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発明の名称 積層体及びそれを用いた容器
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−100315
公開日 平成10年(1998)4月21日
出願番号 特願平9−209463
出願日 平成9年(1997)8月4日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 郁男
発明者 武居 芳樹 / 佐藤 一弘 / 町井 幸子 / 宮沢 哲夫 / 今津 勝宏
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 金属基体とこれに熱接着された二軸延伸ポリエステルフィルム層とから成る積層体において、前記ポリエステルフィルムが、(i) エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルと(ii) (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルとを(i) :(ii)=90:10乃至30:70の重量比で含有するブレンド物から形成され且つブレンド物中の成分(i)の下記式(1)に示すエステル交換率(E)が0.5〜20%の範囲にあり、且つブレンド物の固有粘度(IV)が0.55以上であることを特徴とする積層体: E=100・[1−exp{(Hu/R)・(1/Tm0 −1/Tm)}]
…(1)
ここで、Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0 :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステル(i)の融点(K)。
【請求項2】 前記ポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレート或いは20モル%以下の量でエチレンイソフタレート単位を含有するポリエチレンテレフタレート/イソフタレートである請求項1記載の積層体。
【請求項3】 前記共重合ポリエステル(ii)がポリブチレンテレフタレート/アジペートである請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】 下記式(2)で表される積層体のポリエステルフィルム層の複屈折が、フィルムの表面側でΔn1 、表面から金属板に至るフィルムの中間位置でΔn2 、金属板に接する側でΔn3 とすると、Δn1 及びΔn2 の少なくとも何れかが0.02以上であり、且つΔn3 がΔn1 又はΔn2 以下であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の積層体:但しΔn 1〜3 =nm −nt …(2)
nm はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、nt はフィルムの厚み方向の屈折率である。
【請求項5】 金属基体とこれに熱接着された二軸延伸ポリエステルフィルム層とから成る積層体において、前記ポリエステルフィルム層が、(A)エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの表面層と、(B)(i)エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルと(ii) (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルとを (i):(ii)=90:10乃至30:70の重量比で含有するブレンド物から成る下地層との積層フィルムから成り且つブレンド物中の成分(i)の下記式(1)に示すエステル交換率(E)が0.5〜20%の範囲にあり、且つブレンド物の固有粘度(IV)が0.55以上であることを特徴とする積層体: E=100・[1−exp{(Hu/R)・(1/Tm0 −1/Tm)}]
…(1)
ここで、Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0 :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステル(i)の融点(K)。
【請求項6】 表面層(A)のポリエステル及び下地層(B)中のポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレート或いは20モル%以下の量でエチレンイソフタレート単位を含有するポリエチレンテレフタレート/イソフタレートである請求項5記載の積層体。
【請求項7】 下地層(B)中の共重合ポリエステルがポリブチレンテレフタレート/アジペートである請求項5または6記載の積層体。
【請求項8】 下記式(2)で表される積層体のポリエステルフィルム層の複屈折が、フィルムの表面側でΔn1 、表面から金属板に至るフィルムの中間位置でΔn2 、金属板に接する側でΔn3 とすると、Δn1 及びΔn2 の少なくとも何れかが0.02以上であり、且つΔn3 がΔn1 又はΔn2 以下であることを特徴とする請求項5乃至7の何れかに記載の積層体:但しΔn 1〜3 =nm −nt …(2)
nm はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、nt はフィルムの厚み方向の屈折率である。
【請求項9】 請求項1乃至8の何れかに記載の積層体を絞り成形或は更にしごき成形して成ることを特徴とするシームレス容器。
【請求項10】 下記式(2)で表されるシームレス容器底部のポリエステルフィルム層の複屈折が、フィルムの表面側でΔn1 、表面から金属板に至るフィルムの中間位置でΔn2 、金属板に接する側でΔn3 とすると、Δn1 及びΔn2 の少なくとも何れかが0.02以上であり、且つΔn3 がΔn1 又はΔn2以下であることを特徴とする請求項9記載のシームレス容器:但しΔn 1〜3 =nm −nt …(2)
nm はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、nt はフィルムの厚み方向の屈折率である。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属基体とこれに積層されたポリエステルフィルムとから成る積層体並びにこの積層体を絞り或いは更にしごき加工により成形したシームレス容器に関するものである。より詳細には、耐衝撃性(耐デント性)が顕著に改善された積層体及びこの積層体から形成されたシームレス容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、側面無継目缶(サイド・シームレス缶)としては、アルミニウム板、ブリキ板或いはティン・フリー・スチール板等の金属素材を、絞りダイスとポンチとの間で少なくとも1段の絞り加工に付して、側面継目のない胴部と該胴部に、継目なしに一体に接続された底部とから成るカップに形成し、次いで所望により前記胴部に、しごきポンチとダイスとの間でしごき加工を加えて、容器胴部を薄肉化したものが知られている。また、しごき加工の代わりに、再絞りダイスの曲率コーナ部で曲げ伸ばして側壁部を薄肉化することも既に知られている(特公昭56−501442号公報)。
【0003】また、側面無継目缶の有機被覆法としては、一般に広く使用されている成形後の缶に有機塗料を施す方法の他に、成形前の金属素材に予め樹脂フィルムをラミネートする方法が知られており、特公昭59−34580号公報には、金属素材にテレフタル酸とテトラメチレングリコールとから誘導されたポリエステルフィルムをラミネートしたものを用いることが記載されている。また、曲げ伸ばしによる再絞り缶の製造に際して、ビニルオルガノゾル、エポキシ、フェノリクス、ポリエステル、アクリル等の被覆金属板を用いることも知られている。
【0004】ポリエステル被覆金属板の製造に付いても、多くの提案があり、例えば、特開昭51−4229号公報には、表面に二軸配向が残存しているポリエチレンテレフタレートより成る塗膜が記載され、更に特開平6−172556号公報には、極限粘度[η]が0.75以上のポリエステルフィルムを金属ラミネートに用いることが提案されている。
【0005】また、特開平3−101930号公報には、金属板と、エチレンテレフタレート単位を主体とするポリエステルフィルム層と、必要により金属板とポリエステルフィルムとの間に介在する接着プライマー層との積層体から成り、該ポリエステルフィルム層は、式Rx =IA /IB式中、IA はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.34nm(CuKαX線回折角が24゜から28゜)の回折面によるX線回折強度、IB はポリエステルフィルム表面に平行な、面間隔約0.39nm(CuKαX線回折角が21.5゜から24゜)の回折面によるX線回折強度、で定義されるX線回折強度が0.1乃至15の範囲内にあり且つ結晶の面内配向の異方性指数が30以下であるフィルム層から成ることを特徴とする絞り缶用被覆金属板が記載されており、また、上記被覆金属板を絞り−再絞り成形し、且つ再絞り成形に際して缶胴側壁部を曲げ伸ばしにより薄肉化して成る薄肉化絞り缶が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術に認められる提案は、成形前の金属素材に樹脂フィルムを施せばよく、通常の塗装処理のように、塗膜の焼き付け炉や塗料排ガスの処理施設が不要で、大気汚染がなく、また成形後の缶体に塗装処理を行わなくてもよいという利点を与えるものであるが、缶の諸特性、特に耐衝撃性(耐デント性)、耐腐食性及び巻締性乃至密封性等の点で改善されるべき余地がある。
【0007】上記特開平3−101930号公報の提案は、絞り−再絞り用の被覆金属素材のポリエステルフィルム層に一定のバランスされた配向結晶を付与しておくことにより、優れた加工性と耐腐食性(耐ピンホール性)とを付与するものであるが、なお耐衝撃性や腐食性の強い内容物に対する耐腐食性の点では未だ十分満足しうるものではなかった。
【0008】実際の缶詰製品に要求される実用的な耐衝撃性として、耐デント性と呼ばれるものがある。これは、缶詰製品を落下して、或いは缶詰製品同士が相互に衝突して、缶詰製品に打痕と呼ばれる凹みが生じた場合にもなお、被覆の密着性やカバレージが完全に保たれることが要求されるという特性である。即ち、デント試験で被覆が剥離し或いは被覆にピンホールやクラックが入る場合には、この部分から金属溶出や孔食による漏洩等を生じて、内容物の保存性を失うという問題を生じるのである。
【0009】次に、缶詰用缶の場合、被覆への熱処理の影響を避けることができない。即ち、缶の外面に内容物等を表示する印刷を施すのが普通であり、印刷インクを焼き付けるための加熱の影響が、ポリエステルフィルムに生じる。ポリエステルは、加熱により結晶化が進行する(脆くなる)傾向があり、これにより耐デント性が低下し、金属基体との密着性低下或いは被覆性低下やネックイン加工、巻締加工等の際の加工性が低下する。
【0010】以上の事実を考慮すると、ポリエステルフィルム等を被覆した金属缶における缶の諸特性、特に耐衝撃性(耐デント性)、耐腐食性及び巻締性乃至密封性等は、金属板に施す前或いは施された後でのポリエステルフィルムの物性ではなく、実際に缶に成形された状態でのフィルムの物性に依存することが了解されよう。
【0011】更に、被覆金属板から成形されたシームレス缶においては、缶胴側壁部を高度に薄肉化することも、素材コストの節減及び容器重量の低減から極めて重要である。再絞りに際してRの小さいダイコーナー部で側壁部を曲げ伸ばし(曲げ−曲げ戻し変形)で薄肉化し、或いは更にしごきにより薄肉化する方法は、シームレス缶の側壁部の厚みを小さくすると共に厚みを一様にして缶ハイトを大きくし、ある程度素材コストの節減及び容器重量の低減には成功しているが、側壁部の内、上部のビード加工やフランジ加工を行うべき部分では、当然加工の程度も大きくなり、つまりポリエステル層の配向結晶化(一軸配向結晶化)の程度も大きくなっており、加工による脆化、耐衝撃性の低下も無視できないものとなっている。
【0012】従って、本発明の目的は、耐衝撃性、特に耐デント性が顕著に改善された金属−ポリエステル積層体、並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供するにある。
【0013】本発明の他の目的は、高度の絞り加工或いはしごき加工や製缶時或いは製缶後の熱処理にもかかわらず、結晶化による脆化が抑制され、優れた耐デント性が維持される金属−ポリエステル積層体及びこれから成るシームレス容器を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、金属基体とこれに熱接着された二軸延伸ポリエステルフィルム層とから成る積層体において、前記ポリエステルフィルムが、(i)エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルと(ii) (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルとを(i):(ii)=90:10乃至30:70の重量比で含有するブレンド物から形成され且つブレンド物中の成分(i)の下記式(1)に示すエステル交換率(E)が0.5〜20%の範囲にあり、且つブレンド物の固有粘度(IV)が0.55以上であることを特徴とする積層体: E=100・[1−exp{(Hu/R)・(1/Tm0 −1/Tm)}]
…(1)
ここで、Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0 :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステル(i)の融点(K)、が提供される。
【0015】本発明によればまた、金属基体とこれに熱接着された二軸延伸ポリエステルフィルム層とから成る積層体において、前記ポリエステルフィルム層が、(A)エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの表面層と、(B)(i) エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルと(ii) (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルとを(i):(ii)=90:10乃至30:70の重量比で含有するブレンド物から成る下地層との積層フィルムから成り且つブレンド物中の成分(i)の下記式(1)に示すエステル交換率(E)が0.5〜20%の範囲にあり、且つブレンド物の固有粘度(IV)が0.55以上であることを特徴とする積層体: E=100・[1−exp{(Hu/R)・(1/Tm0 −1/Tm)}]
…(1)
ここで、Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0 :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステル(i)の融点(K)、が提供される。
【0016】本発明において、1.前記ポリエステル(i)がポリエチレンテレフタレート或いは20モル%以下の量でエチレンイソフタレート単位を含有するポリエチレンテレフタレート/イソフタレートであること、2.前記共重合ポリエステル(ii)がポリブチレンテレフタレート/アジペートであること、3.下記式(2)で表される積層体のポリエステルフィルム層の複屈折が、フィルムの表面側でΔn1 、表面から金属板に至るフィルムの中間位置でΔn2 、金属板に接する側でΔn3 とすると、Δn1 及びΔn2 の少なくとも何れかが、0.02以上であり、且つΔn3 がΔn1 又はΔn2 以下であることが好ましい、但しΔn 1〜3 =nm −nt …(2)
nm はフィルムの最大配向方向の屈折率であり、nt はフィルムの厚み方向の屈折率である。
【0017】本発明によれば更に、上記積層体を絞り成形或は更にしごき成形して成ることを特徴とするシームレス容器が提供される。
【0018】本発明では、積層体のポリエステル被覆層として、エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルに対して、特定の共重合ポリエステル、即ち(a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルをブレンドしたものを用いることが第1の特徴である。
【0019】既に指摘したとおり、缶詰め製品の場合、落下等による衝撃を受けることは頻繁であり、この衝撃後にも尚優れた耐食性を示すことは、金属溶出、孔食による漏洩等を防止する上で極めて重要な要件である。ところが、エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルは、機械的性質、耐熱性、腐食成分に対するバリアー性等には優れているが、衝撃を加えた後には、耐食性が著しく低下する傾向がある(比較例1参照)。これに対して、エチレンテレフタレート系ポリエステルに上記共重合ポリエステルをブレンドすると、ポリエチレンテレフタレートが有する上記特性を損なうことなしに、衝撃後の耐食性を顕著に向上させることが可能となる。
【0020】添付図面の図1を参照されたい。図1は、種々のポリエステルを金属板にラミネートした積層体に熱処理(220℃×3分熱処理後に205℃×2分熱処理)を施した後、デント(打痕)試験を行う環境温度を変えて、デント試験後のエナメルレーター値ERV(金属露出の程度を電流値として評価)との関係をプロットしたグラフである。尚、このデント試験は、以下の方法により行った。
デント試験;湿潤状態のシリコンゴム上に、積層体のフィルム面を接触させ、且つ積層体の背面側に1インチ直径の鋼球を置き、この上に1kgのおもりを40mmの高さから落下させた。次いで、積層体のフィルムの割れを6.3Vで流れる電流値(ERV:mA)により評価した。この試験結果によると、エチレンテレフタレート系ポリエステルであるPET/I系(テレフタル酸88モル%、イソフタル酸12モル%)では、デント試験後の金属露出による電流値が著しく大きくなっているのに対して、PET/I//PBT系(テレフタル酸94モル%、イソフタル酸6モル%からなるエチレンテレフタレート系ポリエステルにPBTを30重量%ブレンド)は、デント試験後の金属露出による電流値が約1桁低い値となっていることが了解される。更に上記PBTに代えてPBT/A(テレフタル酸80モル%、アジピン酸20モル%、1,4−ブタンジオール100モル%)を30重量%ブレンドしたPET/I//PBT/A系は、デント試験後の金属露出による電流値を更に1桁以上低い値に抑制できるという驚くべき事実が明らかとなる。
【0021】本発明においてブレンド成分として使用する共重合ポリエステル、即ち (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルは、それ自体ポリブチレンテレフタレートに比べ比較的低結晶性であるが、ブレンド物全体の分子配向及び/または加熱による結晶化を抑制するという作用がある。
【0022】図2は、種々のポリエステルをラミネートした積層板をシームレス缶に成形し、熱処理(220℃×3分熱処理後に205℃×2分熱処理)後、レトルト殺菌後、缶底、缶胴下部、及び缶胴上部について、後述の方法にてポリエステルフィルムを単離し、ポリエステルの結晶化の程度を、後述する示差熱分析において、単離フィルムをそのまま常温から20℃/minの昇温速度で測定した際の結晶融解の熱量で評価した結果を示している。この結果によると、PET/I系のポリエステルは、結晶化の程度が大きく、しかも缶底、缶胴下部、及び缶胴上部の順に結晶化の程度が大きくなっている。また、上記PET/IにPBTを30重量%ブレンドしたPET/I//PBT系は、ポリエステル層の結晶化は上昇するが、PBTの代わりにPBT/AをブレンドしたPET/I//PBT/A系では、ポリエステル層の結晶化度をより低く抑制できる。これは、PBTにアジピン酸を共重合することにより、PBTの結晶化速度を大幅に低下させた効果によるものと思われる。
【0023】図3は、PET/I//PBT系において、後述する方法によりブレンド物のエステル交換率を種々調整したポリエステルフィルムをラミネートした積層体を図1と同様に熱処理を施し、常温でのデント試験後のエナメルレーター値ERVと示差熱分析における結晶融解の熱量との関係を示すグラフである。なお、結晶融解熱量は、デント試験に供した試料から後述の方法によりポリエステルフィルムを単離し、図2で述べた方法により測定した。結晶融解熱量の増大に伴ってエナメルレーター値は単純に増大している。かくして、ポリエステル層の結晶化度を低下させることが、缶の耐デント性の向上、特に缶胴上部のネックイン加工部やフランジ加工部の耐デント性の向上に重要であることが了解される。
【0024】本発明のブレンド物において、耐デント性に優れていることは、このブレンド物の粘弾性挙動を参照しても了解される。図4は、前述したPET/I、PET/I//PBTブレンド系、及びPET/I//PBT/Aブレンド系に関して、ラミネート及び熱処理したものについて、温度と損失弾性率との関係をプロットしたグラフである。このグラフにおいて、右側に現れる山はガラス転移点(Tg)の目安となるα分散を示し、左側に現れる山は耐衝撃性の目安となるβ分散を示している。これらの結果から、PET/I//PBTブレンド系及びPET/I//PBT/Aブレンド系は、共に低温側に大きな分散を示し、これは低温脆性の改善がなされていることを示しているが、PET/I//PBT/Aブレンド系は、PET/I//PBTブレンド系に比して、約30℃低い温度位置にもα分散を示し、これが耐デント性及び加工性の向上の一因となっていると思われる。
【0025】本発明では、上記ブレンド物中の成分(i)、即ちエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルの前記式(1)に示すエステル交換率が0.5〜20%の範囲にあることが第二の特徴である。
【0026】エステル交換率を求める前記式(1)は、一般に知られているフローリーの式を基にしたものであり、ブレンド物中のエステル交換反応の程度と、エチレンテレフタレート主体の結晶性ポリエステル(i)の融点降下との間に一定の関係があることに基づいて、求められるものである。即ち、ポリエステル(i)の融点降下が全く生じていない場合、式(1)左辺の1/Tm0 −1/Tmの値は0となり、エステル交換率Eはゼロ%となる。融点降下の程度が大きくなると、1/Tm0 −1/Tmの値は負でその絶対値が大きくなり、エステル交換率Eは大きな値となる。
【0027】本発明では、上記エステル交換率が0.5乃至20%の範囲にあることが、衝撃後の耐食性に関して重要である。即ち、エステル交換率が0.5%を下回る場合には、両成分(i)及び(ii)のブレンドが不十分で、満足すべき物性のフィルムを得ることができない。一方、エステル交換率が20%を上回ると、衝撃後の耐食性が著しく低下する(比較例4参照)。この理由は、次の通りと考えられる。成形後の缶には、印刷が施され、印刷インキの焼き付けが行われるが、この焼き付けに際して、エステル交換率が20%を越えるブレンド物の被覆層では、ブレンドによる海−島構造の効果が減少すると思われる。即ち、本発明では、ポリエチレンテレフタレート主体のポリエステル成分(i)は耐熱性向上に寄与し、ブチレングリコールから誘導されたエステル単位を有する共重合ポリエステル成分(ii)は、ブレンド物のガラス転移温度の低下に寄与しており、これらによって熱処理後の耐衝撃性を向上させる。しかるに、エステル交換率が20%を上回ると、成分(i)による耐熱性向上効果が損なわれ、しかも成分(ii)によるガラス転移温度低下効果も損なわれ、この結果として耐衝撃性が損なわれるものと考えられるのである。従って、エステル交換率が0.5乃至20%の範囲内にあるブレンド物の被覆層では、分子配向が維持され、配向結晶化は進行するとしても、熱結晶化が抑制され、衝撃時のフイルムの割れが防止され、優れた耐食性が維持される。
【0028】本発明においては、更に、ブレンド物中におけるエチレンテレフタレート系ポリエステル(i)と特定の共重合ポリエステル(ii)との重量比が、(i):(ii)=90:10乃至30:70の範囲内にあることも重要である。両者のブレンド比が上記範囲を下回る場合及び上回る場合の何れにおいても、シームレス容器への成形性や、成形後の缶のネックイン加工性やフランジ加工性が低下し、衝撃後の耐食性も低下する(比較例6参照)。
【0029】本発明の積層体及びシームレス容器において、上記ブレンド物の層は、耐食性が問題となる缶内面側に設けるべきであり、これは単層で設けても、或いは多層で設けてもよい。後者の場合、ブレンド物層を下層として設け、上層にはエチレンテレフタレート系ポリエステルを設けるのが、加工性、耐食性、耐衝撃性、フレーバー性等の総合的見地から望ましい。
【0030】(エチレンテレフタレート系結晶性ポリエステル)本発明に用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルは、エステル反復単位の大部分、80モル%以上をエチレンテレフタレート単位を占めるものであり、ガラス転移点(Tg)が50乃至90℃、特に70乃至90℃で、融点(Tm)が210乃至260℃、特に220乃至260℃にある結晶性ポリエステルが好適である。ホモポリエチレンテレフタレートが耐熱性の点で好適であるが、エチレンテレフタレート単位以外のエステル単位の少量を含む共重合ポリエステルも使用し得る。
【0031】テレフタル酸以外の酸成分としては、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸及びピロメリット酸から成る群より選ばれた多塩基酸の少なくとも1種が好適である。共重合成分としてイソフタル酸を含むポリエステルは耐内容物性、内容物の香味保持性等に優れている。
【0032】ジオール成分は、エチレングリコールのみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲で、それ以外のジオール成分、例えば、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上が含まれていてもよい。
【0033】用いるエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルは、ブレンド物として後述する固有粘度を満足するものであるが、固有粘度の上限は1.5以下であるのがよい。尚、固有粘度の測定は後述する方法で行う。
【0034】(共重合ポリエステル)本発明に用いる共重合ポリエステルは、 (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルである。
【0035】エステル単位(a)を構成する芳香族二塩基酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4′−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられるが、テレフタル酸が好適である。
【0036】エステル単位(b)を構成する脂肪族二塩基酸成分としては、コハク酸、アゼライン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ダイマー酸等を挙げることができるが、Tgを低下する効果が大きいことから長鎖の脂肪族二塩基酸が好ましく、工業生産の見地から、特にアジピン酸が好ましい。
【0037】ジオール成分は、ブチレングリコールのみからなることが好適であるが、本発明の本質を損なわない範囲内で、ブチレングリコール以外のジオール成分としてエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の1種又は2種以上を含有していてもよい。
【0038】この共重合ポリエステルは、芳香族エステル単位(a)と脂肪族エステル単位(b)とを90:10乃至50:50のモル比で含むことも重要であり、脂肪族エステル単位の含有量が上記範囲よりも少ないときには、耐衝撃性(耐デント性)の改善が不十分であり、一方上記範囲を上回ると、被覆の耐熱性、加工性、腐食成分に対するバリアー性等が低下するようになる。
【0039】共重合ポリエステルのガラス転移点(Tg)が−20乃至40℃、特に−10乃至20℃で、融点(Tm)が180乃至220℃、特に190乃至220℃にある共重合ポリエステルが好適である。
【0040】用いる共重合ポリエステルは、少なくともフィルムを形成するに足る分子量を有するべきであり、ブレンド物の形で、後述する固有粘度を与えるものである。その固有粘度の上限は、1.5以下であるのがよい。
【0041】(ポリエステルブレンド物)本発明では、エチレンテレフタレート系ポリエステル(i)と特定の共重合ポリエステル(ii)とを(i):(ii)=90:10乃至30:70特に 90:10乃至40:60の重量比で含有するポリエステルブレンド物を使用する。
【0042】エチレンテレフタレートを主体とする結晶性ポリエステル樹脂と、特定の共重合ポリエステル樹脂とのブレンド物において、前述した範囲のエステル交換率に制御する方法としては、押し出し機の前工程にて、あらかじめ樹脂チップをブレンドし、樹脂温度、反応時間、湿度等を制御しながら混練してエステル交換率を制御する方法や、直接原料チップを押し出し機中に入れて押し出し機中の樹脂温度、滞留時間を制御する方法などがあり、いずれの方法を用いてもよいが、混練時の温度、時間はエステル交換反応において非常に重要なパラメーターである。ポリエステル樹脂の混練時の温度としては260℃〜280℃が一般的であるが、温度が高いとエステル交換反応は進みやすいが、逆に熱分解が始まり、結果的に分子量が低下する。また、混練時間は長いほどエステル交換率は上昇する。
【0043】混合乃至混練操作は、ブレンダーやヘンシェルミキサー等を用いて乾式混合を行った後、各種ニーダー或いは一軸乃至二軸の押出型溶融混練装置や射出機用混練装置を用いての溶融混練により行われる。
【0044】(ポリエステルフィルム)本発明に用いるポリエステルフィルムは、前述したブレンド物単独のフィルムであっても、このブレンド物層を含む多層フィルムであってもよい。多層フィルムの場合、下層(金属板側)がブレンド物から成り、上層が前述したエチレンテレフタレート系結晶性ポリエステルから成るのがよい。
【0045】本発明に使用するポリエステルフィルムの厚みは、全体として、2乃至100μm、特に5乃至50μmの範囲にあるのが金属の保護効果及び加工性の点でよい。多層フィルムの場合、ブレンド物層と、エチレンテレフタレート系ポリエステル層とは、96:4乃至4:96の厚み比を有するのがよい。
【0046】ポリエステルフィルムは二軸延伸されているべきである。二軸配向の程度は、X線回折法、偏光蛍光法、複屈折法、密度勾配管法密度等でも確認することができる。フィルムの2軸延伸の程度は、下記式で示される屈折率の差Δn、即ち複屈折Δnが0.04乃至0.18の範囲となる程度が適当である。
Δn=n1 −n2式中、n1 は、フィルムの最大配向方向の屈折率であり、n2 は、フィルムの厚み方向の屈折率である。
【0047】勿論、このポリエステルフィルムには、それ自体公知のフィルム用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
【0048】一般に必要でないが、接着用プライマーを用いる場合には、フィルムへの接着用プライマーとの密着性を高めるために、二軸延伸ポリエステルフィルムの表面をコロナ放電処理しておくことが一般に望ましい。コロナ放電処理の程度は、そのぬれ張力が44dyne/cm以上となるようなものであることが望ましい。
【0049】この他、フィルムへのプラズマ処理、火炎処理等のそれ自体公知の接着性向上表面処理やウレタン樹脂系、変性ポリエステル樹脂系等の接着性向上コーティング処理を行っておくことも可能である。
【0050】(金属板)本発明では、金属板としては各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用される。
【0051】表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板であり、特に10乃至200mg/m2 の金属クロム層と1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0052】更に他の例としては、アルミニウムメッキ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板が用いられる。
【0053】軽金属板としては、所謂アルミニウム板の他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものである。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ましい。
【0054】金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB )は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚みを有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合には、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのがよい。
【0055】[ラミネート及びその製造方法]本発明の積層体の断面構造の一例を示す図5において、この積層体1は金属基体2と少なくともその内面側に位置するポリエステルブレンド物層3とから成っている。金属基体2には外面被膜4が形成されているが、この外面被膜4はポリエステルブレンド物層3と同様のものであってもよいし、また通常の缶用塗料や樹脂(ポリエステル)フィルム被覆であってもよい。
【0056】積層体の断面構造の他の例を示す図6において、ポリエステルブレンド物層3と金属基体2との間に接着用プライマーの層5を設けている以外は、図5の場合と同様である。
【0057】本発明に用いるポリエステル−金属ラミネートは、二軸延伸ポリエステルフィルムを金属に熱接着させることにより製造することができる。この際、ポリエステル層に、二軸配向が一部残存していることが耐デント性を保持する上で好ましい。下記の表1には、ポリエステル−金属ラミネートから成る積層体(缶底を想定)におけるポリエステルフィルム層の複屈折と、デント試験後のエナメルレーター値ERVの関係を示した。即ち、後述する実施例2で用いた二軸延伸積層フィルムと同じ組成を有するがエステル交換率及びIVが異なるフィルムを使用し、これをラミネートする際に、板温を235℃〜250℃の範囲で変更することで得られる積層体におけるフィルムの複屈折を調整した。この積層体におけるポリエステルフィルム層の複屈折と、該積層体に一定の熱処理を施したものについての該フィルム層の複屈折と、熱処理後の積層体について5℃の環境下で前述したのと同様のデント試験によるエナメルレーター値ERVとを、表1に示した。尚、熱処理前の積層体のフィルム中の下層のポリエステル層のIVは0.64、エステル交換率は5.0%であった。これらIV、エステル交換率及び複屈折の測定は、後述する実施例で説明する方法により行った。
【0058】
【表1】

【0059】この表1によれば、熱処理温度220℃では、フィルムの表面側における複屈折(Δn1 )又はフィルム表面から金属板に至るフィルムの中間位置(約1/2厚み)での複屈折(Δn2 )が高い程、デントERVが低くなる傾向を示していることが理解される(表1中、Δn3 は、TFS鋼板側部分の複屈折である)。また積層体のΔn1 又はΔn2 が高くても熱処理温度が高くなると(240℃)、熱処理後の積層体の複屈折が低下し(缶の場合には缶底の複屈折が低下する)、デントERVが増加していることが理解される。このように、金属板にラミネートされるポリエステルフィルム層には、二軸配向が一部残存しているのがよく、複屈折Δn1 又はΔn2 の少なくとも何れかが0.02以上であること、及び金属板側部分の複屈折Δn3 はΔn1 又はΔn2よりも小さいことが、耐デント性及び密着性の確保の点で最も好適である。
【0060】ポリエステル−金属ラミネートの製造方法を説明するための図7において、金属板20を加熱ロール21により用いるポリエステルの融点(Tm)以上の温度(T1 )に加熱し、ラミネートロール22、22間に供給する。一方、ポリエステルフィルム23は、供給ロール24から巻きほぐされ、ラミネートロール22、22間に金属板20をサンドイッチする位置関係で供給される。ラミネートロール22、22は、加熱ロール21よりも若干低い温度(T2 )に保たれており、金属板20の両面にポリエステルフィルムを熱接着させる。ラミネートロール22、22の下方には、形成されるラミネート25を急冷するための冷却水26を収容した水槽が設けられており、この水槽中にラミネートを導くガイドローラ27が配置されている。ラミネートロール22、22と冷却水26との間には一定の間隔のギャップ28を形成し、このギャップ28に保温機構29を設けて、一定の温度範囲(T3 )に保持し、ポリエステルの溶融相から固相への遷移状態において、配向の戻りによるフィルム厚み方向途中における二軸配向のピークが形成されるようにするのがよい。
【0061】金属板の加熱温度(T1 )は、一般にTm+0℃乃至Tm+100℃、特にTm+0℃乃至Tm+50℃の温度が適当であり、一方ラミネートロール11の温度T2 は、70℃乃至180℃、特に80℃乃至150℃の範囲が適当である。この範囲内で金属板の温度またはラミネートロールの温度を調整することにより、フィルムの二軸配向残存量、即ち積層体におけるフィルムの複屈折をより良好な状態に制御することができる。即ち、上記の温度設定により、金属板上のポリエステルには、上記温度差に対応する温度勾配が形成されるので、ポリエステルの表面側から金属板側への厚み方向途中の部分が、溶融相から固相への遷移状態において配向の戻り現象を生じる温度領域に十分な時間保持されるようにするのがよい。このために、ラミネートロール通過後の積層体を、保温域で保温するのが有効である。
【0062】ポリエステルフィルムと金属素材の間に所望により設ける接着プライマーは、金属素材とフィルムとの両方に優れた接着性を示すものである。密着性と耐腐食性とに優れたプライマー塗料の代表的なものは、種々のフェノール類とホルムアルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを50:50乃至5:95重量比、特に40:60乃至10:90の重量比で含有する塗料である。
【0063】接着プライマー層は、一般に0.01乃至10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は予め金属素材上に設けてよく或いは予めポリエステルフィルム上に設けてもよい。
【0064】[シームレス缶及びその製造方法]本発明のシームレス缶の一例を示す図8において、このシームレス缶11は前述したポリエステル−金属ラミネート1の絞り−再絞り加工による曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により形成され、底部10と側壁部12とから成っている。側壁部12の上端には所望によりネック部13を介してフランジ部14が形成されている。この缶11では、底部10に比して側壁部12は曲げ伸ばし或いは更にしごき加工により積層体元厚の30乃至85%の厚みとなるように薄肉化されている。
【0065】本発明のシームレス缶は、上記のポリエステル−金属ラミネートをポンチとダイスとの間で、有底カップに絞り−深絞り成形し、深絞り段階で曲げ伸しとしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうことにより製造される。即ち、薄肉化のための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形(曲げ伸ばし)と缶厚み方向の荷重による変形(しごき)との組み合わせでしかもこの順序に行う。曲げ伸ばしはエチレンテレフタレート単位のc軸方向への分子配向を与え、一方しごきはエチレンテレフタレート単位のベンゼン面のフィルム面に平行な分子配向を与える。
【0066】ラミネートの絞り−しごき成形は次の手段で行われる。即ち、図9に示す通り、被覆金属板から成形された前絞りカップ30は、このカップ内に挿入された環状の保持部材31とその下に位置する再絞り−しごきダイス32とで保持される。これらの保持部材31及び再絞り−しごきダイス32と同軸に、且つ保持部材31内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ33が設けられる。再絞り−しごきポンチ33と再絞り−しごきダイス32とを互いに噛みあうように相対的に移動させる。
【0067】再絞り−しごきダイス32は、上部に平面部34を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コーナー部35を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下方に向けて径の増大するテーパー状のアプローチ部36を有し、このアプローチ部に続いて小曲率部37を介して円筒状のしごき用のランド部(しごき部)38を備えている。ランド部38の下方には、逆テーパ状の逃げ39が設けられている。
【0068】前絞りカップ30の側壁部は、環状保持部材31の外周面40から、その曲率コーナ部41を経て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材31の環状底面42と再絞りダイス32の平面部34とで規定される部分を通り、再絞りダイス32の作用コーナ部35により軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ30よりも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コーナー部35において、コーナー部35と接する側の反対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コーナー部35と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ばしによる薄肉化が行われる。
【0069】曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、その外面が径の次第に増大する小テーパー角のアプローチ部36と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき部38に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ばし後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があり、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定な状態にあり、これを直ちにしごき加工に付した場合には、円滑なしごき加工を行い得ないが、本発明によれば、側壁部の外面側をアプローチ部36と接触させてその径を縮小させると共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させて、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0070】アプローチ部36を通過した側壁部は、しごき用のランド部(しごき部)38と再絞り−しごきポンチ33との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層体元厚(t)の30乃至85%の厚みとなるように定める。尚、しごき部導入側の小曲率部37は、しごき開始点を有効に固定しながら、しごき部38への積層体の導入を円滑に行うものであり、ランド部38の下方の逆テーパ状の逃げ39は、加工力の過度の増大を防ぐものである。
【0071】再絞り−しごきダイス32の曲率コーナー部35の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべきであるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネートの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の1倍以上であるべきである。
【0072】テーパー状のアプローチ部36のアプローチ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至5゜を有するべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困難となる。
【0073】小曲率部37の曲率半径Riは、しごき開始点の固定有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)の0.3倍以上であるべきであるが、この曲率半径があまり大きくなるとラミネートの削れが生じるため、ラミネートの肉厚(t)の20倍以下にすることが特に好ましい。
【0074】しごき用のランド部38と再絞り−しごきポンチ33とクリアランスは前述した範囲にあるが、ランド長Lは、一般に0.5乃至30mmの長さを有しているのがよい。この長さが上記範囲よりも大きいと加工力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲よりも小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましくない場合がある。
【0075】本発明のシームレス缶において、フランジ部のポリエステル層は、過酷な巻締加工を受けることから、缶側壁部のポリエステル層に比して、マイルドな加工を受けていることが好ましい。これにより、巻締部の密封性及び耐腐食性を向上させることができる。この目的のため、しごき後の缶側壁部の上端に、缶側壁部の厚みよりも厚いフランジ形成部が形成されるようにする。即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフランジ部の厚みをt2 とすると、t2 /t1 の比は、1.0乃至2.0、特に1.0乃至1.7の範囲に定めるのがよい。
【0076】再絞り−しごき成形後のシームレス缶を示す図10、図11及び図12において、シームレス缶50は、素板圧とほぼ同じ厚みを有する底部51と、再絞り−しごき加工により薄肉化された側壁部52とから成るが、側壁部52の上部には、これよりも厚肉のフランジ形成部53が形成されている。
【0077】フランジ形成部には、種々の構造があり、図11に示す例では、側壁部52’の外面とフランジ形成部53’の外面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53’の内面は側壁部52’の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53’は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部53’が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくことにより形成される。
【0078】フランジ形成部の図10に示した例では、側壁部52の内面とフランジ形成部53の内面とが同一径の円筒面上にあり、フランジ形成部53の外面は側壁部52の外面よりも大きい径を有している。このタイプのフランジ形成部53は、再絞り−しごきダイのランド部の長さLを短くすると共に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径の部分を設けて、フランジ形成部53が戻り変形させることにより形成される。
【0079】フランジ形成部の図12に示した例では、フランジ形成部53”の外面は側壁部52”の外面よりも大きい径を有すると共に、フランジ形成部53”の内面は側壁部52”の内面よりも小さい径を有している。このタイプのフランジ形成部53”は、再絞り−しごきポンチ32において、側壁部が伸ばされてフランジ形成部43が位置する部分を他の部分に比して小径にしておくと共に、再絞り−しごきダイのランド部の長さLを短くし、更に、このランド部に続く部分にランド部よりも小径の部分を設けて、フランジ形成部43が戻り変形させることにより形成される。
【0080】本発明のシームレス缶を製造するに際して、表面のポリエステル層は十分な潤滑性能を付与するものであるが、より潤滑性を高めるために、各種油脂類或いはワックス類等の潤滑剤を少量塗布しておくことができる。勿論、潤滑剤を含有する水性クーラント(当然冷却も兼ねる)を使用することもできるが、操作の簡単さの点では避けた方がよい。
【0081】また、再絞り−しごき加工時の温度(しごき終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点(Tg)よりも50℃高い温度以下で且つ10℃以上の温度であることが好ましい。このため、工具の加温を行ったり、或いは逆に冷却を行うことが好ましい。
【0082】本発明によれば、次いで絞り成形後の容器を、少なくとも一段の熱処理に付することができる。この熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた滑剤を表面から揮散させること、表面に印刷した印刷インキを乾燥硬化させること等が主たる目的である。この熱処理には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多段で行うこともできる。熱処理の温度は、180乃至240℃、特に好ましくは190℃乃至230℃の範囲が適当である。フィルムの融点にもよるが、熱処理温度がこの範囲よりも高いと、ポリエステル層に二軸配向を残存させることが困難となる傾向がある。熱処理の時間は、一般的にいって、1乃至10分のオーダーである。
【0083】熱処理後の容器は急冷してもよく、また放冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしかも金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしでも、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られるのである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0084】得られた缶は、所望により、一段或いは多段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻締用の缶とする。また、ネックイン加工に先立って、ビード加工や、特公平7−5128号公報に記載された周状多面体壁加工を施すことができる。
【0085】
【実施例】本発明を次の例で説明する。各種測定値は、以下の測定方法により求めた。
【0086】(1) エステル交換率の調整実施例中のエステル交換率は、反応釜中にポリエステル主体の結晶性ポリエステルとブチレンテレフタレート主体の結晶性ポリエステルをブレンドし、雰囲気中の水分量をコントロールしながら樹脂温度260〜280℃、混練時間を5分〜90分とすることによりエステル交換率を調整した。
【0087】(2) エステル交換率の算出エステル交換率は、下記式(1)を用いて求める。
E=100・[1−exp{(Hu/R)・(1/Tm0 −1/Tm)}]
…(1)
ここで、Hu :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融解熱量9200(J/mol)
R :気体定数8.314(J/(mol・K))
Tm :ブレンド物の融点(K)
Tm0 :エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融点(K)
式中のTm(ブレンド物の融点)は積層体の単離フィルムを下記に示すDSC(示差走査熱量計)の条件により、昇温し280℃で2分保持した後、直ちに500℃/分の速度で冷却し、再度常温より下記の条件にて昇温したDSC曲線で熱量がピークを示す温度をブレンド物の融点とした。なお、積層体の単離フィルムは、缶胴部を常温にて18%塩酸水溶液に浸漬し、金属板を溶解した後にフィルムを洗浄、乾燥することにより得た。また二層フィルムの場合には、表層部を削りとり、下層部のフィルムのみを上記方法により単離した。
DSC装置 : パーキンエルマー社製 DSC7型昇温速度 : 20℃/分秤量 : 5〜10mgまた、Tm0 (エチレンテレフタレート単位を主体とする結晶性ポリエステルの融点)については、図13に示すイソフタル酸の共重合比率と融点の関係を示すグラフ(実験値)を用いた。
【0088】(3) IV(固有粘度)
積層体から前記の方法でフィルムを単離し(二層フィルムにおいてもそのまま)、200mg分をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン混合溶液(重量比1:1)に110℃で溶解し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で比粘度を測定した。固有粘度は下記式により求めた。
[η]=[{−1+(1+4K′ηsp)1/2 }/2K′C](dl/g)
K′ : ハギンスの恒数(=0.33)
C : 濃度(g/100ml)
ηsp : 比粘度[=(溶液の落下時間−溶媒の落下時間)/溶媒の落下時間]
【0089】(4) 貯蔵試験スポーツ飲料を90℃で熱間充填した後放冷し、充填した缶が5℃となるまで冷却した後、缶軸を鉛直方向に対して15°傾けて50cm高さから落下させて衝撃を与えた。その後、37℃の温度で貯蔵試験を行い、1年後に開缶し、内面側の周状多面体壁稜線部の腐食状態を観察した。また、落下により衝撃を受けた部分についても同様に腐食状態を観察した。
【0090】(5) 複屈折:積層体及び缶底部を5mm角に切り出し、前述した(2) の方法で説明したのと同様の方法でフィルムを単離した(二層フィルムの場合には、表層を削り取った)。単離したフィルムを24時間の真空乾燥に附し、試料とした。この試料フィルムをエポキシ樹脂にて包埋し、厚み方向(nt に相当)と2軸配向面の最大配向方向(nm に相当)に平行になるように3μm に切り出し、偏光顕微鏡によりレターデーションを測定した。複屈折の値は、断面の5箇所の平均値とした。尚、Δn1 はフィルムの表面側より、Δn3 はフィルムの金属板側より、それぞれ2μm までの平均値を採用した。またΔn2 はフィルム厚みの半分の位置を中心に2μm の平均値を採用した。その際の測定波長は546nmを用いた。
【0091】実施例1金属板として、下記のTFS鋼板を用いた。
TFS鋼板:板厚0.195mm、調質度T−4、金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量15mg/m2この金属板の片面に下記(1) のポリエステルフィルム、他の面には下記(2) のポリエステルフィルムを、板温250℃、ラミネートロール温度150℃、通板速度40m/分で両面同時に熱ラミネートし、直ちに水冷することによりラミネート金属板を得た。
ポリエステルフィルム(1) (缶外面側):イソフタル酸12モル%、テレフタル酸88モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂に、酸化チタン(顔料)を20重量%を配合して成る白色共重合体ポリエステル樹脂を縦3.0倍、横3.0倍の条件で延伸した二軸延伸フィルム(膜厚13μm)。
ポリエステルフィルム(2) (缶内面側):イソフタル酸6モル%、テレフタル酸94モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂(i)と、テレフタル酸80モル%(a)、アジピン酸20モル%(b)、1,4−ブタンジオール100モル%からなる共重合ポリエステル樹脂(ii)とを、55:45の重量比でブレンドし、混練によりエステル交換反応を制御することにより得られたポリエステルブレンド物を縦3.0倍×横3.0倍の条件で延伸した二軸延伸フィルム(膜厚25μm)。
上記で得られた被覆金属板にワックス系潤滑剤を塗布し、ポリエステルフィルム(1) 側が缶外面となるように直径158mmの円盤を打ち抜き、浅絞りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを再絞り・しごき加工を行い、深絞り−しごきカップを得た。
【0092】この深絞りカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ径 : 52mmカップ高さ : 140mm素板厚に対する缶壁部の厚み 73%素板厚に対するフランジ部の厚み 85%【0093】この深絞り−しごきカップを、常法に従いドーミング成形を行い、220℃にて熱処理を行った後、カップを放冷後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷および焼き付け乾燥、ネック加工、フランジ加工、更に周状多面体壁加工を行って250g用のシームレス缶を得た。周状多面体壁は、図14及び15に示す最小構成単位面を、容器高の中心を含み、円周方向に9個連続させ、且つ容器軸方向に1/2位相差で60mm幅で設け、L/Wを0.96、深さ比d1 /d0 を0.95、構成単位面の窪み曲率Rを5tとなるように設けた。
【0094】次いで、スポーツドリンクを90℃で熱間充填後、十分に冷却した後に、充填缶を5℃にて50cm高さより落下させ、コンクリート床上に置かれたステンレス製のくさび(角度15°)に缶底が衝突するようにした後、37℃で1年間貯蔵し、缶底衝撃部の腐食状態を観察した。
【0095】この缶の製造に用いた積層体におけるポリエステルフィルム(2) を分析した結果、エステル交換率は1.2%、IVは1.15であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。缶壁部の耐食性、衝撃部の耐食性ともに良好な結果が得られた。また缶に成形する前のラミネート金属板のポリエステルフィルム(2) 及び成形された缶底部におけるポリエステルフィルム(2) の複屈折測定値を表3に示す。
【0096】実施例2実施例1において、TFS鋼板の片面(缶の内面側)に設けられた二軸延伸ポリエステルフィルム(2) を、下記の二軸延伸積層フィルム(3) に代えた以外は、実施例1と同様にして、ラミネート金属板を得た(但し、熱ラミネート時の板温は240℃)。
二軸延伸積層フィルム(3):厚み;25μm ,延伸倍率;縦3.0倍×横3.0倍表層;ポリエステルフィルム(1) の作成に用いたポリエステル樹脂(但し顔料無し)。厚み5μm 。
下層(金属板側);ポリエステル樹脂(i) と共重合ポリエステル樹脂(ii)とのブレンド比(重量比)を70:30に変更した以外はポリエステルフィルム(2) の作成に用いたものと同じブレンド物。厚み20μm 。
上記ラミネート金属板を用いて、実施例1と同様に製缶および腐食試験を実施した。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(3) の下層を分析した結果、エステル交換率は5.1%、IVは0.66であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。缶壁部の耐食性、衝撃部の耐食性ともに良好な結果が得られた。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(3) 及び成形された缶底部における該フィルム(3) の複屈折測定値を表3に示す。
【0097】実施例3実施例2で用いた二軸延伸積層フィルム(3) (缶の内面側)の下層ブレンド物の組成を以下の様に変更した二軸延伸積層フィルム(4) を、二軸延伸積層フィルム(3) の代わりに用いた以外は、実施例2と同様にラミネート金属板の作成、製缶および腐食試験を実施した。
二軸延伸積層フィルム(4) の下層ブレンド物の組成:イソフタル酸8モル%、テレフタル酸92モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂(i)と、テレフタル酸70モル%(a)、アジピン酸30モル%(b)、1,4−ブタンジオール100モル%からなる共重合樹脂(ii)との55:45(重量比)のブレンド物。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(4) の下層を分析した結果、エステル交換率は2.5%、IVは0.75であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。缶壁部の耐食性、衝撃部の耐食性ともに良好な結果が得られた。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(4) 及び成形された缶底部における該フィルム(4) の複屈折測定値を表3に示す。
【0098】比較例1実施例1において、缶内面側のポリエステルフィルム(2) を、イソフタル酸12モル%、テレフタル酸88モル%及びエチレングリコール100モル%から成るポリエステル樹脂の二軸延伸フィルム(5) (膜厚25μm)に代えた以外は、実施例1と同様にしてラミネート金属板の作成(但し、熱ラミネート時の板温は240℃)、製缶および腐食試験を実施した。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸フィルム(5) を分析した結果、IVは0.64であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。周状多面体壁稜線部の耐食性は良好であったが、衝撃部のフィルム割れが著しく、腐食が生じており、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸フィルム(5) 及び成形された缶底部における該フィルム(5) の複屈折測定値を表3に示す。
【0099】比較例2実施例2で用いた缶内面側の二軸延伸積層フィルム(3) の下層ブレンド物の組成を以下の様に変更した二軸延伸積層フィルム(6) を、二軸延伸積層フィルム(3) の代わりに用いた以外は、実施例2と同様にラミネート金属板の作成(但し、熱ラミネート時の板温は245℃)、製缶および腐食試験を実施した。
二軸延伸積層フィルム(6) の下層ブレンド物の組成:イソフタル酸6モル%、テレフタル酸94モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂(i)と、テレフタル酸100モル%、1,4−ブタンジオール100モル%からなる共重合樹脂(ii)との70:30(重量比)のブレンド物。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(6) の下層を分析した結果、エステル交換率は3.5%、IVは0.70であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。周状多面体壁稜線部の耐食性は良好であったが、衝撃部のフィルム割れが認められ、且つ腐食が生じており、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(6) 及び成形された缶底部における該フィルム(6) の複屈折測定値を表3に示す。
【0100】比較例3実施例2で用いた缶内面側の二軸延伸積層フィルム(3) の下層ブレンド物の組成を以下の様に変更した二軸延伸積層フィルム(7) を、二軸延伸積層フィルム(3) の代わりに用いた以外は、実施例2と同様にラミネート金属板の作成(但し、熱ラミネート時の板温は245℃)、製缶および腐食試験を実施した。
二軸延伸積層フィルム(7) の下層ブレンド物の組成:イソフタル酸6モル%、テレフタル酸94モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂(i)と、テレフタル酸80モル%、イソフタル酸20モル%、及び1,4−ブタンジオール100モル%からなる共重合樹脂(ii)との70:30(重量比)のブレンド物。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(7) の下層を分析した結果、エステル交換率は3.2%、IVは0.68であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。周状多面体壁稜線部の耐食性は良好であったが、衝撃部のフィルム割れが大きく、腐食が生じており、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(7) 及び成形された缶底部における該フィルム(7) の複屈折測定値を表3に示す。
【0101】比較例4実施例2で用いた缶内面側の二軸延伸積層フィルム(3) と組成は全く同じであるが、下層ブレンド物の調製に際して溶融混練時間を延長してエステル交換率を高めた二軸延伸積層フィルム(8) を、二軸延伸積層フィルム(3) の代わりに用いた以外は、実施例2と同様にラミネート金属板の作成(但し、熱ラミネート時の板温は240℃)、製缶および腐食試験を実施した。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(8) の下層を分析した結果、エステル交換率23.2%、IVは0.66であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。成形時に、内面側フィルムに部分的な割れを生じ、熱処理後の缶内面フィルムの表面がしわ状となり、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(8) 及び成形された缶底部における該フィルム(8) の複屈折測定値を表3に示す。
【0102】比較例5比較例4で用いた二軸延伸積層フィルム(8) とは組成が全く同じであるが、下層ブレンド物の調製に際しての溶融混練時の温度を高くしてIVを著しく低下させた二軸延伸積層フィルム(9) を用いた以外は、比較例4と全く同様にしてラミネート金属板の作成、製缶および腐食試験を実施した。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(9) の下層を分析した結果、エステル交換率は7.6%、IVは0.52であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。周状多面体壁稜線部が部分的に腐食しており、衝撃部のフィルム割れが認められ、且つ腐食が生じており、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板の二軸延伸積層フィルム(9) 及び成形された缶底部における該フィルム(9) の複屈折測定値を表3に示す。
【0103】比較例6実施例2で用いた二軸延伸積層フィルム(3) の下層ブレンド物の組成を、以下の様に変更した二軸延伸積層フィルム(10) を、二軸延伸積層フィルム(3) の代わりに用いた以外は、実施例2と同様にラミネート金属板の作成(但し、熱ラミネート時の板温は240℃)、製缶および腐食試験を実施した。
二軸延伸積層フィルム(10)の下層ブレンド物の組成:イソフタル酸6モル%、テレフタル酸94モル%及びエチレングリコール100モル%からなるポリエステル樹脂(i)と、テレフタル酸80モル%(a)、アジピン酸20モル%(b)、1,4−ブタンジオール100モル%からなる共重合樹脂(ii)との20:80(重量比)のブレンド物。この缶の製造に用いた積層体における二軸延伸積層フィルム(10)の下層を分析した結果、エステル交換率は4.8%、IV0.70であった。表2にフィルムの特性値および評価結果を示す。周状多面体壁稜線部が部分的に腐食しており、衝撃部のフィルム割れが認められ、且つ腐食が生じており、実用適性がないと判断した。また缶に成形する前のラミネート金属板(積層体)の二軸延伸積層フィルム(10)及び成形された缶底部における該フィルム(10)の複屈折測定値を表3に示す。
【0104】
【表2】

【0105】
【表3】

【0106】
【発明の効果】本発明によれば、特定の共重合ポリエステル、即ち (a)ブチレングリコールと芳香族二塩基酸とから誘導されたエステル単位と (b)ブチレングリコールと脂肪族二塩基酸とから誘導されたエステル単位とを90:10乃至50:50のモル比で含む共重合ポリエステルをエチレンテレフタレート系ポリエステルにブレンドし、且つエステル交換率を特定の範囲に制御したポリエステル組成物を、金属基体へのラミネートに用いたことにより、耐衝撃性、特に耐デント性が顕著に改善された金属−ポリエステル積層体、並びにこの積層体から形成されたシームレス容器を提供することができた。
【0107】また、高度の絞り加工或いはしごき加工や製缶時或いは製缶後の熱処理にもかかわらず、結晶化による脆化が抑制され、優れた耐デント性が維持され、特に高度の加工が行われている缶胴上部のネックイン加工やフランジ加工を容易にし、この部分の耐デント性を向上させることが可能となった。




 

 


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