンピュータは、CPU(中央処理装置)21と、プログラムやデータ(特にデジタル脳波データ)を格納するためのハードディスク装置22と、主メモリ23と、キーボードやマウスなどの入力装置24と、CRTなどの表示装置25と、磁気テープやCD−ROM等の記録媒体27を読み取る読み取り装置26とを有するとともに、脳波データ入力手段11が接続している。脳波データ入力手段11は、典型的には、脳波用電極、生体信号アンプ及びA/D変換ボードの組み合わせからなるが、このうち、A/D変換ボードは、パーソナル・コンピュータの拡張スロット(不図示)に挿入されることにより、パーソナル・コンピュータの内部バス(不図示)を介してCPU21に接続している。また、ハードディスク装置22、主メモリ23、入力装置24、表示装置25及び読み取り装置26は、いずれもCPU21に接続している。このパーソナル・コンピュータでは、上述した脳波データ処理装置を実現するためのプログラムを格納した記録媒体27を読み取り装置26に装着し、記録媒体27からプログラムを読み出してハードディスク装置22に格納し、ハードディスク装置22に格納されたプログラムをCPU21が実行することにより、脳波データ処理装置での各処理が実行され、脳波データ処理装置が実現したことになる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、ウエーブレット変換が時間的に局在するピーク成分の抽出に適していること、また、抽出の際にウエーブレット係数全体(ウエーブレット係数曲面)を探索しているので元脳波波形の情報がほとんど失われないことから、実験者の視察によらず単一試行の脳波から特徴的なパターンを抽出できるという効果を有する。
【0038】また、単一試行脳波から特徴的なパターンを検出できるので、これにより加算対象となる脳波データを自動的に判別でき、それにより、脳波データの加算平均波形を精度良く得られ、さらに、単一試行脳波の特徴的なパターンの頂点潜時を求めることができるという効果も有する。
【0039】本発明によれば、例えば、単一試行における事象関連電位データからP300成分の頂点潜時を求めることができるので、高次脳機能検査の精度向上やリアルタイム性、他の検査指標、例えば、自律神経系機能指標との関係の明確化などが実現可能である。




 

 


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