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ミシンの送り歯高さ位置調節装置 - ブラザー工業株式会社
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発明の名称 ミシンの送り歯高さ位置調節装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平11−9867
公開日 平成11年(1999)1月19日
出願番号 特願平9−187566
出願日 平成9年(1997)6月26日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 俊雄
発明者 長坂 信介 / 稲垣 秀高 / 渡会 克也
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 針板上の縫製対象の布を送る送り歯と、この送り歯の上下動作に連動して上下動し固定刃と協働して布を切断する可動刃と、この送り歯と可動刃に上下駆動力を伝達する上下駆動機構とを備えたミシンにおいて、前記上下駆動機構に、可動刃に入力される上下駆動力を送り歯に伝達する揺動伝達部材を設け、その揺動伝達部材の一端部を左右方向向きの枢支ピンによりミシンのフレームに枢着し、揺動伝達部材の途中部に送り歯に上下駆動力を伝達する伝達部を形成し、揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結し、前記枢支ピンに形成した偏心ピン部を含み、揺動伝達部材の伝達部の高さ位置を微調節可能な偏心機構を設けた、ことを特徴とするミシンの送り歯高さ位置調節装置。
【請求項2】 前記揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結する連結部は、揺動伝達部材に形成した長孔と、可動刃に固定され前記長孔に係合したピン部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの送り歯高さ位置調節装置。
【請求項3】 前記送り歯は、主送り歯と差動送り歯とを備えたロックミシンにおける差動送り歯であることを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンの送り歯高さ位置調節装置。
【請求項4】 前記主送り歯を含む主送り歯部材を主送り腕に取付ける取付け部に、主送り歯部材の高さ位置を微調節する為の調節機構を設けたことを特徴とする請求項3に記載のミシンの送り歯高さ位置調節装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、ミシンの送り歯高さ位置調節装置に関し、特に、偏心機構により上下駆動機構の揺動伝達部材の伝達部の高さ位置を微調節し、送り歯の高さ位置を微調節可能にしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】 縫製対象の布端部を切断しながら縫製可能なロックミシンには、一般に、針板上の縫製対象の布を送る送り歯(主送り歯と差動送り歯)と、送り歯の上下動作に連動して上下動し固定刃と協働して布を切断する可動刃と、送り歯と可動刃に上下駆動力を伝達する上下駆動機構等が設けられている。
【0003】例えば、図23に示すように、上下駆動機構200 には揺動リンク部材201 が設けられ、この揺動リンク部材201 の先端部に可動刃202 を連結するとともに、揺動リンク部材201 の途中部に伝達部203 を設け、この伝達部203 に先端部に送り歯205 を連結した上下駆動腕204 の基端部が支持され、揺動リンク部材201 が枢支軸201aを中心として揺動駆動されると、可動刃202 と送り歯205 に上下駆動力が伝達される。送り歯205 は上下駆動腕204 の先端部にビス206 で固定されており、ビス206 を緩めて上下駆動腕204 に対して送り歯205 の高さ位置を調節できるようになっている。
【0004】他方、針板上の縫製対象の布を押え脚と協働して前後方向へ送る差動送り歯と主送り歯を、縫針の針落ち点を挟んで前後に配置し、伸縮地を縫製する場合、差動送り歯を主送り歯の送り量より大きな送り量で送り作動させ、主送り歯に対して差動送り歯で伸縮地の伸び量分を予め余分に送り、伸縮地に伸びが生じないようにして布送りする差動送り装置を設けたロックミシンが実用に供されている。
【0005】差動送り装置付きのロックミシンにおいては、例えば、図24、図25に示すように、主送り歯210 は前後に揺動する送り腕211 の先端部に左右方向向きの水平支軸210aの回りに回動可能に支持され、差動送り歯212 は主送り歯210 と一体的に上下動するとともに主送り歯210 に対して前後方向へ相対移動可能に支持され、上下駆動機構215 により差動送り歯212 に上下駆動力が伝達され、差動送り歯212 と主送り歯210 とが一体的に上下動するように構成してある。
【0006】上下駆動機構215 には揺動リンク部材216 が設けられ、この揺動リンク部材216 の先端部に、伝達部材218 が高さ位置調節可能にビス217 で固定されており、伝達部材218 に差動送り歯212 の下面部が支持され、揺動リンク部材216 が枢支軸216aを中心として揺動駆動されると、伝達部材218 から差動送り歯212 に上下駆動力が伝達される。そして、揺動リンク部材216 に対して伝達部218 の高さ位置を調節して、差動送り歯212 の高さ位置を調節可能に構成してある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】 従来の布端部を切断しながら縫製可能なロックミシンでは、送り歯205 の高さ位置を調節する場合、上下駆動腕204 に対して送り歯205 の固定を解除し、送り歯205 を直接上下に移動させてその高さ位置を調節しなければならないし、送り歯205 を所望の高さ位置に位置決めした後、ビス206 を締めて送り歯205 を上下駆動腕に固定するとき、送り歯205 が上下駆動腕204 に対して移動し易いため、送り歯205 の高さ位置を微調節するのが非常に難しいという問題がある。
【0008】一方、従来の差動送り装置付きミシンでは、前記同様、差動送り歯212 の高さ位置を微調節するのが難しいというばかりでなく、差動送り歯212 の高さ位置を調節すると、主送り歯210 と差動送り歯212 が水平支軸210aの回りに一体的に回転して傾き、主送り歯210 と差動送り歯212 との高さ位置に高低差が生じ、例えは、図24に示すように、伝達部材218 が下降限界位置に位置しても、主送り歯210 が針板219 から突出したり、図25に示すように、伝達部材218 が上昇限界位置に位置しても、主送り歯210 が針板219 から突出しない場合もあり、主送り歯と差動送り歯により針板上の縫製対象の布を所期の送り量で送れなくなり、布に綺麗な縫目を形成することが難しくなる。
【0009】本発明の目的は、ミシンの送り歯高さ位置調節装置において、送り歯の高さ位置を簡単に且つ確実に微調節可能にすること、主送り歯と差動送り歯の高さ位置を夫々調節可能にし、調節後においても主送り歯と差動送り歯との高さ位置を同じ高さ位置に保持できるようにすること、等である。
【0010】
【課題を解決するための手段】 請求項1のミシンの高さ位置調節装置は、針板上の縫製対象の布を送る送り歯と、この送り歯の上下動作に連動して上下動し固定刃と協働して布を切断する可動刃と、この送り歯と可動刃に上下駆動力を伝達する上下駆動機構とを備えたミシンにおいて、前記上下駆動機構に、可動刃に入力される上下駆動力を送り歯に伝達する揺動伝達部材を設け、その揺動伝達部材の一端部を左右方向向きの枢支ピンによりミシンのフレームに枢着し、揺動伝達部材の途中部に送り歯に上下駆動力を伝達する伝達部を形成し、揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結し、前記枢支ピンに形成した偏心ピン部を含み、揺動伝達部材の伝達部の高さ位置を微調節可能な偏心機構を設けたものである。
【0011】上下駆動機構により可動刃に上下駆動力が伝達され可動刃が上下動すると、揺動伝達部材が偏心ピン部を中心として揺動し、揺動伝達部材の伝達部から送り歯に上下駆動力が伝達され送り歯が上下動する。揺動伝達部材の途中部に伝達部が形成されているので、可動刃よりも送り歯の上下ストロークは小さくなる。枢支ピンを中心として偏心ピン部を回動させることで、枢支ピンの軸心に対して偏心ピン部の軸心が偏心し、揺動伝達部材の伝達部の高さ位置を微調節し、送り歯部材の高さ位置を微調節することができる。
【0012】請求項2のミシンの高さ位置調節装置は、請求項1の発明において、前記揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結する連結部は、揺動伝達部材に形成した長孔と、可動刃に固定され前記長孔に係合したピン部材を備えたことを特徴とするものである。それ故、上下動する可動刃に連動して揺動伝達部材が揺動するとき及び偏心ピン部を回動させるとき、可動刃のピン部材の軸心と偏心ピン部の軸心間の距離の変化を許容できる。その他請求項1と同様の作用を奏する。
【0013】請求項3のミシンの高さ位置調節装置は、請求項1又は2の発明において、前記送り歯は、主送り歯と差動送り歯とを備えたロックミシンにおける差動送り歯であることを特徴とすものである。それ故、ロックミシンの差動送り歯の高さ位置を微調節することができる。その他請求項1又は2と同様の作用を奏する。
【0014】請求項4のミシンの高さ位置調節装置は、請求項3の発明において、前記主送り歯を含む主送り歯部材を主送り腕に取付ける取付け部に、主送り歯部材の高さ位置を微調節する為の調節機構を設けたことを特徴とするものである。それ故、差動送り歯の高さ位置を調節するとともに、主送り歯部材の高さ位置を調節することで、調節後も主送り歯と差動送り歯との高さ位置を同じ高さに保持できる。その他請求項3と同様の作用を奏する。
【0015】
【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、主に布の縁を縫製する為のロックミシンに本発明を適用した場合の一例である。但し、このロックミシンを操作する操作者を基準とし、手前側を前方、左右方向を左右方向として説明する。
【0016】図1〜図5に示すように、ロックミシンMは、ベッド部80と、ベッド部80の右部に立設された脚柱部81と、脚柱部81上部から左方へ伸びるアーム部82を有し、ベッド部80の左端部分は片持ち状のフリーベッド部83に構成されている。フリーベッド部83上面部には針板84が設けられ、この針板84に布送り方向に伸長して形成された長孔(図示略)から突出可能に、送り作動する差動送り歯3と主送り歯1とが前後に配置されている。アーム部82には、主送り歯1と差動送り歯3との間に縫製対象の布を押さえる押え脚85と、押え脚85を下降位置と上昇位置とに切換える切換えレバー86が装着され、下降位置に切換えられた押え脚85と協働して、主送り歯1と差動送歯3により、針板84上の縫製対象の布が布送り方向(前後方向)へ送られる。
【0017】アーム部82には、下端に1対の縫針88を装着し且つ針棒上下駆動機構(図示略)により上下動される針棒87が支持されている。脚柱部80の後端部には複数本(例えば4本)の糸立92と糸案内部材89が立設され、脚柱部81の前面部には糸調子調節ツマミ90が設けられ、脚柱部81の右側面部には、主送り歯1の送り量を調節する送り量調節ツマミ107と、駆動軸10に連結された回動操作部材91が設けられ、フリーベッド部83の前面側には、差動送り装置6のツマミ部材40の先端部分が突出している。
【0018】図4〜図10に示すように、ロックミシンMの内部には、主送り歯1を備えた主送り歯部材2と、差動送り歯3を備えた差動送り歯部材4と、主送り歯部材2と差動送り歯部材4に前後駆動力を伝達する前後駆動機構5と、主送り歯部材2に対する差動送り歯部材4の布送り量を2段階に切換え可能な差動送り装置6と、可動刃55と主送り歯部材2と差動送り歯部材4に上下駆動力を伝達する上下駆動機構7と、差動送り歯3と主送り歯1の高さ位置を夫々微調節可能な高さ位置調節装置(第1調節機構8と第2調節機構9)等が設けられている。
【0019】主送り歯部材2は、主送り腕14の上端部に左右方向向きのピン部材16に枢着された取付け部材17に、第2調節機構9を介して高さ位置調節可能に連結され、差動送り歯部材4は、その後端部において差動送り装置6のスライド機構20を介して主送り歯部材2に支持され、その前端部において、引張りコイルバネ18で下方へ付勢されて、揺動伝達部材60の伝達部62に摺動自在に支持されている。
【0020】前後駆動機構5について説明する。前後駆動機構5は、ベッド部80内のミシンモータ(図示略)により回転駆動される駆動軸10と、駆動軸10に固着された前後駆動用カム11と、前後駆動用カム11に上下方向略中段部が摺接された前後駆動力伝達部材12と、下端部においてフレームに回転自在に支持された左右方向向きの水平な枢支軸13に枢支された主送り腕14とを有し、前後駆動力伝達部材12の下端部が主送り腕14のレバー部14bに揺動可能にピン結合されている。
【0021】前後駆動力伝達部材12は駆動軸10の後側に配設され、一端部をフレームに連結した引張りコイルバネ15により前斜め上方へ付勢され、前後駆動力伝達部材12の中段部分前端の摺動面12aが前後駆動用カム11に摺動自在に当接している。主送り腕14は左右両端部分に1対の屈曲部14aを有し、これら屈曲部14aの下端部が枢支軸13に枢支され、右側の屈曲部14aの下端部からレバー部14bが前方へ延びている。前記取付け部材17を枢支するピン部材16は左右1対の屈曲部14aの上端部にスライド不可で且つ揺動可能に架着されている。
【0022】前後駆動力伝達部材12の上端部には送り量調節機構100の角駒101が回転自在に連結され、この角駒101はフレームに水平軸心回りに支持された係合部材102の係合溝102aに摺動自在に係合している。前後駆動力伝達部材12が前後駆動用カム11により前後に駆動されると、角駒101が係合溝102aで案内されて移動し、この角駒101の移動方向に応じて主送り腕14の前後揺動角が決まり、取付け部材17と主送り歯部材2の送り量が決まる。
【0023】図6、図7の状態において、駆動軸10が矢印方向へ回動され、前後駆動用カム11で前後駆動力伝達部材12がコイルバネ15の付勢力に抗して押動されると、角駒101は係合部材102の係合溝102aに案内されて矢印α方向へ移動し、主送り腕14が後方へ揺動する。ここで、主送り歯部材2の送り量を調節可能な布送り量調節機構100ついて、図5〜図7を参照して簡単に説明する。布送り量調節機構100は、角駒101及び係合溝102aを有する係合部材102と、フレームに回動自在に支持された軸部材105の左端部に固着された円板104であって、係合部材102の先端部のピン103が係合する溝カム104aを有する円板104と、軸部材105の右端部に固着された送り量調節ツマミ107等で構成されている。
【0024】送り量調節ツマミ107を回動操作し、軸部材105を介して円板104を回転させ、角駒101が矢印β方向へ移動するようにすると、前後駆動力伝達部材12が前後駆動用カム11により前後に駆動されても、主送り腕14の前後へ揺動しなくなり、取付け部材17と主送り歯部材2が送り作動しなくなり、角駒101の移動方向と矢印β方向の角度が大きくなると、主送り歯部材2の送り量も大きくなる。図1に示すように、例えば、送り量調節ツマミ107を回動操作し、揺動量0を含めて4段階に調節できるようになっている。尚、軸部材105には板バネ106が摺接している。
【0025】差動送り装置6について説明する。図6〜図13に示すように、差動送り装置6は、差動送り歯部材4を主送り歯部材2と一体的に上下動させるとともに主送り歯部材2に対して前後方向へ所定ストローク相対移動自在に支持するスライド機構20と、主送り歯部材2に対して差動送り歯部材4を前側へ弾性付勢する圧縮コイルバネ21(バネ部材:図8では省略)と、差動送り歯部材4が主送り歯部材2と一体的に送り作動する第1状態(図10、図11参照)と、差動送り歯部材4が主送り歯部材2の送り量a(例えば8mm)の約2倍の送り量2aで送り作動する第2状態(図12、図13参照)とに切換え可能に、差動送り歯部材4と主送り歯部材2とを作動的に連結する差動送り連結機構22を有する。
【0026】スライド機構20は、差動送り歯部材4に固定された平面視逆コ字型(図8参照)の連結金具26を有し、この連結金具の1対の支持部26aを、主送り歯部材2を貫通し前後に突出し且つ主送り歯部材2に止めネジ25aで固定された軸部材25に摺動自在に外嵌させるとともに、連結金具に形成された長孔26bに、主送り歯部材2から左方へ突出したピン2aを係合させることにより、差動送り歯部材4が主送り歯部材2と一体的に上下動し、主送り歯部材2に対して相対的に回転せずに前後方向へ所定ストローク相対移動自在に支持されている。圧縮コイルバネ21は、主送り歯部材2と連結金具の前側の支持部26aの間において前側の軸部材25に外装されている。
【0027】差動送り連結機構22は、主送り腕14に高さ方向途中部が枢着され且つ上端部が連結金具26(つまり、差動送り歯部材4)に作動的に連結されたリンク部材30と、リンク部材30の下端部の係合部30aに係脱自在に係合するピン部材42を含み、このピン部材42を前記係合部30aに係脱させることにより差動送り連結機構22を第1状態と第2状態とに切換える切換え操作機構31を有する。主送り腕14左側の屈曲部14aから軸部材35が左方へ突設され、この軸部材35にリンク部材30の高さ方向途中部が揺動可能に枢着されている。差動送り歯部材4が固着された連結金具の左端部からピン36が左方へ突設され、このピン36にリンク部材30の上端部のU形の係合部30bが回動自在に係合して連結されている。
【0028】切換え操作機構31は、ピン部材42に揺動体43を介して作動的に連結され且つピン部材42を係合部30aに係脱させるツマミ部材40と、ピン部材42が係合部30aへ係合したときにはその係合位置を保持し且つ係合部30bから離脱したときにはその離脱位置を保持するように、ピン部材42を揺動体43を介して付勢する捩じりバネ44を有する。ピン42は揺動体43の後端部に固着されており、揺動体43は左右方向向きのピン43bによりフレームに枢着され、揺動体43の前端部には長孔43aが形成され、この長孔43aにツマミ部材40の後端部のピン40aが挿入され連結されている。ツマミ部材40の前端部分は、ガイド部材41によりガイドされ、フリーベッド部83の前方へ突出し、ツマミ部材40の前端部には把持部40bが形成されている。
【0029】図10、図11は、ピン部材42がリンク部材30の係合部30aに係合していない差動送り連結機構22の第1状態を示している。この第1状態から、ツマミ部材40の把持部40bを下方へ操作すると、揺動体43が揺動し、ピン部材42がリンク部材30の下端部のガイド部30cにガイドされて係合部30aに係合し、差動送り連結機構22が第2状態になる(図12、図13参照)。
【0030】前記捩じりバネ44は、その一端部を揺動体43の後部に連結し他端部をフレームに連結して設けられ、差動送り連結機構22が第1状態になると、図10に鎖線で示すように、捩じりバネ44による揺動体43の付勢方向が、揺動体43の支軸43bより下側に指向するため、揺動体43は図10において反時計回り(図10の一点鎖線矢印方向)に回転付勢され、ピン部材42が離脱位置に保持される。差動送り連結機構22が第2状態になると、図12に鎖線で示すように、捩じりバネ44による揺動体43の付勢方向が、揺動体43の支軸43bより上側に指向するため、揺動体42は図12において時計回り(図12の一点鎖線矢印方向)に回転付勢され、ピン部材42は結合位置に保持される。
【0031】ここで、主送り歯1に対して差動送り歯3を差動送りさせる原理について説明する。ピン部材42が係合部30aに係合しない第1状態では、リンク部材30の回動が規制されないので、スライド機構20の圧縮コイルバネ21の付勢力を介して主送り歯1と差動送り歯3とが一体的に相等しい送り量で布送りを行う。これに対して、ピン部材42が係合部30aに係合した第2状態では、主送り歯1の送り量aのときに差動送り歯3の送り量が約2aになる。
【0032】即ち、図10に示すように、枢支軸13から軸部材35までの距離b2が枢支軸13からピン部材16までの距離b1の約0.65倍であり、図12に示すように、ピン部材42からピン部材36までの距離c2がピン部材42から軸部材35までの距離c1の約3.0倍であるので、主送り歯1の送りa(枢支軸16の前後移動量)が約3.0位であるので、主送り歯1の送り量a(枢支軸16の前記移動量)が約0.65×3.0だけ増幅された送り量約2aが差動送り歯3の送り量になる。つまり、図14に示すように、第1状態では、主送り歯部材2と差動送り歯部材4は送り量aで一体的に送り作動し、第2状態では、差動送り歯部材4が主送り歯部材2の送り量aの約2倍の送り量2aで送り作動する。この2つの送り歯のうち、後側に位置する主送り歯1の前後移動範囲が主に針落ち点の近傍であって使用者の望む縫目のピッチに影響し、前側に位置する差動送り歯3の前後移動範囲が主に主送り歯1の前後移動範囲の手間側にある。そのため、縫製中の布は押さ足85によって押さえつけられ、布の移動がある程度制限された状態であり、伸縮性の大きい布が押さえられた状態で主送り歯1で後方へ移動されると伸びるが、第2状態のように、主送り歯1の送り量に対して差動送り歯3の送り量が大きい場合には、同時に差動送り歯3によって主送り歯1より多く送られるので、その主送り歯1による引っ張りが解消された後の縮みが吸収され、縫製後の布縮みが防止できるのである。特に伸縮性の大きいニット地やジャージ地等ではこのような差動送り縫いは有効である。尚、主送り歯1及び差動送り歯3は、駆動軸10によって縫い針が布から抜けた所定のタイミングで布送り作動を行う。
【0033】上下駆動機構7について説明する。図6〜図9に示すように、上下駆動機構7は、駆動軸10と、駆動軸10に固着された上下駆動用カム50と、上下駆動用カム50に係合する上下駆動力伝達部材51と、前後駆動機構5と共通の枢支軸13であって上下駆動力伝達部材51の下端部が固着された枢支軸13と、枢支軸13の左端部に固着された揺動リンク部材52と、揺動リンク部材52にピン54にて連結された縦向きの可動部材53を有する。
【0034】駆動軸10の右端部には、脚柱部81の右側へ突出し手動にて駆動軸10を回動させることのできる回動操作部材91が連結されている。上下駆動力伝達部材51は、上下駆動用カム50に係合する二股カム従動部54を有し、主送り腕14の1対の屈曲部14aの間に配設され、上下駆動力伝達部材51の上下方向中段部に形成された円弧状の長孔51aに、主送り腕14のピン部材16が挿通している。
【0035】図6、図7に示すように、二股カム従動部54は、相対向する第1従動部54aと第2従動部54bからなり、上下駆動用カム50により、第1従動部54aが押動され、上下駆動力伝達部材51が後方へ揺動すると、揺動リンク部材52が枢支軸13を中心として上方へ揺動し、可動刃55と差動送り歯部材4が上昇駆動され、第2従動部54bが押動される。上下駆動力伝達部材51が前方へ揺動すると、可動刃55と差動送り歯部材4が下降駆動される。
【0036】可動部材53は鉛直姿勢の板状フレーム95(図8参照)の左側に位置し、可動部材53の上端部には左右方向向きの軸部57(ピン部材)が一体形成されている。この軸部57と前記ピン54は、可動部材53から右方へ突出し、板状フレーム95に形成された縦向きの長孔58,59に挿通して上下方向へガイドされている。尚、軸部57の前後量端面は面取りされて、長孔58の鉛直面に夫々摺接している。
【0037】図8に示すように、軸部57は可動部材53から左方へも長く伸び、軸部57には軸部材57aが摺動自在に挿通し、この軸部材57aに板状フレーム95の右側において可動刃55が固着されている。一方、固定刃56は板状フレーム95の上端に針板84の上方へ僅かに突出するように取付けられている。軸部材57aの左端部には止め輪57bが取付けられ、止め輪57bと軸部57の左端間において軸部材57bに圧縮コイルバネ57cが外装され、このコイルバネ57cの付勢力で可動刃55が固定刃56と摺接状態を保持し、上下動する可動刃55と固定刃56との協働により、後方へ送られる縫製直前の布端部を切断するようになっている。
【0038】板状フレーム95には、揺動伝達部材60の前端部が枢支ピン61により枢着され、揺動伝達部材60の途中部の上端近傍部に、差動送り歯部材4の前端下面部を摺動自在に支持して、差動送り歯部材4に上下駆動力を伝達する軸状の伝達部62が左方突出状に形成されている。揺動伝達部材60の他端部には、長軸が枢支ピン61の方に向く長孔63が形成され、この長孔63に可動部材53の軸部57が係合している(図16〜図19参照)。
【0039】前記枢支ピン61には偏心ピン部66が一体形成され、この偏心ピン部66に揺動伝達部材60の前端部が枢支されている。図16は可動刃55と差動送り歯部材4が上昇限界位置に位置した状態を示し、図17は可動刃55及び差動送り歯部材4が下降限界位置に位置した状態を示し、伝達部62と差動送り歯部材4は、可動刃55の上下ストロークhの約2/3のストロークで上下動する。
【0040】前記高さ位置調節装置について説明する。高さ位置調節装置は、前記上下駆動機構7に含まれ差動送り歯3の高さ位置を微調節する為の第1調節機構8と、前記前後駆動機構5に含まれ主送り歯1の高さ位置を微調節する為の第2調節機構9からなる。
【0041】第1調節機構8は、図15〜図19に示すように、揺動伝達部材60を板状フレーム95に枢支する枢支ピン61に一体形成された偏心ピン部66を含み、揺動伝達部材60の伝達部62の高さ位置を微調節可能な偏心機構65を有する。枢支ピン61の軸心61aに対して偏心ピン部66の軸心66aは、偏心量e(例えば1.5mm)だけ偏心しているので、偏心ピン部66をスクリュードライバで回動させることで、全方向へ偏心量eで偏心させ、伝達部62の高さ位置を微調節し、差動送り歯部材4の高さ位置を微調節することができる。尚、上述した微調整においては、フレームに螺合した止めビスをスクリュードライバーで緩めて偏心ピン部66を所望の位置に回転させ、微調整後に止めビスを締めて偏心ピン部66の位置を固定する。
【0042】図16、図18、図19は可動刃55を上昇限界位置に上昇させた際の第1調節機構8の状態を示し、図16の第1調節機構8の状態から、例えば、偏心ピン部66を図において反時計回りに90度回転させ、図18に示すように、枢支ピン61の軸心61aに対して偏心ピン部66の軸心66aを偏心させ、偏心ピン部66の高さ位置がeだけ高くなると、揺動伝達部材60が略軸部57の軸心57aを中心として図において時計回りに回転し、伝達部62の高さは約e/2高くなる。
【0043】図示していないが、図16の第1調節機構8の状態から、例えば、偏心ピン部66を図において時計回りに90度回転させ、枢支ピン61の軸心61aに対して偏心ピン部66の軸心66aを偏心させ、偏心ピン部66の高さ位置がeだけ高くなると、揺動伝達部材60が略軸部57の軸心57aを中心として図において反時計回りに回動し、伝達部62の高さは約e/2低くなる。
【0044】また、図16の第1調節機構8の状態から、例えば、偏心ピン部66を図において180度回転させ、図19に示すように、枢支ピン61の軸心61aに対して偏心ピン部66の軸心66aを偏心させ、偏心ピン部66を左方へ2e移動すると、偏心ピン部66の軸心66aの高さ位置は変化しないが、長孔63の案内作用により、偏心ピン部66の軸心66aと軸部57の軸心57a間の距離が短くなるため、伝達部62の高さも低くなる。
【0045】このように、伝達部62の高さ位置は、偏心ピン部66の高さ位置の変化だけでなく、偏心ピン部66の軸心66aと軸部57の軸心57a間の距離の変化によっても調節される。このように、偏心ピン部66を回動させることにより、伝達部62の高さ位置つまり差動送り歯3の高さ位置を微調節できる。
【0046】第2調節機構9は、図15、図20〜図22に示すように、主送り腕14のピン部材16に枢支された取付け部材17に昇降自在にガイドされ、主送り歯部材2がビス71で固定されたた昇降部材70を有し、昇降部材70は取付け部材17に1対のビス72で締結解除可能に締結されている。
【0047】取付け部材17は断面コの字型に形成され、取付け部材17の間に昇降部材70が配設されている。昇降部材70には鉛直向きのガイドピン73が挿通され、止め輪73aで固定されている。ガイドピン73の上下両端部分は取付け部材17の上下両端部を挿通し昇降自在にガイドされている。取付部材17の後端部には上下に長い左右1対の長孔75が形成されており、取付部材17の後側から1対のビス72が1対の長孔75を挿通し昇降部材70に螺着されている。つまり、1対のビス72を緩めて、主送り歯部材2を、図21に示す上昇限界位置と図22に示す下降限界位置の間の所望の位置へ移動させ、1対のビス72を締めると、その高さ位置に主送り歯部材2を固定することができる。
【0048】このロックミシンMの作用・効果について説明する。第1調節機構8において、上下駆動機構7に、可動刃55に入力される上下駆動力を差動送り歯部材4に伝達する揺動伝達部材60を設け、その揺動伝達部材60の一端部を左右方向向きの枢支ピン61により板状フレーム95に枢着し、揺動伝達部材60の途中部に差動送り歯部材4に上下駆動力を伝達する伝達部62を形成し、揺動伝達部材60の他端部を可動刃55に作動的に連結し、枢支ピン61に形成した偏心ピン部66を含み、揺動伝達部材60の伝達部62の高さ位置を微調節可能な偏心機構65を設けたので、偏心ピン部66を偏心ピン部66を中心として回動させることで、枢支ピン61の軸心61aに対して偏心ピン部66の軸心66aが偏心し、揺動伝達部材60の伝達部62の高さ位置つまり、差動送り歯3の高さ位置を簡単に且つ確実に微調節できる。
【0049】揺動伝達部材60の他端部を可動刃55に作動的に連結する連結部は、揺動伝達部材60に形成した長孔63と、長孔63に係合し可動刃55に固定され可動部材53の軸部57を備えたので、上下動する可動部材53に連動して揺動伝達部材60が揺動するときと、偏心ピン部66を回動させるとき、可動部材53の軸部57の軸心57aと偏心ピン部66の軸心間66aの距離の変化を許容することができる。
【0050】第1調節機構8と、主送り歯1の高さ位置を調節する第2調節機構9を設けたので、第1調節機構8で差動送り歯3の高さ位置を調節するとともに、第2調節機構8で主送り歯部材1の高さ位置を調節することで、高さ位置調節後においても、主送り歯1と差動送り歯3との高さ位置を同じ高さに保持し、主送り歯1と差動送り歯3により針板84上の縫製対象の布を所期の送り量で確実に送ることができ、布に綺麗な縫目を形成することがでる。
【0051】
【発明の効果】 請求項1のミシンの高さ位置調節装置によれば、上下駆動機構に、可動刃に入力される上下駆動力を送り歯に伝達する揺動伝達部材を設け、その揺動伝達部材の一端部を左右方向向きの枢支ピンによりミシンのフレームに枢着し、揺動伝達部材の途中部に送り歯に上下駆動力を伝達する伝達部を形成し、揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結し、枢支ピンに形成した偏心ピン部を含み、揺動伝達部材の伝達部の高さ位置を微調節可能な偏心機構を設けたので、枢支ピンを中心として偏心ピン部を回動させることで、枢支ピンの軸心に対して偏心ピン部の軸心が偏心し、揺動伝達部材の伝達部の高さ位置、つまり送り歯部材の高さ位置を簡単・確実に微調節することができる。
【0052】請求項2のミシンの高さ位置調節装置によれば、請求項1と同様の効果を奏するが、前記揺動伝達部材の他端部を可動刃に作動的に連結する連結部は、揺動伝達部材に形成した長孔と、可動刃に固定され前記長孔に係合したピン部材を備えたので、上下動する可動刃に連動して揺動伝達部材が揺動するとき及び偏心ピン部を回動させるとき、可動刃のピン部材の軸心と偏心ピン部の軸心間の距離の変化を許容することができる。
【0053】請求項3のミシンの高さ位置調節装置によれば、請求項1又は2と同様の効果を奏するが、前記送り歯は、主送り歯と差動送り歯とを備えたロックミシンにおける差動送り歯であるので、ロックミシンの差動送り歯の高さ位置を簡単且つ確実に調節することができる。
【0054】請求項4のミシンの高さ位置調節装置によれば、請求項3と同様の効果を奏するが、記主送り歯を含む主送り歯部材を主送り腕に取付ける取付け部に、主送り歯部材の高さ位置を微調節する為の調節機構を設けたので、差動送り歯の高さ位置を微調節するとともに、主送り歯部材の高さ位置を微調節調節することで、調節後においても、主送り歯と差動送り歯との高さ位置を同じ高さ位置に保持できるため、主送り歯と差動送り歯により針板上の縫製対象の布を所期の送り量で送ることができ、布に綺麗な縫目を確実に形成することがでる。




 

 


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