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発明の名称 プラスチックフィルムの圧延方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−180784
公開日 平成10年(1998)7月7日
出願番号 特願平8−348941
出願日 平成8年(1996)12月26日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外3名)
発明者 石田 大 / 高橋 奉孝 / 加藤 忠義
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 プラスチックフィルムをニップするように低速の圧延ロールと高速の圧延ロールとを配置し、低速の圧延ロールの表面を抱くようにプラスチックフィルムを低速の圧延ロールに供給し、低速の圧延ロールと高速の圧延ロールとの間で圧力をかけてプラスチックフィルムを圧延する方法であって、少なくとも該低速の圧延ロールは、プラスチックフィルムが該低速の圧延ロールに密着して滑らない所定の表面平滑度を有した圧延ロールを用いることを特徴とするプラスチックフィルムの圧延方法。
【請求項2】 該低速の圧延ロールの表面粗度が0.1以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルムの圧延方法。
【請求項3】 低速の圧延ロールと高速の圧延ロールとの周速度の比が1.2から2.5倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックフィルムの圧延方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプラスチックフィルムの圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プラスチックフィルムの圧延については、例えば実開昭52─135465号公報に記載されている。ここで、プラスチックフィルムの圧延とは一対の圧延ロールの間で圧力をかけてプラスチックフィルムの厚さを変化させることである。上記公報は、一対の圧延ロールの速度に差があると(すなわち、一方を低速の圧延ロールとし、他方を高速の圧延ロールとすると)、圧延倍率を増大することができることを記載している。さらに、プラスチックフィルムが低速の圧延ロールに最初に接触するように低速の圧延ロール側へ傾けて供給すると、圧延にともなうプラスチックフィルムの波うちの発生を防止することができる等の改善を図ることができることを開示している。
【0003】なお、本願では、ロールの速度とは、ロールの周速度を言うものとする。また、プラスチックフィルムの厚さにより、フィルムとシートとに分類することがあるが、本願では、厚さによってそのような分け方をせず、全てプラスチックフィルムと呼ぶことにする。図3は従来の圧延装置を示し、高速の圧延ロール1と低速の圧延ロール2とを備える。プラスチックフィルム3は図示しない繰り出しロールから低速の圧延ロール2側へ傾けて供給され、プラスチックフィルム3が最初に低速の圧延ロール2に接触しつつ高速の圧延ロール1と低速の圧延ロール2とのニップ点で規定される圧延変形点へ達するようになっている。
【0004】プラスチックフィルム3の圧延変形は、高速の圧延ロール1と低速の圧延ロール2との間の圧延変形点において行われる。すなわち、プラスチックフィルム3の厚さが、圧延変形点において急速に減少する。ここで、繰り出しロールの速度をV0 、低速の圧延ロール2の速度をV1 、高速の圧延ロール1の速度をV2 とするとき、V0 <V1 <V2 の関係がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このように、繰り出しロールの速度V0 と低速の圧延ロール2の速度V1 との間に差があると、繰り出しロールと圧延変形点との間でプラスチックフィルム3に張力が作用し、プラスチックフィルム3が圧延変形点で圧延される前に延伸(事前延伸)されるという問題がある。事前延伸が大きいと、プラスチックフィルム3の幅が大きく減少したり、プラスチックフィルム3にしわが発生する等の問題が生じる。
【0006】本願の発明者は、事前延伸に伴う様々な問題を解消すべく圧延変形点の前での事前延伸を抑えるには、できるだけ繰り出しロールの繰り出し速度のままでプラスチックフィルム3を圧延変形点まで導びければればよいことを見出した。すなわち、図3に示す圧延装置の場合には、プラスチックフィルム3は最初に低速の圧延ロール2に接触するものの、この低速の圧延ロール2は繰り出しロールよりもすでに速度が速い。また、プラスチックフィルム3と低速の圧延ロール2との接触領域は小さいため、摩擦によりプラスチックフィルム3の速度を低く抑える作用が十分ではない。
【0007】そこで、低速の圧延ロールの速度を繰り出しロールの速度とほぼ同じにすると同時に、プラスチックフィルムが低速の圧延ロールの表面のかなりの領域にわたって接触するようにプラスチックフィルムが低速の圧延ロールを抱くように供給する。こうすれば、プラスチックフィルムと低速の圧延ロールとの間に摩擦が働き、且つ低速の圧延ロールの速度は繰り出しロールの速度とほぼ同じであるので、プラスチックフィルムの走行速度は圧延変形点まで繰り出し速度と大きく異ならずに維持され、事前延伸が抑えられる。
【0008】事前延伸を抑えて圧延を行うことにより、フィルムの製品幅を大きくとることができ、またその幅変動も小さく抑えられ、さらにフィルムの幅方向の偏肉のムラも小さくすることができる。本発明の目的は、上記問題点を解決し、事前延伸を抑える作用を最大化し、極めて偏肉のムラが小さい、品質の優れたプラスチックフィルムを得ることのできるプラスチックフィルムの圧延方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明によるプラスチックフィルムの圧延方法は、プラスチックフィルムをニップするように低速の圧延ロールと高速の圧延ロールとを配置し、低速の圧延ロールの表面を抱くようにプラスチックフィルムを低速の圧延ロールに供給し、低速の圧延ロールと高速の圧延ロールとの間で圧力をかけてプラスチックフィルムを圧延する方法であって、少なくとも該低速の圧延ロールは、プラスチックフィルムが該低速の圧延ロールに密着して滑らない所定の表面平滑度を有した圧延ロールを用いることを特徴とするものである。
【0010】本発明によれば、繰り出し速度とほぼ同様な周速度の低速の圧延ロールに抱かせるようにプラスチックフィルムを供給する場合に低速の圧延ロールの表面平滑度が高ければプラスチックフィルムと低速の圧延ロールとは密着し、強い静摩擦を発生する。この強い静摩擦により、プラスチックフィルムの速度は低速の圧延ロールの周速度とほぼ同じままで圧延変形点まで保持されるようになり、事前延伸が抑えられ、その悪影響が回避される。
【0011】この結果、従来の圧延方法では得ることのできなかった極めて偏肉のムラが小さい、品質の優れたプラスチックフィルムを得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例によるプラスチックフィルムの圧延方法を実施できる圧延装置を示し、図2は図1の圧延装置の一部を示す拡大図である。図1及び図2において、圧延装置10は、フレーム12と、予熱ユニット14と、圧延ユニット16とを備える。予熱ユニット14は、駆動用モータ17と、予熱ロール18、19、20、21、22とを有する。予熱ロール18、19、20、21、22は、プーリ及びベルト装置24を介してモータ17により駆動される。また、予熱ローラ18、19、20、21、22には、例えば図示しない加熱流体が供給され、プラスチックフィルム3を予熱する。プラスチックフィルム3は、最後の予熱ロール21、22によってニップされて圧延ユニット16へ供給される。従って、予熱ロール21、22が圧延ユニット16に対する繰り出しロールになる。
【0013】圧延ユニット16は、一対の圧延ロール1、2を含む。図に示す実施例においては、上側に位置する圧延ロール1が高速の圧延ロールであり、下側に位置する圧延ロール2が低速の圧延ロールである。低速の圧延ロール2は、モータ32によってプーリ及びベルト機構34を介して駆動される。この場合、プーリ及びベルト機構34は変速用多段プーリとしたり、変速機を含むものであったりすることができる。高速の圧延ロール1はこのモータ32により、又は別個のモータによって、プーリ及びベルト機構(図示せず)を介して駆動される。
【0014】低速の圧延ロール2の速度がV1 であり、高速の圧延ロール1の速度がV2 である。また、繰り出しロールとなる予熱ロール21、22の速度はV0 である。高速の圧延ロール1と低速の圧延ロール2とは互いに逆方向に回転し、本発明においては、圧延倍率、すなわち、低速の圧延ロール2と高速の圧延ロール1との周速度の比が1.2から2.5倍で圧延を行うことができる。さらに、高速の圧延ロール1に対してニップロール38が設けられる。ニップロール38は高速の圧延ロール1に従って回転する。高速及び低速の圧延ロール1、2には、例えば図示しない加熱流体が供給され、プラスチックフィルム3を加熱しつつ圧延を行うことができる。
【0015】圧延ユニット16は対向した一対の端部フレーム16aを有し、端部フレーム16aには垂直なスライドガイド40が設けられる。上方圧下ブロック42及び下方圧下ブロック(図示せず)がこのスライドガイド40に摺動可能に係合する。圧下ハンドル44が図示しない送りねじ機構を介して上方圧下ブロック42に連結される。下方圧下ブロックは通常は垂直方向で下方の固定位置に維持され、上方圧下ブロック42は下方圧下ブロックに向って上下することができる。
【0016】図1で上側に位置する高速の圧延ロール1のシャフト(図示せず)は上方圧下ブロック42に取り付けられ、下側に位置する低速の圧延ロール2のシャフト(図示せず)は下方圧下ブロック(図示せず)に取り付けられる。高速の圧延ロール1のシャフトは上方圧下ブロック42とともに昇降可能であり、圧下ハンドル44を操作することにより、高速の圧延ロール1を低速の圧延ロール2に対して圧下し、所望の圧下力を与えることができる。
【0017】繰り出しロールとなる予熱ロール21、22と低速の圧延ロール2とは、プラスチックフィルム3が低速の圧延ロール2の表面に抱かれ、低速の圧延ロール2の表面のかなりの接触領域にわたって接触するように、低速の圧延ロール2に供給されるように構成されている。図示の例においては、接触領域は圧延ロール2のほぼ半周にわたっている。接触領域は圧延ロール2の表面のほぼ3分の1周以上あることが望ましい。
【0018】プラスチックフィルム3は、高速の圧延ロール1と低速の圧延ロール2とのニップによりそこに形成される圧延変形点へ向かって引っ張られるが、プラスチックフィルム3と低速の圧延ロール2との間の摩擦が十分に大きければ、低速の圧延ロール2上のプラスチックフィルム3の速度は低速の圧延ロール2の速度とほぼ同じになる。
【0019】プラスチックフィルム3と低速の圧延ロール2との間の摩擦が小さいと、プラスチックフィルム3が低速の圧延ロール2に対して滑りやすくなり、事前延伸が発生する。摩擦を大きくする手法としては、低速の圧延ロール2の表面粗度を粗くしてひっかかるようにすることも考えられるが、発明者らの検討によれば、この手法によると動摩擦が増大し、一定の効果が得られる。しかしながら、さらに低速の圧延ロール2の速度に近い速度までプラスチックフィルム3の速度を抑えようとするならば、静摩擦を大きくする方がよい。
【0020】静摩擦を大きくするには、低速の圧延ロール2の表面平滑度を上げてプラスチックフィルム3が密着するようにする。この場合、低速の圧延ロール2の表面粗度が0.1以下であることが好ましい。本発明で使用する低速の圧延ロール2の表面粗度は、JISの十点平均粗さ(RZ )に基づいている。この定義はJISのB0601に記載されているので、必要であればJISを参考にできる。
【0021】このような構成の本実施例と、従来の圧延方法による比較試験を行い、下記の結果が得られた。原反としてTダイ成形したポリプロピレンフィルム(幅400mm、表面粗度0.6μm)を使用している。厚さについては、成形後の厚さは20μmとなるように、原反の厚さを圧延倍率に対して適当に調整している。すなわち、圧延倍率2倍であれば原反の厚さは40μm、1.5倍であれば原反の厚さは30μmといった具合である。
【0022】
比較例1 比較例2 実施例1 V0 2m/分 2m/分 2m/分 V1 3m/分 2m/分 2m/分 V2 4m/分 4m/分 4m/分 ロール表面粗度 0.1μm 0.4μm 0.1μm フィルム製品幅 372mm 374〜 386 378mm比較例1は図3を参照して説明したものに相当する。
【0023】比較例2は図2の構成において低速の圧延ロール2の表面平滑度が不足しているものである。実施例1は本発明の圧延方法であり、低速の圧延ロール2の表面粗度が適切な領域まで平滑に仕上げられているため、事前延伸が効果的に抑えられているものである。
【0024】
実施例2 実施例3 比較例3 V0 2m/分 2m/分 2m/分 V1 2m/分 2m/分 2m/分 V2 3m/分 5m/分 6m/分 ロール表面粗度 0.1μm 0.1μm 0.1μm フィルム製品幅 392mm 380 360〜 378実施例2も本発明の圧延方法であるが、より低倍率のものである。従来の圧延方法においては事前延伸で変形が起こるため、フィルムの長さ方向に見て弱い部分が張力で先に延びる傾向があった。このため製品の長さ方向に厚さや透明度のムラが見られることがあり、このような低倍率ではムラのない良好な製品を得ることが困難であった。しかし、本発明の圧延方法では、低倍率でも長さ方向に均一な成形が行われるのである。
【0025】実施例3も本発明の圧延方法であり、より高倍率のものである。比較例3は本発明の圧延方法でさらに高倍率の成形を試みたものであるが、良好な製品を得ることができなかった例である。その理由は高倍率の成形ではフィルムに働く張力が大きくなるために、張力が最終的に静摩擦に打ち勝ってしまったためと考えられる。この場合に張力が打ち勝つとフィルムはロール上を滑り、事前延伸が発生する。このときに変形点で成形されるフィルムが延びることにより張力が緩和されるために、再びフィルムは静止して静摩擦を得ることができる。この時点で得られるフィルムは事前延伸がないために原反幅に近い広いものが得られた。再び張力がかかり始めるとこれが繰り返される。結果としてフィルムは長さ方向に断続的に幅の広い領域と狭い領域とが交互に現れた不均一なものとなってしまった。
【0026】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、幅方向の品質のムラが極めて小さい、品質の優れたプラスチックフィルムを得ることができる。




 

 


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