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発明の名称 弾性表面波アクチュエータ
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−296186
公開日 平成10年(1998)11月10日
出願番号 特願平9−105017
出願日 平成9年(1997)4月22日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 美次郎
発明者 樋口 俊郎 / 黒澤 実 / 篠浦 治
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 少なくとも一つの導波路と、少なくとも1つの弾性表面波発生部と、支持基体とを含む弾性表面波アクチュエータであって、前記導波路は、弾性表面波のための画定された周回路を構成するように備えられ、前記弾性表面波の波長をλとしたとき、幅W0が2λ<W0<100λを満たしており、前記弾性表面波発生部は、前記周回路中に配置され、前記弾性表面波を一方向に発生させるものであり、前記支持基体は、前記導波路及び前記弾性表面波発生部を支持している弾性表面波アクチュエータ。
【請求項2】 請求項1に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記導波路は、前記支持基体の同一平面内に形成されている弾性表面波アクチュエータ。
【請求項3】 請求項1に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記導波路は、前記支持基体の表面、一側面、裏面及び他側面を順次に通過する3次元的周回路を構成する弾性表面波アクチュエータ。
【請求項4】 請求項2または3の何れかにに記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記支持基体は、圧電体でなり、前記弾性表面波発生部は、前記支持基体に櫛型電極を形成してなる【請求項5】 請求項2または3の何れかにに記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記支持基体は、圧電体とは異なる部材でなり、前記弾性表面波発生部は、前記支持基体に取り付けられている弾性表面波アクチュエータ。
【請求項6】 請求項3に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記支持基板は、前記弾性表面波の進行方向で見た端部が曲面となっている弾性表面波アクチュエータ。
【請求項7】 請求項6に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記曲面の曲率半径rは、r≧nλ(nは整数)を満たす弾性表面波アクチュエータ。
【請求項8】 請求項6に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記曲面の曲率半径rは、周回ループ長をLとしたとき、L=nλ(nは整数)を満たす弾性表面波アクチュエータ。
【請求項9】 請求項1に記載された弾性表面波アクチュエータであって、移動子との組み合わせを含み、前記導波路は、少なくとも一部が、前記移動子を駆動する駆動部分として用いられる弾性表面波アクチュエータ。
【請求項10】 請求項9に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記導波路は、前記駆動部分よびその近傍部分の幅W2が、それ以外の部分の幅W1よりも狭い弾性表面波アクチュエータ。
【請求項11】 請求項10に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記導波路は、前記幅W1、W2が、W1*0.2<W2<W1を満たす弾性表面波アクチュエータ。
【請求項12】 請求項9に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記移動子は、前記駆動部分と接触する面に、複数の突起を有しており、前記突起は、頭頂部の面積が1000μm2以下である弾性表面波アクチュエータ。
【請求項13】 請求項12に記載された弾性表面波アクチュエータであって、前記複数の針状突起は、シリコンによりなる弾性表面波アクチュエータ。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、弾性表面波アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】固体の表面に発生するレイリー波は表面波であり、その表面の1点は楕円運動を行うため、上に載せられた物体を移動することが可能である。同様の進行波を用いた超音波モータは既に実用化されているが、駆動周波数は数kHzであり、トルクは大きいが移動速度は小さかった。
【0003】特公平1-17353号には、超音波振動子の弾性体表面に楕円振動を形成する進行波を生じさせて動体を摩擦駆動するモータ装置が開示されている。特にループ状弾性体に圧電体を設け、弾性体のコーナー部には表面波が伝搬できるように曲面形状に加工されている。
【0004】しかし、一方で、日経エレクトロニクス1983年2月28日号、44ページに、特公平1-17353号に開示されたものと同様のモータ装置が紹介され、超音波振動子の現実的な振動周波数である30kHzから計算すると、波長が10cmと長く、弾性体と動体の接触点が10cmに1点となってしまうことから、このような表面波モータは実現できないこととされ、表面波ではなく、曲げ振動を用いた超音波モータを考案することにより製品化がなされた旨記載されている。
【0005】このように、表面波を用いたモータの実現には多くの困難が伴い、現実に駆動するには問題があった。
【0006】一方、超音波振動子に代えて、弾性表面波素子を用いた弾性表面波アクチュエータの研究開発が進められてきた。例えば、本発明者らは、ニオブ酸リチウム基板上に弾性表面波を発生させ、ルビーボールや磁石で荷重をかけたスチールボールを高速で移動できることを見いだし、これを、弾性表面波モータとして、信学技報US−94−74(1994ー12)31ページに発表している。
【0007】また、特開平7231685号公報には、4個の櫛型電極をXY平面に対向配置し、これらの4個の櫛型電極を選択的に励振して、移動子をXY平面上で2次元的に駆動する構成の弾性表面波モータが開示されている。しかし、これらの公知文献にはエネルギー効率の改善手段については、開示がない。
【0008】本発明者等は、更に、現実に駆動可能な弾性表面波アクチュエータを提案している。この弾性表面波アクチュエータは、圧電体基板上に櫛形電極を設け、この櫛形電極に高周波電圧を印加することにより弾性表面波を発生させ、移動子を駆動するものであった。しかし発生したある1つの波について見れば、移動子を駆動するのは1回だけであった。すなわち櫛形電極に電圧を印加することにより発生した1つの波は一方向に進み、その進行路の上にある移動子を1回だけ駆動する。そして、波は移動子を通り過ぎて更に進行するが基板端面に到達すると、反射され散乱され、今までとは反対方向に進んでいく。この反射波はアクチュエータとしては好ましくない成分のため、ダンピング物質、例えばシリコングリス等を基板端面に形成し吸収する手法が用いられていた。このため入力したエネルギーに対して実際に移動子を動かすのに使用されるエネルギーは極めて僅かでしかなかった。殆どの入力したエネルギーは、ダンピング物質に吸収され熱エネルギーとして浪費されていた。
【0009】特公平1-17353号にも、発明者らが公表した弾性表面波アクチュエータと同様の技術が開示されている。しかし、この公知文献に記載された弾性表面波アクチュエータの場合も、弾性表面波は波の進行に伴い広がっていく。そして進行方向直角にある壁に到達する。すると反射され最初と反対方向に進む。このような反射波により振動全体が大きく乱れてしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、エネルギー効率に優れた弾性表面波アクチュエータを提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するため、本発明に係る弾性表面波アクチュエータは、導波路と、弾性表面波発生部とを含む。前記導波路は、弾性表面波に対し、画定された周回路を構成するように備えられている。前記導波路は、弾性表面波のための画定された周回路を構成するように備えられ、前記弾性表面波の波長をλとしたとき、幅W0が2λ<W0<100λを満たしている。前記弾性表面波発生部は、前記周回路中に配置され一方向に弾性表面波を発生させる。
【0012】本発明に係る弾性表面波アクチュエータにおいて、導波路は弾性表面波に対する周回路を構成しており、弾性表面波発生部は周回路中に配置され一方向に弾性表面波を発生させるから、弾性表面波発生部で発生した弾性表面波は導波路内を進行し、再び、弾性表面波発生部へと戻ってくる。そして更に導波路内を進む。即ち、弾性表面波発生部で発生した弾性表面波は、周回路(ループ)となっている導波路内を周回することになるから、反射波を生じることがない。しかも、弾性表面波を伝播させるために選択され、かつ、画定された導波路内を周回するので、散乱等を生じることがない。このため、従来の弾性表面波アクチュエータに比べて、はるかに高いエネルギー効率を得ることができる。
【0013】前記導波路は、前記弾性表面波の波長をλとしたとき、幅W0が2λ<W0<100λを満たすように設定する。導波路1の幅W0が2λよりも小さくなると、弾性表面波の損失が大きくなる。導波路1の幅W0が100λよりも大きくなると、反射波の影響が大きく、またアクチュエータが大型化してしまう。
【0014】本発明に係る弾性表面波アクチュエータは、各種の精密位置決め機構を必要とする精密機械、または、磁気ディスクもしくは光ディスク等の高密度記録媒体に情報を書き込み、読み出しを行うヘッドのトラック方向位置決め装置等に用いることができる。この場合、1つの弾性表面波により、その進行路の上にある移動子を1周回毎に1回駆動する。この動作を、駆動周波数に応じて繰り返すことにより、移動子を弾性表面波の進行方向に移動させることができる。この構成によれば、実際に弾性表面波の周回、及び、移動子の駆動が可能であり、高トルクで、高速移動の可能な位置決め精度の優れた位置決め機構を実現することができる。
【0015】弾性表面波は信号用途に広く使用されており、弾性波素子技術ハンドブック(学振150委員会編、オーム社、1991年)240ページには、固定ディレイラインとして周回型素子が紹介されており、波面の広がりを防止するためにはガイドを併用する旨の記載がある。しかし、あくまで信号用途であって、アクチュエータを開示するものではなく、アクチュエータとして固有の問題点、及び、その解決手段については何も示唆する記載がない。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は本発明による弾性表面波アクチュエータの平面図、図2は図1に示した弾性表面波アクチュエータの正面図、図3は図1に示した弾性表面波アクチュエータの底面図、図4は図1の4ー4線に沿った断面図をそれぞれ示している。図示するように、本発明に係る弾性表面波アクチュエータは、導波路1と、弾性表面波発生部2と、支持基体3とを含む。導波路1は、金属リボン型導波路であって、弾性表面波に対する画定された周回路を構成する。弾性表面波発生部2は、周回路中に配置され、矢印a方向に進行する弾性表面波を発生させる。支持基体3は、導波路1及び弾性表面波発生部2を支持している。
【0017】図示された弾性表面波アクチュエータにおいて、導波路1は、支持基体3によって支持され、支持基体3の表面、一側面、裏面及び他側面を順次に通過する3次元的周回路を構成する。弾性表面波発生部2は、支持基体3の裏面に配置されている。
【0018】上述した弾性表面波アクチュエータにおいて、導波路1は弾性表面波に対する周回路を構成しており、弾性表面波発生部2は周回路中に配置され、矢印aで示す一方向に進行する弾性表面波を発生するから、弾性表面波発生部2で発生した弾性表面波は、導波路1内を、矢印aで示す方向に進行し、再び、弾性表面波発生部2へと戻ってくる。そして更に導波路1内を進む。上述のように、弾性表面波発生部2で発生した弾性表面波は、周回路となっている導波路1内を周回することになるから、反射波を生じることがない。しかも、弾性表面波を伝播させるために選択され、かつ、画定された導波路1内を周回するので、散乱等を生じることがない。このため、従来の弾性表面波アクチュエータに比べてはるかに高いエネルギー効率を得ることができる。
【0019】導波路1の幅W0は、弾性表面波の波長λに関して、2λ<W0<100λとなることが重要である。導波路1の幅W0が2λよりも小さくなると、弾性表面波の損失が大きくなる。導波路1の幅W0が100λよりも大きくなると、反射波の影響が大きく、またアクチュエータが大型化してしまう。
【0020】支持基体3は、端面において弾性表面波が反射されるのを回避するため、端面を曲面化する。この曲面化加工は通常公知の各種の機械加工により形成可能である。弾性表面波の波長をλとした時に曲率半径r(図4参照)がr≧nλ(nは整数)となるように加工することにより、反射が防止される。また周回するループ長をLとするとL=nλ(nは整数)と設定することにより、より一層、効率を高めることが可能である。
【0021】従来の超音波モータでは波長λが長かったために、曲率半径rが非常に大きくなり、現実的な大きさで、このような周回型アクチュエータを実現することが不可能であった。櫛形電極により発生する弾性表面波モータは、従来の超音波モータと類似しているが、周波数の非常に高い弾性表面波を用いる。これにより、従来、不可能視されていた高効率周回型弾性表面波モータの実現を可能にしたのもであり、その技術的価値はきわめて大きい。
【0022】本発明に係る弾性表面波アクチュエータは、導波路を進行する弾性表面波によって、移動子を弾性表面波の進行方向に駆動するアクチュエータとして用いることができる。さらに、例えば外部に設けられた支点を中心に、弧を描く運動に変換することも容易である。この場合には移動子は同一直線上を駆動されない。また、同一面内周回型導波路を用いて、移動子に円周運動をさせるすることも可能である。ここで、移動子は、複数の点接触に近い状態で、弾性表面波駆動面と接触していることが望ましい。
【0023】図5は図1〜図4に示した弾性表面波アクチュエータを、各種精密位置決め装置等に用いた場合の動作を説明する図である。弾性表面波発生部2によって発生された1つの弾性表面波により、その進行路の上にある移動子4を1周回毎に1回駆動する。この動作を、駆動周波数に応じて繰り返すことにより、移動子4を弾性表面波の進行方向aと逆向きbに移動させることができる。この構成によれば、高トルクで、高速移動の可能な、位置決め精度の優れた位置決め機構を実現することができる。
【0024】弾性表面波発生部2は、1MHz〜数十MHzの周波数で駆動することが好ましい。1MHzよりも低い駆動周波数では移動速度が遅く、数十MHzを越える駆動周波数では、機械的な移動追従が困難で、摩擦が大きく、信頼性が低下する。
【0025】次に、各部の具体的構成について述べる。まず、弾性表面波発生部2は、櫛型電極を有する構造のものが一般的に採用される。この場合、弾性表面波発生部2は、偶数個nの櫛型電極A、Bによって構成することが望ましい。そして、偶数個の櫛型電極A、Bにより、位相を空間的、時間的に90度ずらせしたレイリー波をそれぞれ発生させ、それらを合成することにより、一方向の進行波を発生させる。例えば、2個の櫛型電極A、Bを用いた場合について説明すると、櫛型電極A、Bのそれぞれに対し、時間的に90度の位相差を持つ駆動電圧を加えた時、その振動はそれぞれ以下の式で示される。
yA=a・sin(kx)sin(wt)
yB=a・cos(kx)cos(wt)
なお、2つの櫛形電極間の空間的距離を5/4λ(つまり櫛形電極Bがπ/2だけ進んでいる)としてある。上記2つの式を足し合わせるとy=yA+yB=a・sin(kxーwt)
となり、一方向の進行波が得られる。また時間的なずらし方を調整することで、櫛形電極に対して左右どちらの方向にも、一方向の進行波を出すことが可能である。
【0026】図6は2つの櫛型電極A、Bを用いた弾性表面波発生部2の例を示す。図6に示すように、櫛形電極A、Bは外部との接続端子となるパッド部21と交差櫛形電極部22から構成されている。この櫛形電極A、Bは、圧電体20の上に形成されており、圧電体20は支持基体3に対し、密着して搭載されている(図4参照)。この櫛型電極Aのうち最もBに近い一本の電極と、櫛型電極Bのうち最もAに近い一本の電極との間隔は、弾性表面波の波長λに関して5/4λである。
【0027】図7は図6に示した2つの櫛型電極A、Bを用いた弾性表面波発生部を駆動する場合の回路構成を示す図であり、高周波電源5より、パッド部21に電圧を印加することにより、圧電体20上に弾性表面波を発生させる。弾性表面波が伝搬される部分には導波路1が設けられ、櫛形電極A、Bで発生した弾性表面波は導波路1内を進行し、再び最初に発生した櫛形電極A、Bへと戻ってくる。そして更に導波路1内を進む。すなわちループとなっている導波路1内を周回する。
【0028】移動子4(図5参照)の移動速度は、高周波電源5から櫛形電極A、Bに印加される電圧を変えることにより、制御することが可能である。これは印加電圧により、弾性波の振幅が変化する為である。高周波電源5を連続的に供給するのではなく、間欠的に供給し、そのオンとオフの時間を変化することが好ましい。すなわち1つの波が周回するために連続して新たな波を発生する必要がない。周回を重ねるにつれ次第に減衰する分を補うだけの波を新規に発生させる。なおこの減衰損失は0.02〜0.06dB/λ程度である。さらに、弾性表面波アクチュエータに対する移動子4の接触圧力を調整することにより、移動速度を制御することも可能である。
【0029】図7に示された弾性表面波発生部において、圧電体20としては、従来より、SAWフィルター用材料として知られているLiNbO3(以下LN)、LiTaO3、Bi12GeO20、Bi12SiO20、PZT、ZnO、CdS、Li2GeO3、水晶等の単結晶材料を用いることが可能である。さらにZnO、CdS等の圧電薄膜やPbTiO3-PbZrO3-In(LiW)O3系等の圧電焼結セラミックも使用可能である。
【0030】支持基体3の全体をバルクの圧電体で形成する、すなわち弾性表面波発生部2、導波路部1分を含む全てを圧電体によって構成することも可能であるが、一般に上記の材料は加工性に乏しいことから、端面を曲面化加工する場合には困難が伴う。このような場合には、櫛型電極部分のみを、圧電体20とし、その他の部分を、高硬度材料、例えばアルミナ等の基板によって構成し、圧電体20を支持基体3に対して一体化する。前述した実施例はこのような構成例を示し、圧電体20と支持基体3とを一体化してある。一体化とは櫛型電極部分で発生した弾性表面波が圧電体20から支持基体3に伝搬する際に、反射等による損失を最小限にした状態を指す。
【0031】具体的には、圧電体20の表面位置と、支持基体3の表面位置とを一致させると共に、両者20ー3間の隙間を最小限にする。好ましくは、支持基体3の一部に凹部を設け、凹部内に圧電体20を埋め込む。圧電体20と支持基体3との接合には、樹脂接着剤、たとえば熱硬化性エポキシ樹脂等も使用可能であるが、より好ましくは、陽極接合や常温接合等を用いる。陽極接合や常温接合等を用いる場合、圧電体20及び支持基体3の少なくとも一方の接合面に、金属薄膜を形成し、この金属膜を利用して接合することも可能である。
【0032】櫛型電極材料として薄膜金属を用いる場合には、アルミニウム、アルミニウム銅合金、クロム金合金、チタン金合金等が利用できる。この金属薄膜のパターンニングは、フォトリソグラフィ手法によりレジストマスクを形成した後、不要部分をエッチングすることで容易に実行できる。エッチングはウェット、ドライの各種手法が使用可能である。たとえばアルミニウム電極の場合、ウエット法によるエッチャントとしては、リン酸、硝酸、酢酸系のものが、エッチ面を滑らかにできるという理由で好ましい。またドライミリングでは、アルゴンによるイオンビームミリングやプラズマエッチングが使用される。但し、支持基体3に導波路2となるカーボン膜を形成した場合には、エッチングにより該カーボン膜がミリングされないような手法、条件が選択される。その後、剥離液でレジストマスクを剥離することで所望の電極パターンが形成される。また、パラジウム等の導電体ペーストをスクリーン印刷手法を用いて所定の電極パターンとなるように印刷することによっても、形成することができる。
【0033】櫛形電極A、Bは、従来から知られているSAWフィルターの設計手法により容易に設計できる。例えばLNを基板とした10MHzでの駆動では電極幅100μm、ピッチ400μmで電極交差幅が12.5mmでは電極本数40本程度が好ましい。すなわち交差幅が25mmでは電極本数20本となる。
【0034】次に、導波路1は、SAWフィルタ等で従来より知られている各種の薄膜導波路によって構成できる。具体的には、薄膜リボン型導波路、スロット導波路及びΔv/v導波路等がある。さらには、トポグラフィック導波路として、リッジ型導波路及び溝型導波路が使用可能である。薄膜リボン型導波路としては、金薄膜が一般的であり、Cr、Ti、Al等が特に好ましい。またスロット型との組合せで、導波路部分の外部領域に、アルミナ、イットリア安定化ジルコニア等の高音速誘電体膜を設けることが可能である。さらに、高音速誘電体膜を形成することにより、トポグラフィック導波路としての機能も発揮される。またエキシマレーザーやバイトによる機械加工によるトポグラフィック導波路も好ましい形態の1つである。トポグラフィック導波路の例を図8及び図9に示す。
【0035】図8において、導波路1は支持基体3の表面に、互いに間隔W0を隔てて併設された矩形またはV状等の任意の形状を持つ溝31、32によって画定されている。導波路1は支持基体3の表面に前述した薄膜を付着させることによって形成されている。図9において、支持基体3の表面に突条33を設け、突条33を導波路1として用いている。突条33の表面に薄膜を形成できることは前述した通りである。
【0036】さらに、耐久性改善のために、弾性表面波伝搬面および/または移動子接触面に、従来公知の摺動特性改善薄膜材料、例えば硬度の高いダイヤモンドや、特開平215169号に記載されている様なダイヤモンド.ライク.カーボン膜を用いることがえきる。さらに、移動子4と弾性波伝搬面(固定子)との間の摺動性改善のために、ディプコート法等によりフッ素系潤滑剤を塗布する等、液体潤滑剤を使用することも可能である。但し、弾性波の伝達を阻止しないことが重要である。さらに、高硬度基板及び薄膜上に、さらに、100Å程度の低硬度膜、例えばアルミニウム、インジウム等を形成することにより、より一層の摺動特性改善が可能である。
【0037】移動子4を駆動する場所およびその近傍の導波路1の幅W2をそれ以外の部分の導波路1の幅W1に比べて狭くすることが好ましい。図10にその例を示す。図10において、移動子4は導波路1のP1ーP2間を往復で移動する。櫛形電極A、Bにおいて発生した弾性表面波は、円弧形状の導波路部分P0を経由して、P1ーP2間に至り、さらに導波路部分P3を通り周回する。導波路部分P1ーP2間は直線状であり移動子4は直線駆動される。また導波路部分P1ーP2間およびその近傍の導波路1の幅W2は、それ以外の部分の導波路1の幅W1に比べて狭い。このため導波路部分P1ーP2間においては、弾性表面波の振幅が他の部分に比べて高くなり、移動子4の駆動特性が向上する。
【0038】移動子4を駆動する場所及びその近傍の導波路1の幅W2を、それ以外の部分の導波路1の幅W1に比べて狭くする場合、特に好ましくはW1*0.2<W2<W1である。前記範囲以下では導波路1の絞り込みによる弾性表面波の減衰が大きい。導波路1の幅が変化する部分で、幅を、幅W1から幅W2に徐々に狭くしていくことにより、絞り込みによる弾性表面波の減衰を最小限にできる。これにより、移動子4を駆動する部分において、弾性表面波の振幅が他の部分に比べて大きくなり、駆動特性が向上する。この場合において導波路1の幅の範囲は、広い幅W1が2λ<W1を満たし、狭い幅W2がW2<100λを満たす必要がある。
【0039】なお本発明においては、櫛形電極を1つの導波路1中に4個以上の偶数個形成し同期させながら駆動することも可能である。
【0040】図11は本発明に係る弾性表面波アクチュエータの別の実施例を示している。この実施例では、支持基体3の片面上に、円弧状の導波路100、110が対向して形成されており、導波路100、110の間に、2つの弾性表面波発生部210、220が配置されている。弾性表面波発生部210において発生した弾性表面波は、導波路100内を矢印a1の方向に進行し、弾性表面波発生部220において発生した弾性表面波は、導波路110内を矢印a2の方向に進行し、弾性表面波は、全体として、導波路100、110内を周回する。弾性表面波発生部210、220は、櫛型電極(A1、B1)、(A2、B2)が弾性表面波の進行方向a1、a2と直交するように配置する。この実施例の場合には、導波路1の最内周部と最外周部の長さが異なることから、より大きな直径の導波路100、110が好ましい。
【0041】この場合、導波路100、110の最内周部と外周部における音速を変化させることができる。具体的には、誘電率が異なるいわゆる特性傾斜膜とすることにより、損失低減が可能である。例えば最外周部と最内周部の長さが3%異なる場合には音速を同様に3%変化する組成とすることになる。なお、導波路長Lが最内周部と最外周部で波長に対して実質的に異なる場合には導波路の中央部のLがL=nλを満たすように設計される。この場合には基板端面を曲面化する加工が不要であり、通常の薄膜プロセスのみで製作することが可能となる。また産業上利用価値の高い回転運動が容易に得られる。
【0042】図12は図11に示した弾性表面波アクチュエータを用いた回転装置を示す図、図13は図12に示した回転装置の斜視図である。弾性表面波アクチュエータ6は固定子として用いられ、移動子4は、軸O1の周りにおいて矢印bの方向に回転する回転子として用いられている。移動子4は、小さな振幅の弾性表面波で駆動することから、点接触に近い接触状態を実現する点状突起41を、弾性表面波アクチュエータ6と接触する部分に点在させることが望ましい。上記の点状突起41は、ルビー、セラミック、鉄等の硬度の高い材料からなる球体によって構成することが好ましい。
【0043】図14は移動子4の他の実施例を示す平面図、図15は図14に示した移動子の底面図である。この実施例では、移動子4の弾性表面波アクチュエータ6と対向する面に、上述した高硬度材料で構成された複数個kの球体41が、集合体として付着されている。このような構造によれば、より大きなトルクを発生することが可能である。即ち、k個の接触点があれば、k倍のトルクが発生する。例えば1000個の0.1mmφの球体を用いることが可能である。また全ての球体41が弾性表面波アクチュエータ6の導波路に接触していない場合でも、複数個の球体が接触していれば、移動子4を移動させることができる。
【0044】図16は移動子の他の実施例を示す平面図、図17は図16に示した移動子の底面図である。この実施例は、球体と同様の点接触を実現する好ましい手段を開示している。図において、移動子4は、シリコンにより形成された針状の突起42を有する。このような針状突起42は、シリコン基板に、フォトリソグラフィ手法により、保護マスクを形成した後、エッチング処理を行うことで得ることができる。
【0045】本発明において、針状の突起とは、前述のように点接触に近い接触条件を実現するための手段である。より具体的には、針状突起の頭頂部の面積が1000μm2以下、特に好ましくは100μm2以下であれば、概ね良好な駆動が可能となる。前記範囲以上では接触面積が大きく、点接触に近いとは言えず、駆動特性が劣化する。また、突起が設けられている面の全面積の1/100以下、特に好ましくは1/1000以下が突起頭頂部の総面積となることが好ましい。凸部の高さは1000Å以上が好ましい。また、点状の凸部でなく、2次元的な帯状の凸部を有する面でも、弾性表面波進行方向に直角に帯状突起を配置することにより、良好な駆動特性を得ることが可能である。
【0046】本発明において、駆動面として圧電体以外の基板を用いる場合には、耐久性向上のために、硬度の高い基板を用いることが好ましい。例えばアルミナ、アルミチタンカーバード等が好ましい。ジュラルミン等の高硬度金属も使用可能である。
【0047】さらに耐久性改善のために弾性表面波伝搬面および、または移動子接触面には従来公知の摺動特性改善薄膜材料、例えば硬度の高いダイヤモンドや特開平215169号に記載されている様なダイヤモンド様カーボン膜が用いられる。さらに移動子4と弾性波伝搬面(固定子)間の摺動性改善のためにフッ素系潤滑剤をディプコート法等により塗布する等の液体潤滑剤の使用も可能であるが、弾性波の伝達を阻止しないことが重要である。さらに公知のように高硬度基板、薄膜上にさらに100Å程度の低硬度膜、例えばアルミニウム、インジウム等を形成することにより、より一層の摺動特性改善が可能である。
【0048】次に、実施例および比較例をあげて説明する。
<アクチュエータA:実施例1>(弾性表面波発生部)3インチ径、厚さ1mmのLN基板を用い、この上に蒸着法により、1800オングストロームの膜厚となるように、アルミニウム膜をLN基板の全面に成膜した。その後、成膜されたアルミニウム膜の上にヘキスト社ポジ型フォトレジスト(AZタイプ)を用いてレジストミリングカバーマスクを形成した。さらにイオンミリング装置により不要部分のアルミニウムを除去した後、レジスト剥離を行い所定の櫛形電極をLN基板上に形成した。櫛型電極のパターンは電極幅100μm、ピッチ400μmで電極交差幅が8mmでは電極本数40本とし、2つの櫛型電極間の距離は(5/4)波長とした。すなわち本アクチュエータは、波長400μm、駆動周波数10MHzの設計である。
【0049】(導波路)表面波伝達方向の支持基体の端面に、r=2mmとなるような曲面加工を施した。そして更にフォトレジストで保護膜を形成した上で、エキシマレーザーを用い、幅200μm、深さ200μmの溝型導波路を3次元的に形成した。この溝は弾性波伝達方向に平行に形成した。導波路の幅Wは8mm(すなわち20λ)、長さは500波長とした。得られた弾性表面波アクチュエータをアクチュエータAとする。
【0050】<アクチュエータB:比較例1>弾性表面波発生部の構成及び形成手段、並びに支持基体端部の曲面加工はアクチュエータAと同様であるが、導波路を形成しないアクチュエータBを作製した。導波路を除けば、アクチュエータAと同じである。得られた弾性表面波アクチュエータをアクチュエータBとする。
【0051】<アクチュエータC:比較例2>弾性表面波発生部の構成及び形成手段、並びに、導波路の形成手段は、アクチュエータAと同様であるが、導波路及び電極交差幅の幅W0を0.8mm(すなわち2λ)とした弾性表面波アクチュエータを作成した。これをアクチュエータCとする。
【0052】<アクチュエータA〜Cの駆動実験>アクチュエータA〜Cを用い、駆動周波数10MHz、電圧100V、電圧オンタイムを1ms一定とし、オフタイムを変化させながら、直径0.5mmのスチールボール100個を接触面とした移動子を、櫛形電極と反対面の導波路上に配置して駆動した。
【0053】アクチュエータAについては、オフタイムtを1、3、5、10msで駆動させた場合の0.1秒間の移動距離は、それぞれ3、10、17、32mmであった。
【0054】アクチュエータBについては、オフタイムtを1、3、5、10msで駆動させた場合の0.1秒間の移動距離は、それぞれ0.01、0.01、0.00、0.01mmであった。アクチュエータAの場合、導波路を施してあるのに対し、アクチュエータBには、そのような導波路を施していないために、波が拡散し、エネルギー効率が低下し、それが移動距離の違いとして現れたものである。従って、導波路を施すことが必要である。
【0055】アクチュエータCについては、オフタイムtを1、3、5、10msで駆動させた場合の0.1秒間の移動距離は、それぞれ0.00、0.01、0.02、0.05mmに過ぎなかった。アクチュエータAの場合、導波路の幅W0が、弾性表面波の波長λとしたとき、2λ<W0<100λの範囲に入る20λに選定されているのに対し、アクチュエータCにおいては、導波路の幅W0が前記範囲外である2λに選定されているため、エネルギー効率が低下し、移動距離が短くなったものである。従って、導波路の幅W0を、弾性表面波の波長λとしたとき、2λ<W0の範囲に入るように選定する必要がある。
【0056】<アクチュエータD:実施例2>厚さ0.2mmのLN単結晶基板に櫛形電極のみを形成した後に、ジュラルミン板に熱硬化性エポキシ接着剤で張り付けた構造の弾性表面波アクチュエータDを試作した。ジュラルミン中での波長は0.3mmと変化するが、導波路長の長さは308波長と整数倍となるように調整した。導波路はLN基板にはエキシマレーザーを用い、ジュラルミンの支持基体上には機械的バイト加工を用い、上記と同様の形状、寸法で形成した。
【0057】駆動実験において、オフタイムtを1、3、5、10msで駆動させた場合の0.1秒間の移動距離はそれぞれ0.2、1.0、1.2、3.5mmであった。接着剤部分による波の吸収の為にアクチュエータAと比べると低い駆動能力となったが、実際に駆動するが確認された。
【0058】<アクチュエータE:比較例3>弾性表面波発生部の構成及び形成手段、並びに、導波路の構成及び形成手段はアクチュエータDと同様であるが、導波路の幅W0を3cm、すなわちW=100λとしたアクチュエータEも製作し、アクチュエータDと同様の手段によって駆動したが、駆動は確認されなかった。
【0059】<アクチュエータF:実施例3>厚さ1mm、3インチ直径のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)基板上に中心径57.3mm、幅5mmのドーナツ型導波路を有する弾性表面波アクチュエータFを作成した。波長λは400μmであるため、導波路幅W=5mmは12.5λ、導波路の中心長さは450λとなる。すなわち、図11に示したように、180度異なる位置に2組の櫛形電極を設け、周波数10MHzにて駆動した。導波路部分には、高音速材料として、高度の高いアルミナ膜を10μm厚で成膜し、導波路の内周部と外周部には、機械的なバイト加工により深さ400μm、幅1mmの溝を設けた。
【0060】移動子としては、厚さ0.5mmのシリコン基板をフォトレジストによりパターニングを施した後、水酸化カリウム溶液中でエッチング処理を行い、部分的に20個/mm2の針状突起を有する状態とした。突起の高さは約5μmであった。
【0061】また、エッチング条件を変化させ、部分的に100個/mm2の突起を有する状態とした。突起の高さは約2μm、頭頂部は約2μmφの円形であった。頭頂部面積は3.1μm2であり、単位面積当たりの頭頂部総面積割合は0.314/1000である。
【0062】このシリコン基板を5mm厚のガラスに接着した後、固定子上に荷重1kgをかけながら密着したところ、駆動電圧を変化させることにより、0.01〜30回転/秒の速度にて回転運動することが確認された。なお実際には回転運動ではなく30度のみの回転の往復運動とし櫛形電極部の損傷がないように駆動した。
【0063】<アクチュエータG:比較例4>移動子として、アクチュエータFと同様の工程にて、多数の突起を有するシリコン基板を用いた。但し、エッチング条件を変化させ、部分的に100個/mm2の針状突起を有していて、突起の高さ約2μm、頭頂部40μmφの円形としたアクチュエータGを作製した。頭頂部面積は1256μm2であり、単位面積当たりの頭頂部総面積割合は125/1000である。
【0064】アクチュエータGでは、アクチュエータFとは異なり、移動子を駆動することができなかった。
【0065】<アクチュエータH〜K:実施例5〜8>アクチュエータFと同じ手法にて、2cmの直線部2本と、直径1.5cmの半円状部分とを組み合わせた図10に示す形状の弾性表面波アクチュエータを作成した。そして、移動子駆動部分およびその近傍の導波路の幅W2を変え、それ以外の部分の導波路の幅W1を一定とした数種類の弾性表面波アクチュエータを作成した。すなわち、W1=6mm固定とし、W2=6mm(アクチュエータH)、W2=3mm(アクチュエータI)、W2=1.5mm(アクチュエータJ)、W2=1.0mm(アクチュエータK)とした。アクチュエータFと同じ手法にて形成した多数の針状突起を有する1mm角のシリコン基板を用い、周波数10MHzにて駆動した。電圧オンタイムを1ms、オフタイム10msで駆動した場合、0.1秒間の移動距離は、アクチュエータH、I、J、Kでそれぞれ35、50、40、10mmであった。
【0066】この結果から本発明の効果は明確である。
【0067】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、エネルギー効率に優れた弾性表面波アクチュエータを提供することができる。




 

 


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