発明の名称 |
在来軸組木造住宅 |
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発行国 |
日本国特許庁(JP) |
公報種別 |
公開特許公報(A) |
公開番号 |
特開平10−147977 |
公開日 |
平成10年(1998)6月2日 |
出願番号 |
特願平8−306467 |
出願日 |
平成8年(1996)11月18日 |
代理人 |
【弁理士】 【氏名又は名称】久門 知 (外1名)
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発明者 |
米田 賢爾 |
要約 |
目的
構成
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特許請求の範囲
【請求項1】 柱および横架材を軸組主体とする在来軸組構造の木造住宅において、前記柱のうち軸組の中核となる1本または数本の柱を主柱として鉄骨柱で構成したことを特徴とする木造住宅。 【請求項2】 柱および横架材を軸組主体とする在来軸組構造の木造住宅において、前記柱のうち軸組の中核となる1本または数本の柱を主柱として鉄筋コンクリート柱で構成したことを特徴とする木造住宅。 【請求項3】 前記主柱にブラケットを設け、主柱に取付く横架材の端部を接合金具を用いて前記ブラケットに接合してある請求項1または2記載の木造住宅。 【請求項4】 前記主柱の外周面に木製の添え柱を固定し、主柱に取付く横架材の端部を前記添え柱に接合してある請求項1または2記載の木造住宅。
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発明の詳細な説明
【0001】 【発明の属する技術分野】本願発明は、在来軸組工法によって構築される木造住宅において、いわゆる大黒柱等、中核となる柱に鉄骨柱または鉄筋コンクリート柱を用いた木造住宅に関するものである。 【0002】 【従来の技術】木造住宅は、ローコスト、施工の容易さ、居住性等、多くの利点があり、古くから今日まで日本に限らず世界的にも住宅構造の主流をなしている。しかし、地震国日本では耐震性を十分考慮する必要があり、特に木造住宅が老朽化した場合には、耐震性の面で大きな問題となり得る。 【0003】この解決方法の一つに家屋の中心となる主柱にいわゆる大黒柱として巨大な柱を使う工法がある。このような大黒柱を使う工法は、豪雪地帯や社寺等で多く使われてきたが、木材として高級品となることからコスト増となる他、長尺であるため輸送の問題や狭隘な場所では施工スペースの問題もあり、一般住宅向けでの利用が難しいのが現実である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本願発明は上述のような課題の解決を図ったものであり、耐震性に関しても古くから実績のある在来軸組工法の木造住宅において、その中心となる一部について鉄骨柱あるいは鉄筋コンクリート柱を適用することで、低コストで信頼性の高い安全性に優れた木造住宅を提供することを目的としている。 【0005】 【課題を解決するための手段】本願の請求項1に係る発明は、柱および横架材(はり、けた等)を軸組主体とする在来軸組構造の木造住宅において、柱のうち軸組の中核となる1本または数本の柱を主柱として鉄骨柱で構成したことを特徴とするものである。 【0006】主柱の代表的な形態は、いわゆる大黒柱に相当する建物の中央部に位置する柱であり、本願発明では特に2階建て、3階建て(法令等による制約がない場合はそれ以上であってもよい)の木造住宅において、通し柱として複数階にまたがる柱を考えている。 【0007】この主柱については、運搬や現場のスペースを考慮して、複数の鉄骨を長手方向に継ぎ足して使用することができ、その場合、例えば1階分の長さの鉄骨を階数分継ぎ足すなどして使用することになる。 【0008】主柱となる通常1本の柱以外の柱については、木製の柱が用いられ、基本的には在来軸組工法による木造住宅となる。建坪が大きい場合には主柱は1本に限らず数本設ける場合もあり、また地盤条件や設計に応じて、主柱を近接して数本配置し、必要に応じこれらを連結することもあり得る。 【0009】本発明において、主柱は実質的な大黒柱として大きな強度を期待したものであるが、その他、鉄骨柱と木製の柱とでは、地震に対する応答が全く異なることで、互いに振動を打ち消し合うように作用し、応答を低減することができる。 【0010】また、万が一大地震で大きな被害を受けた場合、主柱周辺部分だけでも倒壊をまぬがれることで、人的被害を最小限に抑えることができる。 【0011】本願の請求項2に係る発明は、主柱として請求項1における鉄骨柱の代わりに鉄筋コンクリート柱を用いたものに相当する。鉄骨柱と鉄筋コンクリート柱とでは、柱としての振動特性や靱性に大きな差があるが、木製の柱との地震応答特性の相違や大きな強度の柱が設計可能な点で、請求項1の場合と同様の効果が得られる。 【0012】請求項3は、請求項1または2の木造住宅におけるはりやけた等の横架材の主柱への接合構造に関し、主柱にブラケットを設け、主柱に取付く横架材の端部を接合金具を用いてブラケットに接合する場合を限定したものである。 【0013】本願発明では材質の異なる鉄骨柱と木製のはりやけたとの接合となるため、通常の木造住宅における木どうしの仕口が使えず、そのための構造を与えたものである。この場合、ブラケットに対する横架材の接合は剛な接合ではなく、接合金具にピン接合あるいは長孔によるボルト接合等を用いて若干の回転、ずれを許容するような構造として、ある程度自由度を持たせた構造が好ましい。 【0014】請求項4は、請求項1または2の木造住宅における横架材の他の接合構造として、主柱の外周面に木製の添え柱を固定し、主柱に取付く横架材の端部を添え柱に接合する場合を限定したものである。 【0015】この場合の添え柱に対するはりやけた等の横架材の接合は木どうしの接合であり、従来の木造住宅における仕口と同様の接合が可能となる。 【0016】 【実施の形態】図1は本願発明に係る木造住宅の一実施形態における主柱部分の構成を示したものである。 【0017】図1の例は主柱4として鉄骨柱を用いた場合であり、主柱4の下端は基礎2のコンクリート中に十分な埋込み長さをとって埋め込まれている。図中、7はアンカー筋、8は主柱4下端を取り巻く鉄筋篭である。主柱4の基礎を一般の木造住宅の基礎に比べて強固に設計することで、建物全体の高い耐震性、安全性を確保することができる。 【0018】なお、図1において図示されていない他の柱(木製)については、通常の軸組工法により土台3上に組み上げることができる。 【0019】主柱4と木製のはり6との取り合いについて、この例(図1(a),(b) 参照)では鋼製の主柱4にブラケット9を固定し、このブラケット9にはり6の端部を載置し、接合金具10で連結している。この仕口部分はピン接合的な接合部を与えており、また例えば接合金具10のボルト接合部を長孔とすることで、はり6の軸方向の若干のずれを許容することができる。 【0020】図1(c) は他の取り合いの例を示したものであり、主柱4の外周面に木製の添え柱11を取り付け、はり6を添え柱11に接合できるようにしたものである。添え柱11の主柱4への取り付け方法としては、ボルト接合、接着剤による接合、バンド締め付けによる方法等が考えられる。添え柱11とはり6の接合は木製部材どうしの接合であり、従来の木製部材どうしの仕口がそのまま利用できる。 【0021】以上は、主柱4が鉄骨柱の場合であるが、主柱4を鉄筋コンクリート柱としても高い耐震性、安全性を確保することができる。その場合の主柱4下端の基礎は鉄筋コンクリート構造物の基礎と同様に設計することができ、またはり6を接合するためのブラケット9等の金具は、鉄筋コンクリート柱に埋め込んだアンカーボルトを利用して接合したり、あるいはあからじめ接合金具自体を鉄筋コンクリート柱に埋め込んで一体化しておくこともできる。 【0022】図2は建物全体における主柱の平面配置の一例、図3は内観の一例を示したものである。例えば、主柱4を中心として斜梁により高い天井または斜め天井を設けることもでき、設計の自由度が高く、快適な広い住宅空間が得られる。 【0023】また、主柱4近傍の木造の柱5について、筋違、火打等の補強を行い、主柱4とともに建物の安全性、強化を図ることもできる。 【0024】なお、主柱4となる通常1本の柱以外の柱については、木製の柱5が用いられ、基本的には在来軸組工法による木造住宅となるが、建坪が大きい場合等には主柱4は1本に限らず数本設ける場合もあり、また地盤条件や設計に応じて、主柱4を近接して数本配置し、必要に応じこれらを連結することもあり得る。 【0025】図4(a) 〜(f) はそのような主柱4を近接させて数本配置する場合の配置例を示したものである。 【0026】 【発明の効果】 ■主柱を構成する1または数本の柱のみが鉄骨柱または鉄筋コンクリート柱となり、軸組を構成する大部分の柱およびはり、けた等が木製があることから、基本的に在来軸組工法による木造住宅として構築でき、また居住性に関しても木造住宅の快適さを損なうことがない。 【0027】■主柱については、通常の木造住宅の柱に対し、はるかに強度の高い柱が、それほどのコスト増を伴うことなく利用でき、また大黒柱等に高級な木材を用いる場合に比べるとかえって割安になる。さらに、鉄骨柱の場合は長手方向に継ぎ足して使用することができ、鉄筋コンクリート柱の場合は現場築造であるため、運搬や現場スペースとの関係において特に断面や長さの制約を受けない。従って、安全を確保しながら、広い部屋、高い天井といった大きな室内空間が得られるとともに、例えば4階建て木造住宅への足がかりともなり得る。 【0028】■中核となる鉄骨または鉄筋コンクリート製の主柱と、周辺の木製の柱、はりやけた等の横架材との地震応答特性が大きく異なることで、互いに干渉し合うことによる応答低減効果がある。 【0029】■鉄骨あるいは鉄筋コンクリート製の主柱により建物全体の構造強化が図れ、巨大地震に対しても、住宅建物全体がいっきに崩壊してしまうといったことが防げる。また、万が一大きな被害を受けた場合でも、主柱周辺部分が倒壊をまぬがれることで、人的被害を最小限に抑えることができる。 【0030】■大黒柱や通し柱にあたる主柱については、周辺の木製の柱、はり、けたより実質的な耐用年数が長く、実質的に老朽化の問題がない。 【0031】■鉄骨柱については、鉄骨下端を基礎コンクリート中に埋設したり、埋め込みアンカーに固定したりすることができ、それによって高い安定性が得られる。また、鉄筋コンクリート柱の場合も、アンカー筋等で補強した形で基礎コンクリートと一体化することで、高い安定性が得られる。
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