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発明の名称 自励式交直変換器の制御装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平11−46448
公開日 平成11年(1999)2月16日
出願番号 特願平9−213889
出願日 平成9年(1997)7月25日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】紋田 誠
発明者 杉本 重幸 / 香田 勲 / 大槻 みどり
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 自励式交直変換器で交直変換を行い直流送電システムを介して電力融通を行う電力供給システムの前記自励式交直変換器の交流出力電流を直交座標軸上の有効電力成分のd軸および無効電力成分のq軸の2軸変数に変換するdq軸変換回路と、前記直流送電システムの直流電圧をその設定値に保ちつつ所定の有効電力設定値を満たすような前記d軸の設定値を算出する直流電圧/有効電力制御回路と、所定の無効電力設定値を満たすような前記q軸の設定値を算出する無効電力制御回路と、前記dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流が前記d軸およびq軸の設定値に追従するような制御率を算出する交流電流制御回路と、前記電力供給システムの交流母線の交流電圧位相を検出する位相検出回路と、前記位相検出回路からの交流電圧位相および前記交流電流制御回路からの制御率に基づいて直流電圧をその設定値に保ちながら設定値通りの有効電力および無効電力を出力するように前記自励式交直変換器を制御するPWM制御回路とを備えた自励式交直変換器の制御装置において、前記自励式交直変換器が接続される交流系統の発電機が切り離された状態になったとき動作する系統状態監視装置と、前記系統状態監視装置の動作により前記交流電流制御回路の出力を事前の運転状態の値に保持し前記PWM制御回路に出力する信号保持回路と、前記dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流を入力し一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を出力する一次遅れ回路と、前記系統状態監視装置の動作によりd軸およびq軸の各出力電流と一次遅れのd軸およびq軸の出力電流との偏差に基づいて前記制御率の補正信号を演算し前記PWM制御回路に出力する電流制御要素と、前記交流母線の交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように低下した場合には絶対値が大きくなるように前記制御率の補正を行う補正信号を前記PWM制御回路に出力する電圧制御要素とを備えたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項2】 請求項1に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記信号保持回路が保持した出力値に対し予め設定した一定の値へスロープ特性あるいは1次遅れ特性を持たせて追従させ前記PWM制御回路に出力するバンプレス回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記系統状態監視装置が動作したとき、前記電流制御要素の動作開始を前記電圧制御要素の動作より遅らせる遅延要素を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項4】 請求項1ないし請求項3に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記dq軸変換回路からのd軸電流信号の絶対値が一定時間以上継続して予め設定した一定値よりも小さいことを条件にして前記自励式交直変換器の運転を停止させる運転停止回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項5】 請求項1ないし請求項4に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記dq軸変換回路からのd軸電流信号の設定値に対しては前記自励式交直変換器の定格出力電流あるいは直流定格電流を越えない値を制限値とし、前記dq軸変換回路からのq軸電流信号の設定値に対しては前記自励式交直変換器の定格出力電流値およびd軸電流信号の検出値に基づいて得られた電流の余裕分を制限値とする過電流制限回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項6】 請求項1ないし請求項5に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記dq軸変換回路からのd軸電流信号が一定の範囲を逸脱したことを条件に直流送電システムを介して接続される相手側自励式交直変換器の制御装置で使用するd軸電流信号の設定値を通常運転時よりも絶対値の小さな値に変更するための融通電力変更回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項7】 自励式交直変換器で交直変換を行い直流送電システムを介して電力融通を行う電力供給システムの前記自励式交直変換器の交流出力電流を直交座標軸上の有効電力成分のd軸および無効電力成分のq軸の2軸変数に変換するdq軸変換回路と、前記直流送電システムの直流電圧をその設定値に保つつ所定の有効電力設定値を満たすような前記d軸の設定値を算出する直流電圧/有効電力制御回路と、所定の無効電力設定値を満たすような前記q軸の設定値を算出する無効電力制御回路と、前記dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流が前記d軸およびq軸の設定値に追従するような制御率を算出する交流電流制御回路と、前記電力供給システムの交流母線の交流電圧位相を検出する位相検出回路と、前記位相検出回路からの交流電圧位相および前記交流電流制御回路からの制御率に基づいて直流電圧をその設定値に保ちながら設定値通りの有効電力および無効電力を出力するように前記自励式交直変換器を制御するPWM制御回路とを備えた自励式交直変換器の制御装置において、前記自励式交直変換器が接続される交流系統の発電機が切り離された状態になったとき動作する系統状態監視装置と、前記dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流を入力し一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を出力する一次遅れ回路と、前記系統状態監視装置の動作により前記直流電圧/有効電力制御回路からの前記d軸の設定値および前記無効電力制御回路からの前記q軸の設定値に代えて前記一次遅れ回路からの一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を前記交流電流制御回路に出力するスイッチ回路と、前記交流母線の交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように低下した場合には絶対値が大きくなるように前記制御率の補正を行う補正信号を前記PWM制御回路に出力する電圧制御要素とを備えたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項8】 請求項1ないし請求項6に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記電圧制御要素による補正と前記電流制御要素による補正のうち前記電流制御要素による補正を先に行い、その結果得られた直交する2軸それぞれの信号値からそれらのベクトル和の大きさを演算し、その値に対して交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように、交流電圧が低下した場合には絶対値が大きくなるように前記電圧制御要素による補正を行う電圧制御適正化回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項9】 請求項1ないし請求項6に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記電圧制御要素による補正と前記電流制御要素による補正のうち前記電流制御要素による補正を先に行い、その結果得られた直交する2軸それぞれの信号値を増幅し、交流電圧が設定値より上昇した場合には出力値が低下し、交流電圧が低下した場合には出力が増大するよう動作する前記電圧制御要素の出力を前記各軸ごとの増幅した2軸それぞれの信号値に加算し、その際に加算前の値と加算後の値との正負の符号が反転しないよう加算後の値を制限するようにした電圧制御適正化回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項10】 請求項9に記載の自励式交直変換器の制御装置において、直交する2軸それぞれの信号値に比例した増幅率を演算する際に、2軸それぞれの信号値が零付近の一定範囲内の値の場合には増幅率を零とするようにしたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項11】 請求項1ないし請求項10に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記位相検出回路は、出力信号である検出位相と入力信号である瞬時位相の位相偏差を演算する位相差演算回路と、前記系統状態監視装置が動作したときは前記位相差演算回路からの位相偏差を事前の値に保持し前記系統状態監視装置が不動作のときは時々刻々変化する位相偏差を出力する信号保持回路と、前記信号保持回路が位相偏差を保持したときはその後1次遅れ特性によって前記保持値を零にするための一次遅れ回路と、前記信号保持回路の出力信号および前記一次遅れ回路の出力信号に基づいて比例積分演算を行い交流電圧の角速度を求めるフィルタ回路と、前記フィルタ回路の出力信号に基づいて交流電圧の位相角を演算する電圧制御発振器とを備えたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項12】 請求項1ないし請求項10に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記位相検出回路は、出力信号である検出位相と入力信号である瞬時位相の位相偏差を演算する位相差演算回路と、前記位相偏差の比例積分演算を行い交流電圧の角速度を求めるフィルタ回路と、前記系統状態監視装置が動作したとき前記フィルタ回路からの交流電圧の角速度を事前の値に保持し前記系統状態監視装置が不動作のときは時々刻々変化する交流電圧の角速度を出力する信号保持回路と、前記信号保持回路が前記交流電圧の角速度を保持したときはその後1次遅れ特性によって前記交流電圧の角速度を所定の角速度設定値にする一次遅れ回路と、前記フィルタ回路の出力信号および前記一次遅れ回路からの出力信号に基づいて交流電圧の位相角を演算する電圧制御発振器とを備えたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項13】 請求項12に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記自励式交直変換器が接続された交流系統の接続点から送電線などを介して離れた地点での運転周波数を検出する角速度検出器を設け、前記位相検出回路における前記一次遅れ回路での角速度設定値として、前記角速度検出器で検出された周波数を用いるようにしたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
【請求項14】 請求項13に記載の自励式交直変換器の制御装置において、前記角速度検出器で検出された運転周波数の値が一定の範囲内の値である場合には検出された周波数値を、検出された運転周波数の値が一定の範囲内を逸脱した場合には予め設定した角速度設定値を選択し、前記位相検出回路の一次遅れ回路に入力する同期適正化回路を設けたことを特徴とする自励式交直変換器の制御装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、直流送電システムや電力系統間で電力融通を行う電力供給システムに用いられる自励式交直変換器の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】異なる電力系統間で電力融通を行う場合に、各交流系統に交直変換器を設置し、それらの交直変換器の直流端子間を相互に直流送電システムを接続して電力融通を行っている。また、電池等の直流電源から交流系統へ電力を供給する場合にも、交直変換器が使用される。こうした電力システムで使用される交直変換器として、従来は他励式交直変換器が使用されてきたが、近年、自励式交直変換器が適用されるようになってきた。
【0003】図29は、電圧型の自励式交直変換器を使用した直流送電システムとその制御装置を示したものである。背後に発電機等の交流電源を含む交流系統のつながった交流母線1に、変換器用変圧器2を介して自励式交直変換器3が接続されている。変換器3は、GTO(ゲートターンオフ)サイリスタおよび逆並列に接続されたダイオードによる6相あるいは12相のブリッジ回路で構成されている。自励式交直変換器3の直流端子側にはキャパシタ4が接続され、その先に直流送電線5を介して、自励式交直変換器3と同じ構成の自励式交直変換器3’およびキャパシタ4’が接続されている。変換器3’の交流端子側は変圧器2’を介して、別の交流系統の交流母線1’に接続されている。
【0004】自励式交直変換器3、3’のうち、一方が順変換器(交流電力を直流電力に変換)として運転され、もう一方が逆変換器(直流電力を交流電力に変換)として運転されることにより電力の融通が行われる。なお、制御装置および検出装置については、両変換器とも同じ構成のものが使用されるので、図29では自励式交直変換器3についてのみ示している。
【0005】自励式交直変換器3側では、交流電流検出器7により自励式交直変換器3の入出力電流である三相交流電流Iaが検出され、交流電圧検出器8により交流母線電圧Vaが検出される。検出された三相交流電流Iaおよび交流母線電圧Vaは有効電力検出器9および無効電力検出器10に入力され、有効電力検出器9により自励式交直変換器3の有効電力Paが検出され、無効電力検出器10により無効電力Qaが検出される。
【0006】有効電力Paは有効電力設定値Prefと突き合わされ、その偏差ΔP(Pref−Pa)は直流電圧/有効電力制御回路11に入力される。また、直流電圧検出器6で検出された直流電圧Edは直流電圧設定値Edrefと突き合わされ、その偏差ΔE(Edref−Ed)は直流電圧/有効電力制御回路11に入力される。直流電圧/有効電力制御回路11は、それぞれの入力偏差信号を零にするための制御信号を出力する。この出力信号は、変換器出力電流の有効電力成分の設定値Idrefとして交流電流制御回路13に入力される。
【0007】同様に、無効電力Qaは無効電力設定値Qrefと突き合わされ、その偏差ΔQ(Qref−Qa)が無効電力制御回路12に入力される。無効電力制御回路12では、入力偏差信号を零にするための制御信号を出力し、無効電力成分の設定値Iqrefとして交流電流制御回路13に入力される。
【0008】また、交流電流Iaはdq軸変換回路14に入力され、このdq軸変換回路14によって直交する2軸(d軸、q軸)成分に分離される。すなわち、有効電力成分Idと無効電力成分Iqに分離され、有効電力成分Idおよび無効電力成分Iqの検出値として交流電流制御回路13に与えられる。
【0009】交流電流制御回路13では、交流電流Iaの有効電力成分Idおよび無効電力成分Iqが、それぞれ有効電力成分設定値Idrefおよび無効電力成分設定値Iqrefに追従するような制御率Cmd、Cmqを演算しPWM制御回路15に出力する。ここで、制御率Cmd、CmqはPWM制御回路15で使用する正弦波信号を、直交する2軸成分に分離した値であり、そのベクトル和の大きさは正弦波の大きさに相当する。また、ベクトル和の角度は、交流母線1の電圧位相に対するPWM正弦波信号の相対的な位相角に相当する。さらに、このPWM正弦波信号は、自励式交直変換器3の交流出力電圧の基本波成分とほぼ比例した関係にあるので、制御率Cmd、Cmqは変換器出力電圧を直交する2軸成分に分解したものに相当するといえる。
【0010】一方、位相検出回路16では交流電圧検出器8から得られる交流母線1の三相交流電圧信号Vaから交流電圧の位相θvを検出し、この交流電圧位相θvはdq軸変換回路14およびPWM制御回路15に入力される。dq軸変換回路14では与えられた位相θvを基準位相として変換器出力電流の三相/二相変換およびdq軸変換を行う。また、PWM制御回路15では、制御率Cmd、Cmqおよび基準位相θvから得られる正弦波信号と搬送波信号の突き合わせを行い、自励式交直変換器3を構成するGTOサイリスタに与えるオン/オフパルス信号の発生タイミングを決定する。自励式交直変換器3はこうして得られたパルス信号によって所望の運転を行う。
【0011】こうした制御装置を使用することにより、直流送電システムにおいて、直流電圧を設定値Edrefどおりに保ちながら、有効電力設定値Prefどおりの電力を順変換器側から逆変換器側へ融通し、かつ各変換器で無効電力設定値Qrefどおりの無効電力を出力することができるようになっている。
【0012】電池等の直流電源の電力を交流電力に変換して電力系統へ供給する電力供給システムにおいても同様の制御が行われる。図30は電池の出力を電圧型の自励式交直変換器3により交流電力へ変換して交流系統へ供給する電力供給システムに電力を融通する場合の制御装置を示したものである。
【0013】図30において、図29に示したものに対し、キャパシタ4、4’、直流送電線5、相手側自励式交直変換器3’の代わりに直流回路に電池17が接続されている点が異なる。直流電圧は電池17により一定に保たれるため、直流電圧制御が不要であり、直流電圧/有効電力制御回路11の代わりに有効電力制御回路11’が使用される。主回路および制御装置のその他の部分の構成および作用は、図29に示した直流送電システムと同じで、有効電力制御回路11’に与えられた有効電力設定値Pref、無効電力制御回路12に与えられた無効電力設定値Qrefどおりの出力が得られるように自励式交直変換器3にパルス信号が与えられる。
【0014】さらに、図31は、図29および図30における位相検出回路16の構成図である。交流電圧検出器8から得られる三相交流電圧信号Vaは、位相検出回路16の三相/二相変換回路161によってVα、Vβという直交する2つの成分に変換される。三相交流電圧のうち基準となる相の電圧位相をθdとすると、下記の(1.1)式および下記の(1.2)式という関係がある。
【0015】
Vα=|Va|・cos(θd) …(1.1)
Vβ=|Va|・sin(θd) …(1.2)
この2つの値Vα、Vβは、正規化回路162において三相交流電圧の大きさ|Va|で割り算されることにより正規化され、cos(θd)、sin(θd)となり位相差演算回路163に入力される。一方、位相差演算回路163には、位相検出回路16の最終出力である検出位相θvに対するcos(θv)、sin(θv)も入力される。位相検出回路16の最終出力である検出位相θvに対するcos(θv)、sin(θv)は、余弦演算回路164および正弦演算回路165により求められる。
【0016】位相差演算回路163では、cos(θd)、sin(θd)、cos(θv)、sin(θv)に基づいて、瞬時的な検出位相θdと位相検出回路16の最終出力位相θvとの位相偏差Δθ(θd−θv)を下記の(2.1)式および(2.2)式により演算する。
【0017】
sin(θd−θv)=sin(θd)・cos(θv)−cos(θd)・sin(θv) …(2.1)
Δθ=(θd−θv)=sin−1(sin(θd−θv)) …(2.2)
定常状態ではθvはθdに追従しており、すなわち、θdとθvは等しいので位相差演算回路163の出力Δθは零となる。この位相差演算回路163の出力はフィルタ回路166に与えられる。フィルタ回路166は比例積分回路で構成され、定常状態での出力値は交流電圧の角速度ω(=2πf)に相当する。この値がさらに積分回路で構成された電圧制御発振器(VCO)167に与えられ、その出力が交流電圧の検出位相θvとなる。
【0018】この位相検出回路16を使用すると、通常運転時は瞬時的な検出位相であるθdと位相検出回路16の最終出力位相θvとが等しく、位相差演算回路163の出力Δθは零となりフィルタ回路166の出力である角速度ω、すなわち周波数fは一定に維持される。従って、電圧制御発振器167の出力である検出位相θvは一定の周波数で発振する。ここで、電力系統の電圧位相が進むと、位相差演算回路163の出力Δθが正の値となりフィルタ回路166の出力が通常より大きな値となって検出位相θvが進む。これによって検出位相θvが系統の位相変化に追従する。系統の位相が遅れた場合には、位相差演算回路163の出力Δθが負の値となりフィルタ回路166の出力が通常より小さな値となって検出位相θvが遅れ、これによって検出位相θvが系統の位相変化に追従する。フィルタ回路166の出力である角速度ωは交流系統に接続されている同期発電機の回転速度によって決まる角速度と一致した値である。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来の自励式交直変換器の制御装置では、遮断器の開放などにより発電機が切り離された状態になった場合、電力系統に交流過電圧が発生したり、交流電圧低下が生じたりすることがある。
【0020】すなわち、自励式交直変換器3の接続された交流母線1の背後の交流系統において、遮断器の開放などにより発電機が切り離された状態になった場合には、自励式交直変換器3は有効電力成分設定値Prefや無効電力成分設定値Qrefどおりの有効電力と無効電力を供給し続けるよう動作する。その場合、それらの値は必ずしも電力系統に接続された負荷や調相設備の容量と一致しないため、バランスがとれなくなることがある。そうなると、交流過電圧あるいは交流電圧低下が生じ、機器の破損や負荷系統の停電などが生じる。
【0021】また、図31に示す従来の位相検出回路16では、電力系統から発電機が切り離された状態になると、周波数を決める要素がなくなるため位相検出回路16の出力が不安定となることがある。すなわち、従来の位相検出回路16では、交流系統に接続された発電機の回転速度で決まる周波数の電圧位相を検出し、自励式交直変換器3がその検出位相を基準として交流系統と同期して運転が行われるので、電力系統から発電機が切り離された状態になると、周波数を決める要素がなくなる。このため、位相検出回路16の出力が不安定となり、自励式交直変換器3の運転周波数の大幅な低下や上昇が発生する。そうした場合には、電力系統を安定に運転できず、電力系統に接続された負荷に悪影響を及ぼしたり、変圧器の励磁回路の飽和が生じたりする。
【0022】本発明の目的は、直流送電システムや直流電源システムに接続された負荷系統に適切な電力を安定に供給し続けることのできる自励式交直変換装置の制御装置を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、自励式交直変換器で交直変換を行い直流送電システムを介して電力融通を行う電力供給システムの自励式交直変換器の交流出力電流を直交座標軸上の有効電力成分のd軸および無効電力成分のq軸の2軸変数に変換するdq軸変換回路と、直流送電システムの直流電圧をその設定値に保ちつつ所定の有効電力設定値を満たすようなd軸の設定値を算出する直流電圧/有効電力制御回路と、所定の無効電力設定値を満たすようなq軸の設定値を算出する無効電力制御回路と、dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流がd軸およびq軸の設定値に追従するような制御率を算出する交流電流制御回路と、電力供給システムの交流母線の交流電圧位相を検出する位相検出回路と、位相検出回路からの交流電圧位相および交流電流制御回路からの制御率に基づいて直流電圧をその設定値に保ちながら設定値通りの有効電力および無効電力を出力するように自励式交直変換器を制御するPWM制御回路とを備えた自励式交直変換器の制御装置であり、自励式交直変換器が接続される交流系統の発電機が切り離された状態になったとき動作する系統状態監視装置と、系統状態監視装置の動作により交流電流制御回路の出力を事前の運転状態の値に保持しPWM制御回路に出力する信号保持回路と、dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流を入力し一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を出力する一次遅れ回路と、系統状態監視装置の動作によりd軸およびq軸の各出力電流と一次遅れのd軸およびq軸の出力電流との偏差に基づいて制御率の補正信号を演算しPWM制御回路に出力する電流制御要素と、交流母線の交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように低下した場合には絶対値が大きくなるように制御率の補正を行う補正信号をPWM制御回路に出力する電圧制御要素とを備えたものである。
【0024】請求項2の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1の発明において、信号保持回路が保持した出力値に対し予め設定した一定の値へスロープ特性あるいは1次遅れ特性を持たせて追従させPWM制御回路に出力するバンプレス回路を設けたものである。
【0025】請求項3の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1または請求項2の発明において、系統状態監視装置が動作したとき、電流制御要素の動作開始を電圧制御要素の動作より遅らせる遅延要素を設けたものである。
【0026】請求項4の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項3の発明において、dq軸変換回路からのd軸電流信号の絶対値が一定時間以上継続して予め設定した一定値よりも小さいことを条件にして自励式交直変換器の運転を停止させる運転停止回路を設けたものである。
【0027】請求項5の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項4の発明において、dq軸変換回路からのd軸電流信号の設定値に対しては自励式交直変換器の定格出力電流あるいは直流定格電流を越えない値を制限値とし、dq軸変換回路からのq軸電流信号の設定値に対しては自励式交直変換器の定格出力電流値およびd軸電流信号の検出値に基づいて得られた電流の余裕分を制限値とする過電流制限回路を設けたものである。
【0028】請求項6の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項5の発明において、dq軸変換回路からのd軸電流信号が一定の範囲を逸脱したことを条件に直流送電システムを介して接続される相手側自励式交直変換器の制御装置で使用するd軸電流信号の設定値を通常運転時よりも絶対値の小さな値に変更するための融通電力変更回路を設けたものである。
【0029】請求項7の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、自励式交直変換器で交直変換を行い直流送電システムを介して電力融通を行う電力供給システムの自励式交直変換器の交流出力電流を直交座標軸上の有効電力成分のd軸および無効電力成分のq軸の2軸変数に変換するdq軸変換回路と、直流送電システムの直流電圧をその設定値に保つつ所定の有効電力設定値を満たすようなd軸の設定値を算出する直流電圧/有効電力制御回路と、所定の無効電力設定値を満たすようなq軸の設定値を算出する無効電力制御回路と、dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流がd軸およびq軸の設定値に追従するような制御率を算出する交流電流制御回路と、電力供給システムの交流母線の交流電圧位相を検出する位相検出回路と、位相検出回路からの交流電圧位相および交流電流制御回路からの制御率に基づいて直流電圧をその設定値に保ちながら設定値通りの有効電力および無効電力を出力するように自励式交直変換器を制御するPWM制御回路とを備えた自励式交直変換器の制御装置であり、自励式交直変換器が接続される交流系統の発電機が切り離された状態になったとき動作する系統状態監視装置と、dq軸変換回路からのd軸およびq軸の各出力電流を入力し一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を出力する一次遅れ回路と、系統状態監視装置の動作により直流電圧/有効電力制御回路からのd軸の設定値および無効電力制御回路からのq軸の設定値に代えて一次遅れ回路からの一次遅れのd軸およびq軸の出力電流を交流電流制御回路に出力するスイッチ回路と、交流母線の交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように低下した場合には絶対値が大きくなるように制御率の補正を行う補正信号をPWM制御回路に出力する電圧制御要素とを備えたものである。
【0030】請求項8の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項6の発明において、電圧制御要素による補正と電流制御要素による補正のうち電流制御要素による補正を先に行い、その結果得られた直交する2軸それぞれの信号値からそれらのベクトル和の大きさを演算し、その値に対して交流電圧が設定値より上昇した場合には絶対値が小さくなるように、交流電圧が低下した場合には絶対値が大きくなるように電圧制御要素による補正を行う電圧制御適正化回路を設けたものである。
【0031】請求項9の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項6の発明において、電圧制御要素による補正と電流制御要素による補正のうち電流制御要素による補正を先に行い、その結果得られた直交する2軸それぞれの信号値を増幅し、交流電圧が設定値より上昇した場合には出力値が低下し、交流電圧が低下した場合には出力が増大するよう動作する電圧制御要素の出力を各軸ごとの増幅した2軸それぞれの信号値に加算し、その際に加算前の値と加算後の値との正負の符号が反転しないよう加算後の値を制限するようにした電圧制御適正化回路を設けたものである。
【0032】請求項10の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項9の発明において、直交する2軸それぞれの信号値に比例した増幅率を演算する際に、2軸それぞれの信号値が零付近の一定範囲内の値の場合には増幅率を零とするようにしたものである。
【0033】請求項11の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項10の発明において、位相検出回路は、出力信号である検出位相と入力信号である瞬時位相の位相偏差を演算する位相差演算回路と、系統状態監視装置が動作したときは位相差演算回路からの位相偏差を事前の値に保持し系統状態監視装置が不動作のときは時々刻々変化する位相偏差を出力する信号保持回路と、信号保持回路が位相偏差を保持したときはその後1次遅れ特性によって保持値を零にするための一次遅れ回路と、信号保持回路の出力信号および一次遅れ回路の出力信号に基づいて比例積分演算を行い交流電圧の角速度を求めるフィルタ回路と、フィルタ回路の出力信号に基づいて交流電圧の位相角を演算する電圧制御発振器とを備えたものである。
【0034】請求項12の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項1ないし請求項10の発明において、位相検出回路は、出力信号である検出位相と入力信号である瞬時位相の位相偏差を演算する位相差演算回路と、位相偏差の比例積分演算を行い交流電圧の角速度を求めるフィルタ回路と、系統状態監視装置が動作したときフィルタ回路からの交流電圧の角速度を事前の値に保持し系統状態監視装置が不動作のときは時々刻々変化する交流電圧の角速度を出力する信号保持回路と、信号保持回路が交流電圧の角速度を保持したときはその後1次遅れ特性によって交流電圧の角速度を所定の角速度設定値にする一次遅れ回路と、フィルタ回路の出力信号および一次遅れ回路からの出力信号に基づいて交流電圧の位相角を演算する電圧制御発振器とを備えたものである。
【0035】請求項13の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項12の発明において、自励式交直変換器が接続された交流系統の接続点から送電線などを介して離れた地点での運転周波数を検出する角速度検出器を設け、位相検出回路における一次遅れ回路での角速度設定値として、角速度検出器で検出された周波数を用いるようにしたものである。
【0036】請求項14の発明に係わる自励式交直変換器の制御装置は、請求項13の発明において、角速度検出器で検出された運転周波数の値が一定の範囲内の値である場合には検出された周波数値を、検出された運転周波数の値が一定の範囲内を逸脱した場合には予め設定した角速度設定値を選択し、位相検出回路の一次遅れ回路に入力する同期適正化回路を設けたものである。
【0037】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係る自励式交直変換器の制御装置および被制御対象である自励式交直変換器が接続された交流母線と背後の交流系統の構成図である。図1では、図29に示した構成要素と同一の構成要素は同一符号を付けて重複した説明を省略すると共に、主回路部分(制御装置以外の部分)および制御装置の信号検出部分で従来と同じ部分については図を省略している。
【0038】この第1の実施の形態は、図29に示した従来例に対し、交流電流制御回路13とPWM制御回路15との間に制御率補正回路200を設けたものである。また、この制御率補正回路200は系統状態監視装置である遮断器状態監視装置25が動作したときに駆動され制御率の補正を行う。系統状態監視装置は自励式交直変換器3が接続される交流系統の発電機23が切り離された状態になったとき動作するものである。
【0039】交流系統の交流母線1には、自励式交直変換器3と並列に、変圧器18を介して負荷系統19および調相用キャパシタ20が接続されている。また、遮断器21、21’および交流送電線22を介して複数の発電機23を含む交流系統24と接続されている。遮断器状態監視装置25では送電線22の両端の遮断器21および遮断器21’が投入状態か開放状態かという状態を監視しており、いずれかの遮断器が三相開放状態となった場合に、自励式交直変換器3の制御装置に対して制御の切り換え指令信号を出力する。
【0040】自励式交直変換器の制御装置では、交流電流制御回路13の出力Cmd、Cmqがそれぞれ信号保持回路26、26’に与えられ、信号保持回路26、26’には、さらに保持指令信号として遮断器状態監視装置25の出力である制御切り換え指令信号が与えられる。
【0041】また、dq軸変換回路14の出力である交流電流の2軸成分Id、Iqは、交流電流制御回路13に対して電流検出値として与えられる一方、1次遅れ回路27、27’にも与えられ、各1次遅れ回路27、27’の出力は1次遅れを介さないId、Iq信号とそれぞれ加算器28、28’によって差分が演算され、スイッチ回路29、29’に入力される。スイッチ回路29、29’は通常時は開放状態で、遮断器状態監視装置25の出力がスイッチ投入指令信号として与えられる。スイッチ回路29、29’の出力は比例積分回路から成る電流制御要素36、36’に与えられ、その出力は加算器30、30’によって信号保持回路26、26’の出力に加算される。
【0042】一方、交流電圧検出器31により変換器母線1の電圧の大きさVacが検出され、加算器32により電圧設定値Vrefとの偏差を演算する。その結果得られた値がスイッチ回路33に入力される。スイッチ回路33は通常時は開放状態で、遮断器状態監視装置25の出力が投入指令信号として与えられる。スイッチ回路33の出力は電圧制御要素34に与えられる。電圧制御要素34は比例積分回路で構成され、その出力は加算器35、35’に与えられて、加算器30、30’の出力にさらに加算される。その結果得られた値が、補正された制御率Cmd’、Cmq’としてPWM制御回路15に入力され、PWM制御回路15ではそれらの値と位相検出回路16で得られた電圧位相θvに基づいて自励式交直変換器3に対するパルス信号を発生する。
【0043】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は交流系統の遮断器21、21’は投入されているので、自励式交直変換器3は複数の発電機23と接続された状態である。例えば中央給電指令所などから与えられた有効電力指令値Pref、無効電力指令値Qrefどおりの有効電力と無効電力とを交流系統に対して供給あるいは吸収しながら運転する。自励式交直変換器3の近傍の負荷系統19や調相用キャパシタ20に対しては複数の発電機23と自励式交直変換器3の両方から有効電力および無効電力が供給されるため、自励式交直変換器3の有効電力および無効電力出力は必ずしも負荷やキャパシタの容量と一致していなくても、交流電圧が定格値付近に保たれ安定に運転できる。
【0044】一方、遮断器21、21’が投入状態なので遮断器状態監視装置25の出力はオフであり、この信号により投入が行われるスイッチ回路29、29’、33はすべて開放されている。また、遮断器状態監視装置25の出力信号により入力値を事前の値に保持する信号保持回路26、26’は動作しておらず交流電流制御回路13から与えられる信号Cmd、Cmqがそのまま出力されている。以上の結果、加算器30、30’、35、35’に与えられるスイッチ回路29、29’、電圧制御要素34の出力はすべて零で、かつ信号保持回路26、26’の出力はそれぞれ入力値と等しい。こうした運転状態は、図29に示す従来の制御装置を使用した場合と全く同じである。
【0045】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合の動作を説明する。遮断器21が三相開放となることにより、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3、負荷系統19、調相用キャパシタ20は、発電機23を含む交流系統24と完全に切り離された状態となる。この状態において、負荷系統19や調相用キャパシタ20に対しては、自励式交直変換器3から適切な有効電力および無効電力を供給する必要があるが、通常運転時に使用されている有効電力/無効電力の設定値Pref、Qrefは接続された負荷等の容量に見合った値ではない。にもかかわらず、自励式交直変換器3は遮断器21開放後もそれらの設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収し続けるため、交流過電圧や電圧低下が発生し、安定な運転が行えなくなる。
【0046】そこで、第1の実施の形態の制御装置ではそれを防止するための動作を行う。すなわち、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25により検出し、スイッチ回路29、29’、33が投入される。また信号保持回路26、26’ではそれぞれの出力値を保持指令が与えられた時点での値に保持する。これにより信号保持回路26、26’の出力は一定となり、また、交流母線1の電圧が設定値Vrefよりも大きくなると加算器32の出力が負となり、比例積分回路で構成される電圧制御要素34の出力も負となる。この値が加算器35、35’に与えられて、補正された制御率Cmd’、Cmq’は補正前の値より小さくなる。
【0047】制御率Cmは、制御率Cmdの2乗と制御率Cmqの2乗との和の平方根で示され、PWM制御回路15で使用する正弦波信号を、直交する2軸成分に分離した値であり、そのベクトル和の大きさは正弦波の大きさに相当する。すなわち、制御率Cmは自励式交直変換器の交流出力電圧の大きさに相当する値である。従って、Cmd’、Cmq’が小さな値になることにより、変換器交流出力電圧が小さくなる。
【0048】自励式交直変換器3が接続された交流母線1には他に電源が接続されておらず、母線電圧の値は自励式交直変換器3の出力電圧により決まるので、変換器出力電圧が小さくなれば交流母線1の電圧も小さくなる。逆に変換器母線1の電圧の大きさが設定値Vrefより小さくなると、Cmd’、Cmq’の値が大きくなるよう補正が行われ、変換器出力電圧が大きくなり、交流母線1の電圧も大きくなる。このように動作することにより、変換器交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、自励式交直変換器3の有効電力/無効電力出力は自動的に接続された負荷や調相設備の容量に見合った値となる。交流電流制御回路13の出力は信号保持回路26、26’により固定されているので交流電流制御回路13に与えられる通常運転時の有効電力/無効電力設定値Pref、Qref、および交流電流制御回路13の動作は無視される。
【0049】自励式交直変換器3が発電機系統と切り離された後の定常運転状態では、以上の制御動作のみで安定に運転できる。ここで、遮断器開放直後の過電圧や電圧低下、それに伴う電圧歪みなどの外乱がある場合には、自励式交直変換器の出力が安定化するよう制御を行う必要がある。この安定化のために第1の実施の形態では電流制御要素36、36’で交流電流制御を行っている。
【0050】図2に交流電流制御を行った場合と行わない場合のディジタル・シミュレーション結果を比較して示す。図2(a)は交流電流制御を行った場合を示し、図2(b)は交流電流制御を行わなかった場合を示している。図2のケースは直流送電システムの逆変換器側で電源が切り離され、抵抗負荷140MWと調相用リアクトル200MVarのみが変換器に接続された状態になった場合である。電流制御を行わない場合には、図2(b)に示すように、有効電力や無効電力の出力振動がなかなか減衰せず相手端にも影響を与えるのに対し、電流制御を行った場合には、図2(a)に示すように、振動が高速に収束して安定に運転できているのがわかる。
【0051】自励式交直変換器3が突然、交流電源と切り離された状態で電流制御を行う場合に問題となるのは、有効電力成分、無効電力成分それぞれの適切な電流設定値が不明であることである。すなわち、接続された負荷や調相設備の容量が予めわかっていれば、その有効電力分をd軸電流設定値Idref、無効電力分をq軸電流設定値Iqrefとすれば、変換器出力と接続負荷や調相設備のバランスがとれるが、それらの値を予期することは困難である。
【0052】そこで、第1の実施の形態では、d軸電流検出値Idに対し1次遅れ回路27を介した値をd軸電流設定値、q軸電流検出値Iqに対し1次遅れ回路27’を介した値をq軸電流設定値として使用する。これは、Cmd、Cmqを固定しそれに対して交流電圧制御で補正をかけることにより、出力電流Id、Iqは自動的に負荷や調相設備とバランスした値になるので、その値自体を電流設定値とするものである。遮断器25開放時にはスイッチ回路29、29’が投入され、電流制御要素36、36’が動作して、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqが、それぞれ1次遅れ回路27、27’を介した振動成分の少ない値に追従するような補正信号が出力される。これが加算器30、30’に与えられることにより、Cmd、Cmqが有効電力や無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0053】以上述べたように、第1の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより自励式交直変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0054】次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図3は本発明の第2の実施の形態に係る自励式交直変換器の制御装置および被制御対象である自励式交直変換器が接続された交流母線と背後の交流系統の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、制御の切り換え指令信号として、遮断器21、21’の開信号に代えて、交流母線1の交流電圧の周波数変化の検出信号を使用するようにしたものである。
【0055】すなわち、遮断器状態監視装置25の代わりに、周波数偏差検出器37、レベル検出器38、リセット付き積分器39、レベル検出器40、交流電圧検出器41からなる系統状態監視装置を設ける。交流電圧検出器41により交流母線1の電圧を検出し、周波数偏差検出37では、交流電圧検出値の周波数と、例えば交流系統の定格周波数といった予め設定した一定の周波数値との偏差分を演算する。レベル検出器38では与えられた周波数偏差が一定のレベルを越えている場合に「1」、越えていない場合には「0」を出力してリセット付き積分器39に与える。リセット付き積分器39では入力値が「1」の場合はそれを積分し、入力値が「0」となった場合には出力をゼロリセットする。レベル検出器40ではリセット付き積分器39から与えられた値が予め設定した一定値を越えた場合、制御切り換え指令信号としてスイッチ回路29、29’、33に投入指令を、信号保持回路26、26’に対して信号保持指令を与える。
【0056】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は交流系統の遮断器21、21’は投入されているので、変換器母線1は発電機23と接続された状態であり交流母線1の周波数も発電機23の回転速度により決まるので、ほぼ定格値に保たれる。これにより周波数偏差検出器37の出力値は小さな値となり、レベル検出器38、リセット付き積分器39、レベル検出器40の出力はそれぞれ「0」である。従って、スイッチ回路29、29’、33に投入指令は与えられず各スイッチ回路は開放状態となる。また信号保持回路26、26’に保持指令信号は与えられないので、信号保持回路26、26’は入力値Cmd、Cmqをそのまま出力する。こうした運転状態は、図29に示す従来の制御装置を使用した場合と全く同じである。
【0057】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となることにより、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3、負荷系統19、調相用キャパシタ20は、発電機23を含む交流系統24と完全に切り離された状態となる。このため変換器母線の周波数を決める要素がなくなり周波数が変化する。また、負荷や調相設備の容量と変換器出力のバランスが崩れ、交流過電圧や電圧低下が発生し、安定な運転が行えなくなる。
【0058】第2の実施の形態の制御装置では、交流母線1の交流電圧の周波数が変動することにより周波数偏差検出器37の出力値が大きな値となり、これによってレベル検出器38の出力が「1」となる。発電機23が切り離された状態が継続すればこの状態が続くので、リセット付き積分器39の出力値が時間と共に大きくなり、一定時間が経過するとその値がレベル検出器40の設定レベルを越え、レベル検出器40は「1」を出力する。この信号が、スイッチ回路29、29’、33にそれぞれ投入指令として与えられ、信号保持回路26、26’に対しては保持指令信号とした与えられる。これにより、PWM回路15へ与えられる制御率Cmd’、Cmq’は、第1の実施の形態と同じように動作する。
【0059】この第2の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、変換器交流母線の周波数が継続して通常運転時の値から大きく逸脱したことを条件にして、交流電圧を一定に維持するよう制御することにより、変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0060】図4は、本発明の第3の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置の中の電圧制御要素34に対する入力信号を作成する部分の構成を示したものである。その他の部分については図1に示した第1の実施の形態又は図3に示した第2の実施の形態と同様であるので、図示を省略している。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態または図3に示した第2の実施の形態に対し、スイッチ回路33の代わりに、信号保持回路45、加算器46、スイッチ回路47、1次遅れ回路48、加算器49を設けたものである。
【0061】図4において、交流電圧検出器31による検出値Vacは加算器32および信号保持回路45へ入力される。信号保持回路45は通常運転時は入力信号と同じ値を出力し、図1における遮断器状態監視装置25または図3におけるレベル検出器40から与えられる制御切り換え信号によって出力信号を保持する。その出力信号は加算器46において予め設定された一定の値Vrefと突き合わされ、その差分がスイッチ回路47へ入力される。スイッチ回路47は通常運転時は開放状態で遮断器状態監視装置25またはレベル検出器40から与えられる制御切り換え信号によって投入される。スイッチ回路47の出力は1次遅れ回路48に入力され、1次遅れ回路48の出力は加算器49で信号保持回路45の出力に加算され、その出力はさらに加算器32に入力されて電圧検出値Vacとの差分が演算される。その結果得られた値が電圧制御要素34に入力される。
【0062】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は信号保持回路45が入力値をそのまま出力しており、またスイッチ回路47は開放状態である。これにより、加算器49に入力される値は電圧検出値Vacのみであり、加算器32ではこの値と電圧検出値Vacとの差分をとるため、結果として得られる値は零である。これにより電圧制御要素34の入力値および出力値は零となり、電圧制御要素34は動作していないのと等価である。従って、全体として通常運転時の動作は第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じである。
【0063】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21、21’の開放により、遮断器状態監視装置25またはリセット回路40が動作して、制御切り換え指令信号が与えられる。これにより、信号保持回路45ではその出力値を切り換え指令信号が与えられた時点の値に保持する。また、スイッチ回路47が投入される。これにより、制御回路切り換え直後の各部分の信号値は切り換え直前の値と等しいが、その後、電圧設定値Vrefと信号保持回路45の出力値との差分が1次遅れ回路48に与えられ、その出力が加算器49で信号保持回路45の出力に加算されることにより、加算器49の値は1次遅れ回路48の遅れ時定数に従って徐々に設定値Vrefに近づく。この値と電圧検出値Vacの差分が電圧制御要素34に与えられることにより、交流母線1の電圧が設定値Vrefと等しくなるよう制御される。
【0064】この第3の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、交流電圧を一定に維持するよう制御することにより自励式交直変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、また、この交流電圧制御を行う場合に1次遅れ回路48を介して信号を処理することにより、制御切り換え時の急峻な信号変化を防止し、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0065】図5は、本発明の第4の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置の中の電流制御要素36に対する入力信号を作成する部分の構成図である。その他の部分については図1に示した第1の実施の形態又は図3に示した第2の実施の形態と同様であるので、図示を省略している。また電流制御要素36’に対する入力信号を作成する部分は図5と同じ構成である。この第4の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態または図3に示した第2の実施の形態に対し、スイッチ回路29の代わりに、リセット付き1次遅れ回路50、NOT回路51を設けたものである。
【0066】図5において、交流電流検出値Idは加算器28およびリセット付き1次遅れ回路50へ入力される。リセット付き1次遅れ回路50は、リセット指令信号dが「1」のときは出力値yをリセット値rと同じ値にし、リセット指令信号dが「0」のときは入力値xに対する1次遅れ回路として動作する。リセット指令信号dとしては、遮断器状態監視装置25またはレベル検出器40の出力に対しNOT回路51を介した値を使用する。リセット付き1次遅れ回路50の出力値yは加算器28で電流検出値Idと突き合わされ、その差分が電流制御要素36へ入力される。
【0067】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25またはレベル検出器40の出力信号は「0」の状態なのでNOT回路51の出力すなわちリセット付き1次遅れ回路50に対するリセット指令信号dは「1」となる。これにより、リセット付き1次遅れ回路50の出力yはリセット値rすなわち電流検出値Idと等しくなる。この値が加算器28により電流検出値Idと突き合わされ差分が演算されるため、加算器28の出力は零である。これにより電流制御要素36の入力値および出力値は零となり、電流制御要素36は動作していないのと等価である。従って、全体として通常運転時の動作は第1の実施の形態および第2の実施の形態と同じである。
【0068】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21、21’の開放により、遮断器状態監視装置25またはリセット回路40が動作して、制御切り換え指令信号が与えられる。これにより、NOT回路51の出力すなわちリセット付き1次遅れ回路50に対するリセット指令信号が「0」となり、リセット付き1次遅れ回路50は1次遅れ回路として動作を開始する。つまり、1次遅れ回路50の出力yは電流検出値Idそのものから、Idに対して1次遅れを介した値に切り換わる。従って、加算器28の出力は必ずしも零ではなくなり、Idのゆっくりした変化と瞬時的な変化の差分が出力されることになる。これが電流制御要素36に与えられることにより、交流出力電流の振動や瞬時値な変化を抑制するよう制御が行われる。
【0069】また、図5では、d軸分の電流制御要素について説明したが、q軸分についても同じ構成の制御回路を適用することにより、以上の説明と同等に動作する。その他の部分の動作については、第1の実施の形態あるいは第2の実施の形態の制御回路と同じである。
【0070】この第4の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、変換器が突然交流電源から切り離された場合には、交流電圧を一定に維持するよう制御することにより、自励式交直変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力とを自動的に出力できる。
【0071】さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができ、また、この交流出力電流制御を動作させる場合にリセット付き1次遅れ回路50を介して切り換えを行うことにより、制御切り換え時の急峻な信号変化を防止できる。
【0072】ここで、系統状態監視装置として、図1における遮断器状態監視装置25、および、図3における周波数偏差検出器37、レベル検出器38、リセット付き積分器39、レベル検出器40、交流電圧検出器41の両方を設け、遮断器状態監視装置25とレベル検出器40との出力のOR信号を制御切り換え信号としてスイッチ回路29、29’、33および信号保持回路26、26’に与えるようにすることも可能である。
【0073】次に、本発明の第5の実施の形態を説明する。図6は、本発明の第5の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置のうち交流電流制御回路13とdq軸変換回路14の出力部分からPWM制御回路15の入力部分までを抜き出した部分の構成図である。その他の部分については、図1に示す第1の実施の形態の制御装置と同じであるので、図示および説明を省略する。この第5の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、信号保持回路26、26’が保持した出力値に対し予め設定した一定の値へ1次遅れ特性を持たせて追従させPWM制御回路15に出力するバンプレス回路201を設けたものである。
【0074】図6において、バンプレス回路201は、スイッチ回路42、42’、1次遅れ回路43、43’、加算器44、44’、および加算器45、45’から構成されている。信号保持回路26、26’の出力は、それぞれ加算器45、44、および加算器45’、44’に与えられる。一方、加算器45、45’には予め設定された一定の制御率設定値Cmdo、Cmqoが入力されており、これらの値から信号保持回路26、26’の出力を引いた値を演算し、スイッチ回路42、42’を介して1次遅れ回路43、43’に与えられる。
【0075】スイッチ回路42、42’は遮断器状態監視装置25の出力により制御され、通常運転時は開放状態で遮断器21、21’の三相開放が検出された場合に投入される。1次遅れ回路43、43’の出力は加算器44、44’で信号保持回路26、26’の出力値に加算され、その結果得られた値がさらに加算器30、30’に与えられる。
【0076】次に通常運転時の動作を説明する。通常時はスイッチ回路42、42’が開放状態なので1次遅れ回路43、43’の出力は零であり、加算器44、44’に対しては信号保持回路26、26’の出力値のみが入力される。従って、図1に示す第1の実施の形態と同じ動作となる。
【0077】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となることにより、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3、負荷系統19、調相用キャパシタ20は、発電機23を含む交流系統24と完全に切り離された状態となる。このため、負荷や調相設備の容量と変換器出力のバランスが崩れ、交流過電圧や電圧低下が発生し、安定な運転が行えなくなる。
【0078】図6に示す第5の実施の形態の制御装置では、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25により検出し、スイッチ回路29、29’、33、42、42’を投入する。また、信号保持回路26、26’では、それぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。1次遅れ回路43、43’には、信号保持回路26、26’の出力値と予め設定された一定の制御率設定値Cmdo、Cmqoとの差分が入力される。この場合、信号保持回路26、26’の出力が保持されているので、1次遅れ回路43、43’への入力値はステップ信号となる。
【0079】そして、加算器44、44’によって1次遅れ回路43、43’の出力値と信号保持回路26、26’の出力値とが加算される。これにより、加算器44、44’の出力は制御切り換え直後は、信号保持回路26、26’の出力値、すなわち制御切り換え直前の電流制御要素13の出力Cmd、Cmqと等しく、時間が経つにつれて1次遅れ回路43、43’の遅れ時定数に従って制御率設定値Cmdo、Cmqoに近づくよう変化し、最終的には制御率設定値Cmdo、Cmqoと一致する。
【0080】遮断器状態監視装置25からの信号による制御切り換え直前には、過渡的な交流過電圧や電圧低下により、信号保持回路26の出力値Cmd、Cmqは定常運転時の値とは大きく異なり、正または負の非常に大きな値になっている可能性がある。制御率Cmは前述したように変換器出力電圧に相当し、Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根が正弦波の大きさ、tan-1(Cmq/Cmd)は系統電圧に対する位相差である。例えば、有効電力、無効電力出力をそれぞれ零にしたい場合は変換器出力電圧が系統電圧と全く同じであればよく、その場合、Cmd=1、Cmq=0となる。自励式交直変換器3と交流母線1をつなぐ変換器用変圧器2のインピーダンスが定格容量の20%程度であれば、自励式交直変換器3が定格容量内の出力で運転する場合の変換器出力電圧、すなわち制御率Cmの大きさは0.8〜1.2程度の大きさとなる。
【0081】しかし、上記のように過渡的に大きな外乱が加わった場合には、これが5〜10といった非常に大きな値となる可能性があり、信号保持回路26、26’の出力がこうした値で保持されると、それに対して電圧制御要素34や電流制御要素36、36’により補正を行っても、適正な運転点に到達するのに時間がかかるという問題がある。
【0082】そこで、この第5の実施の形態において、例えばCmdo=1、Cmqo=0といった値を設定しておけば、交流電圧制御や交流電流制御による補正を行う前の制御率信号が通常運転に近い値となるため、補正の効果が高速に現れる。このように動作することにより、交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。また、電流制御要素36、36’が動作して、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqが、それぞれ1次遅れ回路27、27’を介した振動成分の少ない値に追従するような補正信号が出力される。これが加算器35、35’に与えられることにより、Cmd’、Cmq’が有効電力や無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0083】この第5の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、切り離されたことによる過渡変動が大きな場合でも、高速に変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0084】なお、この第5の実施の形態に対して、第2の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることも可能である。また、図6における1次遅れ回路43、43’のかわりにスロープ回路を用いるようにしても良い。
【0085】次に、本発明の第6の実施の形態を説明する。図7は本発明の第6の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置のうちの交流電流制御回路13とdq軸変換回路14の出力部分からPWM制御回路15の入力部分までを抜き出した部分の構成図である。この第6の実施の形態は、図6に示した第5の実施の形態に対し、切り換えスイッチ回路29、29’の動作を一定時間遅延させる遅延要素(遅延回路52)を追加して設けたものである。
【0086】図7において、遮断器状態監視装置25により得られた制御切り換え信号は、スイッチ回路33、42、42’に対し投入指令信号として、また信号保持回路26、26’に対し保持指令信号として与えられると共に、遅延回路52にも入力される。遅延回路52では遮断器状態監視装置25から制御切り換え信号が与えられてから、予め設定した一定の時間が経過した後に、その信号をスイッチ回路29、29’に対し投入指令信号として出力する。
【0087】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25は動作していないので、その出力はオフであり遅延回路52の出力もオフでなる。従って、スイッチ回路29、29’、33、42、42’はすべて開放状態で、信号保持回路26、26’は入力値Cmd、Cmqをそのまま出力している。従って、図6に示す第5の実施の形態と同じように動作する。
【0088】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となることにより、遮断器状態監視装置25が動作し、スイッチ回路33、42、42’が投入される。一方、遮断器状態監視装置25の出力は、一定の動作遅延時間をもつ遅延回路52を介してスイッチ回路29、29’に与えられる。つまり、遮断器状態監視装置25の動作と同時にスイッチ回路33、42、42’が投入され、信号保持回路26、26’の出力が保持されてから、一定時間が経過した後に、スイッチ回路29、29’が投入される。従って、電流制御要素36、36’の動作は遅れて開始される。これは、電流制御要素36、36’の動作は変換器出力の安定化には役立つが交流電圧制御の効果を小さくするという作用があるので、電圧制御要素34を先に動作させ、電圧を安定にしてから変換器出力を安定化させるためである。
【0089】すなわち、遮断器状態監視装置25によりスイッチ回路33、42、42’が投入されると、信号保持回路26、26’ではそれぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。1次遅れ回路43、43’に対しては信号保持回路26、26’の出力値と予め設定された一定の制御率設定値Cmdo、Cmqoとの差分が入力され、さらに1次遅れ回路43、43’の出力値と信号保持回路26、26’の出力値が加算されるので、加算器44、44’の出力は制御切り換え直後は信号保持回路26、26’の出力値、すなわち制御切り換え直前の電流制御要素13の出力Cmd、Cmqと等しく、時間が経つにつれて1次遅れ回路43、43’の時定数に従ってCmdo、Cmqoに近づくよう変化し、最終的にはCmdo、Cmqoと一致する。例えばCmdo=1、Cmqo=0といった値を設定しておけば、交流電圧制御や交流電流制御による補正を行う前の値が通常運転に近い値となるため、補正の効果が高速に現れる。
【0090】さらに、電圧制御要素34は、上記で得られた加算器44、44’の出力値に対してそれぞれ、加算器35、35’により補正を行う。このように動作することにより、変換器交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。
【0091】一方、遮断器状態監視装置25の出力が、一定の動作遅延時間をもつ遅延回路52を介してスイッチ回路29、29’に与えられることにより、スイッチ回路33、42、42’が投入され、信号保持回路26、26’の出力が保持されてから一定時間が経過した後に、スイッチ回路29、29’が投入される。これにより電流制御要素36、36’の動作が開始され、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqが、それぞれ1次遅れ回路を介した振動成分の少ない値に追従するような補正信号が出力される。これが加算器30、30’に与えられることにより、Cmd’、Cmq’が有効電力や無効電力の振動を抑制するように補正される。すなわち、遮断器21の三相開放が行われた場合、まず、通常運転時の交流電流制御回路13の出力値Cmd、Cmqの保持と交流電圧制御が行われ、その後一定時間が経過してから、電流制御要素36、36’による制御が開始される。
【0092】電流制御要素36、36’は、自励式交直変換器3の交流出力電流の検出値を有効電力、無効電力成分に分離した値Id、Iqに対し、1次遅れ回路27、27’を介した値を各軸電流の設定値として使用している。すなわち、検出された運転状態からなるべく運転点が変化しないように制御する働きがある。それに対し、電圧制御要素34は一定の設定値Vrefに追従するよう制御が行われ、例えば交流電圧検出値が設定値に比べ大きすぎる場合には電圧制御要素34は電圧を下げるために運転点(有効電力、無効電力)を変化させるよう動作する。
【0093】つまり、電流制御要素36、36’の動作は変換器出力の安定化には役立つが交流電圧制御の効果を小さくするという作用がある。ここで、この第6の実施の形態では、遮断器開放直後には交流電圧制御のみが動作しているので、電圧の変動をより効果的に抑制できる。この交流電圧制御の働きで交流電圧が設定値に近い値となり負荷や調相設備の容量とバランスのとれた運転点へ移行した時点で、交流電流制御が動作し始めて変換器出力が安定になるよう制御が行われる。
【0094】この第6の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、まず交流電圧制御のみを動作させて高速に変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに一定時間経過後に、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0095】図8は、本発明の第7の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置のうち遮断器状態監視装置25の出力信号によって切り換えを行う部分を抜き出した構成図である。この第8の実施の形態は、図6に示す第5の実施の形態に対し、電流制御要素の動作開始を電圧制御要素の動作より遅らせる遅延要素として、絶対値演算回路53、レベル検出器54、AND回路55、リセット付き積分器56、レベル検出器57を追加して設けたものである。
【0096】図8において、遮断器状態監視装置25により得られた制御切り換え信号は、図示省略のスイッチ回路42、42’および信号保持回路26、26’に与えられると共に、スイッチ回路33に入力され電圧制御要素34に与えられる。また、AND回路55にも入力される。
【0097】一方、交流電圧設定値Vrefと交流電圧検出値Vacとの偏差分である加算器32の出力は、スイッチ回路33の入力値として使われると共に絶対値演算回路53に入力され、絶対値演算回路53では電圧偏差の絶対値を求めてレベル検出器54に与える。レベル検出器54では入力された電圧偏差の絶対値が予め設定された一定のレベル以下の場合「1」を出力し、AND回路55へ与える。
【0098】AND回路55では遮断器状態監視装置25の出力とレベル検出器54の出力の両方が「1」となった場合に「1」を出力しリセット付き積分器56に入力する。リセット付き積分器56では入力信号が「0」の場合出力をゼロリセットし、入力信号が「1」であればそれを積分する。その結果得られた値がレベル検出器57に与えられ、レベル検出器57では入力値が一定値を越えたとき、スイッチ回路29、29’に対して投入指令信号を与える。
【0099】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフなのでAND回路55の出力が「0」となる。このためリセット付き積分器56がゼロリセットされ出力が「0」となりレベル検出器57は動作しない。従って、スイッチ回路29、29’、33、42、42’はすべて開放状態で、信号保持回路26、26’は入力値Cmd、Cmqをそのまま出力している。従って、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0100】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出し、スイッチ回路33、42、42’が投入される。また信号保持回路26、26’ではそれぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。さらに、電圧制御要素34が動作し、加算器35、35’により補正を行う。このように動作することにより、変換器交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。
【0101】一方、遮断器開放による過渡的な過電圧や電圧低下が生じている状態では、交流電圧設定値Vrefと検出値Vacの差が正または負の大きな値になるため、絶対値演算回路53の出力がレベル検出値54で設定されている一定のレベル値を越える。このためレベル検出値54の出力は「0」となる。AND回路55では遮断器状態監視装置25から与えられる信号は「1」となっているが、もう一方の入力値であるレベル検出器54の出力が「0」であるため、出力は「0」となる。これにより、リセット付き積分器56、レベル検出器57の出力も「0」となり、スイッチ回路29、29’の投入は行われない。
【0102】この状態で自励式交直変換器3が運転し続けると、電圧制御要素34により交流電圧Vacが設定値Vrefに近づくよう制御されるので、しばらくするとその偏差値である加算器32の出力が零に近い値となる。これにより絶対値演算回路53の出力が小さな値となりレベル検出器54の設定レベル以下となって、レベル検出器54の出力が「1」となる。これがAND回路55に入力され、もう一方の入力値はすでに「1」になっているため、AND回路55の出力が「1」になる。これがリセット付き積分器56によって積分されるため積分器56の出力は徐々に増加し、この状態が一定時間継続するとリセット付き積分器56の出力の大きさがレベル検出器57の設定レベルを越えて、レベル検出器57が動作し、スイッチ回路29、29’が投入される。
【0103】これにより、電流制御要素36、36’の動作が開始され、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqが、それぞれ1次遅れ回路を介した振動成分の少ない値に追従するような補正信号が出力される。これが加算器35、35’に与えられることにより、Cmd’、Cmq’が有効電力や無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0104】すなわち、遮断器21の三相開放が行われた場合、まず、通常運転時の交流電流制御回路13の出力値Cmd、Cmqの保持と交流電圧制御が行われ、交流電圧制御によって電圧が充分制御された状態になってから、交流電流制御が開始されるよう動作する。電流制御要素36、36’は、電圧制御要素34の効果を小さくするように動作するが、遮断器開放直後に交流電圧が大きく変動した場合には、交流電圧制御のみが動作し電圧の変動をより効果的に抑制できる。この交流電圧制御の働きで交流電圧が設定値に近い値となり、変換器の有効電力、無効電力出力が負荷や調相設備の容量とバランスのとれた運転点へ移行した時点で、交流電流制御が動作し始めて、変換器出力が安定になるよう制御が行われる。
【0105】この第7の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、変換器が突然交流電源から切り離され、交流電圧が大きく変動した場合には、まず交流電圧制御のみを動作させて高速に変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに交流電圧の変動が充分抑制された後に、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0106】なお、この第7の実施の形態においても第1の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることが可能である。
【0107】次に、本発明の第8の実施の形態を説明する。図9は本発明の第8の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置のうち交流電流制御回路13とdq軸変換回路14の出力部分からPWM制御回路15の入力部分までを抜き出した部分の構成図である。この第8の実施の形態は、図6に示した第5の実施の形態に対し、dq軸変換回路14からのd軸の電流信号Idの絶対値が一定時間以上継続して予め設定した一定の値よりも小さいことを条件にして自励式交直変換器3の運転を停止させる運転停止回路202を設けたものである。
【0108】図9において、運転停止回路202は、絶対値演算回路58、レベル検出器59、AND回路60、リセット付き積分器61、レベル検出器62から構成されている。遮断器状態監視装置25により得られた制御切り換え信号は、スイッチ回路29、29’、33、42、42’および信号保持回路26、26’に与えられると共に、AND回路60にも入力される。
【0109】一方、dq軸変換回路14の出力値である交流電流の有効電力成分検出値Id、無効電力成分検出値Iqのうち、Idが絶対値演算回路58に入力され、絶対値演算回路58はIdの絶対値をレベル検出器59に与える。レベル検出器59では入力された有効電力成分電流Idの絶対値が予め設定された一定のレベル以下の場合「1」を出力し、AND回路60へ与える。AND回路60では遮断器状態監視装置25の出力とレベル検出器59の出力の両方が「1」となった場合に「1」を出力しリセット付き積分器61に入力する。リセット付き積分器61では入力信号が「0」の場合出力をゼロリセットし、入力信号が「1」であればそれを積分する。その結果得られた値がレベル検出器62に与えられ、レベル検出器62では入力値が一定値をこえたとき、PWM制御回路15に対してパルス発生を停止する指令、すなわち変換器停止指令を与える。
【0110】ここで、dq軸変換回路14の出力値Id、Iqは三相の交流出力電流を直交する2軸成分に分解した値であり、第1の実施の形態ないし第7の実施の形態では、これが必ずしも電流の有効電力成分、無効電力成分である必要はない。しかし第8の実施の形態では、これらが有効電力成分、無効電力成分であることが重要なので、三相交流電流を有効電力成分Idと無効電力成分Iqとに分解する方法について説明する。なお、この方法は回転座標系を使用するもので、自励式交直変換器3の制御で一般的に用いられている方法である。
【0111】図10に、三相交流電流を有効電力成分と無効電力成分とに分解する場合の位相検出回路16とdq軸変換回路14との構成を示す。位相検出回路16の内部構成は従来技術として説明したものと同じであるので詳細は省略する。
【0112】位相検出回路16では三相交流電圧Vaの瞬時値から、三相のうち基準となる相の電圧位相θvを検出する。例えば三相電圧をVr、Vs、VtとしR相(Vr)を基準とした場合、Vrの瞬時位相がθvでありVs、Vtの位相はそれぞれ(θv−120°)、(θv+120°)となる。すなわち、下記(3.1)式、(3.2)式、(3.3)式の関係がある。
【0113】
Vr=Va・cos(θv) …(3.1)Vs=Va・cos(θv−120°) …(3.2)Vt=Va・cos(θv+120°) …(3.3)従って、図10で位相検出器16からdq軸変換回路14へ与えられる信号cos(θv)、sin(θv)は、それぞれ基準電圧Vrと同期した正弦波と、それから90°位相の遅れた正弦波である。
【0114】一方、dq軸変換回路14では、三相/二相変換回路141により、三相交流電流信号Ia(Ir、Is、It)を、下記の(4.1)式および(4.2)式により位相の90°ずれた二相信号に変換する。すなわち、R相電流Irの位相をθiとすると、(4.1)’式および(4.2)’式の関係がある。
【0115】
【数1】

【0116】また、演算回路142では、次式によって、電圧位相θvを基準とした回転座標系上の直交する2軸成分電流Id、Iqを求める。
【0117】
Id=cos(θv)・Iα+sin(θv)・Iβ …(5.1) Iq=sin(θv)・Iα−cos(θv)・Iβ …(5.2)これに式(4.1)’、(4.2)’を代入すると次の関係が得られる。
【0118】
Id=cos(θv)・Iα+sin(θv)・Iβ =Ia・[cos(θv)・cos(θi)+sin(θv)・sin(θi)]
=Ia・cos(θv−θi) …(5.1)′ Iq=sin(θv)・Iα−cos(θv)・Iβ =Ia・[sin(θv)・cos(θi)−cos(θv)・sin(θi)]
=Ia・sin(θv−θi) …(5.2)′すなわち、IdとIqは90°の位相差をもつ直交成分であり、その比率は電圧と電流の位相差(θv−θi)により決まる。
【0119】さらに、式(5.1)’、(5.2)’に交流電圧の大きさVaを掛けると、下記の(6.1)式および(6.2)式となる。
【0120】
Va・Id=Va・Ia・cos(θv−θi) …(6.1) Va・Iq=Va・Ia・sin(θv−θi) …(6.2)これは、電圧と電流の大きさの積に、その位相差の余弦値、正弦値をかけたもので、三相交流回路における有効電力、無効電力の定義そのものである。言い替えると、式(5.1)’、(5.2)’で得られる電流の二軸成分Id、Iqは、それぞれ有効電力、無効電力を電圧の大きさで割った値、すなわち有効電力成分の電流、無効電力成分の電流である。dq軸変換回路14を、以上説明したような構成とすることにより、Id、Iqが変換器出力電流の有効電力成分、無効電力成分となる。
【0121】次に、第8の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフでありAND回路60の出力が「0」となる。このためリセット付き積分器61がゼロリセットされ出力が「0」となりレベル検出器62は動作しない。従って、PWM制御回路15に対して停止指令は与えられず、自励式交直変換器3は運転を継続する。また、スイッチ回路29、29’、33、42、42’はすべて開放状態で、信号保持回路26、26’は入力値Cmd、Cmqをそのまま出力している。すなわち、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0122】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出することによって、スイッチ回路29、29’、33、42、42’が投入される。また信号保持回路26、26’ではそれぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。さらに、電圧制御要素34は、加算器44、44’の出力値に対してそれぞれ加算器35、35’により補正を行う。これにより、変換器交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。
【0123】また、電流制御要素36、36’の動作により、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqが、それぞれ1次遅れ回路を介した振動成分の少ない値に追従するような補正信号が出力される。これが加算器30、30’に与えられることにより、Cmd’、Cmq’が有効電力や無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0124】ここで、遮断器21の開放により発電機系統と切り離された交流母線1に接続される負荷および調相設備のうち、負荷がほとんどない場合には自励式交直変換器3が有効電力を供給する必要はなく、出力電流の有効電力成分Idが零に近い値となる。そのため、絶対値検出回路58の出力が小さな値となりレベル検出器59の設定レベルより小さな値になる。そのためレベル検出器59の出力が「1」となりAND回路60へ与えられる。AND回路60のもう一方の入力値は遮断器21が開放されたことにより「1」となっているので、AND回路60の出力が「1」となりリセット付き積分器61に与えられ、積分器61の出力は時間と共に増加する。この状態が一定時間継続すると、リセット付き積分器61の出力がレベル検出器62の設定レベルを越えレベル検出器62が動作して、PWM制御回路15に対し、自励式交直変換器3へ与えるパルス信号を停止する。
【0125】すなわち、自励式交直変換器3を停止するよう指令が与えられる。これにより交流母線1に接続された自励式交直変換器3は運転を停止する。交流系統に接続される負荷と調相設備のうち、調相設備は交流電圧を一定に維持して負荷へ安定した電力を供給するためのものであり、負荷が接続されていない場合に調相設備のみに無効電力を供給する必要性はない。従って、負荷がない場合には調相設備が接続されていても変換器を停止して問題はない。
【0126】一方、交流母線1に接続される負荷および調相設備のうち、負荷がある場合には、出力電流の有効電力成分Idが負荷量に応じた値となるためレベル検出器59の入力値が設定レベルより小さくなることはなく、AND回路60、リセット付き積分器61、レベル検出器62の出力は、それぞれ「0」でPWM制御回路15に対して停止指令信号は与えられず、自励式交直変換器3は図6に示す第5の実施の形態を適用した場合と同じように動作する。
【0127】すなわち、遮断器21の三相開放が行われた場合、自励式交直変換器3によって有効電力を供給しなくてはならない負荷が交流母線1に接続されていない場合には自励式交直変換器3を停止し、自励式交直変換器3によって有効電力を供給しなくてはならない負荷が交流母線1に接続されている場合には負荷の容量に応じた有効電力を供給するよう、運転が行われる。
【0128】この第8の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離され、交流電圧が大きく変動した場合には、自励式交直変換器の接続された交流母線1に負荷がある場合には交流母線1の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0129】一方、自励式交直変換器の接続された交流回路に電力を供給しなくてはならない負荷がない場合には、変換器を停止して直流回路を介して接続される健全側変換器、およびその背後の交流系統へ影響を与えるのを防止し、かつ自励式交直変換器が運転することによる電力損失を低減することができる。
【0130】なお、この第8の実施の形態に対し、第2の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることが可能である。また、第8の実施の形態では、第5の実施の形態に対して負荷がない場合に自励式交直変換器を停止するよう動作する運転停止回路202を追加する構成としたが、第1の実施の形態または第4の実施の形態に対し運転停止回路202を追加しても良い。
【0131】さらに、絶対値演算回路58へ与える入力信号として、dq軸変換回路14の出力信号Idの代わりに、Idに対する1次遅れ回路27の出力値、あるいは有効電力検出値(有効電力検出器9の出力)を使用しても良い。
【0132】次に、本発明の第9の実施の形態を説明する。図11は本発明の第9の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器の制御装置のうちdq軸変換回路14の出力Id、Iqを使用して交流電流制御を行い、それを制御率Cmに対する補正信号として加算器30、30’へ与える部分を抜き出した構成図である。その他の部分については第1の実施の形態ないし第8の実施の形態と同じ構成であるので、図示および説明を省略する。
【0133】この第9の実施の形態は、図6に示すの第5の実施の形態に対し、過電流制限回路203を設けたものである。過電流制限回路203は、リミッタ回路63、63’、演算回路64、符号反転回路65から構成されている。また、dq軸変換回路14は、図10に示したものと同様に自励式交直変換器3の交流出力電流を有効電力成分Idと無効電力成分Iqに分離する構成のものである。
【0134】図11において、遮断器状態監視装置25により得られた制御切り換え信号は、スイッチ回路29、29’、33、42、42’および信号保持回路26、26’に与えられ、また、交流電圧設定値Vrefと交流電圧検出値Vacとの偏差分である加算器32の出力は、スイッチ回路33を介して電圧制御要素34に入力され、電圧制御要素34では交流電圧Vacが設定値Vrefに追従するような信号を発生して加算器35、35’へ与える。
【0135】一方、dq軸変換回路14の出力Idは、加算器28と1次遅れ回路27へ入力され、Iqは加算器28’と1次遅れ回路27’へ入力される。1次遅れ回路27の出力はリミッタ回路63に与えられ値が制限される。ここでリミッタ回路63の上限値としては自励式交直変換器3の有効電力定格相当の電流値、下限値としては上限値に負の符号をつけた値を予め設定しておく。
【0136】リミッタ回路63により制限された値は、d軸電流設定値Idref’として加算器28に与えられて検出値Idと突き合わせが行われると共に、演算回路64に与えられる。また、1次遅れ回路27’の出力はリミッタ回路63’に与えられ値が制限される。ここでリミッタ回路63’で使用される上限値は演算回路64により与えられる。演算回路64では、予め設定された変換器の定格容量相当の電流値Imvaとリミッタ回路63の出力であるIdref’を使用して、次式によりリミッタ回路63’の上限値Iqmaxを演算する。
【0137】
【数2】

【0138】この値が上限値としてリミッタ回路63’に与えられ、また、符号反転回路65により負の値に変換してから、下限値としてリミッタ回路63’に与えられる。リミッタ回路63’により制限された値はq軸電流設定値Iqref’として加算器28’に与えられて検出値Iqと突き合わせが行われる。加算器28、28’の出力は、それぞれスイッチ回路29、29’を介して電流制御要素36、36’に与えられ、電流制御要素36、36’では、検出値Id、Iqが設定値Idref’、Iqref’に追従するような補正信号を出力して加算器30、30’に与える。
【0139】次に、第9の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフなので、スイッチ回路29、29’、33、42、42’は開放状態で、信号保持回路26、26’では入力信号をそのまま出力している。スイッチ回路29、29’が開放されているため、電流制御要素36、36’の出力は零で、リミッタ回路63、63’により与えられる信号の動作は自励式交直変換器3の制御に影響を与えない。従って、上位制御系から与えられる指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0140】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出して、スイッチ回路29、29’、33、42、42’が投入される。また信号保持回路26、26’ではそれぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。
【0141】さらに、電圧制御要素34は加算器35、35’に与えられて制御率Cmの補正を行う。これにより、交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。またdq軸変換回路14により変換器出力電流の検出値が有効電力成分Idと無効電力成分Iqに変換され、それぞれ加算器28、28’と1次遅れ回路27、27’に与えられる。
【0142】ここで、出力電流の検出値Id、Iqは自励式交直変換器3に接続された負荷や調相設備の容量に見合った値となるが、それらの容量が自励式交直変換器3の定格容量を越えている場合には過電流となる。例えば自励式交直変換器3の定格有効電力をPc、定格無効電力をQcとすると定格容量MVAcは、Pcの2乗とQcの2乗との和の平方根である。
【0143】それに対し、負荷の大きさがPL、調相設備の無効電力容量がQLで、PLの2乗とQLの2乗との和の平方根が定格容量MVAcより大きい条件のときに、負荷と調相設備の両方に適切な有効/無効電力を供給しようとすれば、自励式交直変換器3は過電流状態で運転しなくてはならない。これを避けるためには、有効電力か無効電力のいずれか一方、または両方の値を制限する必要がある。
【0144】第9の実施の形態では、まず1次遅れ回路27の出力に対し、リミッタ回路63により自励式交直変換器3の有効電力定格相当の電流の範囲内となるよう値を制限し、これを有効電力電流設定値Idref’とする。さらに、このIdref’と、変換器定格容量相当の電流値Imvaを使用して演算回路64で(7)式による演算を行い、得られた値Iqmax、−Iqmaxを使ってリミッタ回路63’により、1次遅れ回路27’の出力に対して制限を行い、無効電力電流設定値Iqref’を得る。
【0145】これにより、Idの2乗とIqの2乗との和の平方根がImvaより小さい場合は、1次遅れ回路27、27’の出力がそのまま設定値Idref’、Iqref’として使用される。Idの2乗とIqの2乗との和の平方根がImvaより大きい場合は、変換器容量を越えない範囲内で、かつ、有効電力成分を優先して制限された値が電流設定値Idref’、Iqref’となる。電流制御要素36、36’では検出値Id、Iqが、以上のようにして得られた設定値Idref’、Iqref’に追従するような制御を行い、その出力を加算器30、30’に与えて制御率信号を補正する。
【0146】これにより、自励式交直変換器3に接続された負荷と調相設備のうち、負荷に優先して適切な有効電力を供給し、その上で変換器容量として余裕のある範囲内で調相設備に無効電力を供給するよう、自励式交直変換器3の運転が行われる。負荷に充分な電力が供給されないときには、負荷トリップすなわち停電が発生するという問題が生じるが、調相設備に供給される無効電力不足時は交流電圧が低下するのみであり、この場合、調相設備をトリップすれば電圧は定格値に戻って安定に運転することが可能である。
【0147】この第9の実施の形態によれば、直流送電システムや直流電源システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された場合には、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御することにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0148】さらに、接続された負荷や調相設備の容量が大きく変換器過電流になる場合は、上記の1次遅れを介して得られる電流設定値の値を適切に制限することにより、自励式交直変換器に接続された負荷系統の停電を最小限に抑え、かつ自励式交直変換器の過電流を防止しながら運転を継続することができる。
【0149】なお、この第9の実施の形態に対し、第2の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることが可能である。また、第9の実施の形態では、第5の実施の形態に対して、有効電力成分、無効電力成分の電流設定値を制限する過電流制限回路203を追加する構成としたが、第1の実施の形態、第6の実施の形態ないし第8の実施の形態に対して過電流制限回路203を設けるようにしても良い。
【0150】次に、本発明の第10の実施の形態を説明する。図10は本発明の第10の実施の形態の説明図であり、自励式交直変換器3の制御装置66の構成について第1の実施の形態ないし第9の実施の形態と同一構成となる部分については、図示を省略して図示しており、自励式交直変換器3’の制御装置66’の構成について図29に示した従来例と同一である部分は省略して図示している。
【0151】この第10の実施の形態は、dq軸変換回路14からのd軸電流信号が一定の範囲を逸脱したことを条件に直流送電システムを介して接続される相手側自励式交直変換器3’の制御装置66’で使用するd軸電流信号の設定値を通常運転時よりも絶対値の小さな値に変更する融通電力変更回路204を設けたことを特徴とするものである。
【0152】図12において、自励式交直変換器3は変換器用変圧器2を介して交流母線1に接続されており、また交流母線1は遮断器21を介して発電機23を含む交流系統24と接続されている。さらに、交流母線1には変圧器18を介して負荷19、調相設備20が接続されている。自励式交直変換器3の制御装置66の内部では、交流電流検出器7により検出された変換器出力電流をdq軸変換回路14により有効電力成分Idと無効電力成分Iqとに変換する。
【0153】この第10の実施の形態では、ここで得られた有効電力成分Idを融通電力変更回路204にも入力する。すなわち、レベル検出器67に有効電力成分Idを入力し、レベル検出器67では、入力値が予め設定されたレベルを越えた場合に「1」を出力する。この場合の設定レベルとしては、自励式交直変換器3の有効電力定格相当の電流値の80〜100%程度の値を使用する。レベル検出器67の出力はAND回路68を介してリセット付き積分器69に入力される。
【0154】リセット付き積分器69では、入力値が「0」の場合には出力をゼロリセットし、入力値が「1」の場合にはそれを積分して出力する。この値がレベル検出器70に入力され、レベル検出器70では入力値が一定の値をこえた場合、「1」の出力を自励式交直変換器3’の制御装置66’内の直流電圧/有効電力制御回路11’に与える。一方、遮断器21が三相開放状態になった場合、それを遮断器状態監視装置25により検出して、制御装置66に対し制御切り換え信号を与えるが、この制御切り換え信号をAND回路68に対して入力として与える。
【0155】図13は、図12の回路において自励式交直変換器3の制御装置66内のレベル検出器70から信号を受け取る側の自励式交直変換器3’の制御装置66’内の直流電圧/有効電力制御回路11’の内部構成を示すブロック構成図である。
【0156】図13において、直流電圧検出器6’により得られる直流電圧検出値は設定値Edrefと突き合わされ、差分が直流電圧制御回路111’に入力される。また、有効電力検出器9’により得られる有効電力検出値は設定値Prefと突き合わされ、差分が有効電力制御回路112’に入力される。直流電圧制御回路111’、有効電力制御回路112’では、それぞれ入力値が零に近づくよう制御を行い、その出力は選択回路113’に入力される。選択回路113’では与えられた入力値のうち一方を選択して出力し、この値を有効電力成分電流の設定値Idrefとして、リミッタ回路114’を介して、交流電流制御回路13’に与える。
【0157】この第10の実施の形態では、スイッチ回路115’が設けられており、図12で説明した相手側自励式交直変換器3の制御装置66の中のレベル検出器70から与えられる信号により、スイッチ回路115’の切り換えを行う。スイッチ回路115’の入力端子a、bには、異なる値の有効電力成分電流の最大値が入力されている。通常は端子aが選択されており、ここに与えられている最大値Idmax1は有効電力定格相当の電流に対して120%〜130%程度の値である。また端子bには最大値Idmax2として有効電力定格相当の電流の80%〜100%程度の値が設定されている。スイッチ回路115’で選択された値が上限値としてリミッタ回路114’に与えられる。
【0158】次に、第10の実施の形態における通常運転時の動作を説明する。図12において、通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフであり自励式交直変換器3の制御装置66に対して制御切り換え指令は与えらない。また、遮断器状態監視装置25から融通電力変更回路204のAND回路68に入力される値も「0」なので、AND回路68、リセット付き積分器69、レベル検出器70の出力はすべて「0」となる。このため、相手端変換器の制御装置66’内の直流電圧/有効電力制御回路11’に対してスイッチ切り換え信号は与えられない。
【0159】これにより、図13のスイッチ回路115’では端子aが選択され、出力電流の有効電力成分設定値Idrefに対する上限リミット値はIdmax1、すなわち定格有効電力の120〜130%程度の値が使用される。これは定格100%に対し過渡的な変動分や回路損失を考慮したマージンを含んだ値であり、一般的に有効電力成分の電流の上限リミット値として使われる値と同じである。
【0160】従って、制御回路66は、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。また相手端変換器の制御回路66’は従来の制御回路と同じように動作して運転が行われる。
【0161】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出して、自励式交直変換器3側の制御装置66内の各スイッチ回路が投入され、信号保持回路26では、それぞれの出力値を保持指令信号が与えられた時点での値に保持する。これにより、変換器交流母線1の電圧は設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。
【0162】この場合、接続された負荷19の容量が大きいと、変換器出力電流の有効電力成分、すなわちdq軸変換回路14の出力Idが大きくなる。これが設定されたレベル値を越えるとレベル検出器67の出力が「1」となり、AND回路68に与えられる。AND回路68のもう一方の入力は遮断器21が開放された時点で「1」になっているためAND回路68の出力が「1」となる。これがリセット付き積分器69により積分され、一定時間以上その状態が続くと積分器出力がレベル検出器70の設定レベルを越え、レベル検出70の出力が「1」となる。
【0163】この信号が相手端自励式交直変換器3’の制御装置66’内の直流電圧/有効電力制御回路11’に与えられる。直流電圧/有効電力制御回路11’内では、図13に示すスイッチ回路115’がレベル検出器70から与えられる信号によって端子bへ切り換えられる。これにより、自励式交直変換器3’側の出力電流の有効電力成分は、定格の80〜100%程度の値に切り換えられる。
【0164】図12において、遮断器21が三相開放された場合、自励式交直変換器3が逆変換器運転することにより負荷19に有効電力を供給するが、その電力は直流回路を介してつながる自励式交直変換器3’が順変換器運転することにより、相手端交流系統1’側から供給されるものである。従って自励式交直変換器3’側の有効電力設定値あるいは有効電力成分電流の設定値が定格程度の値で制限されていれば、自励式交直変換器3’はそれ以上の電力を自励式交直変換器3側へ供給することができず、負荷19の容量がいくら大きくても、自励式交直変換器3が有効電力に関して過電流状態とはならない。
【0165】しかし、遮断器21の開放により自励式交直変換器3が発電機と切り離された状態は、通常の運転状態に比べ、わずかの外乱でも過電圧や過電流が発生しやすいため、定常的に定格程度の電力を融通していると、外乱によって過渡的な過電流が発生し、自励式交直変換器3が停止する可能性が高くなる。
【0166】そこで、この第10の実施の形態を使用すると、自励式交直変換器3が発電機と切り離された運転状態になった場合には、相手端自励式交直変換器3’側から融通される電力の最大値が通常運転時よりも小さな値に制限されるため、自励式交直変換器3側で多少の外乱があっても過電流は発生せず、直流送電システムが運転を継続して負荷19に電力を供給する。
【0167】この第10の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力できる。さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0168】また、接続された負荷の容量が大きい場合には、直流システムの相手端側から供給される有効電力の最大値を通常運転時よりも小さな値に切り換えることにより、変換器の過電流を防止し、安定に運転継続できる確率を高くすることができる。
【0169】なお、この第10の実施の形態に対し、第2の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることが可能である。また、第10の実施の形態では、レベル検出器67に与える値をdq軸変換回路14の出力Idとしたが、この代わりに、例えば1次遅れ回路27の出力信号、または有効電力検出器9による有効電力検出値を使用しても良い。また、図13の直流電圧/有効電力制御回路11’においては、スイッチ回路115’により制限値を切り換えるリミッタ回路114’を選択回路113’の後段に設ける構成としたが、これを直流電圧制御回路111’の後段および有効電力制御回路112’の後段に設ける構成としても同様の効果が得られる。
【0170】次に、本発明の第11の実施の形態を説明する。図14は、第11の実施の形態に係る自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、自励式交直変換器3が接続された交流母線1と背後の交流系統の構成を示す構成図である。この第11の実施の形態は、図29に示す従来例に対し制御率補正回路200’を設けたものである。この制御率補正回路200’は、一次遅れ回路27、27’、スイッチ回路71、71’、電圧制御要素34、加算器35、35’から構成されている。
【0171】図14において、交流母線1は自励式交直変換器3の接続された交流母線1であり、遮断器21、21’と交流送電線22とを介して発電機23を含む交流系統と接続されている。さらに、交流母線1には変圧器18を介して負荷19、調相設備20が接続されている。遮断器状態監視装置25は、遮断器21、21’の三相開放を検出した場合、制御切り換え信号を自励式交直変換器の制御装置に対して与えるものである。
【0172】直流電圧/有効電力制御回路11の出力Idref、無効電力制御回路12の出力Iqrefは、それぞれスイッチ回路71、71’に入力されている。スイッチ回路71、71’のもう一方の入力端子には、それぞれdq軸変換回路14により得られた有効電力成分の電流検出値Idに対して1次遅れ回路27を介した値、および無効電力成分の電流検出値Iqに対して1次遅れ回路27’を介した値が与えられており、各スイッチ回路71、71’は遮断器状態監視装置25からの信号により選択値を切り換える。
【0173】その結果得られた値を交流電流制御回路13に対して有効電力成分の電流設定値Idref’、無効電力成分の電流設定値Iqref’として入力する。一方、dq軸変換回路14の出力Id、Iqは電流検出値として交流電流制御回路13に入力され、交流電流制御回路13では各検出値が設定値Idref’、Iqref’に追従するよう制御を行う。
【0174】さらに、交流電圧検出値Vacと設定値Vrefの偏差がスイッチ回路33を介して電圧制御要素34に入力され、電圧制御要素34は入力値を零に近づけるような補正信号を発生し、加算器35、35’によって交流電流制御回路13の出力に加算される。こうして得られた制御率信号Cmd’、Cmq’がPWM制御回路15に入力され、PWM制御回路15ではその信号をもとにパルスを発生して自励式交直変換器3へ与える。
【0175】次に、第11の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフであり、スイッチ回路71、71’ではそれぞれ直流電圧/有効電力制御回路11の出力Idref、無効電力制御回路12の出力Iqrefが選択され出力される。また、スイッチ回路33は開放状態なので電圧制御要素34の出力は零で、交流電流制御回路13の出力に対する交流電圧制御による補正は行われない。
【0176】これにより、交流電流制御回路13では、上位制御系、すなわち直流電圧/有効電力制御回路11と無効電力制御回路12とから与えられた値をそれぞれ変換器出力電流の有効電力成分の設定値および無効電力成分の設定値として使用し、検出値がそれに追従するよう制御を行う。すなわち、従来の制御装置を使用した場合と同じ動作を行う。
【0177】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出する。これによって、スイッチ回路33が投入され、スイッチ回路71、71’が切り換えられ、交流電流制御回路13に与えられる電流設定値Idref’、Iqref’が、1次遅れ回路27、27’の出力値、すなわちdq軸電流の検出値Id、Iqに対して1次遅れを介した値に切り換えられる。また、電圧制御要素34には交流電圧設定値Vrefと検出値Vacの差分が入力され、Vacが設定値Vrefに追従するよう制御が行われる。
【0178】これにより、直流電圧/有効電力制御回路11や無効電力制御回路12といった上位制御系から与えられる電流設定値Idref、Iqrefは無視され、自励式交直変換器3は、交流母線1の電圧が設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。さらに、交流電流制御回路13の設定値が、交流出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqに対し1次遅れ回路27、27’を介した値に切り替わり、IdIqがこれらの値に追従するよう制御が行われ、制御率信号Cmd’、Cmq’が有効電力、無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0179】この第11の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、交流電流制御回路の設定値を、検出電流の有効電力成分、無効電力成分に対して1次遅れを介した値に切り換えることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0180】次に、本発明の第12の実施の形態を説明する。図15は本発明の第12の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、交流電流制御回路13に対する入力信号を作成する部分の構成を示したものである。その他の部分については、図14に示したの第11の実施の形態と同一であるので、同一部分の図示は省略する。
【0181】この第12の実施の形態は、図14に示した第11の実施の形態に対し、スイッチ回路71、71’の代わりに信号保持回路72、72’、スイッチ回路73、73’、1次遅れ回路74、74’、加算器75、75’、スイッチ回路76、76’を設けたものである。スイッチ回路73、73’、76、76’は通常時は開放状態で、遮断器状態監視装置25からの制御切り換え指令により投入される。また、信号保持回路72、72’は遮断器状態監視装置25からの制御切り換え指令により、出力を切り換え指令が与えられる直前の値に保持する。
【0182】直流電圧/有効電力制御回路11、無効電力制御回路12の出力は、それぞれ信号保持回路72、72’を介してスイッチ回路73、73’および加算器75、75’に与えられている。スイッチ回路73、73’の出力は1次遅れ回路74、74’を介して加算器75、75’に負の符号で与えられる。一方、dq軸変換回路14の出力である、変換器出力電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqは、電流検出値として交流電流制御回路13に入力されると共に、スイッチ回路76、76’を介して1次遅れ回路27、27’に与えられ、1次遅れ回路27、27’の出力は加算器75、75’に与えられる。加算器75の出力、すなわち信号保持回路72の出力と1次遅れ回路27の出力に1次遅れ回路74の出力が負で加算された値が電流の有効電力成分設定値Idref’として、また加算器75’の出力、すなわち信号保持回路72’の出力と1次遅れ回路27’の出力に1次遅れ回路74’の出力が負で加算された値が電流の無効電力成分設定値Iqref’として、交流電流制御回路13に与えられる。
【0183】なお、図15では図示を省略しているが、交流電流制御回路13の出力信号に対しては、図14の第11の実施の形態と同様に、加算器35、35’によって電圧制御要素34の出力が加算されてPWM制御回路15へ与えられる。
【0184】次に、第12の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフであり、スイッチ回路33、73、73’、76、76’はすべて開放されている。また信号保持回路72、72’は入力された値をそのまま出力している。これにより、加算器75、75’には、それぞれ直流電圧/有効電力制御回路11の出力Idref、無効電力制御回路12の出力Iqrefのみが入力される。すなわち交流電流制御回路13へ与えられる電流の有効電力成分設定値Idref’は直流電圧/有効電力制御回路11の出力Idrefと等しく、無効電力成分設定値Iqref’は無効電力制御回路12の出力Iqrefと等しい。また、スイッチ回路33は開放状態なので電圧制御要素34の出力は零で、交流電流制御回路13の出力に対する交流電圧制御による補正は行われない。
【0185】これにより、交流電流制御回路13では、上位制御系、すなわち直流電圧/有効電力制御回路11と無効電力制御回路12とから与えられた値をそれぞれ変換器出力電流の有効電力成分、無効電力成分の設定値として使用し、検出値がそれに追従するよう制御を行う。すなわち、従来の制御装置を使用した場合と同じ動作を行う。
【0186】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21が三相開放となったことを遮断器状態監視装置25で検出し、スイッチ回路33、73、73’、76、76’が投入される。また、信号保持回路72、72’では、その出力値を制御切り換え指令信号が与えられる直前の値に保持する。これにより、信号保持回路72、72’の出力が一定の値となり、かつ、スイッチ回路73、73’が投入されて信号保持回路72、72’の出力値が1次遅れ回路74、74’を介して信号保持回路72、72’の出力に負の符号で加算されることにより、それぞれの加算値は、切り換え直後は信号保持回路72、72’の出力に等しく、その後、1次遅れの時定数に従って零に近づき最終的には零となる。
【0187】これに、さらに1次遅れ回路27、27’の出力が加算される。この値は出力電流の有効電力成分検出値Id、無効電力成分検出値Iqに対して1次遅れを介したものである。これにより、交流電流制御回路13に与えられる電流設定値Idref’、Iqref’が、1次遅れ回路27、27’の出力値、すなわちdq軸電流の検出値Id、Iqに対し1次遅れを介した値に切り換えられる。
【0188】このように、通常時に使用されるIdref、Iqref信号から検出値に1次遅れを加えた値へ切り換える際の処理が、すべて1次遅れ回路を介して行われるため、切り換え時の信号のステップ変化が発生せず、図14の第11の実施の形態に比べ制御切り換えによる過渡変動を小さくできる。
【0189】また、図15では図示を省略しているが、図14の第11の実施の形態と同様に、電圧制御要素34の出力が加算器35、35’により交流電流制御回路13の出力に加算される。以上の動作により、直流電圧/有効電力制御回路11や無効電力制御回路12といった上位制御系から与えられる電流設定値Idref、Iqrefは無視され、自励式交直変換器3は交流母線1の電圧が設定値Vrefと等しくなるよう制御され、変換器出力は自動的に接続された負荷や調相設備に見合った値となる。さらに、交流電流制御回路13の設定値を、出力電流検出値の有効電力成分Id、無効電力成分Iqをそれぞれ1次遅れ回路27、27’を介した値に切り換え、Id、Iqがその値に追従するよう制御を行うことにより、制御率信号Cmd’、Cmq’が有効電力、無効電力の振動を抑制するように補正される。
【0190】この第12の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。また、通常時との切り換えを1次遅れ回路を介して行うことにより、切り換え時の過渡変動を小さく抑えることができる。
【0191】次に、本発明の第13の実施の形態を説明する。図16は本発明の第13の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、交流電流制御回路13およびdq軸変換回路14の出力信号部分からPWM制御回路15’の入力信号部分までの構成を示すものである。その他の部分は図1に示すの第1の実施の形態と同一であるので図示を省略する。
【0192】この第13の実施の形態は、図1に示し第1の実施の形態に対し、第1の実施の形態では電流制御要素36、36’による補正が行われた後の制御率信号のd軸成分、q軸成分に対して、それぞれ電圧制御要素34の出力が加算されているのに対し、第13の実施の形態では加算器30、30’の出力すなわち電流制御要素36、36’による補正が行われた後の制御率のd軸成分Cmd’、q軸成分Cmq’が電圧制御適正化回路205に与えられるようにしている。すなわち、制御率のd軸成分Cmd’、q軸成分Cmq’は、位相角演算回路77、制御率演算回路78に与えられており、電圧制御要素34の出力による補正は制御率演算回路78の出力に対して行われている点である。
【0193】図16において、電圧制御適正化回路205の位相角演算回路77では加算器30、30’の出力である制御率信号のd軸成分Cmd’、q軸成分Cmq’を使って、交流母線1の電圧位相θvに対する変換器出力電圧の相対位相である位相角θcを演算し、制御率演算回路78では変換器出力電圧の大きさに相当する制御率Cmを演算して出力する。
【0194】制御率演算回路78の出力に対して、加算器35で電圧制御要素34の出力が加算され、その値がリミッタ回路79を介してPWM制御回路15’に最終的な制御率信号として入力される。またPWM制御回路15’に対しては、位相角演算回路77の出力である位相角θcも入力され、PWM制御回路15’ではこれらの値と、位相検出器16から与えられる交流母線電圧位相であるθvを使ってPWM正弦波信号を発生させ、搬送波と突き合わせることによりパルス信号を発生して自励式交直変換器3へ与える。
【0195】ここで、制御率Cm、位相角θcと、交流母線電圧波形、変換器出力電圧波形、PWM制御信号波形の関係について説明する。図17(a)は交流母線1と、変圧器2、自励式交直変換器3のシステム構成であり、交流母線電圧をVac (θv)、変換器出力電圧をVcon(θv−θc)とすると、その位相差がいわゆる位相角θcとなる。PWM制御回路では、図17(b)に示すように変換器出力電圧Vconと同期し大きさがVconと比例する正弦波と搬送波の突き合わせを行って、その大小関係により、自励式交直変換器3に与えるパルス信号の発生タイミングを決めている。PWM制御で使用する正弦波の波高値が制御率Cmであり、この正弦波で交流母線電圧Vacと同期する成分がCmd、直交する成分がCmqである。例えばVacとVconが同位相の場合はCmq=0であり、位相が90°ずれていればCmd=0となる。以上の関係を式で表すと下記のようになる。
【0196】
【数3】

【0197】逆に書くと次のようになる。
【0198】Cmd=Cm・cos(θc) …(9.1)Cmq=Cm・sin(θc) …(9.2)PWM制御回路15では、以上の関係および交流母線電圧の位相θvから、正弦波信号を発生させる。ここで、位相角θc、Cmd、Cmqは定常的には一定の値であり交流母線電圧位相θvは時間と共に運転周波数で発振する値θv(t)である。従ってPWM正弦波信号は次式で与えられる。
【0199】
【数4】

【0200】実際の制御装置において(10)式の演算を行おうとすると、自乗、平方根、θcを求めるための逆正接の演算(式(8.2))などが必要となり、処理に時間がかかるため、一般的には、式(10)と等価な次式が使用される。
【0201】
Cm(t)= Cmd・cos(θv(t))+Cmq・sin(θv(t)) …(11)図29に示した従来の制御装置、および第1の実施の形態ないし第12の実施の形態の制御装置におけるPWM制御回路15では、上記(11)式を使用してPWM正弦波信号を発生させることを想定しているため、式(8.1)、式(8.2)の演算は不要である。
【0202】それに対して図16に示す第13の実施の形態では、位相角演算回路77、制御率演算回路78において、式(8.1)、式(8.2)の演算を行った上で、PWM制御回路15’においては式(10)を使用してPWM正弦波信号を発生させているものである。
【0203】ここで、図16における電圧制御要素34による補正信号と制御率Cmとの関係を考えると、電圧制御要素34による補正は変換器出力電圧の大きさを調節するためのものであり、その観点からみると、PWM正弦波信号の波高値であるCmを補正するのが最も効果的である。つまり、第13の実施の形態は演算処理時間がかかるという問題はあるが交流電圧制御による補正は適正に行われる方法であり、第1の実施の形態ないし第12の実施の形態のように、Cmd、Cmqそれぞれに対する補正を行う方法は、演算処理速度を速くすることができる一方、運転点によって電圧制御の効き具合が変化する可能性がある。こうして電圧制御要素34により補正された信号は下限リミッタ回路79により最小値が負の値にならないよう制限されて、PWM制御回路15’へ与えられる。
【0204】次に、第13の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフであり、スイッチ回路29、29’、33は開放されている。また信号保持回路26、26’は入力値をそのまま出力している。スイッチ回路29、29’が開放状態で信号保持回路26、26’が動作していないので、加算器30、30’の出力は交流電流制御回路13の出力Cmd、Cmqと等しい。また、スイッチ回路33が開放状態なので電圧制御要素34の出力は零となり、Cmに対する補正は行われない。これにより、PWM制御回路15’では、交流電流制御回路13から与えられた制御率信号Cmd、Cmqから制御率Cmと位相角θcを求め、それによってPWM制御を行う。
【0205】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21の三相開放を遮断器状態監視装置25で検出することによって、スイッチ回路33、29、29’が投入され、また、信号保持回路26、26’では、その出力値を制御切り換え指令信号が与えられる直前の値に保持する。従って、信号保持回路26、26’の出力は一定の値となり、また、スイッチ回路29、29’が投入されることにより、交流電流の有効電力成分Id、無効電力成分Iqはそれぞれ検出値に1次遅れをかけて振動成分などを取り除いた値に追従するよう制御される。また、その結果得られた制御率信号Cmに対して電圧制御要素34による補正が行われるため、変換器母線電圧が設定値Vrefに追従するよう変換器出力電圧の大きさが調節される。
【0206】ここで、加算器35の出力に対して下限リミッタ79を設けるのは、電圧制御要素34の補正により、加算器35の出力が負の値になるのを防止するためである。すなわち、制御率演算回路78では、(8.1)式により制御率Cmを求めており、この式(8.1)あるいは図17(b)に示すようにCmは正の値である。ところが、電圧制御要素34の出力値が大きな負の値になった場合、加算器35の出力が負となり、PWM正弦波信号は位相が180°反転して、波高値としては逆に大きくなる方向に作用する。このように、加算器35の出力が負になった場合、それをそのままPWM制御回路15’で使用すると、交流電圧制御による補正が正しく行われなくなり運転が不安定となるので、下限リミッタ回路79により、そうした現象を防止するものである。
【0207】この第13の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0208】次に、本発明の第14の実施の形態を説明する。図18は本発明の第14の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、交流電流制御回路13の出力部分からPWM制御回路15の入力部分までを抜き出した部分の構成を示している。
【0209】この第14の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、電圧制御適正化回路205’を設けたものである。この電圧適正化回路205’は、絶対値演算回路80、80’、増幅回路81、81’、乗算回路82、82’、符号判定回路83、83’、下限リミッタ回路84、84’、乗算回路85、85’から構成されている。
【0210】つまり、第1の実施の形態では電圧制御要素34の出力をそのまま加算器35、35’に入力していたのに対し、第14の実施の形態では、まず、信号保持回路26、26’の出力と電流制御要素36、36’の出力とを加算した値を、絶対値演算回路80、80’と符号判定回路83、83’に入力し、絶対値演算回路80、80’では入力の絶対値を増幅回路81、81’を介して乗算器82、82’へ与える。
【0211】一方、符号判定回路83、83’では入力が正の値であれば「+1」、負の値であれば「−1」を出力して乗算器85、85’へ与える。乗算器82、82’では増幅器81、81’の出力と電圧制御要素34の出力のかけ算を行い、結果を加算器35、35’へ与える。加算器35、35’では乗算器82、82’の出力と絶対値演算回路80、80’の出力を加算し、下限値を零に制限する下限リミッタ回路84、84’を介して乗算器85、85’に与え、符号判定回路83、83’の出力とかけ算する。こうして得られた値が最終的な制御率信号Cmd’、Cmq’としてPWM制御回路15へ与えられる。
【0212】次に、第14の実施の形態の通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器状態監視装置25の出力がオフであり、スイッチ回路29、29’、33は開放状態で、信号保持回路26、26’は入力された値をそのまま出力している。この結果、加算器30の出力は交流電流制御回路13の出力Cmdと等しく、一方、電圧制御要素34の出力が零なので乗算器82の出力も零となる。加算器30の出力は絶対値演算回路80、加算器35を介して最小値を零に制限する下限リミッタ84に与えられるが、絶対値をとっており、かつ加算器35に入力される乗算器82の出力が零であるため下限リミッタ84の入力値は必ず零または正の値となり、値が制限されることはない。
【0213】つまり、下限リミッタ84の出力は交流電流制御回路13の出力Cmdの絶対値に等しい。この値が乗算回路85によって加算器30の出力と同じ正負符号の値に変換される。従って、PWM制御回路15へ入力される制御率Cmd’は交流電流制御回路13の出力Cmdに等しくなる。同様に、PWM制御回路15へ入力されるCmq’は交流電流制御回路13の出力Cmqに等しくなる。以上のように、通常運転時においては、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0214】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21の三相開放を遮断器状態監視装置25で検出して、スイッチ回路29、29’、33が投入され、信号保持回路26、26’の出力が保持される。これにより、加算器30の出力は信号保持回路26の出力である固定の値に対し電流制御要素36によって補正を加えた値となり、その値が正であるか負であるかによって乗算器85には「+1」または「−1」が入力される。
【0215】一方、加算器30の出力が絶対値演算回路80、増幅回路81を介して乗算器82に与えられることにより、加算器30の出力の絶対値と比例した値が電圧制御要素34の出力にかけ算され、その値が加算器35で絶対値演算回路80の出力に加算される。さらに、下限リミッタ84により加算器35の出力が零以下にならないよう制限されるため、電圧制御要素34の出力が負の大きな値であっても乗算器85に与えられる信号が負の値になることはない。この値に対し、符号判定回路83の出力である「+1」または「−1」が乗算され、最終的な制御率Cmd’が得られてPWM制御回路15に入力される。交流電流制御回路13の出力Cmqに対しても全く同じように処理が行われる。
【0216】以上により、d軸、q軸それぞれに、交流電圧が設定値より大きくなった場合には制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が小さくなるよう、交流電圧が設定値より小さくなった場合には制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が大きくなるよう、かつこの補正によりCmd、Cmqの正負符号が反転することがないように、電圧制御要素34による補正が行われる。
【0217】交流電圧制御による制御率Cmの補正は、第13の実施の形態で説明したように、Cmd、Cmqの個々に対して行うのではなく、式(8.1)に示したCm(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)に対して行うのが理想的であるが、そのためには、制御装置内でCmの演算を行う必要があるので処理が複雑になる。そこで、Cmに補正を行うのと等価な補正を、CmdとCmq個々に対して行う方法について考えると、Cmの式(8.1)をCmdについて微分、Cmqについて微分した式は、それぞれ次のようになる。
【0218】
【数5】

【0219】これにより、交流電圧制御によるCmの補正信号、すなわちΔCmが与えられ、それをCmd、Cmqに個別に与える場合、それぞれ(12.1)式、(12.2)式に比例した増幅率で増幅して与えるのが理論的には適切である。しかし、(12.1)式や(12.2)式を使用すると、自乗や平方根の演算が必要となり処理が複雑になる。図18の第14の実施の形態は、(12.1)式、(12.2)式で、Cm(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)は一定と仮定し、ΔCmに対して、Cmd、Cmqの大きさに比例した増幅率を考慮して補正を行うものである。
【0220】次に、Cmd、Cmqの値を一旦絶対値に変換して、交流電圧制御による補正を行った後に、再度、正負の符号を乗算する理由について説明する。第13の実施の形態で説明したように、交流電圧制御による補正は、制御率Cmの大きさすなわちPWM正弦波信号の波高値を補正するものである。制御率Cmは常に正の値であるのに対し、Cmd、Cmqは運転点によっては負の値になる可能性がある。例えば、Cmdが負の値のときに、その値に対して、直接、交流電圧制御による補正を加えると、Cmdの絶対値は電圧を上げたいとき(交流電圧制御の出力が正)のときに小さくなり、電圧を下げたいとき(交流電圧制御の出力が負)のときに大きくなるという逆の作用をしてしまう。こうしたことを避けるため、Cmd、Cmqの絶対値に対して交流電圧制御による補正を行い、補正した後の値を再度、正負の符号を考慮した値に変換している。
【0221】また、交流電圧制御による補正信号がCmdやCmqの絶対値よりも大きな負の値になると、補正した後の値、すなわち加算器35、35’の出力が負の値になってしまう。これにより、Cmd、Cmqは正負が反転、すなわちPWM正弦波の位相が180度逆転してしまい、しかも電圧を下げたいにもかかわらずCmの大きさ、すなわちPWM正弦波の波高値は大きくなり、安定に運転できなくなる。リミッタ回路84、84’はこうした現象を防止するためのものである。
【0222】自励式交直変換器3に接続される負荷や調相設備の種類、あるいは容量によっては、このような問題の生じる運転点へ移行する可能性がないシステムもあり、その場合にはCmd、Cmqを絶対値に変換したりリミット回路を設けたりする必要はない。
【0223】この第14の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、接続された負荷や調相設備の容量、種類に関わらず、交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して自励式交直変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0224】次に、本発明の第15の実施の形態を説明する。図19は本発明の第15の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、交流電流制御回路13の出力である制御率信号Cmd、CmqからPWM制御回路15に入力される補正された制御率信号Cmd’、Cmq’までを抜き出した部分の構成図である。
【0225】この第15の実施の形態は、図18に示した第14の実施の形態に対して、演算回路86、正規化回路87、87’を追加して設けたものである。つまり、第14の実施の形態では、乗算器82、82’に対して、加算器30、30’で補正された後の制御率信号Cmd、Cmqの絶対値と比例した値(増幅回路81、81’で増幅した値)を入力していたのに対し、第15の実施の形態では、演算回路86において、Cm(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)の演算を行い、得られた値を正規化回路87、87’に与える。正規化回路87、87’では、それぞれ増幅器81、81’から与えられた、補正されたCmd、Cmqの絶対値に比例する値を上記の演算で得られたCmで割り算することにより正規化し、それを乗算器82、82’に与えて電圧制御要素34の出力とかけ算する。
【0226】すなわち、図18に示す第14の実施の形態では、乗算回路82、82’に与えられる信号が、加算器30、30’で補正されたCmd、Cmqの絶対値に比例する値だったの対し、図19に示す第15の実施の形態では、Cmd/(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)、Cmq/(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)の絶対値に比例する値となる。
【0227】第15の実施の形態の通常運転時の動作は、第1の実施の形態ないし第14の実施の形態と同様に、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0228】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21の三相開放を遮断器状態監視装置25で検出して、スイッチ回路29、29’、33が投入され、信号保持回路26、26’の出力が保持される。これにより、加算器30の出力は信号保持回路26の出力である固定の値に対し電流制御要素36によって補正を加えた値となり、その値が正であるか負であるかによって乗算器85には「+1」または「−1」が入力される。
【0229】一方、加算器30の出力が絶対値演算回路80、増幅回路81、正規化回路87を介して乗算器82に与えられることにより、加算器30の出力である補正されたCmdの正規化された絶対値、すなわち、Cmd/(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)の絶対値と比例した値が電圧制御要素34の出力にかけ算され、その値が加算器35で絶対値演算回路80の出力に加算される。さらに、下限リミッタ84により加算器35の出力が零以下にならないよう制限され、符号判定回路83の出力である「+1」または「−1」が乗算され、最終的な制御率Cmd’が得られる。交流電流制御回路13の出力Cmqに対しても全く同じように処理が行われる。
【0230】以上により、d軸、q軸それぞれに、交流電圧が設定値より大きくなった場合には制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が小さくなるよう、交流電圧が設定値より小さくなった場合には制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が大きくなるよう、かつ補正によりCmd、Cmqの正負が反転しないように、電圧制御要素34による補正が行われる。
【0231】第14の実施の形態で説明したように、Cm自体に補正を行う代わりにCmd、Cmq個々に補正を行う場合、Cmd/(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)、Cmq/(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)に比例させて行うのが理論式どおりの方法であり、第14の実施の形態では演算処理の容易性から、(Cmdの2乗とCmqの2乗との和の平方根)を一定と仮定した方法を使用していたが、第15の実施の形態は、これらの式を忠実に制御回路にあてはめたものである。
【0232】第15の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、接続された負荷や調相設備の容量、種類に関わらず、変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0233】ここで、この第14の実施の形態および第15の実施の形態に対し、第2の実施の形態ないし第4の実施の形態を組み合わせることが可能である。また、第14の実施の形態および第15の実施の形態では、図1に示す第1の実施の形態に対し、Cmd、Cmqと比例した増幅率で交流電圧制御による補正を行う電圧制御適正化回路205、205’を追加する構成としたが、第5の実施の形態ないし第第10の実施の形態に対して追加する構成とすることも可能である。
【0234】また、第14の実施の形態および第15の実施の形態において、増幅回路81、81’、乗算回路82、82’、演算回路86、正規化回路87、87’を省略し、電圧制御要素34の出力を直接、加算器35、35’に加える構成とした場合、電圧制御による補正をCmd、Cmqに比例させて行うことによる効果はなくなるが、第14の実施の形態で説明したような、Cmd、Cmqが負の値の場合に発生する正負符号の反転という問題を防止することができ、Cmd、Cmqを一旦絶対値に変換しないで交流電圧制御による補正を行う場合に比べて安定に運転できる接続負荷の大きさや容量の範囲を大きくできる。これは、第1の実施の形態ないし第10の実施の形態に対して、絶対値演算回路80、80’、符号判定回路83、83’、下限リミッタ回路84、84’、乗算回路85、85’を追加したものとも言える。
【0235】次に、本発明の第16の実施の形態を説明する。図20は本発明の第16の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の説明図であり、交流電流制御回路13の出力である制御率信号Cmd、CmqからPWM制御回路15に入力される補正された制御率信号Cmd’、Cmq’までを抜き出した部分の構成図である。この第16の実施の形態は、図18に示した第14の実施の形態に対し、デッドバンド回路88、88’を追加して設けたものである。デッドバンド回路88、88’は、絶対値演算回路80、80’から与えられた入力が、零に近い一定値(例えば0.1)以下の場合に零を出力し、一定値(0.1)を越えた場合には入力から0.1を引いた値を出力するものである。
【0236】第16の実施の形態における通常運転時の動作は、第14の実施の形態と同様に、指令値Idref、Iqrefに従って動作する交流電流制御回路13の出力Cmd、CmqがそのままPWM制御回路15の入力値Cmd’、Cmq’となって運転が行われる。
【0237】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器21の三相開放を遮断器状態監視装置25で検出して、スイッチ回路29、29’、33が投入され、信号保持回路26、26’の出力が保持される。これにより、加算器30の出力は、信号保持回路26の出力である固定の値に対し電流制御要素36によって補正を加えた値となり、その値が正であるか負であるかによって乗算器85には「+1」または「−1」が入力される。
【0238】一方、加算器30の出力が絶対値演算回路80、デッドバンド回路88、増幅回路81を介して乗算器82に与えられることにより、加算器30の出力である補正されたCmdの絶対値と、ほぼ比例した値が電圧制御要素34の出力にかけ算され、その値が加算器35で絶対値演算回路80の出力に加算される。さらに、下限リミッタ84により加算器35の出力が零以下にならないよう制限され、符号判定回路83の出力である「+1」または「−1」が乗算され、最終的な制御率Cmd’が得られる。交流電流制御回路13の出力Cmqに対しても全く同じように処理が行われる。
【0239】以上により、d軸、q軸それぞれに、交流電圧が設定値より大きくなった場合には、制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が小さくなるよう、交流電圧が設定値より小さくなった場合には制御率信号Cmd、Cmqの絶対値が大きくなるよう、かつ補正によりCmd、Cmqの正負が反転しないように、電圧制御要素34による補正が行われる。
【0240】ここで、デッドバンド回路88、88’を設けたことにより、CmdあるいはCmqが零付近の値の場合は、増幅器81、81’の出力が零、すなわち乗算器82、82’の出力が零となるため、交流電圧制御による補正が行われない。
【0241】このようなデッドバンドを設ける理由について以下に説明する。第14の実施の形態や第15の実施の形態では、電圧制御による補正を制御率Cmに対して行う代わりに、簡易な演算回路を使用してCmd、Cmq個々に補正を行っている。この際、Cmd、Cmqの絶対値に対して電圧制御要素34の出力を加算した後に正負の符号を調整している。ここで、電圧制御による補正前のCmdあるいはCmqの値が零近辺で、高調波成分の重畳などにより正負が頻繁に反転するような条件となった場合、電圧制御要素34の出力値が小さければ問題ないが、その出力値が大きいと、乗算器82、82’の出力が大きな値となり、これに対して乗算器85、85’により「+1」または「−1」がかけ算されるが、この符号が頻繁に反転するため、結果として得られるCmd’あるいはCmq’の値が正負の反転を繰り返し、かつその絶対値が大きな値であるため運転が不安定となる可能性がある。
【0242】こうした現象を検証したシミュレーション結果を図21に示す。図21(a)はデッドバンド回路88、88’のない場合の特性図であり、図21(b)は0.1のデッドバンド回路88、88’を設けた場合の特性図である。それぞれ交流電圧制御による補正を行う前と後のCmd、Cmqの波形を示している。図21(a)では途中から補正後のCmd、Cmqが大きくハンチングして不安定になっているのに対し、図21(b)では安定に運転できており、デッドバンドを設けることによる効果が明かである。
【0243】自励式交直変換器3に接続される負荷や調相設備の種類、容量によっては、このような問題の生じる運転点へ移行する可能性がないシステムもあり、その場合にはデッドバンド回路88、88’を設ける必要はない。
【0244】この第16の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は中央給電指令所などから与えられる設定値どおりの有効電力、無効電力を供給あるいは吸収するよう運転を行い、自励式交直変換器が突然交流電源から切り離された状態になった場合には、接続された負荷や調相設備の容量、種類に関わらず、変換器交流母線の電圧を一定に維持するよう制御することにより、過電圧や電圧低下を防止して変換器の接続された負荷や調相設備の容量に見合った値の有効電力と無効電力を自動的に出力でき、さらに、出力電流の有効電力成分、無効電力成分に対し1次遅れを介した値を設定値として出力電流を制御する回路を動作させることにより、有効電力や無効電力の変動を抑制し、より安定な運転を継続することができる。
【0245】また、どのような運転点であっても交流電圧制御による補正のハンチングを防止し、安定に運転を行うことができる。
【0246】第16の実施の形態では、増幅器81、81’の入力側にデッドバンド回路88、88’を設けているが、増幅器81、81’の出力側にデッドバンド回路88、88’を設けても同様の効果が得られる。この場合、デッドバンドの設定値は増幅器の増幅率を考慮した値にする必要がある。
【0247】次に、本発明の第17の実施の形態を説明する。図22は本発明の第17の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の構成図である。この第17の実施の形態における位相検出回路16’は、図31に示した従来の位相検出回路16に対し、信号保持回路168、スイッチ回路169、1次遅れ回路170、加算器171を追加したものである。すなわち、遮断器21が三相開放状態となった場合に、遮断器状態監視装置25から与えられる信号によって、スイッチ回路169が投入され、信号保持回路168では出力値が直前の値に保持され、一次遅れ回路170からのその保持値の一次遅れ信号を加算器171で加算してフィルタ回路166に入力するようにしたものである。
【0248】次に通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1は遮断器21、21’を介して、複数の発電機23を含む交流系統24に接続されている。これにより、交流母線1の交流電圧の周波数は発電機23の回転数により決まる。ここで、位相検出回路16’では、遮断器状態監視装置25の出力はオフであり、スイッチ回路169は開放状態、また信号保持回路168では入力信号をそのまま出力している。交流電圧検出器8により検出された三相交流電圧が三相/二相変換回路161、正規化回路162によって直交する2軸量cosθd、sinθdに変換され、さらに、これらの値と位相検出回路16’の出力位相であるθvを使って、位相差演算回路163によりその位相差Δθ=θv−θdが演算され、信号保持回路168に与えられる。信号保持回路168はこの値をそのまま出力し、またスイッチ回路169が開放され1次遅れ回路170の出力は零になっているため、加算器171の出力Δθ’は位相差演算回路163の出力Δθと等しくなる。
【0249】以上の結果、の第17の実施の形態による位相検出回路16’は、通常運転時は図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23の回転数で決まる周波数に同期して発振する位相検出値θvを出力する。これにより、自励式交直変換器3にはθvを基準位相としてパルス信号が与えられ、発電機23と同期した周波数で自励式交直変換器3が運転される。
【0250】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合の動作を説明する。遮断器21が三相開放となると、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3は、発電機23と切り離された状態になる。このため、交流母線1の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、自励式交直変換器3の運転周波数により決まることになる。自励式交直変換器3の運転周波数を決めるのは位相検出回路16’中のフィルタ回路166の出力である角速度ωである。ここで、フィルタ回路166は比例積分回路で構成されているので、その入力、すなわち位相差Δθ’が零であれば角速度ωは一定に保たれ安定に運転される。
【0251】しかし、遮断器21が開放されたことによる過渡的な外乱により位相差Δθ’の信号が大きく変動する可能性があり、その場合は自励式交直変換器3の運転周波数すなわち交流母線電圧の周波数が上昇、あるいは低下する。
【0252】ここで、図22に示す第17の実施の形態の位相検出回路16’を使用すると、遮断器21が開放されたことを遮断器状態監視装置25により検出して、スイッチ回路169を投入し、信号保持回路168の出力信号を直前の値に保持する。これにより、交流電圧検出器8から与えられる三相交流電圧信号の値に関わらず、信号保持回路168から加算器171に与えられる信号は一定値となる。また、同じ信号がスイッチ回路169および1次遅れ回路170を介して負の符号で加算器171に与えられるため、加算器171の出力Δθ’は、制御切り換え直後は信号保持回路168の出力値に等しく、その後1次遅れ回路170の時定数に従って零に近づき最終的には零となる。フィルタ回路166は比例積分回路で構成されているため、Δθ’が零となることにより、フィルタ回路166の出力である角速度ωが一定の値となり、自励式交直変換器3は一定の周波数で発振する位相θvを基準位相として運転される。
【0253】この第17の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式交直変換器が突然その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を一定値に切り換えることにより、自励式交直変換器自体の運転周波数を一定の値にして、交流母線の周波数の上昇、低下を防止し、接続される負荷系統に安定した周波数の交流電力を供給しながら運転することができる。また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱を小さくすることができる。
【0254】次に、本発明の第18の実施の形態を説明する。図23は本発明の第18の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の構成図である。この第18の実施の形態は、図22に示した第17の実施の形態に対し、スイッチ回路169および信号保持回路168に与える制御切り換え信号である遮断器状態監視装置25の出力に代えて、位相検出回路16’の内部信号(交流電圧の角速度ω)を使用するようにしたものである。
【0255】すなわち、第18の実施の形態の位相検出器16’では、レベル検出器177、リセット付き積分器178、レベル検出器179を設け、フィルタ回路166の出力信号ωを電圧制御発振器167に与えると同時に、レベル検出器177にも入力する。レベル検出器177では与えられた信号ωが予め設定した一定の範囲、例えば交流系統の定格角速度±10%といった範囲を逸脱している場合に「1」を出力し、リセット付き積分器178の入力値およびリセット信号として与える。リセット付き積分器178では与えられた信号が零の場合は出力をゼロリセットし、「1」であればそれを積分して出力をレベル検出器179に与える。レベル検出器179では入力値が一定値以上になった場合、スイッチ回路169に対する投入指令信号および信号保持回路168に対する保持指令信号を出力する。
【0256】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1は遮断器21、21’を介して、複数の発電機23を含む交流系統24に接続されている。これにより、交流母線1の周波数は発電機23の回転数により決まり、定格周波数から大きく逸脱することはない。位相検出回路16’では交流母線1の電圧信号から位相を検出しており、フィルタ回路166の出力ωは交流母線1の周波数相当の角速度、すなわち、ほぼ定格角速度と等しい値になっている。これにより、レベル検出器177、179、リセット付き積分器178の出力はそれぞれ零となり、スイッチ回路169は開放状態、信号保持回路168は入力値をそのまま出力する。
【0257】以上の結果、第18の実施の形態による位相検出回路16’は、通常運転時は、第17の実施の形態と同様、図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23の回転数で決まる周波数に同期して発振する位相検出値θvを出力し、これにより、自励式交直変換器3にはθvを基準位相としてパルス信号が与えられ、発電機23と同期した周波数で変換器が運転される。
【0258】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、自励式交直変換器3は、発電機23を含む交流系統24と完全に切り離された状態になるので、交流母線1の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、接続された負荷や事前の運転点の条件によっては、大幅な周波数低下あるいは周波数上昇が発生する。例えば、交流電圧の周波数が上昇した場合、第18の実施の形態の位相検出回路16’においては、位相差演算回路163の出力が正の値となり、それが比例積分回路で構成されたフィルタ回路166に与えられるため、その出力である角周波数ωの値がだんだん大きくなる。この値がレベル検出器177に設定された範囲を越えると出力が「1」となり、積分器178の出力が増加する。
【0259】一定時間以上この状態が継続するとレベル検出器179の出力が「1」となり、スイッチ回路169に対する投入指令、および信号保持回路168に対する保持指令信号が与えられる。これにより、交流電圧検出器8から与えられる三相交流電圧信号の値に関わらず、信号保持回路168から加算器171に与えられる信号は一定値となる。また、同じ信号がスイッチ回路169および1次遅れ回路170を介して負の符号で加算器171に与えられるため、加算器171の出力Δθ’は、制御切り換え直後は信号保持回路168の出力に等しく、その後1次遅れ回路170の時定数に従って零に近づき、最終的には零となる。フィルタ回路166は比例積分回路で構成されているため、Δθ’が零となることにより、出力である角速度ωが一定の値となり、自励式交直変換器3は一定の周波数で発振する位相θvを基準位相として運転される。
【0260】この第18の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式交直変換器が突然その発電機と切り離され、自励式交直変換器の運転周波数が定格から大きくはずれた場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を一定値に切り換えることにより、自励式交直変換器自体の運転周波数を一定の値にして、交流母線の周波数の上昇、低下を防止し、接続される負荷系統に安定した周波数の交流電力を供給しながら運転することができる。また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱を小さくすることができる。
【0261】第18の実施の形態では、周波数の上昇や低下を検出する手段として、位相検出回路16’の内部の信号ωを使用したが、その代わりに、位相検出回路16’の外部に周波数検出器を設置して交流母線電圧の周波数を監視し、図23におけるレベル検出器177に入力する構成としても良い。また、制御切り換え信号として、図22に示す第17の実施の形態における遮断器状態監視装置25の出力と、第18の実施の形態におけるレベル検出器179の出力のORをとる構成にしても良い。
【0262】次に、本発明の第19の実施の形態を説明する。図24は本発明の第19の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の構成図である。この第19の実施の形態は、図22に示した第17の実施の形態における信号保持回路168、スイッチ回路169、1次遅れ回路170、加算器171の代わりに、信号保持回路172、スイッチ回路173、加算器174、176、および1次遅れ回路175を設けたものである。
【0263】第17の実施の形態では、遮断器状態監視装置25から与えられる制御切り換え信号により、位相差演算回路163の出力信号すなわちフィルタ回路166の入力値を保持した後、それを零へ切り換える操作を行っている。それに対し、図24に示すの第19の実施の形態では、フィルタ回路166の出力側に信号保持回路172を設け、遮断器状態監視装置25からの制御切り換え信号により値を保持する。
【0264】その出力を負の符号で加算器174に与えると共に、加算器176には負の符号で入力する。加算器174では、信号保持回路172の出力と予め設定した一定の角速度ωoを負および正の符号で加算して、遮断器状態監視装置25からの信号により投入されるスイッチ回路173および1次遅れ回路175を介して加算器176に入力する。加算器176の出力が最終的な角速度信号ω’として電圧制御発振器167に入力される。ここで、加算器174に与える角速度信号ωoとしては、例えば接続される交流系統の定格周波数相当の角速度の値を設定する。
【0265】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1は遮断器21、21’を介して、複数の発電機23を含む交流系統24に接続されている。これにより、交流母線1の交流電圧の周波数は発電機23の回転数により決まる。ここで、位相検出回路16’では、遮断器状態監視装置25の出力はオフであり、スイッチ回路173は開放状態、また信号保持回路172では入力信号をそのまま出力している。交流電圧検出器8により検出された三相交流電圧から得られるθdと位相検出回路16’の出力位相であるθvを使って、位相差演算回路163によりその位相差Δθ=θv−θdが演算され、その値がフィルタ回路166に入力されて角速度信号ωが得られ、信号保持回路172に与えられる。信号保持回路172はこの値をそのまま出力し、またスイッチ回路173が開放されて1次遅れ回路175の出力が零になっているため、加算器176の出力ω’はフィルタ回路166の出力ωと等しくなる。
【0266】以上の結果、第19の実施の形態による位相検出回路16’は、通常運転時は図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23の回転数で決まる周波数に同期して発振する位相検出値θvを出力し、これにより、自励式交直変換器3にはθvを基準位相としてパルス信号が与えられ、発電機23と同期した周波数で変換器が運転される。
【0267】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、自励式交直変換器3は、発電機23を含む交流系統24と完全に切り離された状態になるので、交流母線1の電圧の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、自励式交直変換器3の運転周波数を決めるのは位相検出回路16’中のフィルタ回路166出力である角速度ωである。ここで、フィルタ回路166は比例積分回路で構成されているので、その入力、すなわち位相差Δθ’が零であれば角速度ωは一定に保たれ安定に運転される。
【0268】しかし、遮断器21が開放されたことによる過渡的な外乱により位相差Δθ’の信号が大きく変動する可能性があり、その場合は自励式交直変換器3の運転周波数すなわち交流母線電圧の周波数が上昇、あるいは低下する。ここで、第19の実施の形態の位相検出回路16’を使用すると、遮断器21が開放されたことを遮断器状態監視装置25により検出して、スイッチ回路173を投入し、信号保持回路172の出力信号を直前の値に保持する。これにより、交流電圧検出器8から与えられる三相交流電圧信号の値に関わらず、信号保持回路172から加算器176に与えられる信号は一定値となる。
【0269】また、同じ信号が負の値で加算器174により一定値ωoに加算された上でスイッチ回路173および1次遅れ回路175を介して加算器176に与えられるため、加算器176の出力ω’は、制御切り換え直後は信号保持回路172の出力に等しく、その後1次遅れ回路175の時定数に従って一定値ωoに近づき、最終的にはωoとなる。これにより、電圧制御発振器167に与えられる角速度ω’が予め設定された一定の値ωoとなり、自励式交直変換器3は一定の周波数で発振する位相θvを基準位相として運転される。
【0270】この第19の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式交直変換器が突然その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を予め設定された一定の値に切り換えることにより、変換器自体の運転周波数を一定の値にして、交流母線の周波数の上昇、低下を防止し、接続される負荷系統に安定した周波数の交流電力を供給しながら運転を行うことができる。
【0271】また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱の小さな切り換えを行うことができる。
【0272】次に、本発明の第20の実施の形態を説明する。図25は本発明の第20の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の構成図である。この第20の実施の形態は、図22に示す第17の実施の形態と図24に示す第19の実施の形態を組み合わせたものであり、スイッチ回路169、信号保持回路168、1次遅れ回路170、加算器171と、スイッチ回路173、信号保持回路172、1次遅れ回路175、加算器174、176との両方を備えている。それらの相互の構成は、それぞれ図22に示す第17の実施の形態、図24に示す第19の実施の形態と同じであり、遮断器状態監視装置25から与えられる制御切り換え信号は、スイッチ回路169、173および信号保持回路168、172の双方に与えられそれぞれ投入、出力信号の保持が行われる。
【0273】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1の交流電圧の周波数は発電機23の回転数により決まり、定格周波数から大きく逸脱することはない。位相検出回路16’では、スイッチ回路169、173が開放状態であり、信号保持回路168、172では入力値をそのまま出力している。従って、図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23の回転数で決まる周波数に同期して発振する位相検出値θvを出力し、これにより、自励式交直変換器3にはθvを基準位相としてパルス信号が与えられ、発電機23と同期した周波数で変換器が運転される。
【0274】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、遮断器状態監視装置25から与えられる信号により、スイッチ回路169が投入され、信号保持回路168の出力が保持されるので、図22に示す第17の実施の形態と同様に、フィルタ回路166の入力値である位相差信号Δθ’が1次遅れを介して零になる。また、遮断器状態監視装置25から与えられる信号により、スイッチ回路173が投入され、信号保持回路172の出力が保持されるので、図24に示す第19の実施の形態と同様に、電圧制御発振器167の入力値である角速度信号ω’が1次遅れを介して一定の値ωoになる。これにより、自励式交直変換器3は一定の周波数ωoで運転が行われる。
【0275】ここで、第20の実施の形態において、フィルタ回路166の入力側と出力側の双方にスイッチ回路と信号保持回路を設置した理由を説明する。フィルタ回路166の入力側で信号を零とした場合、すなわち第17の実施の形態や第18の実施の形態の場合、発振周波数を一定にすることができるが、信号を保持した時点でフィルタ回路166の出力、すなわち角速度信号ω’が定格値から大きくはずれた値になっていると、その大きくはずれた値のままで自励式交直変換器3の運転周波数が固定され、自励式交直変換器3に負荷回路がつながっている場合には負荷に悪影響を与えたり、変圧器の飽和を生じたりする可能性がある。
【0276】一方、フィルタ回路166の出力側で信号を予め設定した値ωoとした場合、すなわち第19の実施の形態の場合には、自励式交直変換器3の運転周波数は、系統の定格周波数など決められた値にすることができるので、制御を切り換えている間の運転は安定に行え、負荷に対しても問題が生じない。
【0277】しかし、フィルタ回路166の入力側の信号は、通常運転時の値から大きく逸脱している可能性があり、その状態から通常の運転状態に戻そうとすると時間がかかる可能性がある。それに対し、第20の実施の形態のように、フィルタ回路166の入力側と出力側との両方で、信号を通常運転時に近い値となるよう処理を行うと、制御切り換え中は予め設定したとおりの周波数で運転が行え、かつ通常の運転に戻す場合にも短時間での切り換えが可能になる。
【0278】この第20の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、変換器が突然その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を予め設定された一定の値に切り換えることにより、変換器自体の運転周波数を一定の値にして、交流母線の周波数の上昇、低下を防止し、接続される負荷系統に安定した周波数の交流電力を供給しながら運転を行うことができる。また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱の小さな切り換えを行うことができる。
【0279】さらに、位相検出回路の内部に含まれる比例積分回路の入力側の信号を通常運転時に近い値に保つことにより、通常運転への切り換えを高速に行うことが可能である。
【0280】ここで、第18の実施の形態と同様に、制御切り換え指令信号として、遮断器状態監視装置25から与えられる信号の代わりに、周波数の上昇や低下を検出することにより切り換えを行うようにしても良い。
【0281】次に、本発明の第21の実施の形態を説明する。図26は本発明の第21の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の構成図である。この第21の実施の形態は、図24に示す第19の実施の形態において、加算器174に与えていた一定の角速度の所定値ωoの代わりに、遠方の交流系統の角速度検出値ωdetを使用したものである。
【0282】図26において、自励式交直変換器3の接続された交流母線1は遮断器21、21’および交流送電線22を介して遠方の交流母線89に接続されている。交流母線89の背後には複数の発電機23を含む交流系統24が接続されている。ここで、第21の実施の形態では、電圧検出器90により遠方の交流母線89の電圧を検出し、角速度検出器91ではその電圧信号から、交流母線89の周波数相当の角速度ωdetを検出する。その値を伝送回路92を介して自励式交直変換器3の制御装置内の位相検出回路16’に与え、位相検出回路16’では、この値を加算器174に入力する。
【0283】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1の交流電圧の周波数は発電機23の回転数により決まり、定格周波数から大きく逸脱することはない。つまり、位相検出回路16’では、スイッチ回路173が開放状態であり、信号保持回路172では入力値をそのまま出力しているので、図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23と同期した位相を基準として自励式交直変換器3が運転される。
【0284】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、自励式交直変換器3は、発電機23と切り離された状態になるので、交流母線1の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、接続された負荷や事前の運転点の条件によっては、大幅な周波数低下あるいは周波数上昇が発生する。
【0285】一方、遠方の交流母線89は発電機23と接続された状態のままなので、その周波数は発電機23の回転速度で決まる値である。従って、交流電圧検出器90および角速度検出器91によって検出された角速度ωdetは発電機23の回転速度により決まる、定格周波数に近い値である。この値が伝送回路92を介して位相検出回路16’内の加算器174に与えられている。
【0286】第21の実施の形態による位相検出回路16’では、遮断器状態監視装置25から与えられる信号により、スイッチ回路173が投入され、また信号保持回路172の出力が事前の値に保持される。これにより、フィルタ回路166の出力値である角速度信号ω’が1次遅れを介して角速度検出値ωdetに追従する。従って、自励式交直変換器3は、発電機23と同期した角速度ωdetで運転が行われる。ここでωdetは必ずしも一定の値ではないが交流系統の周波数の変動は数秒のオーダーであり1次遅れ回路175の時定数として数十ミリ秒の値を設定すれば、1次遅れの影響は問題とはならない。また、ωdetは定格角速度ωoに近い値であるが、負荷と発電機出力のバランスにより数%程度の偏差は発生している可能性がある。自励式交直変換器3の運転周波数と発電機側の運転周波数が異なっていると、遮断器21、21’を再投入する際に、同期をとるのが難しくなり、再投入に時間がかかる可能性がある。この第21の実施の形態のように、変換器が発電機と同じ周波数で運転していれば、同期をとるのが容易で遮断器の再投入を高速に行うことが可能になる。
【0287】この第21の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式変換器が突然その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を遠方の交流系統の周波数と同じ値に切り換えることにより、変換器自体の運転周波数を通常時接続されている発電機と同じ値にして、周波数の上昇、低下を防止し、安定に運転を行うことができる。また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱の小さな切り換えを行うことができる。さらに、通常運転時に接続されている発電機と同じ周波数で変換器が運転することにより、遮断器の再投入の際に同期を合わせることが容易になり、高速に再投入を行うことが可能である。
【0288】ここで、第17の実施の形態と同様、制御切り換え指令信号として、遮断器状態監視装置25から与えられる信号の代わりに、自励式交直変換器3の接続された母線の周波数の上昇や低下を検出することにより切り換えを行う構成としても良い。
【0289】次に、本発明の第22の実施の形態を説明する。図27は本発明の第22の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の説明図であり、加算器174に与える角速度信号を作成する部分を抜き出して示したものである。この第22の実施の形態は、図26に示す第21の実施の形態に対し、同期適正化回路206を設けたものである。この同期適正化回路206は、レベル検出器93、積分回路94、レベル検出器95、スイッチ回路96、1次遅れ回路97から構成される。また、制御切り換え信号としては、図3に示した第2の実施の形態と同様に、交流母線1の周波数が一定期間以上継続してある範囲を逸脱したことを検出して使用するようにしている。
【0290】図27において、第21の実施の形態と同様に、検出された遠方の交流母線89の角速度検出信号ωdetは伝送回路92を介して、位相検出回路16’内部のスイッチ回路96の入力端子および加算器101に入力される。一方、予め設定された一定の値ωoが加算器101によりωdetと突き合わされ、その差分がレベル検出器93に与えられる。またωoの値はスイッチ回路96のもう一方の入力端子に入力される。レベル検出器93では、ωoとωdetの差分が一定の範囲、例えば±10%といった範囲を逸脱した場合には「1」を出力する。これが積分回路94に入力され積分された後、レベル検出器95に入力される。レベル検出器95では、積分回路94の出力値が一定値を越えた場合、スイッチ回路96に対して切り換え指令を与える。スイッチ回路96では、通常時は入力端子bを選択しており、レベル検出器95から切り換え指令が与えられた場合に、端子aを選択するよう切り換えを行う。この出力が1次遅れ回路97を介して加算器174に与えられる。
【0291】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は自励式交直変換器3が接続された交流母線1の交流電圧の周波数は発電機23の回転数により決まり、定格周波数から大きく逸脱することはない。従って、レベル検出器40の出力による制御回路の切り換えは行われない。このため、第22の実施の形態による位相検出回路16’では、スイッチ回路169、173が開放状態であり、信号保持回路168、172では入力値をそのまま出力しているので、図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23と同期した周波数で変換器が運転される。
【0292】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合には、自励式交直変換器3は、発電機23と切り離された状態になるので、交流母線1の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、接続された負荷や事前の運転点の条件によっては、大幅な周波数低下あるいは周波数上昇が発生する。これにより、レベル検出器38、40が動作し、位相検出回路16’に対して切り換え指令信号が与えられる。これにより、位相検出回路16’では、スイッチ回路169、173が投入され、信号保持回路168、172の出力が事前の値に保持される。
【0293】一方、遠方の交流母線89は発電機23と接続された状態のままなので、その周波数は発電機23の回転速度で決まる値である。従って、交流電圧検出器90および角速度検出器91によって検出された角速度ωdetは発電機23の回転速度により決まる、定格角速度ωoに近い値であり、加算器101の出力(ωo−ωdet)は零に近い値となる。そのためレベル検出器93は動作せず積分回路94の出力は零のままで、レベル検出器95も動作しない。これにより、スイッチ回路96では端子bに与えられた値であるωdetが出力されて加算器174に与えられる。
【0294】以上の結果、第22の実施の形態の位相検出回路を使用すると、第21の実施の形態を使用した場合と同じように、発電機23と同じ周波数で変換器の運転が行われる。
【0295】次に、交流母線89と発電機23の間の交流系統24で遮断器が三相開放となり、交流母線89と発電機23が切り離された場合の動作を説明する。交流母線89と発電機23の間の遮断器が三相開放となることにより、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3は、発電機23と完全に切り離された状態になる。このため、遮断器21、21’の三相開放の場合と同様に、スイッチ回路169、173が投入され、また信号保持回路168、172の出力が事前の値に保持される。遮断器21、21’開放の場合と異なるのは、検出角速度ωdetの値である。すなわち遮断器21、21’開放時には交流母線89は発電機23と接続された状態なので、ωdetは定格角速度に近い値であるのに対し、交流母線89と発電機23の間の遮断器が三相開放となった場合には、交流母線89の周波数は交流母線1の周波数と同様、負荷や事前運転点の条件によっては定格値から大きく逸脱した値となる。これにより、レベル検出器93、95が動作し、スイッチ回路96に対して切り換え指令が与えられ、スイッチ回路96では端子aに与えられた一定の角速度ωoを選択するよう切り換えが行われ、自励式交直変換器3は予め設定された一定の周波数で運転が行われる。
【0296】以上のように、第22の実施の形態では、通常運転時は交流系統に含まれる発電機の回転速度と同期して自励式交直変換器が運転され、自励式交直変換器と発電機が切り離された場合には、遠方の交流系統の周波数を検出してそれと同期して自励式交直変換器の運転を行い、さらにその周波数の検出点自体も発電機と切り離されて正常な周波数が検出できない場合には予め設定した一定の周波数で変換器の運転が行われるよう動作する。
【0297】第22の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式交直変換器が突然、その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を遠方の交流系統の周波数と同じ値に切り換えることにより、変換器自体の運転周波数を通常時接続されている発電機と同じ値にして、周波数の上昇、低下を防止し、安定に運転を行うことができる。さらに、その際、検出した遠方の交流系統の周波数が定格値から大きくはずれている場合には、予め設定した一定の周波数で発振させることにより、遠方の周波数検出点自体が発電機から切り離された場合でも、自励式交直変換器の運転周波数を安定に保つことができる。
【0298】また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱の小さな切り換えを行うことができる。
【0299】次に、本発明の第23の実施の形態を説明する。図28は本発明の第23の実施の形態に係わる自励式交直変換器の制御装置の位相検出回路16’の説明図であり、加算器174に与える角速度信号を作成する部分を抜き出して示したものである。
【0300】図28に示す第23の実施の形態では、角速度検出器91の出力ωdetを、図27に示す第22の実施の形態におけるレベル検出器93、積分回路94、レベル検出器95を介さずに、伝送回路92を介して直接スイッチ回路96のb端子に与えている。また、角速度検出点である交流母線89と発電機23の間にある遮断器98に対しても、遮断器21、21’に対する遮断器状態監視装置25と同様の遮断器状態監視装置99を設け、スイッチ回路96の切り換え指令信号として、この遮断器状態監視装置99の出力を使用する。
【0301】スイッチ回路96は通常は端子bを選択しており、遮断器98が三相開放になった場合には、それを遮断器状態監視装置99で検出して端子aを選択するよう切り換えを行う。また、遮断器状態監視装置25および99の出力はOR回路100に入力され、OR回路100の出力が、位相検出回路16’内のスイッチ回路169、173に投入指令信号として、また信号保持回路168、172に信号保持指令信号として与えられる。
【0302】次に、通常運転時の動作を説明する。通常時は遮断器21、21’、98はいずれも投入された状態なので、制御回路の切り換えは行われない。このため、図28に示す第23の実施の形態では、スイッチ回路169、173が開放状態であり、信号保持回路168、172では入力値をそのまま出力しているので、図31に示す従来の位相検出回路16と全く同じ動作を行い、発電機23と同期した周波数で変換器が運転される。
【0303】次に、交流系統において遮断器21が三相開放となった場合の動作を説明する。遮断器21が三相開放となることにより、交流母線1およびそれに接続される自励式交直変換器3は、発電機23と切り離された状態になる。このため、交流母線1の電圧の周波数は発電機23の回転数とは無関係となり、接続された負荷や事前の運転点の条件によっては、大幅な周波数低下あるいは周波数上昇が発生する。ここで、第23の実施の形態では、遮断器21の三相開放を遮断器状態監視装置25により検出し、OR回路100を介して制御切り換え信号が位相検出回路16’に与えられ、位相検出回路16’内のスイッチ回路169、173が投入され、信号保持回路168、172の出力が事前の値に保持される。
【0304】一方、遠方の交流母線89と発電機23の間の遮断器98は投入された状態のままなので、遮断器状態監視装置99の出力はオフ状態でスイッチ回路96では端子bを選択している。交流母線89は発電機23とつながった状態なので、その周波数は発電機23の回転速度で決まる値であり、交流電圧検出器90および角速度検出器91によって検出された角速度ωdetは発電機23の回転速度により決まる、定格角速度に近い値である。以上のことから、図28に示す第23の実施の形態を使用すると、遮断器21の開放時には、図26に示す第21の実施の形態と同じように、発電機23と同じ周波数で変換器の運転が行われる。
【0305】次に、交流系統において、交流母線89と発電機23の間の遮断器98が三相開放となり、交流母線89と発電機23が切り離された場合の動作を説明する。交流母線89と発電機23の間の遮断器98が三相開放となることにより、遮断器状態監視装置99が動作してOR回路100の出力がオンとなり、スイッチ回路169、173が投入される。また、信号保持回路168、172の出力が事前の値に保持される。一方、遮断器状態監視装置99から与えられる信号により、スイッチ回路96では、端子aに与えられた一定の角速度ωoを選択するよう切り換えが行われ、自励式交直変換器3は予め設定された一定の周波数で運転が行われる。
【0306】以上のように、第23の実施の形態では、通常運転時は交流系統に含まれる発電機の回転速度と同期して自励式交直変換器が運転され、変換器と発電機が切り離された場合には、遠方の交流系統の周波数を検出してそれと同期して自励式交直変換器の運転を行い、さらにその周波数の検出点自体も発電機と切り離されて場合には予め設定した一定の周波数で変換器の運転が行われるよう動作する。
【0307】第23の実施の形態によれば、直流送電システムに適用される自励式交直変換器が、通常運転時は、接続された交流系統に含まれる発電機の回転周波数と同期して運転を行い、自励式交直変換器が突然、その発電機と切り離された場合には、変換器制御の基準位相を決めるための位相検出回路において、発振周波数信号を遠方の交流系統の周波数と同じ値に切り換えることにより、変換器自体の運転周波数を通常時接続されている発電機と同じ値にして、周波数の上昇、低下を防止し、安定に運転を行うことができる。さらに、周波数検出点も発電機から切り離された場合には、予め設定した一定の周波数で発振させることにより、自励式交直変換器の運転周波数を安定に保つことができる。
【0308】また、発振周波数を一定に切り換える際に1次遅れ回路を使用することにより、切り換えに伴うステップ的な信号変化を防止し、擾乱の小さな切り換えを行うことができる。
【0309】
【発明の効果】請求項1ないし請求項3に係わる自励式交直変換器の制御装置によれば、通常運転時には与えられた設定値どおりの有効電力、無効電力を出力し、自励式交直変換器が突然交流電源と切り離された場合には、交流電圧を一定に保ちつつ、接続された負荷や調相設備に見合った値の有効電力、無効電力を自動的に供給しながら、安定に変換器の運転を継続することができる。
【0310】請求項4に係わる自励式交直変換器の制御装置によれば、通常運転時には与えられた設定値どおりの有効電力、無効電力を出力し、自励式交直変換器が突然交流電源と切り離された場合には、交流電圧を一定に保ちつつ、接続された負荷や調相設備に見合った値の有効電力、無効電力を自動的に供給しながら安定に自励式交直変換器の運転を継続することができ、また負荷が接続されておらず自励式交直変換器によって電力を供給する必要のない場合には変換器を停止して、不必要な電力損失や直流回路を介して接続される相手側の系統への影響を防止することができる。
【0311】請求項5ないし請求項6に係わる自励式交直変換器の制御装置によれば、通常運転時には与えられた設定値どおりの有効電力、無効電力を出力し、自励式交直変換器が突然交流電源と切り離された場合には、交流電圧を一定に保ちつつ、接続された負荷や調相設備に見合った値の有効電力、無効電力を自動的に供給しながら安定に変換器の運転を継続することができ、また負荷や調相設備の容量が大きく自励式交直変換器が過負荷運転になる可能性のある場合には、有効電力および無効電力の出力値を適切に制限することにより、負荷系統の停電を最小限に抑えつつ変換器が過電流により停止するのを防止することができる。
【0312】請求項7に係わる自励式交直変換器の制御装置によれば、通常運転時には与えられた設定値どおりの有効電力、無効電力を出力し、変換器が突然交流電源と切り離された場合には、交流電圧を一定に保ちつつ、接続された負荷や調相設備に見合った値の有効電力、無効電力を自動的に供給しながら、安定に変換器の運転を継続することができる。
【0313】請求項8ないし請求項10に係わる自励式交直変換器の制御装置によれば、通常運転時には与えられた設定値どおりの有効電力、無効電力を出力し、自励式交直変換器が突然交流電源と切り離された場合には、接続された負荷や調相設備に見合った値の有効電力、無効電力を自動的に供給しながら、運転条件に関わらず安定に交流電圧を一定に維持して、変換器の運転を継続することができる。
【0314】請求項11ないし請求項14に係わる発明によれば、通常運転時には接続された交流電源と同期して制御を行い、自励式交直変換器が突然交流電源と切り離された場合には、一定の周波数あるいは切り離された交流電源と同じ周波数で制御を行うことにより、接続された負荷に安定した周波数の交流電力を供給しながら変換器の運転を継続することができる。




 

 


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