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発明の名称 摺動用受け部材の製造法及び摺動用受け部材用成形材料の製造法
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−95055
公開日 平成10年(1998)4月14日
出願番号 特願平8−251704
出願日 平成8年(1996)9月24日
代理人
発明者 河崎 秋由
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを液中に分散させ、その液面に近い側のフッ素樹脂微粉末含有量を反対側より多くするように抄造した成形材料を所定形状に加熱加圧成形することを特徴とする摺動用受け部材の製造法。
【請求項2】フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを液中に分散させ、その液面に近い側のフッ素樹脂微粉末含有量を反対側より多くするように抄造した二組の成形材料を、フッ素樹脂微粉末含有量の多い側を外側にして重ねて、これらを所定形状に一体に加熱加圧成形することを特徴とする摺動用受け部材の製造法。
【請求項3】補強繊維がアラミド繊維とフィブリル化したアラミド繊維を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2記載の摺動用受け部材の製造法。
【請求項4】フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを液中に分散させ、その液面に近い側のフッ素樹脂微粉末含有量を反対側より多くするように抄造した第一の成形材料と、フッ素樹脂微粉末を含まずにフェノール樹脂粉末と補強繊維を必須成分としてこれらを液中に分散させ抄造した第二の成形材料を準備し、第二の成形材料を芯層に、第一の成形材料を両表面層になるように重ね、且つ第一の成形材料はフッ素樹脂微粉末含有量の多い側を外側にして配置し、これらを所定形状に一体に加熱加圧成形することを特徴とする摺動用受け部材の製造法。
【請求項5】第一の成形材料の補強繊維がアラミド繊維とフィブリル化したアラミド繊維を主成分とし、第二の成形材料の補強繊維がガラス繊維を主成分とすることを特徴とする請求項4記載の摺動用受け部材の製造法。
【請求項6】フッ素樹脂微粉末の粒子径が3〜20μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の摺動用受け部材の製造法。
【請求項7】フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを液中に分散させ、その液面に近い側のフッ素樹脂微粉末含有量を反対側より多くするように抄造することを特徴とする摺動用受け部材用成形材料の製造法。
【請求項8】補強繊維がアラミド繊維とフィブリル化したアラミド繊維を主成分とすることを特徴とする請求項7記載の摺動用受け部材用成形材料の製造法。
【請求項9】フッ素樹脂微粉末の粒子径が3〜20μmであることを特徴とする請求項7又は8記載の摺動用受け部材用成形材料の製造法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂製の摺動用受け部材(例えば、スラストワッシャ、軸受)の製造法に関する。また、摺動用受け部材を成形するための成形材料の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂製のスラストワッシャは、トランスミッションのリテーナとミッションケースとの間に摺動用受け部材として用いられるために、摺動特性と寸法精度、強度が要求される。従来、スラストワッシャの製造法としては、次のような技術がある。フェノール樹脂と補強繊維を混合混練して、粒状の成形材料を調製し、これを射出成形してスラストワッシャの形状とする。そして、摺動性をもたせるために、成形品表面にフッ素樹脂フィルムを後加工でゴム系接着剤により貼り付ける。フッ素樹脂は本来接着性に乏しいので、フッ素樹脂フィルムの成形品表面への貼り付け強度を確保するために、フッ素樹脂フィルムを溶融金属ナトリウム中に浸漬してフィルム表面を粗化する処理を予め実施している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の製造法では、フッ素樹脂フィルムの貼り付け強度を確保するのが難しく、フッ素樹脂フィルムが剥がれやすい。また、フッ素樹脂フィルムの層は、これに圧接した摺動部材の摺動によりコールドフローを起こし、成形品表面が露出して摺動性が低下する。本発明が解決しようとする課題は、摺動用受け部材の表面にフッ素樹脂の層を強固に固定して十分な摺動性を確保することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明に係る方法では、フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを液中に分散させ、その液面に近い側のフッ素樹脂微粉末含有量を反対側より多くするように成形材料を抄造する。そして、前記成形材料を所定形状に加熱加圧成形して摺動用受け部材を製造する。
【0005】フッ素樹脂微粉末は表面に空気を吸着しやすく、抄造のときには浮力が大きくなるために液面に浮いてくる。従って、抄造した成形材料は、抄造時の液面に近い側のフッ素樹脂微粉末の含有量が反対側より多くなる。このような成形材料を加熱加圧成形することによって、片面にフッ素樹脂が偏在した摺動用受け部材を製造することができる。フッ素樹脂が偏在した面を摺動面として使用する。前記フッ素樹脂の層は、補強繊維に保持され成形時にしっかりと固定されるので、剥離することはなくコールドフローも起こしにくい。成形した摺動用受け部材のフェノール樹脂中にフッ素樹脂が混在していると強度低下を起こしやすいが、フッ素樹脂は片面に偏在しているので、フッ素樹脂の含有量の少ない反対側の層で十分な強度を保持することができる。また、フッ素樹脂は片面に偏在するので、少ない配合量であっても有効に作用させることができる。
【0006】尚、本発明に係る方法では、液中に分散したフェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末からウェブ状の成形材料が抄造により作られるので、長尺のシート状基材を移送しながらこれに樹脂ワニスを含浸乾燥する場合のように張力が働いておらず、得られた成形材料に歪みが残らない。また、前記抄造による方法では、成形材料を樹脂と補強繊維の混合混練により調製する場合のように、補強繊維が外力で折れることがなく、初期の繊維長を殆どそのまま保つことができる。さらに、液中に分散している補強繊維を抄造するので、補強繊維は特別な方向に配向することはない。このような結果、この成形材料を加熱加圧成形した摺動用受け部材は、強度の方向性や変形がなくなる。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明に係る方法を実施するに当たり、フェノール樹脂粉末の粒子径は、1〜100μmが適当であるが、抄造するときに分散させることができれば特に限定するものではない。補強繊維は、ガラス繊維、アラミド繊維等である。フッ素樹脂微粉末の粒子径は、空気の吸着のしやすさを考慮して好ましくは3〜20μmにするとよい。しかし、抄造に際して液面に浮いてくる浮力を有している限り、前記の範囲外の粒径であっても差し支えはない。抄造に際しては、他の充填材や添加剤を適宜配合してもよい。
【0008】成形材料の抄造は、フェノール樹脂粉末と補強繊維とフッ素樹脂微粉末を必須成分としてこれらを水中に分散させて行なう。これらを金網上に漉く工程で、フッ素樹脂微粉末が液面に浮いてくるので、上面にフッ素樹脂微粉末が多く含まれたウェブ状の成形材料を抄造することができる。抄造後に乾燥し、そのまま成形金型に仕込むことができる所定形状に打ち抜いた成形材料を前記金型に仕込んで加熱加圧成形すると、片面にフッ素樹脂が偏在した摺動用受け部材を製造することができる。フッ素樹脂が偏在した面を摺動部材の受け面として配置する。上記のそのまま成形金型に仕込むことができる形状の成形材料を二組用意して、フッ素樹脂が表裏両面に偏在した摺動用受け部材を製造することもできる。すなわち、二組の成形材料をフッ素樹脂微粉末含有量の多い側を外側にして重ね合せ、これを前記金型に仕込み、一体に加熱加圧成形する。このように製造した摺動用受け部材は、両表面にフッ素樹脂が偏在しており、両表面を摺動部材の受け面として使用することができる。
【0009】補強繊維の主成分としてアラミド繊維とフィブリル化したアラミド繊維を使用し抄造すると、フィブリル化したアラミド繊維が繊維同士の絡まりを促進し、繊維同士の結着を強固にする。これは、フィブリル化したアラミド繊維が、細かく枝分かれした繊維形状をしており、この枝分かれした繊維が絡んで繊維同士のつなぎの作用をするからである。従って、このような成形材料で成形した摺動用受け部材は、フッ素樹脂がより一層しっかりと補強繊維に保持固定され、フッ素樹脂の層のコールドフローを抑制する上で好都合である。
【0010】また、次のようなサンドウィッチ構造の摺動用受け部材を製造することもできる。フッ素樹脂微粉末が抄造時の上面に偏在している上記成形材料を第一の成形材料として準備し、別途、フッ素樹脂微粉末を含まずにフェノール樹脂粉末と補強繊維を必須成分としてこれらを液中に分散させ抄造した第二の成形材料を準備する。そして、前記第二の成形材料を芯層に、第一の成形材料を両表面層になるように重ね、且つ第一の成形材料はフッ素樹脂微粉末含有量の多い側を外側にして配置し、これらを成形金型に仕込んで一体に加熱加圧成形する。芯層に用いた第二の成形材料はフッ素樹脂粉末を含まないので、芯層で強度を発揮することができ、表面層で摺動性を発揮する。フッ素樹脂の層のコールドフローの抑制も一層顕著になる。第二の成形材料の補強繊維としてガラス繊維を使用することにより、摺動用受け部材の剛性を十分に大きくすることができる。
【0011】
【実施例】
実施例1〜4フェノール樹脂粉末(粒径1〜20μm,鐘紡製「ベルパールS890」)とガラス繊維(繊維径9μm,繊維長6mm)とまっすぐな(チョップ状)アラミド繊維(繊維径5〜20μm,繊維長2mm)とフッ素樹脂微粉末を重量比で35/20/20/25の割合で水に分散させ、これを抄造してウェブ状の成形材料とした。抄造後に乾燥して水分を除去した成形材料は、厚さ6mm、単位重量1450g/m2である。尚、前記乾燥は、フェノール樹脂の硬化反応が進まない温度範囲(常温)で行なった。各実施例において使用したフッ素樹脂微粉末の粒子径は、表1に示すとおりである。上記各成形材料を外径68mm,穴径58mmのドーナツ形状に打抜き加工したもの2枚を、抄造時の上面を外側にして重ね合せ、成形金型に仕込んで加熱加圧成形して、外径70mm,穴径56mm,厚さ1.8mmのスラストワッシャとした。その特性を表1に示す。表中、圧縮強度とは、スラストワッシャにその厚さ方向に荷重をかけていったとき、フッ素樹脂層のコールドフローにより前記荷重が一旦下がり始めるそのときの荷重である(以下、同様)。
【0012】従来例フェノール樹脂とガラス繊維(繊維径9μm,繊維長6mm)とチョップ状アラミド繊維(繊維径5〜20μm,繊維長2mm)を重量比で45/35/20の配合割合で混合混練し、粒状の成形材料とした。これを射出成形して上記実施例と同寸法のスラストワッシャの形状とした。その両表面に厚さ200μmのフッ素樹脂フィルムを貼り付け、スラストワッシャを完成した。フッ素樹脂フィルムの貼り付け方法は、フッ素樹脂フィルムを溶融金属ナトリウム中に浸漬してフィルム表面を予め粗化し、ゴム系接着剤により貼り付けるものである。その特性を表1に示す。
【0013】
【表1】

【0014】実施例5フェノール樹脂粉末(粒径1〜20μm,鐘紡製「ベルパールS890」)とガラス繊維(繊維径9μm,繊維長6mm)とチョップ状アラミド繊維(繊維径5〜20μm,繊維長2mm)を重量比で40/50/10の割合で水に分散させ、これを抄造してシート状の成形材料とした。抄造後に乾燥して水分を除去した成形材料は、厚さ6mm、単位重量1550g/m2である。この成形材料(第二の成形材料)を外径68mm,穴径58mmに打抜き加工したものを芯層とし、実施例2で使用した成形材料(第一の成形材料)を両表面層として加熱加圧成形により、外径70mm,穴径56mm,厚さ3mmのスラストワッシャとした。その特性を表2に示す。
【0015】実施例6フェノール樹脂粉末(粒径1〜20μm,鐘紡製「ベルパールS890」)とガラス繊維(繊維径9μm,繊維長6mm)を重量比で40/60の割合で水に分散させ、これを抄造してウェブ状の成形材料とした。抄造後に乾燥して水分を除去した成形材料は、厚さ6mm、単位重量1650g/m2である。この成形材料(第二の成形材料)を外径68mm,穴径58mmに打抜き加工したものを芯層とし、以下、実施例5と同様にしてスラストワッシャとした。その特性を表2に示す。
【0016】実施例7フェノール樹脂粉末(粒径1〜20μm,鐘紡製「ベルパールS890」)とチョップ状アラミド繊維(繊維径5〜20μm,繊維長2mm)とフィブリル化したアラミド繊維(繊維長3mm)とフッ素樹脂微粉末(実施例2の粒子径)を重量比で35/30/10/25の割合で水に分散させ、これを抄造してウェブ状の成形材料とした。抄造後に乾燥して水分を除去した成形材料(第一の成形材料)は、厚さ6mm、単位重量1450g/m2である。実施例5において、第一の成形材料として上記の成形材料を使用し、そのほかは実施例5と同様にしてスラストワッシャとした。その特性を表2に示す。
【0017】実施例8実施例6において、第一の成形材料として実施例7の第一の成形材料を使用し、そのほかは実施例6と同様にしてスラストワッシャとした。その特性を表2に示す。
【0018】
【表2】

【0019】
【発明の効果】上述のように、本発明に係る方法では、摺動用受け部材表面のフッ素樹脂の層は、補強繊維に保持され成形時にしっかりと固定されるので、剥離することはなくコールドフローも起こしにくい。良好な摺動特性を長期にわたって発揮することができる。成形した摺動用受け部材のフェノール樹脂中にフッ素樹脂が混在していると強度低下を起こしやすいが、フッ素樹脂は片面に偏在しているので、フッ素樹脂の含有量の少ない反対側の層で十分な強度を保持することができる。また、フッ素樹脂は片面に偏在するので、少ない配合量であっても有効に作用させることができる。
【0020】補強繊維の主成分としてアラミド繊維とフィブリル化したアラミド繊維を使用して成形材料を抄造すると、フィブリル化したアラミド繊維が繊維同士の絡まりを促進し繊維同士の結着を強固にするので、このような成形材料を使用して成形した摺動用受け部材は、フッ素樹脂がより一層しっかりと補強繊維に保持固定され、フッ素樹脂の層のコールドフローを抑制する上で好都合である。
【0021】フッ素樹脂微粉末を含まずにフェノール樹脂粉末と補強繊維を必須成分としてこれらを液中に分散させ抄造した成形材料芯層にしてサンドウィッチ構造の摺動用受け部材を製造すると、フッ素樹脂の層のコールドフローを抑制する上で好都合であるほか、フッ素樹脂粉末を含まない芯層で強度を発揮することができ都合がよい。芯層の補強繊維としてガラス繊維を使用することにより、大きな強度を発揮することができる。




 

 


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