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発明の名称 三フッ化ホウ素錯体の回収方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−296004
公開日 平成10年(1998)11月10日
出願番号 特願平10−60619
出願日 平成10年(1998)2月25日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】前島 肇
発明者 高嶋 務 / 角山 吉佐 / 錦田 繁 / 徳本 祐一 / 藤村 耕治
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加することにより該非導電性流体から三フッ化ホウ素錯体を沈降分離させ、次いで分離した該錯体を回収することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項2】 前記直流および/または交流の電圧による電界強度が0.001〜40kV/mm の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項3】 前記直流および/または交流の電圧を印加する際の非導電性流体の温度が、−100℃から+50℃の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項4】 三フッ化ホウ素と錯体を形成する錯化剤が極性化合物である請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項5】 前記極性化合物が、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、酸無水物および酸類からなる群から選ばれるものであることを特徴とする請求項4記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項6】 錯体を形成する三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比が0.01:1から2:1の範囲であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項7】 前記非導電性流体が、炭化水素流体であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
【請求項8】 前記三フッ化ホウ素錯体が、反応混合物中に分散および/または溶解した三フッ化ホウ素錯体触媒であることを特徴とする請求項1記載の三フッ化ホウ素錯体の回収方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、流体中に分散および/または溶解している三フッ化ホウ素錯体、例えば触媒としての三フッ化ホウ素錯体を流体から回収する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】三フッ化ホウ素と錯化剤(配位子ともいう)からなる三フッ化ホウ素錯体触媒は、アルキル化、異性化、重合、分解、脱水等の種々の化学反応における触媒として工業的に広範囲に使用されている。この錯体触媒は、対象とする反応に応じ、三フッ化ホウ素に対して種々の錯化剤を適宜の割合で配位させた形態で使用されている。
【0003】三フッ化ホウ素錯体触媒を使用した反応の終了後には、錯体触媒を反応混合物中から分離除去する必要がある。このため通常、アンモニア、苛性ソーダ等の塩基性物質の水溶液で中和した後、水洗除去する方法が採用されている。
【0004】その他の方法として、米国特許4,227,027号公報には、三フッ化ホウ素錯体触媒を含有する反応混合物に、2つ以上の水酸基を有するポリヒドリックアルコール類を添加して、錯体触媒中の三フッ化ホウ素のみと付加反応させることにより三フッ化ホウ素を除去し、付加物を加熱分解することによって三フッ化ホウ素を回収する方法が開示されている。
【0005】さらに、特開平6−287211号公報には、三フッ化ホウ素錯体触媒を用いる系において、反応混合物を加熱することにより三フッ化ホウ素ガスを発生させ、発生する三フッ化ホウ素ガスと三フッ化ホウ素に対して過剰量の錯化剤とを接触させて新たな錯体を形成させ、反応槽へ循環して再利用することが開示されている。
【0006】しかし、これらの方法においては、いずれも三フッ化ホウ素が単独で分離回収されるため、繰返して錯体触媒として使用するためには別途の錯化反応工程が必要となり、結果として多段工程となり経費の増大を招く。また、特に特開平6−287211号公報に記載された方法では、三フッ化ホウ素錯体触媒の共存下に反応混合物を加熱するため、反応混合物の組成に悪影響を及ぼす可能性があり、用途が非常に限定されるという不利がある。
【0007】特開平2−45429号公報には、触媒に三フッ化ホウ素エーテル錯体を用いてオレフィン類と芳香族化合物とのアルキル化反応を行なう方法において、反応前あるいは反応後のいずれかの段階で、反応系に三フッ化ホウ素エーテル錯体に対して0.05〜2モル量のリン酸、酢酸、フェノール等の弱酸を室温下で添加し、次いで反応後の系を静置分離して触媒部の分層を行い、分離された触媒層をそのまま次のアルキル化反応の触媒に使用する方法が開示されている。しかし、この場合には、錯化剤であるエーテルが、後から添加された弱酸によって置き換えられた三フッ化ホウ素/弱酸錯体触媒を回収することになり、初期の三フッ化ホウ素エーテル錯体触媒を回収するものではない。また、その回収率も約27重量%と低い。
【0008】錯体の配位子の配位モル数を変化させることなく回収することは、錯体を触媒として再利用する上で非常に有用である。すなわち、錯体に配位する配位子は、その配位モル数も含めて特定することにより所望の触媒機能を発揮するが、配位モル数は温度その他の環境条件により変化し易い。配位モル数が変化すれば触媒機能が相違するため、回収後再度錯体として調整する必要があり、これは前記のガスとして三フッ化ホウ素を回収する場合と同様に不利である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、三フッ化ホウ素錯体が分散および/または溶解している非導電性流体から、錯体をそのままの状態で、例えば触媒の場合には触媒活性が維持された状態で回収する方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の第1は、三フッ化ホウ素錯体が分散および/または溶解してなる非導電性流体に、直流および/または交流の電圧を印加することにより非導電性流体から三フッ化ホウ素錯体を沈降分離させ、次いで分離した錯体を回収することを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関するものである。本発明の第2は、本発明の第1において、直流および/または交流の電圧の電界強度が0.001〜40kV/mm の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第3は、本発明の第1において、直流および/または交流の電圧を印加する際の非導電性流体の温度が、−100℃から+50℃の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第4は、本発明の第1において、三フッ化ホウ素と錯体を形成する錯化剤が極性化合物であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第5は、本発明の第4において、極性化合物が、水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、酸無水物および酸類からなる群から選ばれるものであることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第6は、本発明の第1において、錯体を形成する三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比が0.01:1から2:1の範囲であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第7は、本発明の第1において、非導電性流体が、炭化水素流体であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の第8は、本発明の第1において、三フッ化ホウ素錯体が、反応混合物中に分散および/または溶解した三フッ化ホウ素錯体触媒であることを特徴とする三フッ化ホウ素錯体の回収方法に関する。本発明の方法によれば、交流または直流の電場を印加するという簡単な方法により、三フッ化ホウ素錯体のモル比率を変えることなく容易に回収することができ、その結果、回収錯体の再使用が可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明における三フッ化ホウ素錯体とは、三フッ化ホウ素と各種極性化合物との錯体を意味する。三フッ化ホウ素は、含酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物等の極性化合物と種々の割合で、すなわち種々の配位モル比で錯体を形成し易い。形成されたこれらの錯体は、代表的な用途として各種反応における触媒に用いられる。したがって、以下、主として触媒としての三フッ化ホウ素錯体について説明する。
【0012】触媒としての三フッ化ホウ素錯体は、対象とする反応に応じて選択された錯化剤を、三フッ化ホウ素に対し適宜の割合で配位して調製する。三フッ化ホウ素錯体を触媒として使用する具体的な例としては、例えば、芳香族化合物とオレフィン類に三フッ化ホウ素錯体触媒を作用させてアルキル化を進行させることによりアルキル置換芳香族化合物を得る反応がある。より具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素に、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエン等のオレフィンを用いてアルキル化を行う。上記の反応における反応溶媒としては、反応に不活性なn−ブタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソオクタン等のイソパラフィン等の炭化水素を用いることができるほか、ベンゼン、トルエン等の反応原料自体を用いることもできる。このアルキル化により、例えばエチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ブテニルベンゼン等が製造される。
【0013】また、スチレン、ビニルトルエン等の不飽和芳香族炭化水素等またはブテン、イソブテン等のオレフィン等の1種または2種以上を重合させる方法も三フッ化ホウ素錯体触媒を用いる反応として例示される。この反応の溶媒としては、反応に不活性なn−ブタン等のn−パラフィン、イソブタン、イソオクタン等のイソパラフィン等の炭化水素を用いることができるほか、反応原料自体を用いることもできる。この重合反応においては、比較的分子量の低い重合体であるオリゴマーが製造され、例えばスチレン、イソブテン等のオリゴマーを得ることができる。
【0014】また、反応原料として、ナフサクラッカーからのビニルトルエン等の芳香族オレフィンを含むC9芳香族留分、ピペリレン等の脂肪族オレフィンを含むC5留分、またはイソブチレンのほかに1―ブテン、トランスまたはシス−2―ブテン等のオレフィンを含むC4留分等を用いれば、芳香族系もしくは脂肪族系石油樹脂あるいはポリブテン等が得られる。
【0015】上記反応の際には、触媒中の三フッ化ホウ素は、通常、重合可能成分としてのオレフィン1モルに対して0.0001〜0.5モルの割合で使用される。反応自体は従来公知の方法により行うことができ、バッチ式または流通式のいずれの方法も用いることができる。反応温度および反応時間は特に限定されないが、反応温度は−100℃〜+100℃の範囲、反応時間は1分〜4時間の範囲から選択することができる。
【0016】本発明において錯体触媒を形成する錯化剤は、物理的あるいは化学的な結合力によって三フッ化ホウ素と錯体を形成するものである。このような錯化剤の具体例としては水、アルコール類、エーテル類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、有機酸類または酸無水物等の含酸素化合物、含窒素化合物、含硫黄化合物、含リン化合物または無機酸類などの有機もしくは無機極性化合物が例示される。三フッ化ホウ素は、これらのほか、ベンゼン等の芳香族炭化水素等と錯体を形成することもできる。
【0017】さらに本発明に好適な三フッ化ホウ素錯体触媒を形成する錯化剤を次に示すが、これらに限定されるものではない。すなわち、アルコール類としては芳香族またはC1〜C20の脂肪族のアルコールが用いられ、このC1〜C20の炭素水素基は、分岐していてもよく、直鎖型アルキル基、sec−、tert−等の分岐アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールあるいはベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。またジオールでもよい。
【0018】エーテル類としては芳香族あるいはC1〜C20の脂肪族の炭化水素基を有するエーテルが用いられ、このC1〜C20の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖アルキル基、sec−、tert−等の分岐アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルブチルエーテル、エチルブチルエーテル、プロピルブチルエーテル、ジペンチルエーテル、あるいは、フェニルメチルエーテル、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、シクロヘキシルエチルエーテル等が挙げられる。
【0019】フェノール類としては1〜3価フェノールが適当であり、具体的には、フェノール、クレゾール等が好ましい。
【0020】ケトン類としては芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族の炭化水素基を有するケトンが用いられ、このC1〜C6の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖アルキル基、sec−、tert−等の分岐アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、あるいはシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0021】エステル類としては、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のアルコール成分と、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のカルボン酸またはリン酸成分とによってエステル結合を形成したものが用いられ、このC1〜C6の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖アルキル基、sec−、tert−等の分岐アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、ヘキサン酸エチル、安息香酸エチル等、およびリン酸トリブチル等のリン酸の完全エステル等が挙げられる。
【0022】有機酸類としては、芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のカルボン酸またはそのハロゲン置換体、リン酸、およびリン酸と芳香族あるいはC1〜C6の脂肪族のアルコール成分との部分エステルが用いられ、このC1〜C6の炭素骨格は、分岐していてもよく、直鎖アルキル基、sec−、tert−等の分岐アルキル基または脂環式アルキル基、あるいは脂環式の環を含むアルキル基でも差し支えない。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、しゅう酸、マロン酸、安息香酸、リン酸ジエチル等が挙げられる。また、無機酸類としては、リン酸、塩酸等が用いられる。
【0023】以上の錯化剤は、それぞれの錯体系において1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。錯体自体は従来公知の方法に従い製造することができる。例えば、あらかじめ錯体を調製して用いてもよく、また反応系内へ三フッ化ホウ素と1種以上の錯化剤を所定の割合で別々にまたは同時に投入し、反応液内において三フッ化ホウ素錯体を形成させて用いる方法を採用することもできる。
【0024】三フッ化ホウ素と錯化剤とのモル比は、0.01:1から2:1の範囲であることが好ましい。錯化剤に対する三フッ化ホウ素のモル比が0.01未満では触媒活性が低すぎて、目的とするオレフィンの重合が進行しない。また、モル比が2を超えると三フッ化ホウ素が錯化剤に比べて過剰になりすぎ、安定な配位を保つことが困難となり、回収触媒において三フッ化ホウ素のモル比を維持することが困難になる。したがって、回収した触媒を再使用する際にモル比の調整などの操作が必要となり、工程が複雑になることから好ましくない。
【0025】錯体触媒の調製に際しては、適宜に反応に不活性でかつ錯体を溶解しあるいは分散させる溶媒を用いることが可能である。本発明の方法により分離回収される錯体は、電場印加により合一あるいは凝集を起こすことにより分離回収が容易になるのであるから、錯体の形態としては液体が好ましい。しかしながら、前記錯体調製に溶媒を用いれば固体錯体であっても液状の錯体と同様になり、本発明の対象とすることができる。なお、前記のように、触媒は単に錯体として回収し得るのみならず、回収の際に配位モル比が変化しないように制御することが回収技術上重要である。
【0026】電場を印加することにより三フッ化ホウ素錯体の分離回収を行うために、三フッ化ホウ素錯体を含む流体は非導電性であることが必要である。非導電性流体であって三フッ化ホウ素錯体の少なくとも一部を分散あるいは溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、炭化水素流体、好ましくは脂肪族炭化水素流体が例示される。三フッ化ホウ素錯体が、三フッ化ホウ素錯体触媒である場合には、反応により得られた触媒を含む反応混合物が電場印加の対象の流体となる。例えば、芳香族化合物をオレフィン類で三フッ化ホウ素錯体触媒によりアルキル化するような場合には、これらの原料、生成物であるアルキル置換芳香族化合物および三フッ化ホウ素錯体触媒からなる混合物を対象とすることができる。またスチレンやイソブテン等のオレフィンを重合させてオリゴマーを得る反応の場合には、これらの原料、オリゴマーおよび三フッ化ホウ素錯体触媒を含む反応混合物を対象とすることができる。さらにナフサクラッカーからのC9芳香族留分、イソブチレン等を含むC4留分等を原料として石油樹脂あるいはポリブテン等を得る反応の場合は、これらの原料、生成した石油樹脂あるいはポリブテン、および三フッ化ホウ素錯体触媒を含む反応混合物が電場印加の対象となる。ここで、三フッ化ホウ素錯体は、上記非導電性流体中に通常は分散している。すなわち、三フッ化ホウ素錯体は非導電性流体には難溶性である。しかしながら、単に分散して白濁状を呈している場合のみならず、一見して透明な溶解状態であっても、電場を印加することによりまたはその印加の条件を変えることにより錯体を分離回収することが可能である。したがって、流体中における錯体の分散や溶解の状態はあまり問題ではない。しかしながら、前記のように錯体は液状であることが必要であり、固体錯体の場合には適宜の溶媒に溶解または分散させて液状として用いる。三フッ化ホウ素錯体の溶解および/あるいは分散している非導電性流体中に、以下に述べる直流および/または交流電圧を印加することを特徴とする本発明の方法によれば、溶解および/または分散している錯体触媒を錯化剤に対する三フッ化ホウ素のモル比を変化させることなく凝集および沈降させ、反応混合物から分離することができる。
【0027】本発明の方法において、電圧を印加することにより錯体が沈降分離する理由は明確でないが、以下のように推察される。すなわち、三フッ化ホウ素錯体において、錯体自体または錯体を含む液滴自体が帯電していることはないが、三フッ化ホウ素と配位子との間に電気的な分極または電気的な偏りが存在すると考えられる。そして錯体分子に対し電圧が印加されると、電気的な偏りが部分的に解消し、錯体分子相互の電気的反発が消失して、錯体分子間の合一あるいは凝集が発生すると考えられる。その結果、合一または凝集した錯体は比重差によって、錯体を含む非導電性流体に対して下層として沈降分離し非導電性流体から分離することができるようになると考えられる。
【0028】非導電性流体、例えば炭化水素反応混合物中に印加する電圧は、直流電圧および交流電圧のいずれでもよい。直流電圧と交流電圧とを同時に別々に印加することもできる。電圧は通常の定電圧発生装置を利用して発生させることができる。直流および/または交流の電圧から発生する電界強度は0.001〜40kV/mmであれば錯体の分離が容易であり、好ましくは0.01〜1kV/mm の範囲である。また電圧には適宜に変動があってもよい。ここで電界強度が0.001kV/mm未満であると錯体は沈降分離し難い。逆に、電界強度が40kV/mm を超えると、絶縁破壊現象や成分の電気分解等の副反応を生じるため、いずれも好ましくない。
【0029】また、直流および/または交流電圧が印加される電極間の距離は、例えば、0.1〜100cm、好ましくは1〜50cmの範囲から適宜に選択することができる。本発明においては、一対の電極を組として、少なくとも一組の電極間において対象流体に対して電場を印加する構成を含む装置であれば、その形状および構造には特に制限がない。例えば電極形状として、平板状、中実棒状、中空円筒状、球状など任意の形態を採用することができる。電極面も多孔質面、あるいは網状面とすることもできる。すなわち、平行電極のほか、これらを適宜に組み合わせて一組の電極とすることができる。この場合、印加する電圧とともに電極間距離(間隔)を変えることにより、分離効果を適宜に調整することもでき、また、電極の正負を適宜に入れ換えることも可能である。さらに電極を複数対組み合わせてもよい。対象流体は、三フッ化ホウ素錯体を含む場合でも非導電性流体であるため、電圧を印加しても電流はほとんど流れず、したがって消費電力はわずかである。この点においても本発明の利点は多大である。
【0030】電圧を印加する際の非導電性流体の温度は、−100℃〜+50℃の範囲であれば特に限定されないが、触媒の共存下で処理する場合には、反応温度よりも低い温度領域で行い、触媒の影響により反応混合物の組成が変化することを可能な限り防止することが好ましい。また、電圧の印加時間も特に限定されない。例えばバッチ式で電圧を印加する場合には、錯体濃度、錯体の配位子の種類等にもよるが、通常は1分〜1時間の範囲から適宜に選択することができる。電圧印加の間、非導電性流体は撹拌等を行わずに静置することが好ましい。静置のみによって三フッ化ホウ素錯体を分離することは可能であるが、電場の印加を併用することにより、単に静置のみによる場合よりもはるかに早く、かつ容易に三フッ化ホウ素錯体を分離回収することができる。なお、電場印加に際しては静置が好ましいが、錯体の沈降分離に支障がない程度で非導電性流体を流動させることができる。したがって、適宜の配管中を流動させる間に適宜の形状の電極を設けて電圧を印加し、錯体を連続的に沈降分離する方法を採用することも可能である。
【0031】電圧印加に際しては、対象とする非導電性流体の粘度が著しく高い場合には錯体触媒の沈降分離が不十分になる。このような観点から、電圧印加の対象とする非導電性流体の粘度は、電圧印加時の温度において10,000cP(センチポイズ)以下であることが好ましい。また、媒体流体に不活性な溶媒を加えることにより、系の粘度を上記範囲内に調整して電圧印加に供することができる。
【0032】電圧印加の対象とする流体中における錯体濃度は特に限定されないが、通常は錯体濃度として0.001重量%以上であることが好ましい。錯体濃度が低すぎると電圧印加の効果が発揮され難い傾向がある。
【0033】本発明においては、電圧の印加により、非導電性流体から下層として沈降分離した三フッ化ホウ素錯体を、適宜の抜き出し手段により系から抜き取ることによって、非導電性流体から錯体を分離回収することができる。また、沈降した錯体は、配位モル比が反応前の値から変化していないので、三フッ化ホウ素錯体が触媒である場合には反応前と同等の触媒活性を維持することになり、なんら調整を加えることなく、そのまま再度反応に使用することができる。しかしながら、2回目以降の反応においては、適宜に新たな三フッ化ホウ素錯体触媒を追加することも可能である。
【0034】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明する。重合反応物からの錯体触媒の分離にについて以下の実験を行った。
<重合原料>純イソブテン:純度98%以上の試薬<三フッ化ホウ素錯体触媒の製造>0℃以下に保持した錯化剤に、温度上昇を抑えながら所定の配位モル比に達するまで三フッ化ホウ素(純度99.7%)を吹き込み、錯体触媒を調製した。また、特に示していないが、分解が懸念される錯体は分解温度以下で調整および保存して反応に供した。
【0035】<実験装置の仕様>窒素ガス導入管、攪拌装置、ガス貯蔵用ボンベ、ガス吹込み管、温度計および低温冷却槽を備えた1リットルの4つ口フラスコの内部に、間隔を5mmに保った2枚の平板からなる平行電極を設置する。さらに、安定した直流あるいは交流電圧を出力することができる外部電源を確保し、その2本の出力と2枚の平行電極とをそれぞれ接続する。ただし、反応終了後電圧を印加するまでは外部電源を停止状態にしておく。
【0036】<実施例1>窒素気流下で、上記フラスコ内に希釈溶剤として特級試薬イソオクタン100gを仕込み、フラスコ内を攪拌して−25℃に保ちながら、純イソブテン100gを供給し、その中へ三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(1:1モル付加物)2.09gを投入し、30分間激しく攪拌しながら重合反応を行った。反応後、−25℃の温度に保持した反応溶液中の2枚の平行電極に対して、外部電源より500Vの直流電圧を30分間継続して印加すると、無色透明な上層部液体198.3gと無色透明な下層部液体1.78gとに界面分離した。上層部のみを抜き出し、希水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、減圧蒸留によりイソオクタンと軽質分とを留去し、重合反応に関与したイソブテンの転化率および生成したポリブテンの収率を求めた。
【0037】下層部液体について、13C−NMRによる分析を行った。図1は、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体の反応使用前後における13C−NMRスペクトルの測定結果である。横軸の数字は、内標準物質であるテトラメチルシラン(TMS)のピークに対する化学シフトを ppm で表した値である。1.0:1.0のモル比で配位した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体は、13C−NMR測定において、12.9ppm と69.9ppm に2本のジエチルエーテルの炭素に由来するピークが検出される。モル比が変化するとともに2本のピークはシフトするが、反応終了後に採取した三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体について13C−NMR測定を行うと、未使用の錯体触媒の検出ピークと同じ位置にピークが認められ、反応前と同一のモル比を保持していることがわかった。また、上層部の重合結果、および触媒の仕込み量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)は以下の通りである。
イソブテンの転化率: 98.0モル%ポリブテンの収率: 94.7重量%錯体触媒の回収率: 85.1%【0038】<実施例2>実施例1と同様に重合反応を行い、反応終了後、反応混合物中に500Vの交流電圧を30分間継続して印加したところ、無色透明な上層部液体197.5gと無色透明な下層部液体1.71gとに界面分離した。実施例1と同様に、上層部のみに後処理を施し、イソブテンの転化率および生成したポリブテンの収率を求めた。また触媒の仕込量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)を求めた。結果は次の通りである。
イソブテンの転化率: 97.9モル%ポリブテンの収率: 94.5重量%錯体触媒の回収率: 81.8%また、下層部液体について、実施例1と同様に13C−NMRによる分析を行なったところ、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体であることが判明し、さらに配位モル比も変化していなかった。
【0039】<実施例3>錯体触媒として三フッ化ホウ素エタノール錯体(1:1モル付加物)1.69gを用いた以外は、実施例1と同様に重合反応を行った。反応後、−25℃の温度に保持した反応溶液中の2枚の平行電極に対して、外部電源より500Vの直流電圧を30分間継続して印加すると、無色透明な上層部液体198.3gと無色透明な下層部液体1.44gとに界面分離した。実施例1と同様に、上層部のみに後処理を施し、イソブテンの転化率および生成したポリブテンの収率を求めた。また触媒の仕込量に対する下層部に沈降した錯体触媒の割合(回収率)を求めた。結果は次の通りである。
イソブテンの転化率: 98.3モル%ポリブテンの収率: 78.5重量%錯体触媒の回収率: 85.2%また、下層部液体について、実施例1と同様に13C−NMRによる分析を行なったところ、三フッ化ホウ素エタノール錯体であることが判明し、さらに配位モル比も変化していなかった。
【0040】
【発明の効果】本発明の方法は、電圧の印加により流体中を流れる電流が全くないかあるいは極めて微弱であるため、電力をほとんど消費せず経済的であり、しかも流体、例えば反応混合物の組成変化を起こすことがなく、三フッ化ホウ素錯体を分離すること以外には影響を与えないので、工業的に有利なプロセスを提供することができる。例えば、三フッ化ホウ素錯体触媒を反応に使用する系において、生成する反応混合物に直流および/または交流の電圧を印加することにより、錯体触媒を系から沈降分離させて工業的に安価かつ容易に回収することが可能であり、しかも触媒は活性を損なわず、繰り返し利用することができる。さらに、従来法において錯体分離後の非導電性流体について必要とされた中和水洗等の後処理工程を省くことができ、経済的にも環境汚染の問題に対しても大きな効果が得られる。




 

 


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