米国特許情報 | 欧州特許情報 | 国際公開(PCT)情報 | Google の米国特許検索
 
     特許分類
A 農業
B 衣類
C 家具
D 医学
E スポ−ツ;娯楽
F 加工処理操作
G 机上付属具
H 装飾
I 車両
J 包装;運搬
L 化学;冶金
M 繊維;紙;印刷
N 固定構造物
O 機械工学
P 武器
Q 照明
R 測定; 光学
S 写真;映画
T 計算機;電気通信
U 核技術
V 電気素子
W 発電
X 楽器;音響


  ホーム -> 加工処理操作 -> 高砂熱学工業株式会社

発明の名称 ガス状有機不純物処理システム
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−165744
公開日 平成10年(1998)6月23日
出願番号 特願平8−339086
出願日 平成8年(1996)12月4日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男 (外2名)
発明者 阪田 総一郎
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 気体を透過させることにより,該気体中に含まれるガス状有機不純物を除去して清浄空気を生成するガス状有機不純物処理システムにおいて,気体を透過させることができる高空隙率を有する多孔体の空隙部表面に粒状の活性炭を担持した構造のケミカルフィルタと,前記ケミカルフィルタの下流側に配された,ガス状有機不純物を発生しない活性炭層と,前記活性炭層の下流側に配された,粒子状不純物を除去するフィルタとを備えていることを特徴とするガス状有機不純物処理システム。
【請求項2】 気体を透過させることにより,該気体中に含まれるガス状有機不純物を除去して清浄空気を生成するガス状有機不純物処理システムにおいて,気体を透過させることができる高空隙率を有する多孔体の空隙部表面に粒状の巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を担持した構造のケミカルフィルタと,前記ケミカルフィルタの下流側に配された,粒子状不純物を除去するフィルタとを備えていることを特徴とするガス状有機不純物処理システム。
【請求項3】 前記ケミカルフィルタと粒子状不純物除去フィルタの間にガス状有機不純物を発生しない活性炭層を設けた請求項2に記載のガス状有機不純物処理システム。
【請求項4】 前記活性炭層に使用される活性炭が,粒状活性炭,繊維状活性炭およびハニカム状活性炭の何れかもしくはそれらの任意の組合わせである請求項1または3に記載のガス状有機不純物処理システム。
【請求項5】 前記ケミカルフィルタを構成する多孔体が,プラスチック発泡体である請求項1,2,3または4の何れかに記載のガス状有機不純物処理システム。
【請求項6】 前記プラスチック発泡体が,ウレタンフォームである請求項5に記載のガス状有機不純物処理システム。
【請求項7】 前記粒子状不純物を除去するフィルタが,ガス状有機不純物を発生しない素材のみから構成される請求項1,2,3,4,5または6の何れかに記載のガス状有機不純物処理システム。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,例えば半導体素子(LSI)や液晶ディスプレイ(LCD)を製造するためのクリーンルームなどにおいて好適に使用される,気体を清浄化するためのガス状有機不純物処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】今日,半導体やLCDパネル等の製造にクリーンルームが広く利用されている。例えばベアウェハから1MDRAMチップを製造するまでに至る半導体製造ラインは約200程度の工程を含んでおり,また,素ガラス基板から9.4型TFTを製造するまでに至るLCDパネル製造ラインは約80程度の工程を含んでいる。これらの製造ラインにおいて,ウェハやガラス基板を各プロセスに常に連続的に流すことは困難である。例えばTFT−LCDの製造ラインでは,前工程で回路が一通り形成された半製品基板を次の工程に移送するまでに約数時間〜数十時間の間,搬送容器(キャリア)内や保管庫(ストッカ)内にて,クリーンルーム雰囲気に曝しながら待機させている。
【0003】このように半導体基板やLCD基板をクリーンルーム雰囲気中に長時間放置すると,それら基板の表面にクリーンルーム雰囲気由来の有機物が付着する。そして,半導体基板であるシリコンウェハに有機物が付着した場合には,次のような不都合を生じる。即ち,有機物が付着した状態でウェハ表面に絶縁酸化膜(SiO2)を形成すると,有機物中の炭素成分が絶縁酸化膜(SiO2)中に取り込まれることにより絶縁酸化膜の絶縁耐圧が大幅に低下し,リーク電流も大幅に増大するといった問題を生ずる。また,シリコンウェハ表面への有機物の吸着により,レジスト膜の密着性が悪くなり,露光やエッチング不良を起こし,正確なパターン形成ができなくなる恐れがある。加えて,ウェハの表面抵抗率が上昇してウェハの帯電が生じやすくなり,気中に浮遊している微粒子がウェハ表面に静電吸着し易くなってより絶縁破壊が起きやすくなる。更に,クリーンルーム雰囲気中に含まれた有機不純物によって,露光装置などの光学系レンズやミラー等に曇りによる光学効率の低下を生じてしまう。しかも,クリーンルーム雰囲気中に含まれた有機不純物が光学機器の紫外線により光化学反応を起こし,その生成物が光CVD反応表面によってウェハ表面に付着する問題もある。また,雰囲気由来の有機物がLCD基板であるガラス基板に付着した状態でその表面上に薄膜トランジスタ(TFT)用のアモルファスシリコン(a−Si)を成膜した場合は,ガラス基板とa−Si膜の密着不良を生じてしまう。このように,クリーンルーム雰囲気由来の有機物は,半導体素子やLCDの製造に悪影響を及ぼす。
【0004】一方,基板の表面に付着した有機物を,例えば紫外線/オゾン洗浄などの洗浄技術によって除去することも可能である。しかし,基板一枚当たりの洗浄時間は数分間も要し,頻繁に洗浄することことは生産性の低下を招く。このように,特に最近では,金属不純物やパーティクルによる基板の汚染に加えて,クリーンルーム雰囲気中に存在する有機不純物が半導体製造に及ぼす影響が問題視されている。例えば,米国のSEMATECHが1995年5月31日に発表したTechnology Transfer #95052812A−TR「Forecast of Airborne Molecular Contamination Limits for the 0.25 Micron HighPerformance Logic Process」には,表1に示すように,ウェハ表面の有機物汚染制御レベル(表面汚染の許容値)が記載されている。この記載によると,1998年には前工程で5×113炭素原子個数/cm2,後工程で1×1015炭素原子個数/cm2の制御レベルが必要とされている。
【0005】
【表1】

【0006】そこで従来より,クリーンルーム雰囲気中に含まれるガス状有機不純物を除去するための装置として,活性炭を用いてガス状の有機不純物を吸着して除去するケミカルフィルタが使用されている。そして,活性炭を用いたケミカルフィルタの最も簡素な形式として,所定のケースなどに粒状活性炭を詰め込んだ構成の充填塔が知られている。また,その他の形式として,繊維状活性炭を低融点ポリエステルやポリエステル不織布のバインダと複合してフェルト形状にした構成のケミカルフィルタや,粒状活性炭をウレタンフォームや不織布に接着剤で強固に付着させたシート形状のケミカルフィルタも知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし,充填塔形式のケミカルフィルタは,有機物の吸着効率は高いが,圧力損失(通気抵抗)が高いという欠点を有する。また,フェルト形状やシート形状のケミカルフィルタは優れた通気性があり,吸着効率も充填塔とさほど劣らないが,濾材(例えば,不織布,バインダなど)や,活性炭をシートに付着させている接着剤(例えば,ネオプレン系樹脂,ウレタン系樹脂,エポキシ系樹脂,シリコン系樹脂など)や,濾材を周囲のフレームに固着するために用いるシール材(例えばネオプレンゴムやシリコンゴム等)などから発生したガス状有機不純物がケミカルフィルタ通過後の空気中に含まれてしまい,半導体の製造に悪影響を与える可能性がある。これらフェルト形状やシート形状のケミカルフィルタは,クリーンルーム雰囲気中に含まれるppbオーダの極微量有機不純物を一旦は除去しておきながら,再びフィルタ自身から発生したガス状有機不純物を取り出し空気中に混入させてしまう。
【0008】本発明は,上記のような従来のガス状有機不純物処理システムが有する問題点に鑑みてなされたものであり,圧力損失が少なくてガス状有機不純物を有効に除去できるシステムを提供することにある。また,本発明によれば,ケミカルフィルタの寿命を従来よりも大幅に延長することが可能となる。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために,請求項1の発明は,気体を透過させることにより,該気体中に含まれるガス状有機不純物を除去して清浄空気を生成するガス状有機不純物処理システムにおいて,気体を透過させることができる高空隙率を有する多孔体の空隙部表面に粒状の活性炭を担持した構造のケミカルフィルタと,前記ケミカルフィルタの下流側に配された,ガス状有機不純物を発生しない活性炭層と,前記活性炭層の下流側に配された,粒子状不純物を除去するフィルタとを備えていることを特徴とする。
【0010】また,請求項2の発明は,気体を透過させることにより,該気体中に含まれるガス状有機不純物を除去して清浄空気を生成するガス状有機不純物処理システムにおいて,気体を透過させることができる高空隙率を有する多孔体の空隙部表面に粒状の巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を担持した構造のケミカルフィルタと,前記ケミカルフィルタの下流側に配された,粒子状不純物を除去するフィルタとを備えていることを特徴とする。
【0011】この請求項2の発明において,更に請求項3に記載したように,前記ケミカルフィルタと粒子状不純物除去フィルタの間にガス状有機不純物を発生しない活性炭層を設けても良い。
【0012】また,これら本願の発明において,更に請求項4に記載したように,前記活性炭層に使用される活性炭が,粒状活性炭,繊維状活性炭およびハニカム状活性炭の何れかもしくはそれらの任意の組合わせであってもよい。また,請求項5に記載したように,前記ケミカルフィルタを構成する多孔体は,例えばプラスチック発泡体で構成することができる。この場合,請求項6に記載したように,前記プラスチック発泡体は,例えばウレタンフォームである。なお,請求項7に記載したように,前記粒子状不純物を除去するフィルタが,ガス状有機不純物を発生しない素材のみから構成されていることが好ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下,添付図面を参照しながら本発明にかかるガス状有機不純物除去システムの好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0014】図1は,本発明の実施の形態にかかるガス状有機不純物除去システム1の構成を概略的に示す説明図である。このシステム1は,クリーンルーム内を流れる空気(クリーンルームエア)の流れの順に従って,最も上流側にケミカルフィルタ2が配置され,その下流側に活性炭層3が配置され,更にその下流側にフィルタ4が配置されている。これらケミカルフィルタ2と活性炭層3とフィルタ4は,フレーム5によって一体的に支持されている。
【0015】図2は,ケミカルフィルタ2の構造を示す拡大図である。図示の如く,ケミカルフィルタ2は,多孔体10に球状の活性炭11を担持させた構造になっている。多孔体10には,多数の空隙12が形成されており,これにより,多孔体10は気体を透過させることができる高空隙率を有している。この多孔体10としては,例えばウレタンフォームの如きプラスチック発泡体を使用することができる。活性炭11は,多孔体10に形成された空隙12の表面に対し,接着剤13によって担持されている。
【0016】図3は,活性炭層3の斜視図であり,図4は,図3におけるA−A断面矢視図である。活性炭層3は,自らはガス状有機不純物を発生しないようになっており,ケース20の内部に,粒状活性炭,繊維状活性炭およびハニカム状活性炭の何れかの活性炭21もしくはそれら活性炭21を任意に組合わせて充填した構成になっている。粒状活性炭とは,石炭や木炭粉末をピッチなどの総合剤とよく練り固め,成型後,高温で焼成することによって得ることができる。また,繊維状活性炭は,レーヨン,ポリアクリルニトリル(PAN),ピッチなどの炭素前駆体繊維を出発原料として高温雰囲気で不溶化・賦活することによって得ることができる。また,ハニカム状活性炭は,フェノール樹脂をハニカム形状に成型して約800℃で焼き固めることによって得ることができる。
【0017】ケース20も,例えばステンレスやアルミニウムなどの如き,ガス状不純物を発生しない素材もしくはガス状不純物を脱離させた無機系の素材によって構成することが好ましい。また,ケース20のクリーンルームエア通過面(流入側および流出側)22も,脱ガスのない素材(例えば,ステンレスやアルミニウムなどの無機素材)からなる通気可能なメッシュや多孔板によって構成する。また,特に図示はしないが,繊維状活性炭で構成された薄いマットを,脱ガスのない素材(例えば,ステンレスやアルミニウムなどの無機素材)でできた通気可能なメッシュや多孔板などの間に挟み込むだけでも,「ガス状有機不純物を発生しない活性炭層」を構成することができる。
【0018】フィルタ4は,粒子状不純物を除去するものであり,例えば中性能フィルタやHEPAフィルタやULPAフィルタで構成される。このようにフィルタ4を下流側に配置する理由は,ケミカルフィルタ2の吸着濾材に活性炭を使用したためで,活性炭自身が破砕して発生した粒子状の汚染物をその下流側にて捕捉するためである。このフィルタ4も,ガス状有機不純物を発生しない素材のみから構成されていることが好ましい。即ち,通常の中性能フィルタ,HEPAフィルタまたはULPAフィルタでは,濾材に揮発性有機物を含むバインダを使用しているのでバインダからの脱ガスがある。そこで,そのようなバインダを使用しない濾材を用い,あるいはバインダを使用していても焼きだしなどの処理により揮発性有機物を除去した濾材を用い,さらに濾材をフレームに固定する手段であるシール材にも脱ガスの発生のない種類を選択したり,あるいは濾材を脱ガスのない素材で物理的に圧着してフレームに固定することが望ましい。
【0019】図5は,本発明の他の実施の形態にかかるガス状有機不純物除去システム1’の構成を概略的に示す説明図である。先に図1で説明したシステム1と同様に,このシステム1’も,クリーンエアの流れの順に従ってケミカルフィルタ2’,活性炭層3’およびフィルタ4’が配置され,フレーム5’によって一体的に支持されている。図6は,この実施の形態におけるケミカルフィルタ2’の構造を示す拡大図である。図示の如く,このケミカルフィルタ2’は,気体を透過させるための多数の空隙12’が形成された多孔体10’に粒状の巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤11’を接着剤13’で担持させた構造になっている。巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤とは,例えばスチレンとジビニルベンゼンの付加共重合体を母体とし,これに必要に応じてスルホン化などの処理を施して得られた巨大多孔質(macroporous)合成重合体を,非酸化性雰囲気中で熱分解して炭化したものである。その市販品としては,代表的なものとして,商品名アンバーソープ(米国のロームアンドハース社登録商標)などがあげられる。なお,多孔体10’,活性炭層3’およびフィルタ4’の具体的な構造は先に図1,2で説明したシステム1と同様であるため,詳細な説明は省略する。
【0020】
【実施例】次に,以上に説明した本発明の実施の形態にかかるガス状有機不純物処理システムの作用効果を,実施例によって説明する。
【0021】先ず,クリーンルーム中において,粒状活性炭と繊維状活性炭をそれぞれ使用した市販のケミカルフィルタ2種とイオン交換繊維を使用したケミカルフィルタのそれぞれにより処理したクリーンルームエアと,液体窒素で冷却し不純物を凝縮除去した後のドライエアの計4つの雰囲気中で,ウェハ表面の接触角の経時変化を測定した結果を図7に示した。ここで,ウェハ表面に超純水を滴下して測定される接触角は,ウェハ表面の有機物汚染の程度を簡便に評価する方法である。有機物汚染のない酸化膜付きシリコンウェハやガラスの表面は水に馴染みやすい性質,つまり親水性であり,接触角は小さい。ところが,有機物で汚染されたそれらの表面は水をはじく性質,つまり疎水性であり,接触角は大きくなる。例えば,クリーンルーム雰囲気中に放置されたガラス基板表面を対象に,超純水滴下による接触角の測定値と,X線光電子分光法(XPS:X−ray Photoelectron Spectroscopy)により測定した有機物表面汚染は,図8に示すような相関関係があることが知られている。このように,基板表面における水の接触角の大きさと有機物表面汚染の間には極めて強い相関がある。
【0022】図7の結果から次のことが分かる。イオン交換繊維は本来水溶性無機不純物を吸着除去するためのものであり,有機物を吸着できず,逆にガス状有機物を発生する。1日放置で約10゜の接触角の増加が見られる。一方,ドライエア雰囲気中には,ガス状有機物はほとんど含まれないから接触角は増加しない。本来有機物表面汚染を防止するはずの活性炭フィルタ2種は,1日放置で約10゜の接触角の増加となり,表面汚染防止効果はほとんどない結果を示した。活性炭を利用した2種のケミカルフィルタに効果が見られない理由として,バインダ,接着剤,シール剤等の表面有機汚染物質がケミカルフィルタの構成部材に含まれるため,折角の活性炭吸着効果が自身の構成部材脱ガスにより打ち消されてしまったためである。なお,充填塔を使用した場合は,充填塔の容器などを金属製などとすればこのような心配はないが,充填塔は圧力損失(通気抵抗)が高いという欠点を有することは前述した通りである。
【0023】次に,天然物系粒状活性炭を使用したケミカルフィルタでは,吸着性能が使用時間の増加に伴って低下するといった破過現象の問題がある。この破過現象を,実験によって調べた。図9に示すように,アルミニウム製の充填筒30に断面積40mm2,厚み4.5mmの形状で直径0.5mmの天然物系球状活性炭(吸着剤)31を0.1g充填し,面風速3.3m/sec,即ち,8リットル/minの条件でクリーンルームエアを処理させた。充填塔30の出口には活性炭31から発生する微粒子を除去するための,ガス状有機不純物を発生しないテフロンメンブレンフィルタ32を取り付た。充填筒30の上流側と下流側にはアルミニウム製のチャンバ33,34を設け,これら各チャンバ33,34内にガラス35,36をそれぞれ置いて,処理前(活性炭31通過前)の空気と処理後(活性炭31通過後)の空気のそれぞれの雰囲気にガラス35,36表面を曝させた。こうして,処理前と処理後のチャンバ33,34内に置かれたガラス35,36表面の接触角の経時変化を調べてみた。まず,2枚のガラス表面を紫外線/オゾン洗浄(UV/O3洗浄)することにより,表面の有機物をほぼ完全に除去した。次に,これらの洗浄直後の清浄化した2枚のガラスの接触角を測定した。測定は,先ず,2枚のガラスを充填筒の上流側と下流側のチャンバ内にそれぞれ1枚ずつ20時間だけ放置して20時間放置後の接触角を測定し,さらにUV/O3洗浄→接触角測定→20時間対象雰囲気暴露→接触角測定の工程を繰り返すことにより行った。
【0024】この実験の測定結果を図10に示す。図10は,天然物系球状活性炭通過前のクリーンルーム空気と,天然物系球状活性炭通過後のクリーンルーム空気のそれぞれに曝されたガラス表面の接触角の経時変化を比較したものである。洗浄直後の接触角は3゜であった。この実験により,次のことが分かった。活性炭への通気時間の増加と共に活性炭の吸着性能は低下し,活性炭通過後の空気中に含まれるガス状有機物の濃度も増加する。つまり,活性炭への通気時間の増加と共に,下流側の処理済み空気に20時間曝されたガラス表面の接触角も増加することになる。また,図10より,活性炭通過後の空気に20時間曝されたガラス表面の接触角が6゜に達するまでの活性炭使用時間は80時間であることがわかる。ここで,クリーンルーム環境中に洗浄後20時間放置されたガラス表面の接触角が6゜以下に保たれていることがガス状有機不純物汚染によるデバイスの品質低下を防止するための必要条件であると仮定すると,図10が処理流量と活性炭使用重量の比が(8リットル/min)/0.1g=(80m3/min)/kgにおける実験結果であることを考慮すれば,1kgの天然物系球状活性炭を使用してクリーンルームの空気を80m3/minの割合で処理した場合,80時間通気後にはデバイスの品質低下を防止するための必要条件を満足できなくなることを意味する。
【0025】次に,巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤通過前のクリーンルーム空気と,同吸着剤通過後の同空気のそれぞれに曝されたガラス表面の接触角の経時変化を比較した。その結果を図11に示す。なお,洗浄直後の接触角は3゜であった。巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を使用した場合も,活性炭を使用した場合と同様に,通気時間の増加と共に吸着性能は低下し,吸着剤通過後の空気中に含まれるガス状有機物の濃度も次第に増加する傾向を示した。つまり,吸着剤への通気時間の増加と共に,下流側の処理済み空気に一定時間曝されたガラス表面の接触角も増加することになる。しかし,先に図10で示した天然物系活性炭の例では,活性炭通過後の空気に20時間曝されたガラス表面の接触角が6゜に達するまでの活性炭使用時間は80時間であったのに対して,図11に示した巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤の例では,同吸着剤通過後の空気に20時間曝されたガラス表面の接触角が6゜に達するまでの同吸着剤使用時間は500時間にも達した。図11も図10と同様の,処理流量と吸着剤使用重量の比が(8リットル/min)/0.1g=(80m3/min)/kgにおける実験結果である。従って,1kgの巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を使用してクリーンルームの空気を80m3/minの割合で処理した場合,500時間通気後にはデバイスの品質低下を防止するための必要条件を満足できなくなることを意味する。即ち,同等の使用量と濾過条件で寿命を比較した場合,巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤は天然物系活性炭の約6倍の長さの寿命を有することになる。
【0026】次に,先に図1で説明したシステムを実際に製作し,その効果を調べた。システムAについては,厚み60mmの活性炭担持ポリウレタンフォームによって構成したケミカルフィルタの下流側にピッチを出発原料とする活性炭繊維で構成した厚み2〜3mmのマットを設け,さらにその下流側にHEPAフィルタまたはULPAフィルタを設けた。ケミカルフィルタは,高空隙率構造のポリウレタンフォームに直径約0.5mmの球状の活性炭を担持させた構造である。活性炭の担持にはポリウレタン系接着剤を使用した。活性炭使用量はポリウレタンフォームの容量1リットル当たり200gであった。また,システムBについては,システムAのHEPAフィルタやULPAフィルタの代わりにガス状不純物を発生しない素材のみで構成した粒子状不純物除去フィルタを用いた点以外は全てシステムAと同様の構成を有する。これらシステムA,Bについて,表面汚染防止効果の経時変化を比較した。
【0027】これらシステムA,Bに対して面風速0.5m/sでクリーンルームエアを通気したところ,ポリウレタンフォームとマットを合わせた圧力損失は約5mmAq,粒子状不純物除去フィルタの圧力損失は12mmAqであった。
【0028】また,本発明と対比するために,図12に示す如き従来技術に従うシステム40を構成した。このシステム40は,厚みが60mmの活性炭担持ポリウレタンフォーム41の下流側にHEPAまたはULPAのフィルタ42を直接設置した二層構造である。
【0029】本発明に従うシステムA,Bと従来技術に従うシステム40による表面汚染防止効果を,図13に比較して示した。なお,何れの場合も,面風速0.5m/sの条件で,各システムA,B,40のそれぞれの下流側に放置した洗浄直後の酸化膜を有するシリコンウェハに関する接触角の経時変化を測定した。従来のシステム40では,活性炭をポリウレタンフォームに担持するために使用したポリウレタン系接着剤やポリウレタンフォーム自身からの脱ガスがそのまま素通りしてしまい,下流側に放置されたシリコンウェハの表面を汚染していることが分かる。3日間放置後のウェハ表面の接触角は2.0゜→12.1゜にまで増加した。一方,本発明のシステムA,Bにおいては,ポリウレタン系接着剤やポリウレタンフォーム自身からの脱ガスは活性炭繊維のマットに吸着除去されるため,下流側に放置されたシリコンウェハの表面はほとんど汚染されない。3日間放置後のウェハ表面の接触角はシステムAでは2.0゜→3.5゜程度のわずかな増加が見られたが,システムBでは2.0゜→2.1゜とほとんど増加しなかった。なお,参考までに,処理を全く施さないクリーンルーム空気中(システムの上流側)に放置されたシリコンウェハの接触角の経時変化も図13中に示した。未処理のクリーンルーム空気中に3日間放置されたウェハ表面の接触角は2.0゜→32.1゜にまで増加した。クリーンルーム雰囲気中に含まれる表面汚染の原因となる有機物は従来のシステム40によっても大部分が除去できるはずである。システム40によって3日間でウェハ表面の接触角が2.0゜→12.1゜にまで増加するのは,システム40にて使用されている接着剤とポリウレタンフォームからの脱ガスが寄与しているものと考えられる。
【0030】このように,従来のシステム40は,クリーンルーム雰囲気中に含まれる表面汚染の原因となる有機物の大部分を除去できるが,ケミカルフィルタにはポリウレタンフォームと接着剤が使用され,微量の脱ガスがある。このポリウレタンフォームと接着剤からの脱ガス濃度は,クリーンルーム雰囲気中に含まれる表面汚染の原因となる有機物濃度と比較すると極めて小さい。例えば,クリーンルーム雰囲気中に含まれる前記有機物濃度を数十ppbとすると,前記脱ガス濃度はそれよりも2桁小さい数百pptである。しかし,この脱ガスの影響によって,先に表1に示したウェハ表面の有機物汚染制御レベルを今後満足することは困難になると予想される。
【0031】本発明に従うシステムA,Bでは,クリーンルーム雰囲気中に含まれる表面汚染の原因となる有機物は,上流側に設けたケミカルフィルタによって吸着除去し,ポリウレタンフォームや接着剤由来の微量の脱ガスは下流側に設けた厚みがわずか数mmのガス状有機不純物を発生しない活性炭層で吸着除去することができる。上流側の厚み60mmのケミカルフィルタと下流側の厚み数mmの活性炭層のそれぞれで吸着除去されるべき気中有機物濃度の比は,前者が後者に比べて非常に多いはずであり,例えば100:1程度であると仮定すると,下流側の活性炭層の寿命は上流側のケミカルフィルタの寿命よりもかなり長くなる。従って,システム全体の寿命も長くなるものと考えられる。
【0032】また,下流側にはガス状不純物を発生しない素材のみから構成される粒子状不純物除去フィルタを用いたシステムBの表面汚染防止効果を見ると,3日間放置後のウェハ表面の接触角は2.0゜→2.1゜とほとんど増加しなかった。これは,システムAにおいては,ポリウレタン系接着剤からの脱ガスは活性炭繊維のマット3により吸着除去されるが,その下流側に配置されたHEPAフィルタまたはULPAフィルタからの脱ガスの影響で3日間放置後のウェハ表面の接触角は2.0゜→3.5゜とわずかではあるが増加した。一方,システムBでは最下流に設けられた粒子状不純物除去フィルタはガス状不純物を発生しない素材のみから構成されるため,3日間放置後の接触角変化は2.0゜→2.1゜と変化しなかった。つまり,表面汚染はほとんど観察されなかった。
【0033】また,先に図5で説明したシステムについては,先に図10,11で比較して示したように,同等の使用量と濾過条件で寿命を比較した場合,巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤は天然物系活性炭の約6倍の長さの寿命を有することになる。先に説明したシステムA,Bと同様に,厚みが60mmの活性炭担持ポリウレタンフォームの下流側に,ピッチを出発原料とする活性炭繊維の厚み2〜3mmのマット3を設け,さらにその下流側にガス状不純物を発生しない素材のみから構成される粒子状不純物除去フィルタを設けて構成したシステムについて,表面汚染防止効果の経時変化を調べ,システムA,Bと比較した。ポリウレタンフォームには,活性炭の代わりに巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を担持した。その他の点は,先に説明したシステムA,Bと同じである。面風速は0.5m/sとした。
【0034】このシステムの下流側に放置した洗浄直後の酸化膜を有するシリコンウェハに関する接触角の経時変化を20時間ごとに測定した。洗浄直後の接触角は3゜であった。下流側の空気に20時間曝されたウェハ表面の接触角が6゜に達するまでの使用時間を寿命と仮定すると,天然物系活性炭を使用したシステムA,Bの寿命は約2,500時間=3.5ヶ月であったのに対して,巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を使用したこのシステムの寿命は約16,000時間=22ヶ月となった。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば,圧力損失が少なく,かつ,今後のウェハ表面の有機物汚染制御レベルを満足できるようにガス状有機不純物を有効に除去できるシステムを提供できる。特に,本発明によれば,巨大多孔質合成重合体の熱分解物からなる炭素質合成吸着剤を用いることによって,システムの寿命を大幅に延長することが可能となる。このような本発明によれば,クリーンルーム内で半導体製造過程等で生ずる半製品基板を,その表面に雰囲気由来の有機物汚染を起こすことなく待機させることができ,待機後の半製品基板を,洗浄することなく,又は洗浄時間を大幅に短縮して,次工程に送り込むことが可能になる。従って,本発明のガス状有機物処理システムは,これらの製造時間を短縮させ,生産性を向上させることができる。




 

 


     NEWS
会社検索順位 特許の出願数の順位が発表

URL変更
平成6年
平成7年
平成8年
平成9年
平成10年
平成11年
平成12年
平成13年


 
   お問い合わせ info@patentjp.com patentjp.com   Copyright 2007-2013