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発明の名称 金型で加圧鋳造成形された非晶質合金成形品の製造方法及び装置
発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 公開特許公報(A)
公開番号 特開平10−296424
公開日 平成10年(1998)11月10日
出願番号 特願平9−126229
出願日 平成9年(1997)5月1日
代理人 【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 繁喜
発明者 谷口 武志 / 永洞 純一
要約 目的


構成
特許請求の範囲
【請求項1】 上面が開放された溶解用容器で非晶質合金を生じ得る合金材料を溶解し、この合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内に強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させ、非晶質相を含む合金からなる成形品を得ることを特徴とする非晶質合金成形品の製造方法。
【請求項2】 真空中又は不活性ガス雰囲気下において、上面が開放された溶解用容器で非晶質合金を生じ得る合金材料を溶解し、この合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内に強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させ、非晶質相を含む合金からなる成形品を得ることを特徴とする非晶質合金成形品の製造方法。
【請求項3】 上面が開放された溶解用容器で非晶質合金を生じ得る合金材料を溶解し、この合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内にその注湯口を介して強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させると共に、強制冷却鋳型の注湯口の部分の合金溶湯を徐冷凝固して結晶化させ、この結晶化によって脆くなった部分を切断した後、溶解用容器を強制冷却鋳型から引き離し、非晶質相を含む合金からなる成形品を得ることを特徴とする非晶質合金成形品の製造方法。
【請求項4】 前記溶解用容器内に合金溶湯を強制移動させるための溶湯移動具を移動自在に配設しておき、該溶湯移動具によって溶解用容器内の合金溶湯を強制冷却鋳型内に強制移動させると共に、強制冷却鋳型内に充填された合金溶湯を加圧することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】 前記強制冷却鋳型内に溶湯移動具を移動自在に配設しておき、該溶湯移動具を移動させることによって製品成形用キャビティ内に負圧を生じさせ、合金溶湯を製品成形用キャビティ内に強制移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】 前記溶湯移動具が強制冷却鋳型の製品成形用キャビティに対応する断面形状を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】 前記非晶質合金を生じ得る合金材料の溶解を高周波誘導加熱又は抵抗加熱により行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】 前記強制冷却鋳型として水冷鋳型又はガス冷却鋳型を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】 前記合金材料が、下記一般式で示される組成を有し、温度幅30K以上のガラス遷移領域を有する非晶質合金を生じ得る合金であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
一般式:XaMbAlc但し、XはZr及びHfから選ばれる1種又は2種の元素、MはMn、Fe、Co、Ni及びCuよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、cは原子%で、25≦a≦85、5≦b≦70、0<c≦35で示される組成を有し、少なくとも体積率50%以上の非晶質相を含む非晶質合金。
【請求項10】 下部に注湯口を有し、内部に該注湯口と湯道を介して連通する製品成形用キャビティを有すると共に、上記注湯口に向って移動自在に配設された切断具を有する強制冷却鋳型と;上面が開放された原料収容孔と、該原料収容孔内に摺動自在に配設された溶湯移動具とを有し、上記注湯口に向って移動自在に配設された溶解用容器とを備えてなることを特徴とする非晶質合金成形品の製造装置。
【請求項11】 下部に開閉自在な注湯口を有し、昇降自在に配設された溶解用容器と;該溶解用容器の下方に配設され、溶解用容器下部と密着したときに上記注湯口と湯道を介して連通可能な製品成形用キャビティと、該製品成形用キャビティ内に摺動自在に配設された溶湯移動具とを有すると共に、上記注湯口に向って移動自在に配設された切断具を有する強制冷却鋳型とを備えていることを特徴とする非晶質合金成形品の製造装置。
【請求項12】 前記切断具と湯道の間に、切断具の移動方向に対して垂直方向に移動自在に開閉具が配設されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の装置。
【請求項13】 前記注湯口の周壁部及び/又は前記開閉具が断熱材から作製されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】 前記強制冷却鋳型及び溶解用容器が真空中又は不活性ガス雰囲気中に配置されていることを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】 前記溶湯移動具が油圧又は空圧シリンダにより作動される請求項10乃至14のいずれか一項に記載の装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金型で加圧鋳造成形された非晶質合金成形品の製造方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】非晶質合金の製造方法としては、一般に104 〜106 K/s程度の大きな冷却速度が必要となるため片ロール法、双ロール法、ガスアトマイズ法などが採用されているが、このような方法によって得られる製品は箔帯、細線、粉末状のものに限られており、非晶質合金の応用分野を著しく制限する要因となっている。このため、非晶質合金粉末を結晶化温度(Tx)以下の低温域で押出や衝撃圧着などの方法により成形し、肉厚の成形品を製造する研究が行われている。しかしながら、このような方法の場合、粉末の篩分け、脱ガス、予備成形、本成形など複雑な工程が必要となり、また高価な設備も必要となる。そのため、得られる製品が高価なものになってしまうという欠点がある。
【0003】このような粉末成形法とは異なり、単一プロセスにより非晶質合金の成形品を製造する方法として、特開平8−199318号には、上面が開放された溶解用炉床の底部に、製品成形用キャビティに溶湯移動具を装填した強制冷却鋳型を配置し、上記溶解用炉床で非晶質化元素を含むジルコニウム合金を溶解した後、上記溶湯移動具を下方に引き抜いて強制冷却鋳型内にジルコニウム合金溶湯を移動させ、上記強制冷却鋳型内でジルコニウム合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させる棒状又は筒状Zr系非晶質合金の製造方法が開示されている。
【0004】しかしながら、上記方法によれば、鋳造物の形状が溶湯移動具の形状及び引き抜き方法により規制されるため、棒状又は筒状に限定されてしまう。また、単に溶湯移動具の引き抜きによって合金溶湯の移動を伴うものであるため、合金溶湯を実質的に加圧することができない。従って、微細な形状あるいは複雑な形状の成形品を製造することが困難であり、また、得られる製品の緻密性や機械的性質の点でも改善すべき余地が残されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、従来の金型鋳造法をベースにした技術とガラス遷移領域を示す非晶質合金の組み合わせによって、複雑な又は微細な形状の成形品であっても、所定の形状、寸法精度、表面品質を満足する非晶質合金成形品を単一プロセスで量産性良く製造でき、従って精密加工品であっても研磨等の機械加工工程を省略又は大幅に削減できる方法を提供し、もって耐久性、強度、耐衝撃性等に優れた安価な非晶質合金成形品を提供しようとするものである。さらに本発明の目的は、上記のような非晶質合金成形品の製造に適した比較的簡単な構成の装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、本発明の第1の側面によれば、上面が開放された溶解用容器で非晶質合金を生じ得る合金材料を溶解し、この合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内に強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させ、非晶質相を含む合金からなる成形品を得ることを特徴とする非晶質合金成形品の製造方法が提供される。好適な態様においては、上記各工程は真空中又は不活性ガス雰囲気下において行われる。さらに好適な態様においては、上記合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内にその注湯口を介して強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させると共に強制冷却鋳型の注湯口の部分の合金溶湯を徐冷凝固して結晶化させ、この結晶化によって脆くなった部分を切断した後、溶解用容器を強制冷却鋳型から引き離し、非晶質相を含む合金からなる成形品を得る。
【0007】前記合金溶湯の強制冷却鋳型内への強制移動は、好適には、前記溶解用容器内に合金溶湯を強制移動させるための溶湯移動具を移動自在に配設しておき、該溶湯移動具によって溶解用容器内の合金溶湯を強制冷却鋳型内に強制移動させると共に、強制冷却鋳型内に充填された合金溶湯を加圧する方法によって行うことができる。あるいは別の方法として、前記強制冷却鋳型内に溶湯移動具を移動自在に配設しておき、該溶湯移動具を移動させることによって製品成形用キャビティ内に負圧を生じさせ、合金溶湯を製品成形用キャビティ内に強制移動させることもできる。この場合、一つの好適な態様においては、上記溶湯移動具として強制冷却鋳型の製品成形用キャビティに対応する断面形状を有するものを用い、また製品成形用キャビティ内に充填された合金溶湯の加圧は、注湯口を介して加圧気体を付加することによって行うことができる。
【0008】なお、前記したいずれの方法においても、好適には、前記合金材料として、下記一般式で示される組成を有し、温度幅30K以上のガラス遷移領域を有する非晶質合金を生じ得る合金を用いる。
一般式:XaMbAlc但し、XはZr及びHfから選ばれる1種又は2種の元素、MはMn、Fe、Co、Ni及びCuよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a、b、cは原子%で、25≦a≦85、5≦b≦70、0<c≦35で示される組成を有し、少なくとも体積率50%以上の非晶質相を含む非晶質合金。
【0009】さらに本発明の第2の側面によれば、前記したような非晶質合金成形品の製造に好適に用いることができる装置も提供される。本発明の非晶質合金成形品の製造装置の第1の態様は、下部に注湯口を有し、内部に該注湯口と湯道を介して連通する製品成形用キャビティを有すると共に、上記注湯口に向って移動自在に配設された切断具を有する強制冷却鋳型と;上面が開放された原料収容孔と、該原料収容孔内に摺動自在に配設された溶湯移動具とを有し、上記注湯口に向って移動自在に配設された溶解用容器とを備えてなることを特徴としている。
【0010】また、本発明の装置の第2の態様は、下部に開閉自在な注湯口を有し、昇降自在に配設された溶解用容器と;該溶解用容器の下部に配設され、溶解用容器下部と密着したときに上記注湯口と湯道を介して連通可能な製品成形用キャビティと、該製品成形用キャビティ内に摺動自在に配設された溶湯移動具とを有すると共に、上記注湯口に向って移動自在に配設された切断具を有する強制冷却鋳型とを備えていることを特徴としている。上記いずれの態様においても、好適には、上記切断具と湯道の間に、切断具の移動方向に対して垂直方向に移動自在に開閉具が配設され、また、上記注湯口の周壁部及び/又は上記開閉具が断熱材から作製される。さらに、好適には、上記強制冷却鋳型及び溶解用容器は真空中又は不活性ガス雰囲気中に配置される。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明による非晶質合金成形品の製造は、前記したように、上面が開放された溶解用容器で非晶質合金を生じ得る合金材料を溶解し、この合金溶湯を製品成形用キャビティを持つ強制冷却鋳型内に強制移動させると共に加圧し、上記強制冷却鋳型内で合金溶湯を急冷凝固して非晶質化させ、非晶質相を含む合金からなる成形品を得ることを特徴としている。この際、上記合金溶湯の強制冷却鋳型内への強制移動は、溶解用容器内に摺動自在に配設された溶湯移動具を、例えば油圧又は空圧シリンダによって作動させることにより、容器内の合金溶湯を強制冷却鋳型内に強制移動させると共に、強制冷却鋳型内に充填された合金溶湯を加圧する方法によって行うこともできるし、あるいは、強制冷却鋳型の製品成形用キャビティ内に溶湯移動具を摺動自在に配設しておき、該溶湯移動具を移動させることによって製品成形用キャビティ内に負圧を生じさせ、合金溶湯を製品成形用キャビティ内に強制移動させ、その際、溶解用容器に例えばガス圧を付加する方法によって行うこともできる。
【0012】このような方法により、強制冷却鋳型の製品成形用キャビティ内に充填された合金溶湯は加圧されているため、複雑な形状あるいは微細な形状の成形品であっても、高い寸法精度でキャビティ形状を忠実に再現した緻密で表面平滑な成形品を単一のプロセスで量産性良く、従って低コストで製造することができる。また、前記各工程を真空中又は不活性ガス雰囲気下において行うことにより、合金溶湯の酸化皮膜の形成を防止し、良好な品質の非晶質合金成形品を製造することができる。なお、溶湯の酸化皮膜形成を防止するためには、装置全体を真空中又はArガス等の不活性ガス雰囲気中に配置するか、あるいは少なくとも合金溶湯が露出している溶解用容器の上部に不活性ガスを流すことが好ましい。
【0013】また、本発明の非晶質合金成形品の製造装置においては、強制冷却鋳型内に注湯口に向って移動自在に切断具が配設されており、凝固完了後、強制冷却鋳型内に充填・凝固された鋳造品と注湯口内あるいはさらに溶解用容器内に残存している凝固物とを切り離し、鋳造工程終了後に溶解用容器と強制冷却鋳型を分離し易いように構成されている。従って、次の鋳造工程をスムーズに行うことができ、作業性が向上する。さらに、上記注湯口の周壁部、及び/又は、上記切断具と湯道の間に切断具の移動方向に対して垂直方向に移動自在に配設された開閉具を、断熱材から作製して、その部分での冷却速度が製品成形用キャビティ内の冷却速度よりも小さくなるようにすることが好ましい。このように注湯部を断熱することにより、合金溶湯の流れがスムーズになると共に、強制冷却鋳型の製品成形用キャビティ内に充填された合金溶湯は急冷凝固して非晶質化するが、注湯口の部分の合金溶湯は徐冷凝固して結晶化するため、この結晶化によって脆くなった部分を簡単に切断することができる。
【0014】本発明の成形品の材質としては、実質的に非晶質の合金からなる製品を得ることができる材料であれば全て使用可能であり、特定の材料に限定されるものではないが、中でも、前記一般式で示されるガラス遷移温度(Tg)と結晶化温度(Tx)の温度差が極めて広いZr−TM−Al系及びHf−TM−Al系(TM:遷移金属)非晶質合金(特公平7−122120号参照)は、高強度、高耐食性であると共に、過冷却液体領域(ガラス遷移領域)ΔTx=Tx−Tgが30K以上、特にZr−TM−Al系非晶質合金は60K以上と極めて広く、この温度領域では粘性流動により数10MPa以下の低応力でも非常に良好な加工性を示す。また、冷却速度が数10K/s程度の鋳造法によっても非晶質バルク材が得られるなど、非常に安定で製造し易い特徴を持っている。これらの合金は、溶湯からの金型鋳造によっても、またガラス遷移領域を利用した粘性流動による成形加工によっても、非晶質材料が生成すると同時に、金型形状及び寸法を極めて忠実に再現する。
【0015】本発明に利用されるこのZr−TM−Al系及びHf−TM−Al系非晶質合金は、合金組成、測定法によっても異なるが、非常に大きなΔTxの範囲を持っている。例えばZr60Al15Co2.5 Ni7.5 Cu15合金(Tg:652K、Tx:768K)のΔTxは116Kと極めて広い。耐酸化性も極めて良く、空気中でTgまでの高温に熱してもほとんど酸化されない。硬度は室温からTg付近までビッカース硬度(Hv)で460(DPN)、引張強度は1,600MPa、曲げ強度は3,000MPaに達する。熱膨張率αは室温からTg付近まで1×10-5/Kと小さく、ヤング率は91GPa、圧縮時の弾性限界は4〜5%を超える。さらに靭性も高く、シャルピー衝撃値で6〜7J/cm2 を示す。このように非常に高強度の特性を示しながら、ガラス遷移領域まで加熱されると、流動応力は10MPa程度まで低下する。このため極めて加工が容易で、低応力で複雑な形状の微小部品や高精度部品に成形できるのが本合金の特徴である。しかも、いわゆるガラス(非晶質)としての特性から加工(変形)表面は極めて平滑性が高く、結晶合金を変形させたときのように滑り帯が表面に現われるステップなどは実質的に発生しない特徴を持っている。
【0016】一般に、非晶質合金はガラス遷移領域まで加熱すると長時間の保持によって結晶化が始まるが、本合金のようにΔTxが広い合金は非晶質相が安定であり、ΔTx内の温度を適当に選べば2時間程度までは結晶が発生せず、通常の成形加工においては結晶化を懸念する必要はない。また、本合金は溶湯からの凝固においてもこの特性を如何なく発揮する。一般に非晶質合金の製造には急速な冷却が必要とされるが、本合金は冷却速度10K/s程度の冷却で溶湯から容易に非晶質単相からなるバルク材を得ることができる。その凝固表面はやはり極めて平滑であり、金型表面のミクロンオーダーの研磨傷でさえも忠実に再現する転写性を持っている。従って、合金材料として本合金を適用すれば、金型表面が成形品の要求特性を満たす表面品質を持っておれば、成形材においても金型の表面特性をそのまま再現し、従来の金型鋳造法においても寸法調整、表面粗さ調整の工程を省略又は短縮することができる。
【0017】以上のように、高い引張強度及び高い曲げ強度、良好なヤング率、高弾性限界、高耐衝撃性、表面の平滑性、高精度の鋳造又は加工性を併せ持った特徴は、光ファイバコネクタのフェルールやスリーブ、歯車、マイクロマシン等の精密部品など、種々の分野の成形品に有利に適用できる。なお、前記一般式XaMbAlcで示される非晶質合金は、5原子%以下の割合でTi、C、B、Ge、Biなどの元素を含有する場合でも、上記と同様の特性を示す非晶質合金が得られる。
【0018】
【実施例】以下、添付図面に示す実施例を説明しながら本発明についてさらに具体的に説明する。図1は、本発明の方法により非晶質合金製円筒体を製造する装置の一実施例の概略構成を示している。強制冷却鋳型10は上型11と下型20とからなり、上型11には鋳造品の外形寸法を規制する一対の製品成形用キャビティ12a,12bが形成されている。これらのキャビティ12a,12bは湯道13によって連通されており、キャビティ12a,12b周囲を所定間隔を置いて半周する湯道の部分14a,14bの先端部からキャビティ12a,12b内に溶湯が流入されるように構成されている。また、上型11内には、各キャビティ11a,11bの上端から上型上面にかけて排気孔15a,15bが形成されており、これら排気孔15a,15bは真空ポンプ3に接続されている。なお、排気孔15a,15bに真空ポンプ3を接続せずに、単なる排気孔として利用することもできる。
【0019】一方、下型20の所定箇所には上記湯道13と連通する注湯口(貫通孔)21が形成され、その下部には溶解用容器30の上部の円筒状の原料収容部32と対応する形状の凹部22が形成されている。また、下型20の注湯口21には、セラミックス、熱伝導率の小さな金属などの断熱材から作製された口金23が装着されている。注湯口21(口金23の内周部)は、合金溶湯を注入し易いように下方に向って拡げられた逆テーパ状に形成されている。
【0020】さらに上型11内には、上記注湯口21の上部に垂直な貫通孔16が形成されており、該貫通孔16には下端周縁に刃先部18が形成された棒状の切断具17が注湯口21に向って上下動自在に配設されている。切断具17は、上部に配置された図示しない油圧シリンダ(又は空圧シリンダ)により作動される。上記切断具17の下端と湯道13との間には開閉具19が配設されており、この開閉具19は、図2に明瞭に示すように、その両側部に突設された凸部24が上型内に形成された水平方向の孔25の溝部26内に係合し、上記切断具17の移動方向に対して垂直方向(図面上、紙面に対して垂直方向)に摺動自在に配設されている。開閉具19は、合金溶湯注入時にはその先端部が貫通孔16内に突出し、溶湯が貫通孔16内に注入されないようにし、溶湯の注入・凝固後に後退して貫通孔16の下部を開き、切断具17の下端刃先部18が注湯口21まで突出できるように構成されている。上記開閉具19も、前記したような断熱材から作製することが好ましい。
【0021】なお、強制冷却鋳型10は、銅、銅合金、又は超硬合金その他の金属材料から作製することができるが、キャビティ12a,12b内に注入された溶湯の冷却速度を速くするために、熱容量が大きくかつ熱伝導率の高い材料、例えば銅製、銅合金製等とすることが好ましい。また上型11には冷却水、冷媒ガス等の冷却媒体を流通させる流路が配設されているが、図示の都合上省略されている。
【0022】溶解用容器30は、本体31の上部に円筒状の原料収容部32を有し、前記下型20の注湯口21の真下に昇降自在に配設されている。原料収容部32の原料収容孔33内には、該原料収容孔33と略等しい径を有する溶湯移動具34が摺動自在に配置されており、該溶湯移動具34は図示しない油圧シリンダ(又は空圧シリンダ)のプランジャー35により上下動される。また、溶解用容器30の原料収容部32の周囲には、加熱源として誘導コイル36が配設されている。加熱源としては、高周波誘導加熱の他、抵抗加熱等の任意の手段を採用できる。上記原料収容部32及び溶湯移動具34の材質としては、セラミックス、耐熱皮膜コーティング金属材料などの耐熱性材料が好ましい。なお、溶湯の酸化皮膜形成を防止するために、前記強制冷却鋳型10及び溶解用容器30はチャンバ1内に配置されており、該チャンバ1内に接続された真空ポンプ2を作動させて装置全体を真空中に置くか、あるいはチャンバ1内にArガス等の不活性ガスを導入して不活性ガス雰囲気中に配置するように構成されている。
【0023】非晶質合金の円筒体の製造に際しては、まず、溶解用容器30が強制冷却鋳型10の下方に離間した状態において、原料収容部32内の溶湯移動具34上の空間内に前記したような非晶質合金を生じ得る組成の合金原料Aを装填する。合金原料Aとしては棒状、ペレット状、粉末状等の任意の形態のものを使用できる。次いで、真空ポンプ2を作動させてチャンバー1内を減圧するか、あるいはArガス等を導入して不活性雰囲気とする。その後、誘導コイル36を励磁して合金原料Aを急速に加熱する。合金原料Aが溶解したかどうかを溶湯温度を検出して確認した後、誘導コイル36を消磁し、溶解用容器30をその上端部が下型20の凹部22に嵌挿されるまで上昇させる。このときには、開閉具19は貫通孔16の下部に突出し、貫通孔16と湯道13の間は閉鎖されている。
【0024】次いで、真空ポンプ3を作動させて強制冷却鋳型10の製品成形用キャビティ12a,12b内の圧力をチャンバ1内の圧力よりも低くした後、図2に示すように、油圧シリンダ(図示せず)を作動させて溶湯移動具34を急速に上昇させ、溶湯A' を強制冷却鋳型10の注湯口21から射出する。射出された溶湯A'は湯道13を経て各製品成形用キャビティ12a,12b内に注入、加圧され、急速に凝固される。この際、射出温度、射出速度等を適宜設定することにより、103 K/s以上の冷却速度が得られる。
【0025】その後、キャビティ内に充填された溶湯が凝固した後、図3に示すように、開閉具19を後退させて貫通孔16の下部を開放した後、図4に示すように、油圧シリンダ(図示せず)を作動させて切断具17を下方に急速に突出させ、その刃先部18で凝固材A''の湯道部分を切断する。この際、注湯口21の周辺部の凝固材A''は、口金23及び開閉具19に断熱材が使用されているために冷却速度が遅くされ、それによって結晶化されて脆くなっているので、切断具17によって容易に切断できる。切断された注湯口21部分の凝固材A''' は溶解用容器30の原料収容部32内に落下し、再利用される。次いで、溶解用容器30が図4に仮想線で示すように元の位置まで復帰し、切断具17が上昇した後、開閉具19の先端部が前進して貫通孔16の下部を閉鎖する。
【0026】その後、上型11と下型20が分離され、強制冷却鋳型10内から鋳造品を取り出し、1回目の製造工程が終了する。次の製造工程においては、溶解用容器30内に必要に応じて合金原料Aを補充した後、前記した工程と同様にして、合金原料Aを溶解した後、溶解用容器30を上昇させてその原料収容部32の上端部を下型20の凹部22に嵌挿した後、図5に示すように溶湯移動具34を急速に上昇させて2回目の射出を行う。その後は前記と同様な操作を行って2回目の製造工程を終了する。その後、前記したような工程を繰り返し行う。
【0027】前記の方法で製造された鋳造後の製品形状を図6及び図7に示す。鋳造品40の円筒体部分41a,41bから湯道部分42a,42bを切断・分離し、その切断面を研磨することにより、鋳型のキャビティ面を忠実に再現した平滑な表面を有する円筒体が得られる。なお、鋳造品40の湯道部分42a,42bと注湯口部分43は、前記したように切断具17によって既に切断されているが、図1に示す強制冷却鋳型10の製品成形用キャビティ12a,12bと湯道13及びその半円状部分14a,14bの形状が理解し易いように、図6及び図7には接続した状態で示されている。
【0028】前記したような方法により、寸法精度L±0.0005〜0.001mm、表面精度0.2〜0.4μmで円筒体を製造できる。なお、前記図1に示す装置では、一対の製品成形用キャビティ12a,12bを形成した強制冷却鋳型10を用い、単一の工程で2個の製品を製造する2個取りの例を説明したが、3個以上のキャビティを形成した強制冷却鋳型を用い、多数個取りとすることも勿論可能である。そのような多数個取りした鋳造品の一例を図8に示す。図8は、4個の円筒体部分41a,41b,41c,41dが湯道部分42a,42bと接合した状態の鋳造品40aを示しているが、強制冷却鋳型10の注湯口21の周囲にさらに多数の製品成形用キャビティを設けることにより、より多数の製品を単一工程で鋳造することもできる。
【0029】前記のような高圧ダイカスト法によれば、鋳造圧力が約100MPaまで、射出速度が数m/s程度まで可能であり、以下のような利点が得られる。
(1)溶湯の強制冷却鋳型への充填が数ms以内で完了し、急冷作用が大きい。
(2)溶湯の強制冷却鋳型との高密着性による冷却速度の増大とともに、精密成形が可能である。
(3)鋳造品の凝固収縮時における引け巣などの欠陥を低減できる。
(4)複雑な又は微細な形状の成形品の作製が可能になる。
(5)高粘度の溶湯の鋳込みが可能になる。
【0030】図9は、本発明の方法により非晶質合金製歯車を製造する装置の一実施例の概略構成を示している。図9に示す装置は、強制冷却鋳型10aが上型11a、下型20a、及び一対の左右型27,28から構成され、歯車の製品形状に対応する一対の製品成形用キャビティ29a,29bが上下型11a,20aと左型27及び右型28との間にそれぞれ設けられている点において、図1に示す強制冷却鋳型10と異なるが、注湯口21a、その周囲の口金23a、その上部に上下動自在に設けられた切断具17a及びその下部の開閉具19a等の各構成部品の材質、構造等は図1に示す強制冷却鋳型と実質的に同一であるので、それらの説明は省略する。
【0031】また、強制冷却鋳型10aの注湯口21aの下方には、溶解用容器が昇降自在に配設されているが、溶解用容器の構造も図1に示す装置の場合と同様であるので図示を省略する。さらに、強制冷却鋳型10aと溶解用容器はチャンバ1内に配置されている。従って、図9に示す装置を用いた製造工程も実質的に図1に示す装置の場合と同様であるので、その説明は省略する。図9に示すような強制冷却鋳型10aを用いることにより、図10に示すような非晶質合金製の歯車45を鋳造することができる。
【0032】図11は、本発明の他の方法により非晶質合金製の円筒体を製造する装置の実施例を示している。この装置の場合、強制冷却鋳型50の下型51と上型60が図1に示す強制冷却鋳型10の上型11と下型20をほぼ逆にした構造を有する。すなわち、下型51には円筒体の外径寸法を規制する一対の製品成形用キャビティ52a,52bが形成されており、これらのキャビティ52a,52b内にはそれぞれ円筒体の内径寸法を規制する中子65a,65bが配設される。これらの中子65a,65bは上型60の下面に突設されている。各キャビティ52a,52bは湯道53によって連通されており、キャビティ52a,52bの周囲をそれぞれ所定間隔を置いて半周する湯道の部分54a,54bの先端部からキャビティ52a,52b内に溶湯が流入されるように構成されている。各キャビティ52a,52bと中子65a,65bとの間の空間には、溶湯移動具55a,55bの円筒状部分が昇降自在に配設されている。また湯道53の下方に形成された垂直な貫通孔56内には、上端周縁に刃先部58が成形された棒状の切断具57が注湯口61に向って上下動自在に配設されている。さらに、切断具57の上端と湯道53との間には、切断具57の移動方向に対して垂直方向に開閉具59が摺動自在に配設されている。これら切断具57と開閉具59の構造、及び溶湯移動具55a,55bと切断具57、開閉具59の作動機構は、上下逆な以外は図1に示す装置の場合と同様である。
【0033】一方、上型60の所定箇所には上記湯道53と連通する注湯口(貫通孔)61が形成され、その下部には円筒状の溶解用容器70の下端部と対応する形状の凹部62が形成されている。また、上型60の注湯口61にはテーパ状の内径部を有する断熱材製の口金63が装着されており、該口金の下端部には、前記開閉具59と同様な構造の断熱材製の開閉具64が注湯口61の軸線方向(切断具57の移動方向)に対して垂直方向に摺動自在に配設されている。溶解用容器70は円筒状の容器からなり、上記上型60の注湯口61の真上に昇降自在に配設されており、その周囲には誘導コイル71が配設されている。なお、上記強制冷却鋳型50及び溶解用容器70は、図1に示す装置の場合と同様にチャンバ1内に配置されている。
【0034】図11に示す装置を用いて円筒体を製造するに際しては、まず、溶解用容器70を下降させ、その下端部が強制冷却鋳型50の上型60の凹部62に嵌挿した状態において、該溶解用容器70内に前記したような非晶質合金を生じ得る組成の合金原料Aを装填する。次いで、誘導コイル71を励磁して合金原料Aを急速に加熱する。合金原料Aが溶解した後、誘導コイル71を消磁し、開閉具64を後退させて注湯口61の下部を開き、溶湯移動具55a,55bを下方に急速に下降させて製品成形用キャビティ52a,52b内に負圧を生じさせ、溶湯を注湯口61から湯道53を経てキャビティ52a,52b内に吸引すると同時に、溶解用容器70内に加圧気体を導入して溶湯を加圧する。
【0035】その後、キャビティ内に充填された溶湯が凝固した後、溶解用容器70を上昇させ、図1に示す装置の場合と同様に、開閉具59を後退させて貫通孔56の上部を開放した後、油圧シリンダ(図示せず)を作動させて切断具57を上方に急速に突出させ、その刃先部58で凝固材の湯道部分を切断する。この際、注湯口61内の凝固材は、口金63及び開閉具59に断熱材が使用されているために冷却速度が遅くされ、それによって結晶化されて脆くなっているので、切断具57によって容易に切断できる。切断された注湯口61部分の凝固材は取り出し、再利用される。次いで、切断具57が下降した後、開閉具59及び64の先端部が前進してそれぞれ貫通孔56の上部及び注湯口61の下部を閉鎖する。その後、上型60と下型51が分離され、溶湯移動具55a,55bを上昇させて強制冷却鋳型50内から鋳造品を取り出し、1回目の製造工程が終了する。
【0036】次に、前記したような非晶質合金の機械的性質について試験した結果を以下に示す。なお、試料は以下のようにして作製した。予め溶製したZr60Al15Co2.5 Ni7.5 Cu15、その他表1に示す各合金をそれぞれ石英るつぼに入れ、高周波誘導加熱によって完全に溶解し、この溶湯を2kgf/cm2 の気体加圧によって、るつぼ下部に設けられた細孔から直径2mm、長さ30mmの棒状キャビティを有する室温の銅製鋳型に注入して、機械的性質測定用棒状試料を得た。機械的性質の評価結果を表1に示す。
【表1】

表1に示すように、得られた非晶質合金材料は、曲げ強度がこれまでセラミックス成形品の材料として用いられている部分安定化ジルコニアの値(約1,000MPa)を大きく上回り、ヤング率は約1/2、硬度は約1/3であり、各種成形品の材料として必要な特性を充分に備えていることがわかる。
【0037】
【発明の効果】以上のように、本発明の方法及び装置によれば、金型鋳造法をベースにした技術とガラス遷移領域を示す非晶質合金の組み合わせによって、複雑な又は微細な形状の成形品であっても、所定の形状、寸法精度及び表面品質を満足する非晶質合金成形品を生産性よく低コストで製造することができる。しかも、本発明に利用される非晶質合金は強度、靭性、耐食性等に優れ、各種精密成形品として摩耗、変形、欠け等が発生し難く長期間の使用に耐えることができる。




 

 


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