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発明の名称 放電加工方法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−156630
公開日 平成10年(1998)6月16日
出願番号 特願平8−337591
出願日 平成8年(1996)12月3日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 章弘
発明者 沖 隆一
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 工具電極と被加工物とを相対移動させつつこれらの間に放電を生ぜしめて加工深さ方向に加工を行なう放電加工方法において、前記加工深さ方向に加工制限量を規定し、前記加工深さ方向に加工が進むに従って前記加工制限量を徐々に小さくするようにしたことを特徴とする放電加工方法。
【請求項2】 前記加工制限量は、一加工工程の終期の段階で固定的に規定されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工方法。
【請求項3】 前記加工制限量は、一加工工程の初期の段階で第1の加工制限量に固定的に規定され、前記一加工工程の終期の段階で第2の加工制限量に固定的に規定されることを特徴とする請求項1に記載の放電加工方法。
【請求項4】 前記加工制限量で規定される加工深さ位置において前記被加工物に対して前記工具電極を前記加工深さ方向には進めないようにして加工穴の底面と加工穴の側面を放電加工するようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2、または請求項3に記載の放電加工方法。
【請求項5】 前記工具電極と前記被加工物とを加工深さ方向と垂直な平面方向に相対移動させるとともに、前記平面方向の相対移動の距離を前記加工深さ方向に進むに従って前記平面方向の相対移動の距離を徐々に大きくするようにしたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、または請求項4に記載の放電加工方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、形彫放電加工等を行なう放電加工方法に関し、より詳細には加工深さ方向に対して垂直な平面内で工具電極と被加工物を相対移動させながら放電加工を行なった場合の加工穴の底面と側面に対する加工精度を向上させるとともに加工時間を短縮させることができる放電加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、工具電極と被加工物とを所定の間隔をおいて対向配置し、電極と被加工物とで形成される間隙に放電電圧を印加して前記間隙に放電を発生させると共に工具電極と被加工物とを相対移動させて被加工物に加工を施し、所望の形状に加工するようにした形彫放電加工装置が知られている。
【0003】この種の形彫放電加工では、加工深さ方向とその加工深さ方向に垂直な方向に加工を進めるようにした「揺動加工」或いは「寄せ加工」と呼ばれている放電加工方法が知られている。具体的には、例えばまず、予め機械切削加工により放電加工をする予定部分に前加工した被加工物もしくは未加工の被加工物に対して、比較的大きな放電加工条件の下、所要の形状の電極を用いて被加工物を略所望の加工形状に放電加工する「荒加工」が行なわれる。次に、加工深さ方向に加工を進めるだけでなく加工深さ方向に対して垂直な平面内で工具電極と被加工物を相対移動させる揺動加工方法により、放電加工条件を比較的弱い条件に切り換え、加工深さ方向と同時に加工穴の側面方向にも加工を進めながら所望の面粗度及び寸法形状に仕上げていく「仕上げ加工」が行われる。このように被加工物を荒加工した後、仕上げ加工工程で揺動加工を用いて加工する放電加工方法が一般的に有利であることが知られている。
【0004】ところで、荒加工により形成された加工穴の形状が種々の条件や加工の環境により必ずしも使用した工具電極の形状の通りには加工されていないことが普通である。具体的には、例えば、一般に、加工屑を加工部分から除去するために用いられる加工液噴流の処理の状態により電極と被加工物とで形成される間隙の状態が悪くなると各加工部分での加工に差が生じる。また、複雑な電極形状と荒加工工程で加工屑除去の促進の目的で用いる揺動形状とが一致しないことにより、加工穴の底面方向及び側面方向は不均一に除去されることがある。あるいは、加工屑を介して発生する2次放電による加工形状の変形や加工中の温度変化に伴う加工形状の歪みなどにより、得られる加工後の形状も変形することが多々ある。
【0005】このような状態で荒加工された被加工物を仕上げ加工する場合には、必ずしも加工深さ方向に対して垂直な平面に均一に加工が進むわけではない。このような不均一は、揺動加工における電極と被加工物との相対移動軌跡が円柱形状や四角柱形状のような場合だけでなく、例えば、放電加工条件を段階的に切り換えて徐々に弱めて行き、それと同時に各加工条件変更時に工具電極と被加工物間の相対移動距離を徐々に大きくして仕上げていく、所謂拡大揺動加工(円錐形状、角錐形状等)の加工方法により放電加工を行う場合でも発生する。
【0006】これは、上述したように加工穴の側面が使用した工具電極に対して完全な相似形とはならずに不均一な除去状態であるために、次の加工工程における加工穴の側面方向の加工取り代も不均一になっているからである。そのために、周回する相対揺動軌跡の取り代の残量が少ない部分では、次の加工工程における加工深さ方向の加工の進行が速くなり、逆に、取り量が多い部分ではなかなか進まないようになって電極が加工深さ方向に対して行ったり来たりすることになる。そして、相対移動軌跡中のどこかで加工予定深さに達するとその時点で加工が終了してしまい、加工穴の側面の取り残しや加工穴の底面が平坦に仕上がらないという問題が発生する。
【0007】このような場合に有効な加工方法として、加工深さ方向と側面方向とを所定の順番で加工しながら、加工深さ方向に加工制限量を設定し、ある加工深さ方向の所定の位置において加工が遅れている箇所が加工されてから、その設定された加工制限量で決定される次の加工深さ方向の位置まで加工を行ない、これを繰り返しながら加工するようにした放電加工方法が知られている。この加工方法は、その設定された加工制限量を超えない範囲で単位加工深さ距離だけ加工を進めてから単位側面方向距離だけ加工を行ない、この加工制限量で決められる所定加工深さ方向の位置において最終仕上げ形状における加工穴の底面と平行な面上で均一にしてから、その加工制限量で決められる次の所定の加工深さ位置までの加工を行ない、所望の加工深さに到達するまでこのステップを繰り返すようにされているから、最終仕上げ形状における加工穴の底面がほぼ均一にされるものである。
【0008】このような加工方法は特開昭53−91495号公報、特公昭58−19415号公報や特開昭63−2632号公報等に開示されている。また、特開平4−19018号公報には、揺動平面を任意の領域に区分し、少なくとも一つの領域で加工深さに達した時、異なるサーボに切り替えて取り残しを防ぐ加工方法が示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のように加工深さ方向に対して加工制限量を設けて段階的に加工を進める方法では、加工終期における最終的な加工穴の底面精度や側面の取り残しの問題を考慮すると、できるだけ加工制限量を小さく設定しなければならず、そのために加工時間が相対的に長くかかることが避けられない。所望の加工深さ位置に到達する時間だけを考えてみれば、加工制限量を大きく設定するべきであるが、加工穴の側面の取り残しが多い部分に電極が相対移動した時や側面と底面とで同時に放電が発生した時などでは急激に加工穴内の加工屑濃度が変化して加工屑との二次放電が頻発して、加工穴精度が劣化したり、加工が不安定になったり、、あるいは異常放電が起こりやすくなったりする。したがって、加工精度、加工面粗度、及び加工品質の面から考慮した場合、加工時間を犠牲にしてでも所望の加工精度、加工面粗度、及び加工品質を得ることが必要である。また、揺動平面を任意の領域に区分し、少なくとも一つの領域で加工深さに達した時、異なるサーボに切り替える加工方法も、加工穴の底面精度は向上するが上記同様の問題を有している。
【0010】加工穴を揺動加工を用いて加工する場合、被加工物の入り口付近では加工屑の排出は良好に行なわれ、加工深さが増すごとに加工屑の排除が困難になるところから、加工屑濃度の急激な変化をできるだけ起こさないようにする必要がある。また、ある程度加工穴の側面が均一に加工されその側面方向に十分な距離が形成された状態では底面方向の加工が安定して行なえる。このような点に着目し、本発明は、上述した問題点に鑑みて、より短い加工時間で所望の加工形状精度、加工面粗度、加工穴の底面精度及び加工品質を得ることができる放電加工方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、工具電極と被加工物とを相対移動させつつこれらの間に放電を生ぜしめて前記加工深さ方向に加工を行なう放電加工方法において、前記加工深さ方向に加工制限量を規定し、加工深さ方向に加工が進むに従って前記加工制限量を徐々に小さくするようにしたものである。
【0012】このように構成することにより、ある加工工程における加工の開始当初の加工屑排除が比較的良好な時は大きな加工制限量で加工される。その時の加工穴の側面に加工の進んでいない箇所と加工の進んでいる箇所は加工状態が良好であるため安定して除去され、速い速度で加工深さ方向に進む。そして、加工深さ方向へ進行するに従って、徐々にこの加工制限量を小さくするので、急激な加工屑濃度の変化が起りにくく、継続して安定した状態で加工が行なわれる。同時に次第に加工の進んでいる箇所と進んでいない箇所の加工差が少なくなる。最終的に、側面方向の加工が略終了して側面との間隔が広がった状態で加工穴の底面の加工が安定して行なわれるので、高い加工精度で加工ができ、しかも、要した加工時間も短縮することが可能となる。
【0013】すなわち、その加工工程の加工の初期の段階では、上限値に近い大きい値となる第1の加工制限量で加工してより迅速な加工を行ない、加工の中期では次第に加工制限量を小さくして、加工の終期では下限値に近い値となる第2の加工制限量で加工を行なうようにすれば、加工精度と加工安定状態を確保しつつ更に迅速な加工を行なうことが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る放電加工方法の一実施例を添付図面に基づいて詳述する。図1は本発明方法を実施するための放電加工装置の概容を示すブロック構成図である。この装置に水平な面上で互いに垂直な2方向をそれぞれX軸とY軸とし、X軸及びY軸に垂直な軸方向をZ軸として、まず、この装置全体について説明する。
【0015】図1に示されるように、この放電加工装置2は、例えば断面矩形状になされた容器状の加工槽4を有しており、この加工槽4は、相対移動手段の一部を構成するX・Y移動テーブル手段6上に支持固定されている。X・Y移動テーブル手段6は、X軸方向に移動するX移動テーブル6A上にこれと直交するY軸方向へ移動するY移動テーブル6Bを載置して構成されており、各テーブル6A、6Bは、それぞれX軸駆動モータ8A及びY軸駆動モータ8Bにより前進後退可能になされている。
【0016】上記加工槽4内の底部の図示しない定盤上に放電加工が施される被加工物Wが固定されると共に加工電源の一方の極に接続され、また、この加工槽4内には例えば油系或いは油と水の混合物よりなる加工液10が満たされている。この加工槽4の上方には、例えば銅、グラファイト、或いは銅タングステン等により形成された工具電極12をその下端部に取り付けた加工ヘッド14が配置されており、この加工ヘッド14は、相対移動手段の一部として垂直方向すなわちZ軸方向に移動させるZ軸移動機構16に取り付けられている。そして、このZ軸移動機構16に取り付けたZ軸駆動モータ18を駆動することにより、加工ヘッド14を昇降し得るようになっている。従って、上記X、Y移動テーブル6A,6B及びZ軸移動機構16を適宜駆動することにより、工具電極12と被加工物Wとを相対的に3次元的に移動させることができるようになっている。
【0017】上記電極12とそれに所定の間隙をもって対向配置された被加工物Wは、それぞれ電源部20に電気的に接続されていて、電極12と被加工物Wとの間隙に放電加工用のパルス状の電圧を間欠的に印加するようになっている。上記電源部20からの上記電極12及び被加工物Wへの配線途中には、サーボ制御を行なうためにそれぞれ電圧を検出する電圧検出線22、22が接続されており、それぞれの検出値は、加工間隙の状態を検知するための加工状態検知手段24へ入力されて、この間隙に滞留する加工屑等の生成物の生成状態を間接的に検知し得るようになっている。そして、この検知結果は、この装置全体の動作を制御する例えばマイクロコンピュータ等よりなるNC制御手段26へ入力するようになっている。また、前記X軸、Y軸、Z軸の各駆動モータ8A、8B、18は、上記NC制御手段26に図示しないモータドライバを介して電気的に接続されており、各モータに個別の駆動信号を供給してサーボ制御を行なうようになっている。
【0018】そして、このNC制御手段26には入力部28が接続されており、フロッピディスクなどを介して、或いはスイッチやボタンを操作してマニュアルにより、加工プログラムや加工に必要な各種の制御パラメータを入力できるようになっている。この制御パラメータには、本発明方法で必要とされる加工制限量も含まれる。
【0019】次に、以上のように構成された装置に基づいて行なわれる本発明方法について説明する。まず、一般的な流れとして、オペレータが入力部28より、予め組まれたプログラムや各種の制御パラメータを入力するとNC制御手段26がこれを解析し、放電加工が開始される。すなわち、電源部20からは、放電加工用のパルス電圧が電極12と被加工物Wとの間に印加され、被加工物Wとの間で放電を生ぜしめることによって加工を行なう。この際、X移動テーブル6AとY移動テーブル6B及びZ軸移動機構16を適宜駆動制御することにより工具電極12を被加工物Wに対して3次元的に相対移動させ、放電に適するように両者が常に微小な間隙を隔てて対向するようにサーボ制御される。
【0020】加工間隙の状態は、常に加工状態検知手段24に検知され、電極12は、加工深さ方向に行ったり戻ったりのサーボ制御がなされ、更に適宜、必要なジャンピングなどを電極12に与えるなどして間隙が良好な状態となるように制御している。そして、工具電極12を相対的に次第に加工深さ方向(加工穴の底面方向)及び水平方向(加工穴の側面方向)へ揺動移動して所望の形状に加工することになる。
【0021】さて、本発明方法においては、電極12が加工深さ方向に相対移動する加工制限量を規定し、加工深さ方向に加工が進むに従ってこの加工制限量を徐々に小さくするようにしている。この場合、ある加工工程の加工開始直後から直ちに加工制限量を小さくしていくのではなく、加工穴の深さ方向の所定の加工開始位置から所定の加工長さだけは比較的大きな値の加工制限量を固定値として設定して、加工時間が比較的かからないようにする。そして、その後、上述のように加工制限量を徐々に小さくして加工穴の底面及び側面の凹凸やうねりを生じさせないような安定加工を継続できるようにし、加工の後期には加工制限量を許容される最も小さい値に固定値として設定して、加工穴の底面と側面の加工精度を高く維持するようにする。
【0022】つまり、例えば、電極12が加工穴に深く入っていないときは、加工屑の排出が比較的スムーズに行われているので、加工屑による2次放電や不良放電が発生しにくく、ある箇所が他の箇所に比べて加工が進みすぎるという問題が少ない。従って、加工制限量が比較的大きい値でも加工穴の底面や側面における加工差は小さく、加工制限量が比較的大きい値である分、加工時間が短くできるので、加工制限量を大きな値に固定しておくことが有利である。一方、電極12が加工穴に深く入るにつれて、加工液噴流の条件などにより差はあるが、加工屑の排出が悪くなるので、2次放電や不良放電による加工差も大きくなっていく。このとき、加工制限量を徐々に小さい値にしていくので、安定した加工が継続されて加工差が大きくならない。さらに、その加工工程の後期で、加工制限量中の最も小さい値を固定として設定して加工すれば、加工穴の側面や底面に未だ残る凹凸やうねりを除去できるので有利である。したがって、その加工工程の最初から最後まで加工差を大きくしないで加工でき、加工穴の底面の凹凸や側面のうねりを生じさせないでその加工工程を終了でき、且つ全体の加工時間が短くできる。
【0023】図2は、ある加工制限量で規定される電極の相対移動軌跡の一例を示している。なお、加工制限量Drと電極12の相対移動軌跡との関係を説明するために、加工制限量Drを大きく表しており、各値の相互のスケール関係も特に実寸を忠実に再現しているわけではない。したがって、実際には、全体の加工穴の深さに対する加工制限量Drの大きさは、図2で示されるよりも小さい。また、Zrは加工制限量Drで規定される加工深さ位置であり、Z0 は、最終的な所望の加工形状における加工深さ位置である。
【0024】一点鎖線で示された形状W1は所望の形状であり、実線で示された形状W2はある時点での加工穴の形状である。側面方向が中心的に加工されるように加工している間は、電極12の3次元的相対移動軌跡P1の傾斜角度が比較的小さくなっている。また、加工深さ方向が中心的に加工されるように加工をする間は、電極12の相対移動軌跡P2の傾斜角度が比較的大きくなっている。電極12のこのような相対移動は、加工制限量で規定された加工部分の加工時間を短縮するのみならず、安定した加工を得られるので、非常に有利である。加工深さ位置Z0における最終的な加工穴の底面DSと平行な加工深さ位置Zrで想定される平面ZrSに到達した電極12は、加工深さ方向には進まないように揺動方向にのみ1周〜3周周回させて、加工穴の各加工面を“均す”ように加工すると、加工穴の底面の凹凸や側面のうねりが効果的に取り除かれる。
【0025】未加工の被加工物に放電加工を行う加工工程以外の加工工程のときには、既に加工穴の一部が形成されている状態であるから、そのような加工工程のときのある加工制限量で規定された加工底面は、文字通りの底面ではなく、加工穴の側面部分にいわゆる段差が形成されたような状態であることは言うまでもない。また、このとき、サーボ制御により間隙を開離するサーボバックについては、間隙の状態の回復を速やかに行うために、例えば、相対移動軌跡P3に示されるように、電極12を加工穴の中心方向に移動させることが好ましい。
【0026】次に、上記した加工方法を図3乃至図5に示す図を参照して詳細に説明する。図3は工具電極12の被加工物Wに対する相対的な加工深さ位置と加工制限量をを模式的に示す図、図4は加工制限量の変化の状態を示す図、図5は本発明方法を示すフローチャートである。図3に示すように、被加工物Wに対して所望の加工深さDの円柱状の加工穴を形成する場合を例にとって説明する。なお、図3において、説明しやすくするために図2と同様、各値の相互のスケール関係も特に実寸を忠実に再現しているわけではないので、加工深さに対する加工制限量の値は小さい値である。また、ギャップなどについてはμm単位の小さな値である。
【0027】ここでは、加工開始直後から直ちに加工制限量を減少させるのではなく、所定の深さ位置、すなわち第1の加工制限量変更位置ZF までは、加工時間を短縮するために大きな加工制限量を固定値として設定して加工制限量を変化させないようにしている。また、この位置ZF を経過した時から、加工制限量の値を徐々に小さくし、加工終了点よりも少し上方の位置に第2の加工制限量変更位置ZN を設けて、これ以降は加工精度をより高くなるために小さな加工制限量を固定値として設定し、加工終了位置まで加工制限量を変化させないようにしている。
【0028】従って、図4に示すように加工開始位置Zから第1の加工制限量変更位置ZFまでは加工制限量をDF に固定し、変更位置ZF から第2の加工制限量変更位置ZN までは各加工制限量で規定される加工深さ方向の単位距離毎にDF 2〜DF6という具合に次第に小さくなり、変更位置ZN 以降は、最も小さい加工制限量DN に固定する。尚、ここで加工終点位置Z0はゼロとする。変更位置ZF からZN までの加工制限量は、例えば両変更位置における加工制限量を深さ方向に比例配分することにより決定することができる。これらの各値ZF ,ZN ,DF ,DN はパラメータとして加工開始に先立って設定される。このとき、加工開始位置Zは、必ずしも被加工物Wの上面と一致させる必要はなく、例えば仕上げ加工工程においては、加工穴の加工深さ方向に進んだ位置になる。
【0029】上記加工制限量、側面方向への振幅ε、電極減寸量L(電極は加工穴に対してギャップGと振幅εを考慮した距離小さく製作される)、電極の加工深さ方向と垂直な平面に投影される揺動軌跡形状などの揺動加工に必要なパラメータは、加工に先だって予め設定される。なお、既述したように、ここでの各値の相互のスケールは実寸を再現していない。
【0030】さて、ここで図5に示すフローチャートを参照して、本発明方法を説明する。このフローチャート中に示されるパラメータについて、図4に示されるように、DC は現在の加工進行量を、DF は第1の加工制限量を、DN は第2の加工制限量を、Drは現在設定されている設定加工制限量をそれぞれ示す。また、ZC は現在の加工深さ方向の加工位置を、ZF は第1の加工制限量変更位置を、ZN は第2の加工制限量変更位置をそれぞれ示す。更に、θは加工深さ方向の軸中心において揺動方向の起点からの開き角であり、実質的に周回方向における揺動量を表している。θC は現在の開き角、θrは設定される開き角であり、以下、この周回方向の設定角度を単位揺動量と称する。
【0031】まず、加工を開始する時には、実際に加工に入る前に、各種の放電加工条件を設定する(S1)。加工条件の設定は、従来公知の通りであり、少なくとも基本的に加工を行なうのに必要なものを含む。尚、既述した加工に必要な、例えば所望加工深さD、揺動振幅ε、揺動軌跡などの必要なデータはNCプログラムにプログラムするなどして設定されているものとして、このフローチャート上では省略している。
【0032】また、加工条件の設定とあわせて、各種のパラメータを設定する。パラメータの設定は、少なくとも第1及び第2の加工制限量DF 、DN と、第1及び第2の加工制限量変更位置ZF 、ZN があり、好ましくは単位揺動量θrも設定する。単位揺動量θrは1周〜3周(360°〜1080°)の固定値とされ、特にオペレータが入力して設定する必要はないが、その加工の形態に応じてオペレータが入力することで、例えば1/4周(90°)に設定するなどして、固定値を変更可能としている。また、実施例では、各値ZF ,ZN ,DF ,DN をオペレータが設定するようにしているが、演算によって求めたり、予めデータベースを作っておいて、加工条件や所望の加工深さに基づいて自動的に選択して設定させるなどようにしてもよい。
【0033】このように各種のパラメータの設定が完了したならば、実際に放電加工を開始する(S2)。まず、設定された加工制限量Drを当初は第1の加工制限量DFに固定して放電加工する(S3)。加工開始時には、現在の加工進行量DC 及び揺動量θC は、共にゼロなので、それぞれのカウント値を”0”にリセットしておく(S4)。
【0034】次に、加工穴の側面方向を中心的に加工するようにする。側面方向を中心的に加工するということは、側面方向の加工が進むとともに加工深さ方向へはあまり進まないように工具電極と被加工物を相対移動制御しつつ放電加工を行うことを意味している。このとき、どの程度の時間この側面方向中心の加工を行うかは、後述する電極と被加工物との両極間を制御するサーボの制御回数の設定値により決定される。この制御回数Mの設定値は、所定の好ましい値が予め設定されている。
【0035】加工穴の側面方向を中心的に加工するときは、まず、制御回数Mのカウント値を“0”にリセットして(S5)、加工制限量のカウント値DC が先に設定された加工制限量Dr(開始当初は第1の加工制限量DF )に到達したかどうかを見る(S6)。加工開始当初は加工が進んでおらず、Dc<DF であるので、次に、制御回数Mが設定値に達したかどうかを見る(S7)。
【0036】さらに、制御回数Mも加工開始当初はカウント値が“0”であるから、前述したように側面方向を中心的に加工する(S8)。そして、従来のサーボ制御と同様に、極間が狭い場合は工具電極を相対的に被加工物から離れるように、一方、極間が広い場合には工具電極を相対的に被加工物に接近させるようにサーボ制御を行って加工間隙が適切な距離に維持されるように極間を制御する。このとき、図示されていないが、揺動方向の進行を示すカウント値θC と加工制限量のカウント値DC は、それぞれ工具電極の相対的な前進または後退に応じて加減算されている(S9)。
【0037】次いで、サーボの制御回数Mのカウント値を1加算して(S10)、再度加工制限量のカウント値DC が先に設定されたDF に到達したかどうかを見る(S6)。これを制御回数Mが設定値に達するまで繰り返し行う。
【0038】サーボの制御回数Mが設定値に到達したら(S7)、加工深さ方向を中心的にに加工するように切り換える。この加工深さ方向を中心的に加工するということは、加工深さ方向の加工が進むとともに側面方向へはあまり進まないように工具電極と被加工物とを相対移動させつつ加工を行うことを意味している。このとき、側面方向を中心的に加工するときと同様に、どの程度の時間、加工深さ方向を中心的に加工するかは、サーボの制御回数の設定値により決定される。この制御回数Nの設定値は、制御回数Mと同様に所定の好ましい値が予め設定されている。
【0039】まず、制御回数Nのカウント値を“0”にして(S11)、加工制限量のカウント値DC が先に設定されたDr(ここでは第1の加工制限量DF )に到達したかどうかを見る(S12)。先に側面方向を中心的に加工したので、加工開始当初は加工深さ方向にはそれほど加工が進んでいない上に、加工制限量が大きいDF であるから、常識的にはDC <Drである。DC <DF であったとすると、次に、制御回数Nが設定値に達したかどうかを見る(S13)。このとき、制御回数Nのカウント値は“0”であるので、前述したように加工深さ方向を中心的に加工する(S14)。そして、サーボにより加工間隙が適切な距離に維持されるように間隙を制御する。このとき、図示されていないが、揺動方向のカウント値θC と加工制限量のカウント値DC は、それぞれ工具電極の相対的な前進または後退に応じて加減算されている(S15)。
【0040】そして、制御回数Nのカウント値を1加算し(S16)、再度加工制限量のカウント値DC が先に設定されたDF に到達したかどうかを見る(S6)。これを繰り返して、制御回数Nが設定値に達したら、ステップS6に戻って再び加工穴の側面方向を中心的に加工する。このようにして、加工穴の側面方向中心の加工と加工深さ方向中心の加工とを加工制限量のカウント値Dcが設定された加工制限量DF になるまで交互に繰返し行う。このときの電極12の相対移動軌跡、すなわち電極12の相対的な動作は、図2で説明した通りである。
【0041】加工側面方向中心の加工と加工深さ方向中心の加工とを交互に繰返し行っている途中で、このとき設定されている加工制限量DF に到達する。加工制限量DFに到達したら(S6またはS12)、θC が予め設定された設定値θr(例えば1周=360°)になるまで加工深さ方向には全く電極を送らずに加工穴の側面方向にのみ設定された揺動形状の軌跡に沿って工具電極を相対移動させて側面のみを加工する。これは、既述した通り、加工面を均すように加工する動作であり、この段階で、加工穴の側面のうねりを小さくし加工穴の底面の凹凸を小さくしておくことができる。
【0042】したがって、まずθC とθrとを比較し(S17)、上述した加工穴の側面方向のみに加工を行う(S18)。言い換えれば、図2の点線で描かれた加工制限量で規定される加工深さ位置における加工面における軌跡に沿うよう工具電極が周回するように、工具電極と被加工物との間に加工用電圧を間欠的に印加させつつ両者を相対移動させる(S19)。このとき、図示しないが、θC は、もちろん加工中に工具電極の相対的な前進または後退に応じて加減算されている。そして、再びθcとθrを比較する(S17)。
【0043】予め設定されたθrに達したら、すなわちここでは、設定された揺動形状で規定された円形の軌跡を1周したら、加工制限量DF で規定された加工深さ位置までの一加工を終了して、新しく加工制限量Drを設定し直す。現在の加工位置ZC が予め設定された第1の加工制限量変更位置ZF に達していなければ(S20)、設定値Drはそのまま第1の加工制限量DF とする(S21)。第1の加工制限量変更位置ZF に達し、かつ第2の加工制限量変更位置ZN に達していない場合には(S22)、DrはDN +{(ZC −ZN )/(ZF +ZN )}・(DF −DN )とする(S23)。この演算により設定される加工制限量Drは、図4に示されるように、比例的に徐々に小さくなる。したがって、加工屑の排出がだんだんと悪くなるのにつれて、加工制限量も徐々に小さく設定されて、安定した加工が継続される。また、加工穴の底面の加工差が修正し得る範囲で各加工制限量で規定され、さらに、加工毎にその時の加工面を均してから次の加工へ移行しているから、加工前段に比較的大きな値の加工制限量で加工して加工穴の底面に凹凸状に若干の加工差が生じても加工後段でその加工差は是正され解消される。
【0044】第2の加工制限量変更位置ZN に達していた場合には(S22)、加工制限量をDN とする(S24)。なお、ここで、加工制限量DN は加工制限量DF よりも小さい値であり、またDN は設定することができる加工制限量Drの最小値である。
【0045】加工制限量を設定し直したら、加工が終了したかどうかを判断し(S25)、現在位置ZC が加工終了位置Z0 に到達していなければ、ステップS4に戻って各カウント値を“0”にリセットし、新しく設定された加工制限量Drに基づいて加工穴の側面方向中心の加工と加工深さ方向中心の加工とを交互に繰返し行う。
【0046】そして、これら加工を繰り返して、現在位置ZC が加工終了位置Z0 に到達したら(S25)、加工深さ方向を現在の加工位置ZC =0の状態で、言い換えれば工具電極を加工深さ方向には送らない状態で、設定された揺動形状で規定される円形状の軌跡に沿って1周電極と被加工物とを相対移動させて、側面方向にのみ加工を行う(S26)。このとき、どの程度の時間この加工を行うかは、各々の加工の形態により異なるものであるが、1通り加工穴の底面を均すためには、少なくとも1周はこの加工を行う方が好ましい。すなわち、加工終了位置Z0 で加工穴の底面及び側面を加工するわけであるから、加工穴の底面及び側面の凹凸やうねりを取り除くように均すためには少なくとも1周は必要であると考えられるからである。しかしながら、長時間この加工を繰り返していると、加工穴の側面が所望の形状よりも加工され過ぎるおそれがあり、また、所望の加工位置に到達した底面に放電が発生しにくくなっているといえども全く放電が発生しないとも限らず、加工穴の底面の精度を害することがあるので、加工条件、所望の仕上げ面粗度、加工穴の底面面積などにもよるが、1周〜3周程度が好ましい。
【0047】このとき、θを設定しないで周回させて、サーボバック信号の発生をサンプリングしておき、例えば10%以下の信号発生率であるときに終了させるように構成することができる。すなわち、加工深さ方向へ電極を進めていないので、その電極位置で加工穴の底面方向に殆ど放電が発生しなくなったことを検出すれば、加工穴の底面での取り残しがなくなったことが検知できるからである。
【0048】このとき、特に加工後段に位置する仕上げ加工工程においては、加工開始当初から徐々に加工制限量を小さくしながら加工を行う方が好ましい。これは、この種の仕上げ加工工程では、加工穴の側面が加工されて広がり、電極の寸法に対して加工穴の幅が大きくなっているので、その加工工程の加工開始位置は、加工穴のかなり深い位置に位置しているからである。このような場合は、上述した図3及び図4における加工開始位置Zを第1の加工制限量変更位置ZF と一致させると考えればよい。したがって、上述した図5におけるステップS3で、DrをDF と設定せずに、加工制限量Dr=DN +{(ZC −ZN )/(ZF +ZN )}・(DF −DN )で設定するようにすれば実施できる。
【0049】このように、本発明方法では、加工深さ方向に移動できる加工制限量を設定しておき、加工深さ方向に加工が進むに従ってこの加工制限量を次第に小さく設定するようにしたので、その加工工程における初期では相対的に加工時間が短くなる。また、その加工工程における中期では、加工時間を比較的かけずに安定した加工を行え、加工穴の側面のうねりを小さくできるとともに、加工穴の底面の凹凸が発生しにくくなる。そして、加工終期では、加工の迅速化よりも加工の精度に重点を置くようにしたので、加工は安定して継続され、加工穴の底面の凹凸も側面のうねりもなく、僅かに残っている加工差も解消される。したがって、複数の加工工程で構成される一つの放電加工工程全体での加工時間は大幅に短縮されて、加工穴の底面及び側面の加工精度、加工面粗度、及び加工品質を劣化させないで加工を行うことができる。
【0050】尚、上記各パラメータは、加工深さや被加工物の材質等の加工条件に応じて種々変更され、最適条件となるように設定されるのは勿論である。また、加工深さが浅い場合には、上記第1または第2の加工制限量変更点等を設けないで或いは第1及び第2の加工制限量変更点等を設けないで加工開始直後から加工制限量を次第に小さくするようにして加工してもよいのは勿論である。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の放電加工方法によれば、次のように優れた作用効果を発揮することができる。加工深さ方向に加工制限量を規定し、加工深さ方向に進むに従って、この加工制限量を次第に小さくなるように設定したので、より短い加工時間で所望の加工形状精度、加工面粗度、加工穴の底面精度及び加工品質を得ることができる。また、加工の初期に大きな加工制限量を固定的に設けることにより、より加工時間の短縮化を図ることができる。更には、加工の終期に小さな加工制限量を固定的に設けることにより、加工穴の底面の精度を更に向上させることができる。




 

 


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